JP2018172749A - Cvtリング用鋼、窒化用cvtリング素材及びその製造方法、並びにcvtリング部材及びその製造方法 - Google Patents

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毅志 宇田川
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Abstract

【課題】マルエージング鋼よりも安価に提供可能であり、製造過程における圧延性に優れたCVTリング用鋼、この鋼から構成され、優れた強度を有する窒化用CVTリング素材及びその製造方法、並びに、このCVTリング素材を素材として作製され、優れた疲労寿命を有するCVTリング部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】CVTリング用鋼は、C:0.30質量%以上0.70質量%以下、Si:2.50質量%以下、Mn:1.00質量%以下、Cr:1.00質量%以上4.00質量%以下を含有し、下記式1の関係を満たし、残部がFe及び不可避的不純物よりなる化学成分を有している。
式1:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−3.083×Cr(質量%)+35.472>0
【選択図】図1

Description

本発明は、CVTリング用鋼、この鋼から構成された窒化用CVTリング素材及びその製造方法、並びに、このCVTリング素材から作製されたCVTリング部材及びその製造方法に関する。
環境問題等の観点から自動車の低燃費化が強く望まれており、最近の自動車用変速装置には燃費向上に有利なベルト式の無段変速機(以下、適宜CVTという。)が多用されている。CVTに使用される動力伝達用ベルトは、金属製の薄い板厚のリング部材を複数層重ねて一組のCVTベルトを構成し、そのCVTベルト2組にエレメントと呼ばれる摩擦部材を複数組み付けて構成されている。
CVTベルトは、CVTにおけるプーリに直接接触するものではないが、エレメントを組み付けた動力伝達用ベルトを構成する状態で回転して動力を伝え、その回転中に張力や曲げ応力を繰り返し受ける。そのため、CVTベルトを構成するリング部材の材料には、疲労強度に優れたものを用いる必要がある。さらに、近年の自動車の高出力性能化にともない、動力伝達用ベルトにもこれまで以上の高強度化が要求されるようになってきた。
リング部材には、強度、耐摩耗性などの様々な特性が要求されることから、現状では、強度、耐摩耗性等に非常に優れた特性を有するマルエージング鋼がCVTリング用鋼材料として用いられている。しかし、マルエージング鋼は、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)及びCo(コバルト)等の高価な元素が多量に添加されているため、非常に高価なものとなっている。
そこで、本出願人らは、鋭意検討の結果、高強度で耐摩耗性に優れ、マルエージング鋼よりも安価に提供可能なCVTリング部材を開発した(特許文献1、特許文献2)。さらに、近年の自動車の高出力性能化にともない、動力伝達用ベルトにもこれまで以上の高い疲労寿命が要求されるようになってきた。
CVTリング部材は、通常、以下のようにして作製されている。即ち、板材をリング状に曲げ加工した後、端部同士を溶接して無端ベルト状を呈する粗リング材を作製する。この粗リング材に冷間圧延や軟化焼鈍等を適宜組み合わせて実施し、素材となるCVTリング素材を作製する。このCVTリング素材に窒化処理を施すことにより、CVTリング部材を得ることができる。
特開2011−195861号公報 国際公開WO2015/087869号
特許文献1及び特許文献2のCVTリング部材は、上述した製造過程における、粗リング材を冷間圧延する作業での圧延性に未だ改善の余地がある。即ち、特許文献1及び特許文献2のようにCVTリング部材の素材として高強度の鋼を使用する場合には、上述した製造過程における、粗リング材を冷間圧延する際の圧延条件が過酷になる。そのため、生産性を向上しようとすると、冷間圧延後のリング材の端部に割れが生じやすいという問題がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、マルエージング鋼よりも安価に提供可能であり、製造過程における圧延性に優れたCVTリング用鋼、この鋼から構成され、優れた強度を有する窒化用CVTリング素材及びその製造方法、並びに、このCVTリング素材から作製され、優れた疲労寿命を有するCVTリング部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
即ち、本発明の一態様は、以下の[1]〜[3]に係るCVTリング用鋼にある。
[1]C(炭素):0.30質量%以上0.70質量%以下、Si(シリコン):2.50質量%以下、Mn(マンガン):1.00質量%以下、Cr(クロム):1.00質量%以上4.00質量%以下を含有し、下記式1の関係を満たし、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物よりなる化学成分を有する、CVTリング用鋼。
式1:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−3.083×Cr(質量%)+35.472>0
[2]V:1.00質量%以下、Ni:4.00質量%以下及びMo:0.50質量%未満のうち1種または2種以上をさらに含有し、下記式2の関係を満たしている、[1]に記載のCVTリング用鋼。
式2:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−0.879×Ni(質量%)−3.083×Cr(質量%)−13.990×Mo(質量%)−4.625×V(質量%)+35.472>0
[3]Al:0.060質量%以下、Ti:0.10質量%以下、Nb:0.10質量%以下及びZr:0.20質量%以下からなる群のうち1種または2種以上と、N:0.006質量%以上0.030質量%以下とをさらに含んでおり、Al、Ti、Nb及びZrからなる群のうち1種または2種以上の元素の窒化物または炭窒化物から構成され、Fe母相中に分散された第二相粒子を有している、[1]または[2]に記載のCVTリング用鋼。
本発明の他の態様は、以下の[4]に係る窒化用CVTリング素材にある。
[4]上記の態様のCVTリング用鋼から構成されており、
引張強さが1500MPa以上であり、
無端ベルト状を呈する、窒化用CVTリング素材。
本発明のさらに他の態様は、以下の[5]に係るCVTリング部材にある。
[5]上記の態様の窒化用CVTリング素材からなる母材の表面に表面硬化層が形成されており、
厚み方向断面における、最表面から中心部へ0.03mmの深さにおける硬さH[HV]と、厚み方向中央部の内部硬さH[HV]とが、H≦1.1H、かつ、H≧450の関係を満たし、
上記表面硬化層の表面硬さが650HV以上である、CVTリング部材。
本発明のさらに他の態様は、以下の[6]〜[7]に係る窒化用CVTリング素材の製造方法にある。
[6]上記の態様のCVTリング用鋼の鋳塊を準備し、
上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して粗リング材を作製し、
上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施して板厚所望のリング材を作製し、
上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行う、窒化用CVTリング素材の製造方法。
[7]上記焼入処理の後、上記リング材を150〜250℃または400〜500℃のいずれかの範囲内に加熱して焼戻し処理を行う、[6]に記載の窒化用CVTリング素材の製造方法。
本発明のさらに他の態様は、以下の[8]に係るCVTリング部材の製造方法にある。
[8]上記の態様の製造方法により窒化用CVTリング素材を作製し、
上記窒化用CVTリング素材に400〜500℃の温度で窒化処理を行う、CVTリング部材の製造方法。
上記CVTリング用鋼における化学成分は、各元素の含有量が上記特定の範囲内であるとともに、上記特定の関係を満たしている。上記CVTリング用鋼は、このように調整された特定の化学成分を有しているため、優れた圧延性を有している。また、上記窒化用CVTリング素材の製造過程において、冷間圧延時のリング材の端部の割れの発生を抑制することができる。
さらに、CVTリング用鋼中に任意元素を上記特定の範囲内で含有させることにより、CVTリング用鋼中に窒化物または炭窒化物から構成され、Fe母相中に分散された第二相粒子を有することができる。その結果、CVTリング素材の製造過程において冷間圧延後のリング材の端部に割れの発生を抑止することができる。
また、上記CVTリング素材は、マルエージング鋼に比べて合金元素の含有量が少ない上記CVTリング用鋼から構成されているため、材料コストを低減することができる。更に、上記CVTリング素材は、少なくとも上記特定の化学成分を有していることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。
また、上記CVTリング部材は、上記の態様のCVTリング素材の表面に表面硬化層を形成することにより作製することができる。上記CVTリング部材は、上記CVTリング素材を母材としており、上記特定の範囲の硬さを有しているため、疲労寿命に優れている。さらに、上記CVTリング部材は、マルエージング鋼に比べて合金元素の含有量が少ないため、マルエージング鋼を使用した従来のCVTリング部材に比べて上記リング部材を安価に提供することができる。
また、上記の態様のCVTリング素材の製造方法においては、上記特定の範囲の化学成分を有するリング材に、上記特定の条件で焼入処理を行う。これにより、上記特定の範囲の引張強さを有する上記CVTリング素材を作製することができる。また、上記CVTリング素材において、焼入処理後、窒化処理前にさらに焼戻し処理を行うことで、CVTリング素材中に固溶した炭素からなる鉄炭化物が生成したり、炭素若しくは炭化物の形態を制御して後に実施する窒化処理により侵入した窒素の拡散や窒化物の生成を安定化したCVTリング部材とすることができる。
また、上記の態様のCVTリング部材の製造方法によれば、上記CVTリング素材への窒化処理により得られた表面硬化層(表面硬さ)や上記CVTリング部材における強度特性を安定化することができる。
また、上記CVTリング素材に窒化処理を行うことにより、表面硬化層を有するCVTリング部材を作製することができ、狙いとする疲労強度を得ることができる。
実施例における、CVTリング部材の使用状態を示す説明図である。
上記CVTリング用鋼における各成分範囲の限定理由について、以下に説明する。
・C(炭素):0.30質量%以上0.70質量%以下
Cは、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度を高くする作用を有している。Cの含有量を上記特定の範囲とすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。Cの含有量が0.30質量%未満の場合には、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度を高くすることが難しい。
上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度をより高くする観点からは、Cの含有量をより多くすることが好ましい。しかし、Cの含有量が過度に多い場合には、上記CVTリング用鋼中に粗大な炭化物が形成されるおそれがある。CVTリング用鋼中に粗大な炭化物が存在すると、CVTリング素材の製造過程において、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生しやすくなる。また、CVTリング用鋼中の粗大な炭化物は、強度低下の原因となるおそれがある。そのため、圧延性及び強度の低下を回避する観点から、Cの含有量は0.70質量%以下とする。
・Si(シリコン):2.5質量%以下
上記CVTリング用鋼中には、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、通常、0.03質量%程度のSiが不可避的不純物として含まれている。上記CVTリング用鋼中のSiの含有量を不可避的不純物としてのSi量よりも多い0.03質量%以上とすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度をより高くする観点からは、Siの含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。
Siの含有量が2.50質量%を超える場合には、上記CVTリング用鋼の圧延性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、CVTリング部材の製造過程において、CVTリング素材に窒化処理を施す際に、表面硬化層の形成が妨げられるおそれがある。
・Mn(マンガン):1.00質量%以下
上記CVTリング素材中には、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、通常、0.02質量%程度のMnが不可避的不純物として含まれている。CVTリング素材中のMnの含有量を不可避的不純物としてのMn量よりも多い0.02質量%以上とすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。上記リング部材の強度をより高くする観点からは、Mnの含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。
Mnの含有量が過度に多くなると、添加量に見合った作用効果を得ることが難しい。そこで、Mnによる強度向上の効果を得る観点から、Mnの含有量は1.00質量%以下とする。
・Cr(クロム):1.00質量%以上4.00質量%以下
Crは、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度を高くする作用を有している。また、Crは、窒化処理後のCVTリング部材における表面硬化層の表面硬さの向上に有効な元素である。Crの含有量を上記特定の範囲にすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。また、Crの含有量を上記特定の範囲にすることにより、上記CVTリング部材の表面硬化層の表面硬さを高くすることもできる。
Crの含有量が1.00質量%未満の場合には、上述した作用効果を得ることが難しい。一方、Crの含有量が4.00質量%を超える場合には、Crの存在により炭化物の成長が過度に促進され、粗大な炭化物が形成されるおそれがある。その結果、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度がかえって低下するおそれがある。また、この場合には、それ以上Crを添加しても、添加量に見合った作用効果を得ることが難しい。更に、Crは比較的高価な元素であるため、Crの含有量が過度に多くなると、上記CVTリング用鋼やCVTリング素材、CVTリング部材の原料コストの増大を招く。原料コストの増大や強度の低下を回避しつつCrによる上述した作用効果を得る観点から、Crの含有量は4.00質量%以下とする。
上記CVTリング用鋼において、上述した必須成分の含有量は、下記式1の関係を満たしている。
式1:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−3.083×Cr(質量%)+35.472>0
上記CVTリング用鋼は、個々の必須成分の含有量を上記特定の範囲内にした上で、更に上記式1を満たす化学成分を有していることにより、粗リング材を冷間圧延する際の圧延性を向上させ、割れの発生を抑制することができる。このような作用効果は、後述する実施例から明らかである。
上記CVTリング用鋼は、上述した必須成分以外に、任意成分として、V(バナジウム)、Ni(ニッケル)及びMo(モリブデン)のうち1種または2種以上を含んでいてもよい。
・V(バナジウム):1.00質量%以下
Vは、任意成分であり、必ずしも含まれていなくてもよいが、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度を高くする作用を有している。また、Vは、窒化処理後における表面硬化層の表面硬さの向上に有効な元素である。Vの含有量を上記特定の範囲にすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現し、かつ、上記CVTリング部材の表面硬化層の表面硬さをより高くすることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、Vの含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。
Vの含有量が1.00質量%を超える場合には、粗大な炭化物が構成され、圧延性や強度を低下させるおそれがあるため、添加量に見合った作用効果を得ることが難しい。また、Vは比較的高価な元素であるため、Vの含有量が過度に多くなると、上記CVTリング用鋼やCVTリング素材、CVTリング部材の原料コストの増大を招く。原料コストの増大を回避しつつVによる上述した作用効果を得る観点から、Vの含有量は1.00質量%以下とする。
・Ni(ニッケル):4.00質量%以下
Niは、任意成分であり、必ずしも含まれていなくてもよいが、必要に応じて添加することにより、焼入性を向上させるために有効な元素である。また、Niは、炭化物の生成を抑制する作用を有しており、粒界に形成される炭化物の量をより低減することができる。そして、粒界に形成される炭化物の量を低減することにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。また、Niの含有量を上記特定の範囲にすることにより、焼入性をより向上させることができるとともに、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度をより高くすることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、Niの含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。
Niの含有量が4.00質量%を超える場合には、添加量に見合った作用効果を得ることが難しい。また、Niは比較的高価な元素であるため、Niの含有量が過度に多くなると、上記CVTリング用鋼やCVTリング素材、CVTリング部材の原料コストの増大を招く。原料コストの増大を回避しつつNiによる上述した作用効果を得る観点から、Niの含有量は4.00質量%以下とする。
・Mo(モリブデン):0.50質量%未満
Moは、任意成分であり、必ずしも含まれていなくてもよいが、必要に応じて添加することにより、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度を高くするとともに、焼戻し処理中の炭化物の成長を抑制させるために有効である。Moの含有量を上記特定の範囲とすることにより、上記特定の範囲の強度特性を実現することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、Moの含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。
Moの含有量が0.50質量%以上の場合には、粗リング材を冷間圧延する際の圧延性の低下を招くおそれがある。また、Moは比較的高価な元素であるため、Moの含有量が過度に多くなると、上記CVTリング用鋼やCVTリング素材、CVTリング部材の原料コストの増大を招く。原料コストの増大を回避しつつMoによる上述した作用効果を得る観点から、Moの含有量は0.50質量%未満とする。
上記CVTリング用鋼がV、Ni及びMoのうち1種または2種以上を含んでいる場合、必須成分及びV、Ni、Moの含有量は、個々の成分の含有量を上記特定の範囲内にした上で、下記式2を満たしている必要がある。これにより、CVTリング用鋼の圧延性をより向上させることができる。
式2:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−0.879×Ni(質量%)−3.083×Cr(質量%)−13.990×Mo(質量%)−4.625×V(質量%)+35.472>0
また、上記CVTリング用鋼は、上記必須成分の他に、Al(アルミニウム):0.060質量%以下、Ti(チタン):0.10質量%以下、Nb(ニオブ):0.10質量%以下及びZr(ジルコニウム):0.20質量%以下からなる群のうち1種または2種以上と、N(窒素):0.006質量%以上0.030質量%以下とを含んでいてもよい。
Al、Ti、Nb及びZrは、単独で添加されていてもよく、2種以上が添加されていてもよい。これらの元素とNとが共存することにより、Fe母相中に、これらの元素の窒化物や炭窒化物からなる第二相粒子を分散させることができる。そして、上記第二相粒子は、結晶粒界の移動を妨げる、いわゆるピン止め効果により、焼入処理中の結晶粒の粗大化を抑制することができる。その結果、上記CVTリング部材の疲労寿命を高くすることができる。
一方、Al、Ti、Nb、Zr及びNのうちいずれかの化学成分を上記特定の範囲よりも過剰に添加すると、上記元素からなる窒化物や炭窒化物からなる第二相粒子が粗大、かつ多量に分散されるため、CVTリング素材を製造する過程における冷間加工性を低下させるおそれがある。またCVTリング素材の製造過程において冷間圧延後のリング材への端部に割れが発生するおそれがある。
上記CVTリング用鋼から構成された窒化用CVTリング素材は、無端ベルト状を呈している。CVTリング素材の板厚は、例えば、0.15〜0.22mmの範囲内から適宜設定することができる。また、CVTリング素材は、1500MPa以上の引張強さを有している。上記CVTリング素材は、少なくとも上記特定の範囲の化学成分を有しているため、このような高い水準の引張強さを実現することができる。
上記CVTリング素材に窒化処理を施し、CVTリング素材の表面に表面硬化層を形成することにより、CVTリング部材を得ることができる。CVTリング部材は、厚み方向断面における、最表面から中心部へ0.03mmの深さにおける硬さH[HV]と、厚み方向中央部の内部硬さH[HV]とが、H≦1.1H、かつ、H≧450の関係を満たし、かつ、表面硬化層の表面硬さが650HV以上である。CVTリング部材は、少なくとも、上記特定の化学成分を備え、かつ、引張強さが上記特定の範囲であるCVTリング素材を母材とすることにより、上述した狙いの強度特性を実現することができる。
上記CVTリング素材は、上記特定の範囲の化学成分を有する鋳塊を準備し、
上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して無端ベルト状を呈する粗リング材を作製し、
上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施して板厚所望のリング材を作製し、
上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行うことにより作製することができる。
上記製造方法において、鋳塊から板材を作製する際の塑性加工としては、例えば、熱間圧延、熱間鍛造、冷間圧延、冷間鍛造等の公知の種々の塑性加工方法を適用することが可能である。通常は、熱間加工を実施した後、冷間加工を施して板材を作製する。なお、熱間加工によって板材表面に生成した黒皮(酸化皮膜)は、冷間加工の前に除去することが好ましい。黒皮の除去は、例えば、ピーリング等の機械加工や酸洗によって実施することができる。
上記板材に曲げ加工を行ってリング状に成形した後、端面同士の突合せ溶接を行うことにより粗リング材を作製することができる。曲げ加工には、例えば、ロール曲げ加工等の公知の方法を適用することができる。溶接には、例えば、プラズマ溶接、レーザ溶接等の公知の方法を適用することができる。
粗リング材は、CVTリング部材1本に相当する幅を有する板材から作製することもできる。しかし、工程の合理化の観点からは、CVTリング部材複数本に相当する幅広の板材を管状に溶接しておき、当該管を所望の幅に切断して粗リング材を作製することが好ましい。この場合には、切断の後に、バレル研磨等により切断面のバリ取りを実施することが好ましい。
このようにして得られた粗リング材に軟化焼鈍処理を行うことにより、溶接による熱影響を除去するとともに冷間圧延時の圧延性を向上させることができる。その後、粗リング材に冷間圧延を行うことにより、所望の板厚を備えたリング材を得ることができる。このときのリング材の板厚は、最終的に得ようとするCVTリング素材やCVTリング部材の板厚とほぼ同一である。リング材の板厚は、例えば、0.15〜0.22mmの範囲内から適宜設定することができる。
上述した方法等により準備されたリング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行うことにより、CVTリング素材を得ることができる。焼入処理における加熱温度を850℃以上とするのは、短時間にCVTリング素材をオーステナイト化し、焼入れするのに必要な温度であるためである。一方、加熱温度が1000℃を超える場合には、結晶粒の粗大化により、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度の低下を招くおそれがある。かかる問題を回避する観点から、焼入処理における加熱温度は1000℃以下とする。
上述した焼入処理の後、必要に応じて、上記リング材に焼戻し処理を行ってもよい。焼戻し処理における加熱温度は、150〜250℃または400〜500℃のいずれかの範囲とすることができる。
150〜250℃の加熱温度で焼戻し処理を行う場合には、焼入処理において固溶したCを鉄炭化物としてCVTリング素材中に析出させることができる。また、400〜500℃の加熱温度で焼戻し処理を行う場合には、上述した鉄炭化物が成長することにより安定化された鉄炭化物や合金炭化物をCVTリング素材中に形成することができる。
そして、焼戻し処理における加熱温度を上述のように制御することにより、CVTリング素材中の炭素若しくは炭化物の形態を制御することができる。その結果、後に行う窒化処理の際に、CVTリング素材中に侵入した窒素の拡散や、窒化物の生成により得られた表面硬化層の形成をムラなく行うことができる。更に、窒化処理が施されたCVTリング部材における、表面硬化層の表面硬さや断面中心部分の引張強さのムラを低減することができる。
また、焼戻処理または焼戻し処理が完了した後、必要に応じて、これらの処理により生じた歪みを除去するための矯正加工や、CVTリング素材の周長を所望の範囲に調整するための周長調整を行ってもよい。これらの加工は、別々の工程として行ってもよく、矯正加工と周長調整とを兼ねた1つの工程として行ってもよい。
その後、400〜500℃の温度で上記CVTリング素材に窒化処理を行うことにより、CVTリング素材の表面に表面硬化層を形成し、CVTリング部材を作製することができる。窒化処理における処理温度を上記特定の範囲とすることにより、CVTリング部材の表面硬化層の表面硬さを適正な範囲にすることができる。処理温度が400℃未満の場合には、表面硬化層の表面硬さが不十分となり、CVTリング部材の疲労寿命の低下を招くおそれがある。一方、処理温度が500℃を超える場合には、過剰窒化となるため、表面硬化層の表面硬さが過度に高くなる。その結果、CVTリング部材の脆化によって疲労寿命が低下するおそれがある。
なお、CVTリング部材の表面硬化層の表面硬さは、800〜950HVであることが好ましい。また、窒化処理としては、窒素単独又はアンモニア等の窒素化合物単独のガス、又は、それらの窒素化合物を含む混合ガスの雰囲気中で行うガス窒化、軟窒化、塩浴窒化、プラズマ窒化等の種々の方法を適用することができる。窒化処理は表面性状の影響を受けやすいため、必要に応じて、窒化処理前に機械的に若しくは化学的な研磨処理、酸化若しくは還元雰囲気による最表面の均質化処理を行ってもよい。
(実施例1)
上記CVTリング用鋼、この鋼から構成されたCVTリング素材及びその製造方法、並びにこのCVTリング素材から作製されたCVTリング部材及びその製造方法の実施例について、以下に説明する。図1に示すように、本例のCVTリング部材1は、CVTにおける、動力伝達用ベルト3を構成する部品として用いられる。動力伝達用ベルト3は、多数のエレメント2と、エレメント2に組み付けられた2組のCVTベルト10とを有している。CVTベルト10は、互いに積層された複数のCVTリング部材1から構成されている。
本例のCVTリング素材及びCVTリング部材の作製方法を以下に詳説する。
まず、VIM(Vacuum Induction Melting)装置を用いて表1に示す化学成分を有する鋳塊(合金記号A〜AM)を作製した。なお、表1における化学成分の含有量については、任意元素であるNi、Mo、V、Al、Ti、Nb、Zr、Nを意図的に添加した鋳塊の合金記号のみ数値を記載し、任意元素を意図的に添加していない鋳塊の合金記号には「−」を一律に記載した。
得られた鋳塊に鍛伸加工を施し、厚さ7mmの板材を作製した。板材表面に存在する黒皮を機械加工により除去した後、冷間圧延により、板材の厚さを0.39mmとした。次いで、板材にロール曲げ加工を施して管状に成形し、プラズマ溶接により端面同士の突合せ溶接を行った。得られた管を5〜15mmの幅に切断し、板厚0.39mm、周長300mmの粗リング材を得た。
次に、粗リング材にバレル研磨、軟化焼鈍処理及び冷間圧延を順次行い、板厚0.20mmのリング材を作製した。なお、軟化焼鈍処理における加熱温度は860℃とし、保持時間は2時間とした。
リング材を表2及び表3に示す焼入温度まで加熱して60分間保持した後、空冷して焼入処理を行った。なお、表2及び表3に示す焼入温度は、各リング材のAcm変態点+50℃が850〜1000℃の範囲内である場合には、リング材のAcm変態点+50℃である。また、この温度が850℃未満の場合には焼入温度を850℃とし、1000℃を超える場合には焼入温度を1000℃とした。
焼入処理が完了した後、リング材を425℃で1時間加熱して焼戻し処理を行った。その後、リング材に、矯正加工を兼ねた周長調整を施し、CVTリング素材を作製した。図には示さないが、周長調整においては、一対のローラ間にリング材を掛け渡し、ローラ同士の距離を拡げる方向にテンションをかけながらリング材を回転させた。
周長調整の後、425℃の窒化温度でCVTリング素材に窒化処理を行った。本例においては、NH3とH2との混合ガス中において、上記CVTリング素材を上記特定の窒化温度に保持することにより窒化処理を行い、母材としてのCVTリング素材の表面に表面硬化層を形成した。以上により、表2及び表3に示すCVTリング部材(試験体1〜39)を得た。
以上の試験体について、粗リング材の圧延性及びCVTリング素材の引張強さを以下の方法により評価した。また、窒化処理後のCVTリング部材の内部硬さや表面硬化層の表面硬さ等で現される硬さ特性及び疲労寿命を、以下の方法により評価した。
<引張強さ>
図には示さないが、一対のローラにCVTリング素材を掛け渡した後、ローラに加わる荷重を測定しながらローラ間の距離を徐々に広げて、CVTリング素材に引張荷重を加えた。そして、試験開始からCVTリング素材が破断するまでの最大荷重をCVTリング素材の断面積で除した値をCVTリング素材の引張強さとした。その結果を表2及び表3に示した。なお、引張強さの測定は、室温環境下にて行った。引張強さの評価においては、引張強さが1500MPa以上の場合を合格と判定し、1500MPa未満の場合を不合格と判定した。
<圧延性指数>
各試験体における化学成分の含有量(表1参照)を用いて、下記式1または下記式2のいずれかにより圧延性指数Rを算出した。その結果を表2及び表3に示した。なお、表1における「化学成分」欄中の記号「−」は、当該元素が含まれていない、あるいは、当該元素の含有量が不可避的不純物レベルであることを示す。
下記式1及び下記式2においては、記号「−」が付された元素の含有量を0質量%として圧延性指数Rを算出した。また、化学成分中にV、Ni及びMoのいずれも含まれていない場合には下記式1を用いて圧延性指数Rを算出し、V、Ni及びMoのうち1種または2種以上が含まれている場合には下記式2を用いて圧延性指数Rを算出した。
式1:R=−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−3.083×Cr(質量%)+35.472
式2:R=−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−0.879×Ni(質量%)−3.083×Cr(質量%)−13.990×Mo(質量%)−4.625×V(質量%)+35.472
圧延性指数の評価においては、上述の方法により算出した圧延性指数Rの値が0を超える場合には粗リング材を冷間圧延してリング材とするに際し、割れが発生するおそれが少ないとして合格と判定し、圧延性指数Rの値が0以下の場合にはリング材に割れが発生するおそれが高いとして不合格と判定した。
<冷間圧延時の割れ>
冷間圧延後のリング材の板幅方向における端部を目視観察し、冷間圧延による割れの発生の有無を評価した。そして、リング材の端部に割れがない場合には、表2及び表3中の「割れの有無」欄に記号「A」を記載し、割れがある場合には同欄に記号「B」を記載した。冷間圧延時の割れの評価においては、リング材の端部に割れがない記号Aの場合を合格と判定し、割れが発生した記号Bの場合を不合格と判定した。
<厚み方向断面における硬さ>
ビッカース硬度計を使用し、CVTリング部材の厚み方向断面における幅方向の中央部での、最表面から中心部へ0.03mmの深さでの硬さH[HV]及び厚み方向中央部の内部硬さH[HV]を測定した。各試験体における内部硬さHの値は、表2及び表3中の「内部硬さ」欄に示した通りであった。内部硬さの評価においては、内部硬さHが450HV以上の場合にCVTリング部材としての強度特性を満足するため合格と判定し、450HV未満の場合をCVTリング部材としての強度特性を満足しないため不合格と判定した。
また、表2及び表3中の「H/H」の欄には、最表面から中心部へ0.03mmの深さでの硬さHの値が内部硬さHの値の1.1倍以下である場合に記号「A」を記載し、硬さHの値が内部硬さHの値の1.1倍を超える場合に記号「B」を記載した。硬さHと内部硬さHとの比H/Hの評価については、硬さHの値が内部硬さHの値の1.1倍以下である記号Aの場合を合格と判定し、硬さHの値が内部硬さHの値の1.1倍を超える記号Bの場合を不合格と判定した。
<表面硬化層の表面硬さ>
ビッカース硬度計を用いてCVTリング部材の表面硬化層の表面硬さ[HV]を測定した。表2及び表3中の「表面硬さ」の欄には、表面硬化層の表面硬さが650HV以上の場合に記号「A」を記載し、650HV未満の場合に記号「B」を記載した。表面硬化層の表面硬さの評価においては、表面硬化層の表面硬さが650HV以上である記号Aの場合を合格と判定し、650HV未満である記号Bの場合を不合格と判定した。
<疲労寿命>
複数のローラを有する疲労試験機(図示略)を用いて疲労寿命を評価した。疲労試験機は、ローラを回転させることにより、複数のローラに掛け渡された試験体に繰り返し曲げ応力を加えることができるように構成されている。試験体が破断するまでに加えられた曲げ応力の繰り返し数を疲労寿命とし、表2及び表3中の「疲労寿命」の欄に、疲労寿命が5×106回以上の場合に記号「A+」、1×106回以上5×106回未満の場合に記号「A」、1×106回未満の場合に記号「B」を記載した。
疲労寿命の評価においては、疲労寿命が1×106回以上である記号A、A+の場合を合格と判定し、1×106回未満である記号Bの場合を不合格と判定した。なお、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材の疲労寿命は、通常1×106〜5×106回程度である。
Figure 2018172749
Figure 2018172749
Figure 2018172749
表1及び表2に示すように、本発明の実施例にあたる試験体1〜26は、上記特定の範囲の化学成分を有するCVTリング用鋼から構成されているため、CVTリング素材の引張強さ狙いとする値以上となった。また、これらの試験体は、圧延性指数Rの値が0を超えているため、CVTリング素材の製造過程において粗リング材に冷間圧延を行った後に、リング材の端部に割れが発生しなかった。
更に、窒化処理を行った後のCVTリング部材は、厚み方向断面における幅方向中央部での内部硬さやH/Hの値、表面硬化層の表面硬さが上記特定の範囲を満足しているため、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材と同等以上の疲労寿命を有している。以上の結果から、試験体1〜26は、優れた圧延性を有するとともに、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材と同等以上の強度特性及び疲労寿命を確保しつつ、マルエージング鋼よりも安価に提供可能であることが理解できる。
表1及び表3に示すように、比較例にあたる試験体27〜39において、試験体27は、Cの含有量が上記特定の範囲よりも少なかった。そのため、CVTリング素材としての引張強さが狙いの値よりも低かった。また、試験体27は、窒化処理後のCVTリング部材の内部硬さが狙いの値よりも低く、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも疲労寿命が劣っていた。
試験体28は、Cの含有量が上記特定の範囲よりも多く、かつ、圧延性指数Rが0以下であったため、圧延性に劣り、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。
試験体29は、Siの含有量が上記特定の範囲よりも多く、かつ、圧延性指数Rが0以下であったため、圧延性に劣り、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。
試験体30は、Crの含有量が上記特定の範囲よりも低かったため、CVTリング素材としての引張強さが狙いの値よりも低かった。また、試験体30は、窒化処理後のCVTリング部材の内部硬さが狙いの値よりも低く、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも疲労寿命が劣っていた。
試験体31は、Crの含有量が上記特定の範囲よりも多いため、圧延性指数Rが0以下となった。その結果、圧延性に劣り、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。また、試験体31の疲労寿命はマルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも劣っていた。
試験体32、33は、Moの含有量が上記特定の範囲よりも多く、かつ、圧延性指数Rが0以下であったため、圧延性に劣り、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。また、試験体32、33の疲労寿命はマルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも劣っていた。
試験体34は、Vの含有量が上記特定の範囲よりも多いため、圧延性指数Rが0以下となった。その結果、圧延性に劣り、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。
試験体35〜38は、任意に添加するAl、Ti、Nb、Zrのいずれかの含有量が上記特定の範囲よりも多かった。そのため、試験体36、37については、冷間圧延後のリング材の端部に割れが発生した。また、試験体35〜38の疲労寿命は総じてマルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも劣っていた。
試験体39は、任意に添加するNの含有量が上記特定の範囲よりも高かったため、疲労寿命がマルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材よりも劣っていた。
(実施例2)
本例は、CVTリング部材の製造過程において、焼戻し処理の条件や窒化処理の条件を変更した例である。本例においては、表1の合金記号Aに示す化学成分を有する鋳塊を準備し、焼戻し処理の条件や窒化処理の条件を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法によりCVTリング部材(試験体40〜47)を作製した。また、CVTリング部材の断面における内部硬さや表面硬化層の表面硬さ、硬さHと内部硬さHとの比H/Hの値及び疲労寿命を、実施例1と同一の方法により評価した。
Figure 2018172749
表4に示す試験体40のように、CVTリング部材は、焼戻し処理を行わなくてもマルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材と同等以上の疲労寿命を確保することができる。
焼戻し処理を行う場合には、試験体41、43、45、46に示すように、焼戻し温度を適正な範囲内とすることにより、マルエージング鋼からなる従来のCVTリング部材と同等以上の疲労寿命を確保することができる。
焼戻し温度が適正な範囲を外れた場合には、試験体44に示すように、かえって疲労寿命の悪化を招いた。
窒化処理時の窒化温度が適正な範囲よりも低い場合には、試験体42に示すように、表面硬化層の表面硬さの低下を招いた。
窒化処理時の窒化温度が適正な範囲よりも高い場合には、過剰窒化となり、試験体47に示すように、所望する硬さ特性を実現することができなかった。
1 CVTリング部材
10 CVTベルト
2 エレメント
3 動力伝達用ベルト

Claims (8)

  1. C:0.30質量%以上0.70質量%以下、Si:2.50質量%以下、Mn:1.00質量%以下、Cr:1.00質量%以上4.00質量%以下を含有し、下記式1の関係を満たし、残部がFe及び不可避的不純物よりなる化学成分を有する、CVTリング用鋼。
    式1:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−3.083×Cr(質量%)+35.472>0
  2. 上記CVTリング用鋼は、さらに、V:1.00質量%以下、Ni:4.00質量%以下及びMo:0.50質量%未満のうち1種または2種以上を含有し、下記式2の関係を満たしている、請求項1に記載のCVTリング用鋼。
    式2:−21.452×C(質量%)−3.580×Si(質量%)−7.772×Mn(質量%)−0.879×Ni(質量%)−3.083×Cr(質量%)−13.990×Mo(質量%)−4.625×V(質量%)+35.472>0
  3. 上記CVTリング用鋼は、さらに、Al:0.060質量%以下、Ti:0.10質量%以下、Nb:0.10質量%以下及びZr:0.20質量%以下からなる群のうち1種または2種以上と、N:0.006質量%以上0.030質量%以下とを含んでおり、Al、Ti、Nb及びZrからなる群のうち1種または2種以上の元素の窒化物または炭窒化物から構成され、Fe母相中に分散された第二相粒子を有している、請求項1または2に記載のCVTリング用鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載されたCVTリング用鋼から構成されており、
    引張強さが1500MPa以上であり、
    無端ベルト状を呈する、窒化用CVTリング素材。
  5. 請求項4に記載の窒化用CVTリング素材からなる母材の表面に表面硬化層が形成されており、
    厚み方向断面における、最表面から中心部へ0.03mmの深さにおける硬さH[HV]と、厚み方向中央部の内部硬さH[HV]とが、H≦1.1H、かつ、H≧450の関係を満たし、
    上記表面硬化層の表面硬さが650HV以上である、CVTリング部材。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のCVTリング用鋼の鋳塊を準備し、
    上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
    上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して粗リング材を作製し、
    上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施して板厚所望のリング材を作製し、
    上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行う、窒化用CVTリング素材の製造方法。
  7. 上記焼入処理の後、上記リング材を150〜250℃または400〜500℃のいずれかの範囲内に加熱して焼戻し処理を行う、請求項6に記載の窒化用CVTリング素材の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の製造方法により窒化用CVTリング素材を作製し、
    上記窒化用CVTリング素材に400〜500℃の温度で窒化処理を行う、CVTリング部材の製造方法。
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JP2020084216A (ja) * 2018-11-16 2020-06-04 愛知製鋼株式会社 環状鋼素材及びその製造方法

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