JP2020084216A - 環状鋼素材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】後に行う圧延、引き抜きその他の冷間加工によって、溶接部と溶接部以外の部分とにおいて溶接部の方が大となる寸法差が生じることを抑制することができる、中間材としての環状鋼素材及びその製造方法を提供すること。【解決手段】質量比において、C:0.30%〜0.43%、Cr:1.00%〜4.00%、V:0.10%〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、溶接部2を有する環状形状を有し、後に冷間加工が施されることが予定された環状鋼素材1aである。溶接部2の金属組織においては、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上であり、全炭化物の面積率が8.0%以上であり、かつ、結晶粒径が10μm以上であり、溶接部以外の部分(一般部)3の金属組織においては、全炭化物の面積率が15.0%以下であり、かつ、結晶粒径が35μm以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、溶接部を有する環状鋼素材及びその製造方法に関する。この環状鋼素材は、そのまま使用されるものではなく、溶接部を有する状態で圧延、引き抜きその他の冷間加工を加えることが予定された中間材であり、最終的にリング状あるいは筒状の部品に加工されるものである。
自動車は環境問題等から低燃費化が強く望まれており、最近の自動車用変速装置には燃費向上に有利なベルト式無段変速機(以下、適宜CVTという。)が多用されている。CVTに使用される動力伝達用ベルトとしては、金属ベルトが採用されている。具体的には、薄い板厚の金属ベルトを複数層重ねて1組のベルトを構成し、そのベルト2組にエレメントと呼ばれる摩擦部材を組み付けて使用される。CVTベルトは積層される複数の溶接リングで構成されており、確実な動力伝達やノイズ低減のため、溶接部を含めリングには高い寸法精度が求められる。
CVTリングを製造する工程としては文献1に示されたように、板状の鋼部材(帯鋼)を円弧状に成形し、両端の突合せ部分を溶接して筒状に加工し、その後、熱処理を施した後、寸法精度を向上させるため等の圧延加工を行うというものである。ここで、圧延加工を施した際に、溶接部の方が溶接部以外の部分よりも寸法(幅寸法あるいは厚み)が大きい状態になれば、部品の機能性を低下させるおそれがある。そのため、そのような寸法差が生じることは避けなければならない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、後に行う圧延、引き抜きその他の冷間加工によって、溶接部と溶接部以外の部分とにおいて溶接部の方が大となる寸法差が生じることを抑制することができる、中間材としての環状鋼素材及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、質量比において、C:0.30%〜0.43%、Cr:1.00%〜4.00%、V:0.10%〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、溶接部を有する環状形状を有し、後に冷間加工が施されることが予定された環状鋼素材であって、
上記溶接部の金属組織においては、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上であり、全炭化物の面積率が8.0%以上であり、かつ、結晶粒径が10μm以上であり、
上記溶接部以外の部分の金属組織においては、全炭化物の面積率が15.0%以下であり、かつ、結晶粒径が35μm以下である、環状鋼素材にある。
上記溶接部の金属組織においては、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上であり、全炭化物の面積率が8.0%以上であり、かつ、結晶粒径が10μm以上であり、
上記溶接部以外の部分の金属組織においては、全炭化物の面積率が15.0%以下であり、かつ、結晶粒径が35μm以下である、環状鋼素材にある。
本発明の他の態様は、上記環状鋼素材を製造する方法であって、
板状の基礎素材を環状に成形すると共に当接させた両端部を溶接して溶接部を有する環状鋼素材を得る成形・溶接工程と、
上記環状鋼素材に焼入れ処理及び焼戻し処理を施す熱処理工程とを有し、
上記焼入れ処理は、上記環状鋼素材をオーステナイト化温度以上まで昇温後、一定時間保持し、マルテンサイト変態開始温度まで10℃/min〜40℃/minの冷却速度で冷却する条件で行い、
上記焼戻し処理は、600℃〜760℃の温度条件で行う、環状鋼素材の製造方法にある。
板状の基礎素材を環状に成形すると共に当接させた両端部を溶接して溶接部を有する環状鋼素材を得る成形・溶接工程と、
上記環状鋼素材に焼入れ処理及び焼戻し処理を施す熱処理工程とを有し、
上記焼入れ処理は、上記環状鋼素材をオーステナイト化温度以上まで昇温後、一定時間保持し、マルテンサイト変態開始温度まで10℃/min〜40℃/minの冷却速度で冷却する条件で行い、
上記焼戻し処理は、600℃〜760℃の温度条件で行う、環状鋼素材の製造方法にある。
上記環状鋼素材は、上記特定の化学成分を有していると共に、溶接部の金属組織と溶接部以外の部分(以下、適宜、一般部という。)の金属組織が、上述したような特徴を有している。これにより、溶接部と一般部との硬度差を小さくすることができ、その後に圧延や引き抜き等の冷間加工を施しても、厚みや幅等の寸法の差を抑制することができる。
また、このような優れた環状鋼素材は、上記製造方法における熱処理工程の条件を特定の範囲に制限することによって製造が可能となる。
上記環状鋼素材の化学成分について、その限定理由を説明する。
C:0.30%〜0.43%、
C(炭素)は、焼戻し後の炭化物の量を制御するのに必要な元素である。C含有率が低すぎる場合は、炭化物の面積率が適正な範囲よりも低くなるため、0.30%を下限とする。C含有率が高すぎる場合は、硬さが高くなりすぎ、その後の冷間加工において割れ等が生じるおそれがあるため、0.43%を上限とする。
C:0.30%〜0.43%、
C(炭素)は、焼戻し後の炭化物の量を制御するのに必要な元素である。C含有率が低すぎる場合は、炭化物の面積率が適正な範囲よりも低くなるため、0.30%を下限とする。C含有率が高すぎる場合は、硬さが高くなりすぎ、その後の冷間加工において割れ等が生じるおそれがあるため、0.43%を上限とする。
Cr:1.00%〜4.00%、
Cr(クロム)は、焼戻し後の炭化物のサイズを制御するのに必要な元素である。Cr含有率が低すぎる場合は、炭化物のサイズが小さくなりすぎ、炭化物の存在状態が適正な範囲から外れるため、1.0%を下限とする。Cr含有率が高すぎる場合は、炭化物のサイズが大きくなりすぎ、その後の冷間加工において炭化物を起点とした割れ等が生じるため、4.0%を上限とする。
Cr(クロム)は、焼戻し後の炭化物のサイズを制御するのに必要な元素である。Cr含有率が低すぎる場合は、炭化物のサイズが小さくなりすぎ、炭化物の存在状態が適正な範囲から外れるため、1.0%を下限とする。Cr含有率が高すぎる場合は、炭化物のサイズが大きくなりすぎ、その後の冷間加工において炭化物を起点とした割れ等が生じるため、4.0%を上限とする。
V:0.10%〜1.00%、
V(バナジウム)は、溶接部以外の部位の結晶粒径を制御するのに必要な元素である。V含有率が低すぎる場合は、結晶粒径が粗大化し、組織が適した範囲から外れるため、0.10%を下限とする。また、V含有による効果は、1.00%を超えると飽和するため、1.0%を上限とする。
V(バナジウム)は、溶接部以外の部位の結晶粒径を制御するのに必要な元素である。V含有率が低すぎる場合は、結晶粒径が粗大化し、組織が適した範囲から外れるため、0.10%を下限とする。また、V含有による効果は、1.00%を超えると飽和するため、1.0%を上限とする。
次に、環状鋼素材の金属組織に関して説明する。
環状鋼素材の溶接部の金属組織においては、まず、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上である。金属組織中に粒径が0.15μmより小さい炭化物の個数が多いと析出強化効果が高くなりすぎ、その結果、溶接部の硬さが高くなりすぎるため、上記範囲に規定する。
環状鋼素材の溶接部の金属組織においては、まず、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上である。金属組織中に粒径が0.15μmより小さい炭化物の個数が多いと析出強化効果が高くなりすぎ、その結果、溶接部の硬さが高くなりすぎるため、上記範囲に規定する。
また、環状鋼素材の溶接部の金属組織においては、全炭化物の面積率が8.0%以上である。溶接部の金属組織中の全炭化物の面積率が8.0%未満の場合には、溶接部の硬さが高くなりすぎるため、8.0%を下限とする。
また、環状鋼素材の溶接部の金属組織においては、結晶粒径が10μm以上である。溶接部の結晶粒径が10μmより小さいと結晶粒微細化効果により硬さが高くなりすぎ、溶接部の方が一般部よりも硬くなるため、結晶粒径の下限を10μmとする。
次に、環状鋼素材の溶接部以外の部分(一般部)の金属組織においては、全炭化物の面積率が15.0%以下である。一般部における炭化物の面積率が15.0%より大きいと、製造工程における焼戻しの際に硬さが低くなりすぎ、溶接部との硬さの差が大きくなるため15.0%を上限とする。
また、環状鋼素材の溶接部以外の部分(一般部)の金属組織においては、結晶粒径が35μm以下である。一般部の結晶粒径が35μmより大きいと結晶粒粗大化の影響により硬さが低くなりすぎ、溶接部の方が硬くなるため、上限を35μmとする。
次に、環状鋼素材の製造方法についてより詳細に説明する。
環状鋼素材を製造するための板状の基礎素材としては、所望の厚みと幅を有する長方形の切り板、あるいは、長さに制限のない帯板のいずれを用いてもよい。環形状の中心軸方向の長さが短い形態の製品を製造する場合には、切り板を用いることが有利である。また、環形状の中心軸方向の長さが長い長尺の製品を作る場合には、帯板を用い、幅方向両端を順次当接させるよう成形しながら溶接する手法を採用することができる。
環状鋼素材を製造するための板状の基礎素材としては、所望の厚みと幅を有する長方形の切り板、あるいは、長さに制限のない帯板のいずれを用いてもよい。環形状の中心軸方向の長さが短い形態の製品を製造する場合には、切り板を用いることが有利である。また、環形状の中心軸方向の長さが長い長尺の製品を作る場合には、帯板を用い、幅方向両端を順次当接させるよう成形しながら溶接する手法を採用することができる。
溶接方法としては、プラズマ溶接、レーザー溶接その他の種々の溶接方法を採用することができる。
そして、成形・溶接工程を経て得られた環状鋼素材には、焼入れ処理及び焼戻し処理が施される。焼入れ処理は、環状鋼素材をオーステナイト化温度以上まで昇温後、一定時間保持した後冷却する。オーステナイト化温度以上での保持時間は、環状鋼素材の大きさ及び厚み等によって適正時間が異なる。
オーステイナイト化した後の冷却は、マルテンサイト変態開始温度まで10℃/min〜40℃/minの冷却速度で冷却するという条件で行う。冷却速度がこの範囲内であれば、溶接部と一般部の硬度差を一定以下にすることができる。冷却速度が遅すぎる場合は完全マルテンサイト変態とならず、硬さを均一化できないため10℃/minを下限とする。冷却速度が速すぎる場合は溶接部の硬さが硬くなりすぎ、一般部との硬さの差が大きくなるため、40℃/minを上限とする。好ましくは、10℃/min〜20℃/minとするのがよい。
焼入れ処理の後に行う焼戻し処理は、600℃〜760℃の温度条件で行う。焼戻し温度がこの範囲内であれば、熱処理後の環状鋼素材の硬さが十分に低くなり、圧延その他の冷間加工を行うことができる。焼戻し温度が低いと十分に焼戻しがされず、熱処理後の硬さが高すぎ、冷間加工ができなくなるおそれがあるため600℃を下限とし、好ましくは680℃以上とする。一方、焼戻し温度が高すぎるとオーステナイト化した後、その後の冷却時に組織の一部がマルテンサイトとなって硬さが高くなりすぎる場合があり、その場合には冷間加工ができなくなるおそれがあるため760℃を上限とする。
上記環状鋼素材の実施例につき、比較例と共に説明する。まず、表1に示す化学成分(Fe以外の添加成分のみ記載)を有する複数の素材(試験No.1〜21(試験No.1〜12は実施例、試験No.13〜21は比較例)を準備し、以下の製造方法にて環状鋼素材を作製した。
まず、30kgVIMを用いて所定成分の鋳塊を作製した。得られた鋳塊に鍛伸加工を加えておよその寸法が長さ300mm×幅155mm×厚さ7mmの板材を製造した。さらに、得られた板材を機械加工にて黒皮を除去した後、冷間圧延して、およその寸法が長さ500mm×幅200mm×厚さ0.4mmの板材を得た。
得られた板材は約300mmの長さに切断後、ロール曲げ加工を施した。その後、図1(a)に示すごとく、長手方向の端面同士を突き合わせ溶接して溶接部2を有する円筒形状の環状鋼素材1aを得た。図1(b)に示すごとく、この環状鋼素材1aに、焼入れ処理及び焼戻し処理を施した後、幅方向で2分割するよう切断し、100mm幅の環状鋼素材1bを得た。その後、100mm幅の環状鋼素材1bに研磨を施して切断時に生じたバリを除去した。
上記焼入れ処理は、環状鋼素材1aをオーステナイト化温度以上の920℃に1時間保持した後、アルゴンガス流量を制御することにより表1に記載の冷却速度で冷却することにより実施した。その後の焼戻し処理の処理温度は、表1に記載の焼戻し温度に設定した。
得られた環状鋼素材1aについて、溶接部2及び一般部3の金属組織上の評価と、溶接部2及び一般部3の硬度差の評価を行った。さらに、図1(c)に示すごとく、100mm幅の環状鋼素材1bに冷間圧延を施して筒状部品10を作製し、圧延性(冷間加工性)及び圧延後における溶接部20と一般部30の寸法差の評価を行った。
<炭化物面積率及び炭化物粒径>
環状鋼素材(冷間圧延前)1aを厚み方向に切断し、その断面を鏡面研磨後、ピクラールでエッチングした後、走査型電子顕微鏡で平均的な視野を10000倍で撮影し、画像解析にて、炭化物面積率、炭化物粒径を定量化した。
環状鋼素材(冷間圧延前)1aを厚み方向に切断し、その断面を鏡面研磨後、ピクラールでエッチングした後、走査型電子顕微鏡で平均的な視野を10000倍で撮影し、画像解析にて、炭化物面積率、炭化物粒径を定量化した。
溶接部2においては、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上である場合を合格(○)、50%未満である場合を不合格(×)と評価し、全炭化物の面積率が8.0%以上である場合を合格(○)、8.0%未満である場合を不合格(×)と評価した。結果は表1に示す。
一般部3においては、全炭化物の面積率が15.0%以下である場合を合格(○)、15.0%を超える場合を不合格(×)と評価した。結果は表1に示す。
<結晶粒径>
結晶粒径は、環状鋼素材(冷間圧延前)1aを厚み方向に切断し、切断法を用いて定量化した。切断法は、ASTMに準拠するものであり、金属組織を撮影した写真上に既知の長さの直線を引き、これと交わる粒の数から計算する方法である。具体的には、界面活性剤を入れた塩酸ピクリン酸水溶液により環状素材の任意断面をエッチングして得られた、窒化層を含まない面の結晶粒径を光学顕微鏡によって観察し、任意の10視野における倍率1000倍の写真を得る。次に各写真上に、任意の長さL(mm)の直線を引き、この直線と交わる結晶粒の数nを求める。直線の長さL(mm)の値は、実際のスケールを考慮して、L’(μm)に換算する。そして、L’/n(μm)を計算し、これを結晶粒径とする。そして、10枚の写真から得られた10個の結晶粒径の値の平均値を、最終的な結晶粒径の値として採用した。
結晶粒径は、環状鋼素材(冷間圧延前)1aを厚み方向に切断し、切断法を用いて定量化した。切断法は、ASTMに準拠するものであり、金属組織を撮影した写真上に既知の長さの直線を引き、これと交わる粒の数から計算する方法である。具体的には、界面活性剤を入れた塩酸ピクリン酸水溶液により環状素材の任意断面をエッチングして得られた、窒化層を含まない面の結晶粒径を光学顕微鏡によって観察し、任意の10視野における倍率1000倍の写真を得る。次に各写真上に、任意の長さL(mm)の直線を引き、この直線と交わる結晶粒の数nを求める。直線の長さL(mm)の値は、実際のスケールを考慮して、L’(μm)に換算する。そして、L’/n(μm)を計算し、これを結晶粒径とする。そして、10枚の写真から得られた10個の結晶粒径の値の平均値を、最終的な結晶粒径の値として採用した。
溶接部2においては、結晶粒径が10μm以上である場合を合格(○)、10μm未満の場合を不合格(×)と評価した。結果は表1に示す。
一般部3においては、結晶粒径が35μm以下である場合を合格(○)、35μm未満の場合を不合格(×)と評価した。結果は表1に示す。
<硬度差>
環状鋼素材(冷間圧延前)1aの溶接部2と一般部3の硬度差ΔHVは、溶接部2と溶接部以外の部分である一般部3をマイクロビッカース硬度計(F:100g)で5点測定した平均値を用いて評価した。硬度差ΔHVは、溶接部2の平均硬度Aと一般部3の平均硬度Bとの差(A−B)の値と定義し、硬度差ΔHV(A−B)≦5を合格(○)とした。
環状鋼素材(冷間圧延前)1aの溶接部2と一般部3の硬度差ΔHVは、溶接部2と溶接部以外の部分である一般部3をマイクロビッカース硬度計(F:100g)で5点測定した平均値を用いて評価した。硬度差ΔHVは、溶接部2の平均硬度Aと一般部3の平均硬度Bとの差(A−B)の値と定義し、硬度差ΔHV(A−B)≦5を合格(○)とした。
<冷間圧延後の幅寸法差>
環状鋼素材1bに対して、圧下率が50%になるように冷間圧延を施し、0.2mm厚みの筒状部品10を得た。そして、この筒状部品10における溶接部20とそれ以外の部分である一般部30において、圧延後の幅寸法をそれぞれマイクロメーターを用いて測定した。幅寸法差ΔDは、溶接部20の幅寸法aと、一般部30の幅寸法bとの差(a−b)の値と定義し、幅寸法差ΔD(a−b)≦0μmを合格とした。結果は表1に示す。
環状鋼素材1bに対して、圧下率が50%になるように冷間圧延を施し、0.2mm厚みの筒状部品10を得た。そして、この筒状部品10における溶接部20とそれ以外の部分である一般部30において、圧延後の幅寸法をそれぞれマイクロメーターを用いて測定した。幅寸法差ΔDは、溶接部20の幅寸法aと、一般部30の幅寸法bとの差(a−b)の値と定義し、幅寸法差ΔD(a−b)≦0μmを合格とした。結果は表1に示す。
<圧延性>
上記と同様に、環状鋼素材1bに対して、圧下率が50%になるように冷間圧延を施し、0.2mm厚みの筒状部品10を得た。そして、この筒状部品10における側端部全長を50倍の拡大鏡を用いて目視で観察し、割れが無いものを合格(◎)、軽微なワレが発生したものも合格(○)、圧延中に破断したものを不合格(×)とした。結果は表1に示す。
上記と同様に、環状鋼素材1bに対して、圧下率が50%になるように冷間圧延を施し、0.2mm厚みの筒状部品10を得た。そして、この筒状部品10における側端部全長を50倍の拡大鏡を用いて目視で観察し、割れが無いものを合格(◎)、軽微なワレが発生したものも合格(○)、圧延中に破断したものを不合格(×)とした。結果は表1に示す。
表1に示されているように、実施例1〜12については、冷間加工性が良好で、幅寸法差については、溶接部20の方が一般部30よりも大きくなることはなく、良好であった。
これに対し、比較例13は、化学成分についてC含有率が低すぎるために、溶接部2における全炭化物の面積率が低くなりすぎたため、溶接部2と一般部3との硬度差が5HVを超え、その結果、圧延後に幅寸法差が不合格となった。
比較例14は、化学成分についてC含有率が高すぎるために、一般部3の硬さが高くなりすぎたため、圧延性が大きく低下し、圧延時に破断して不合格となった。
比較例15は、化学成分についてCr含有率が高すぎるために、圧延性が大きく低下し、圧延時に破断して不合格となった。
比較例16は、化学成分についてCr含有率が低すぎるために、溶接部2における粒径が0.15μm以上の炭化物の個数の割合が低下し、溶接部2の硬度が高くなりすぎ、溶接部2と一般部3との硬度差が5HVを超え、その結果、圧延後に幅寸法差が不合格となった。
比較例17は、化学成分についてV含有率が低すぎるために、一般部3における結晶粒径が大きくなりすぎ、溶接部2と一般部3との硬度差が5HVを超え、その結果、圧延後に幅寸法差が不合格となった。
比較例18は、焼入れ処理における冷却速度が低すぎたために、焼入性の高い溶接部2がマルテンサイト化したため、溶接部2と一般部3との硬度差が5HVを超え、その結果、圧延後に幅寸法差が不合格となった。
比較例19は、焼入れ処理における冷却速度が高すぎたために、溶接部2における粒径が0.15μm以上の炭化物の個数の割合が低下し、溶接部2の硬度が高くなりすぎ、溶接部2と一般部3との硬度差が5HVを超え、その結果、圧延後に幅寸法差が不合格となった。
比較例20は、焼戻し処理の温度が低すぎたために、全体の硬度が高く、圧延性が大きく低下し、圧延時に破断して不合格となった。
比較例21は、焼戻し処理の温度が高すぎたために、焼戻し処理後の組織が不均一になったため、圧延性が大きく低下し、圧延時に破断して不合格となった。
1a、1b 環状鋼素材
10 筒状部品
2 溶接部
20 溶接部
3 一般部(溶接部以外の部分)
30 一般部(溶接部以外の部分)
10 筒状部品
2 溶接部
20 溶接部
3 一般部(溶接部以外の部分)
30 一般部(溶接部以外の部分)
Claims (3)
- 質量比において、C:0.30%〜0.43%、Cr:1.00%〜4.00%、V:0.10%〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、溶接部を有する環状形状を有し、後に冷間加工が施されることが予定された環状鋼素材であって、
上記溶接部の金属組織においては、粒径が0.15μm以上の炭化物の個数が全炭化物個数の50%以上であり、全炭化物の面積率が8.0%以上であり、かつ、結晶粒径が10μm以上であり、
上記溶接部以外の部分の金属組織においては、全炭化物の面積率が15.0%以下であり、かつ、結晶粒径が35μm以下である、環状鋼素材。 - 請求項1に記載の環状鋼素材を製造する方法であって、
板状の基礎素材を環状に成形すると共に当接させた両端部を溶接して溶接部を有する環状鋼素材を得る成形・溶接工程と、
上記環状鋼素材に焼入れ処理及び焼戻し処理を施す熱処理工程とを有し、
上記焼入れ処理は、上記環状鋼素材をオーステナイト化温度以上まで昇温後、一定時間保持し、マルテンサイト変態開始温度まで10℃/min〜40℃/minの冷却速度で冷却する条件で行い、
上記焼戻し処理は、600℃〜760℃の温度条件で行う、環状鋼素材の製造方法。 - 上記焼戻し処理は、680℃〜760℃の温度条件で行う、請求項2に記載の環状鋼素材の製造方法。
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