JP7464900B1 - 継目無鋼管及び継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

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Abstract

全肉厚での強度と切削後の状態での強度との差が小さい継目無鋼管を提供する。継目無鋼管は、所定の化学組成を有し、下記の式(1)で表されるFn1が0.44以上であり、肉厚中央部におけるASTM E112-13(2021)による結晶粒度番号が6.0以上であり、管軸方向に垂直な断面において、鋼管外面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDos、鋼管内面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDis、肉厚中央部における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDcとし、NDos/NDc及びNDis/NDcの各々が0.60以上である。Fn1=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)式(1)中の各元素記号には対応する元素の含有量が質量%で代入される。

Description

本発明は、継目無鋼管及び継目無鋼管の製造方法に関する。
陸上及び浅海の油井及びガス井は近年枯渇しつつあり、深海の海底油井及び海底ガス井(以下「深海フィールド」という。)の開発が活発化している。深海フィールドにおける流体輸送には、高外圧に対する強度確保や、高温の生産流体に対する強度低下を補完する観点から、厚肉のラインパイプが使用される。
国際公開第2013/161567号には、厚肉であっても、高い強度及び靱性を有する継目無鋼管が記載されている。この継目無鋼管は、質量%で、C:0.03~0.08%等を含有し、50mm以上の肉厚を有し、表層部における旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が80μm未満であり、表層部における旧オーステナイト粒の平均結晶粒径と肉厚中央部における旧オーステナイト粒の平均結晶粒径との差が50μm未満である。
国際公開第2015/019708号には、表面硬度を低く抑えた高強度かつ高靱性のラインパイプ用継目無鋼管が記載されている。このラインパイプ用継目無鋼管は、質量%で、C:0.03~0.10%、Ni:0.04~2.0%等を含有し、鋼管の表面に形成したスケール中に、平均円相当直径0.1~5μmのNi又はCuを主体とする金属粒子が存在し、鋼管の母材とスケールとの境界から金属粒子が存在しなくなる領域までの距離が20μm以上である。
国際公開第2017/141341号には、555MPa以上の降伏強度と優れた耐SSC性とを安定して得られる継目無鋼管が記載されている。この継目無鋼管は、質量%で、C:0.02~0.15%等を含有し、炭素当量Ceqが0.430%以上0.500%未満であり、組織の旧オーステナイト粒の大きさがASTM E112-10に準拠した結晶粒度番号で6.0未満であり、内面から1mmの位置と外面から1mmの位置との間において、ビッカース硬さが250Hv以下である。
国際公開第2017/018108号には、表層部の硬度が低減されたラインパイプ用鋼管が記載されている。このラインパイプ用鋼管は、質量%で、C:0.02~0.11%等を含有し、組織が、焼戻しマルテンサイト及び/又は焼戻しベイナイトを含み、鋼管の外面と外面から1mmの位置との間、及び鋼管の内面と内面から1mmの位置との間の少なくとも一方に、さらにフェライトを含むものである。
国際公開第2018/020972号には、溶接性を確保しつつ、高強度と低硬度とを安定して両立させることが可能な高強度継目無鋼管が記載されている。この高強度継目無鋼管は、質量%で、C:0.10~0.18%、B:0.0005~0.005%等を含有し、C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B≦0.28を満たす。
国際公開第2013/161567号 国際公開第2015/019708号 国際公開第2017/141341号 国際公開第2017/018108号 国際公開第2018/020972号
深海フィールド開発の活性化に伴い、浮上式のプラットフォーム(フローティングタイププラットフォーム)の採用が増加している。図1は、フローティングタイププラットフォームによる深海フィールド開発を模式的に示す図である。ラインパイプ10は、海底面の地勢に沿って敷設されるフローライン11と、海底面から洋上のプラットフォームPFに向かって立ち上がって配置されるライザー12とを含んでいる。フローティングタイププラットフォームによる開発では、ラインパイプ10は常に潮流や波浪によって揺動する。そのため、特にライザー12において、周溶接部の疲労特性を確保することが重要となる。
ラインパイプは、鋼管の管端同士を突き合わせ、突き合わせた部分を周溶接して使用される。図2は、鋼管P1の管端と鋼管P2の管端とを突き合わせた状態を模式的に示す断面図である。図2に示すように、鋼管P1の管端と鋼管P2の管端との間に内径差Δがあると、周溶接後、繰り返し応力による疲労き裂が発生しやすくなる。周溶接部の疲労特性を確保するためには、内径差Δを小さく管理すること、すなわち、鋼管製造時の管端内径の狭公差管理が求められる。
内径差Δを小さくするための手段として、NC旋盤を用いた管端内面の切削(管端内削又は中ぐり)による管端精整が行われる場合がある。また、併せて管端外面の切削も行われる場合がある。切削後の鋼管は内面層(場合によっては内面層及び外面層)が除去された状態となる。ここで仮に、全肉厚(製造まま)での強度と、切削後の状態での強度とに差異があると、パイプライン設計上の不安定要素となるため好ましくない。一方、現在主流の規格で要求される出荷試験は全厚の鋼管を想定したものであり、切削後の状態の強度に着目した評価は行われていない。
本発明の課題は、全肉厚での強度と切削後の状態での強度との差が小さい継目無鋼管、及びその製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による継目無鋼管は、質量%で、C:0.030~0.100%、Si:0.05~0.50%、Mn:0.30~1.70%、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、Al:0.001~0.100%、N:0.0200%以下、Cr:0.05~0.30%、Mo:0.05~0.23%、Cu:0.10~0.50%、Ni:0.20~0.50%、V:0.01~0.10%、Nb:0~0.020%、Ti:0~0.020%、B:0~0.0005%、Ca:0~0.0060%、残部:Fe及び不純物、である化学組成を有し、下記の式(1)で表されるFn1が0.44以上であり、肉厚中央部におけるASTM E112-13(2021)による結晶粒度番号が6.0以上であり、対象元素をV、Nb、Ti、Mo及びAlとしてエネルギー分散型X線分析法による定量分析を行い、V含有量が30質量%以上である粒子をV含有粒子とし、管軸方向に垂直な断面において、鋼管外面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDos、鋼管内面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDis、肉厚中央部における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDcとし、NDos/NDc及びNDis/NDcの各々が0.60以上である。
Fn1=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)
式(1)中の各元素記号には対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による継目無鋼管の製造方法は、上記の継目無鋼管を製造する方法であって、前記化学組成を有する素管を準備する工程と、前記素管を焼入れする工程と、前記焼入れされた素管を焼戻しする工程と、を備え、前記焼入れする工程は、400℃から600℃までの温度域を5℃/分以下の平均昇温速度で600℃以上の温度に前記素管を加熱する工程と、600℃からAc点以上の温度である保持温度までの温度域を10℃/分以上の平均昇温速度で前記保持温度に前記素管を加熱する工程と、前記素管を前記保持温度で10分以上60分以下の時間保持する工程と、前記保持温度に保持した前記素管を冷却する工程と、を含む。
本発明によれば、全肉厚での強度と切削後の状態での強度との差が小さい継目無鋼管が得られる。
図1は、フローティングタイププラットフォームによる深海フィールド開発を模式的に示す図である。 図2は、二つの鋼管の管端を突き合わせた状態を模式的に示す断面図である。 図3は、弧状試験片の採取位置を模式的に示す図である。 図4は、丸棒試験片の採取位置を模式的に示す図である。
継目無鋼管は、製管後、焼入れ焼戻しの熱処理を施されて製造される。厚肉の鋼管(例えば、肉厚が40.0mm以上の鋼管)では、肉厚方向に均一な焼入れをすることが困難になり、肉厚中央部は組織が粗粒になりやすくなる。ホール・ペッチ則により、粗粒組織では降伏強度が低下するため、肉厚中央部は内外面近傍と比較して強度が低くなりやすい。そのため、全肉厚での強度と、切削後の状態での強度とに差異が生じる場合がある。
バナジウムは、オーステナイトに固溶することで、焼入れ性の向上に大きく寄与する元素である。一方、バナジウムが鋼中に炭化物(VC)等の粒子(以下「V含有粒子」という。)の形で残存すると、焼入れ性向上の効果は発揮されない。そのため、鋼管の組織を肉厚方向に均一にするためには、V含有粒子を肉厚方向の全体にわたって均一に固溶させ、肉厚方向のV含有粒子の分布を均一にすることが有効である。具体的には、肉厚中央部におけるV含有粒子の数密度に対する、内外面近傍におけるV含有粒子の数密度の比を0.60以上にすることが有効である。
V含有粒子を肉厚方向の全体にわたって均一に固溶させるためには、焼入れの加熱の際、400℃から600℃までの温度域の平均昇温速度を5℃/分以下に制限することが有効である。これによって、鋼管の肉厚中央部まで十分な予熱を与え、その後の昇温において、V含有粒子の均一な固溶を促進することができる。
なお、V含有粒子を肉厚方向の全体にわたって均一に固溶させる方法としては、高温で長時間保持することも考えられる。しかしその場合、オーステナイト粒が粗大化し、必要な強度を達成することが困難になる。上記のように、400℃から600℃までの温度域の昇温速度を制限する方法であれば、オーステナイト粒の粗大化を抑制しつつ、肉厚方向のV含有粒子の分布を均一にすることができる。
本発明は、以上の知見に基づいて完成された。以下、本発明の一実施形態による継目無鋼管及びその製造方法を説明する。
[継目無鋼管]
[化学組成]
本実施形態による継目無鋼管は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.030~0.100%
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高める。一方、C含有量が高すぎると、鋼の溶接性が低下する。そのため、C含有量は0.030~0.100%である。C含有量の下限は、好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.045%であり、さらに好ましくは0.050%である。C含有量の上限は、好ましくは0.098%であり、さらに好ましくは0.095%であり、さらに好ましくは0.090%であり、さらに好ましくは0.085%である。
Si:0.05~0.50%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。一方、Si含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Si含有量は0.05~0.50%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%である。
Mn:0.30~1.70%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高める。一方、Mn含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Mn含有量は0.30~1.70%である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは1.00%であり、さらに好ましくは1.10%である。Mn含有量の上限は、好ましくは1.65%であり、さらに好ましくは1.60%である。
P:0.020%以下
リン(P)は不純物である。Pは鋼の靱性を低下させる。そのため、P含有量は0.020%以下である。P含有量はできるだけ低い方が好ましい。P含有量は、好ましくは0.018%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。
S:0.0050%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の靱性を低下させる。そのため、S含有量は0.0050%以下である。S含有量はできるだけ低い方が好ましい。S含有量は、好ましくは0.0040%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下であり、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Al:0.001~0.100%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはまた、微細な析出物を形成して鋼の靱性の向上に寄与する。一方、Al含有量が高すぎると、析出物が粗大化して鋼の靱性が低下する。そのため、Al含有量は0.001~0.100%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.015%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.060%である。なお、本明細書におけるAlは、酸可溶性アルミニウム(sol.Al)を意味する。
N:0.0200%以下
窒素(N)は不純物である。N含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、N含有量は0.0200%以下である。N含有量の上限は、好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%である。一方、N含有量を過剰に制限しようとするとコストが増加する。N含有量の下限は、好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
Cr:0.05~0.30%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。一方、Cr含有量が高すぎると、鋼の靱性及び溶接性が低下する。そのため、Cr含有量は0.05~0.30%である。Cr含有量の下限は、好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cr含有量の上限は、好ましくは0.28%であり、さらに好ましくは0.25%である。
Mo:0.05~0.23%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高める。一方、Mo含有量が高すぎると、鋼の溶接性及び靱性が低下する。そのため、Mo含有量は0.05~0.23%である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.12%である。Mo含有量の上限は、好ましくは0.22%であり、より好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.18%である。
Cu:0.10~0.50%
銅(Cu)は、鋼の焼入れ性を高める。一方、Cu含有量が高すぎると、鋼の溶接性及び熱間加工性が低下する。そのため、Cu含有量は0.10~0.50%である。Cu含有量の下限は、好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Cu含有量の上限は、好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Ni:0.20~0.50%
ニッケル(Ni)は、鋼の焼入れ性及び靱性を高める。一方、Ni含有量が高すぎると、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。そのため、Ni含有量は0.20~0.50%である。Ni含有量の下限は、好ましくは0.22%であり、さらに好ましくは0.25%である。Ni含有量の上限は、好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
V:0.01~0.10%
バナジウム(V)は、鋼の焼入れ性を高める。Vはまた、微細な炭化物(VC)として析出して、鋼の強度を向上させる効果も有する。一方、V含有量が高すぎると、炭化物が粗大化して鋼の靱性が低下する。そのため、V含有量は0.01~0.10%である。V含有量の下限は、好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。V含有量の上限は、好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.06%であり、さらに好ましくは0.05%である。
本実施形態による継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入される元素、あるいは製造過程の環境等から混入される元素をいう。
[任意元素について]
本実施形態による継目無鋼管の化学組成は、Feの一部に代えて、以下に説明するA群、B群及びC群からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。以下に説明する元素は、いずれも任意元素である。すなわち、本実施形態による継目無鋼管は、これらの元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。
[A群]
Nb:0~0.020%、及び、
Ti:0~0.020%
[B群]
B :0~0.0005%
[C群]
Ca:0~0.0060%
[A群]Nb:0~0.020%及びTi:0~0.020%からなる群から選択される1種又は2種
ニオブ(Nb)及びチタン(Ti)は、微細な析出物を形成して鋼の靱性及び強度を向上させる。そのため、必要に応じてNb及びTiの1種又は2種を含有させてもよい。Nb及びTiのいずれかが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Nb及びTiの含有量が高すぎると、析出物が粗大化して鋼の靱性が低下する。そのため、Nb及びTiの各々の含有量は、0.020%以下である。
Nb含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、より好ましくは0.002%であり、より好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
Ti含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、より好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.004%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.010%である。
[B群]B:0~0.0005%
ホウ素(B)は、鋼の焼入れ性を向上させる。そのため、必要に応じて含有させてもよい。Bが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、B含有量が高すぎると、鋼の溶接性が低下する。そのため、B含有量は0.0005%以下である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。B含有量の上限は、好ましくは0.0004%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
[C群]Ca:0~0.0060%
カルシウム(Ca)は、MnSの形成を抑制して鋼の靱性及び耐水素誘起割れ性を向上させる。そのため、必要に応じて含有させてもよい。Caが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Ca含有量が高すぎると、鋼の清浄度が低下し、鋼の靱性及び耐水素誘起割れ性が低下する。したがって、Ca含有量は0.0060%以下である。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.0055%であり、より好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
[Fn1について]
本実施形態による継目無鋼管は、下記の式(1)で表されるFn1が0.44以上である。
Fn1=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)
式(1)中の各元素記号には対応する元素の含有量が質量%で代入される。
Fn1は、炭素当量であり、鋼の焼入れ性の指標である。Fn1が小さすぎると、肉厚中央部まで強度の高い組織にすることが困難になる。そのため、Fn1は0.44以上である。Fn1の下限は、好ましくは0.45であり、さらに好ましくは0.46である。一方、Fn1が大きすぎると、溶接性が低下する場合がある。Fn1の上限は、好ましくは0.55であり、さらに好ましくは0.50であり、さらに好ましくは0.48である。
[Fn2について]
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、下記の式(2)で表されるFn2が0.070以下である。
Fn2=V+Ti+Nb (2)
式(2)中の各元素記号には対応する元素の含有量が質量%で代入される。対応する元素を含有しない場合には0が代入される。
V、Ti及びNbは、いずれも微細な析出物を形成して、鋼の強度を高める元素である。これらの元素の含有量が高すぎると、鋼の強度をAPI規格のX65グレードの範囲にすることが困難になる場合があるとともに、溶接後の鋼の靱性を劣化させる懸念がある。そのため、Fn2は0.070以下であることが好ましい。Fn2の上限は、より好ましくは0.065であり、さらに好ましくは0.060である。Fn2の下限は、特に限定されないが、例えば0.020であり、好ましくは0.025であり、より好ましくは0.030であり、さらに好ましくは0.040である。
[組織]
本実施形態による継目無鋼管は、肉厚中央部におけるASTM E112-13(2021)による結晶粒度番号が6.0以上である。結晶粒度番号が大きいほど、結晶粒が微細であることを意味する。結晶粒度番号が小さすぎると、必要な強度が得られない。結晶粒度番号は、好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7.0以上であり、さらに好ましくは7.5以上である。一方、結晶粒度番号が大きすぎると、鋼の強度をAPI規格のX65グレードの範囲にすることが困難になる場合がある。結晶粒度番号の上限は、好ましくは10.0であり、さらに好ましくは9.5であり、さらに好ましくは9.0であり、さらに好ましくは8.5である。
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、肉厚方向の全体にわたって、焼戻しマルテンサイト又はベイナイトを主体とする組織を有する。本実施形態による継目無鋼管は、より具体的には、内外面の近傍、及び肉厚中央部のいずれにおいても、焼戻しマルテンサイト又はベイナイトの体積率が90%以上である組織を有することが好ましい。焼戻しマルテンサイト又はベイナイトの体積率は、より好ましくは95%以上である。
本実施形態による継目無鋼管は、肉厚中央部のV含有粒子の数密度に対する内外面近傍のV含有粒子の数密度の比が、0.60以上である。本実施形態による継目無鋼管は、より具体的には、対象元素をV、Nb、Ti、Mo及びAlとしてエネルギー分散型X線分析法による定量分析を行い、V含有量が30質量%以上である粒子をV含有粒子とし、管軸方向に垂直な断面において、鋼管外面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDos、鋼管内面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDis、肉厚中央部おける円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDcとし、NDos/NDc及びNDis/NDcの各々が0.60以上である。
バナジウムは、オーステナイトに固溶することで、焼入れ性の向上に大きく寄与する元素である。一方、バナジウムが鋼中に炭化物(VC)等の粒子の形で残存すると、焼入れ性向上の効果は発揮されない。そのため、鋼管の組織を肉厚方向に均一にするためには、肉厚方向のV含有粒子の分布を均一にすることが好ましい。NDos/NDc及びNDis/NDcの各々が0.60以上であれば、肉厚方向に均一な組織が得られる。NDos/NDc及びNDis/NDcの各々の下限は、好ましくは0.65であり、さらに好ましくは0.70であり、さらに好ましくは0.75である。NDos/NDc及びNDis/NDcの各々の上限は、特に限定されないが、例えば1.50であり、好ましくは1.20であり、さらに好ましくは1.10であり、さらに好ましくは1.05であり、さらに好ましくは1.00である。
NDos、NDis及びNDcは、次のように測定する。
鋼管外面から2mmの深さの位置、鋼管内面から2mmの深さの位置、及び肉厚中央部から試験片を採取する。鋼管の管軸方向に垂直な面を観察面とし、試験片の観察面を鏡面研磨した後、メタノール中で超音波洗浄する。洗浄した表面を、カーボン蒸着膜で覆う。蒸着膜で表面を覆った試験片を、20℃の電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メタノール溶液)に浸漬して、10分間電解を実施する。電解条件は、電圧:100mV、電解量:10C/cmとする。電解した試験片から、蒸着膜を剥離する。得られた蒸着膜をエタノールで洗浄した後、シートメッシュですくい取り、乾燥する。
この蒸着膜(レプリカ膜)を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察する。具体的には、蒸着膜を観察倍率2万倍、加速電圧200kVで観察する。なお、観察視野の大きさ、及び、観察視野の数は特に限定されないが、観察視野の総面積は100μm以上とする。例えば、観察視野が4.0μm×5.0μmである場合、観察視野の数を5以上とし、観察視野の総面積を100μm以上とする。
各観察視野において、円相当径が10~100nmの粒子を特定する。粒子は、コントラストから特定可能である。本明細書において、「粒子」とは、円形(球形)の粒子に限定されず、角形状を有している小片であってもよく、延伸した楕円形の小片であってもよい。また、析出物の円相当径(円相当直径)は、TEM観察における観察画像を画像解析することによって求めることができる。
特定した粒子に対して、エネルギー分散型X線分析法(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)による点分析を行う。EDSの点分析により、各粒子中に含まれる元素の含有量を求める。EDSの点分析では、加速電圧を200kVとし、対象元素をV、Nb、Ti、Mo及びAlとして定量する。円相当径が100nm以下の各粒子に対するEDS分析結果に基づいて、質量%で、V含有量が30%以上である粒子をV含有粒子と特定する。すなわち、V、Nb、Ti、Mo及びAlの質量の合計に対するVの質量の割合が30%以上である粒子をV含有粒子と特定する。
上述した分析方法では、レプリカ試料を用いていることに加えて、軽元素であるCをEDSで正確に分析することが困難であるため、分析対象元素からCを除外している。そのため上述した分析方法では、V含有粒子が炭化物であるかは厳密には特定できない。一方、本実施形態による継目無鋼管の化学組成において、円相当径が100nm以下という条件の下では、上記のように特定されるV含有粒子は、ほぼ全てVの炭化物(VC)又は複合炭化物であると考えられる。
各観察視野で特定されたV含有粒子の総個数と、観察視野の総面積とに基づき、V含有粒子の数密度(個/μm)を求める。なお、本実施形態では、V含有粒子の数密度は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
鋼管中に存在するV含有粒子の円相当径は、100nm以下であることが好ましい。すなわち、鋼管中には円相当径が100nmを超えるV含有粒子が存在しないことが好ましい。
[機械的特性等]
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、肉厚中央部から採取した、ASTM E8/E8M-21に規定された丸棒試験片(平行部直径:12.7mm、標点距離:50.8mm。以下この試験片を「平行部直径12.7mmの丸棒試験片」という。)で測定した管軸方向引張試験(以下「L方向引張試験」という。)での降伏強度が450MPa以上である。降伏強度は、0.5%全伸び法によって求めた値とする。
図3及び図4はそれぞれ、弧状試験片及び丸棒試験片の採取位置を模式的に示す図である。厚肉の鋼管では、肉厚中央部は組織が粗粒になりやすく、内外面近傍と比較して強度が低くなりやすい。そのため、全肉厚の弧状試験片S1(図3)で測定した強度と、肉厚中央部から採取した丸棒試験片S2(図4)で測定した強度との間に差異が生じる場合がある。本実施形態では、肉厚中央部から採取した平行部直径12.7mmの丸棒試験片で測定したL方向引張試験での強度(降伏強度及び引張強度)によって、継目無鋼管の機械的特性を評価する。以下の説明において、単に「降伏強度」及び「引張強度」と記載した場合はそれぞれ、この丸棒試験片で測定した降伏強度及び引張強度を意味するものとする。
降伏強度の下限は、より好ましくは480MPaであり、さらに好ましくは500MPaである。なお、オーバーマッチ継手にするための溶接材料のコストが高くなるといった理由により、強度が高すぎることが好ましくない場合がある。降伏強度の上限は、好ましくは600MPaであり、さらに好ましくは580MPaであり、さらに好ましくは560MPaである。
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、引張強度が535MPa以上である。引張強度の下限は、より好ましくは550MPaであり、さらに好ましくは580MPaである。引張強度の上限は、好ましくは760MPaであり、さらに好ましくは700MPaであり、さらに好ましくは650MPaである。
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、降伏比(降伏強度/引張強度)が0.80~0.95である。降伏比の下限は、より好ましくは0.83であり、さらに好ましくは0.85である。降伏比の上限は、より好ましくは0.92であり、さらに好ましくは0.90である。
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは、ASTM E8/E8M-21に規定された全肉厚の弧状試験片(幅:38.1mm、標点距離:50.8mm)で測定したL方向引張試験での降伏強度と、肉厚中央部から採取した平行部直径12.7mmの丸棒試験片で測定したL方向引張試験での降伏強度との差(以下「試験片形状による測定強度差」という。)が10MPa以下である。
上述のとおり、厚肉の鋼管では、肉厚中央部は組織が粗粒になりやすく、内外面近傍と比較して強度が低くなりやすい。本実施形態では、試験片形状による測定強度差を肉厚方向の組織の均一性の指標として用いる。すなわち、試験片形状による測定強度差が小さいほど、肉厚方向に均一な組織が得られていると評価する。試験片形状による測定強度差は、より好ましくは8MPa以下であり、さらに好ましくは7MPa以下であり、さらに好ましくは5MPa以下である。
本実施形態による継目無鋼管は、ラインパイプ用継目無鋼管であってもよい。本実施形態による継目無鋼管は、ラインパイプ用の継目無鋼管に特に好適に用いることができる。
本実施形態による継目無鋼管は、好ましくは40.0mm以上の肉厚を有する。肉厚の下限は、さらに好ましくは41.0mmであり、さらに好ましくは42.0mmであり、さらに好ましくは43.0mmであり、さらに好ましくは45.0mmである。肉厚の上限は、特に限定されないが、例えば55.0mmであり、好ましくは52.0mmであり、さらに好ましくは50.0mmである。
[継目無鋼管の製造方法]
本実施形態による継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。本発明の一実施形態による継目無鋼管の製造方法は、上述した化学組成を有する素管を準備する工程と、素管を焼入れする工程と、焼入れされた素管を焼戻しする工程と、を備える。
上述した化学組成を有する継目無鋼管の素管を準備する。
継目無鋼管の素管は例えば、インゴット、スラブ、若しくはブルームを熱間加工して製造したビレット、又は連続鋳造法によって製造したビレットを熱間加工して製造することができる。ビレットの熱間加工は、例えばマンネスマン法による穿孔圧延や、熱間押出、熱間鍛造や熱間圧延である。
継目無鋼管の素管を製造する際、熱間製管後の高温の状態から急冷(例えば水冷)する、いわゆる「直接焼入れ」と呼ばれる熱処理が行われる場合がある。本実施形態による製造方法は、直接焼入れがされた素管、及び直接焼入れがされていない素管のいずれにも適用可能である。ただし、直接焼入れだけでは、細粒でかつ肉厚方向に均一な組織を得ることが困難である。そのため本実施形態では、素管が直接焼入れされたものであったとしても、これとは別に、次に説明する焼入れ工程を行う必要がある。
素管を焼入れする。具体的には、素管をオーステナイト温度域の保持温度に加熱し、保持温度で所定の保持時間保持した後、冷却する。
焼入れする工程は、より具体的には、400℃から600℃までの温度域を5℃/分以下の平均昇温速度で600℃以上の温度に素管を加熱する工程と、600℃からAc点以上の温度である保持温度までの温度域を10℃/分以上の平均昇温温度で保持温度に素管を加熱する工程と、素管を保持温度で10分以上60分以下の時間保持する工程と、保持温度に保持した素管を冷却する工程と、を含む。
400℃から600℃までの温度域の平均昇温速度(以下「第1昇温速度」という。)は、5℃/分以下である。第1昇温速度を小さくすることによって、鋼管の肉厚中央部まで十分な予熱を与え、その後の昇温において、V含有粒子の均一な固溶を促進することができる。この間の昇温速度は一定でなくてもよく、平均昇温速度が5℃/分以下であればよい。第1昇温速度は、好ましくは4℃/分以下である。なお、400℃までの温度域の昇温速度は任意である。
600℃以上の温度に加熱した素管をAc点以上の温度である保持温度に加熱する。保持温度の下限は、好ましくは900℃であり、さらに好ましくは920℃である。保持温度の上限は、好ましくは1100℃であり、さらに好ましくは1050℃である。
600℃から保持温度までの温度域の平均昇温速度(以下「第2昇温速度」という。)は、10℃/分以上である。第2昇温速度が小さすぎると、昇温中に結晶粒が粗大化する場合がある。
素管を保持温度に保持する時間は、10分以上60分以下である。保持時間が短すぎると、V含有粒子が十分に固溶しない場合がある。一方、保持時間が長すぎると、結晶粒が粗大化する。保持時間の上限は、好ましくは50分であり、さらに好ましくは40分である。保持時間の下限は、より好ましくは15分であり、さらに好ましくは20分である。
保持温度に所定時間保持した素管を、保持温度から冷却する。この冷却は、好ましくは水冷である。この冷却は、素管の肉厚中央部まで組織が焼入れ組織(マルテンサイト又はベイナイト)になるように、十分に大きな冷却速度で行うことが好ましい。
焼入れされた素管を焼戻しする。具体的には、焼入れされた素管を所定の温度に加熱して所定の焼戻し時間保持する。
焼戻しは、好ましくは、下記の式(3)で表されるLMPが18200~19000となるように行う。
LMP=(T+273)×(20+log(t)) (3)
式(3)において、Tは焼戻し温度(単位は℃)であり、tは焼戻し温度での保持時間(単位は時間)である。log(t)は、10を底とするtの対数である。
LMPの下限は、より好ましくは18800であり、さらに好ましくは18820であり、さらに好ましくは18850である。LMPの上限は、より好ましくは18950であり、さらに好ましくは18900である。
焼戻し温度は、好ましくはAc点以下である。焼戻し温度の上限は、より好ましくは700℃であり、さらに好ましくは680℃である。焼戻し温度の下限は、好ましくは550℃であり、さらに好ましくは600℃である。
焼戻し温度での保持時間の上限は、好ましくは180分であり、さらに好ましくは160分であり、さらに好ましくは140分である。焼戻し温度での保持時間の下限は、好ましくは90分であり、さらに好ましくは100分であり、さらに好ましくは110分である。
保持後の冷却は、好ましくは空冷である。
以上の工程によって、継目無鋼管が製造される。
以上、本発明の一実施形態による継目無鋼管及びその製造方法を説明した。本実施形態によれば、全肉厚での強度と切削後の状態での強度との差が小さい継目無鋼管が得られる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
表1に示す鋼記号A~Yの化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造により丸ビレットを製造した。
Figure 0007464900000001
製造された丸ビレットを穿孔圧延して、表2に示す外径(OD)及び肉厚(WT)の継目無鋼管の素管を製造した。各素管に対して、表2に示す条件で焼入れ及び焼戻しを実施し、試験番号1~25の鋼管を製造した。
Figure 0007464900000002
表2の「R1」は、第1昇温速度、すなわち、焼入れ時の加熱における400℃~600℃までの温度域の平均昇温速度である。表2の「R2」は、第2昇温速度、すなわち、焼入れ時の加熱における600℃~保持温度までの温度域の平均昇温速度である。
[組織観察]
各鋼管の肉厚中央部の結晶粒度番号を測定した。具体的には、焼入れ後、焼戻し前の鋼管から、鋼管の管軸方向に垂直な断面が被検面になるように、試験片を採取した。採取した試験片を樹脂に埋め込み、ピクリン酸飽和水溶液で腐食するBechet-Beaujard法によって旧オーステナイト粒界を現出させ、ASTM E112-13(2021)に準じて旧オーステナイト粒の結晶粒度番号を測定した。
前述した方法によって各鋼管のNDos、NDis及びNDc、並びにこれらの比(NDos/NDc、及びNDis/NDc)を求めた。なお、いずれの鋼管においても、円相当径が100nmを超えるV含有粒子は観察されなかった。
組織観察の結果を表3に示す。なお、各鋼管は、内外面の近傍、及び肉厚中央部のいずれにおいても、ベイナイト(焼戻しされたベイナイト)の体積率が90%以上の組織を有していた。組織の体積率の測定は、次のように行った。まず、管軸方向に垂直な断面が被検面となるように試験片を採取し、ナイタル腐食液で腐食して組織を現出させた。その後、鋼管の内外面から2mmの深さの位置、及び肉厚中央部を視野の中心として、各々500μm×500μmの光学顕微鏡写真を撮影した。各組織写真上に25μmピッチで縦方向と横方向とに直線を引き、フェライト組織上にある格子点の数を数え上げた。全格子点数からフェライト組織上にある格子点数を引き、割合を百分率で求めたものを各組織写真におけるベイナイト(焼戻しされたベイナイト)の体積率(体積率と面積率とは等しいと見なした。)とした。
Figure 0007464900000003
[機械的特性]
各鋼管から、長手方向が管軸方向と平行になるように、ASTM E8/E8M-21に規定された全肉厚の弧状試験片(幅:38.1mm、標点距離:50.8mm)、及びASTM E8/E8M-21に規定された丸棒試験片(平行部直径:12.7mm、標点距離:50.8mm)を採取した。これらの試験片を用いて、L方向引張試験を行った。降伏強度(YS)、引張強度(TS)及び降伏比(YR)を表4に示す。
Figure 0007464900000004
表1~表4に示すように、試験番号1~9、24及び25の鋼管は、Fn1が0.44以上であり、NDos/NDc及びNDis/NDcがいずれも0.60以上であり、肉厚中央部の結晶粒度番号が6.0以上であった。これらの鋼管は、降伏強度が450MPa以上であり、試験片形状による測定強度差が10MPa以下であった。
試験番号10~13の鋼管は、試験片形状による測定強度差が10MPaよりも大きかった。これらの試験番号の鋼管では、NDos/NDc及びNDis/NDcがいずれも0.60未満であり、組織が肉厚方向に均一ではなかったと考えられる。NDos/NDc及びNDis/NDcが0.60未満となったのは、第1昇温速度が大きすぎたためと考えられる。
試験番号14~16の鋼管は、降伏強度が450MPa未満であった。これは、鋼管の組織が粗粒であったためと考えられる。組織が粗粒になったのは、焼入れの保持時間が長すぎたためと考えられる。
試験番号17及び18の鋼管は、降伏強度が450MPa未満であった。これは、Fn1の値が小さすぎたためと考えられる。
試験番号19の鋼管は、降伏強度が450MPa未満であった。これは、V含有量が低すぎたためと考えられる。
試験番号20及び21の鋼管は、試験片形状による測定強度差が10MPaよりも大きかった。これらの試験番号の鋼管では、NDos/NDc及びNDis/NDcがいずれも0.60未満であり、組織が肉厚方向に均一ではなかったと考えられる。NDos/NDc及びNDis/NDcが0.60未満となったのは、焼入れの保持時間が短すぎたためと考えられる。
試験番号22及び23の鋼管は、降伏強度が450MPa未満であった。これは、鋼管の組織が粗粒であったためと考えられる。組織が粗粒になったのは、第2昇温速度が小さすぎたためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、発明の範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.030~0.100%、
    Si:0.05~0.50%、
    Mn:0.30~1.70%、
    P :0.020%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.001~0.100%、
    N :0.0200%以下、
    Cr:0.05~0.30%、
    Mo:0.05~0.23%、
    Cu:0.10~0.50%、
    Ni:0.20~0.50%、
    V :0.01~0.10%、
    Nb:0~0.020%、
    Ti:0~0.020%、
    B :0~0.0005%、
    Ca:0~0.0060%、
    残部:Fe及び不純物、である化学組成を有し、
    下記の式(1)で表されるFn1が0.44以上であり、
    肉厚中央部におけるASTM E112-13(2021)による結晶粒度番号が6.0以上であり、
    対象元素をV、Nb、Ti、Mo及びAlとしてエネルギー分散型X線分析法による定量分析を行い、V含有量が30質量%以上である粒子をV含有粒子とし、管軸方向に垂直な断面において、鋼管外面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDos、鋼管内面から2mmの深さの位置における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDis、肉厚中央部における円相当径が10~100nmのV含有粒子の数密度をNDcとし、NDos/NDc及びNDis/NDcの各々が0.60以上である、継目無鋼管。
    Fn1=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)
    式(1)中の各元素記号には対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  2. 請求項1に記載の継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.001~0.020%、
    Ti:0.001~0.020%、
    B :0.0001~0.0005%、及び、
    Ca:0.0001~0.0060%、
    からなる群から選択される1種以上を含有する、継目無鋼管。
  3. 請求項1又は2に記載の継目無鋼管であって、
    肉厚中央部から採取した、ASTM E8/E8M-21に規定された丸棒試験片(平行部直径12.7mm、評点距離50.8mm)で測定した管軸方向引張試験での降伏強度が450MPa以上である、継目無鋼管。
  4. 請求項1又は2に記載の継目無鋼管であって、
    前記継目無鋼管は、ラインパイプ用継目無鋼管である、継目無鋼管。
  5. 請求項1又は2に記載の継目無鋼管であって、
    40.0mm以上の肉厚を有する、継目無鋼管。
  6. 請求項1又は2に記載の継目無鋼管を製造する方法であって、
    前記化学組成を有する素管を準備する工程と、
    前記素管を焼入れする工程と、
    前記焼入れされた素管を焼戻しする工程と、を備え、
    前記焼入れする工程は、
    400℃から600℃までの温度域を5℃/分以下の平均昇温速度で600℃以上の温度に前記素管を加熱する工程と、 600℃からAc点以上の温度である保持温度までの温度域を10℃/分以上の平均昇温速度で前記保持温度に前記素管を加熱する工程と、
    前記素管を前記保持温度で10分以上60分以下の時間保持する工程と、
    前記保持温度に保持した前記素管を冷却する工程と、を含む、継目無鋼管の製造方法。
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