JP2019039056A - 鋼板および鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】平坦性に優れ、かつ、打抜き用金型の寿命を向上することができる鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板は、0.40重量%以上0.90重量%以下のCを含み、鋼板は、(1)共析鋼、(2)初析フェライトの面積率が20%以下である亜共析鋼、および、(3)初析セメンタイトの長径が10μm未満である過共析鋼のいずれかであり、鋼板の硬さは、200HV以上320HV以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は鋼板および鋼板の製造方法に関する。
中炭素鋼板および高炭素鋼板は、焼入および焼戻などの熱処理により、高い強度が得られるため、自動車、各種機械部品、および鋸などの刃物に適用されている。多くの場合、熱処理が施される前に、特許文献1に記載されているように、鋼板に打抜き加工が施されることにより、当該鋼板は上述の製品の形状に成形される。
ここで、打抜き加工する際には金型が用いられるが、金型が摩耗すると、加工品の形状、寸法および打抜き面の性状などが変化するという問題がある。
このような問題を解決するために、鋼板を軟質化することにより、金型の寿命を向上することが従来実施されている。鋼板を軟質化する技術としては、例えば、特許文献2に記載されているように、鋼板に焼鈍処理を施して、炭化物を球状化する技術を挙げることができる。
特開昭56−9329号公報(1981年1月30日公開) 特開2000−265239号公報(2000年9月26日公開) 特開2006−291236号公報(2006年10月26日公開)
加工性が重視される鋼板に関しては、上述の技術によって鋼板を軟質化させれば金型の寿命を向上することができる。しかしながら、平坦性が重視される鋼板については、打抜き加工によるわん曲の抑制および打抜き端面のダレの低減のために、一般的な加工性が要求される鋼板に比べて、より硬い鋼板が望ましい。例えば、特許文献3では、打抜き加工によるわん曲の抑制および打抜き端面のダレの低減のために、焼鈍鋼板に冷延を施し、これにより、得られる鋼板が焼鈍鋼板よりも硬化し、より硬い鋼板となる。そのため、平坦性が重視される鋼板については、打抜き加工を施す際に用いられる金型の寿命を向上させるという目的のために、鋼板を軟質化させるという技術を適用することができない。このような平坦性が要求される鋼に打抜き加工を施す際に用いられる金型の寿命を向上させる技術は、これまで知られていない。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、平坦性に優れ、かつ、打抜き用金型の寿命を向上することができる鋼板を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、以下の本発明に達した。
本発明に係る鋼板は、0.40重量%以上0.90重量%以下のCを含み、残部としてFeおよび不可避不純物を含む鋼板であって、上記鋼板は、(1)パーライトのみからなる共析鋼、(2)パーライトおよび初析フェライトを含み、該初析フェライトの面積率が20%以下である亜共析鋼、ならびに、(3)パーライトおよび初析セメンタイトを含み、該初析セメンタイトの長径が10μm未満である過共析鋼のいずれかであり、上記鋼板の硬さは、200HV以上320HV以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る鋼板において、上記鋼板に含まれる上記パーライトのラメラ間隔が、0.1μm以上であることが好ましい。
また、本発明に係る鋼板において、上記鋼板は、Si:0.02重量%以上0.5重量%以下、Mn:0.2重量%以上1.5重量%以下のうちの少なくとも1つをさらに含み、PおよびSの含有量は、それぞれ、P:0.03重量%以下、S:0.03重量%以下であることが好ましい。
また、本発明に係る鋼板において、上記鋼板は、Cr:1.2重量%以下、V:0.3重量%以下、Mo:0.3重量%以下、Nb:0.3重量%以下、および、Ti:0.3重量%以下のうちの少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
また、本発明に係る鋼板の製造方法は、上記鋼板を製造する方法であって、素材となるスラブに熱延処理を施す熱延工程と、熱延工程後の鋼板に冷延処理を施す冷延工程と、冷延工程後の鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理および(c)第2冷却処理の一連の熱処理を施す熱処理工程と、を含み、(a)上記加熱処理では、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、(b)第1冷却処理では、10℃/秒以上の冷却速度で580℃以上670℃以下の温度まで冷却し、(c)第2冷却処理では、第1冷却処理後の鋼板を、第1冷却処理終了時の温度から570℃までの温度範囲で10秒以上かけて冷却することを特徴とする。
また、本発明に係る鋼板の製造方法において、上記加熱処理では、冷延工程後の鋼板を、800℃以上950℃以下の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長く−0.36×T+485(秒)より短い時間加熱することが好ましい。
また、本発明に係る鋼板の製造方法は、上記鋼板を製造する方法であって、素材となるスラブを1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを行い、10℃/秒以上の冷却速度で670℃以下まで冷却し、570℃以上650℃以下で巻取る熱延工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る鋼板は、平坦性に優れ、かつ、打抜き用金型の寿命を向上することができる。
鋼板に打抜き加工を施した後のパンチの先端部の拡大図である。 鋼板に打抜き加工を施した後のパンチの先端部の図であり、(a)は、金属組織が球状炭化物組織である鋼板を打抜き加工した後の状態であり、(b)は金属組織がパーライトを含む鋼板に打抜き加工した後の状態である。 金属組織に発生するき裂を模式的に表した図であり、(a)は球状炭化物組織に発生するき裂を示しており、(b)はパーライトを含む金属組織に発生するき裂を示している。 鋼板に打抜き加工を施した際のストローク−荷重曲線を示す図であり、(a)は金属組織が球状炭化物組織である鋼板の場合であり、(b)は金属組織がパーライトを含む鋼板の場合である。
以下、本発明に係る鋼板および鋼板の製造方法の一実施形態について説明する。
<鋼板>
本実施形態に係る鋼板は、0.40重量%以上0.90重量%以下のCを含み、残部としてFeおよび不可避不純物を含む鋼板であって、鋼板は、共析鋼、亜共析鋼、および過共析鋼のいずれかであり、硬さが200HV以上320HV以下である。なお、本実施形態における鋼板は、冷延を施した冷延鋼板および熱延を施した熱延鋼板のいずれでもあり得る。
〔共析鋼〕
共析鋼は、当該共析鋼の金属組織がパーライトのみからなる鋼である。
〔亜共析鋼〕
亜共析鋼は、共析鋼よりもCの含有量が少ない鋼であり、標準組織である場合にはパーライトおよび初析フェライトを含む金属組織である。当該亜共析鋼における初析フェライトの面積率は20%以下であり、これは、例えば、オーステナイト温度域から冷却速度を制御することによって達成することができる。
パーライトと初析フェライトとでは強度が大きく異なり、打抜きに伴う塑性変形能も大きく異なる。そのため、亜共析鋼に打抜きを行った場合、パーライトと初析フェライトとの界面において、1次せん断面とは異なる方向へき裂が発生しやすくなり、このき裂が繋がり、2次せん断面(破断面)を形成する虞がある。その結果、1次せん断面積率が低下し、打抜き面性状の不良化を招く虞がある。しかしながら、亜共析鋼における初析フェライトの面積率が上述の範囲であることにより、2次せん断面の形成を抑え、打抜き面性状を良好なものとすることができる。
〔過共析鋼〕
過共析鋼は、共析鋼よりもCの含有量が多い鋼であり、標準組織である場合にはパーライトおよび初析セメンタイトを含む金属組織である。当該過共析鋼の粒界(結晶粒界)に存在する初析セメンタイトの長径が10μm未満であり、これは、例えば、オーステナイト温度域から冷却速度を制御することによって達成することができる。これにより、粗大な初析セメンタイトが粒界に存在しないため、打抜き加工の際に粗大なボイドの発生を抑えることができる。その結果、2次せん断面の形成を抑え、打抜き面性状を良好なものとすることができる。
(パーライト)
上述のように、共析鋼、亜共析鋼および過共析鋼の金属組織は、全てパーライトを含む。パーライトのラメラ間隔(パーライトラメラ間隔)に特に制限はないが、0.1μm以上が好ましい。パーライトの硬さはパーライトラメラ間隔に依存し、パーライトラメラ間隔が狭いほどパーライトが微細になり、硬質化する。パーライトラメラ間隔が上述の範囲にあることで、パーライトの硬さが高くなりすぎず、本実施形態に係る鋼板を打抜き加工する際に金型のチッピングを防ぐことができる。これにより、金型の寿命を向上させることができる。
(球状炭化物組織の鋼板と、パーライトを含む金属組織の鋼板との違い)
上述のように、共析鋼、亜共析鋼および過共析鋼の金属組織は、全てパーライトを含む。以下、金属組織が、フェライト中に球状炭化物が分散した組織(球状炭化物組織)である鋼板と、パーライトを含む金属組織の鋼板との違いについて、図1〜4を用いて説明する。
図1は、鋼板に打抜き加工した後の金型におけるパンチ1の先端部の拡大図である。図1に示すように、パンチ1によって鋼板を打抜き加工した場合、パンチ1の先端部は、端面1a、刃先および側面1bにおいて摩耗する。換言すれば、パンチ1の先端部では、図1に示すような端面摩耗部2a、刃先摩耗部2bおよび側面摩耗部2cが摩耗によって消失する。ここで、端面摩耗部2aは、鋼板を打ち抜く際に鋼板表面と接触し摩耗した部分である。刃先摩耗部2bは、鋼板を打ち抜く際に鋼板をせん断した際に摩耗した部分である。側面摩耗部2cとは、鋼板を打ち抜く際に鋼板にせん断された鋼板の端面(せん断面)により摩擦を受けて摩耗した部分である。
図2は、摩耗が生じたパンチ1の写真を示す図である。図2の(a)は、金属組織が球状炭化物組織である鋼板にパンチの移動方向Yに打抜き加工した後のパンチ1の先端部を示している。図2の(b)は、金属組織がパーライトを含む鋼板に打抜き加工した後のパンチ1の先端部を示している。図2の(a)および(b)から明らかなように、鋼板における金属組織がパーライトを含むことにより、特に、金型におけるパンチ1の刃先および側面における摩耗が抑制されている。すなわち、刃先摩耗部2bおよび側面摩耗部2cの量が少なくなっている。その結果、金型の寿命(金型寿命)が長くなる。この理由について、以下に、図3および図4を用いて説明する。
まず、金属組織に発生するき裂の観点から、パーライトを含む金属組織の鋼板のほうが球状炭化物組織の鋼板よりも金型の摩耗が抑えられる理由を説明する。
図3は、金属組織に発生するき裂を模式的に表した図であり、図3の(a)は、球状炭化物組織に発生するき裂11を示しており、図3の(b)は、パーライト100に発生するき裂110を示している。図3の(a)では、加工に伴い、フェライト10における球状炭化物組織10aおよび10bを起点にボイドを生成し、球状炭化物組織10aおよび10bを連結する形でき裂11が進展する。球状炭化物組織に発生したき裂11が、図3の(a)に示されるようにまっすぐ滑らかに進展せず、ギザギザの線状に進展するため、進展経路が長くなる。これによって、金型のパンチにおける刃先への負荷がより大きくなる。これらの結果、金型の摩耗がより大きくなると推定される。
一方、図3の(b)に示すように、パーライト100を含む金属組織では、パーライトブロック内においてパーライト100の結晶方位が等しく揃っている。そのため、パンチでパーライト100を含む金属組織に打抜きせん断面生成の際に、パンチの刃先と接触した箇所の近傍からパーライト100に発生したき裂は、パーライトラメラを横断するように、パーライトブロック内で一定の方向に進展しやすくなる。これにより、球状炭化物組織のき裂11に比べて滑らかなき裂110となり、せん断面が得られやすくなる。その結果、パーライト100を含む金属組織をパンチで打ち抜く場合、球状炭化物組織をパンチで打ち抜く場合に比べて、せん断面を発生させる際に金型のパンチにおける刃先にかかる負荷が小さくなり、これにより金型の摩耗を抑えることができると推定される。その結果、金型の寿命を向上させることができる。
また、球状炭化物組織に比べて、打抜き加工する鋼板の金属組織がパーライト100を含む金属組織である場合には、せん断面が形成されやすいため、1次せん断面の板厚に対する比率が大きくなり、2次せん断面が発生しにくくなる。これにより、鋼板における打抜きのせん断面性状が良好なものとなる。また、通常の打抜き加工では得られない綺麗なせん断面を形成することのできるシェービング加工技術に用いられる金型を用いた場合でも、打抜き面性状および金型寿命を向上させることができる。
次に、鋼板に打抜き加工を施した場合における、金属組織に対するパンチの食い込み量(ストローク)に対する荷重の観点から、打抜き加工の対象を、パーライトを含む金属組織の鋼板とした場合に金型寿命が長くなる理由を説明する。
図4は、鋼板に打抜き加工を施した際のストローク−荷重曲線を示す図である。図4の(a)は、金属組織が球状炭化物組織である鋼板に対して打抜き加工を施した際のストローク−荷重曲線を示すグラフである。図4の(b)は、パーライトを含む金属組織の鋼板に対して打抜き加工を施した際のストローク−荷重曲線を示すグラフである。より詳細には、打抜き形状が直径10mmの円形であり、パンチとダイとの間隔であるクリアランスが鋼板の厚み(1mm)の5%である金型のパンチでそれぞれの金属組織を打ち抜いた際に得られたストローク−荷重曲線を示すグラフである。図4の(a)および(b)の横軸は、ストロークを示し、縦軸は、パンチにかかる荷重を示している。
図4の(a)に示すように、金属組織が球状炭化物組織である場合には、荷重は、打抜き開始点a1から最高荷重点b1まで上昇する。また、最高荷重点b1から低下する途中の約10kNにおいて棚状に維持されて打抜き終了点c1を経て再び約1kNの押込力(パンチの側面に対して発生する荷重)を示す押込点d1まで低下する。これに対し、図4の(b)に示すように、金属組織がパーライトを含む場合は、荷重は打抜き開始点a2から最高荷重点b2まで上昇し、最高荷重点b2から速やかに打抜き終了点c2を経て約0kNの押込力を示す押込点d2まで低下する。
このように、金属組織がパーライトを含む場合は、金属組織が球状炭化物組織である場合に比べて、荷重が速やかに、かつ、低い押込力を示す押込点d2まで低下するため、パンチの側面にかかる側方力が小さくなる。これにより、金属組織がパーライトを含む場合は、金属組織が球状炭化物組織である場合に比べて、パンチの側面にかかる負担および摩耗を減らし、金型の寿命を向上させることができる。
なお、図4の(a)および(b)に示すように、金属組織が球状炭化物組織である場合に比べて、パーライトを含むほうが打抜きにおける最高荷重点は若干高い。これは、球状炭化物組織の鋼板の硬さ256Hvよりも、パーライトを含む金属組織の鋼板の硬さ264Hvのほうが高いためである。また、図4の(a)と(b)との硬さの比較では、10HV程度しか違わず、非常に小さいことから、パンチの側面にかかる負担および摩耗の影響の差は実質的にないと言える。
〔硬さ〕
本実施形態における鋼板は、硬さが200HV以上320以下の鋼板である。硬さが200HV以上320以下である鋼板では、打抜き加工によるわん曲が抑制され、打抜き端面のダレが低減されるため、平坦性が重視される用途に好適に用いられる。すなわち、本実施形態に係る鋼板は、平坦性に優れる鋼板である。なお、ここでいう鋼板の硬さとは、ビッカース硬さ(Hv10)を意味する。
〔鋼板に含まれる成分〕
本実施形態に係る鋼板は、0.40重量%以上0.90重量%以下のC(炭素)を含み、残部としてFe(鉄)および不可避不純物を含む鋼板である。
(C)
本実施形態に係る鋼板は、0.40重量%以上0.90重量%以上のCを含む。すなわち、本実施形態に係る鋼板は、中炭素鋼または高炭素鋼の鋼板である。Cは、中炭素鋼および高炭素鋼において最も基本となる成分であり、鋼板における含有量に応じて鋼板の加工性、焼入硬さおよび炭化物量などが大きく変動する。
Cの含有量が0.40重量%以上であることにより、鋼板における炭化物量が十分となるため、亜共析鋼において、初析フェライト面積率が低いパーライトおよび初析フェライトを含む金属組織が得られる。これにより、初析フェライト面積率を20%以下に低下させるとともにパーライトラメラ間隔を微細化し、好適なパーライトラメラ間隔の金属組織を有する鋼板を得ることができる。また、Cの含有量が0.90重量%以下であることにより、パーライトを硬化させすぎず、320HV以下の硬さの鋼板を得ることができる。また、粗大な初析セメンタイトが生成することを抑制することができる。
Cの含有量は、0.40重量%以上0.90重量%以下であることが好ましい。
〔鋼板に含まれ得るその他の成分〕
また、本実施形態に係る鋼管は、上述の成分以外にSi、Mn、P、S、Cr、V、Mo、NbおよびTiのうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
(Si)
本実施形態に係る鋼板は、Si(ケイ素)を含んでいてもよい。Siは鋼板の加工性に対して影響を及ぼす成分である。鋼板におけるSiの含有量は、0.02重量%以上0.50重量%以下であることが好ましく、0.02重量%以上0.35重量%以下であることがより好ましい。Siの含有量が0.02重量%以上であることにより、Siを鋼板に含まれる酸素を除去するための脱酸剤として利用することができる。また、Siの含有量が0.50重量%以下であることにより、Siの含有量が過剰にならないため、製造過程において、鋼表面におけるスケール疵の発生を防ぎ、表面品質の低下を抑制することができる。
(Mn)
本実施形態に係る鋼板は、Mn(マンガン)を含んでいてもよい。Mnは鋼板の焼入性に対して影響を及ぼす成分である。鋼板におけるMnの含有量は、0.2重量%以上1.5重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以上1.0重量%以下であることがより好ましい。Mnの含有量が0.2重量%以上であることにより、鋼板の焼入性を向上させることができる。また、Mnの含有量が1.5重量%以下であることにより、オーステナイトからパーライトへ早く変態させ、パーライトラメラ間隔を広くして、パーライトが微細化しすぎることを防止することができる。その結果、好適なパーライトを含む金属組織を得ることができる。
(P)
本実施形態に係る鋼板は、P(リン)を含んでいてもよい。Pは、鋼板の靱性を低下させる成分である。鋼板におけるPの含有量は、0.03重量%以下であることが好ましく、0.02重量%以下であることがより好ましい。鋼板におけるPの含有量が、上述の好ましい範囲にあることにより、靱性に優れた鋼板を得ることができる。
(S)
本実施形態に係る鋼板は、S(硫黄)を含んでいてもよい。Sは、鋼板における金属組織にMnS系介在物を生成する成分である。鋼板におけるSの含有量は、0.03重量%以下であることが好ましく、0.02重量%以下であることがより好ましい。MnS系介在物は、圧延により圧延方向に伸ばされ、細長い形状となる。MnS系介在物は、打抜き加工する際に鋼板に発生するき裂の起点となり、1次せん断面積率が低下し、打抜き面性状を低下させる原因となる。鋼板におけるSの含有量が、上述の好ましい範囲にあることにより、1次せん断面積率の低下を抑制し、打抜き面性状の低下を防ぐことができる。
(Cr)
本実施形態に係る鋼板は、Cr(クロム)を含んでいてもよい。Crは、鋼板の焼入性に対して影響を及ぼす成分である。鋼板におけるCrの含有量は、1.2重量%以下であることが好ましく、0.7重量%以下であることがより好ましい。Crは、Mnと同様にオーステナイトから冷却した際のパーライトへの変態を遅くさせ、パーライトラメラ間隔を狭くする効果がある。そのため、Crの含有量を上述の好ましい範囲に抑えることで、オーステナイトからパーライトへ早く変態させ、パーライトラメラ間隔を広くし、パーライトが微細化しすぎるのを防止することができる。その結果、好適なパーライトを含む金属組織を得ることができる。
(Mo)
本実施形態に係る鋼板は、Mo(モリブデン)を含んでいてもよい。Moは、鋼板の焼入性および焼戻軟化抵抗を向上する作用を及ぼす成分である。鋼板におけるMoの含有量は、0.3重量%以下であることが好ましい。鋼板におけるMoの含有量が、0.3重量%以下であることにより、パーライトラメラ間隔を狭くし、好適なパーライトを含む金属組織を得ることができる。
(V、Ti、Nb)
本実施形態に係る鋼板は、V(バナジウム)、Ti(チタン)およびNb(ニオブ)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。V、TiおよびNbは、パーライトに変態する前のオーステナイトの粒径を微細化する作用を及ぼす成分である。鋼板におけるV、TiおよびNbの含有量は、それぞれ0.3重量%以下であることが好ましい。鋼板におけるV、TiおよびNbの含有量が、それぞれ0.3重量%以下であることにより、コストの増加および鋼板の製造性の低下を防止することができる。
本実施形態に係る鋼板は、C以外の成分として上述した各成分を含み得る。好適な態様としては、SiおよびMnのうちの少なくとも1つを含み、さらに、含有量が0.03重量%以下のPおよびSを含むものである。より好適な態様では、これらをすべて含んでいる。さらに別の態様では、Cに加えて、SiおよびMnのうちの少なくとも1つを含み、さらに、含有量が0.03重量%以下のPおよびSを含み、好ましくは全てを含んでいる態様において、Cr、V、Mo、NbおよびTiのうちの少なくとも1つをさらに含むものが挙げられる。
以上のように、本実施形態に係る鋼板は、平坦性が重視される用途への適用に優れている。また、本実施形態に係る鋼板に加工を施す際に用いる金型の摩耗が抑えられ、その結果、当該金型の寿命を向上させることができる。
<鋼板の製造方法>
以下に、本実施形態に係る鋼の製造方法を示す。以下に示すように、本実施形態に係る鋼板の製造方法としては、冷延鋼板の製造方法と、熱延鋼板の製造方法との2つを挙げることができる。
〔冷延鋼板の製造方法〕
冷延鋼板の製造方法は、素材となるスラブ(素材スラブ)から、本実施形態に係る鋼板を製造する方法であって、熱延工程と、冷延工程と、熱処理工程とを含む。ここで、素材スラブとは、具体的には、上述の本実施形態に係る鋼板の成分を含み、上述の各工程を施す前のスラブのことを指す。
[熱延工程]
熱延工程では、素材スラブに熱延処理を施す。具体的には、素材スラブを1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを行う。熱延仕上げ温度が800℃以上であることにより、鋼板の変形抵抗が高くならず、熱延による鋼板の製造性の低下を防止することができる。また、熱延工程における温度が950℃以下であることにより、コイル表面におけるスケール疵の発生を防ぎ、表面品質の低下を抑制することができる。熱延仕上げ後、10℃/秒以上の冷却速度で670℃以下まで冷却し、570℃以上650℃以下で熱延仕上げ後に得られた熱延鋼板を巻取る。
次に、熱延鋼板に酸洗処理を施し、スケール疵を除去する。熱延鋼板が硬く、次の冷延工程において鋼板を冷延することが困難である場合、冷延工程の前に鋼板を焼鈍して鋼板を軟化させてもよい(第1焼鈍工程)。冷延工程前の焼鈍における焼鈍温度は、600℃以上780℃以下であることが好ましい。710℃を超える場合は、加熱保持後650℃以下まで徐冷(20℃/h以下)する。これにより、熱延工程後の熱延鋼板が硬い場合であっても、冷延工程において熱延鋼板を冷延することができる。
[冷延工程]
冷延工程(第1冷延工程)では、熱延工程後(熱延鋼板を酸洗した後)の鋼板に冷延を施して所定の厚み(板厚)の鋼板にする。冷延工程における冷延率は、特に限定されるものではなく、所定の鋼板の厚みに応じて、適宜設定することができる。
冷延工程後にオーステナイト温度域に鋼板を加熱して溶体化するため、冷延工程において冷延する前の鋼板の金属組織は特に限定されない。
なお、冷延工程において冷延を鋼板に施した際に、鋼板が加工硬化し、次の熱処理工程において鋼板に連続熱処理を施すことが困難である場合、熱処理工程の前に焼鈍を施して鋼板を軟化させてもよい(第2焼鈍工程)。第2焼鈍工程における焼鈍温度は特に限定されないが、例えば、600℃以上720℃以下であることが好ましい。
[熱処理工程]
熱処理工程では、冷延工程後の鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理および(c)第2冷却処理の一連の熱処理を施す。
(加熱処理)
加熱処理では、冷延工程後の鋼板を、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、溶体化する。鋼板を800℃以上の温度で加熱することで、十分に溶体化し、金属組織に対する初析フェライトの面積率の低いパーライトを得ることができる。また、鋼板を950℃以下の高温すぎない温度で加熱することで、オーステナイト粒径の粗大化を防ぐことができる。オーステナイト粒径の粗大化を抑制することで、最終的に得られる冷延鋼板のパーライトブロック径の粗大化を抑制することができる。このように、パーライトブロック径の粗大化を抑制することで、打抜き加工の際にパーライトラメラ上に形成されるき裂が小さくなり、き裂がギザギザの線状に進展せず、まっすぐ滑らかに進展する。これによりき裂の進展経路が短くなるため、2次せん断面の生成を防止することができる。また、加熱温度が高温すぎないことで、過大なエネルギーを消費せず、加熱処理に用いる炉内の耐火物の劣化を抑え、コストを削減することができる。
加熱処理における加熱温度は、800℃以上950℃以下であることが好ましい。
加熱処理における加熱時間は、上述の加熱温度T(℃)において、−0.13×T+145(秒)より長く−0.36×T+485(秒)より短い時間加熱することが好ましい。加熱時間が−0.13×T+145(秒)より長いことで、十分に溶体化し、未溶解炭化物が残存するのを防止することができる。また、加熱時間が−0.36×T+485(秒)より短いことで、鋼板におけるオーステナイト粒径の粗大化を抑制することができる。
(第1冷却処理)
第1冷却処理では、加熱処理後の鋼板を、10℃/秒以上の冷却速度で、加熱処理における加熱温度から580℃以上670℃以下の温度まで冷却する。冷却速度が10℃/秒以上であることで、鋼板が亜共析鋼である場合には、初析フェライトの生成を抑えることができ、鋼板が過共析鋼である場合には、初析セメンタイトの生成を抑えることができる。このように、初析フェライトまたは初析セメンタイトの生成を抑えることで、初析フェライトまたは初析セメンタイトの生成に起因する打抜き性の低下を防止することができる。また、加熱処理における加熱温度から580℃以上670℃以下の温度まで冷却することで、オーステナイトからパーライトへの変態(パーライト変態)を好適に開始させることができる。
(第2冷却処理)
第2冷却処理では、第1冷却処理後の鋼板を、第1冷却処理終了時の温度(第1冷却終了温度)から570℃までの温度範囲で10秒以上かけて冷却する。当該温度範囲においてパーライト変態を完了させるには、5秒以上の時間が必要であるが、当該第2冷却処理において冷却している間にパーライト変態を完了させることで、パーライトが微細化しすぎて硬質化するのを抑制することができる。これにより、パーライトラメラ間隔が0.1μm以上である金属組織の冷延鋼板が得られる。鋼板が亜共析鋼である場合には、さらに、初析フェライトの面積率が20%以下となる金属組織の冷延鋼板が得られる。
第2冷却処理終了時の温度(第2冷却終了温度)は、570℃以上650℃以下であることが好ましい。第2冷却終了温度の下限を570℃としてパーライトを生成させることで、パーライトラメラ間隔が狭くなることを防止することができる。また、オーステナイトからパーライトへの変態温度が低すぎないため、ベイナイトの生成を抑制し、好適にパーライトを生成することができる。また、第2冷却終了温度の上限を650℃としてパーライトを生成させることで、鋼板が亜共析鋼である場合、初析フェライトの生成を抑制することができる。また、鋼板が過共析鋼である場合、初析セメンタイトの生成を抑制することで、打抜き性の低下を防止することができる。
第2冷却処理における冷却時間は、10秒以上40秒以下が好ましい。第2冷却処理における冷却時間が上述の範囲にあることにより、低温に冷却するまでの高温域の間にオーステナイトからパーライトへの変態を完了させることができる。その結果、パーライトラメラ間隔が0.1μm以上のパーライトを好適に生成することができる。
なお、第2冷却処理では、第1冷却処理終了時の温度から570℃以上の温度範囲で10秒以上かけて冷却してさえいれば、第1冷却終了温度から第2冷却終了温度までの途中で一定温度にて保持してもよい。
また、第2冷却処理の後に、任意の冷却速度にて室温まで冷却した後、調質圧延および冷延などの圧延を鋼板にさらに施してもよい(第2冷延工程)。これにより、鋼板の降伏伸びを解消したり、硬さを調整したりすることができる。
〔熱延鋼板の製造方法〕
熱延鋼板の製造方法は、素材スラブから、本実施形態に係る鋼板(熱延鋼板)を製造する方法であって、熱延工程を含む。
(熱延工程)
熱延工程では、まず、素材スラブを1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを施す。熱延仕上げの温度が800℃以上であることにより、鋼板の変形抵抗が高くならず、熱延における鋼板の製造性の低下を防止することができる。また、熱延工程における熱延仕上げの温度が950℃以下であることにより、鋼表面におけるスケール疵の発生を防ぎ、鋼板の表面品質の低下を抑制することができる。
次に、熱延仕上げを施した鋼板を、熱延工程における熱延仕上げ温度から670℃以下の温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却する。冷却速度が10℃/秒以上であることで、鋼板が亜共析鋼である場合には、初析フェライトの生成を抑えることができ、鋼板が過共析鋼である場合には、初析セメンタイトの生成を抑えることができる。このように、初析フェライトまたは初析セメンタイトの生成を抑えることで、初析フェライトまたは初析セメンタイトの生成に起因する打抜き性の低下を防止することができる。また、熱延工程における熱延仕上げ温度から670℃以下の温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却することで、オーステナイトからパーライトへの変態(パーライト変態)を好適に開始させることができる。
続いて、670℃以下まで冷却した鋼板を、570℃以上650℃以下の温度において巻取る。巻取り後、任意の冷却速度にて鋼板を室温まで冷却する。570℃以上において鋼板を巻取ることで、パーライトラメラの微細化およびパーライトの硬質化を抑制し、0.1μm以上のパーライトラメラ間隔の金属組織を得ることができる。また、650℃以下の温度において鋼板を巻取ることで、初析フェライトまたは初析セメンタイトの生成を抑えることができる。このように、上述の温度範囲において鋼板を巻取り、パーライト変態を完了させることで、安定した金属組織の熱延鋼板を得ることができる。
なお、鋼板を巻取った後に、調質圧延および冷延などの圧延を鋼板にさらに施してもよい。これにより、鋼板の降伏伸びを解消したり、硬さを調整したりすることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
<冷延鋼板の製造例>
〔素材スラブの製造〕
まず、以下の表1に示す成分を有する鋼種の素材スラブを製造した。
Figure 2019039056
〔冷延鋼板の製造〕
次に、表1に示す素材スラブに対して、熱延、冷延および熱処理を施して冷延鋼板を製造した。
[熱延]
まず、表1に示す素材スラブに対して、1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを施した。熱延仕上げ後、当該鋼板を550℃以上670℃以下の温度において巻取った。巻取り後、酸洗によりスケール疵を除去した。以下の表2に示すように、No.1−6、1−7、1−11、1−15、1−19および1−27の試験では、熱延後、鋼板を冷延する前に、当該鋼板にさらに焼鈍(第1焼鈍)を施した。第1焼鈍は、700℃、40hの条件で行った。
[冷延]
熱延後、加熱前に、熱延鋼板に冷延(第1冷延)を施した。熱延に加え、焼鈍をさらに施したものについては、焼鈍鋼板に冷延を施した。冷延は、表2に示すように、試験毎に冷延率R(%)にて行った。表2に示すように、No.1−11および1−19の試験では、熱延し、焼鈍した後、以下の加熱、第1冷却および第2冷却を施さずに冷延(第2冷延)した。第2冷延の詳細については後述する。また、表2に示すように、No.1−13の試験では、冷延後、加熱前に、鋼板にさらに焼鈍(第2焼鈍)を施した。第2焼鈍は、700℃、40hの条件で行った。
[熱処理]
次に、冷延後の鋼板に(a)加熱、(b)第1冷却および(c)第2冷却の一連の熱処理を施した。
(加熱)
熱処理では、まず、鋼板に加熱を施した。加熱は、表2に示すように、試験毎に加熱温度T(℃)および加熱時間t(秒)の条件で行った。
(第1冷却)
次に、鋼板に第1冷却を施した。第1冷却は、表2に示すように、試験毎に冷却速度V(℃/秒)において、加熱温度T(℃)から表2に示す冷却温度(第1冷却終了温度)T(℃)まで冷却した。
(第2冷却)
次に、鋼板に第2冷却を施した。第2冷却では、第1冷却の後の鋼板を、570℃まで表2に示す所要時間t(秒)だけかけて冷却した。また、表2に示すように、No.1−1、1−2、1−4〜1−10、1−12、1−15、1−17、1−18および1−20〜1−24の試験では、第2冷却の後に、冷延(第2冷延)をさらに施した。No.1−11および1−19の試験では、加熱し、焼鈍した後、第1冷延、加熱、第1冷却および第2冷却を施さずに第2冷延を施した。各試料に対する冷延での冷延率R(%)を表2に示す。なお、各鋼板の厚みが1.8mmになるように第1冷延工程または第2冷延工程で調整した。
上述の各処理により、冷延鋼板を得た。
Figure 2019039056
〔初析フェライトの面積率および初析セメンタイトの長径〕
(初析フェライトの面積率)
No.1−1〜1−27の試験によって最終的に得られた冷延鋼板(試料)の金属組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。これらの試料のうち、初析フェライトが観察された試料、すなわち、亜共析鋼である試料に対し、任意の視野で、1000倍の倍率にて当該視野で確認できる範囲の面積における初析フェライトの面積率を測定した。ある視野において初析フェライトの面積率の測定が終了したら、別の視野において同様に測定を行い、これらの測定を計10回繰り返した。そして、10個の視野の初析フェライトの面積率の平均値を算出した。
(初析セメンタイトの長径)
上述のSEMを用いた各試料の金属組織の観察において、初析セメンタイトが観察された試料、すなわち、過共析鋼である試料については、任意の視野において、1000倍の倍率にて長径10μm以上の初析セメンタイトが存在しないかどうかを確認した。具体的には、ある視野において観察された初析セメンタイトの長径を全て測定し、全て10μm未満であるかどうかを確認した。ある視野において初析セメンタイトの長径が全て10μm未満であることを確認したら、別の視野において同様に測定を行った。1つの視野でも長径10μm以上の初析セメンタイトが存在することを確認したら、その時点で測定を終了した。ある視野における初析セメンタイトの長径が全て10μm未満であること、すなわち、長径10μm以上の初析セメンタイト存在しないことを10回繰り返し確認した場合、測定を終了した。
(初析フェライトの面積率および初析セメンタイトの長径の評価)
初析フェライトの面積率の平均値および初析セメンタイトの長径の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。なお、以下の長径10μm以上のセメンタイト無しとは、具体的には、10回の測定において1回も長径10μm以上のセメンタイトが金属組織における粒界に発見されなかったことを意味する。
○:初析フェライトの面積率が20%以下、かつ、長径10μm以上のセメンタイト無し
×:初析フェライトの面積率が20%より大きい
×:長径10μm以上のセメンタイトあり
〔硬さ〕
各試料の硬さをビッカース硬さ試験によって測定した。結果を表3に示す。
〔パーライトラメラ間隔〕
各試料の圧延方向の断面の金属組織を、SEMを用いて観察した。具体的には、各試料の金属組織を任意の視野で1000倍の倍率にて観察し、パーライトラメラが密になっている視野を選択した。次に、選択した視野における各試料の金属組織を10000倍の倍率にて観察し、パーライトラメラ間隔を測定した。ある視野においてパーライトラメラ間隔の測定が終了したら、別の視野において同様に測定を行い、これらの測定を計10回繰り返した。得られた10個のパーライトラメラ間隔の値のうち、小さいものから5個のパーライトラメラ間隔の平均値を各試料におけるパーライトラメラ間隔とした。パーライトラメラ間隔の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:パーライトラメラ間隔が0.1μm以上
×:パーライトラメラ間隔が0.1μm未満またはパーライトの代わりにベイナイト生成
〔初期打抜き面性状〕
No.1−1〜1−27の試験によって得られた試料に対して、以下の条件で打抜き試験を行った。試料毎にパンチおよびダイを交換して打抜き試験を行った。試料を所定の回数(以下の打抜き回数)打ち抜いた時点で打抜き試験を終了した。
・加工スピード:250spm
・打抜き寸法:直径20mm
・クリアランス:鋼板の厚みの5%
・パンチおよびダイの材質:ロックウェル硬さCスケール(HRC)で60のSKD11
・打抜き回数:100000回まで実施
各試料において、最初に打抜いた試料の打抜き面を観察し、2次せん断面が存在しないかどうかを調べた。初期打抜き面性状の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:2次せん断面無し
×:2次せん断面あり
〔金型寿命〕
金型におけるパンチの摩耗に伴い、上述の打抜き試験により打抜いた試料(打抜き品)のカエリが大きくなることから、打抜き品のカエリ高さを測定することで金型寿命を評価した。No.1−1〜1−27それぞれの試験において上述の打抜き試験に引き続き、さらに5回の打抜きを行い、打抜き品を5個ずつ作製した。当該打抜き品のカエリ高さを、焦点深度法によって測定した。具体的には、光学顕微鏡を用いて、観察倍率500倍にて各打抜き品を観察し、打抜き品のカエリ高さを45°ピッチ(間隔)で8箇所測定し、8箇所測定したうちの最大値を当該打抜き品のカエリ高さとして採用した。次に、5個の打抜き品においてそれぞれ採用したカエリ高さの平均値を算出した。金型寿命の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:カエリ高さが100μm以下
×:カエリ高さが100μmより高い
××:パンチにチッピング発生
Figure 2019039056
表1〜3から明らかなように、C:0.40重量%以上0.90重量%以下を含む鋼板(鋼種A〜K)を用いており、初析フェライトを含む場合にその面積率が20%以下であり、または初析セメンタイトを含む場合にその長径が10μm以上であるセメンタイトを含んでおらず、鋼板の硬さが200HV以上320HV以下である実施例1〜16は、平坦性に優れ、かつ、金型寿命に優れるという結果が得られた。
<熱延鋼板の製造例>
表1の素材スラブのうち、鋼種B、D、F、GおよびJの素材スラブに対して以下の処理を施して熱延鋼板を製造した。
まず、B、D、F、GおよびJの鋼種の素材スラブに対して、1200℃以上に加熱した後、表4に示す熱延仕上温度T(℃)において熱延仕上げを施した。次に、熱延仕上温度T(℃)から、表4に示すように、試験毎にV(℃/秒)にて、670℃まで冷却した。その後、表4に示すように、試験毎にTc(℃)にて巻取り、室温まで放冷した。また、表4に示すように、No.2−1、2−2、2−5、2−6および2−9〜2−11の試験では、室温まで冷却した後に、鋼板にさらに冷延処理を施した。第2焼鈍処理は、700℃、40hの条件で行った。表4に示すように、試験毎に冷延率R(%)にて行った。上述の処理により、熱延鋼板を得た。
Figure 2019039056
〔初析フェライトの面積率および初析セメンタイトの長径〕
冷延鋼板の場合と同様に初析フェライトの面積率の測定および初析セメンタイトの長径の確認を行い、同様の基準で評価した。結果を表5に示す。
〔硬さ〕
冷延鋼板の場合と同様に各試料の硬さをビッカース硬さ試験によって測定した。結果を表5に示す。
〔パーライトラメラ間隔〕
冷延鋼板の場合と同様にパーライトラメラ間隔を測定し、評価した。結果を表5に示す。
〔初期打抜き面性状〕
冷延鋼板の場合と同様に打抜き試験を行い、初期打抜き面性状を評価した。結果を表5に示す。
〔金型寿命〕
冷延鋼板の場合と同様に金型寿命を評価した。結果を表5に示す。
Figure 2019039056
表1、4および5から明らかなように、C:0.40重量%以上0.90重量%以下を含む素材スラブ、すなわち、鋼種B、D、F、GおよびJのスラブを用いており、初析フェライトを含む場合にその面積率が20%以下であり、または初析セメンタイトを含む場合にその長径が10μm以上であるセメンタイトを含んでおらず、鋼板の硬さが200HV以上320HV以下である実施例17〜22は、金型寿命に優れるという結果が得られた。
1 パンチ
1a 端面
1b 側面
2a 端面摩耗部
2b 刃先摩耗部
2c 側面摩耗部
10 フェライト
10a、10b 球状炭化物
11、110 き裂
100 パーライト
Y パンチの移動方向
a1、a2 打抜き開始点
b1、b2 最高荷重点
c1、c2 打抜き終了点
d1、d2 押込点

Claims (7)

  1. 0.40重量%以上0.90重量%以下のCを含み、残部としてFeおよび不可避不純物を含む鋼板であって、
    上記鋼板は、
    (1)パーライトのみからなる共析鋼、
    (2)パーライトおよび初析フェライトを含み、該初析フェライトの面積率が20%以下である亜共析鋼、ならびに、
    (3)パーライトおよび初析セメンタイトを含み、該初析セメンタイトの長径が10μm未満である過共析鋼
    のいずれかであり、
    上記鋼板の硬さは、200HV以上320HV以下であることを特徴とする鋼板。
  2. 上記鋼板に含まれる上記パーライトのラメラ間隔が、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 上記鋼板は、Si:0.02重量%以上0.5重量%以下、Mn:0.2重量%以上1.5重量%以下のうちの少なくとも1つをさらに含み、PおよびSの含有量は、それぞれ、P:0.03重量%以下、S:0.03重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 上記鋼板は、Cr:1.2重量%以下、V:0.3重量%以下、Mo:0.3重量%以下、Nb:0.3重量%以下、および、Ti:0.3重量%以下のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、
    素材となるスラブに熱延処理を施す熱延工程と、
    熱延工程後の鋼板に冷延処理を施す冷延工程と、
    冷延工程後の鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理および(c)第2冷却処理の一連の熱処理を施す熱処理工程と、を含み、
    (a)上記加熱処理では、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、
    (b)第1冷却処理では、10℃/秒以上の冷却速度で580℃以上670℃以下の温度まで冷却し、
    (c)第2冷却処理では、第1冷却処理後の鋼板を、第1冷却処理終了時の温度から570℃までの温度範囲で10秒以上かけて冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
  6. 上記加熱処理では、冷延工程後の鋼板を、800℃以上950℃以下の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長く−0.36×T+485(秒)より短い時間加熱することを特徴とする請求項5に記載の鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜4の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、
    素材となるスラブを1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを行い、10℃/秒以上の冷却速度で670℃以下まで冷却し、570℃以上650℃以下で巻取る熱延工程を含むことを特徴とする鋼板の製造方法。
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