JP2019119898A - Cvtリング素材、cvtリング部材及びこれらの製造方法 - Google Patents

Cvtリング素材、cvtリング部材及びこれらの製造方法 Download PDF

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毅志 宇田川
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Abstract

【課題】マルエージング鋼よりも安価に提供でき、高強度特性が得られ、かつ、生産性を向上可能なCVTリング素材を提供すること。【解決手段】C:0.30質量%以上0.70質量%以下、Si:0質量%超え2.50質量%以下、Mn:1.00質量%超え2.00質量%以下、S:0質量%超え0.030質量%以下、Cr:1.00質量%以上4.00質量%以下、Mo:0.50質量%以上3.00質量%以下、V:0質量%超え1.00質量%以下、Al:0質量%超え0.030質量%以下、O:0質量%超え0.0050質量%以下、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、さらに、式1の関係を満たす化学成分を有する、CVTリング素材にある。式1:7.9×[Mn]−151.2×[S]−821.6×[Al]+2241.5×[O]+17.6<27【選択図】図1

Description

本発明は、窒化処理することを前提としたCVTリング素材及びその製造方法、並びに、このCVTリング素材から作製されるCVTリング部材及びその製造方法に関する。
環境問題等の観点から自動車の低燃費化が強く望まれており、最近の自動車用変速装置には燃費向上に有利なベルト式の無段変速機(以下、適宜、CVTという。)が多用されている。CVTに使用される動力伝達用ベルトは、金属製の薄い板厚のリング部材を複数層重ねて一組のCVTベルトを構成し、そのCVTベルト2組にエレメントと呼ばれる摩擦部材を複数組み付けて構成されている。
CVTベルトは、CVTにおけるプーリに直接接触するものではないが、エレメントを組み付けた動力伝達用ベルトを構成する状態で回転して動力を伝え、その回転中に張力や曲げ応力を繰り返し受ける。そのため、CVTベルトを構成するリング部材の材料には、疲労強度に優れたものを用いる必要がある。
リング部材には、強度、疲労寿命などの様々な特性が要求されることから、現状では、強度、疲労寿命等に非常に優れた特性を有するマルエージング鋼がCVTリング用鋼材料として用いられている。しかし、マルエージング鋼は、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)及びCo(コバルト)等の高価な元素が多量に添加されているため、非常に高価なものとなっている。
そこで、本出願人らは、鋭意検討の結果、高強度で疲労寿命特性に優れ、マルエージング鋼よりも安価に提供可能なCVTリング部材を開発した(特許文献1、2)。これらの鋼は、材料費が安価であり、かつ、要求される特性を満足する。しかしながら、大量生産を行う場合の生産性の向上等を考慮すると、必須工程となる焼き入れ工程を、従来よりも短時間で処理可能とし、生産性の向上が可能な鋼の開発も望まれていた。
国際公開WO2015/087869号 特開2011−195861号
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、マルエージング鋼よりも安価に提供でき、高強度特性が得られ、かつ、生産性を向上可能なCVTリング素材及びその製造方法、並びに、そのCVT素材を用いたCVTリング部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、C:0.30質量%以上0.70質量%以下、
Si:0質量%超え2.50質量%以下、
Mn:1.00質量%超え2.00質量%以下、
S:0質量%超え0.030質量%以下、
Cr:1.00質量%以上4.00質量%以下、
Mo:0.50質量%以上3.00質量%以下、
V:0質量%超え1.00質量%以下、
Al:0質量%超え0.030質量%以下、
O:0質量%超え0.0050質量%以下、を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物よりなり、さらに、式1の関係を満たす化学成分を有する、CVTリング素材にある。
式1:7.9×[Mn]−151.2×[S]−821.6×[Al]+2241.5×[O]+17.6<27、(ただし、[Mn]、[S]、[Al]及び[O]は、それぞれ、Mn、S、Al及びOの含有質量%の値を示す。)
本発明の他の態様は、上記CVTリング素材からなる母材の表面に窒化層が形成されている、CVTリング部材にある。
本発明のさらに他の態様は、上記CVTリング素材の製造方法であって、
上記化学成分を有する鋳塊を準備し、
上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して無端ベルト状を呈する粗リング材を作製し、
上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施してリング材を作製し、
上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行う、CVTリング素材の製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、上記製造方法によりCVTリング素材を作製し、
該CVTリング素材に400〜500℃の温度で窒化処理を行う、CVTリング部材の製造方法にある。
上記CVTリング素材は、少なくとも、上記特定の化学成分を有している。これにより、優れた強度特性を具備することができる。また、上記CVTリング素材は、マルエージング鋼に比べて合金元素の含有量が少ないため、材料コストを低減することができる。そのため、上記CVTリング素材を用いて作製されるCVTリング部材を安価に提供することができる。
また、上記の態様のCVTリング素材の製造方法においては、上記特定の範囲の化学成分を有するリング材に、上記特定の条件で焼入処理を行う。この場合、化学成分においてMn含有量を従来よりも高めていることによって、焼き入れ性を向上させることができる。これにより、従来よりも高い生産性で上記CVTリング素材を作製することができる。
また、上記の態様のCVTリング部材の製造方法によれば、上記CVTリング素材への窒化処理により得られる窒化層(表面硬化層)の形成状態を安定化させることができ、狙いとする高強度特性と優れた疲労寿命を得ることができる。
実施例における、CVTリング部材の使用状態を示す説明図である。
上記CVTリング素材の化学成分は、以下のコンセプトに基づき、多数の実験によって定めたものである。
(1)Ni、Coを含有させず、かつ、Mo含有量を低減することによって、これらの高価な元素の含有量を大幅に減らし、原料コストを低減する。
(2)C、Si、Mo等の強度特性を左右する元素の含有範囲を最適化することにより、製品の強度を確保する。
(3)Mn含有量を比較的高い範囲で最適化することにより焼入性を向上させ、焼入れ工程の合理化による生産性向上を図る。
(4)Mn含有量が高い範囲における、S、Al、Oの含有範囲の最適化により、MnSの微細化を促し、疲労強度低下抑制及び延性低下の抑制を図る。
以下に、各成分範囲の限定理由についてさらに説明する。
C(炭素):0.30質量%以上0.70質量%以下、
Cは、高強度化に有効な元素であり、CVTリング部材に必要な強度を確保するためには、C含有量は0.30質量%以上とすることが必要であり、0.45質量%以上とするのが好ましい。一方、Cを過剰に添加すると製造性を悪化させることに加え、粗大な炭化物の生成による強度低下のおそれがあるため、C含有量は0.70質量%以下とする。
Si(シリコン):0質量%超え2.50質量%以下、
Siは、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、不可避的不純物として含まれる。一方、Siは、高強度化に有効な元素であるので添加することが好ましいが、過剰添加により、製造性の悪化、及び窒化性を阻害する要因となるおそれがあるため、Si含有量は2.5質量%以下とする。
Mn(マンガン):1.00質量%超え2.00質量%以下、
Mnは、焼き入れ性向上に有効であり、その効果を確実に得るために、1.00質量%以上添加する。一方、Mnを過剰添加すると残留オーステナイトが生成して強度低下を招くため、Mn含有量は2.00質量%以下とする。
S(硫黄):0質量%超え0.030質量%以下、
Sは、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、不可避的不純物として含まれる。一方、Sは、Mnと共にMnSを形成する元素である。MnSが多量に発生することを抑制するため、S含有量は0.030質量%以下に制限する。
Cr(クロム):1.00質量%以上4.00質量%以下、
Crは、窒化性を確保するのに必要な元素である。このような作用効果を得るために、Cr含有量は1.00質量%以上とし、好ましくは1.50質量%以上とする。一方、Crを過剰添加すると、粗大な炭化物の生成を促すことによる強度低下のおそれがあるだけでなく、コストアップとなるので、Cr含有量は4.00質量%以下とする。
Mo(モリブデン):0.50質量%以上3.00質量%以下、
Moは、鋼材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るために、0.50質量%以上添加する。一方、Moを過剰に添加するとコストアップとなるため、Mo含有量は3.00質量%以下とする。
V(バナジウム):0質量%超え1.00質量%以下、
Vは、鋼材の高強度化に有効であると共に、窒化性の向上に有効な元素であるので添加する。一方、Vを過剰に添加するとコストアップとなるため、V含有量は1.00質量%以下とする。
Al(アルミニウム):0質量%超え0.030質量%以下、
Alは、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、不可避的不純物として含まれる。一方、Alは、Oと結合してAl23を生成させる。粗大なAl23が生成した場合には疲労寿命が低下するおそれがあるため、Alの含有量を0.030質量%以下に制限する。
O(酸素):0質量%超え0.0050質量%以下、
Oは、鋼材の製造過程において意図的に添加しなくても、不可避的不純物として含まれる。Oは、Alと結合してAl23を生成させる。粗大なAl23が生成した場合には疲労寿命が低下するおそれがあるため、Oの含有量を0.0050質量%以下に制限する。
次に、上記CVTリング素材の化学成分は、各元素の含有範囲が上記範囲内にあるだけでなく、式1を満足することが重要である。
式1は、7.9×[Mn]−151.2×[S]−821.6×[Al]+2241.5×[O]+17.6<27、(ただし、[Mn]、[S]、[Al]及び[O]は、それぞれ、Mn、S、Al及びOの含有質量%の値を示す。)である。上記の個々の化学成分範囲を満足した上で、式1を満足することによって、Al23を微細化させ、それをMnSの析出核として作用させることにより、MnSを微細化させることができ、延性低下の抑制及び疲労強度低下の抑制が可能となる。
次に、上記CVTリング素材の製造方法では、上述したごとく、上記化学成分を有する鋳塊を準備し、
上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して無端ベルト状を呈する粗リング材を作製し、
上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施してリング材を作製し、
上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行う。
上記製造方法において、鋳塊から板材を作製する際の塑性加工としては、例えば、熱間圧延、熱間鍛造、冷間圧延、冷間鍛造等の公知の種々の塑性加工方法を適用することが可能である。通常は、熱間加工を実施した後、冷間加工を施して板材を作製する。なお、熱間加工によって板材表面に生成した黒皮(酸化皮膜)は、冷間加工の前に除去することが好ましい。黒皮の除去は、例えば、ピーリング等の機械加工や酸洗によって実施することができる。
上記板材に曲げ加工を行ってリング状に成形した後、端面同士の突合せ溶接を行うことにより粗リング材を作製することができる。曲げ加工には、例えば、ロール曲げ加工等の公知の方法を適用することができる。溶接には、例えば、プラズマ溶接、レーザ溶接等の公知の方法を適用することができる。
粗リング材は、CVTリング部材1本に相当する幅を有する板材から作製することもできる。一方、工程の合理化の観点からは、CVTリング部材複数本に相当する幅広の板材を管状に溶接しておき、当該管を所望の幅に切断して粗リング材を作製することもできる。この場合には、切断の後に、バレル研磨等により切断面のバリ取りを実施することが好ましい。
このようにして得られた粗リング材に軟化焼鈍処理を行うことにより、溶接による熱影響を除去するとともに冷間圧延時の圧延性を向上させることができる。その後、粗リング材に冷間圧延を行うことにより、所望の板厚を備えたリング材を得ることができる。このときのリング材の板厚は、最終的に得ようとするCVTリング素材やCVTリング部材の板厚とほぼ同一である。
上述した方法等により準備されたリング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行うことにより、CVTリング素材を得ることができる。焼入処理における加熱温度を850℃以上とすることにより、CVTリング素材をオーステナイト化することが可能となる。本発明の鋼においては、Mn含有量を最適化しているため、空冷で焼き入れすることが可能であり、連続炉等で処理することができ、生産性の向上が可能となる。一方、加熱温度が1000℃を超える場合には、結晶粒の粗大化により、上記CVTリング素材やCVTリング部材の強度の低下を招くおそれがある。かかる問題を回避する観点から、焼入処理における加熱温度は1000℃以下とする。
上述した焼入処理の後、歪みの矯正加工や周長調整が困難な場合、必要に応じて、上記リング材に焼戻し処理を行ってもよい。焼戻し処理における加熱温度は、150〜250℃または400〜500℃のいずれかの範囲とすることができる。焼戻し処理における加熱温度が250〜400℃の範囲は、材料を脆化させてしまうおそれがあるため、上述した範囲の温度を選択する。
また、焼入処理または焼戻し処理が完了した後、必要に応じて、これらの処理により生じた歪みを除去するための矯正加工や、CVTリング素材の周長を所望の範囲に調整するための周長調整を行ってもよい。これらの加工は、別々の工程として行ってもよく、矯正加工と周長調整とを兼ねた1つの工程として行ってもよい。
その後、400〜500℃の温度で上記CVTリング素材に窒化処理を行うことにより、CVTリング素材の表面に窒化層を形成し、CVTリング部材を作製することができる。窒化層は、母材に比較して窒素含有量が高く母材よりも硬度が向上した表面硬化層である。
窒化処理における処理温度を上記特定の範囲とすることにより、CVTリング部材の表面の窒化層(表面硬化層)の表面硬さを適正な範囲にすることができる。処理温度が400℃未満の場合には、窒化層の表面硬さが不十分となり、CVTリング部材の疲労寿命の低下を招くおそれがある。一方、処理温度が500℃を超える場合には、過剰窒化となるため、窒化層の表面硬さが高くなり過ぎる場合がある。その結果、CVTリング部材の脆化によって疲労寿命の低下を招くおそれがある。
なお、CVTリング部材の表面硬化層の表面硬さは、800〜950HVであることが好ましい。また、窒化処理としては、窒素単独又はアンモニア等の窒素化合物単独のガス、又は、それらの窒素化合物を含む混合ガスの雰囲気中で行うガス窒化、軟窒化、塩浴窒化、プラズマ窒化等の種々の方法を適用することができる。
(実施例1)
上記CVTリング素材及びその製造方法、並びにCVTリング部材及びその製造方法の実施例について、以下に説明する。図1に示すように、本例のCVTリング部材1は、CVTにおける、動力伝達用ベルト3を構成する部品として用いられる。動力伝達用ベルト3は、多数のエレメント2と、エレメント2に組み付けられた2組のCVTベルト10とを有している。CVTベルト10は、互いに積層された複数のCVTリング部材1から構成されている。
本例のCVTリング素材及びCVTリング部材の作製方法を以下に詳説する。
まず、30kgVIM(Vacuum Induction Melting)装置を用いて表1に示す化学成分を有する鋳塊を作製した。得られた鋳塊に鍛伸加工を施し、厚さ7mm、幅155mm、長さ300mmの板材を作製した。板表面に存在する黒皮を機械加工により除去した後、冷間圧延により、厚さ0.42mm、幅200mm、長さ500mmのサイズに圧延した。圧延後の板材を約300mmの長さに切断後、板材にロール曲げ加工を施して管状に成形し、プラズマ溶接により端面同士の突合せ溶接を行った。得られた管を5〜15mmの幅に切断し、周長300mmの粗リング材を得た。
その後、粗リング材をバレル研磨によって研磨して切断バリを除去した。さらに、熱処理にて軟化焼鈍後、0.20mm厚まで冷間圧延した。なお、軟化焼鈍処理における加熱温度は860℃とし、保持時間は2時間とした。得られた圧延済みのリング材に焼入・焼戻しを施した。焼入れは、リング材を950℃に2分間保持した後、空冷するという条件で行った。また、その後の焼戻しは、リング材を425℃に1時間保持するという条件で行った。
その後、リング材に、矯正加工を兼ねた周長調整を施し、CVTリング素材を作製した。図には示さないが、周長調整においては、一対のローラ間にリング材を掛け渡し、ローラ同士の距離を拡げる方向にテンションをかけながらリング材を回転させた。
周長調整の後、425℃の窒化温度でCVTリング素材に窒化処理を行った。本例においては、NH3とH2との混合ガス中において、上記CVTリング素材を上記特定の窒化温度に保持することにより窒化処理を行い、母材としてのCVTリング素材の表面に窒化層(表面硬化層)を形成した。以上により、表1に示すCVTリング部材(試料1〜21)を得た。
以上の試験体について、CVTリング部材の引張強度、疲労寿命を、以下の方法により評価した。
<引張強度>
引張強度は、一対のローラにCVTリング素材を掛け渡した後、ローラに加わる荷重を測定しながらローラ間の距離を徐々に広げて、CVTリング部材に引張荷重を加えた。そして、試験開始からCVTリング部材が破断するまでの最大荷重をCVTリング素材の断面積で除した値をCVTリング素材の引張強度とした。その結果を表1に示した。なお、引張強度の測定は、室温環境下にて行った。引張強度の評価においては、引張強度が1500MPa以上の場合を合格「○」と判定し、1500MPa未満の場合を不合格「×」と判定した。
<疲労寿命>
複数のローラを有する疲労試験機(図示略)を用いて疲労寿命を評価した。疲労試験機は、ローラを回転させることにより、複数のローラに掛け渡された試験体にテンションを掛けながら繰り返し曲げ応力を加えることができるように構成されている。試験体が破断するまでに加えられた曲げ応力の繰り返し数を疲労寿命とし、現行品であるマルエージング鋼を評価した場合の疲労寿命の平均繰り返し数である1×106回を基準回数とし、基準回数以上を合格「○」、基準回数未満を不合格「×」とした。
Figure 2019119898
表1に示すように、実施例にあたる試料1〜11は、上記特定の範囲の化学成分を有し、かつ、式1を満足しているため、窒化ばらつきが小さく、良好な引張強度特性を有し、かつ、疲労寿命の特性にも優れたものとなった。そのため、試料1〜11は、現行品であるマルエージング鋼の代替として十分に使用できることが理解できる。
一方、比較例に当たる試料12〜23は、引張強度、疲労寿命のうち少なくとも一方が不合格となる結果となった。
試料12は、C含有量が上記特定の範囲よりも少なかったため、引張強度が低くなった。
試料13は、Cの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料14は、Siの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料15は、Mnの含有量が上記特定の範囲よりも少なかったため、引張強度が低くなった。
試料16は、Mnの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、引張強度が低くなると共に、疲労寿命が劣る結果となった。
試料17は、Sの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料18は、Crの含有量が上記特定の範囲よりも少なかったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料19は、Crの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、この場合も、疲労寿命が劣る結果となった。
試料20は、Moの含有量が上記特定の範囲よりも少なかったため、引張強度が低くなり、疲労寿命が劣る結果となった。
試料21は、Alの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料22は、Oの含有量が上記特定の範囲よりも多かったため、疲労寿命が劣る結果となった。
試料23は、式1を満たしていないため、疲労寿命が不合格となった。

Claims (5)

  1. C:0.30質量%以上0.70質量%以下、
    Si:0質量%超え2.50質量%以下、
    Mn:1.00質量%超え2.00質量%以下、
    S:0質量%超え0.030質量%以下、
    Cr:1.00質量%以上4.00質量%以下、
    Mo:0.50質量%以上3.00質量%以下、
    V:0質量%超え1.00質量%以下、
    Al:0質量%超え0.030質量%以下、
    O:0質量%超え0.0050質量%以下、を含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物よりなり、さらに、式1の関係を満たす化学成分を有する、CVTリング素材。
    式1:7.9×[Mn]−151.2×[S]−821.6×[Al]+2241.5×[O]+17.6<27、(ただし、[Mn]、[S]、[Al]及び[O]は、それぞれ、Mn、S、Al及びOの含有質量%の値を示す。)
  2. 請求項1に記載のCVTリング素材からなる母材の表面に窒化層が形成されている、CVTリング部材。
  3. 請求項1に記載のCVTリング素材の製造方法であって、
    上記化学成分を有する鋳塊を準備し、
    上記鋳塊に塑性加工を施して板材を作製し、
    上記板材を曲げ加工するとともに端面同士を溶接して無端ベルト状を呈する粗リング材を作製し、
    上記粗リング材を軟化焼鈍した後に冷間圧延を施してリング材を作製し、
    上記リング材を850〜1000℃に加熱した後急冷して焼入処理を行う、CVTリング素材の製造方法。
  4. 上記焼入処理が完了した後、上記リング材を150〜250℃または400〜500℃のいずれかの範囲内に加熱して焼戻し処理を行う、請求項3に記載のCVTリング素材の製造方法。
  5. 請求項3または4に記載の製造方法によりCVTリング素材を作製し、
    該CVTリング素材に400〜500℃の温度で窒化処理を行う、CVTリング部材の製造方法。
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