JP2013087320A - 窒化部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】窒化部品は、脱炭層と窒化層とを含む表面硬化層を有する。部品内部の化学成分は、質量%で、C:0.15%以上0.5%未満を含有し、Cr:6.0%以下、V:2.5%以下、Mo:3.0%以下及びAl:1.5%以下から選択される1種又は2種以上を含有し、N含有量が0.03%以下であり、(0.08×[%Cr]+0.29×[%V]+0.15×[%Mo]+0.65×[%Al])/[%C]による窒化係数N1が1.0以上であり、表面硬化層は、その表面の炭素濃度をC1とした場合、(C−C1)/Cによる脱炭率が0.30以上であり、かつ、その表面の窒素濃度をN2とした場合、N2/(C−C1+0.2)による表面窒素濃度係数Nsが1.0以上である。
【選択図】なし
Description
上記表面硬化層は、炭素濃度が部品内部のC含有量よりも低い脱炭層と、窒素濃度が部品内部のN含有量よりも高い窒化層とを含んで構成されており、
上記部品内部の化学成分が、質量%で、
C:0.15%以上0.5%未満を含有し、
Cr:6.0%以下、V:2.5%以下、Mo:3.0%以下およびAl:1.5%以下から選択される1種または2種以上を含有し、
N含有量が0.03%以下であり、
(0.08×[%Cr]+0.29×[%V]+0.15×[%Mo]+0.65×[%Al])/[%C]の式にて定義される窒化係数N1が1.0以上であり、
上記表面硬化層は、その表面の炭素濃度をC1(質量%)とした場合、(C−C1)/Cの式にて定義される脱炭率が0.30以上であり、かつ、その表面の窒素濃度をN2(質量%)とした場合、N2/(C−C1+0.2)の式にて定義される表面窒素濃度係数Nsが1.0以上であることを特徴とする窒化部品にある(請求項1)。
上記脱炭工程を経た窒化用部材の表面を窒化処理して窒化層を形成し、上記脱炭層と上記窒化層とを含む表面硬化層を形成する窒化工程とを少なくとも有し、
上記素材としての窒化用部材の化学成分が、質量%で、
C:0.15%以上0.5%未満を含有し、
Cr:6.0%以下、V:2.5%以下、Mo:3.0%以下およびAl:1.5%以下から選択される1種または2種以上を含有し、
N含有量が0.03%以下であり、
(0.08×[%Cr]+0.29×[%V]+0.15×[%Mo]+0.65×[%Al])/[%C]の式にて定義される窒化係数N1が1.0以上であり、
上記脱炭工程は、上記表面硬化層表面の炭素濃度をC1(質量%)とした場合、(C−C1)/Cの式にて定義される脱炭率が0.30以上とされるとともに、
上記窒化工程は、上記表面硬化層表面の窒素濃度をN2(質量%)とした場合、N2/(C−C1+0.2)の式にて定義される表面窒素濃度係数Nsが1.0以上となるように窒化処理が施されることを特徴とする窒化部品の製造方法にある(請求項3)。
これを抑制する方法として、光輝焼鈍などの表面脱炭しないような前処理を施す等の方法があるが、脱炭層を除去するよりも生産性が低下し、高コストにならざるを得なかったため、一般的には切削等により除去していた。また、脱炭した部品表面を切削等により除去した後、窒化処理を施して所定部位に窒化層を形成することにより、表面硬化層を形成し、疲労強度を確保していた。
しかし、本発明者らは、脱炭層と窒化処理との関係について着目し、鋭意研究を重ねた結果、従来の予想に反して、不良部位として取り扱われていた脱炭層が疲労強度の低下といった悪影響を与えるどころか、所定の条件下で脱炭層に窒化処理を施すことにより、従来よりも窒化部品の表面の疲労強度を向上させることができることを知見した。またこれにより、従来では、窒化処理前に部品の表面に存在する脱炭層を除去するために不可欠であった切削等を施す必要がなくなることを見出した。
先ず、上記窒化部品について説明する。上記窒化部品は、表面が硬化してなる表面硬化層を有する鋼製の部品である。表面硬化層は、炭素濃度が部品内部のC含有量よりも低い脱炭層と、窒素濃度が部品内部のN含有量よりも高い窒化層とを含んで構成されている。ここで、上記部品内部とは、脱炭層および窒化層よりも内側に存在するマトリックス部分(母材部分)をいう。また、上記脱炭層とは、部品表面から内方に向かって存在する領域であって、部品表面から内方への深さに対する炭素濃度分布(質量%)をとった際に、炭素濃度が連続的に増加した後、一定濃度(すなわち、部品内部の炭素濃度)となる炭素濃度分布における、炭素濃度が一定濃度となる前までの部分をいう。また、上記窒化層とは、部品表面から内方に向かって存在する領域であって、部品表面から内方への深さに対する窒素濃度分布(質量%)をとった際に、窒素濃度が連続的に低下した後、一定濃度(すなわち、部品内部の窒素濃度)となる窒素濃度分布における、窒素濃度が一定濃度となる前までの部分をいう。なお、脱炭層の部品表面からの深さと窒化層の部品表面からの深さは、ほぼ同じであってもよいし、いずれか一方が深くてもよい。また、脱炭層および窒化層の深さに制限はなく、両者が同時に存在していれば、本発明の効果は得られる。
Cは、強度及び靱性を確保するために必須の元素である。さらには、脱炭層の炭素濃度と部品内部のC含有量との間に差を設けることが望ましい。そのため、C含有量の下限値は0.15%とする。C含有量の下限値は、好ましくは、0.20%、より好ましくは、0.30%である。一方、過度にCを含有すると粗大炭化物が生成して延性及び靱性が低下する。そのため、C含有量の上限値は0.5%未満とする。また、窒化部品の製造時に素材としての窒化用部材を所定形状にする場合に溶接が行われることがあり、過度にCを含有していると溶接性が確保できなくなる場合がある。C含有量の上限値は、好ましくは、0.45%である。
Cr:6.0%以下
Crは、窒化処理による表面硬度の向上に有効であるともに、部品表面の圧縮残留応力の付与に有効な元素である。一方、Crを過度に含有すると部品表面に不動態被膜が形成されやすくなり窒化性が急激に低下する。また、炭化物安定効果により炭化物の成長を助長して強度低下を招き、脱炭層の深さ制御が困難となる。そのため、Cr含有量の上限値を6.0%とする。Cr含有量の上限値は、好ましくは、5.0%である。
Vは、比較的少量であっても窒化処理による表面硬度の向上に有効であるともに、部品表面の圧縮残留応力の付与に有効な元素である。但し、V含有量が多くなりすぎてもその効果が飽和し、また、粗大な炭化物を生成して強度、靱性を低下させるおそれがある。さらに、脱炭層の深さ制御も困難になる。そのため、V含有量の上限値は2.5%とする。V含有量の上限値は、好ましくは、2.0%、より好ましくは、1.0%である。
Moは、窒化処理による表面硬度の向上に有効であるともに、部品表面の圧縮残留応力の付与に有効な元素である。但し、Mo含有量が多くなりすぎてもその効果が飽和し、コストアップを招く。また、脱炭処理時の温度域において炭化物が安定に存在しやすく、脱炭層の深さ制御が困難となる。そのため、Mo含有量の上限値は3.0%以下とする。Mo含有量の上限値は、好ましくは、2.0%である。
Alは、比較的少量であっても窒化処理による表面硬度の向上に有効であるともに、部品表面の圧縮残留応力の付与に有効な元素である。但し、Al含有量が多くなりすぎてもその効果が飽和する。さらに、鋼の製造性を極度に悪化させるだけでなく、強度低下も引き起こす。そのため、Al含有量の上限値は1.5%以下とする。Al含有量の上限値は、好ましくは、1.0%である。
N含有量を0.03%以下に制限した場合には、窒化処理前に鋼中に含まれる窒化物を低減することができ、窒化処理による表面硬度を確保しやすくなる。N含有量の上限値は、好ましくは、0.015%である。
上記式中、[%X]は、X成分の含有量(質量%)を意味する。窒化処理により析出しうる窒化物に含まれる窒素量よりも素地に含まれる炭素量が多いと、窒化物として析出しうる析出サイトに予め合金炭化物が析出し、窒化物の析出効率を下げて部品表面の圧縮残留応力を効率的に付与できなくなる。そのため、上記式を満たす必要がある。窒化係数N1が1.0未満になると、炭素量が過多となり、窒化処理による効果が十分に得られなくなる。そのため、部品表面の圧縮残留応力が十分に向上せず、十分な疲労特性が得られなくなる。上記窒化係数N1は、好ましくは、1.05以上、より好ましくは、1.10以上、さらに好ましくは、1.20以上であるとよい。なお、窒化係数N1の上限は、素地に含まれるC含有量に比較して、窒化処理により合金窒化物として析出しうるN含有量を確保するために特に限定されるものではない。窒化係数N1は、窒化物を形成する合金元素の量に依存し、それら合金元素を多量に含有すると部品コストの上昇を招くため、好ましくは、3.0以下、より好ましくは、2.5以下、さらに好ましくは、2.0以下であるとよい。
Siは、溶製時の脱酸剤として有効な元素である。但し、Si含有量が多すぎると延性が著しく低下するため、その上限値を1.5%とする。Si含有量の上限値は、好ましくは、0.5%である。
Mnは、溶製時の脱酸剤として有効な元素である。但し、Mn含有量が多すぎると延性が低下するため、その上限値を1.5%とする。Mn含有量の上限値は、好ましくは、1.0%である。
Niは、焼入れ性向上に有効な元素である。また、炭化物の生成抑制にも有効であり、粒界炭化物の低減による強度、靱性の向上に寄与しうる元素である。但し、Niを過度に含有すると製造性が悪化し、また得られる効果も飽和する。さらに高価な元素でありコストアップを招く。そのため、Ni含有量の上限値を4.0%とする。Ni含有量の上限値は、好ましくは、1.0%である。
Wは、炭化物を形成することにより、部品の耐摩耗性などの機能性向上に有効な元素である。しかしながら、過度に添加すると炭化物粗大化による強度、靱性の低下を招き、また得られる効果も飽和する。さらに高価な元素であり大幅なコストアップを招く。そのため、W含有量の上限値を5.0%とする。W含有量の上限値は、好ましくは、2.0%である。
B含有量が0.03%以下である場合には、窒化処理前に鋼中に含まれるホウ化物を低減することができ、窒化処理による表面硬度を確保しやすくなる。B含有量の上限値は、好ましくは、0.005%である。
<試料の作製>
表1に示す各化学成分組成を有する鋼塊を30kgVIM溶解炉にて溶解して作製した。次いで、鋼塊を表面研削する皮削り工程を経た後、熱間鍛伸・冷間圧延によって板状(板厚5mm)に成形した。これにより、素材としての板状の窒化用部材(板厚5mm×幅10mm×長さ600mm)を準備した。
脱炭率を以下のようにして算出した。具体的には、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用い、窒化処理後の試料表面50μm×50μmの領域について1μmピッチで表面の炭素濃度を測定した。各測定値の平均値を算出し、これをその試料表面の炭素濃度C1(質量%)とした。そして、式(C−C1)/Cより脱炭率を算出した。なお、式中のC(質量%)には、素材として用いた窒化用部材のC含有量を用いた。脱炭層および窒化層を含まない試料内部のC含有量は、素材として用いた窒化用部材のC含有量と実質的に同一である。
表面窒素濃度係数を以下のようにして算出した。具体的には、前述のEPMAを用い、窒化処理後の試料表面50μm×50μmの領域について1μmピッチで表面の窒素濃度を測定した。各測定値の平均値を算出し、これをその試料表面の窒素濃度N2(質量%)とした。そして、式N2/(C−C1+0.2)より表面窒素濃度係数Nsを算出した。
得られた窒化部品について、部品表面の圧縮残留応力の向上率を求めた。具体的には、試料1〜試料26の作製時に、脱炭処理を施さなかった点以外は同様にして、基準試料1〜基準試料26を作製した。次いで、各試料、各基準試料の板表面における圧縮残留応力を測定した。具体的には、管球にCr管球を使用するとともに解析方法に並傾法を適用し、各試料、各基準試料の板表面にX線をあて、各試料表面の圧縮残留応力σ1、各基準試料表面の圧縮残留応力σ0を測定した。そして、式σ1/σ0より圧縮残留応力の向上率を算出した。
上記各試料と同様にして作製した疲労試験のための各試験片(板厚5mm×幅10mm×長さ600mm)、上記各基準試料と同様に脱炭処理を施すことなく作製した疲労試験のための各基準試験片を用い、10t油圧サーボプレスにより3点曲げ疲労試験を行った。この際、上記疲労試験の条件は、支点間距離40mm、負荷荷重0.1〜5kNの片振り50Hzという条件で行った。脱炭処理を実施することにより疲労寿命が大幅に向上したものを「A」、疲労寿命がわずかに向上したものを「B」、疲労寿命が変わらないもしくは低下したものを「C」と評価した。
Claims (6)
- 表面が硬化してなる表面硬化層を有する鋼製の部品であって、
上記表面硬化層は、炭素濃度が部品内部のC含有量よりも低い脱炭層と、窒素濃度が部品内部のN含有量よりも高い窒化層とを含んで構成されており、
上記部品内部の化学成分が、質量%で、
C:0.15%以上0.5%未満を含有し、
Cr:6.0%以下、V:2.5%以下、Mo:3.0%以下およびAl:1.5%以下から選択される1種または2種以上を含有し、
N含有量が0.03%以下であり、
(0.08×[%Cr]+0.29×[%V]+0.15×[%Mo]+0.65×[%Al])/[%C]の式にて定義される窒化係数N1が1.0以上であり、
上記表面硬化層は、その表面の炭素濃度をC1(質量%)とした場合、(C−C1)/Cの式にて定義される脱炭率が0.30以上であり、かつ、その表面の窒素濃度をN2(質量%)とした場合、N2/(C−C1+0.2)の式にて定義される表面窒素濃度係数Nsが1.0以上であることを特徴とする窒化部品。 - 請求項1に記載の窒化部品であって、
上記化学成分は、質量%で、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、Ni:4.0%以下、W:5.0%以下およびB:0.03%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする窒化部品。 - 素材としての鋼製の窒化用部材の表面に脱炭層を形成する脱炭工程と、
上記脱炭工程を経た窒化用部材の表面を窒化処理して窒化層を形成し、上記脱炭層と上記窒化層とを含む表面硬化層を形成する窒化工程とを少なくとも有し、
上記素材としての窒化用部材の化学成分が、質量%で、
C:0.15%以上0.5%未満を含有し、
Cr:6.0%以下、V:2.5%以下、Mo:3.0%以下およびAl:1.5%以下から選択される1種または2種以上を含有し、
N含有量が0.03%以下であり、
(0.08×[%Cr]+0.29×[%V]+0.15×[%Mo]+0.65×[%Al])/[%C]の式にて定義される窒化係数N1が1.0以上であり、
上記脱炭工程は、上記表面硬化層表面の炭素濃度をC1(質量%)とした場合、(C−C1)/Cの式にて定義される脱炭率が0.30以上とされるとともに、
上記窒化工程は、上記表面硬化層表面の窒素濃度をN2(質量%)とした場合、N2/(C−C1+0.2)の式にて定義される表面窒素濃度係数Nsが1.0以上となるように窒化処理が施されることを特徴とする窒化部品の製造方法。 - 請求項3に記載の窒化部品の製造方法であって、
上記脱炭工程を経ることなく上記窒化用部材の表面を窒化処理して得られる窒化部品の表面の圧縮残留応力をσ0とし、上記脱炭工程を経た上記窒化用部材の表面を窒化処理して得られる窒化部品の表面の圧縮残留応力をσ1とした場合に、σ1/σ0の式にて定義される表面の圧縮残留応力の向上率が1.1以上であることを特徴とする窒化部品の製造方法。 - 請求項3または4に記載の窒化部品の製造方法であって、
上記化学成分は、質量%で、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、Ni:4.0%以下、W:5.0%以下およびB:0.03%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする窒化部品の製造方法。 - 請求項3〜5のいずれか1項に記載の窒化部品の製造方法であって、
上記脱炭工程は、上記素材としての鋼製の窒化用部材の表面に脱炭処理を施すことにより脱炭層を形成することを特徴とする窒化部品の製造方法。
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JP2019119898A (ja) * | 2017-12-28 | 2019-07-22 | 愛知製鋼株式会社 | Cvtリング素材、cvtリング部材及びこれらの製造方法 |
WO2023090986A1 (en) * | 2021-11-16 | 2023-05-25 | Māris KESNERS | Steel surface decarburizing method for finishing the surface of steel parts with smoothing |
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WO2011111873A1 (ja) * | 2010-03-11 | 2011-09-15 | 新日本製鐵株式会社 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼材と高強度ボルト、及び、その製造方法 |
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