以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による方向性結合器を示す平面図である。図2は、図1のA−A'線に沿う断面図である。
図1,2において、方向性結合器には、マイクロストリップ線路が用いられている。また、方向性結合器は、誘電体基板100、第1導体パターン部110、第2導体パターン部120、第3導体パターン部130、第4導体パターン部140、第5導体パターン部150、第6導体パターン部160、第7導体パターン部170、第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184、及び地導体190を有している。
各導体パターン部110〜170,181〜184は、ストリップ導体である。また、各導体パターン部110〜170,181〜184は、誘電体基板100の第1の面(表面)に形成されている。地導体190は、誘電体基板100の第2の面(裏面)に形成されている。即ち、地導体190は、各導体パターン部110〜170及び各入出力用導体パターン部181〜184から隔離して形成されている。また、地導体190は、接地電位とされている。
第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120は、(誘電体基板100の平面視において)互いに間隔をおいて対向して配置されている。また、第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120は、図1のB−B'線に対して線対称になるように配置されている。
第1導体パターン部110は、第1直線領域111、第1L字状領域112、第2直線領域113及び第2L字状領域114を含んでいる。第1直線領域111及び第2直線領域113は、図1のB−B'線に沿って配置されている。第1直線領域111及び第1L字状領域112は、連続しており、全体として連続L字状に形成されている。第2直線領域113及び第2L字状領域114は、連続しており、全体として連続L字状に形成されている。第1L字状領域112及び第2L字状領域114は、連続している。
第2導体パターン部120は、第1導体パターン部110と同様に、第1直線領域121、第1L字状領域122、第2直線領域123及び第2L字状領域124を含んでいる。第2導体パターン部120における各領域121〜124の構成は、第1導体パターン部110における各領域111〜114の構成と同様である。
第1導体パターン部110における第1直線領域111と、第2導体パターン部120における第1直線領域121とは、互いに側結合部(側結合箇所)を形成している。また、第1導体パターン部110における第2直線領域113と、第2導体パターン部120における第2直線領域123とは、互いに側結合部を形成している。
側結合部において、第1直線領域111と第1直線領域121との間の距離は、第1直線領域111から地導体190までの距離、及び第1直線領域121から地導体190までの距離のいずれか短い方(誘電体基板100の厚み寸法)の2倍以内となるように予め設定されている。これと同様に、第2直線領域113と第2直線領域123との間の距離は、第1導体パターン部110から地導体190までの距離、及び第2導体パターン部120から地導体190までの距離のいずれか短い方の2倍以内となるように予め設定されている。
第3〜第7導体パターン部130〜170は、図1のA−A'線に沿って配置されている。第3導体パターン部130は、第1L字状領域112及び第2L字状領域114の連続箇所における反第2導体パターン部120側(図1の上側)に設けられ、第1L字状領域112及び第2L字状領域114と連続している。
第4導体パターン部140は、第1L字状領域112及び第2L字状領域114の連続箇所における第2導体パターン部120側(図1の下側)に設けられ、第1L字状領域112及び第2L字状領域114と連続している。
第5導体パターン部150は、第1L字状領域122及び第2L字状領域124の連続箇所における反第1導体パターン部110側(図1の下側)に設けられ、第1L字状領域122及び第2L字状領域124と連続している。第3導体パターン部130と第5導体パターン部150とは、図1のB−B'線に対して線対称に配置されている。
第6導体パターン部160は、第1L字状領域122及び第2L字状領域124の連続箇所における第1導体パターン部110側(図1の上側)に設けられ、第1L字状領域122及び第2L字状領域124と連続している。第4導体パターン部140と第6導体パターン部160とは、図1のB−B'線に対して線対称に配置されている。
第7導体パターン部170は、第4導体パターン部140と第6導体パターン部160との間(即ち、第1導体パターン部110と第2導体パターン部120との間)に配置されている。また、第7導体パターン部170の形状は、矩形状である。さらに、第7導体パターン部170は、第4導体パターン部140及び第6導体パターン部160と連続している。第7導体パターン部170の幅L2は、第4導体パターン部140及び第6導体パターン部160のそれぞれの幅L1よりも幅広である。なお、本明細書では、第1〜第7導体パターン部110〜170及びスルーホール101A,101Bをまとめたものを、単位セル(第1単位セル)1aと称する。
ここで、誘電体基板100における第3導体パターン部130の反第1導体パターン部110側の端部(図1の上端部)には、スルーホール(第1接続導体)101Aが設けられている。スルーホール101Aは、第3導体パターン部130と地導体190とを電気的に接続している。また、誘電体基板100における第5導体パターン部150の反第2導体パターン部120側の端部(図1の下端部)には、スルーホール(第2接続導体)101Bが設けられている。スルーホール101Bは、第5導体パターン部150と地導体190とを電気的に接続している。つまり、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150は、電気的に地導体190に接続され、接地電位とされている。
第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとは、それぞれ誘導性スタブ(ショートスタブ)を構成している。これらの誘導性スタブの電気長は、誘導性を示す0度以上90度以下に予め設定されている。
各入出力用導体パターン部181〜184の形状は、L字状である。第1及び第3入出力用導体パターン部181,183は、図1のB−B'線に対して線対称になるように配置されている。第1入出力用導体パターン部181のL字の先端は、第1直線領域111における反第2直線領域113側の端(図1の左端)と対向配置されている。また、第1入出力用導体パターン部181のL字の先端と第1直線領域111との間には、入出力ギャップ102Aをなす間隙が設けられている。
第2入出力用導体パターン部182のL字の先端は、第2直線領域113における反第1直線領域111側の端(図1の右端)と対向配置されている。また、第2入出力用導体パターン部182のL字の先端と第2直線領域113との間には、入出力ギャップ102Bをなす間隙が設けられている。
第3及び第4入出力用導体パターン部183,184は、第2導体パターン部120との関係で、第1及び第2入出力用導体パターン部181,182と第1導体パターン部110との関係と同様に配置されている。また、第3及び第4入出力用導体パターン部183,184と第2導体パターン部120との間には、それぞれ入出力ギャップ102C,102Dをなす間隙が設けられている。
次に、図1の方向性結合器の等価回路について説明する。図3は、図1のB−B'線に沿う断面に磁気壁を仮定した場合の方向性結合器の偶モード動作時の等価回路を示す回路図である。図3では、第1導体パターン部110、第3導体パターン部130、第4導体パターン部140、スルーホール101A、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所、第1入出力用導体パターン部181及び第2入出力用導体パターン部182を、偶モード動作時の等価回路として等価的に表している。
図3において、図1の方向性結合器の偶モード動作時の等価回路は、順番に直列接続された伝送線路モデル11A、キャパシタ(第1キャパシタ)12A、インダクタ(第1インダクタ)13A、インダクタ(第2インダクタ)13B、キャパシタ(第2キャパシタ)12B及び伝送線路モデル11Bと、インダクタ13Aとインダクタ13Bとの間にそれぞれ一端が並列接続され、他端がグランド(接地電位)に接続されたキャパシタ(第3キャパシタ)14及びインダクタ(第3インダクタ)15とを用いて表される。
伝送線路モデル11Aは、第1入出力用導体パターン部181を等価的に表したものである。キャパシタ12Aは、入出力ギャップ102Aのキャパシタンスを等価的に表したものである。インダクタ13Aは、第1導体パターン部110における第1直線領域111及び第1L字状領域112のインダクタンスを等価的に表したものである。
インダクタ13Aは、第1導体パターン部110における第1直線領域111及び第1L字状領域112のインダクタンスを等価的に表したものである。インダクタ13Bは、第1導体パターン部110における第2直線領域113及び第2L字状領域114のインダクタンスを等価的に表したものである。キャパシタ12Bは、入出力ギャップ102Bのキャパシタンスを等価的に表したものである。伝送線路モデル11Bは、第2入出力用導体パターン部182を等価的に表したものである。
キャパシタ14は、第1導体パターン部110の全領域と、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線から第1導体パターン部110側の領域とで形成される部分のキャパシタンスを等価的に表したものである。インダクタ15は、第3導体パターン部130及びスルーホール101Aのインダクタンスを等価的に表したものである。
次に、図4は、図1のB−B'線に沿う断面に電気壁を仮定した場合の方向性結合器の奇モード動作時の等価回路を示す回路図である。図4では、第1導体パターン部110、第3導体パターン部130、第4導体パターン部140、スルーホール101A、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所、第1入出力用導体パターン部181及び第2入出力用導体パターン部182を、奇モード動作時の等価回路として等価的に表している。
また、図4において、図1の方向性結合器の奇モード動作時の等価回路は、順番に直列接続された伝送線路モデル21A、キャパシタ(第4キャパシタ)22A、インダクタ(第4インダクタ)23A、インダクタ(第5インダクタ)23B、キャパシタ(第5キャパシタ)22B及び伝送線路モデル21Bと、インダクタ23Aとインダクタ23Bとの間にそれぞれ一端が並列接続され、他端がグランド(接地電位)に接続されたキャパシタ(第6キャパシタ)24及びインダクタ(第6インダクタ)25とを用いて表される。
伝送線路モデル21Aは、第1入出力用導体パターン部181を等価的に表したものである。キャパシタ22Aは、入出力ギャップ102Aのキャパシタンスを等価的に表したものである。インダクタ23Aは、第1導体パターン部110における第1直線領域111及び第1L字状領域112のインダクタンスを等価的に表したものである。
インダクタ23Aは、第1導体パターン部110における第1直線領域111及び第1L字状領域112のインダクタンスを等価的に表したものである。インダクタ23Bは、第1導体パターン部110における第2直線領域113及び第2L字状領域114のインダクタンスを等価的に表したものである。キャパシタ22Bは、入出力ギャップ102Bのキャパシタンスを等価的に表したものである。伝送線路モデル21Bは、第2入出力用導体パターン部182を等価的に表したものである。
キャパシタ24は、第1導体パターン部110の全領域のキャパシタンスを等価的に表したものである。インダクタ25は、第1導体パターン部110における第3導体パターン部130を第7導体パターン部170側へ延長した領域(第1及び第2L字状領域112,114の境界箇所の近傍)と、第3導体パターン部130と、スルーホール101Aと、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線から第1導体パターン部110側の領域とで形成される部分とのインダクタンスを等価的に表したものである。
次に、実施の形態1の方向性結合器の動作について説明する。図3又は図4で表される等価回路において、キャパシタ12Aの一端とキャパシタ12Bの他端との間の伝搬定数γe、及びキャパシタ22Aの一端とキャパシタ22Bの他端との間の伝搬定数γoは、それぞれ次の式(1)で表される。また、式(1)のインピーダンスZi(i=e,o)は、次の式(2)で表される。さらに、式(1)のアドミッタンスYiは、次の式(3)で表される。
但し、L
e Rは、インダクタ13A又は13Bのインダクタンスに対応している。L
o Rは、インダクタ23A又は23Bのインダクタンスに対応している。C
e Rは、キャパシタ14のキャパシタンスに対応している。C
o Rは、キャパシタ24のキャパシタンスに対応している。L
e Lは、インダクタ15のインダクタンスに対応している。L
o Lは、インダクタ25のインダクタンスに対応している。C
e Lは、キャパシタ12A又は17bのキャパシタンスに対応している。C
o Lは、キャパシタ22A又は22bのキャパシタンスに対応している。ωは、角周波数である。α
eは、偶モード動作時の減衰定数である。α
oは、奇モード動作時の減衰定数である。β
eは、偶モード動作時の位相定数である。β
oは、奇モード動作時の位相定数である。
図5は、図3の等価回路のLe R・Ce Lの方がLe L・Ce Rよりも大きい場合の分散特性を示すグラフである。なお、fe clは位相定数βeの値が0以外となる帯域の低周波側の帯域端部の周波数である。fe seは、位相定数βeの値が0となる周波数の低い方の周波数である。fe shは、位相定数βeの値が0となる周波数の高い方の周波数である。fe crは、位相定数βeの値が0以外となる帯域の高周波側の帯域端部の周波数である。これらの周波数は、式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)で表される。なお、式(4)及び式(7)のωi 0は、式(8)で表される。式(4)及び式(7)のωi Lは、式(9)で表される。式(4)及び式(7)のκiは、式(10)で表される。
図5の分散特性では、fe clからfe seの帯域、及びfe shからfe crの帯域が通過帯域である。また、fe seからfe shの帯域は、位相定数βeが0であるため、バンドギャップをなす。このため、fe seからfe shの帯域では、信号が通過しない。つまり、通過帯域は、fe clからfe seの帯域、及びfe shからfe crの帯域であり、不連続である。このため、Le R・Ce Lの方がLe L・Ce Rよりも大きい場合の通過帯域は、狭帯域である。なお、Le R・Ce Lの方がLe L・Ce Rよりも小さい場合の通過帯域も、狭帯域である。
他方、Le R・Ce LとLe L・Ce Rとが同じ場合には、fe seとfe shとが一致するため、図6に示すように、バンドギャップが存在しない分散特性となる。このため、通過帯域がfe clからfe crまでの間で連続的となる。この結果、通過帯域は広帯域となる。つまり、Le R・Ce LとLe L・Ce Rとを等しくすることで、広帯域な通過特性が実現できる。なお、ここでは、偶モード動作時の場合について説明したが、奇モード動作時においても同様に、Lo R・Co LとLo L・Co Rとを等しくすることで、広帯域な通過特性が実現できる。
ここで、偶・奇モード動作時において、ともにバンドギャップが存在せず、かつ偶モード動作時の分散特性が奇モード動作時の分散特性に対して大きく平行移動(低周波側へ移動)した場合を考える。このときの分散特性は、図7に示すようになる。この図7に示す分散特性では、バンドギャップが存在しないため、偶・奇モード動作時ともに広帯域な通過特性が実現される。
さらに、偶・奇モード動作時でともに通過帯域となる帯域は、fo clからfe crであり、広帯域である。また、偶モード動作時の分散特性が奇モード動作時の分散特性に対して大きく平行移動しているため、偶・奇モード動作時の位相定数差は大きくなり、偶・奇モード動作時でともに通過帯域となる帯域でほぼ一定となる。以上のことから、図7のような分散特性を実現できれば、密結合で広帯域なフォワード結合を実現できる。
次に、実施の形態1の方向性結合器の偶・奇モード動作時の等価回路における各素子の値の関係について説明する。図1の方向性結合器では、先に説明した通り、第1直線領域111と第1直線領域121との間の距離は、第1直線領域111から地導体190までの距離、及び第1直線領域121から地導体190までの距離(誘電体基板100の厚み寸法)のいずれか短い方の2倍以内に設定されている。
これと同様に、第2直線領域113と第2直線領域123との間の距離は、第2直線領域113から地導体190までの距離及び第2直線領域123から地導体190までの距離のいずれか短い方の2倍以内とされている。このように距離が設定されているため、側結合部において、電磁結合が生じる。
これにより、偶モード動作時では、第1直線領域111と第1直線領域121との間、及び第2直線領域113と第2直線領域123との間に、それぞれ相互インダクタンスが生じる。これにより、偶モード動作時の等価回路におけるインダクタ13A,13Bの値は、奇モード動作時の等価回路におけるインダクタ23A,23Bの値よりも大きくなる。即ち、Le Rは、Lo Rよりも大きくなる。
また、偶モード動作時では、図1における線B−B'に沿う断面が磁気壁となるため、第4導体パターン部140は、容量性となる。これに対して、奇モード動作時では、図1における線B−B'に沿う断面が電気壁となるため、第4導体パターン部140は、誘導性となる。ここで、奇モード動作時では、第1直線領域111と第1直線領域121との間、及び第2直線領域113と第2直線領域123との間に、それぞれ相互キャパシタンスが生じる。
このことから、偶モード動作時では、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所とが容量性となり、奇モード動作時では、第1直線領域111と第1直線領域121との間、及び第2直線領域113と第2直線領域123との間に、それぞれ相互キャパシタンスが生じる。このため、各導体パターン部110〜170について最適な寸法を選択することによって、Ce RとCo Rとを同じ値に設定することができる。
さらに、奇モード動作時においては、図1のB−B'線に沿う断面が電気壁となるため、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所とが、誘導性となる。つまり、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所とによるインダクタが、第3導体パターン部130とスルーホール101Aとによるインダクタに並列に接続されることになる。
即ち、Le Lは、第3導体パターン部130のインダクタの値となる。これに対して、Lo Lは、第3導体パターン部130によるインダクタと、第4導体パターン部140と、第7導体パターン部170における図1のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の箇所とによるインダクタが並列接続された値となる。この結果、Le Lは、Lo Lよりも大きくなる。
他方、偶モード動作時の等価回路において第1及び第2入出力ギャップ102A,102Bのキャパシタンスにそれぞれ対応したキャパシタ12A,12Bと、奇モード動作時の等価回路において第1及び第2入出力ギャップ102A,102Bのキャパシタンスにそれぞれ対応したキャパシタ22A、22Bとは、側結合部に生じる電磁結合の影響を受けない。即ち、Ce LとCo Lとは、等しい値となる。
従って、これらの内容をまとめると、偶モード動作時及び奇モード動作時の等価回路における各素子の値の関係は、次の式(11)〜(14)で表される。
式(5)、(11)及び(13)により、fe seの方がfo seよりも小さくなることが分かる(次の式(15)を参照)。また、式(11)と式(13)との関係を考慮して、次の式(15)〜(19)を満たし、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiの差が大きくなるように各キャパシタ及び各インダクタの値を決定することができる。即ち、図7に示した分散特性を実現することができる。
以上の説明から、式(15)〜(19)を満たし、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiの差が大きくなるように、各キャパシタ及び各インダクタの値を決定することにより、偶モード動作時及び奇モード動作時において、図7に示した分散特性を実現することができる。即ち、図1の方向性結合器の各パターンの寸法を、等価回路が図7に示した分散特性を実現するように決定することにより、密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
ここで、図1の方向性結合器は、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiの差により結合するので、フォワード結合となる。また、偶モード動作時の位相速度と奇モード動作時の位相速度との差が大きいほど、フォワード結合の方向性結合器は密結合となるが、偶モード動作時の位相定数βeと奇モード動作時の位相定数βoとを平行移動するように変化させることができ、その平行移動量を大きくすることもできる。この結果、位相定数βiの差が大きくなり、密結合となる。さらに、偶モード動作時及び奇モード動作時ともにバンドギャップが存在しないので、広帯域となる。また、右手系線路を用いた一般的な方向性結合器と比較して、同じ結合量であれば、大幅に小型化することができる。
上記のような実施の形態1の方向性結合器によれば、第1導体パターン部110と第2導体パターン部120とが側結合される側結合部において、第1導体パターン部110と第2導体パターン部120との間の距離が、第1導体パターン部110から地導体190までの距離及び第2ストリップ導体から地導体までの距離のいずれか短い方の2倍以内に予め設定されている。この構成により、偶モード動作時及び奇モード動作時ともにバンドギャップが存在せず、左手系の通過帯域と右手系の通過帯域とを連続させることができる。この結果、方向性結合器の広帯域化を図ることができる。
また、第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120が、第4導体パターン部140又は第6導体パターン部160を介して第7導体パターン部170に接続され、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150がそれぞれスルーホール101A及びスルーホール101Bを介して地導体190に接続されている。この構成により、偶モード動作時の位相定数の周波数特性と奇モード動作時の位相定数の周波数特性とを平行移動するように変化させることができる。このため、密結合かつ広帯域で、フォワード結合する方向性結合器について、小型化を図ることができる。
なお、実施の形態1では、地導体190が誘電体基板100の裏面に形成された例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、地導体190は、各導体パターン部110〜170,181〜184と同様に、誘電体基板100の表面に形成されて、方向性結合器にコプレーナ線路を用いてもよい。
また、実施の形態1において、誘電体基板100として多層基板を用いる場合には、地導体190、各導体パターン部110〜170,181〜184を、層の表面に形成してもよく、又は層間に形成してもよい。
さらに、実施の形態1において、各導体パターン部110〜170,181〜184に相当する導体を覆うように地導体190を配置し、方向性結合器に同軸線路を用いてもよい。これらの場合(コプレーナ線路、多層基板、あるいは同軸線路を用いる場合)でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、これらの変形は、以下の実施の形態においても同様に適用することができる。
また、実施の形態1では、第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120の両端に位置する第1直線領域111,121同士と、第2直線領域113,123同士とによって、それぞれ側結合部が形成されていた。しかしながら、この例に限定するものではなく、側結合部は、第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120の一端のみに形成されてもよい。さらに、側結合部は、第1導体パターン部110及び第2導体パターン部120における第7導体パターン部170の近傍箇所に形成されてもよい。この場合でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、このような変形は、以下の実施の形態においても同様に適用することができる。
さらに、実施の形態1の図3に示す等価回路において、キャパシタ14及びインダクタ15の一端がキャパシタ12A及びインダクタ13A間に接続され、かつ図4に示す等価回路において、キャパシタ24及びインダクタ25の一端がキャパシタ22A及びインダクタ23A間に接続されるような構成であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。これと同様に、図3に示す等価回路において、キャパシタ14及びインダクタ15の一端がキャパシタ12B及びインダクタ13B間に接続され、かつ図4に示す等価回路において、キャパシタ24及びインダクタ25の一端がキャパシタ22B及びインダクタ23B間に接続されるような構成であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとがそれぞれ誘導性スタブを構成していた。これに対して、実施の形態2では、図8に示すように、実施の形態1の方向性結合器のスルーホール101A,101Bを省略してもよい。
この場合でも、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150は、電気的(高周波的)に地導体190に接続される。これにより、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150は、それぞれ誘導性スタブ(オープンスタブ)を構成する。ここで、この誘導性スタブの電気長が90度以上180以下となるように、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150のそれぞれの長さが予め設定されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態2の方向性結合器では、図8のB−B'線よりも第1導体パターン部110側の第7導体パターン部170と第4導体パターン部140とのいずれかの位置で誘導性スタブが電気的に地導体190に接続されることになる。このため、電気長を90度以上180とする誘導スタブを用いた場合でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。これとともに、実施の形態1におけるスルーホール101A,101Bを省略することができるため、方向性結合器の構成の簡略化を図ることができる。
なお、実施の形態2のような変形は、実施の形態1の方向性結合器のみならず、以下の実施の形態の方向性結合器においても同様に適用することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、第1導体パターン部110と第1及び第2入出力用導体パターン部181,182とのそれぞれの間、並びに第2導体パターン部120と第3及び第4入出力用導体パターン部183,184とのそれぞれの間に、入出力ギャップ102A〜102Dをなす間隙が設けられていた。これに対して、実施の形態3では、第1導体パターン部210に単位セル内ギャップ203A,203Bをなす間隙が設けられ、第2導体パターン部220に単位セル内ギャップ203C,203Dをなす間隙が設けられている。
図9は、この発明の実施の形態3による方向性結合器を示す平面図である。図9において、実施の形態3の方向性結合器では、実施の形態1における第1及び第2導体パターン部110,120に代えて、第1及び第2導体パターン部210,220が用いられている。また、実施の形態3の方向性結合器では、実施の形態1における第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184に代えて、第1〜第4入出力用導体パターン部281〜284が用いられている。
第1導体パターン部210は、第1コ字状領域211、第1L字状領域212、第2コ字状領域213及び第1L字状領域214を有している。第2導体パターン部220も、第1導体パターン部210と同様に、第1コ字状領域221、第1L字状領域222、第2コ字状領域223及び第1L字状領域224を有している。各L字状領域212,214,222,224の構成は、実施の形態1の各L字状領域112,114,122,124の構成と同様である。
第1導体パターン部210の第1コ字状領域211と、第2導体パターン部220の第1コ字状領域221とは、側結合部を形成している。また、第1導体パターン部210の第2コ字状領域213と、第2導体パターン部220の第2コ字状領域223とは、側結合部を形成している。
第1導体パターン部210の第1コ字状領域211の一端は、第1入出力用導体パターン部281の一端と連続している。第1コ字状領域211の他端と、第1L字状領域212との間には、単位セル内ギャップ203Aをなす間隙が設けられている。第1導体パターン部210の第2コ字状領域213の一端は、第2入出力用導体パターン部282の一端と連続している。第2コ字状領域213の他端と、第2L字状領域214との間には、単位セル内ギャップ203Bをなす間隙が設けられている。
第2導体パターン部220の第1コ字状領域221の一端は、第3入出力用導体パターン部283の一端と連続している。第1コ字状領域221の他端と、第1L字状領域222との間には、単位セル内ギャップ203Cをなす間隙が設けられている。第2コ字状領域223の一端は、第4入出力用導体パターン部284の一端と連続している。第2コ字状領域223の他端と、第2L字状領域224との間には、単位セル内ギャップ203Dをなす間隙が設けられている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態3の方向性結合器によれば、第1導体パターン部210に単位セル内ギャップ203A,203Bをなす間隙が設けられ、第2導体パターン部220に、単位セル内ギャップ203C,203Dをなす間隙が設けられた構成であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
ここで、本明細書では、図9における第1及び第2導体パターン部210,220と、図1における第3〜第7導体パターン部130〜170及びスルーホール101A,101Bとをまとめたものを、単位セル(第2単位セル)1bと称する。
実施の形態4.
実施の形態1,3では、第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとが、単位セル1aのほぼ中央に配置されていた。これに対して、実施の形態4では、図10に示すように、第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとが単位セル1aの端部に配置されている。また、第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150は、それぞれ第1直線領域111,121に対して平行に配置されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態4の方向性結合器によれば、第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとが単位セル1aの端部に配置されている場合であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態3における第3導体パターン部130及びスルーホール101Aと、第5導体パターン部150及びスルーホール101Bとが、実施の形態4のように単位セル1bの端部に配置されていてもよい。
また、実施の形態2〜4のような変形は、実施の形態1の方向性結合器のみならず、以下の実施の形態の方向性結合器についても同様に適用することができる。
実施の形態5.
実施の形態1では、1つの単位セル1aが用いられた。これに対して、実施の形態5では、3つの単位セル1aが用いられる。図11は、この発明の実施の形態5による方向性結合器を示す平面図である。図11において、実施の形態5による方向性結合器は、3つの単位セル1aを有している。これらの3つの単位セル1aは、直列に並べられている。
また、この発明の実施の形態5の方向性結合器では、最前段(図11の左側)の単位セル1aにおける第1及び第2導体パターン部110と、第1及び第3入出力用導体パターン部181,183との間に、それぞれ入出力ギャップ102A,102Cをなす間隙が設けられている。さらに、最後段(図11の右側)の単位セル1aにおける第1及び第2導体パターン部110と、第2及び第4入出力用導体パターン部182,184との間に、それぞれ入出力ギャップ102B,102Dをなす間隙が設けられている。
また、互いに隣り合う単位セル1a同士の第1導体パターン部110の間には、単位セル間ギャップ303A,303Bをなす間隙が設けられている。さらに、互いに隣り合う単位セル1a同士の第2導体パターン部120の間には、単位セル間ギャップ303C,303Dをなす間隙が設けられている。従って、3つの単位セル1aは、単位セル間ギャップ303A〜303Dを介して、縦続接続されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態5の方向性結合器によれば、実施の形態1の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在しない。また、モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動するように大きく変化する。これにより、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態5の方向性結合器では、実施の形態1の方向性結合器よりも、結合線路部分が長いので、より密結合とすることができる。
実施の形態6.
実施の形態5では、第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184と単位セル1aとの間に、入出力ギャップ102A〜102Dをなす間隙が設けられていた。また、実施の形態5では、互いに隣り合う単位セル1a同士の間に、単位セル間ギャップ303A〜303Dをなす間隙が設けられていた。
これに対して、実施の形態6では、図12に示すように、第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184と単位セル1aとの間に、インターデジタルキャパシタ402A〜402Dをなす間隙が設けられている。また、実施の形態6では、互いに隣り合う単位セル1a同士の間に、インターデジタルキャパシタ403A〜403Dをなす間隙が設けられている。具体的に、実施の形態6の第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184の単位セル1a側の端が凹状又は凸状に形成されている。また、実施の形態6の各単位セル1aにおける第1及び第2導体パターン部110,120の端が凹状又は凸状に形成されている。他の構成は、実施の形態5と同様である。
上記のような実施の形態6の方向性結合器によれば、互いに隣り合う単位セル1a同士の間、及び第1〜第4入出力用導体パターン部181〜184と単位セル1aとの間に、それぞれインターデジタルキャパシタ402A〜402D,403A〜403Dをなす間隙が設けられている。この場合であっても、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
また、インターデジタルキャパシタ402A〜402D,403A〜403Dが用いられているので、実施の形態5の入出力ギャップ102A〜102D及び単位セル間ギャップ303A〜303Dに比べて、キャパシタンスが増加し、より低周波数で密結合な方向性結合器を実現できる。
なお、実施の形態6のような変形は、実施の形態5の方向性結合器のみならず、以下の実施の形態の方向性結合器についても同様に適用することができる。
実施の形態7.
実施の形態3では、1つの単位セル1bが用いられた。これに対して、実施の形態7では、3つの単位セル1bが用いられる。図13は、この発明の実施の形態7による方向性結合器を示す平面図である。図13において、実施の形態7による方向性結合器は、3つの単位セル1bを有している。
これらの3つの単位セル1bは、直列に並べられている。また、互いに隣り合う単位セル1b同士は、図9に示す第1コ字状領域211及び第2コ字状領域213が連続している(1つのコ字状領域を共有している)。これと同様に、互いに隣り合う単位セル1b同士は、図9に示す第1コ字状領域221及び第1L字状領域222が連続している(1つのコ字状領域を共有している)。従って、3つの単位セル1bが縦続接続されている。他の構成は、実施の形態3と同様である。
上記のような実施の形態7の方向性結合器によれば、実施の形態1の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在しない。また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。この構成により、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態7の方向性結合器は、実施の形態1の方向性結合器よりも結合線路部分が長いので、より密結合とすることができる。
実施の形態8.
実施の形態7の方向性結合器では、単位セル1b内の第1及び第2導体パターン部210,220に、単位セル内ギャップ203A〜203Dをなす間隙が設けられていた。これに対して、実施の形態8では、図14に示すように、単位セル1b内の第1及び第2導体パターン部210,220に、実施の形態6と同様のインターデジタルキャパシタ402A〜402Dをなす間隙が設けられている。他の構成は、実施の形態6,7と同様である。
上記のような実施の形態8の方向性結合器によれば、単位セル1b内の第1及び第2導体パターン部210,220に、インターデジタルキャパシタ402A〜402Dをなす間隙が設けられている。この場合であっても、実施の形態7と同様の効果を得ることができる。
また、インターデジタルキャパシタ402A〜402Dが用いられているので、実施の形態7の単位セル間ギャップ303A〜303Dに比べて、キャパシタンスが増加し、より低周波数で密結合な方向性結合器を実現できる。
なお、実施の形態5〜8の方向性結合器では、3つの単位セル1a又は1bを縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1a又は1bを縦続接続してもよい。
実施の形態9.
実施の形態1では、第7導体パターン部170の形状が矩形状であった。これに対して、実施の形態9では、第7導体パターン部570の形状が蛇行状である。
図15は、この発明の実施の形態9による方向性結合器を示す平面図である。図15において、実施の形態9の方向性結合器は、実施の形態1のおける第7導体パターン部170に代えて、第7導体パターン部570を有している。第7導体パターン部570は、図15のA−A'線とB−B'線との交差箇所の近傍で蛇行するように形成されている。即ち、第7導体パターン部570の形状は、蛇行状(連続コ字状)である。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態9の方向性結合器によれば、実施の形態1の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在しない。また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。この構成により、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態9の方向性結合器によれば、第7導体パターン部570の形状が蛇行状である。この構成により、実施の形態1の方向性結合器よりも、第4導体パターン部140及び第7導体パターン部570により実現できるインダクタ(Le R,・Lo R)、及びキャパシタ(Ce R,・Co R)の値の範囲を広くすることができ、設計の自由度が向上することから、設計が容易となる。
なお、実施の形態9の変形は、実施の形態1の方向性結合器のみならず、以下の実施の形態の方向性結合器についても同様に適用することができる。
ここで、本明細書では、図15における第1〜第7導体パターン部110〜160,570及びスルーホール101A,101Bをまとめたものを、単位セル(第1単位セル) 1cと称する。
実施の形態10.
実施の形態9では、第1導体パターン部110と第1及び第2入出力用導体パターン部181,182とのそれぞれの間、並びに第2導体パターン部120と第3及び第4入出力用導体パターン部183,184とのそれぞれの間に、入出力ギャップ102A〜102Dをなす間隙が設けられていた。
これに対して、実施の形態10では、図16に示すように、第1導体パターン部210及び第2導体パターン部220に、実施の形態3と同様の単位セル内ギャップ203A〜203Dが設けられている。即ち、実施の形態10の方向性結合器は、実施の形態3及び実施の形態9の方向性結合器を組み合わせた構成である。他の構成は、実施の形態3及び実施の形態9と同様である。
上記のような実施の形態10の方向性結合器によれば、第1導体パターン部210及び第2導体パターン部220に単位セル内ギャップ203A〜203Dが設けられている構成であっても、実施の形態9と同様の効果を得ることができる。
ここで、本明細書では、図9及び図16における第1導体パターン部210、第2導体パターン部220及び第7導体パターン部570と、図1における第3〜第6導体パターン部130〜160及びスルーホール101A,101Bとをまとめたものを、単位セル(第2単位セル)1dと称する。
実施の形態11.
実施の形態9では、1つの単位セル1cが用いられた。これに対して、実施の形態11では、3つの単位セル1cが用いられる。図17は、この発明の実施の形態11による方向性結合器を示す平面図である。図17において、実施の形態11の方向性結合器は、3つの単位セル1cを有している。これらの3つの単位セル1cは、直列に並べられており、単位セル間ギャップ303A〜303Dを介して、縦続接続されている。他の構成は、実施の形態5及び実施の形態9と同様である。
上記のような実施の形態11の方向性結合器によれば、実施の形態9の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在せず、また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。これにより、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態11の方向性結合器では、実施の形態9の方向性結合器よりも、結合線路部分が長いので、より密結合とすることができる。
実施の形態12.
実施の形態10では、1つの単位セル1dが用いられた。これに対して、実施の形態12では、3つの単位セル1dが用いられる。図18は、この発明の実施の形態12による方向性結合器を示す平面図である。図18において、実施の形態12の方向性結合器は、3つの単位セル1dを有している。これらの3つの単位セル1dは、直列に並べられており、縦続接続されている。他の構成は、実施の形態5及び実施の形態10と同様である。
上記のような実施の形態12の方向性結合器よれば、実施の形態10の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在せず、また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。これにより、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態12の方向性結合器では、実施の形態10の方向性結合器よりも、結合線路部分が長いので、より密結合とすることができる。
なお、実施の形態11,12では、3つの単位セル1c又は1dを縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1c又は1dを縦続接続してもよい。
実施の形態13.
実施の形態1,3では、第3導体パターン部130及び第4導体パターン部140が互いに離れて配置され、第5導体パターン部150及び第6導体パターン部160が互いに離れて配置されていた。これに対して、実施の形態13では、実施の形態1,3における第3導体パターン部130及び第4導体パターン部140が1つにまとめられて第1T字パターン部630とされ、実施の形態1,3における第5導体パターン部150及び第6導体パターン部160が1つにまとめられて第2T字パターン部650とされている。
図19は、この発明の実施の形態13による方向性結合器を示す平面図である。図19において、T字状の第1T字パターン部630及び第2T字パターン部650を有している。第1T字パターン部630の第1の端部は、第1導体パターン部210に接続されている。第1T字パターン部630の第2の端部は、第7導体パターン部170に接続されている。第1T字パターン部630の第3の端部630aは、第1入出力用導体パターン部281側へ突出するように配置されている。
第1T字パターン部630の第3の端部630aは、第1入出力用導体パターン部281側へ突出するように配置されている。また、第1T字パターン部630の第3の端部630aは、第1入出力用導体パターン部281側へ突出するように配置されている。第3の端部630aの先端箇所には、スルーホール101Aが設けられている。即ち、第3の端部630aの先端箇所は、スルーホール101Aを介して、地導体190に接続されている。第2T字パターン部650の構成は、第1T字パターン部630の構成と同様である。また、他の構成は、実施の形態3と同様である。
上記のような実施の形態13の方向性結合器によれば、実施の形態1の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在せず、また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。これにより、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態13の方向性結合器では、実施の形態1,3における第3導体パターン部130及び第5導体パターン部150に相当する全ての部分が第1導体パターン部210と第2導体パターン部220との間に配置される。これにより、実施の形態1,3の方向性結合器に比べて、小型化を図ることができる。
ここで、本明細書では、図19における第1T字パターン部630、第2T字パターン部650及びスルーホール101A,101Bと、図9における第1及び第2導体パターン部210,220と、図1における第7導体パターン部170とをまとめたものを、単位セル(第2単位セル)1eと称する。
実施の形態14.
実施の形態13では、1つの単位セル1eが用いられた。これに対して、実施の形態14では、3つの単位セル1eが用いられる。図20は、この発明の実施の形態14による方向性結合器を示す平面図である。図20において、実施の形態14の方向性結合器は、3つの単位セル1eを有している。これらの3つの単位セル1eは、直列に並べられており、縦続接続されている。他の構成は、実施の形態7及び実施の形態13と同様である。
上記のような実施の形態14の方向性結合器によれば、実施の形態13の方向性結合器と同様に、偶モード動作時と奇モード動作時とでバンドギャップが存在せず、また、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiを変化させることができ、かつ偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように大きく変化する。これにより、位相定数βiの差が大きくなり、その帯域も広帯域であることから、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、実施の形態14の方向性結合器では、実施の形態13の方向性結合器よりも、結合線路部分が長いので、より密結合とすることができる。
なお、実施の形態14では、3つの単位セル1eを縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1eを縦続接続してもよい。
実施の形態15.
図21は、この発明の実施の形態15による方向性結合器を示す平面図である。図21において、実施の形態15の方向性結合器の構成は、実施の形態5の方向性結合器における単位セル間ギャップ303A〜303Dに比べて単位セル間ギャップ703A〜703Dの間隔(間隙の寸法)が異なる点を除いて、実施の形態5の方向性結合器の構成と同様である。また、実施の形態15の単位セル間ギャップ703A〜703Dの間隔は、入出力ギャップ102A〜102Dの間隔に対して約2倍である。他の構成は、実施の形態5と同様である。
次に、実施の形態15の方向性結合器の動作について説明する。図22は、図21のB−B'線に沿う断面に磁気壁又は電気壁を仮定した場合の方向性結合器の等価回路を示す回路図である。この図22の等価回路は、各単位セル1aにおける図21の線B−B'から第1入出力用導体パターン部181及び第2入出力用導体パターン部182側(図21の上側)の箇所と、第1入出力用導体パターン部181と、第2入出力用導体パターン部182とによって構成されるストリップ線路の等価回路である。
図22の等価回路では、単位セル間ギャップ703A又は703Bを等化的に表した2つのキャパシタ40が互いに直列に接続されている。このため、単位セル間ギャップ703A又は703Bについてのキャパシタ40は、入出力ギャップ102A又は102Bを等化的に表したキャパシタ40のキャパシタンスに対して約半分の値としたキャパシタ41で置き換えることができ、このときの等価回路は、図23に示すようになる。
また、図21に示す方向性結合器では、入出力ギャップ102A〜102Dの間隔に対して単位セル間ギャップ703A〜703Dの間隔が約2倍となっている。このため、単位セル間ギャップ703A〜703Dのキャパシタンスは、入出力ギャップ102A〜102Dのキャパシタンスに対して、約1/2となっている。従って、上記のような実施の形態15の方向性結合器は、図23に示す等価回路により近い構成となるため、インピーダンス整合のとれた良好な反射特性を有する方向性結合器を実現できる。
なお、実施の形態15では、単位セル1aを3つ縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1aを縦続接続してもよい。
実施の形態16.
図24は、この発明の実施の形態16による方向性結合器を示す平面図である。図25は、図24のC−C'線に沿う断面図である。なお、図24では、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801が誘電体基板100の表面上に設けられているように示されている。しかしながら、実際には、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801は、図25に示すように、誘電体基板100の内部に設けられており、図24では、理解をし易くするために、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801が誘電体基板100の表面上に設けられているように示している。
図24,25において、実施の形態16の方向性結合器は、実施の形態5の方向性結合器に入出力部浮遊導体800、単位セル間浮遊導体801及びスルーホール802を追加したものである。入出力部浮遊導体800は、入出力ギャップ102A〜102Dの下方の誘電体基板100の内部に配置されている。単位セル間浮遊導体801は、単位セル間ギャップ303A〜303Dの下方の誘電体基板100の内部に配置されている。
入出力ギャップ102A,102Cの下方に配置されたそれぞれの入出力部浮遊導体800は、それぞれスルーホール802を介して、第1導体パターン部110又は第2導体パターン部120に接続されている。単位セル間ギャップ303A〜303Dの下方に配置されたそれぞれの単位セル間浮遊導体801は、それぞれスルーホール802を介して、第1導体パターン部110又は第2導体パターン部120に接続されている。
入出力ギャップ102B,102Dの下方に配置されたそれぞれの入出力部浮遊導体800は、それぞれスルーホール802を介して、第2入出力用導体パターン部182又は第4入出力用導体パターン部184に接続されている。他の構成は、実施の形態5と同様である。
上記のような実施の形態16の方向性結合器によれば、実施の形態5の方向性結合器と同様に、対称面となるB−B'線に沿う断面に電気壁又は磁気壁を仮定することができ、そのときの等価回路も図3,4の回路として表される。従って、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように変化し、その平行移動量も大きくでき、また、偶・奇モード動作時ともにバンドギャップが存在しない。この結果、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801により、単位セル1a間の単位セル間ギャップ303A〜303D及び入出力ギャップ131〜134でのキャパシタンスが大きくなる。このため、より低周波で密結合な方向性結合器を実現することができる。
なお、実施の形態16では、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801をそれぞれ入出力ギャップ102A〜102Dと単位セル間ギャップ303A〜303Dとの下方に配置した。しかしながら、この例に限定するものではなく、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801を、入出力ギャップ102A〜102D又は単位セル間ギャップ303A〜303Dの上方で、かつ入出力ギャップ102A〜102D又は単位セル間ギャップ303A〜303Dの近傍に配置してもよい。
また、実施の形態16では、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801の1つの浮遊導体に対して、1つのスルーホール802が用いられた。しかしながら、この例に限定するものではなく、1つの浮遊導体に対して、2つ以上のスルーホール802を用いてもよい。
実施の形態17.
実施の形態16では、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801が、スルーホール802を介して、各導体パターン部110,120,182,184に接続されていた。これに対して、実施の形態17では、図26に示すように、実施の形態16におけるスルーホール802を省略してもよい。このような構成であっても、実施の形態16と同様の効果を得ることができる。
実施の形態18.
実施の形態16,17では、入出力部浮遊導体800及び単位セル間浮遊導体801の大きさがほぼ等しいものであった。これに対して、実施の形態18では、図27に示すように、入出力部浮遊導体800の大きさが単位セル間浮遊導体801の大きさの約2倍である。他の構成は、実施の形態16と同様である(なお、図27では、スルーホール802を省略して示す)。
上記のような実施形態18の方向性結合器によれば、入出力部浮遊導体800の大きさが単位セル間浮遊導体801の大きさの約2倍となっている。この構成により、入出力ギャップ102A〜102D、入出力部浮遊導体800、及びスルーホール802によるキャパシタンスに比べて、単位セル間ギャップ303A〜303D、単位セル間浮遊導体801、及びスルーホール802のキャパシタンスは約1/2となる。この結果、この発明の実施の形態16の方向性結合器は、図23に示す等価回路に近い構成となるため、インピーダンス整合のとれたより良好な反射特性を有する方向性結合器を実現できる。
なお、実施の形態16〜18では、単位セル1aを3つ縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1aを縦続接続してもよい。また、実施の形態16〜18において、単位セル1aに代えて、図15,17に示す単位セル1cを用いてもよく、2つ又は4つ以上の単位セル1cを縦続接続してもよい。
実施の形態19.
図28は、この発明の実施の形態19による方向性結合器を示す平面図である。図29は、図28のC−C'線に沿う断面図である。なお、図28では、単位セル内浮遊導体900が誘電体基板100の表面上に設けられているように示されている。しかしながら、実際には、単位セル内浮遊導体900は、図29に示すように、誘電体基板100の内部に設けられており、図29では、理解をし易くするために、単位セル内浮遊導体900が誘電体基板100の表面上に設けられているように示している。
図28,29において、実施の形態19の方向性結合器は、実施の形態12の方向性結合器に単位セル内浮遊導体900及びスルーホール901を追加したものである。単位セル内浮遊導体900は、単位セル内ギャップ203A〜203Dの下方の誘電体基板100の内部に配置されている。単位セル内ギャップ203A〜203Dの下方に配置されたそれぞれの単位セル内浮遊導体900は、それぞれスルーホール901を介して、第1導体パターン部110又は第2導体パターン部120に接続されている。他の構成は、実施の形態12と同様である。
上記のような実施の形態19の方向性結合器によれば、実施の形態12の方向性結合器と同様に、対称面となる図28のB−B'線に沿う断面に電気壁又は磁気壁を仮定することができ、そのときの等価回路も図3,4に示すような回路として表される。従って、偶モード動作時と奇モード動作時との位相定数βiが平行移動のように変化し、その平行移動量も大きくでき、また、偶・奇モード動作時ともにバンドギャップが存在しない。この結果、側結合でも密結合で広帯域なフォワード結合を実現することができる。
また、単位セル内浮遊導体900により、単位セル内ギャップ203A〜203Dのキャパシタンスが大きくなるため、より低周波で密結合な方向性結合器を実現することができる。
なお、実施の形態19の方向性結合器では、単位セル内浮遊導体900が単位セル内ギャップ203A〜203Dの下方に配置されていた。しかしながら、この例に限定するものではなく、単位セル内浮遊導体900が単位セル内ギャップ203A〜203Dの上方で、かつ単位セル内ギャップ203A〜203Dの近傍に配置してもよい。
また、実施の形態19の方向性結合器では、1つの単位セル内浮遊導体900に対して、1つのスルーホール901が用いられた。しかしながら、この例に限定するものではなく、1つの単位セル内浮遊導体900に対して、2つ以上のスルーホール901を用いてもよい。
実施の形態20.
実施の形態19では、単位セル内浮遊導体900が、スルーホール901を介して、各導体パターン部110,120に接続されていた。これに対して、実施の形態20では、図30に示すように、実施の形態19におけるスルーホール901が省略されている。このような構成であっても、実施の形態19と同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態19,20では、単位セル1dを3つ縦続接続した例について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、2つ又は4つ以上の単位セル1dを縦続接続してもよい。また、実施の形態19,20において、単位セル1aに代えて、単位セル1b又は単位セル1eを用いてもよく、2つ又は4つ以上の単位セル1b又は単位セル1eを縦続接続してもよい。