JP5424573B2 - テンタクリップガイド用軸受 - Google Patents
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Description
鉄板波形保持器に代えて、冠形樹脂保持器(PA66+GF25%)や2つ割れの樹脂保持器(例えば特許文献2,3)を使用しようとしても、高速回転時に発生する遠心力によって保持器が外輪側に変形し、保持器外径部が外輪内径部に接触するため、高速回転性能に問題がある。また、遠心力による上記変形を抑制するために、保持器の材料として強度の高い樹脂(PEEK材等)を使用しても良いが、それでは保持器が高価なものとなる。また、2つ割れの樹脂保持器の材料として強度の高い樹脂を使用した場合、変形は抑制されるものの、保持器の体積が増し軸受内の空間容積が減少するため、グリース封入量を多くすることができない。さらに、冠形樹脂保持器の場合でも、2つ割れの樹脂保持器の場合でも、グリース漏れの防止はできない。加えて、鉄板波形保持器と比較して、高速性に劣ったり、グリース封入量を多くし難い。結果として軸受寿命の低下に繋がる。
この発明の他の目的は、グリース潤滑寿命の延長、鉄板保持器特有の高い高速回転性能、および樹脂保持器よりも大きな軸受静止空間の確保を達成できる保持器を組み込んだ軸受寿命の長いテンタクリップガイド用軸受を提供することである。
前記保持器は、この軸受の玉を保持するポケットを円周方向の複数箇所に有するリング状の保持器であって、2個の環状体の保持器半体を軸方向に対面して重ね合わせてなり、これら保持器半体は、それぞれ内面が前記各ポケットの半分を形成する球殻状板部と、隣合うポケット間の部分となる平板部とが円周方向に交互に並ぶ形状であり、前記球殻状板部で構成される前記ポケットのある円周方向部分の外周は、保持器中心を中心とする円形であり、前記球殻状板部で構成される前記ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくし、この大きくした前記円周方向部分の保持器の内周縁の形状を、保持器を軸方向から見て外径側へ凹む円弧状とすることにより、この大きくした前記円周方向部分の保持器の内周縁を、前記内輪の外周の肩部および前記内輪シール溝へのグリースの付着を生じ難くしてグリース漏れを防止する凹み形状部分としたことを特徴とする。
この場合、保持器のポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくすることにより、内輪肩部や内輪シール溝にグリースが付着し難くなる。このことは、特に外輪回転時に特徴的に現れる。これにより、シールが非接触形の場合に、グリースの漏洩を防止できる。
このように保持器のポケットの玉の案内面に、樹脂、軟質金属、固体潤滑材のうちのいずれかからなる皮膜を形成することにより、鋼球である玉が鉄製の玉案内面に直接接触しない。つまり、鋼球である玉は、ポケットにおける玉案内面に形成された前記皮膜の上を摺動するので、摺動に伴い鉄の摩耗粉が発生せず、その摩耗粉に起因するグリースの劣化がなく、グリース潤滑寿命を延長できる。
また、この保持器は鉄板波形保持器を改良したものであるため、鉄板波形保持器に特有の高い高速回転性能、および樹脂保持器よりも大きな軸受静止空間を確保することもできる。なお、軸受のグリース封入量は、軸受静止空間に比例して規定されるのが一般的であることから、この保持器では、軸受静止空間の増加によるグリース封入量の増加が見込め、軸受寿命の延長が可能となる。
シール部材5の内径側端の断面形状を、シール部材内径端と内輪1の外径面との間で形成されるラビリンスシール隙間10に、隙間寸法の狭まり部10a〜10cが、内外方向に並んで形成される形状としているので、ラビリンスシール隙間10に、狭い箇所,広い箇所を1組の広狭変化部として、複数(この提案例では3つ)の広狭変化部が形成される。このようにラビリンスシール隙間10が広狭の変化を繰り返し生じているため、ラビリンスシール隙間10からのグリース漏れの防止性が高められる。したがって、グリース漏れによる周辺の汚損が防止される。
この保持器4は、図4に斜視図で示すように、各玉3(図1(a))を保持するポケット50を円周方向の複数箇所に有し、各ポケット50の内面を凹球面状としたリング状のものである。この保持器4は、図5に斜視図で示す環状体の保持器半体51の2個を、軸方向に対面して重ね合わせ、リベット孔52に挿通したリベット53で互いに接合して一体に構成される。これら保持器半体51は、内面がポケット50の半分を形成する部分的な球殻状の形状の球殻状板部50Aを複数有し、隣合うポケット50間の部分となる平板部51aと球殻状板部50Aとが円周方向に交互に並んだものとされる。前記球殻状板部50Aは、球殻の一部となる部分であり、換言すれば、内外両面が球面状となったカウンタシンク形状の膨らみ部分である。保持器半体51の軸方向の投影形状は、半径方向幅が全周に渡って一定のリング状である。
なお、この提案例では凹み部54Aを2箇所としたが、3箇所以上としても良い。
ポケット50における内面形状は、球面状に限らず、玉配列ピッチ円PCDよりも内径側の部分が、保持器内径側開口縁に近づくに従って小径となる形状であれば良く、例えば玉配列ピッチ円PCDよりも外径側の部分が円筒面状、内径側の部分が円すい面状であっても良い。
このようにして得られた2つの保持器半体51を、図12(C)のように重ね合わせ、図12(D)のように保持器半体51の平板部51aが重なり合う部分をリベット53で接合して保持器4とする。
この提案例では、上記したように、仕上げ押し工程に用いる凸側プレス金型56の半球状凸面に、ポケット50(球殻状板部50A)における凹み部54Aの内面を成形する凹み部成形用型部56aを部分的に形成しているので、仕上げ押し工程で凹み部54Aも同時に成形でき、製造工程を増やすことなく効率的に保持器4を製造できる。
図14および図15はこの提案例(それぞれ図7の提案例、および図8の提案例)の保持器4を用いた玉軸受のグリース付着状態を示し、図16は一般的な鉄板打ち抜き保持器を用いた玉軸受のグリース付着状態を示す。
この提案例にかかるテンタクリップガイド用軸受の保持器4では、ポケット50の形状を上記したように従来例のものと異なるものとしたことにより、内輪肩部へのグリースの付着を無くすことができる。すなわち、玉に最もグリースが付着する位置である保持器内径側の開口縁に開口する凹み部を設けたため、グリースの掻き取りが生じる際の、玉の表面の掻き取りが減少し、保持器内径面に溜まるグリース量が減少する。
この保持器4Aは、図1と共に前述したテンタクリップガイド用軸受に用いられる保持器であって、玉3を保持するポケット50を円周方向の複数個所に有するリング状であり、2個の環状体の保持器半体51を軸方向に対面して重ね合わせてなる。これら保持器半体51は、それぞれ内面が前記各ポケットの半分を形成する球殻状板部50Aと、隣合うポケット50間の部分となる平板部51aとが円周方向に交互に並ぶ形状とされる。各保持器半体51は、金属板のプレス成形品(例えば鉄板打ち抜き品)であり、平板部51aに設けられたリベット孔52に挿通したリベット53により、2枚の保持器半体51が互いに接合して一体に構成される。以上の構成は、図4ないし図8に示す提案例と同様である。
そこで、保持器4Aの内径部において、内輪1の肩部となる外径面部1bと軸方向に重なり合う範囲Wのみの板厚を薄くしており、これにより、実質上の保持器4Aの強度の低下が無く、かつグリース漏れを防止可能な玉軸受用保持器4Aが成立する。前記テンタクリップのガイドレール等に塗布されるチェーン油が、この軸受内部に侵入すると、グリースのちょう度が上がるが、上記保持器4Aを用いることで、グリース漏れは発生しない。これにより、製品フィルムにグリースが付着することを防止することができる。また、シール部材を接触形とする必要がなく換言すればシール部材5を非接触形とし、低トルク化も図ることができる。このように、低トルク性および耐グリース漏洩性を同時にかつ低コストで達成することができる。
保持器に使用される合成樹脂材料としては、例えばPA66、PA46等のポリアミド樹脂やポリフェニルサルファイド樹脂が好適であり、さらに必要に応じてグラスファイバ等の強化繊維材を混入してもよい。
また、2枚の環状部材64を結合して1個の保持器とする構成に限らず、鋼材から所定の形状に削り出すもみ抜き保持器としてもよく、あるいは樹脂材料で一体に成形した成形保持器としてもよい。
以上説明したように、テンタクリップ用軸受において、この軸受に組み込まれる前記保持器は、ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくしたことにより、内輪肩部や内輪シール溝にグリースが付着し難くなる。このことは、特に外輪回転時に特徴的に現れる。これにより、シールが接触形、非接触形のいずれの場合にも、グリースの漏洩を防止できる。すなわち非接触形のシールを適用することが可能となり、低トルク化を図ることが可能となる。また、シールリップの緊迫力を強くする必要がないため、トルクが増大しない。ポケットのある円周方向部分の内径面が、軸方向から見て凹曲線となる曲面形状、および複数の角部を有する多角形状のいずれの場合でも、上記の各作用が得られる。
本寿命試験における、軸受寿命の判断基準について説明する。
軸受の通常運転時温度(120℃)よりも+15℃(135℃)上昇した場合と、通常運転時のモータ電流値(1A)よりも+1A(2A)と上昇した場合を寿命と判定している。
2…外輪
3…玉
4,4A,4B…保持器
4Ba…ポケット
5…シール部材
50…ポケット
50A…球殻状板部
51…保持器半体
51A…平板部
54,54A,54B…凹み部
70…皮膜
O…保持器中心軸
OVB…リング中心
PCD…玉配列ピッチ円
Ri,Rp…半径
t0,t1…板厚
V,VA…仮想円筒
VB…仮想リング
Claims (5)
- 内外輪間に複数の玉が環状の保持器に保持して設けられ、前記外輪に取付けられその内径側端が内輪の外周面に形成されたシール溝の内面に近接してこのシール溝の内面の内面との間にラビリンスシール隙間を形成する非接触形のシールを有し、グリース潤滑とされ、外輪回転で用いられるテンタクリップガイド用軸受において、
前記保持器は、この軸受の玉を保持するポケットを円周方向の複数箇所に有するリング状の保持器であって、2個の環状体の保持器半体を軸方向に対面して重ね合わせてなり、これら保持器半体は、それぞれ内面が前記各ポケットの半分を形成する球殻状板部と、隣合うポケット間の部分となる平板部とが円周方向に交互に並ぶ形状であり、前記球殻状板部で構成される前記ポケットのある円周方向部分の外周は、保持器中心を中心とする円形であり、前記球殻状板部で構成される前記ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくし、この大きくした前記円周方向部分の保持器の内周縁の形状を、保持器を軸方向から見て外径側へ凹む円弧状とすることにより、この大きくした前記円周方向部分の保持器の内周縁を、前記内輪の外周の肩部および前記内輪シール溝へのグリースの付着を生じ難くしてグリース漏れを防止する凹み形状部分としたことを特徴とするテンタクリップガイド用軸受。 - 請求項1において、前記保持器が鉄製であり、そのポケットにおける少なくとも玉の案内面に、樹脂、軟質金属、固体潤滑材のうちのいずれかからなる皮膜を形成したテンタクリップガイド用軸受。
- 請求項2において、前記皮膜が合成樹脂からなるテンタクリップガイド用軸受。
- 請求項2において、前記皮膜は軟質金属からなり、その軟質金属が、銅、銀、金、インジウムのうちのいずれかであるテンタクリップガイド用軸受。
- 請求項2において、前記皮膜は固体潤滑材からなり、その固体潤滑材の主成分が、二流化モリブデン、二流化タングステン、グラファイトのうちのいずれかであるテンタクリップガイド用軸受。
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