JP5421011B2 - ポリエチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents
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Description
特に触媒として、チタン化合物を用いたときに、色相の悪化は顕著である。チタンはエステルの重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸などが重縮合触媒として公知であり、このようなチタン化合物を重縮合触媒として利用するために多くの検討が行われている。しかしながら、従来のチタン系触媒を重縮合触媒に用いた場合、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物に比べ活性はあるものの、得られたポリエステルが著しく黄色に着色するなどの問題が生じる。
また、重合反応中、グリコール成分の副反応により生じるエーテル化合物の含有量は、各用途において重要な影響を与える。例えば、ポリエチレンテレフタレートをボトルとして用いる場合は、透明性確保のため、ある程度の量ジエチレングリコールを含有することが望ましい。少なすぎる場合は、成形後のボトル胴部の透明性が悪化し、また、多すぎる場合は、耐熱性が低下、結晶化促進効果の低下、ガスバリア性を損なうなどの問題が生じる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂を構成するジエチレングリコールの含有量は、ポリエチレンテレフタレート中、0.5〜2.0wt%でなければならず、好ましくは0.8〜1.7wt%、より好ましくは1.0〜1.5wt%の範囲である。
本発明の製造方法において用いられる原料の1つはエチレングリコールである。更に本発明の効果を妨げない範囲内で他のポリオール成分を共重合しても良い。そのポリオール成分としては具体的には、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール(ジヒドロキシシクロヘキサン)、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレングリコールを挙げる事ができる。これらの化合物はその1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。
本発明の製造方法において用いられるもう1つの原料であるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。具体的にはこれらの化合物としてテレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジエチルエステル、テレフタル酸ジプロピルエステル、ジテレフタル酸ブチルエステル、テレフタル酸ジヘキシルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシエチルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシプロピルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシブチルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシヘキシルエステルを挙げることができる。これらの化合物の中でジメチルテレフタレートまたはビスヒドロキシエチルテレフタレートを用いることが好ましい。またさらに目的を損なわない範囲で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。これらの化合物の1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。また、これらの芳香族ジカルボン酸においても、低級アルコールを用いて、低級エステル化した化合物を用いることもできる。
本発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法はいわゆる溶融(液相)重縮合法(A)に該当するが、この方法(A)においては、上記のようなジカルボン酸エステル成分(以下、単にジカルボン酸成分と表記することがある)と、グリコール成分とを重縮合させてポリエチレンテレフタレートを製造する。この液相重縮合法では、通常まずジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル交換反応させ〔エステル交換反応工程(A−1)〕、次いで液相重縮合反応〔溶融重縮合反応工程(A−2)〕させる。具体的には、まずジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル交換反応工程(A−1)に供給する。この際、ジカルボン酸成分1モルに対して1.02〜3.0モルのグリコール成分を用いる。この工程においては、通常加圧下で行われることが好ましい。
このようにして得られたエステル交換反応物は、液相重縮合反応器に供給される。液相重縮合反応器では、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエステルの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコール成分を系外に留去させながら重縮合させる。本発明では、上記のような液相重縮合工程(A)において、35℃のo−クロロフェノール中で測定される固有粘度が、0.40〜1.50dL/gであるポリエチレンテレフタレートを製造する。
本発明の製造方法においてはエステル交換触媒として、チタン化合物aを用いる。一般的なアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を補助的に用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよいが、ボトル用のポリエステルを合成するにあたっては、チタン化合物aを用いることが望ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒をエステル交換触媒として用いるには、チタン化合物と対比し大量に添加する必要があるが、ボトルに成形した際、ボトル胴部の結晶化度が高くなり、白化を引き起こす原因となり好ましくない。その点チタン化合物は、活性が極めて高いため、少量で済み、ボトル胴部の白化を避けることができる。
しかし、チタン化合物を触媒として用いる場合、ポリエステルが黄化し易いという問題がある。そこで、エステル交換反応終了後、活性を抑制するため、チタン化合物a中のチタン原子1molあたり、アルカリ金属原子として0.5〜4.0倍molを添加することができる。0.5倍未満の場合、チタン化合物の活性抑制が不十分であり、続く重合反応において、ポリマーの黄化が顕著である。また、4.0倍より多い場合、アルカリ金属系触媒自身が引き起こす分解反応によって、ポリマーが黄化したり、上述したようにボトルに成形した場合、ボトル胴部の白化の原因となる。
重縮合触媒としては、本発明の製造方法においては、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物bを用いることができる。一般的に用いられるアンチモン化合物では、反応速度の向上が認められないため、望ましくない。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。なお、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましく、そのゲルマニウム化合物では、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシドなどが例示される。
重縮合反応は、必要に応じて安定剤の共存下に実施することができる。安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル及び正リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。好ましくはモノブチルホスフェート、ジブチルホスフェートまたは正リン酸から選択される少なくとも1種のリン化合物であることである。
本発明の製造方法においては、エステル交換反応の放圧後から、重合反応において真空反応を始める前の間に、ジカルボン酸を原料であるジアルキルテレフタレートに対し6〜18mol%添加し、重合することが目的を達成するためのポイントである。その際使用できるジカルボン酸としては、上記のジカルボン酸成分のエステル部分をカルボキシ基に置換えた化合物およびそれらの化合物に加え、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪酸ジカルボン酸およびその化合物を例示することができる。この中でも特に、テレフタル酸またはイソフタル酸およびその化合物が望ましい。ただし、反応途中に高温状態のオリゴマー中に投入する場合、テレフタル酸ジメチルエステルなど昇華性のある剤は、留出系配管や減圧口の閉塞を招くため、望ましくない。ポリエチレンテレフタレートを製造する際には、他の成分による共重合率を低下させる目的でテレフタル酸を好ましく選択することができる。このジカルボン酸の溶融重縮合工程への添加により色相の改善及びジエチレングリコールの発生が効率よく抑制することができる。
本発明の製造方法においては、原料としてジカルボン酸のエステル化合物を用い、かつ、上記の触媒組成において、下記式で表される化合物1をポリマー残存量で0.1ppm以上になるよう添加することが必要である。化合物1は、一般的には青色整色剤等として使用される化合物であるが、上述の触媒組成において使用することで、著しく重合反応速度を向上させることができる。化合物1の添加量に特に上限はないが、添加量が多くなると、col−L値が低くなり、黒味が強くなってしまうため、ボトルやフィルムなど外観が重視される用途に用いる際には好ましくないことがある。
そのほか、必要に応じて他の添加剤、例えば、整色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびその化合物から選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。
(ア)酢酸チタンの調整
エチレングリコール75.8部に酢酸4.5部を混合した後、テトラブトキシチタン6.3部(チタン原子として0.9部)を添加した。この混合物を空気中、常圧下で60℃にて40分間反応せしめた後、常温に冷却し、目的のチタン化合物を得た。
(イ)トリメリット酸チタンの合成方法
無水トリメリット酸2質量部をエチレングリコール98質量部に混合したエチレングリコール溶液に、テトラブトキシチタンを1.77重量部(チタニウム金属成分として0.25重量部、無水トリメリット酸に対するモル比0.5)添加し、この混合物を空気中、常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後、常温に冷却し、目的のチタニウム化合物を調製した。
(ウ)化合物2の合成方法
エチレングリコール525.6重量部とモノブチルホスフェート4.4重量部を入れて混合攪拌した中に、チタンテトラブトキシドのエチレングリコール溶液68.4重量部(チタン原子の濃度で1重量%、酢酸を1重量%添加)をゆっくり添加し、徐々に昇温して120℃の温度で1時間攪拌保持したのち、得られた懸濁液を室温まで放冷した(この溶液中でリンとチタンのモル比は2である)。
(ア)固有粘度(IV)
極限粘度数は、チップまたはプリフォームのボトル口部(口栓部と同義である。)天面に相当する部分から切り出した試料を一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
(イ)色相
非晶ポリマーは170度×3時間窒素雰囲気下の乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。結晶化ポリマーはそのままカラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。
(ウ)ジエチレングリコール(DEG)含有量
ジエチレングリコール含有量は、サンプルを抱水ヒドラジンにて分解し、アジレントテクノロジー製ガスコロマトグラフィーにて測定した。
[実施例1]
重合(実機レベル:EI−加圧法)
ジメチルテレフタレート100部と1,2−エチレンジオール(エチレングリコール)56部との混合物に、テレフタル酸ジメチルエステルに対し、酢酸チタンをチタン原子として3.0mmol%撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.08MPaの加圧を行い、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。内温が250℃に達した時点で、ジメチルテレフタレートに対し、カリウム原子として5.0mmol%、二酸化ゲルマニウム分子として35mmol%なるように調整した酢酸カリウムと二酸化ゲルマニウムの混合液およびジブチルホスフェートをリン原子として20.0mmol%、テレフタル酸を8.5部、化合物1をポリマー中の残存量で0.2ppmとなるよう添加し、10分間撹拌を行った後、反応を終了した。
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で0.5ppm、0.8ppm、1.0ppm、1.2ppmとなるよう添加した以外、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
化合物1を添加しなかった以外、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
単位時間当たり平均450質量部のオリゴマーが滞留する完全混合反応器内に、攪拌下、窒素雰囲気で274.5℃、常圧下に維持された条件下に、単位時間当たり389質量部の高純度テレフタル酸と単位時間当たり209質量部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、反応器内理論滞留時間4時間でエステル化反応を反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜9であった。
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で0.4ppm、0.6ppmとなるよう添加した以外、比較例2と同様に実施した。結果を表1に示した。これら比較例2〜3は重縮合速度やDEG含有量は実施例と同等であったが、得られるポリエチレンテレフタレートの色相の青みが強かった。
重合(ビーカーレベル:EI−BHET法)
ジメチルテレフタレート100部と1,2−エチレンジオール64部との混合物に、テレフタル酸ジメチルエステルに対し、酢酸チタンをチタン原子として3.0mmol%撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.08MPaの加圧を行い、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で1.0ppmとなるよう添加した以外、実施例6と同様に実施した。結果を表1に示した。
酢酸カリウムを添加しなかった以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
モノブチルホスフェートにかわり、リン酸を用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
酢酸カリウムにかわり、酢酸ナトリウムを用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
化合物1を添加しなかった以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
二酸化ゲルマニウムにかわり、三酸化アンチモンを用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
Claims (6)
- 前記化合物1をポリエチレンテレフタレート中の残存量で0.1ppm以上になるように添加することを特徴とする、請求項1記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 前記リン化合物がモノブチルホスフェート、ジブチルホスフェートまたは正リン酸から選択される少なくとも1種のリン化合物であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 前記アルカリ金属化合物をチタン化合物a中のチタン原子1molあたり、アルカリ金属原子として0.5〜4.0倍mol添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 前記エステル交換触媒が、チタン原子と酢酸からなる化合物またはチタン原子と無水トリメリット酸からなる化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 前記テレフタル酸ジアルキルエステルもしくは前記テレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルがジメチルテレフタレートまたはビスヒドロキシエチルテレフタレートであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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