JP5419836B2 - かつら、かつらベース及びかつらの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、人工皮膚の収縮作用により毛髪を支持して立ち上がらせるため、毛髪の根元部分が人工皮膚の柔軟性により支持されて多少立ち上がるものの、頭皮に比べると毛髪の根元部分における可動範囲が不足する場合がある。そのためドライヤー、スタイルセット、シャンプー、スチーマー等の各種の操作を繰り返すことで、毛髪に変形や倒れ癖がつくことがあった。また人工皮膚の収縮作用で毛髪を立ち上がらせるには、第1のかつらベースである人工皮膚を厚くする必要があるため、柔軟性が低下して装着感が低下することもあった。
しかしながら、このようなかつらでは、第1の網目層に結び付けられた毛髪を、第1の網目層に隣接する第2の網目層から引き出しただけであるため、各種の操作を繰り返すことで結着部が僅かでも緩むと毛髪が倒れてしまい、十分なボリューム感を得ることができなかった。また毛髪を結び付けることで結び玉が生じるため、外部から結び玉が黒い点のように露見し、不自然に見えることがある。
しかも特許文献2では、第1の網目層と第2の網目層との接合方法について言及されていないが、通気性を考慮すると網目層同士は接着されずに重なりあっているだけと考えられる。そうすると、時間の経過によりそれぞれの網目層が分離しやすく、かつらの装着感が低下することがある。
毛髪は第2のかつらベースにV字状に植設されていてもよい。その場合、第2のかつらベースの裏側には毛髪を固着する接着剤層が形成されていてもよい。
第2のかつらベースの表側には、第1のかつらベースの裏側よりも平滑な粗面化処理による凹凸形状が設けられているのが好ましい。
このかつらベースでは、第1のかつらベースはフィラメントが立体的に編み込まれることで立体的編み込み構造を形成して成り、且つ第2のかつらベースは合成樹脂製の人工皮膚から成り、第1のかつらベースの表側に配置されたフィラメントと第2のかつらベースの表面の間に所定高さの隙間が形成されている。
このかつらの製造方法では、フィラメントが立体的に編み込まれることで立体的編み込み構造を形成した第1のかつらベースを準備し、第1のかつらベースの表側に配置されたフィラメントと第2のかつらベースの表面との間に所定高さの隙間を設けるのが好適である。
しかも所定の高さの隙間が第1のかつらベースの凹部により形成されているため、隙間の大きさがかつら使用時にシャンプー等の操作によっても変化しない。そのため、かつら製造直後だけでなく、かつらを長期間使用する場合にも毛髪を立ち上がらせた状態に保つことができる。
その結果、毛髪の根元部分の立ち上がり状態を長期間持続することができ、ボリューム感があるヘアスタイルを容易に形成できると共に、その状態を長期間持続することが可能なかつらを提供することが可能である。
本発明のかつらの製造方法によれば、このようなかつらを容易に製造できるかつらの製造方法を提供することができる。
図1及び図2に示すように、この実施形態のかつら1は、装着者の頭部の形状に即した形状の第1のかつらベース3と、該第1のかつらベース3の裏側に配置されて頭皮側となる第2のかつらベース4とで構成された複層かつらベース2を備えている。そして第2のかつらベース4に毛髪20が取り付けられ、毛髪20の先端側が第1のかつらベース3の裏側から表側に引き出された状態でかつら1が形成されている。
なお、かつら1には複数の毛髪20が植設されているが、図1及び図2では便宜上、一部の毛髪20のみを図示している。
第1のかつらベース3は、フィラメント8が立体的に編み込まれることで、立体的編み込み構造を形成するように編成されたネット部材により構成されている。このネット部材の立体的編み込み構造では、例えば図3乃至図5に詳細に示すように、1本又は複数本のフィラメント8が二次元方向に湾曲又は屈曲して互いに交差すると共に、フィラメント8が二次元方向に対して両側となる上下方向に大きく湾曲又は屈曲して互いに交差している。そのため、1本又は複数本のフィラメント8が各フィラメント8の直径程度に上下しつつ二次元方向に湾曲又は屈曲して互いに交差してなる平面的な織物とは相違する、三次元構造となっている。
フィラメント8は、使用時に外部から視認され難い太さで立体的に編み込まれた際、その立体的編み込み構造を維持できる程度の弾性を有する材料からなるのがよい。例えば、各種の樹脂からなるものが使用可能であるが、形状保持性に優れたポリエステルが特に良い。
凸部10は、表側編み目7を構成するフィラメント8と同一のフィラメント8からなるものであっても、表側編み目7を構成するフィラメント8とは異なるフィラメント8からなるものであってもよい。この凸部10も編み目により形成されていてもよく、その場合表側編み目7と同じ形状の編み目であってもよい。
第1のかつらベース3の表側に配置されたフィラメント8と第2のかつらベース4との間の高さhは、少なくとも第1のかつらベース3のフィラメント8の最大直径より高く、目安として0.1mm〜0.5mmの範囲とするのが好ましい。第1のかつらベース3の表側に配置されたフィラメント8において、少なくとも第2のかつらベース4の表面から最も離れた高さ、好ましくは表側編み目7を構成するフィラメント8全体が第2のかつらベース4の表面からこの範囲の高さに配置されるようにしてもよい。
しかも図2及び図3に示すように、フィラメント8により第2のかつらベース4の表面から離間した位置に中空空間11が設けられている。この中空空間11により毛髪20の可動領域aが確保され、毛髪20が可動領域aの範囲内で移動することができる。そのため、どの方向から毛髪20を梳かしても順応することができ、毛髪20の倒伏を防止することができる。
第2のかつらベース4は頭皮に類似する合成樹脂製の人工皮膚からなる。ウレタン樹脂やシリコン樹脂のような軟質合成樹脂にて装着者の頭部形状に合わせて成形することができる。この人工皮膚はある程度の弾力性を有しているため頭部へのフィット感に優れている。この人工皮膚製の第2のかつらベース4では、内部にメッシュ状の基布14が積層又は埋設されていてもよい。
この第2のかつらベース4は、かつら1の表面での光沢をなくすための粗面化処理が行われるなどにより、表面に微細な凹凸形状が形成されているのがよい。
第2のかつらベース4上に微細な凹凸形状を形成することで、第1のかつらベース3と第2のかつらベース4とを重ね合わせて接合する製造時や、かつら1の使用時に、第1のかつらベース3が第2のかつらベース4に密着することを防止できる。そのため第1のかつらベース3の表側に配置されるフィラメント8と第2のかつらベース4の表面との間に凸部10の高さに基づく所定高さhの隙間を形成することができる。
第2のかつらベース4へ毛髪20をV字状に植設するには、例えば図2に示すように、毛髪20を第1のかつらベース3及び第2のかつらベース4の表側から裏側に、二つ折りした毛髪20を貫通させる。そして毛髪20の一方の先端側を、貫通させた位置に近接する他の位置において第1のかつらベース3及び第2のかつらベース4の裏側から表側に引き出すことで植設する。これにより毛髪20の取り付け部分に、毛髪20の結び玉が生じず、かつらとして自然な外観を呈することができる。ただし、このような植え方に限られるものではない。
よって本発明によれば、毛髪20の根元部分の立ち上がり状態を長期間持続することができ、ボリューム感があるヘアスタイルを容易に形成でき、しかもその状態を長期間持続させることが可能である。
また、人工皮膚の弾性に基づく収縮作用によって毛髪を保持する必要がないので、複層かつらベース2の人工皮膚や接着剤層5を薄く形成することができ、複層かつらベース2の硬化による柔軟性の低下を防ぎ、装着感が低下することも防止できる。
上記では第1のかつらベース3の表側に配置されるフィラメント8により表側編み目7を構成し、この表側編み目7の全体が第2のかつらベース4の表面との間に隙間を形成した例について説明したが、表側編み目7を構成するフィラメント8の一部が第2のかつらベース4に本発明の範囲内で近接していてもよい。
また、第1のかつらベース3の表側に配置されるフィラメント8が、編み目を形成せずに第2のかつらベース4から所定高さの隙間を形成するように離間して配置したものであってもよい。その場合、毛髪20を支持できれば各毛髪20の周囲を囲まない状態で隣接配置していても本発明を適用可能である。
上記では、第1のかつらベース3の略全面における凸部10を第2のかつらベース4に接合したが、第1のかつらベース3と第2のかつらベース4とが互いに分離したり分離して変形が生じることがなければ、周囲で接合されていたり、互いに離間した複数の位置で局部的に接合されていてもよい。
はじめに第1工程として、第1のかつらベース3を作製した。
第1のかつらベース3に使用するネット部材は、図4に示すように28dtexのポリエステルからなるフィラメント8を立体的に編み込んで編成(丸編みの応用)することで立体的編み込み構造を形成した。凸部10の高さは0.36mmであった。
かつら装着者の頭部形状に模して作製した雄型の石膏型に、第1のかつらベース3用のネット部材を張り付けて固定してから、熱硬化性ウレタン樹脂溶液を塗布し、加熱温度100℃で8時間乾燥させて頭部形状に成形し、第1のかつらベース3を石膏型から取り外した。
使用した熱硬化性ウレタン樹脂溶液は、日新レジン株式会社製のE−64A(No.1.2.3)を6.5g、E65BS(No.1)を3.5g、メチルエチルケトンを所定量混合したものを使用した。なおメチルエチルケトンの配合量を調整することでネット部材の剛軟度を調整することができる。
かつら装着者の頭部形状に模して作製した雄型の石膏型に、第2のかつらベース4の基布14用のネット部材を張り付けて固定し、合成樹脂溶液を塗布し、加熱温度70℃で30分間乾燥させた。第2のかつらベース4が所望の厚さになるまで、合成樹脂溶液の塗布と乾燥を繰り返した。その後、粗面化処理溶液をスプレーガンにて塗布し、加熱温度70℃の乾燥後、さらに、加熱温度100℃で8時間乾燥させて頭部形状に成形した。作製した第2のかつらベース4は次工程で使用するため石膏型から取り外さなかった。
使用した合成樹脂溶液は、大日精化工業株式会社製のレザミンP−8766を180g、メチルエチルケトンを160g、ジメチルホルムアミドを630g、抗菌剤を30g混合したものであった。また、使用した粗面化処理溶液は、上記の合成樹脂溶液に粉末状のシリカを所定量混合したものを使用した。
上記工程で石膏型12に固定された第2のかつらベース4の上に、第1のかつらベース3を重ね合わせた後、その上よりメチルエチルケトンを所定量塗布した。これにより、第2のかつらベース4の表面が若干溶融し、図5に示すように、第1のかつらベース3の凸部10と第2のかつらベース4との一部が接地部位22で接着することができた。なお、第2のかつらベース4の表側に微細な凹凸が形成されていたので、第1のかつらベース3と全体が密着して接着されることはなかった。
毛髪20を取り付けるには、まず頭部形状の雄型に複層かつらベース2を固定した。毛髪20の中央部を二つ折りにして毛髪20の折り返し部21を複層かつらベース2の表側から第2のかつらベース4の裏側に貫通させた。複層かつらベース2の表面の近接位置から鉤針を挿入して第2のかつらベース4を貫通させてから、毛髪20を第1のかつらベース3の表面側に引抜いて植設を行なった。植設する毛髪20は天然毛髪もしくは人工毛髪のいずれでもよい。
かつら装着者の頭部形状に模して作製した雄型の石膏型に、第2のかつらベース4の裏側を上側にすることで表裏反転した複層かつらベース2を張り付けて固定した。第2のかつらベース4の裏側に毛髪固着用接着剤を塗布して、加熱温度50℃で30分乾燥させた。
さらに、第2のかつらベース4の裏面に毛髪固着用接着剤を塗布し、加熱温度55℃で6時間乾燥させた。使用した毛髪固着用接着剤は、大日精化工業株式会社製のレザミンP−8766を120g、メチルエチルケトンを528g、ジメチルホルムアミドを334g、抗菌剤を18g混合したものであった。
第2のかつらベース4の作製において、粗面化処理溶液の塗布を行わないこと以外は実施例1と同様の製造工程を行った。
(実施例3)
第1のかつらベース3において、ネット部材の凹凸形状で凸部10の高さが0.83mmのネット部材を使用した。それ以外は実施例1と同様の製造工程を行った。
(比較例1)
第1のかつらベース3において、ネット部材の凹凸形状で凸部10の高さが0.053mmのネット部材を使用した以外は実施例1と同様の製造工程を行った。この比較例1では第1のかつらベース3の表側編み目7と第2のかつらベース4との間に隙間が実質的に形成できなかった。
実施例及び比較例で植設した毛髪20の立ち上がり状態と、その立ち上がり状態の保持性とを評価した。結果を表1に示す。
評価方法は、表1に示す操作で所定のヘアスタイルをドライヤー・ブラシによる操作、シャンプー・ドライヤー・ブラシによる操作、スチーマー・ブラシによる操作でスタイルセットした後、複層かつらベース2の表面(第1のかつらベース3の表面)と植設した毛髪20とのなす角度を測定した。表1中、角度が大きい程、毛髪20の立ち上がりが良好と判断した。
一方、実施例2では実施例1と比べて毛髪20の立ち上がり度合いがやや劣り、且つスタイルセット操作がシャンプー・ドライヤー・ブラシによる操作、スチーマー・ブラシによる操作になると毛髪20の立ち上がり程度が低下していた。これは第2のかつらベース4の表面に粗面化処理を施さなかったので、表面が実施例1に比べて平滑になり、それぞれの操作時に第1のかつらベース3のフィラメント8が第2のかつらベース4に局所的に密着する箇所が多くなり、隙間が所定の高さhを保ち難くなったと考えられる。
2 複層かつらベース
3 第1のかつらベース
4 第2のかつらベース
5 接着剤層
6 分け目領域
7 表側編み目
8 フィラメント
10 凸部
11 中空空間
14 基布
20 毛髪
21 折り返し部
22 接地部位
a 可動領域
h 高さ
Claims (11)
- 第1のかつらベースと、該第1のかつらベースの裏側に配置されて頭皮側となる第2のかつらベースとを備えたかつらにおいて、
上記第1のかつらベースの少なくとも裏側に凹凸形状を有し、
上記第1のかつらベースの裏側に形成された凸部が上記第2のかつらベースに接合されることで、上記第1のかつらベースの凹部により所定の高さの隙間が形成され、
上記第2のかつらベースに取り付けられた毛髪の先端側が、上記隙間を通して上記第1のかつらベースの裏側から表側に引き出されていることを特徴とするかつら。 - 前記第1のかつらベースはフィラメントが立体的に編み込まれることで立体的編み込み構造を形成して成り、且つ前記第2のかつらベースは合成樹脂製の人工皮膚から成り、上記第1のかつらベースの表側に配置された上記フィラメントと上記第2のかつらベースの表面との間に上記隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
- 前記第1のかつらベースと前記第2のかつらベースとが、少なくともかつらの分け目領域に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
- 前記隙間の高さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
- 前記毛髪は前記第2のかつらベースにV字状に植設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
- 前記第2のかつらベースの裏側に前記毛髪を固着する接着剤層が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
- 前記第2のかつらベースの表側に粗面化処理による凹凸形状が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
- 第1のかつらベースと、該第1のかつらベースの裏側に配置された頭皮側の第2のかつらベースとを備えた複層構造のかつらベースにおいて、
上記第1のかつらベースの少なくとも裏側に凹凸形状を有し、上記第1のかつらベースの裏側に形成された凸部が上記第2のかつらベースに接合されることで、上記第1のかつらベース凹部により所定の高さの隙間が形成されていることを特徴とするかつらベース。 - 前記第1のかつらベースはフィラメントが立体的に編み込まれることで立体的編み込み構造を形成して成り、且つ前記第2のかつらベースは合成樹脂製の人工皮膚から成り、上記第1のかつらベースの表側に配置された上記フィラメントと第2のかつらベースの表面との間に上記隙間が形成されていることを特徴とする、請求項8に記載のかつらベース。
- 第1のかつらベースと、該第1のかつらベースの裏側に配置された頭皮側の第2のかつらベースとを備えたかつらを製造する方法において、
少なくとも裏側に凹凸形状を有する上記第1のかつらベースを準備し、
該第1のかつらベースの凸部を上記第2のかつらベースに接合することで、該第1のかつらベースの凹部により所定の高さの隙間を形成して複層構造のかつらベースを作製し、
上記第2のかつらベースに毛髪を取り付け、且つ該毛髪の先端側を上記第1のかつらベースの隙間に通して該第1のかつらベースの裏側から表側に引き出すことを特徴とするかつらの製造方法。 - フィラメントが立体的に編み込まれることで立体的編み込み構造を形成した前記第1のかつらベースを準備し、該第1のかつらベースの表側に配置された上記フィラメントと第2のかつらベースの表面との間に所定高さの上記隙間を設けることを特徴とする、請求項10に記載のかつらの製造方法。
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