JP5417144B2 - ポリイミド - Google Patents
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Description
本発明に係るポリイミドは、特定構造を有する酸二無水物と特定構造を有するジアミンとを反応して得られる。本発明に係る樹脂組成物においては、特定構造を有するポリイミドを含むことで、熱硬化後硬化物のガラス転移温度と弾性率を制御することができるので、反りを低減でき、低反発性を発現できる。そして、本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化後に熱架橋性官能基を有する化合物との間で架橋を形成する。このように、本発明に係る樹脂組成物においては、特定構造を有するポリイミドと熱架橋性官能基を有する化合物との間での化学的な架橋が形成され、特定構造を有するポリイミドがポリオキシアルキレン鎖を有することから、高分子鎖間の局部的な相互作用により三次元的なネットワークを形成が形成され、耐熱性が発現される。
特定構造を有するポリイミドは、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分と、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のアルキルエーテル基を有するジアミン成分と、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の芳香族ジアミン成分の重合物と、を含む。このポリイミドは、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分と、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のアルキルエーテル基を有するジアミン成分と、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の芳香族ジアミン成分と、を反応させることで合成できる。
熱架橋性官能基を有する化合物としては、熱架橋性官能基を有していれば特に制限はされないが、中でも、トリアジン系化合物、ベンゾオキサジン化合物、及びブロックイソシアネート化合物からなる群から選択された少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
樹脂組成物とするとき、熱架橋性官能基を有する化合物は、ポリイミド100質量部に対して、1質量部〜40質量部の範囲で含有する。1質量部〜40質量部の範囲であれば、耐熱性(はんだ耐熱性)、低反り性、屈曲性を損ねることがなく好ましい。中でも、5質量部以上であれば架橋密度の面から特に好ましく、20質量部以下であれば反りと反発性の面から特に好ましい。
硬化膜は、以下のように作製した。基板として、東レ・デュポン社製のカプトン(登録商標)100ENを用い、その片面にポリイミド、又は該ポリイミドからなる樹脂組成物をバーコーターで基板に塗工し、室温で5分間〜10分間レベリングを実施した。次に、熱風オーブンにて120℃、30分間加熱し、次いで、180℃、60分間加熱して乾燥硬化した。乾燥硬化後の膜厚は、約20μmであった。作製した硬化膜は、試料として以下の試験に用いた。
イミド化率は、IR法で求めた。1480cm‐1近傍のベンゼン環に基づくピークを基準とし、1380cm‐1近傍のイミド環生成に基づくピークの吸光度と基準ピークの吸光度との比からイミド化率を求めた。イミド化率の測定においては、それぞれのピーク前後でピークの谷と谷を結ぶように適宜ベースラインを引き、それぞれのピークからそのベースラインへ降ろした線とベースラインとの交点からピークまでの高さをそれぞれの吸光度とした。イミド化率は、上記のように測定した吸光度を用い、以下のように算出した。樹脂をそれぞれの組成で50℃にて合成し、80℃で乾燥した際の樹脂の1480cm‐1における吸光度をA1、1380cm‐1の吸光度をB1とした。また、大気雰囲気で220℃、60分間熱処理した際の樹脂の1480cm‐1における吸光度をA2、1380cm‐1の吸光度をB2とし、任意の温度における1480cm‐1の吸光度をA3、1380cm‐1の吸光度をB3とした場合、任意の温度におけるイミド化率Cは、220℃、60分間熱処理時のそれを100として、イミド化率C=((B3/A3―B1/A1)/(B2/A2―B1/A1))×100(%)の式で算出した。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記の条件により測定した。溶媒としてN、N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
カラム:TSK−GEL SUPER HM−H(東ソー社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
反り評価は、以下のように実施した。23℃、湿度50%の環境下にて、上記試料を5cm×5cmに切断し、中央部に対する角の浮き上がった距離を反りとして測定した。反りが10mm以下であるものは良好で○、5mm以下であるものは更に良好で◎、10mmを超えるものは不良で×とした。
HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)試験評価は、以下のように実施した。テスト配線基板の櫛歯状の銅配線パターン(その上に絶縁層が形成されている)に関して、ライン/スペース=30μm/30μmの櫛歯の間に5Vの電圧をかけ130℃・85%RHの高温高湿下で放置した。96時間経過後、櫛歯間の絶縁抵抗を測定した。
貯蔵安定性は、ポリイミドワニスを5℃の冷凍庫で1ヶ月保管後、重量平均分子量(Mw)の測定により評価した。重量平均分子量(Mw)の変化が10%以下の場合は良好で○、10%超える場合は不良で×とした。
反発性評価は、以下のように実施した。23℃、湿度50%の環境下にて、保護膜を積層した側を内向きに折り曲げて並行板で挟み、並行板間に掛ける荷重を加えて行き、1分後、屈曲半径R=0.5mmで維持した際の荷重を測定した。カプトン(登録商標)100EN基板のみの場合の荷重に対して、荷重増加が10%以下の場合は良好で○、5%以下の場合は更に良好で◎、10%を超えて反発力が高まった場合は不良で×とした。
耐熱性は、3cm×3cmに切断した試料をハンダ浴に260℃で60秒間浸漬する試験を実施して評価した。JPCA−BM02規格に準じ、膜表面に膨れ・焦げ等の異常は見られない場合は○、ある場合は×とした。
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。氷水浴0℃で、ジェファーミンXTJ−542(ハンツマン社製、重量平均分子量1000)400g、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)166.65g、γ−ブチロラクトン(GBL)440g、安息香酸エチル(BAEE)440g、トルエン80g、γ−バレロラクトン12g、ピリジン18gを入れ、均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)358gを少しずつ添加した。0.5時間攪拌した後、170℃まで昇温し、5時間加熱した後、アニリン6.59gを加え、室温まで冷却した。反応中、副生する水は、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用い、トルエンとの共沸により還流下脱水した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きした。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミド含有量50質量%のワニスを得た。
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。氷水浴0℃で、ジェファーミンXTJ−542(ハンツマン社製、重量平均分子量1000)400g、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)166.65g、γ−ブチロラクトン(GBL)430g、安息香酸エチル(BAEE)430g、トルエン80g、γ−バレロラクトン12g、ピリジン18gを入れ、均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)214.80g及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)128.88gを少しずつ添加した。0.5時間攪拌した後、170℃まで昇温し、5時間加熱した後、アニリン6.59gを加え、室温まで冷却した。反応中、副生する水は、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用い、トルエンとの共沸により還流下脱水した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きした。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミド含有量50質量%のワニスを得た。
合成時に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)124.08gに換えることと、アニリンを添加しないこと以外は、実施例2と同様に合成した。
合成時にジェファーミンXTJ−542をジェファーミンED−600 360gに換えることと、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)の添加量を108.17gにする以外は、実施例2と同様に合成した。
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。氷水浴0℃で、ジェファーミンXTJ−542(ハンツマン社製、重量平均分子量1000)400g、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)140.33g、γ−ブチロラクトン(GBL)430g、安息香酸エチル(BAEE)430g、トルエン80g、γ−バレロラクトン12g、ピリジン18gを入れ、均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)143.2gと、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)183.65gを少しずつ添加した。0.5時間攪拌した後、170℃まで昇温し、4時間加熱した。反応中、副生する水は、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用い、トルエンとの共沸により還流下脱水した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きした。系を60℃まで冷却した後、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)35.08gを添加した。5時間後、無水フタル酸8.89gを加え、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミド含有量52質量%のワニスを得た。
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。氷水浴0℃で、ジェファーミンXTJ−542(ハンツマン社製、重量平均分子量1000)400g、γ−ブチロラクトン(GBL)430g、安息香酸エチル(BAEE)430g、トルエン80g、γ−バレロラクトン12g、ピリジン18gを入れ、均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)143.2gと、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)183.65gを少しずつ添加した。0.5時間攪拌した後、170℃まで昇温し、4時間加熱した。反応中、副生する水は、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用い、トルエンとの共沸により還流下脱水した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きした。系を60℃まで冷却した後、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)175.42gを添加した。5時間後、無水フタル酸8.89gを加え、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミド含有量52質量%のワニスを得た。
合成時に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を1,2-エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)(TMEG)163.92gに換える以外は、実施例2と同様に合成した。
実施例1で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋性官能基を有する化合物(以降、「熱架橋剤」とする)としてビスフェノールベンゾオキサジン(Bis−Fタイプベンゾオキサジン 小西化学工業社製)を12.5質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
実施例2で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋剤としてメチロール化メラミン(ニカラックMW−390 三和ケミカル社製)を20質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
実施例3で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのブロックポリイソシアネート(デュラネートTPA−B80E 旭化成ケミカルズ社製)を20質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
実施例4で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋剤としてビスフェノールベンゾオキサジン(Bis−Fタイプベンゾオキサジン 小西化学工業社製)を15質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
実施例5で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋剤としてビスフェノールベンゾオキサジン(Bis−Fタイプベンゾオキサジン 小西化学工業社製)を10質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
実施例6で得られたポリイミド100質量部に、熱架橋剤としてビスフェノールベンゾオキサジン(Bis−Fタイプベンゾオキサジン 小西化学工業社製)を10質量部加え、ポリイミドが30質量%になるよう樹脂組成物を調合した。硬化膜を作成し、その評価を行った。
フレキシブルプリント配線板の基材としてエスパネックスM(新日鉄化学社製)(絶縁層の厚さ25μm、導体層は銅箔F2−WS(18μm))を使用しライン/スペース:30μm/30μm、50μm/50μm、100μm/100μm、200μm/200μmの櫛形配線板を作成した。この回路基板上の一部に実施例1の樹脂組成物を塗布し、塗布しなかった部分に電解ニッケル−金メッキを、ニッケルの厚さ約5μm、金の厚さ約0.05μmで施した。マイクロ蛍光X線分析の結果、樹脂組成物を塗工した部分へのメッキの潜り込みは、20μm未満であった。また、抵抗計による絶縁抵抗の測定の結果、回路間の絶縁状態は良好であった。更に、櫛形配線板の櫛形部にインクを印刷し、DC50V、85℃、湿度85%の条件下で1000時間放置しながら抵抗を測定する信頼性試験を実施したが、いずれも終始10の9乗Ωを越える抵抗を保持し、良好な結果を得た。
合成時にジェファーミンXTJ−542を添加せず、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)の添加量を283.59gにする以外は、実施例2と同様に合成した。
合成時に3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、1,2-エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)(TMEG)409.8gに換える以外は、実施例2と同様に合成した。
合成時に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)を添加せず、ジェファーミンXTJ−542の添加量を970gに換える以外は、実施例2と同様に合成した。
熱架橋剤を未添加とした以外、他の配合などは実施例8と同様にして硬化膜を作成し、その評価を行った。
Claims (11)
- 下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分と、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のアルキルエーテル基を有するジアミン成分と、及び下記一般式(3)で表される少なくとも1種の芳香族ジアミン成分と、の重合物を含み、前記芳香族ジアミン成分には、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが含まれており、エステル基含有酸二無水物の含有量が、全酸二無水物のうち、20mol%以下であることを特徴とするポリイミド。
- 前記エステル基含有酸二無水物を含有しないことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド。
- 前記テトラカルボン酸二無水物に、更に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリイミド。
- 3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物との混合物、あるいは、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物との混合物が含まれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド。
- イミド化率が30%以上であり、且つイミド化率D%と、全酸成分に対する3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物成分の含有量Eモル%と、の関係が、(E≧D−29)の式で満足されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド。
- 前記アルキルエーテル基を有するジアミンの重量平均分子量が、400から1400範囲であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリイミド。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリイミドと、熱架橋性官能基を有する化合物と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
- 前記熱架橋性官能基を有する化合物が、トリアジン化合物、ベンゾオキサジン化合物、及びブロックイソシアネート化合物からなる群から選択された少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
- 請求項7または請求項8に記載の樹脂組成物を含んでなることを特徴とするプリント回路基板の保護膜形成用材料。
- 請求項7または請求項8に記載の樹脂組成物を熱硬化して得られたことを特徴とする硬化物。
- 配線を有する基材と、前記基材の表面を被覆する請求項10に記載の硬化物と、を備えたことを特徴とする回路基板。
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