JP5416813B2 - 硬質皮膜 - Google Patents

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Description

本発明は、チップ、ドリル、エンドミルなどの切削工具や、鍛造金型や打ち抜きパンチなどの冶工具などに形成するのに有用な硬質皮膜に関するものである。
従来、切削工具では、耐摩耗性を高めるために高速度鋼や超硬合金、サーメットなどの基材に、TiN、TiCN、TiAlNなどの硬質皮膜をコーティングしている。特にTiAlNは耐磨耗性が高いため、高速切削用工具や焼入れ鋼などの高硬度材切削用工具で好適に用いられている。さらに近年の被切削材の高硬度化や切削速度の高速化に伴い、より優れた耐磨耗性を有する硬質皮膜の開発が求められている。
例えば特許文献1では、TiAlNのTiを一部Crに置換してTiCrAlNにしている。そしてCrを添加すると、岩塩構造型AlNの比率をより一層高めることができるため、皮膜の硬度を高めることができ、同時に耐酸化性も向上させることができると説明している。また特許文献2には、TiAlNのTi全てをCrに代えた硬質皮膜(CrAlNなど)が開示されている。
特開2003−71610号公報(特許請求の範囲、段落0022〜0023) 特開平9−41127号公報(特許請求の範囲)
しかし、TiAlN、TiCrAlN、AlCrNなどの硬質皮膜は、高温下での耐酸化性には優れているものの、皮膜温度が極めて高くなる条件下、特に摺動摩擦が激しくなるような条件下(例えば、ドライ環境で高速度の切削を行う場合、高面圧下で塑性加工を行う場合など)では、皮膜硬度が低下してしまう。時には、皮膜の結晶構造が変化し、軟質相へと転移することもある。従って硬質薄膜の高温特性をさらに改善することが望まれている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高温特性がより一層優れた硬質皮膜を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、CrAlの(炭)窒化物(CrAlCN、CrAlNなど)を、ZrやHfと適切に組み合わせれば、高温特性がより一層向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る硬質皮膜は、下記式(1a)で示されかつ厚さが1〜80nmである第1の層と、下記式(2a)で示されかつ厚さが1〜80nmである第2の層とが、交互に複数積層されている積層型硬質皮膜である。
(Cr(1-a)Ala)(C(1-x)x) …(1a)
(Zr(1-k)Hfk)(C(1-y)y) …(2a)
[式中の添字は、原子比を示す。これら添字は、以下の関係を満足する。
0.2≦a≦0.8
0.7≦x≦1
0≦k≦1
0.5≦y≦1 ]
前記複数の第1の層のうち少なくとも一部の層が、下記式(1b)で示されかつ厚さ1〜80nmである層に置き換えられていてもよく、前記複数の第2の層のうち少なくとも一部の層が、下記式(2b)で示されかつ厚さ1〜80nmである層に置き換えられていてもよい。
(Cr(1-a-b-c)AlaSibc)(C(1-x)x) …(1b)
[式中の添字は、原子比を示す。b及びcは、片方が0であってもよい。これら添字は、以下の関係を満足する。
0.2≦a≦0.8
0<(b+c)≦0.2
0.7≦x≦1 ]
(Zr(1-k-m-n)HfkSimn)(C(1-y)y) …(2b)
[式中の添字は、原子比を示す。m及びnは、片方が0であってもよい。これら添字は、以下の関係を満足する。
0≦k≦1−m−n
0<(m+n)≦0.2
0.5≦y≦1 ]
前記積層型硬質皮膜は、下記式(1c)又は(1d)で示されるターゲットを用い、イオンプレーティング法又はスパッタリング法によって、厚さが1〜80nmであってC/N比(原子比)が0.3/0.7〜0/1の(炭)窒化物層を第1の層として形成する工程と、
下記式(2c)又は(2d)で示されるターゲットを用い、イオンプレーティング法又はスパッタリング法によって、厚さが1〜80nmであってC/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の(炭)窒化物層を第2の層として形成する工程とを交互に複数回繰り返すことによって得ることができる。
Cr(1-a)Ala …(1c)
Cr(1-a-b-c)AlaSibc …(1d)
Zr(1-k)Hfk …(2c)
Zr(1-k-m-n)HfkSimn …(2d)
[式中の添字は、原子比を示す。b及びcは、片方が0であってもよい。またm及びnも、片方が0であってもよい。これら添字は、以下の関係を満足する。
0.2≦a≦0.8
0<(b+c)≦0.2
0≦k≦1(式2cの場合)又は0≦k≦1−m−n(式2dの場合)
0<(m+n)≦0.2 ]
第1の層及び第2の層の少なくとも一方(特に両方)は、立方晶型結晶構造を示すことが望ましい。
また本発明の硬質皮膜は、積層型に限定されず、例えば下記式(3a)又は下記式(3b)で示される皮膜であってもよい。
(Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr)(C(1-z)z) …(3a)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。これら添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する;
pが0.5未満の場合: 0.2≦p<0.5
0.2≦(q+r)≦0.5
0.05≦(1−p−q−r)
0.5≦z≦1
pが0.5以上の場合: 0.5≦p≦0.7
0.05≦(q+r)≦0.25
0.15≦(1−p−q−r)
0.5≦z≦1 ]
(Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist)(C(1-z)z) …(3b)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。またs及びtも、片方が0であってもよい。これら添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する。
pが0.5未満の場合: 0.2≦p<0.5
0.2≦(q+r)≦0.5
0<(s+t)≦0.2
0.05≦(1−p−q−r−s−t)
0.5≦z≦1
pが0.5以上の場合: 0.5≦p≦0.7
0.05≦(q+r)≦0.25
0<(s+t)≦0.2
0.15≦(1−p−q−r−s−t)
0.5≦z≦1 ]
前記硬質皮膜は、下記式(3c)又は(3d)で示されるターゲットを用い、イオンプレーティング法又はスパッタリング法によって、C/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の(炭)窒化物層を形成することによって得ることができる。
Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr …(3c)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。これら添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する。
pが0.5未満の場合: 0.2≦p<0.5、
0.2≦(q+r)≦0.5、
0.05≦(1−p−q−r)
pが0.5以上の場合: 0.5≦p≦0.7
0.05≦(q+r)≦0.25
0.15≦(1−p−q−r) ]
Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist …(3d)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。またs及びtも、片方が0であってもよい。これら添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する。
pが0.5未満の場合: 0.2≦p<0.5、
0.2≦(q+r)≦0.5、
0<(s+t)≦0.2
0.05≦(1−p−q−r−s−t)
pが0.5以上の場合: 0.5≦p≦0.7
0.05≦(q+r)≦0.25
0<(s+t)≦0.2
0.15≦(1−p−q−r−s−t) ]
前記硬質皮膜は、立方晶型結晶構造を示すものであることが望ましい。
本発明の硬質皮膜の厚さは、積層型であるか否かを問わず、例えば1000nm以上である。
本発明の硬質皮膜によれば、CrAlの窒化物又は炭窒化物(CrAlCN、CrAlNなど;以下、窒化物と炭窒化物とを合わせて(炭)窒化物という)と、Zr及び/又はHfとを適切に組み合わせているので、高温特性がより一層改善される。
図1は本発明の硬質皮膜の形成装置の一例を示す概念図である。 図2は本発明の硬質皮膜の形成装置の他の例を示す概念図である。 図3は本発明の硬質皮膜の形成装置の別の例を示す概念図である。
本発明では、CrAlの(炭)窒化物を、Zr及び/又はHfと適切に組み合わせて、硬質皮膜を形成している。例えば、第1の態様では、CrAlの(炭)窒化物とZr及び/又はHfの(炭)窒化物とを微細に積層する(積層型硬質皮膜)。また第2の態様では、CrAlのみならずZr及び/又はHfをも含む(炭)窒化物から硬質皮膜を形成する(以下、この硬質皮膜を単層型硬質皮膜という。またこの単層型硬質皮膜を形成する前記(炭)窒化物を、CrAlZrHf(炭)窒化物という)。ZrやHfの(炭)窒化物は、生成自由エネルギーがTiやCrの(炭)窒化物などに比べて負の大きな値になる。従ってこのZrやHfの(炭)窒化物を、CrAlの(炭)窒化物と積層したり、CrAl(炭)窒化物中に含有させたりすると、CrAlの(炭)窒化物よりも高温安定性が高まり、高温硬度などが向上し、耐摩耗性が改善される。
なお前記CrAlの(炭)窒化物、Zr及び/又はHfの(炭)窒化物、CrAlZrHf(炭)窒化物などには、さらにSi及び/又はBを添加していてもよい。SiやBは、皮膜の耐酸化性をさらに改善するのに有効であり、また皮膜の結晶粒子を微細化するのにも有効である。
以下、より詳細に本発明の硬質皮膜について説明する。
[積層型硬質皮膜]
本発明に係る積層型硬質皮膜は、より具体的には、下記式(1a)で示される第1の層[CrAlの(炭)窒化物]と、下記式(2a)で示される第2の層[Zr及び/又はHfの(炭)窒化物]とが、交互に複数回積層されたものである。第1の層[CrAlの(炭)窒化物]は主として皮膜の高硬度化に貢献し、第2の層[Zr及び/又はHfの(炭)窒化物]は主として皮膜の高温安定化に貢献する。
(Cr(1-a)Ala)(C(1-x)x) …(1a)
(Zr(1-k)Hfk)(C(1-y)y) …(2a)
[式中の添字は、原子比を示す。これら添字は、以下の関係を満足する。
0.2≦a≦0.8
0.7≦x≦1
0≦k≦1
0.5≦y≦1 ]
第1の層となるCrAlの(炭)窒化物[式(1a)]は、Crの(炭)窒化物対してさらにAlを添加することによって、耐酸化性と硬度を向上させたものである。従って式(1a)において、Al比(a)は、0.2以上、好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上である。通常、Al比の増加ともに耐酸化性も向上するが、Alを過度に添加すると皮膜の結晶構造が高硬度相である立方晶型結晶構造(岩塩型結晶構造、NaCl型結晶構造ともいう;以下B1構造という)から、比較的低硬度の六方晶型結晶構造(ウルツ鉱型結晶構造、ZnS型結晶構造ともいう;以下B4構造という)に転移する。従ってAl比(a)は、0.8以下、好ましくは0.7以下にする。
また第1の層においてN比(x)が小さくなると、C比が高まって、不安定な化合物であるAlC3が形成される。従ってN比(x)は、0.7以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上にする。
一方、第2の層となるZr及び/又はHfの(炭)窒化物[式(2a)]では、ZrとHfは互いに類似した特性を示すため、その比率は任意である。すなわち式(2a)において、Hf比(k)は、0〜1の間の全ての値をとることができる。好ましいHf比(k)は、0.1〜0.8程度、特に0.2〜0.5程度である。
また第2の層では、CはZrCやHfCなどの高硬度化合物を形成するため皮膜の硬質化に寄与する。しかしC比(1−y)が大きすぎると、耐酸化性が低下する。なお本明細書では、N比(y)を規定することによって、間接的にC比(1−y)を規定する。N比(y)は、0.5〜1、好ましくは0.6〜1である。
第1の層の厚さは、1〜80nm程度である。第1の層が薄すぎると、皮膜の高硬度化への寄与度の高い第1の層の割合が少なくなるため、皮膜の硬度が低下する。好ましい第1の層の厚さは、5nm以上、特に20nm以上である。逆に第1の層が厚くなり過ぎると、皮膜の高温安定化への寄与度の高い第2の層の割合が少なくなる。従って第1の層の厚さは、80nm以下、好ましくは70nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。
第2の層の厚さは、1〜80nm程度である。第2の層は熱力学的に安定である点に特徴があり、高温下において結晶構造が変化しやすい第1の層を安定化させる役割を有している。第2の層が薄すぎると、この安定化効果が低下する。好ましい第2の層の厚さは、2nm以上、特に10nm以上である。しかし第2の層の硬度は、第1の層よりも低いため、第2の層が厚くなり過ぎると、皮膜硬度が低下する。好ましい第2の層の厚さは、50nm以下、特に35nm以下である。
第1の層の厚さ(T1)と第2の層の厚さ(T2)の差(T1−T2)は、0未満であってもよいが、好ましくは0以上、より好ましくは5〜50程度、特に10〜40程度である。差(T1−T2)を0以上にすると(すなわち第1の層の厚さ(T1)を第2の層の厚さ(T2)よりも厚くすると)、硬質な第1の層の割合が高まるため、より一層、皮膜硬度を高めることができる。
前記第1の層は、積層回数に相当する数の層からなる。この複数の第1の層は、少なくとも一部(特に全部)が、Si及び/又はBをさらに含有する層であってもよい。このSi及び/又はBをさらに含有する第1の層は、下記式(1b)で示される点を除き、前述の通常の第1の層(1a)と同じである[なお下記式(1b)は、Bが炭窒化物を形成したもののみならず、Bが、Cr、Al、Siなどと硼化物を形成したものも含む]。
(Cr(1-a-b-c)AlaSibc)(C(1-x)x) …(1b)
[式中、添字は原子比を示す。これら添字は、b及びcを除き、前記式(1a)の場合と同様の関係を満足する。b及びcは、片方が0であってもよい。またb及びcは、下記の関係を満足する。
0<(b+c)≦0.2 ]
Si及び/又はBを添加することにより、結晶粒界にSi−N結合やB−N結合が形成されて結晶粒の成長が抑制され、皮膜の結晶粒を微細化でき、硬度をさらに向上できる。また詳細は明らかではないが、耐酸化性も高めることができる。好ましい添加量(b+c)は、0.02以上、さらに好ましくは0.05以上である。ただしSi及び/又はBが過剰になると、六方晶が析出しやすくなる。従って添加量(b+c)の上限は、0.2、好ましくは0.15、さらに好ましくは0.1である。
なおSiとBは、両方を添加してもよく、片方だけを添加してもよい。従ってb及びcのうち片方は0であってもよい。ただし、SiはBよりも耐酸化性の点で優れているため、耐酸化性を重視する場合にはBよりもSiの比率を高めること(特にSiだけを添加すること)が推奨される。一方、Bは、潤滑作用のあるB−N結合を形成するため、潤滑性向上も重視する場合には、SiよりもBの比率を高めること(特にBだけを添加すること)が推奨される。
また前記第2の層も、少なくとも一部(特に全部)が、さらにSi及び/又はBを含有していてもよい。このSi及び/又はBを含有する第2の層は、下記式(2b)で示される点を除き、前述の通常の第2の層(2a)と同じである[なお下記式(2b)は、Bが炭窒化物を形成したもののみならず、Bが、Zr、Hf、Siなどと硼化物を形成したものも含む]。
(Zr(1-k-m-n)HfkSimn)(C(1-y)y) …(2b)
[式中の添字は、原子比を示す。m及びnは、片方が0であってもよい。これら添字は、以下の関係を満足する。
1≦k≦1−m−n
0<(m+n)≦0.2 ]
“m+n”の限定理由及び好ましい範囲は、前記“b+c”の場合と同様である。またm及びnの片方が0になってよい理由等についても、前記b、cの場合と同様である。kの好ましい範囲は、前記式2aの場合と同様である。
第1の層及び第2の層は、それらのうち片方だけが、前記Si及び/又はBを含有する層で置き換えられていてもよく、両方が前記Si及び/又はBを含有する層で置き換えられていてもよい。
前記第1の層及び第2の層(これらの層はSi及び/又はBを含有していてもよい)は、少なくとも一方(好ましくは両方)が、立方晶型結晶構造を示すことが推奨される。立方晶型結晶構造を示す場合の方が、六方晶型結晶構造を示す場合に比べて、硬度を高くしやすい。
前記積層型硬質皮膜は、前記第1の層(この第1の層はSi及び/又はBを含有していてもよく、含有していなくてもよい)を形成する第1工程と、前記第2の層(この第2の層もSi及び/又はBを含有していてもよく、含有していなくてもよい)を形成する第2工程とを交互に複数回繰り返すことによって製造できる。第1工程や第2工程では、物理気相成長法(PVD法)や化学気相成長法(CVD法)などの公知の方法を利用できる。密着性などの観点から、PVD法(スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、ホロカソード蒸着法など)によって各層を形成することが好ましい。
PVD法による場合、第1工程及び第2工程では、それぞれの層に対応する種々の元素を含有するターゲットを用いて第1の層及び第2の層を形成する。例えば、第1工程では、下記式(1c)又は(1d)で示されるターゲットを用い、厚さが1〜80nmであってC/N比(原子比)が0.3/0.7〜0/1の(炭)窒化物層を形成する。また第2工程では、下記式(2c)又は(2d)で示されるターゲットを用い、厚さが1〜80nmであってC/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の(炭)窒化物層を形成する。
Cr(1-a)Ala …(1c)
Cr(1-a-b-c)AlaSibc …(1d)
Zr(1-k)Hfk …(2c)
Zr(1-k-m-n)HfkSimn …(2d)
[式中の添字は、原子比を示す。またその値は、前記式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)と同じである]
特に好ましい成膜法は、ターゲット中の元素の蒸発(気化)速度が融点に大きく依存しない方法、例えば、スパッタリング法やイオンプレーティング法である。電子ビーム蒸着やホロカソード蒸着法によって成膜する場合は、ターゲット中の各元素の蒸発量の制御が難しくなる。
なおスパッタリング法(特にアンバランスマグネトロンスパッタリング(UBMS)法)とイオンプレーティング法(特にアークイオンプレーティング法)とを対比した場合、成膜速度の点では、イオンプレーティング法の方が優れている。一方、放電が容易である、ターゲットが破損しにくい、薄膜の厚さ制御が容易である、などの点では、スパッタリング法の法が優れている。従って、これら特性を利用して、成膜方法を選択してもよい。例えばZr及び/又はHfを含有するターゲットを用いて蒸着する場合には、イオンプレーティング法では放電しにくいため、スパッタリング法を利用することが推奨され、前記以外の場合には生産効率を高める観点からイオンプレーティング法が推奨される。
以下、スパッタリング法(特にUBMS法)又はイオンプレーティング法(特にアークイオンプレーティング法)を利用した積層型硬質皮膜の形成方法について、図示例を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の積層型硬質皮膜を製造するのに使用する成膜装置の一例を示す概念図である。この図1の装置11では、互いに異なる2つの蒸発源(図示例では、第1のスパッタリング式蒸発源21、及び第2のスパッタリング式蒸発源22)が同方向を向いて併設されており、これら蒸発源21、22の背面に配設した磁場印加機構101によって蒸発源21、22の正面側で成膜できるようになっている。また蒸発源21、22の正面側には当該蒸発面に回転面が正対する回転テーブル41が取り付けられており、この回転テーブル41の回転面には被処理部材(基材)51が取り付けられている。そして第1の発源21として前記ターゲット(1c)又は(1d)を用い、第2の蒸発源22として前記ターゲット(2c)又は(2d)を用い、これらを成膜用ガス[N源(窒素など)を含有するガス、N源とC源(メタンなど)とを含有するガス、又はこれらを不活性ガス(アルゴンなど)で希釈したものなど]中で蒸発させながら回転テーブル41を回転させると、被処理部材51が第1の蒸発源21の正面と、第2の蒸発源22の正面を交互に通過するため、この被処理部材51に第1の層と第2の層とを交互に複数回積層させることができ、積層型硬質皮膜を製造できる。
図2は他の成膜装置の一例を示す概念図である。この図2の装置12では、被処理部材51に向けて、互いに異なる2つの蒸発源(図示例ではアーク式蒸発源23、及びスパッタリング式蒸発源24)が配設されており、これら蒸発源23、24と被処理部材51との間には、蒸発源23、24からの蒸気33、34を遮るシャッター機構61、62が設けられている。そして片方の蒸発源に前記ターゲット(1c)又は(1d)を用い、他方の蒸発源に前記ターゲット(2c)又は(2d)を用い、これらを成膜用ガス(N源含有ガス、C源及びN源含有ガス、又はこれらを不活性ガスで希釈したものなど)中で蒸発させながらシャッター機構61、62を交互に開閉することにより、被処理部材51に第1の層と第2の層とを交互に複数回積層させることができ、積層型硬質皮膜を製造できる。
なおシャッター機構の開閉に代えて、蒸発源の放電のON−OFFを切り替えることによっても、同様に積層型硬質皮膜を製造できる。
図1及び図2の装置11、12では、蒸発源の数は限定されず、3以上であってもよい。また3以上にする場合、第1の層に対応する蒸発源にターゲット(1c)及び(1d)の両方を用いてもよく、第2の層に対応する蒸発源にターゲット(2c)及び(2d)の両方を用いてもよい。
また図1及び図2の装置11、12では、各蒸発源はスパッタリング式蒸発源及びアーク式蒸発源のいずれであってもよい。好ましくは、ターゲット(1c)や(2c)は、アークイオンプレーティング方式によって放電させ、ターゲット(1d)や(2d)は、スパッタリング方式によって放電させる。
ところで上記図1〜2の装置では平板状被処理部材(基材)への成膜は可能であるが、例えば棒状被処理部材(基材)への成膜は難しく、被処理部材の形状が制限される。また図2の装置では、片方の蒸発源を使用している間、他方の蒸発源は使用できないため、成膜の効率が低い。そこで下記の図3に示す装置を用いることが推奨される。図3に示す装置を用いれば、これら不具合が解消できる。
図3の成膜装置13では、真空チャンバー8内に回転盤72が配設されており、この回転盤72に4個の回転テーブル71が対称に取り付けられ、各回転テーブル71には被処理被材(基材)51が取り付けられている。そして回転盤72の周囲には、第1の蒸発源(図示例ではアーク式蒸発源)25、26と、第2の蒸発源(図示例ではスパッタリング式蒸発源)27、28とからなる2組の蒸発源が配置されている。これら蒸発源は、第1組と第2組とが互いに隣り合うように交互に配置されている。
そして片方の組の蒸発源に前記ターゲット(1c)及び/又は(1d)を用い、他方の組の蒸発源に前記ターゲット(2c)及び/又は(2d)を用い、これらを成膜用ガス(N源含有ガス、C源及びN源含有ガス、又はこれらを不活性ガスで希釈したものなど)中で蒸発させながら、回転盤72及び回転テーブル71を回転させれば、被処理部材51が第1組の蒸発源25、26の正面と第2組の蒸発源27、28の正面を交互に通過するため、被処理部材51に第1の層と第2の層とを交互に複数回積層させることができ、積層型硬質皮膜を製造できる。この図3の装置では、全ての蒸発源を常時有効利用でき、成膜の効率が非常に高い。また個々の層の厚さは基板の回転速度あるいは蒸発源に投入するパワー(蒸発速度)によって制御できる。
なお図3の例では、磁場印加機構101により発生および制御されるアーク式蒸発源25、26の磁場111とスパッタリング式蒸発源27、28の磁場112とが互いにつながることなく独立しているが、前記磁場111、112同士がつながってもよい。磁場111、112同士がつながらない場合には、両蒸発源25、26、27、28からの放出電子が、被処理部材51のみならず、該被処理部材51と同様にアノードとなるチャンバー8に向けても誘導される。これに対し、磁場111、112の両方がつながる場合には、チャンバー8内の磁場(磁力線)が閉じた状態(閉磁場構造)になり、両蒸発源25、26、27、28からの放出電子がこの閉磁場構造内にトラップされるため、被処理部材51への指向性が高まり、成膜効率及び皮膜特性が向上する。
さらに図3の例(及び前記図1の例)では回転運度を利用したが、被処理部材51が交互に蒸発源の前を通過する方式であれば、回転運動方式に限定されず、種々の運動方式を採用できる。例えば、蒸発源を直線上に配置し、これら蒸発源の正面側で被処理部材を直線的に往復運動させることによっても積層型皮膜は形成できる。
[単層型硬質皮膜]
本発明の硬質皮膜は、上記積層型皮膜に限定されない。CrAlの(炭)窒化物中にZr及び/又はHfを添加し、CrAlZrHf(炭)窒化物の均一膜を形成しても、積層型皮膜と同様の効果が得られる。この単層型硬質皮膜は、より具体的には、下記式(3a)で示される物質からなる皮膜である。
(Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr)(C(1-z)z) …(3a)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。またpは0.2以上、0.7以下である。p以外の添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する。
pが0.5未満の場合(すなわち0.2≦p<0.5の場合):
0.2≦(q+r)≦0.5
0.05≦(1−p−q−r)
0.5≦z≦1
pが0.5以上の場合(すなわち0.5≦p≦0.7の場合):
0.05≦(q+r)≦0.25
0.15≦(1−p−q−r)
0.5≦z≦1 ]
前記式(3a)において添字pはAlの原子比を示すものである。Alは、積層型硬質皮膜の場合と同様、皮膜の硬度と耐酸化性を高めるために必須であり、Al比は所定値以上にする必要がある。しかしAl比を大きくし過ぎると、軟質な六方晶型結晶構造が析出しやすくなる。これらの観点から、Al比は、0.2以上(好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.3以上)、0.7以下(好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.6以下)にする。
一方、前記式(3a)において、ZrとHfの合計比(q+r)やCr比(1−p−q−r)の範囲は、Al比(p)に応じて異なる。Al比(p)が0.5未満の場合、Alの役割(硬度及び耐酸化性の向上)を、ZrやHfで十分に補う必要があり、Zr及び/又はHfを十分に添加する必要がある。一方、Al比(p)が0.5以上にする場合、ZrとHfの添加量は相対的に少なくてよい。むしろAl比(p)が0.5以上の場合、ZrやHfが多くなると、結晶構造が六方晶型に転移しやすくなるため、ZrやHfは比較的少なくする必要がある。またCr比(1−p−q−r)は、前記Al比(p)とZr及びHfの合計比(q+r)と皮膜特性とのバランスから決定される。ZrとHfの合計比(q+r)やCr比(1−p−q−r)の詳細は、以下の通りである。
(1)Al比(p)が0.5未満の場合
ZrとHfの合計比(q+r)は、0.2以上(好ましくは0.23以上、さらに好ましくは0.25以上)、0.5以下(好ましくは0.47以下、さらに好ましくは0.45以下)である。
Cr比(1−p−q−r)は、0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上である。
(2)Al比(p)が0.5以上の場合
ZrとHfの合計比(q+r)は、0.05以上(好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.1以上)、0.25以下(好ましくは0.22以下、さらに好ましくは0.2以下)である。
Cr比(1−p−q−r)は、0.15以上、好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上である。
なおAl比(p)の範囲に拘わらず、ZrとHfは片方だけを添加してもよく、両方を添加してもよい。従ってqとrは、片方が0であってもよい。
またN比(z)は、Al比(p)の範囲に拘わらず、0.5〜1、好ましくは0.8〜1である。N比(z)の限定理由は、積層型硬質皮膜の場合と同様である。
単層型硬質皮膜は、前記積層型硬質皮膜と同様、さらにSi及び/又はBを含有していてもよい。このSi及び/又はBを含有する単層型硬質皮膜は、下記式(3b)で示される[なお下記式(3b)は、Bが炭窒化物を形成したもののみならず、Bが、Cr、Al、Zr、Hf、Siなどと硼化物を形成したものも含む]。
(Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist)(C(1-z)z) …(3b)
[式中の添字は、原子比を示す。ただしq及びrは、片方が0であってもよい。またs及びtも、片方が0であってもよい。pは0.2以上、0.7以下である。p以外の添字は、pが0.5未満の場合とpが0.5以上の場合とに応じて、以下の関係を満足する;
pが0.5未満の場合(すなわち0.2≦p<0.5の場合):
0.2≦(q+r)≦0.5
0<(s+t)≦0.2
0.05≦(1−p−q−r−s−t)
0.5≦z≦1
pが0.5以上の場合(すなわち0.5≦p≦0.7の場合):
0.05≦(q+r)≦0.25
0<(s+t)≦0.2
0.15≦(1−p−q−r−s−t)
0.5≦z≦1 ]
Al比(p)、ZrとHfの合計比(q+r)、N比(z)の限定理由及び好ましい範囲は、前記式(3a)と同じである。Cr比(1−p−q−r−s−t)の限定理由及び好ましい範囲は、前記式(3a)のCr比(1−p−q−r)と同じである。“s+t”の限定理由及び好ましい範囲は、前記“b+c”の場合と同じである。またs及びtの片方が0になってよい理由等についても、前記b、cの場合と同様である。
単層型硬質皮膜は、前述の積層型硬質皮膜と同様にして製造でき、例えば化学気相成長法(CVD法)を利用して形成してもよいが、物理気相成長法(PVD法)、特にスパッタリング法、イオンプレーティング法(アークイオンプレーティング法など)などを利用して形成することが好ましい。
PVD法による場合、下記式(3c)又は(3d)で示されるターゲットを用い、C/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の(炭)窒化物層を形成することによって、単層型硬質皮膜を形成できる。
Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr …(3c)
Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist …(3d)
[式中の添字は、原子比を示す。またその値は、前記式(3a)、(3b)と同じである]
単層型硬質皮膜は、前述の積層型硬質皮膜と同様、立方晶型結晶構造を示すことが推奨される。
本発明の硬質皮膜(積層型硬質皮膜、単層型硬質皮膜)の厚さは、例えば、1000nm以上(好ましくは2000nm以上)、10000nm以下(特に5000nm以下)程度であることが多い。
本発明の硬質皮膜は、CrAlの(炭)窒化物(CrAlCN、CrAlNなど)を、ZrやHfと適切に組み合わせているため、高温特性がより一層向上している。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実験例では、(1)鏡面研磨した超硬合金製チップ(皮膜組成、結晶構造、および硬度測定用)、(2)超硬合金製ボールエンドミル(直径10mm、二枚刃)(磨耗幅測定用)、および(3)白金箔(30×5×0.1mmt)(酸化開始温度測定用)の3種類の被処理部材の表面に硬質皮膜を形成するものとし、得られた硬質皮膜の物性は、下記の方法に従って求めた。
[硬質皮膜の組成]
皮膜中の金属元素の成分組成は、EDX(Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectroscopy )法で定量分析[加速電圧:20kV、WD(Work Distance):15mm、測定時間(Live):60秒、ZAF補正]することによって決定した。
[結晶構造]
リガク電機社製のX線回折装置を用い、X線回折法[θ−2θ法、CuKα線(40kV−40mA)]によって、硬質皮膜のX線回折ピークを調べた。2θ=37.78°付近のピークが立方晶の(111)面に相当し、2θ=43.9°付近のピークが立方晶の(200)面に相当し、2θ=63.8°付近のピークが立方晶の(220)面に相当する。また2θ=32°〜33°付近のピークが六方晶の(100)面に相当し、2θ=48°〜50°付近のピークが六方晶の(102)面に相当し、2θ=57°〜58°付近のピークが六方晶の(110)面に相当する。各ピークの強度を測定し、下記式(4)に従って結晶構造指数Xを算出し、下記基準に従って皮膜の結晶構造を決定した。
Figure 0005416813
(式中、IB(111)、IB(200)およびIB(220)は立方晶の各面のピーク強度を示す。IH(100)、IH(102)およびIH(110)は六方晶の各面のピーク強度を示す)
指数Xが0.9以上の場合:立方晶型結晶構造(下記表中、B1と表記する)
指数Xが0.1以上、0.9未満の場合:混合型(下記表中、B1+B4と表記する)
指数Xが0.1未満の場合:六方晶結晶構造(下記表中、B4と表記する)
[硬度]
硬度は、マイクロビッカース硬度計を用い、荷重0.25N、保持時間15秒の条件で測定した。
[酸化開始温度]
下記実験例で得られた白金サンプル(白金箔に硬質皮膜を形成したもの)を人工乾燥空気中で室温から5℃/minの昇温速度で加熱し、その重量変化を熱天秤で調べた。得られた重量増加曲線から酸化開始温度を決定した。
[磨耗幅]
下記実験例で得られた試験用エンドミル[超硬合金製エンドミル(直径10mm、2枚刃)の表面に硬質皮膜を形成したもの]を用い、SKD61焼き入れ鋼(HRC50)を、下記の切削条件で切削した後、刃先を光学顕微鏡で観察し、すくい面と逃げ面の境界部分の摩耗幅を測定した。
切削速度:220m/分
刃送り :0.05mm/刃
深さ切り込み:4.5mm
軸切り込み :1mm
その他:ドライカット、エアーブロー
実験例1
図3に示した成膜装置13を用い、CrとAlからなるターゲット(組成は表1の第1の層とほぼ同じ)をアーク式蒸発源25、26に装着し、ZrとHfからなるターゲット(組成は表1の第2の層とほぼ同じ)をスパッタリング式蒸発源27、28に装着した。また被処理部材(チップ、ボールエンドミル、又は白金箔)51をエタノールで脱脂洗浄した後、回転テーブル71上に取り付け、チャンバー8内を真空にした。ヒーター(図示せず)によって温度約500℃まで加熱し、回転盤72及び回転テーブル71によって被処理部材51を回転させつつ、Arイオンを導入してクリーニングを実施した。次いで成膜用ガスを導入しながら、各蒸発源25、26、27、28を放電させて、厚さが3μmになるまで積層型硬質皮膜を形成した。前記成膜用ガスはAr−N2混合ガス又はAr−N2−CH4の混合ガスであり、全圧力は2.6Paであり、反応ガスの分圧(N2の分圧とCH4の分圧の合計)は1.3Paに固定した。また第1の層と第2の層の厚さは、蒸発源へ投入する電力及び被処理部材51の回転周期により調節した。
得られた硬質皮膜の物性を表1に示す。
Figure 0005416813
表1のNo.11〜23は、本発明の積層型硬質皮膜に相当する。これら積層型硬質皮膜は、従来の硬質皮膜(表1のNo.i〜iii参照)に比べ、硬度、酸化開始温度、摩耗幅などの点で優れている。
実験例2
Cr・Al・Si・Bからなるターゲット(組成は表2の第1の層とほぼ同じ)をアーク式蒸発源25、26に装着し、Zr・Hf・Si・Bからなるターゲット(組成は表1の第2の層とほぼ同じ)をスパッタリング式蒸発源27、28に装着する以外は、前記実験例1と同様にした。
得られた硬質皮膜の物性を表2に示す。
Figure 0005416813
表2のNo.3〜9は、本発明の積層型硬質皮膜に相当する。これら積層型硬質皮膜は、従来の硬質皮膜(表1のNo.i〜iii参照)に比べ、硬度、酸化開始温度、摩耗幅などの点で優れている。
実験例3
蒸発源25、26、27、28の方式をアークイオンプレーティング式に統一し、これら蒸発源25、26、27、28にCr・Al・Zr・Hfからなるターゲット(組成は表3とほぼ同じ)を装着すると共に、成膜用ガスをN2ガス(全圧力:4Pa)又はN2−CH4混合ガス(N2分圧:2.7Pa、CH4分圧:1.3Pa、全圧力:4Pa)にする以外は、前記実験例1と同様にした。
得られた硬質皮膜の物性を表3に示す。
Figure 0005416813
表3のNo.3〜5及び10〜11は、本発明の硬質皮膜に相当する。これら硬質皮膜は、従来の硬質皮膜(表3のNo.i〜iii参照)に比べ、硬度、酸化開始温度、摩耗幅などの点で優れている。
実験例4
Cr・Al・Zr・Hf・Si・Bから成るターゲット(組成は表4とほぼ同じ)を装着する以外は、実験例3と同様にした。
得られた硬質皮膜の物性を表4に示す。
Figure 0005416813
表4のNo.2〜5及び7〜8は、本発明の硬質皮膜に相当する。これら硬質皮膜は、従来の硬質皮膜(表4のNo.i〜iii参照)に比べ、硬度、酸化開始温度、摩耗幅などの点で優れている。
本発明の硬質皮膜は、硬度、酸化開始温度、ドライ環境で高速度の切削を行った場合の摩耗幅などの点で優れ、高温特性が改善されているため、工具や金型のコーティング皮膜(硬質皮膜)として好適に用いることができ、それらの耐久性を向上できる。例えば、高速度工具鋼(SKH51、SKD11、SKD61など)や超硬合金などの鉄系基材の表面に形成することで、硬度や耐酸化性に優れた切削工具や治工具を得ることができる。
21、22、23、24、25、26、27、28:蒸発源(ターゲット)
51:被処理部材

Claims (6)

  1. 下記式(3a)で示される硬質皮膜。
    (Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr)(C(1-z)z) …(3a)
    [式中の添字は、原子比を示す;ただしq及びrは、片方が0であってもよい;これら添字は、以下の関係を満足する;
    .2≦p<0.5
    0.2≦(q+r)≦0.5
    0.05≦(1−p−q−r)
    0.5≦z≦1]
  2. 下記式(3b)で示される硬質皮膜。
    (Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist)(C(1-z)z) …(3b)
    [式中の添字は、原子比を示す;ただしq及びrは、片方が0であってもよい;またs及びtも、片方が0であってもよい;これら添字は、以下の関係を満足する;
    .2≦p<0.5
    0.2≦(q+r)≦0.5
    0<(s+t)≦0.2
    0.05≦(1−p−q−r−s−t)
    0.5≦z≦1]
  3. 下記式(3c)で示されるターゲットを用い、イオンプレーティング法又はスパッタリング法によって、C/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の窒化物層又は炭窒化物層を形成することによって得られる硬質皮膜。
    Cr(1-p-q-r)AlpZrqHfr …(3c)
    [式中の添字は、原子比を示す;ただしq及びrは、片方が0であってもよい;これら添字は、以下の関係を満足する;
    .2≦p<0.5、
    0.2≦(q+r)≦0.5、
    0.05≦(1−p−q−r)]
  4. 下記式(3d)で示されるターゲットを用い、イオンプレーティング法又はスパッタリング法によって、C/N比(原子比)が0.5/0.5〜0/1の窒化物層又は炭窒化物層を形成することによって得られる硬質皮膜。
    Cr(1-p-q-r-s-t)AlpZrqHfrSist …(3d)
    [式中の添字は、原子比を示す;ただしq及びrは、片方が0であってもよい;またs及びtも、片方が0であってもよい;これら添字は、以下の関係を満足する;
    .2≦p<0.5、
    0.2≦(q+r)≦0.5、
    0<(s+t)≦0.2
    0.05≦(1−p−q−r−s−t)]
  5. 立方晶型結晶構造を示すものである請求項のいずれかに記載の硬質皮膜。
  6. 厚さが1000nm以上である請求項1〜のいずれかに記載の硬質皮膜。
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