JP5415983B2 - 歯付ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、歯付ベルトに関し、より詳しくは、ベルト本体が熱可塑性ポリウレタン組成物で形成された歯付ベルトに関する。
従来、複数の歯部がベルト長手方向に所定の間隔を設けて配列された歯付ベルトが種々の用途で用いられている。
この歯付ベルトは、無端状のものが複数のプーリ間に掛け渡されて動力伝達ベルトやコンベヤベルトとして用いられたり、無端状とはされずに一本のベルトとしてその片端、あるいは、両端に取り付けた部材を移動させるための手段として用いられたりしており幅広い用途において利用されている。
さらには、この歯付ベルトは、ベルト片面にのみ歯部が設けられたもののみならず両面に歯部が設けられたものが知られており、歯部がベルト長手方向に直角ではなく角度を持って配されたものなど、その形状としても様々なものが知られている。
このように歯付ベルトは、種類や用途が多岐にわたるものではあるが、歯付プーリなどと噛合する状態で利用される点においては共通しているため、通常、使用時において寸法や特性を変化させることのない安定性が求められる点において共通している。
例えば、寸法変化については、ピッチが変化するとベルトとプーリとの噛合いに干渉が生じ、該干渉によって異音を発生させるおそれがあり、寸法変化が特に大きい場合はプーリへの乗り上げ、歯飛び現象を引き起こすおそれも有する。
歯付ベルトは、通常、ゴム組成物やポリウレタン組成物といった弾性に富んだ材料でベルト本体が形成されており、ベルト長手方向への抗張力を持たせるためにスチールコードなどの心線が埋設されている。
ところで、このような歯付ベルトは、下記特許文献1に示すように食品に接するような用途などにおいても用いられている。
この食品用途においては、比較的湿度の高い環境下での使用となることから、心線にスチールコードを用いると錆が発生して心線の表面とその周りのゴムなどとの間の接着力が低下して特性を変化させるおそれを有する。
また、錆の発生についてはクリーンルームのクリーン度を低下させるという問題を発生させるおそれを有する。
さらに、食品用途ではベルトが破損した際における食品への混入を懸念してスチールコードが心線として用いられているベルトの使用は避けられる傾向にある。
このことに対して、例えば、繊維の中でも強度の比較的高い芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)やポリアリレート繊維といったもので心線を構成させることも考え得るが、これらを単に心線として利用するだけではスチールコードに匹敵するような優れた強度を歯付ベルトに付与することは難しい。
そのため、従来、高い湿度環境においても特性の安定した高強度の歯付ベルトを得ることが難しいという問題を有している。
特開2008−137732号公報
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、高い湿度環境においても安定した特性を発揮することのできる高強度の歯付ベルトの提供を課題としている。
本発明者は、芳香族ポリアミド繊維を心線に使用すると高い湿度環境下においてベルト寸法を変化させやすい一方でポリアリレート繊維を使用すると優れた寸法安定性が発揮されること、ならびに、熱可塑性ポリウレタン組成物製の歯付ベルトにおいては、前記ポリアリレート繊維の撚り回数を所定に制限して心線に用いることでスチールコードに匹敵する強度が当該歯付ベルトに発揮されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題を解決するための歯付ベルトに係る本発明は、食品に接する用途で用いられ、複数本のポリアリレート繊維が撚り合わされてなる太さが1100dTex〜1470dTexの撚線が熱可塑性ポリウレタン組成物で形成されたベルト本体に心線として埋設されてなり、前記撚線が200回/m以下のピッチで撚られたものであることを特徴としている。
本発明によればポリアリレート繊維で心線が構成されるため、高い湿度環境下においてもスチールコードのような錆の問題を生じるおそれが無く、芳香族ポリアミド繊維を使用する場合のように大きく寸法変化してしまうおそれが無い。
しかも、所定の撚りピッチでポリアリレート繊維を撚り合わせて用いることから、優れた強度の歯付ベルトとすることができる。
すなわち、本発明によれば、高い湿度環境においても安定した特性を発揮することのできる高強度の歯付ベルトが提供され得る。
一実施形態の歯付ベルトを示す部分斜視図。
以下に、本発明の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態の歯付ベルトの部分斜視図であり、歯付ベルトを一定の長さで切断したものを斜めから見た様子を示すものである。
本実施形態の歯付ベルトは、図1に示すように、平ベルト状の基部10と、該基部10から突出する歯部20とを備えたベルト本体1を有している。
本実施形態の歯付ベルトにおいては、前記歯部20がベルト長手方向(矢印L)に沿って所定間隔で配置されており、前記基部10と当該歯部20とは、熱可塑性ポリウレタン組成物によって一体的に形成されている。
また、本実施形態の歯付ベルトにおいては、この基部10と歯部20とを供えたベルト本体1に対してベルト長手方向Lへの抗張力を付与すべく複数本の心線30が埋設されている。
心線30は、それぞれ前記基部10と歯部20との界面近くにおいてベルト長手方向(矢印L)と略平行する形で埋設されており、ベルト幅方向Wに互いに所定の間隔を隔てて並行する状態で埋設されている。
本実施形態に係る歯付ベルトにおいては、ベルト本体1に埋設されている前記心線30にポリアリレート繊維を200回/m以下のピッチで“あま撚り”にされたものが用いられている。
しかも、該心線30は、エポキシ樹脂組成物をディップコートされた状態で前記ベルト本体1に埋設されている。
なお、前記ポリアリレート繊維としては、例えば、下記一般構造式(1)に示すようなメソゲン基を有する液晶ポリエステル繊維を採用することができ、このような繊維としてクラレ社から「ベクトラン」の商品名で市販されている繊維などを採用することができる。
Figure 0005415983
本実施形態における歯付ベルトの前記心線30には、通常、太さが28dTex〜8300dTexのポリアリレート繊維(モノフィラメント)が用いられる。
また、本実施形態においては、その太さが1100dTex〜1470dTexとなるように前記ポリアリレート繊維が所定の本数で撚り合わされてなる撚糸(撚線)が前記心線30として用いられる。
なお、心線30として用いられる撚糸は、上記のように撚りピッチが200回/m以下となるように撚り合わされていることが歯付ベルトに優れた強度を付与する点において重要である。
歯付ベルトに同径のスチールコードを心線に用いた場合と同程度の抗張力を付与させうる点においては、このポリアリレート繊維を用いた心線30の撚りピッチは40回/m以上120回/m以下とすることが好ましい。
また、この心線30にはエポキシ樹脂組成物がディップコートされている。
より具体的には、常温液状のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェニルタイプのエポキシ樹脂又はその変性品からなるエポキシ接着剤と、硬化剤(イミダゾール化合物等)とを含有するエポキシ樹脂組成物を水に分散させたエマルジョンに前記撚糸をくぐらせた後に、乾燥が施されたものである。
このとき用いるエマルジョンの固形分濃度や、粘度、乾燥条件等は、作製する歯付ベルトの形状や目的に応じて適宜調整が能である。
なお、このような心線30をベルト本体1に埋設させて歯付ベルトを作製する方法としては、周方向に所定の間隔をあけて歯部を形成するための条溝が設けられている円柱状の内金型に一本の長い心線をスパイラル状に巻きつけて前記内金型よりも一回り大きな内径を有する外金型を外嵌し該外金型と前記内金型との間に樹脂材料を流し込んで固め、得られた円筒状の成形品を輪切りにして無端状の歯付ベルトを作製する方法や、平行に並べられた複数本の心線を歯車状のプーリと表面平坦なプーリとの間を走行させつつ溶融樹脂をこのプーリ間に押出して前記歯車状のプーリを回転させて連続的に歯部を形成させることによって長尺の歯付ベルトを作製し、その後所定幅、ならびに所定長さに切り出して無端状にとなるように接続する方法が知られているが、前者の場合、ベルト周回方向に心線が連続する点において優れてはいるもののベルト側面に心線の切断面を露出させることになる。
一方で、後者の場合は、無端状に形成させる際に心線が周方向のいずれかの箇所で切断された状態とはなるものの、心線と心線との間で切断を行って所定幅に切り出すことで心線の切断面がベルト本体のいずれの表面にも露出しないことになる。
したがって、食品製造ラインやその周辺の装置に用いられるような歯付ベルトである場合には、後者の方が発塵を防止することができて好適であるといえる。
すなわち、撚線を表面に露出させることなく前記ベルト本体1に埋設させることで、食品用途により適した歯付ベルトとすることができる。
また、歯付ベルトとしては、一般的なゴム製のものも広く流通しているが、ゴム組成物には、プロセスオイルなどの移行性成分や、カーボンブラックやタルクといった発塵の元になる成分が含まれるため、本実施形態に係る歯付ベルトのように熱可塑性ポリウレタン組成物でベルト本体1が形成されているものの方が食品用途やクリーンルームでの使用に適しているといえる。
すなわち、ポリウレタンは、ポリオール成分とイソシアネート成分との量や種類により硬度等を調整することが容易であるため、プロセスオイルなどの移行性成分や、無機粉体のような発塵性の物質を使用することを抑制しつつ硬度や強度の調整が図られうる。
しかも、本実施形態の歯付ベルトは、ベルト本体の形成に熱可塑性のポリウレタン樹脂が用いられることから、上記のように製造段階で無端状に形成されていなくても熱溶着によって一本のベルトを無端状にすることが容易である。
なお、本実施形態に係る歯付ベルトにおいて、先に述べたような発塵の問題を抑制し、食品用途に適した歯付ベルトとするためには、ベルト本体1を構成させる前記熱可塑性ポリウレタン組成物における無機粉体の含有を、例えば、顔料や抗菌剤などといった必要最小限のものにとどめることが好ましい。
さらには、無機物を実質上含有させないことが好ましく、熱可塑性ポリウレタン樹脂と前記心線30のみでベルト本体1を形成させることが好ましい。
例えば、熱可塑性ポリウレタン組成物に占める熱可塑性ポリウレタン樹脂の割合を95質量%以上として他の成分を5質量%以下にすることが好ましく熱可塑性ポリウレタン樹脂の割合は、99質量%以上とすることがより好ましい。
この熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、特に限定がされるものではなく、前記ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類;アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール化合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール類;ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオール類等が挙げられる。
前記イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5’−ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,6−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
また、必要に応じて1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の鎖延長剤をその成分に加えることもできる。
本実施形態においては、主として、食品の生産・加工に利用される装置類の構成部品に好適な歯付ベルトを例示しているが、本発明の歯付ベルトは、高い湿度、例えば、相対湿度80%RH以上の環境下で使用される用途において、スチールコードを使用した歯付ベルト並みの強度が求められるような場合において広くその効果が発揮されるものであり、食品用途・クリーンルームの用途以外の幅広い分野においてその効果が発揮されるものである。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実験評価方法)
(ベルト強度)
(ベルト1:スチールコード)
熱可塑性ポリウレタン中に、直径0.3mmのスチールコードが、0.7mm間隔で並列に50本配された、幅50mm、厚み3.2mm(基部と歯部とを合せた厚み、基部の厚みは1.7 mm)の歯付ベルト(以下「ベルト1」)を作製しJIS K6323の「8.2引張試験」に基づく試験を行い、引張強さを求めた。
また、このベルト1の中心部の心線1本のみを切断する切込みを設けるとともに、この切込みからベルト長さ方向に10mm離れた箇所において先の心線以外の心線を全て切断する切込みを設け、該2箇所の切込みを間に挟んで両側を引張試験機のチャックに挟んで50mm/minの引張速度で引っ張って、心線の引き抜き力を測定した。
さらに、このベルト1を約1m長さに切断してその長さを正確に測った後、温度70℃、相対湿度80%RHの環境下に7日間保存し、該保存後のベルト1を常温においてその長さを測定し、寸法変化率を測定した。
以上のベルト1の「引張強さ」、「心線引抜力」、「寸法変化率」については、下記の表1にその結果を示す。
(ベルト2:ポリアリレート繊維)
前記ベルト1のスチールコードと同じ太さのポリアリレート製マルチフィラメント糸(撚りピッチ:40回/m)をエポキシ価5.1〜5.8eq/kgのエポキシ接着剤をイミダゾール系硬化剤とともに約2.5質量%の固形分濃度となるように水に分散させた水性エマルジョンにディップして、70℃の温度で乾燥させた心線を用いたこと以外は、上記ベルト1と同様にして本発明の歯付ベルト(以下「ベルト2」)を作製し、ベルト1と同様に「引張強さ」、「心線引抜力」、「寸法変化率」を測定した。
結果を表1に示す。
(ベルト3:芳香族ポリアミド繊維)
芳香族ポリアミド製のマルチフィラメント糸を用いたこと以外は、上記ベルト2と同様にして歯付ベルト(以下「ベルト3」)を作製し、ベルト1と同様に「引張強さ」、「心線引抜力」、「寸法変化率」を測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0005415983
このことからも、本発明によれば、高い湿度環境においても安定した特性を発揮することのできる高強度の歯付ベルトが提供され得ることがわかる。
1・・・ベルト本体
10・・・基部
20・・・歯部
30・・・心線

Claims (4)

  1. 食品に接する用途で用いられ、複数本のポリアリレート繊維が撚り合わされてなる太さが1100dTex〜1470dTexの撚線が熱可塑性ポリウレタン組成物で形成されたベルト本体に心線として埋設されてなり、前記撚線が200回/m以下のピッチで撚られたものであることを特徴とする歯付ベルト。
  2. 前記撚線が、エポキシ樹脂組成物がディップコートされて前記ベルト本体に埋設されて
    いる請求項1記載の歯付ベルト。
  3. 前記撚りピッチが40回/m以上120回/m以下である請求項1又は2記載の歯付ベ
    ルト。
  4. 前記撚線が、表面に露出されることなく前記ベルト本体に埋設されている請求項1乃至
    3のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
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