JP2008013904A - 補強用コードおよびそれを用いたポリウレタン製ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度と高い耐屈曲疲労性とを備え、且つ、ポリウレタンを含有するマトリクスとの接着性に優れた被覆層を有する補強用コードを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の補強用コード2は、補強用ガラス繊維21と、補強用ガラス繊維20の表面に設けられた被覆層221とを含んでいる。補強用ガラス繊維21は、質量%で示して、実質的に、SiO2が58〜70%、Al23が17〜27%、CaOが0〜10%、MgOが7〜17%、B23が0〜2%、R2Oが0〜0.5%(ただし、R2O=Na2O+K2O)からなる組成を有するガラス組成物によって形成されている。被覆層221は、水系ウレタン樹脂を主成分として含み、さらにエポキシ系化合物を含む繊維処理剤を補強用ガラス繊維21に塗布して乾燥させることによって形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、補強用コードおよびポリウレタン製ベルトに関し、特にポリウレタン製ベルトの補強用に好適に用いられる補強用コードと、それを用いたポリウレタン製ベルトとに関する。
ポリウレタンは樹脂自身の硬さを自由に変えることができるため、従来、広範囲の用途に利用されている。また、ポリウレタンエラストマーは、その優れた機械特性や外観の美しさを活かして、各種ベルト用途としても検討されている。
ポリウレタンを動力伝動ベルトに利用する場合には、強度や耐久性を向上させるために、ベルト中に抗張体、すなわち補強用コードが埋め込まれて設けられる(埋設される)必要がある。ベルトの補強用コードには、主にナイロン繊維、ポリエチレン繊維などが使用されている。さらには、ポリアリレート繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維などからなる心線も、補強用コードとして用いられている。
例えば、特開平8−4840号公報では、歯付ベルトの背部および歯部が注型ウレタンエラストマーからなり、心線が無機繊維(ガラス繊維)からなる歯付ベルトが開示されている。さらに、上記心線には、ゴム系の水分散系第1接着剤が含浸せしめられ、表面にはエポキシ基を有する第2接着剤からなる被膜が形成されている。
特開2004−36654号公報には、伝動ベルトに用いられるガラス心線であって、ブロックドイソシアネートの水分散液、RFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とラテックスとの混合物))溶液、非水溶性エポキシ系化合物の水分散液を混合した処理液で接着処理が施されてなると共に、接着処理後の心線の強熱減量値が10〜20質量%となるように構成されたことを特徴とするガラス心線が開示されている。さらに、歯付ベルトの背部および歯部が注型ウレタンエラストマーにより成形されてなり、前記ガラス心線が背部に埋設されている歯付ベルトが開示されている。
特開2006−9810号公報には、「プリンタのキャリッジを駆動する為のキャリッジ駆動用ベルトにおいて、該ベルトがポリウレタン100質量部に対してフタル酸エステル1〜15質量部を含んだポリウレタン組成物からなることを特徴とするキャリッジ駆動用ウレタンベルト」が開示されている。
特開2006−9845号公報には、「表面にポリウレタン樹脂を含む被膜が形成されたガラス繊維コードを用いたことを特徴とするウレタンベルト」が開示されている。
また、特開平5−195358号公報には、ゴムタイヤ、ベルト補強用のポリアミドコードの接着改良塗布剤として、ウレタン樹脂−エポキシ樹脂を被覆後、その後RFL処理をすることで接着改良が得られるという方法が記載されている。
特開平8−4840号公報 特開2004−36654号公報 特開2006−9810号公報 特開2006−9845号公報 特開平5−195358号公報
ガラス繊維を心線として用いたポリウレタン製ベルトは、弾性率、寸法安定性に優れている。しかし、アラミド繊維や金属繊維などの心線を用いた場合に比べて、弾性が不足したり、耐屈曲疲労性が悪いという問題があった。
このような問題を解決するために、上述した特開平8−4840号公報や特開2004−36654号公報には、高強度ガラスであるSガラス組成のガラス繊維からなる心線を用いることが記載されている。
しかし、心線の接着処理については、特開平8−4840号公報では、ブロックドイソシアネートの水分散液とRFL溶液との混合物を用いることが開示されているだけである。また、特開2004−36654号公報では、ブロックドイソシアネートの水分散液、RFL溶液および非水溶性エポキシ化合物の水分散液を混合した処理液を用いることが開示されているだけであり、これらの処理剤では高い耐屈曲疲労性を得ることが困難であった。
特開2006−9810号公報には、ウレタンベルトの作製に用いられるポリウレタン組成物は開示されているものの、ウレタンベルトに好適に用いられる心線についての詳細(例えば表面に形成される被膜の組成など)は、開示されていない。また、特開2006−9845号公報には、ガラス繊維コードの表面に形成される被膜がポリウレタン樹脂を含むことが開示されているものの、具体的に用いられるポリウレタン樹脂としては、カチオン系やアニオン系などのイオン性ポリウレタンや、ノニオン系の非イオン性ポリウレタンが挙げられているのみである。
また、特開平5−195358号公報に開示されている処理方法を通常のガラス繊維に適用しても、コードとしての剛性、引張強度が得られず、またコード外観がRFL処理による外観となるため、透過性のポリウレタン製ベルトではコードの色が目立ってしまうという欠点もあった。さらに、RFL処理が必須であるので、作業環境負荷が高いことも問題であった。
そこで、本発明は、高い強度と高い耐屈曲疲労性とを備え、且つ、ポリウレタンを含有するマトリクスとの接着性に優れた被覆層を有する補強用ガラス繊維コードを提供することを目的とする。
本発明の補強用コードは、補強用ガラス繊維と、前記補強用ガラス繊維の表面に設けられた被覆層とを含む補強用コードであって、前記補強用ガラス繊維は、質量%で示して、実質的に、
SiO2 58〜70%
Al23 17〜27%
CaO 0〜10%
MgO 7〜17%
23 0〜2%
2O 0〜0.5%
(ただし、R2O=Na2O+K2O)
からなる組成を有するガラス組成物によって形成されている。さらに、前記被覆層は、水系ウレタン樹脂を主成分として含み、さらにエポキシ系化合物を含む接着剤を前記補強用ガラス繊維に塗布して乾燥させることによって形成されている。なお、前記接着剤が水系ウレタン樹脂を主成分として含むとは、前記接着剤における前記水系ウレタン樹脂の含有割合が固形分質量比で50質量%以上であるという意味である。本発明の補強用コードの前記接着剤において、前記水系ウレタン樹脂と前記エポキシ系化合物との比は、固形分質量比で、水系ウレタン樹脂:エポキシ系化合物=50:50〜90:10を満たすことが好ましい。
また、本発明は、上記した本発明の補強用コードが、ポリウレタンを主成分として含有するマトリクス中に埋め込まれてなるポリウレタン製ベルトを提供する。なお、本発明のポリウレタン製ベルトにおいて、ポリウレタンが主成分として含有されるマトリクスとは、マトリクス全体に対してポリウレタンが50質量%以上含有されているということである。
本発明の補強用コードは、特にポリウレタン製ベルトの心線として用いられた場合に優れた効果を発現する。具体的には、本発明の補強用コードにおける被覆層がポリウレタンを主成分として含有するマトリクスとの接着性に優れているので、高い耐屈曲疲労性を備えたベルトを実現できる。さらに、本発明の補強用コードにおける補強用ガラス繊維は、上記組成を満たすガラス組成物(高強度ガラス)によって形成されているので、高い強度と弾性とを有する。このため、高い強度と弾性とを備えた補強用コードを実現できる。
以上のように、本発明によれば、高い強度と弾性とを備え、且つ、ポリウレタンを含有するマトリクスとの接着性に優れた補強用コードを提供できる。
本発明のポリウレタン製ベルトは、高い強度と弾性とを備え、且つ、ポリウレタンを含有するマトリクスとの接着性に優れた補強用コードを用いているので、耐屈曲疲労性および寸法安定性に優れている。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<補強用コード>
本実施の形態の補強用コードは、補強用ガラス繊維と、この補強用ガラス繊維の表面に設けられた被覆層とを含んでいる。補強用ガラス繊維は、高強度ガラス(以下に示す組成を有するガラス組成物)によって形成されている。ここで、高強度ガラスとは、ガラス骨格形成成分をSiO2とAi23としたことで、繊維とした際に大きな引張強さを実現できるガラスである。表1に、高強度ガラスの代表的な組成範囲を示す。また、比較のため、Eガラスの代表的な組成範囲も同様に示す。表1に示すガラス組成の各成分は、質量%にて表されている。
Figure 2008013904
高強度ガラスは、補強用コードに用いられるガラス繊維に一般的に使用されているEガラスに対して、SiO2成分、Al23成分およびMgO成分が増加しているのに対し、CaO成分、B23成分が減少している。その結果、高強度ガラスによって形成されたガラス繊維は、Eガラスによって形成されたガラス繊維と比較して、引張強度が著しく向上する。
補強用コードに用いられるガラス繊維において、繊維の最小構成単位であるフィラメントの径は、補強用コードの屈曲疲労性への影響が大きい。そのため、本実施の形態におけるフィラメントの径は、9μm以下が望ましく、3μm以上が望ましい。フィラメントの径が9μmを超えると屈曲疲労による破壊が起こりやすくなり、3μm未満では強度を確保するために必要なフィラメントの本数が多くなるので、好ましくない。
また、このフィラメントを複数本束ねてストランドとする。なお、1本のストランドを形成するために用いられるフィラメントの本数は、特には限定されない。このストランドを1本または複数本束ねて子縄を作製する。この子縄を複数本束ねて撚ることによって、撚りコードを作製する。
本実施の形態では、子縄を本発明における補強用ガラス繊維としてその表面に被覆層を形成して補強用コードとしてもよく、撚りコードを本発明における補強用ガラス繊維としてその表面に被覆層を形成して補強用コードとしてもよい。さらに、被覆層が形成された子縄を複数束ねて撚り、得られた撚りコードの表面にさらに被覆層を形成することによって補強用コードとすることも可能である。このように、補強用コードの構成は、使用されるベルトの大きさや要求される特性に応じて、適宜最適な構成を選択することが望ましい。
子縄および/または撚りコード(補強用ガラス繊維)に形成される本実施の形態における被覆層は、ポリウレタンとの接着性に優れた接着剤を塗布して乾燥させることによって作製できる。接着剤は、水系ウレタン樹脂を主成分として含み、さらにエポキシ系化合物を含む接着剤を前記補強用ガラス繊維に塗布して乾燥させることによって形成されている。
接着剤に含まれる水系ウレタン樹脂は、補強用コードが使用されるポリウレタン製ベルトの樹脂成分の種類に応じて適切に選定することが望ましい。ベルトのマトリクスとして用いられるポリウレタンの種類に対応させて、これに類似したウレタン系ポリマーを含む水系ウレタン樹脂を用いることが望ましい。ウレタン樹脂はポリエーテル・ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物で、ポリエーテル・ポリオールとしてはポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコールなどが使用可能であり、ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルエタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなど脂肪族、芳香族、脂環状のポリイソシアネートが使用できる。一般的にベルトのマトリクスとして用いられるポリウレタンを考慮した場合、このようなマトリクスと良好な接着性を示すことから、例えばエステル系ポリエールを含んだ水系ウレタン樹脂が好適に用いられる。
より具体的には、例えば、「アデカボンタイターHUXシリーズ(商品名)」(株式会社ADEKA製)や、「ボンディックシリーズ(VONDIC(登録商標))」(大日本インキ化学工業(株)社製)を挙げることができる。
被覆膜の形成に用いられる接着剤において、主成分である水系ウレタン樹脂の含有割合は、固形分質量比で50質量%以上であり、70質量%以上が好ましい。また、90質量%以下が好ましい。
上記接着剤は、主成分である上記水系ウレタン樹脂に加えて、エポキシ系化合物をさらに含有する。水系ウレタン樹脂と組み合わせて用いることによって良好な接着性を実現できるエポキシ系化合物としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含有した化合物、例えば、多価アルコールとエポキシド類の反応生成物、もしくはフェノール・ホルムアルデヒド熱硬化性樹脂などの多価フェノールとエポキシドとの反応生成物が挙げられる。より具体的には、「アデカレジンEMシリーズ(商品名)」(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
エポキシ系化合物は、その添加量によって補強用コードの特性に影響を与える。接着剤におけるエポキシ系化合物の含有割合は、固形分質量比で表して、50質量%以下であり、10〜30質量%の範囲内であることが好ましい。エポキシ系化合物の含有割合が固形分質量比で10質量%未満の場合、補強用コードをポリウレタンを主成分とするマトリクスに埋め込んだ際に、補強用コードとマトリクスとの良好な接着が維持できない場合がある。また、補強用コードの初期引張強度の低下を引き起こす場合もある。なお、補強用コードの初期強度低下は、補強用コードが埋設されるベルトの強度にも直結するので、ベルトの適用範囲が大きく制限される原因ともなるため好ましくない。エポキシ系化合物は接着剤の主成分ではないため、その含有割合は固形分質量比で50質量%を超えない。エポキシ系化合物の固形分質量比が高すぎると、補強用コードの耐屈曲疲労性が低下する傾向にあるため、30質量%以下が好ましい。
上記接着剤は、水系ウレタン樹脂およびエポキシ系化合物以外の成分を含有していてもよい。その場合、他の成分の含有割合は、固形分質量比で、5質量%以下が好ましい。他の成分としては、例えば、ゴムラテックス、フェノール誘導体−ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
補強用ガラス繊維に接着剤を塗布して被覆層を形成する方法は、特に限定されるものではない。通常は、補強用ガラス繊維を接着剤の入った水槽中に浸漬し、これを引き上げた後、乾燥炉によって水を除去することによって、被覆層を形成できる。
補強用コードにおける被覆層の付着率は、補強用コードの弾性率と耐屈曲疲労性とを考慮しながら決定するとよい。被覆層の付着率とは、乾燥後の補強用コードについて、補強用ガラス繊維の質量に対して被覆層がどの程度付着しているかを示す質量百分率であり、次式で与えられる。
R(%)=((C1−C0)/C1)×100
補強用ガラス繊維の乾燥質量:C0、補強用コード全体の乾燥質量:C1
被覆層の付着率は、10〜30質量%が好ましく、さらには15〜25質量%が好適である。付着率が10質量%未満の場合は、補強用ガラス繊維を均一に被覆する被覆層とすることが難しく、その結果、耐屈曲疲労性が低下する場合がある。一方、30質量%を超えると、補強用コード全体に占める被覆層の割合が大きく、その結果、補強用ガラス繊維の占める割合が小さくなるので、補強用コードの強度が低下する場合がある。
補強用コードには、耐屈曲疲労性を向上させたり、真円性を保たせたりすることを目的として、撚りが掛けられていてもよい。撚り数は、コード、子縄の太さ、補強用コードが使用されるベルトの条件などに応じて適宜変更することができる。例えば、子縄を撚る場合、その撚り数は25mm当たり0.5〜9.0回が好ましい。また、撚り(下撚り)が掛けられた子縄を複数本束にして、さらに撚り(上撚り)を掛けて撚りコードを作製する場合、その撚り数は25mm当たり1.0〜9.0回が好ましい。なお、子縄と撚りコードとにおいて、撚り方向は特に限定されない。
図1は、本発明の補強用コードの一例の断面模式図である。この補強用コード2は、次のように構成される。まず、ガラス繊維のフィラメントを集束したストランド20を3本重ねて子縄21とする。この子縄21には、被覆層221が設けられている。この子縄21を11本束ねたものに、さらに被覆層222を設けて、補強用コード2が形成されている。この例では、被覆層221,222の作製に、上記に説明した本実施の形態における接着剤が用いられる。
<ポリウレタン製ベルト>
次に、本発明のポリウレタン製ベルトの実施の形態について説明する。ここでは、図2および図3に示すような、ポリウレタン製の歯付ベルト1を例に挙げて説明する。
図2に示す歯付ベルト1は、ベルト本体11および補強用コード12を含む。ベルト本体11は、背部13と、一定間隔で背部13から突き出した複数の歯部14とを含む。図3に、図2に示す歯付ベルト1を周方向(長手方向)で切断した場合の部分断面図が示されている。補強用コード12は、背部13の内部に、背部13の周方向(長手方向)に延びるような方向に配置されて、埋め込まれている。ベルト本体11は、ポリウレタンを主成分とする樹脂組成物によって形成されている。補強用コード12として、上記に説明した本実施の形態の補強用コードが用いられる。
本実施の形態における歯付ベルト1のベルト本体11は、液状のポリウレタン樹脂組成物を型に注入して加熱・硬化させ、ポリウレタン硬化物とすることによって作製できる。ポリウレタン硬化物を得るための一般的な成形法には、ワンショット法およびプレポリマー法がある。
ワンショット法とは、ポリオール触媒、鎖延長剤および顔料などを混合したプレミックス液と、イソシアネート成分を含有する溶液とを混合し、これを型に注入して硬化させる方法である。
プレポリマー法とは、予めイソシアネートとポリオールとを反応させてプレポリマーを作製し、これに触媒を加えて型に注入して硬化させる方法である。
長手方向に歯部を形成するための溝が設けられた円柱形の内金型と、これを取り囲む円筒形の外金型を準備する。内金型の周囲に補強用コードを巻き付けて、外金型と内金型との間に成形法に応じて液を注入して、硬化させる。その後、内金型と外金型とを互いに分離して、スリーブ状の歯付ベルトを得る。これを所定の幅に切断することによって、図2に示すような歯付ベルトを作製する。
なお、補強用コードをベルト本体内(ポリウレタンを主成分として含有するマトリクス内)に埋め込む手段は、上記の方法に特に限定されるものではなく、他の公知の手段をそのまま流用することもできる。
以上のようにして得られた歯付ベルトは、補強用コードの被覆層とポリウレタンを主成分とするマトリクスとの接着性が高いので、耐屈曲疲労性や寸法安定性に優れている。また、補強用コードが高い強度を有するので、歯付ベルトも高い強度を有する。
以下、実施例や比較例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜4、比較例1および2)
表1に示した組成を有する高強度ガラス繊維のフィラメント(7μm径)を、200本束ねてストランドを作製した。このストランドを3本束ねて子縄とした。補強用コードの被覆層を形成するための接着剤の成分は、表2に示されたとおりである。この接着剤を付着率が20質量%となるように子縄に含浸させて、200℃で2分間熱処理を施し、子縄の表面に被覆層を作製した。被覆層が設けられた子縄に25mm当たり2.0回の撚り(下撚り)を掛けた。さらに、下撚りが掛けられた子縄を11本束ねて、さらに25mm当たり2.0回の上撚りを掛けて、実施例1〜4および比較例1,2の補強用コードを作製した。
表2には、実施例1〜4および比較例1,2で用いた接着剤の組成比(質量部)と共に、固形分質量比(%)も併せて示されている。A成分は水系ウレタン樹脂であり、「アデカボンタイターHUXシリーズ(商品名)」(株式会社ADEKA製)を用いた。B成分はエポキシ系化合物であり、「アデカレジンEMシリーズ(商品名)」(株式会社ADEKA製)を用いた。ただし、比較例1の接着剤は水系ウレタン樹脂のみからなり、比較例2の接着剤は水系ウレタン樹脂とレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物からなる。
Figure 2008013904
以上のように作製された各補強用コードについて、ポリウレタンとの接着力を測定した。ポリウレタンと補強用コードとの接着力は、予備縮合型ウレタン樹脂(イソシアネート含有)と補強用コードとをクロロアニリン系の硬化剤を用いて硬化接着させ、補強用コードの引抜試験を行い、その抗力を測定したものである。なお、接着力の評価としては、接着力が350N/コード以上あれば、充分な接着力が得られていると判断できる。
補強用コードの引張強度は、引張試験機(島津製作所製)を用いて250mm長さの試料をチャックし、この試料を300mm/minの速度で長さ方向に引っ張って、コード(試料)が破断するまでの最大応力値を読み取ることによって測定した。
また、補強用コードの耐久性を評価するために、強度保持率を求めた。具体的には、補強用コードを屈曲試験装置にかけて10万回の屈曲試験を行い、試験前後の補強用コードの引張強度を求め、これらの強度より強度保持率を求めた。屈曲試験は、室温下にて補強用コードを3つのプーリに這わせてVの字となるように屈曲させ、往復運動を10万回繰り返すことによって行った。強度保持率は、次式により算出し、この指標にて製品の耐久性を評価した。強度保持率は、50%以上であればよく、70%以上であれば良好な耐屈曲疲労性を維持していると判断できる。
強度保持率(%)=(試験後の引張り強度/試験前の引張り強度)×100
表3に、各補強用コードの評価結果を示す。
Figure 2008013904
表3に示した結果から明らかなように、水系ウレタン樹脂とエポキシ系化合物とを含有する接着剤を用いた実施例1〜4の補強用コードは、充分な接着力と耐屈曲疲労性とを併せ備えていた。一方、水系ウレタン樹脂のみを含有しエポキシ系化合物を含有しない接着剤を用いた比較例1の補強用コードは、接着力が実施例1〜4と比較して大きく低下し、引張強度もやや低かった。また、水系ウレタン樹脂とレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とを含有し、エポキシ系化合物を含有しない接着剤を用いた比較例2では、実施例1〜4と比較して引張強度は同程度であるものの、接着力がやや劣り、耐屈曲疲労性が大きく低下した。
本発明の補強用コードは、高い強度と弾性とを備え、且つ、ポリウレタンを含有するマトリクスとの接着性に優れているので、ポリウレタン製ベルトなどのポリウレタン製品に好適に用いられる。また、本発明のポリウレタン製ベルトは、耐屈曲疲労性および寸法安定性に優れているので、耐久性や強度が要求される動力伝動ベルトなど、種々のベルトに適用可能である。
本発明の補強用コードの一例を示す断面図である。 本発明のポリウレタン製ベルトの一例である歯付ベルトの、一部断面を含む斜視図である。 本発明のポリウレタン製ベルトの一例である歯付ベルトの部分断面図である。
符号の説明
1 歯付ベルト(ポリウレタン製ベルト)
11 ベルト本体
12 補強用コード
13 歯付ベルトの背部
14 歯付ベルトの歯部
2 補強用コード
20 ストランド
21 子縄
221 被覆層
222 被覆層

Claims (8)

  1. 補強用ガラス繊維と、前記補強用ガラス繊維の表面に設けられた被覆層とを含む補強用コードであって、
    前記補強用ガラス繊維は、質量%で示して、実質的に、
    SiO2 58〜70%
    Al23 17〜27%
    CaO 0〜10%
    MgO 7〜17%
    23 0〜2%
    2O 0〜0.5%
    (ただし、R2O=Na2O+K2O)
    からなる組成を有するガラス組成物によって形成されており、
    前記被覆層は、水系ウレタン樹脂を主成分として含み、さらにエポキシ系化合物を含む接着剤を前記補強用ガラス繊維に塗布して乾燥させることによって形成されている、補強用コード。
  2. 前記接着剤において、前記水系ウレタン樹脂と前記エポキシ系化合物との比が、固形分質量比で、
    水系ウレタン樹脂:エポキシ系化合物=50:50〜90:10
    を満たす、請求項1に記載の補強用コード。
  3. 前記接着剤において、前記水系ウレタン樹脂と前記エポキシ系化合物との比が、固形分質量比で、
    水系ウレタン樹脂:エポキシ系化合物=70:30〜90:10
    を満たす、請求項2に記載の補強用コード。
  4. 前記補強用ガラス繊維は、複数のフィラメントによって形成されたストランドを、複数本集束させることによって形成されており、
    前記被覆層が設けられた前記補強用ガラス繊維が複数本束ねられ、且つ、25mm当たり1.0〜9.0回の撚りが掛けられることによって形成された、請求項1〜3の何れか1項に記載の補強用コード。
  5. 前記補強用ガラス繊維は、複数のフィラメントによって形成されたストランドを複数本集束させることによって得られる子縄を、複数本束ねて撚ることによって得られる撚りコードであり、
    前記被覆層は、前記撚りコードの表面に設けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の補強用コード。
  6. 前記補強用ガラス繊維は、複数のフィラメントによって形成されたストランドを、複数本集束させることによって形成されており、
    前記被覆層が設けられた前記補強用ガラス繊維に、25mm当たり0.5〜9.0回の撚りが掛けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の補強用コード。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の補強用コードが、ポリウレタンを主成分として含有するマトリクス中に埋め込まれてなる、ポリウレタン製ベルト。
  8. 歯付ベルトである、請求項7に記載のポリウレタン製ベルト。
JP2007151891A 2006-06-08 2007-06-07 補強用コードおよびそれを用いたポリウレタン製ベルト Active JP4943238B2 (ja)

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