以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の外観構成を示す図である。この画像形成装置1は、例えばコンビニエンスストアなどに設置され、利用者に対してコピーサービスやスキャナサービス、プリントサービス、FAX送信サービスなどを提供するものであり、一般には複合機やMFPなどと呼ばれる装置である。この画像形成装置1は、装置本体の上部に原稿の画像を読み取るスキャナ部2を備えており、このスキャナ部2のさらに上部には複数枚の原稿をセットすることが可能な自動原稿搬送装置(以下、ADFという。)3が設けられている。ADF3はセットされる複数枚の原稿を1枚ずつ取り出してスキャナ部2に搬送することができる。但し、画像形成装置1は必ずしもADF3を要するものではなく、ADF3を具備しない構成であっても構わない。
画像形成装置1は、スキャナ部2の正面側に利用者が操作可能な操作パネル4を備えている。操作パネル4は、利用者に対して各種情報を表示するための表示部4aと、利用者が操作して各種情報を入力するための操作キー4bとを備えている。表示部4aは、液晶ディスプレイなどで構成され、利用者に対して画像形成装置1の利用金額や操作案内画面などを表示するように構成されている。操作キー4bは、表示部4aの画面上に配置されたタッチパネルキーと、表示部4aの周囲に配置された押しボタンキーとから構成されている。
画像形成装置1の装置本体下部には、用紙に画像形成を行って出力するプリンタ部5と、プリンタ部5に対して出力用紙を1枚ずつ供給する給紙部6とが設けられている。例えば画像形成装置1のコピーサービスやプリントサービスなどを利用する場合には、プリント出力時にプリンタ部5と給紙部6とが作動して印刷処理が行われる。尚、本実施形態におけるプリンタ部5はカラー画像を印刷することが可能なように構成されている。
また画像形成装置1の上部側面には、図1に示すよう棚部7が設けられている。この棚部7には、電子マネー情報を記録したICカードや携帯電話機などの電子マネー端末から、非接触で電子マネー情報を読み取ることが可能な電子マネー情報読取装置8が設けられている。電子マネー情報読取装置8は、画像形成装置1の利用時に利用者が所持する電子マネー端末から利用料相当額を決済するためのものである。この電子マネー情報読取装置8は上部に読取部8aを有しており、画像形成装置1の利用者が電子マネー端末を読取部8aにかざすことにより、電子マネー情報読取装置8が電子マネー端末に記録されている電子マネー情報を読み取ることが可能となり、また電子マネー端末に記録される電子マネー情報を書き換えることができるようになる。また本実施形態における電子マネー情報読取装置8は、同時に複数の電子マネー端末から電子マネー情報を読み取ることが可能なものである。
そして本実施形態の画像形成装置1は、利用者が所持する電子マネー端末に記録されている電子マネーの残金が十分にある場合には、その電子マネー端末に記録されている電子マネーでの決済処理を行い、利用者によって指定されたジョブを実行する。
図2は、電子マネー決済を行うためのシステム構成を示す図である。図2に示すように、画像形成装置1は、通信網9を介して電子マネーを管理する事業者のサーバ装置50と接続されている。電子マネー情報読取装置8は、利用者によって電子マネー端末がかざされると、その電子マネー端末に割り当てられている個別の識別情報と、記録されている電子マネー情報(残金情報など)とを読み取り、画像形成装置1の本体に対して出力する。画像形成装置1は、電子マネー情報読取装置8から識別情報と電子マネー情報とを入力すると、電子マネー端末の真偽を確認するため、サーバ装置50にアクセスし、利用者によってかざされた電子マネー端末の真偽を問い合わせる。そしてサーバ装置50は自身が保持しているデータベースを検索し、適正な電子マネー端末であると判断した場合、その旨を画像形成装置1に返答する。画像形成装置1は、利用者によってかざされた電子マネー端末が適正な端末であることが判ると、利用者によって指定されたジョブを実行するのに要する金額分の残金がその電子マネー端末にあるかを判断し、十分な残金がある場合に決済処理を行い、電子マネー情報読取装置8に対して金額引き落としの命令を送出する。これに伴い、電子マネー情報読取装置8は、読取部8aにかざされている電子マネー端末の電子マネー残金を減算し、電子マネー情報を書き換える。電子マネー端末の電子マネー情報が書き換えられると、画像形成装置1は、サーバ装置50に対して決済処理を行ったことを通知し、利用者によって指定されたジョブを実行することでサービスを提供する。
図3は、画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、画像形成装置1は、全体制御部10と、表示制御部14と、操作検知部15と、記憶部16とを有している。全体制御部10は、ハードウェアとしてはCPUやメモリなどで構成され、CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される制御手段である。この全体制御部10は、利用者によって指定されたジョブの実行を制御するジョブ制御部11と、そのジョブの実行に要する金額を計算する金額計算部12と、金額計算部12によって計算された金額分の電子マネー決済を行う決済処理部13として機能する。表示制御部14は、操作パネル4における表示部4aの表示画面を制御するものであり、ジョブ制御部11からの指示に基づいて画面データを生成し、表示部4aに出力する。操作検知部15は、操作パネル4の操作キー4bからの入力を検知するものであり、利用者が操作キー4bを操作すると、操作検知部15はその操作を検知し、ジョブ制御部11に出力する。記憶部16は、例えばハードディスクや半導体メモリなどによって構成される記憶手段であり、利用者がかざした電子マネー端末20の識別情報17と関連づけてジョブ情報18を記憶するように構成されている。尚、図3に示すように、スキャナ部2およびADF3は画像読取部を構成しており、またプリンタ部5および給紙部6は画像形成部を構成している。
ジョブ制御部11は、操作検知部15が検知する利用者の操作内容に基づいて画像形成装置1で実行すべきジョブを設定する。以下、利用者が画像形成装置1を利用して原稿のコピーを行う場合を例に挙げて説明する。
図4は、利用者が原稿のコピーを行う場合の設定画面が表示された操作パネル4を示す図である。表示部4aにはコピー設定画面21が表示されており、このコピー設定画面21には部数設定欄21aと、原稿設定欄21bと、カラー設定欄21cと、出力用紙設定欄21dとが表示されている。部数設定欄21aは、例えばコピー部数を設定入力するための欄であり、例えば操作キー4bに含まれるテンキー31を操作することにより、部数設定欄21aの設定を行う。図例では部数が「1」に設定されている場合を例示している。原稿設定欄21bは、読み取り対象の原稿設定を行う欄であり、例えば画面上のキーを操作することにより、片面原稿及び両面原稿のうちいずれか一方を選択して設定する。図例では原稿設定が「片面」に設定されている場合を例示している。カラー設定欄21cは、印刷時にカラー印刷を行うか或いはモノクロ印刷を行うかを設定する欄であり、図例では「モノクロ」が設定されている場合を例示している。出力用紙設定欄21dは、出力用紙のサイズ及び出力用紙への印刷形態を設定する欄であり、図例では「A4」サイズが選択され、出力形態として「片面(1in1)」が選択されている場合を例示している。尚、コピー設定画面21には、これら以外の設定欄が含まれていても良い。また図4に示すスタートキー32は利用者が設定したジョブの実行を指示するキーであり、ストップキー33はジョブの実行を強制的に停止させるキーである。またキャンセルキー34は一度入力したジョブの設定状態をクリアするためのキーである。尚、これらのキーもまた操作キー4bに含まれるものである。
利用者が図4のようなコピー設定画面21に基づいてジョブの設定操作を行った後、スタートキー32を押下すると、ジョブ制御部11は、そのジョブの設定に基づいて画像読取部を制御し、ADF3にセットされた原稿を1枚ずつスキャナ部2に搬送して原稿の画像読み取り動作を開始する。原稿の画像読み取り動作は全ての原稿の読み取りが完了するまで繰り返し行われる。ジョブ制御部11が、画像読取部を制御することにより全ての原稿の読み取り動作が完了すると、ジョブ制御部11はジョブの実行を一旦停止させ、読み取った原稿の枚数や、ジョブの設定情報を金額計算部12に出力する。
そして全体制御部10では金額計算部12が機能し、利用者に課金すべき金額を算出する。金額計算部12は、コピー部数、原稿読み取り面、カラー又はモノクロ設定、出力形態などのジョブの設定情報と、読み取った原稿枚数とに基づいて、ジョブの実行に伴い、利用者に課金すべき金額を計算する。例えば、コピー部数が「2」であり、原稿が「両面原稿(2面)」であり、出力形態が「片面(2in1)」であって、読み取った原稿枚数が8枚であった場合、印刷用紙などに印刷する出力枚数(より厳密には出力する面の数)は、2×2×1/2×8=16の計算式により、16枚となる。金額計算部12は、この出力枚数と、カラー印刷及びモノクロ印刷のそれぞれに設定されている課金単価とを乗算し、その結果求められる値を利用者に課金すべき金額として算出する。例えば、モノクロ印刷の課金単価が10円である場合、出力枚数が16枚であれば、課金すべき金額は160円となる。尚、上述した計算式は単なる一例であり、上記以外の計算式を採用しても良い。
金額計算部12は、読み取った原稿の画像を印刷出力するのに要する金額を算出すると、その金額をジョブ制御部11に出力し、ジョブ制御部11は操作パネル4にその金額を表示させるように制御する。また金額計算部12は、算出した金額を決済処理部13に出力する。
決済処理部13は、電子マネー情報読取装置8が読み取ったICカード20aや携帯電話機20bなどの電子マネー端末20が適正な端末であるかを、上述したサーバ装置50との通信を行うことによって把握する。そして適切な端末であることが把握できた場合、決済処理部13は、電子マネー情報読取装置8が読み取った電子マネー情報の残金が、金額計算部12によって算出された金額以上であるか否かを判断し、決済可能であれば、決済処理を行う。この決済処理では、例えば電子マネー情報読取装置8に対して算出金額分の電子マネーの引き落とし処理を行うように指令する。これにより、電子マネー情報読取装置8は、利用者が読取部8aにかざしている電子マネー端末20に記録されている電子マネー情報の残金を減額して書き換える。そして決済処理が適切に完了すると、決済処理部13は、その旨をジョブ制御部11に通知する。これにより、ジョブ制御部11は、画像形成部を作動させ、読み取った原稿の画像データをプリンタ部5に出力して印刷を開始する。
一方、電子マネー情報読取装置8が読み取った電子マネー端末20に記録されている電子マネー情報の残金が算出金額未満である場合、決済処理を行うことができないため、決済処理部13は、ジョブ制御部11に電子マネー端末20の残金が不足していることを通知する。これにより、ジョブ制御部11は、操作パネル4に対して電子マネーのチャージを促す画面を表示させる制御を行うと共に、印刷出力を開始することなく現在停止している実行中のジョブを記憶部16に記憶して保存する。このとき、ジョブ制御部11は、電子マネー情報読取装置8が読み取った電子マネー端末20の識別情報17に関連づけて現在のジョブに関するジョブ情報18を記憶部16に保存する。
画像形成装置1においてジョブの実行に伴う決済処理を行うことができなった場合、決済できなかった電子マネー端末20の識別情報17と関連づけて現在のジョブをジョブ情報18として保存することにより、画像形成装置1を次の利用者に開放することができる。また先の利用者が金額の不足していた電子マネー端末20に電子マネーをチャージすることができた場合、その電子マネー端末20を電子マネー情報読取装置8にかざせば、画像形成装置1は、その識別情報に基づいて前回実行されなかったジョブを読み出して実行することができ、利用者は再度原稿読み取りのための操作を行う必要がないので、操作性が向上する。
また本実施形態の画像形成装置1は、利用者が残金不足の電子マネー端末に対して直ちに電子マネーをチャージすることができない状況であっても、その利用者が最初にかざした電子マネー端末とは別の電子マネー端末を所持している場合には、その別の電子マネー端末によって決済処理を行うことができるように構成されている。つまり、画像形成装置1は、最初にかざされた電子マネー端末の識別情報に基づいてジョブ情報を特定し、そのジョブ情報に基づくジョブの実行に要する金額を別の電子マネー端末で決済処理してからジョブの実行を開始する。以下、このような画像形成装置1についてさらに詳しく説明する。
図5乃至図9は、画像形成装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。尚、以下の説明では、電子マネー端末20がICカード20aである場合を例示するが、電子マネー端末20が携帯電話機20bやその他の端末である場合であっても後述する処理が変わるものではない。
利用者は操作パネル4を操作してジョブの設定を行った後、スタートキー32を押下することによって画像形成装置1にジョブの実行を指示する。また既に原稿の読み取りを行っている場合には、ICカード20a(電子マネー端末)を電子マネー情報読取装置8の読取部8aにかざすことにより画像形成装置1に対して保存されているジョブの実行を指示する。そのため、画像形成装置1は、図5に示すフローチャートの処理を開始すると、利用者によってジョブの実行指示が与えられたか否かを判断し(ステップS10)、ジョブの実行指示がない場合(NOの場合)には、さらに利用者が電子マネー情報読取装置8に対してICカードをかざしたか否かを判断する(ステップS12)。利用者によるジョブの実行指示がなく、またICカードもかざされていない場合には(ステップS12でNO)、ステップS10に戻り、画像形成装置1は、利用者によっていずれかの操作が行われるのを待機する状態となる。
利用者がスタートキー32を押下してジョブの実行指示を行った場合、ステップS10でYESとなり、画像形成装置1において第1ジョブ実行処理が行われる(ステップS11)。図6は、この第1ジョブ実行処理の詳細を示すフローチャートである。第1ジョブ実行処理が開始すると、画像形成装置1ではジョブ制御部11の制御により画像読取部が作動し、原稿の読み取り動作が行われる(ステップS20)。この原稿読み取り動作では、ADF3にセットされた全ての原稿の読み取りが完了するまで行われる。全ての原稿の読み取り動作が完了すると、金額計算部12が、ジョブの設定情報に基づいて出力枚数を計算する(ステップS21)。そして金額計算部12は、その算出した出力枚数と、印刷モード毎に予め設定されている課金単価とに基づいてジョブを実行するのに要する金額を計算する(ステップS22)。
ジョブを実行するのに要する金額が算出されると、操作パネル4の表示部4aには、図10に示すような画面が表示される。つまり、この画面では、画像形成装置1の利用者に対し、ジョブの実行に要する金額の表示が行われると共に、決算処理のために利用者が所持しているICカードを電子マネー情報読取装置8にかざすことを促す表示が行われる。このような表示が行われると、画像形成装置1は、利用者が電子マネー情報読取装置8の読取部8aにICカードをかざしたか否かを判断する(ステップS24)。ここでは所定時間が経過するまで電子マネー情報読取装置8が電子マネー情報を読み取ったか否かを監視する。その所定時間の間に利用者がICカードを提示せず、電子マネー情報読取装置8が電子マネー情報を読み取ることができなかった場合には、ステップS25に進み、原稿を読み取った画像データを全て削除し、現在実行中のジョブを破棄して処理を終了する(ステップS25)。
これに対し、所定時間の間に利用者がICカードを提示した場合(ステップS24でYES)、電子マネー情報読取装置8はそのICカードに記録されている電子マネー情報を読み取り、画像形成装置1に出力する(ステップS26)。このとき、利用者によって提示されているICカードの識別情報と、電子マネーの残金情報の取得が行われる。
そして画像形成装置1では決済処理部13が機能し、決済処理を行う。このとき、決済処理部13はサーバ装置50との通信を行うことにより、利用者が提示したICカードが適正なカードであるか否かの判断を行うが、これについての手順は図示を省略しており、以下の処理は適正なカードであった場合に行われる。
決済処理部13は、利用者が提示したICカードに記録されている電子マネーの残金が金額計算部12によって算出された金額以上であるか否かを判断する(ステップS27)。そして残金が算出金額以上である場合(ステップS27でYES)、決済処理部13は、利用者が提示しているICカードから算出金額分の電子マネーを引き落とすことにより、決済処理を行う(ステップS28)。そして決済処理が正常に完了すると、ジョブ制御部11が画像形成部を作動させることにより、印刷動作を開始する(ステップS29)。そして利用者によって指定されたジョブ(この場合は、コピージョブ)を完了させ、処理を終了する。
一方、提示されたICカードの残金が算出金額未満であった場合(ステップS27でNO)、画像形成装置1は印刷処理を開始せず、提示されたICカードから読み取った識別情報17と現在のジョブのジョブ情報18とを互いに関連づけて記憶部16に記憶して保存する(ステップS30)。このとき保存されるジョブ情報18には、原稿を読み取った画像データや、ジョブを実行するための金額などの情報も含まれる。そして画像形成装置は、操作パネル4の表示部4aに対して図11に示すようなエラー画面を表示する(ステップS31)。この画面では、画像形成装置1の利用者に対し、ジョブを保存したことを示す表示が行われると共に、提示されたICカードは電子マネーのチャージが必要であることを示す表示が行われる。そして利用者は、図11のような画面に表示されるOKボタンを操作することにより、この処理は終了する。そして操作パネルの表示部4aは初期画面に戻り、次の利用者が画像形成装置1を利用できる状態となる。
図5に戻り、ステップS10でNOとなり、さらにステップS12でNOとなるループ処理中に、利用者が電子マネー情報読取装置8にICカードを提示してかざした場合、ステップS12でYESとなり、電子マネー情報読取装置8はそのICカードに記録されている電子マネー情報を読み取り、画像形成装置1に出力する(ステップS13)。これにより、画像形成装置1は、利用者によって提示されているICカードの識別情報と、電子マネーの残金情報とを取得する。
そして画像形成装置1は、取得したICカードの識別情報に基づいて記憶部16内を検索し、該識別情報に関連づけられたジョブ情報18が格納されているか否かを調べる(ステップS14)。つまり、記憶部16に記憶されている識別情報17の中に、利用者が提示したICカードの識別情報と一致するものが存在するか否かを調べ、存在する場合にはその識別情報17に関連づけられたジョブ情報18が存在するか否かを調べる。
その結果、利用者が提示したICカードの識別情報に関連づけられたジョブ情報18が存在する場合には、ステップS15でYESとなり、第2ジョブ実行処理を行う(ステップS16)。これに対し、ジョブ情報18が保存されていない場合には、ステップS10に戻る。
またステップS15において利用者が提示したICカードの識別情報に関連づけられた複数のジョブ情報18が存在する場合、画像形成装置1は、操作パネル4の表示部4aにジョブの選択画面を表示し、利用者に複数のジョブのうちから実行すべきジョブの選択入力を受け付ける。図12は、この場合のジョブ選択画面の一例を示す図である。図例では、利用者が提示したICカードの識別情報に関連づけられてジョブIDが「1234」と「1235」の2つのジョブが記憶されている場合を例示している。このような選択画面が表示されると、利用者は画像形成装置1に実行させる一のジョブを選択した状態で画面内のOKボタンを押すことで、ジョブの選択操作を行う。画像形成装置1は、操作パネル4からの選択入力に基づいて記憶部16に記憶されている複数のジョブ情報18のうちから実行すべき一のジョブ情報18を特定し、第2ジョブ実行処理(ステップS16)へと移行する。尚、ICカードの識別情報に関連づけられたジョブ情報18がひとつである場合には、そのひとつのジョブ情報18が実行すべきジョブとして特定されるので、図12のような選択画面は表示されず、そのまま第2ジョブ実行処理(ステップS16)へと移行する。
図7は、第2ジョブ実行処理(ステップS16)の詳細を示すフローチャートである。第2ジョブ実行処理が開始すると、画像形成装置1ではジョブ制御部11が機能し、提示されたICカードと関連するジョブ情報18であって、実行すべきジョブとして特定されたジョブ情報18を記憶部16から読み出して取得する(ステップS40)。ジョブ制御部11は読み出したジョブ情報18に含まれる金額の情報を読み出し(ステップS41)、決済処理部13に出力する。決済処理部13は、ジョブ制御部11からジョブを実行するための金額の情報を入力すると、電子マネー情報読取装置8から入力したICカードの残金がその入力した金額以上であるか否かを判断する(ステップS42)。そして残金が算出金額以上である場合(ステップS42でYES)、決済処理部13は、利用者が提示しているICカードからジョブ実行に要する金額分の電子マネーを引き落とすことにより、決済処理を行う(ステップS43)。そして決済処理が正常に完了すると、ジョブ制御部11が画像形成部を作動させることにより、印刷動作を開始する(ステップS44)。つまり、この場合、利用者は前回残金不足であったICカードに電子マネーをチャージすることができたこととなり、画像形成装置1は、そのチャージされたICカードで決済処理を行ってから、記憶部16に保存してあったジョブ情報18に基づいてジョブを実行する。そして利用者によって指定されたジョブ(この場合は、コピージョブ)を完了させ、処理を終了する。このとき、利用者は、再度、原稿読み取りを行うための操作やジョブの設定操作などを行う必要がないので、操作性に優れ、使い勝手の良い画像形成装置1が実現される。
一方、提示されたICカードの残金がジョブ実行に要する金額未満であった場合(ステップS42でNO)、画像形成装置1は操作パネル4の表示部4aに対して案内画面を表示する(ステップS45)。つまり、この場合、利用者は前回残金不足であったICカードに対して新たな電子マネーをチャージすることができなかったこととなるので、画像形成装置1は、他のICカードでの決済処理を試みるべく操作パネル4の表示画面を切り替える。図13は、この案内画面の一例を示す図である。図13に示すように、この案内画面には、提示されたICカードの残金が不足していることを示す表示と、利用者に対して他のICカードをかざすことを促す表示とが含まれる。このような案内画面が表示されると、利用者は画面内のOKボタンを押し、先にかざしたICカードとは異なるICカードを電子マネー情報読取装置8にかざすことで他のカードからの決済処理を行うための処理に進む。
図13に示す案内画面には、カード変更ボタンが表示されている。このカード変更ボタンは、画像形成装置1の記憶部16に保存されているジョブ情報18を別のICカードの識別情報に変更して関連づけるためのボタンである。例えば利用者が残金の十分なICカードを所持していない場合でも、カード変更ボタンを押下すれば、ジョブ情報18を関連づけるICカードの識別情報を別のICカードの識別情報に変更することができる。
上記のような案内画面の表示が行われると、画像形成装置1は、利用者がOKボタンを押してから電子マネー情報読取装置8の読取部8aにICカードをかざしたか否かを判断する(ステップS46)。そして利用者がICカードを提示した場合(ステップS46でYES)、電子マネー情報読取装置8はそのICカードに記録されている電子マネー情報を読み取り、画像形成装置1に出力する(ステップS47)。このとき、利用者によって提示されているICカードの識別情報と、電子マネーの残金情報の取得が行われる。またこのとき、利用者によって複数のICカードが提示されている場合は、それら複数のICカードのそれぞれから識別情報と残金情報の読み取りが行われる。
そして画像形成装置1では決済処理部13が機能し、決済処理を行う。このときもまた、決済処理部13はサーバ装置50との通信を行うことにより、利用者が提示したICカードが適正なカードであるか否かの判断を行うが、これについての手順は図示を省略しており、以下の処理は適正なカードであった場合に行われる。
決済処理部13は、利用者が提示したICカードに記録されている電子マネーの残金がジョブ実行のために算出された金額以上であるか否かを判断する(ステップS48)。例えば、利用者が複数のICカードを提示していた場合には、それら複数のICカードの残金の合計額がジョブ実行のために必要となる金額以上であるか否かを判断する。ここで、残金がジョブ実行に要する金額未満であった場合(ステップS48でNO)、画像形成装置1は、さらに別のICカードが電子マネー情報読取装置8にかざされるのを一定時間待つためにステップS46に戻る。これに対し、残金がジョブ実行に要する金額以上であった場合(ステップS48でYES)、画像形成装置1は、他のカードからの決済処理を行う(ステップS49)。
図8は、他のカードからの決済処理(ステップS49)の詳細を示すフローチャートである。尚、この処理は、主として決済処理部13によって行われる。この処理が開始されると、決済処理部13は、利用者が現在電子マネー情報読取装置8にかざしているICカードが複数枚であるか否かを判断する(ステップS60)。そして利用者が提示しているICカードの枚数が1枚である場合(ステップS60でNO)、決済処理部13は、現在提示されている1枚のICカードからジョブ実行のために算出された金額分の電子マネーを引き落とすことにより決済処理を行う(ステップS61)。これに対し、利用者が複数のICカードを提示している場合(ステップS60でYES)、画像形成装置1は、操作パネル4の表示部4aに複数のICカードの残金情報を表示する(ステップS62)。そして利用者が操作パネル4を操作することによるICカード毎の決済額の入力受け付けを行う(ステップS63)。
図14は、このとき操作パネル4の表示部4aに表示されるICカードの残金情報表示画面の一例を示す図である。図例では、利用者が提示したICカードが2枚であり、1枚目のICカードには2000円分の電子マネー残金があり、2枚目のICカードには1000円分の電子マネー残金がある場合を示している。尚、この画面には、さらに実行するジョブのジョブIDや、そのジョブを実行するのに要する金額なども表示される。このような画面が表示されると、利用者は、複数のICカードのうちから一のICカードを選択しながら支払い金額を設定していくことで、ICカード毎に支払い金額を設定することができる。図例の場合、利用者の設定操作により、1枚目のICカードによる支払い金額が100円、2枚目のICカードによる支払金額が60円として設定されたことを示している。ステップS63では、このような利用者による設定操作が受け付けられ、決済処理部13に入力する。
そして決済処理部13は、各ICカードについて設定された決済額(支払い金額)に基づいてICカード毎に決済処理を行う(ステップS64)。
ステップS61又はS64での決済処理が正常に完了すると、他のカードからの決済処理(ステップS49)が終了し、次に図7のフローチャートのステップS44に進む。そしてジョブ制御部11が画像形成部を作動させることにより、印刷動作を開始する(ステップS44)。これにより、利用者が前回残金不足であったICカードに電子マネーをチャージすることができなかった場合でも、画像形成装置1は、先に提示されたICカードとは異なる他のICカードで決済処理を行ってから、記憶部16に保存してあったジョブ情報18に基づいてジョブを実行する。そして利用者によって指定されたジョブ(この場合は、コピージョブ)を完了させ、処理を終了する。またこの場合においても、利用者は、再度、原稿読み取りを行うための操作やジョブの設定操作などを行う必要がないので、操作性に優れ、使い勝手の良い画像形成装置1が実現される。
一方、ステップS45で操作パネル4に表示される案内画面(図13参照)において、利用者がOKボタンを押下しなかった場合(ステップS46でNO)、画像形成装置1は、利用者がカード変更ボタンを押したか否かを判断する(ステップS50)。そしてカード変更ボタンも操作されなかった場合(ステップS50でNO)は、何も行うことなく処理を終了する。これに対し、利用者がカード変更ボタンを押下した場合(ステップS50でYES)、画像形成装置1は、カード変更処理を実行する(ステップS51)。
図9は、カード変更処理(ステップS51)の詳細を示すフローチャートである。利用者によってカード変更ボタンが押されると、画像形成装置1は、操作パネル4の表示部4aにカード変更時の操作案内画面を表示する(ステップS70)。図15は、この場合の操作案内画面の一例を示す図である。図例では、保存しているジョブに関連づけるICカードを変更する旨の表示と、別のICカードをかざすことを促す表示とが行われる例を示している。このような画面が表示されると、利用者は、先のICカードとは異なるICカードをかざせば、ジョブに関連づけるICカードを変更することができることを把握できる。そのため、利用者は、別のICカードを電子マネー情報読取装置8にかざし、画面内のOKボタンを押下する。
利用者がOKボタンを押下すると、電子マネー情報読取装置8が読取部8aに提示されているICカードの電子マネー情報を読み取り、画像形成装置1に出力する(ステップS71)。このとき、画像形成装置1は、利用者によって提示されているICカードの識別情報を取得する。そしてジョブ制御部11は、記憶部16に保存しているジョブ情報18に関連づけられた識別情報17を、ステップS70で取得した識別情報に書き換える。そして書き換えた識別情報17とジョブ情報18とを関連づけて記憶部16に保存する(ステップS72)。以上で、カード変更処理が終了する。このようなカード変更処理により、画像形成装置1に保存されているジョブ情報18を別のICカードの識別情報17に関連づけて保存することができるようになる。
以上のように本実施形態の画像形成装置1は、電子マネーを記録した電子マネー端末20と非接触で電子マネー情報の送受信を行う電子マネー情報読取装置8と、利用者によって指定されたジョブの実行を制御するジョブ制御部11と、ジョブ制御部11が指定されたジョブを実行する際に利用者に対して課金すべき金額を計算する金額計算部12と、金額計算部12で計算された金額に基づき、電子マネー情報読取装置8を介して電子マネー端末20に記録されている電子マネーでの決済処理を行い、ジョブ制御部11にジョブの実行を行わせる決済処理部13とを備えている。そして決済処理部13は、電子マネー情報読取装置8が先に読み取った電子マネー端末の残金が金額計算部12で計算された金額に満たない場合、別の電子マネー端末での決済処理を行ってからジョブ制御部11に指定されたジョブの実行を開始させるように構成されている。そのため、利用者が先に提示した電子マネー端末が残金不足であっても、他の電子マネー端末に十分な残金がある場合には、先の電子マネー端末に代えて他の電子マネー端末で決算処理を行うことができるようになる。そして他の電子マネー端末で決済処理を行うことができた場合には、あらたに印刷モードの設定や原稿の全ページの読み取りを行うための操作を行う必要はなく、画像形成装置1を利用する際の操作性や利便性が向上する。
また本実施形態の画像形成装置1は、電子マネー情報読取装置8が先に読み取った電子マネー端末の残金が金額計算部12で計算された金額に満たない場合、当該電子マネー端末の識別情報に関連づけてジョブを記憶部16に記憶することで、実行中のジョブを保存するように構成されている。それ故、利用者が残金不足の電子マネー端末に電子マネーをチャージするために画像形成装置1から離れた場合であっても、画像形成装置1はその実行途中のジョブを保持し続けることができると共に、利用者が画像形成装置1から離れている間は、他の利用者が画像形成装置1を使用することができる状態とすることができる。
そして利用者が残金不足の電子マネー端末に電子マネーをチャージして帰ってきたときには、利用者がチャージ後の電子マネー端末を電子マネー情報読取装置8にかざすことにより、画像形成装置1が保存していたジョブを自動で読み出して実行するので、画像形成装置1を利用する際の操作性や利便性が向上する。
また利用者が残金不足の電子マネー端末にあらたな電子マネーをチャージしない場合でも、他の電子マネー端末を所持している場合には、先にかざした電子マネー端末を再び電子マネー情報読取装置8にかざすことにより、画像形成装置1は保存されたジョブの読み出しを行い、次に他の電子マネー端末をかざすことにより、画像形成装置1は後にかざされている他の電子マネー端末により決済処理を行い、読み出したジョブの実行を開始する。このときもまた、利用者があらたに印刷モードの設定や原稿の全ページの読み取りを行うための操作を行う必要はないので、画像形成装置1を利用する際の操作性や利便性が向上する。
さらに、決済処理部13が決済処理を行う際、先に提示された電子マネー端末とは異なる別の電子マネー端末が複数存在する場合、電子マネー端末毎の決済額を設定し、複数の電子マネー端末のそれぞれから設定された決済額の決済処理を行うように構成されている。そのため、例えば割り勘決済なども可能となり、複数の利用者が一つのジョブを実行させようとする場合でも、各利用者の所持する電子マネー端末に対して個別に決済処理を行うことができる。
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1で実行するジョブの一例としてコピージョブの場合を説明したが、上述した画像形成装置1で実行可能なジョブとしては、上述のコピージョブの他にも、例えばプリントジョブ、スキャンジョブ、FAX送信ジョブなどがある。そして上述した決済処理の方法は、プリントジョブ、スキャンジョブ、FAX送信ジョブなどの他のジョブであっても適用可能である。すなわち、ICカードや携帯電話機などのような非接触読み取り式の電子マネー端末はそれ単体では電子マネーの残高を利用者がその場で確認することができない、或いは確認しづらいという事情があり、利用者は、画像形成装置1に対して指定したジョブの実行を行わせるための決済処理の段階になってはじめて電子マネー端末の残高不足に気づくこともある。このような場合、画像形成装置1で実行するジョブがどのようなジョブであったとしても、上述した決済処理の方法を適用することにより、利用者のかざした電子マネー端末が残金不足であっても他の電子マネー端末で決済処理を行うことができるので、利用者はジョブの設定操作などをあらためて行う必要がなくなり、画像形成装置1を利用する際の操作性や利便性が向上する。