JP5412669B2 - 4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、安定剤、樹脂製造原料、医農薬中間体として有用な4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテルの製造法に関する。
4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテルは、公知の化合物である。また、その製造方法として、種々の方法が知られている(特許文献1〜5)。
例えば、特許文献1は、4,4'-ジブロモジフェニルエーテルを苛性アルカリ水溶液中で、アルカリ金属過酸化物、銅及びハロゲン化銅の存在下において、加水分解する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法は、高級脂肪酸を使用するものではなく、副生成物が多く、そのため、精製が困難であるなど問題となっている。
特許文献2は、4,4'-ジヨードジフェニルエーテルを銅系化合物と苛性アルカリの存在下において水及びアルコールなどの媒体中において加水分解する方法について開示している。しかしながら、特許文献2は、高級脂肪酸を使用するものではない。また、使用するヨウ素化合物は、高価であり、アルコール等の混合溶媒中の反応であり、コスト、安全性に問題がある。
特許文献3は、ジフェニルエーテルの4,4'位に直接、トリフルオロメタンスルホン酸の遷移金属塩及び過塩素酸アルキルの存在下に、アシル基を導入した後、バイヤー・ビリガー反応で酸化し、ついで、エステル基を加水分解する方法について開示している。しかしながら、アシル基の導入に際して、操作に手間がかかり、工程も長くコスト高であるなどの問題がある。
特許文献4は、ジハロフェニルエーテルにグリニヤール反応などを適用して、4,4'位にアシル基を導入した後、バイヤー・ビリガー反応で酸化し、ついで、エステル基を加水分解する方法について開示している。しかしながら、アシル基の導入に際して、操作に手間がかかり、工程も長くコスト高であるなどの問題がある。
特許文献5〜8は、ヒドロキノン類を、触媒の存在下に脱水二量化してジヒドロキシジフェニルエーテル類を形成する方法について開示する。しかしながら、この方法では、3量体、4量体が副生して精製が困難であるなど問題となっていた。
特許文献9は、4,4'-ジブロモジフェニルエーテルを銅触媒及びマクロサイクリックポリエーテルと4級アンモニウム塩の存在下アルカリ加水分解する方法について開示している。しかしながら、特許文献9は、高級脂肪酸を使用するものではない。また、特許文献9の方法は、熱に不安定な触媒を使用するため、その後の精製が困難であり、またマクロサイクリックポリエーテルと4級アンモニウム塩と言った高価な触媒を使用しなければならない。
米国特許第3,290,386号明細書 特開昭63-99029号公報 特開2002-167348号公報 特開2002-167349号公報 特開平1992-5254号公報 特開2001-278827号公報 特公平6-37417号公報 特公昭60-43052号公報 CN101121644
本発明者は、ジヒドロキシジフェニルエーテルを工業的に簡易に、かつ大量に、しかも、高収率かつ安価に生産し得る方法について鋭意検討し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、ジブロモジフェニルエーテルを、銅触媒と、特定の炭素数以上の高級脂肪酸と併用することにより、アルカリの存在下において、加水分解することにより、4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテルを高収率、高純度で得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、 次式(1)、

Figure 0005412669
で表されるジヒドロキシジフェニルエーテルを製造する方法であって、
次式(2)、

Figure 0005412669
で示されるジブロモジフェニルエーテルを、銅触媒と、炭素数8〜20の脂肪酸との存在下において、アルカリで加水分解することを特徴とする方法に関するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するジブロモジフェニルエーテルは、公知の化合物であり、市場において容易に入手可能な化合物である。
ジブロモジフェニルエーテルの媒体における濃度は、例えば、5〜90%、好ましくは、10〜50%であることが好適である。媒体は、以下で説明するように、水媒体であることが好適である。
本発明で使用する銅触媒は、銅を成分として含有し、ジブロモジフェニルエーテルをジヒドロキシジフェニルエーテルに変換するのを触媒するものであれば、特に組成は問わない。具体的には、金属銅でもよく、銅の化合物でもよい。
金属銅としては、容器としての銅容器であってもよく、銅粉末の形態でもよい。
銅化合物としては、無機銅化合物及び有機の銅化合物が挙げられる。無機の銅化合物としては、例えば、ハロゲン化銅や、酸化銅、亜酸化銅などが好適に挙げられる。ハロゲン化銅におけるハロゲンとしては、ヨウ素、塩素、臭素、フッ素などの元素が好適に挙げられる。従って、ハロゲン化銅としては、例えば、塩化銅や、臭化銅などが好適に挙げられる。
有機の銅化合物としては、例えば、有機酸の銅塩や、オキシン銅などが好適に挙げられる。有機酸の銅塩として、例えば、酢酸や、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などが挙げられる。
無機銅としては、ハロゲン化銅、特に、塩化銅や、臭化銅などが好適に挙げられる。一方、有機の銅塩としては、例えば、酢酸銅などが好適に挙げられる。これらの銅触媒は、単独で使用してもよく、又は混合物として使用することもできる。
銅触媒は、一般に、触媒量で使用されるが、通常、ジブロモジフェニルエーテルに対して、0.5%〜50%、好ましくは、3%〜10%の量で使用することが好適である。
本発明で使用される高級脂肪酸は、直鎖でも、分枝鎖でもよく、また、飽和又は不飽和の高級脂肪酸であってもよい。高級脂肪酸は、その炭素数が、8〜20、好ましくは、10〜20の脂肪酸である。このような高級脂肪酸としては、例えば、カプリル酸や、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが好適に挙げられる。
これらの高級脂肪酸は、塩の形態でも使用することができる。例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属の塩、銅塩などとして使用することができる。
高級脂肪酸は、ジブロモジフェニルエーテルに対して、0.5%〜20%、好ましくは、3〜10%の濃度で使用することが好適である。
反応媒体としては、水が使用される。
加水分解反応は、アルカリの存在により行われる。アルカリとしては、アルカリ金属が好適であり、アルカリ金属の水酸化物であることが特に好適である。具体的には、アルカリとしては、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムが好適である。これらのアルカリは、単独で使用してもよく、又は混合物として使用することもできる。
アルカリは、水媒体において、通常、10%〜100%の濃度で使用される。なお、アルカリの濃度が50%以上のアルカリ溶液では、冷却時に固化するので 好ましくは10%〜50%である。
本発明においては、加水分解反応は、一般に、170〜250℃、好ましくは、180〜200℃において行われる。
反応時間は、反応温度により変動するが、例えば、5〜20時間、通常、5〜10時間程度が好適である。
本発明の方法では、4,4'-ジブロモジフェニルエーテルを、銅触媒と特定の高級脂肪酸とを同時に添加し、アルカリにより加水分解することにより、収率良く、高純度の4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテルを得る方法である。
以下、本発明について、更に、実施例及び比較例により説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例1
ジブロモジフェニルエーテル30g、臭化銅 1.5g、ステアリン酸ナトリウム 2g、20%水酸化ナトリウム溶液 200ml をステンレス製のオートクレーブに仕込み、窒素置換してから190℃で7時間加熱攪拌した。 室温にまで冷却し触媒をろ過して、水洗し、ろ液を冷却しながら農塩酸で中和した。析出した結晶をろ集した。得られたジヒドロキシジフェニルエーテルの収率は95%であり、純度は、99%(GC)であった。
ここで、収率は、得られた生成物の重量に従い測定し、純度は、ガスクロマトグラフィーを使用して、測定した。
実施例2
ジブロモジフェニルエーテル30g、酢酸銅 2g、ラウリン酸ナトリウム 2g、20%水酸化ナトリウム溶液 200ml をステンレス製のオートクレーブに仕込み、190℃で7時間加熱攪拌した。反応液を、室温まで冷却し、触媒をろ過して、水洗し、ろ液を冷却しながら農塩酸で中和した。析出した結晶をろ集した。
収率90% 純度99%(GC)
実施例3
ジブロモジフェニルエーテル30g、酢酸銅 2g、パルミチン酸 2g、20%水酸化ナトリウム溶液 200ml をステンレス製のオートクレーブに仕込み、190℃で7時間加熱攪拌した。 室温にまで冷却し触媒をろ過して、水洗し、ろ液を冷却しながら農塩酸で中和した。析出した結晶をろ集した。
収率90% 純度99%(GC)
比較例1
ジブロモジフェニルエーテル2g、ヨウ化銅 0.2g、カプロン酸(炭素数6) 0.5g、30%水酸化ナトリウム溶液 100ml をオートクレーブに仕込み、実施例1と同様の反応を行った。0.43gの結晶を得た。
収率35% 純度97%(GC)
比較例2
ジブロモジフェニルエーテル30g、ヨウ化銅 2g、20%水酸化ナトリウム溶液 200mlをステンレス製のオートクレーブに仕込み、190℃で7時間加熱攪拌した。
ジヒドロキシジフェニルエーテルは、得られなかった。
比較例3
ジブロモジフェニルエーテル30g、ステアリン酸ナトリウム 2g、30%水酸化ナトリウム溶液 200ml をステンレス製のオートクレーブに仕込み、190℃で7時間加熱攪拌した。
ジヒドロキシジフェニルエーテルは、得られなかった。
比較例4
ジブロモジフェニルエーテル2g、臭化銅 0.2g ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド 0.5g、30%水酸化ナトリウム溶液 100ml をオートクレーブに仕込み、実施例1と同様の反応を行った。
反応液が真黒に変化してジヒドロキシジフェニルエーテルは、得られなかった。
比較例5
ジブロモジフェニルエーテル2g、臭化銅 0.2g、酢酸 0.5g、30%水酸化ナトリウム溶液 100ml をオートクレーブに仕込み、実施例1と同様の反応を行った。
ジヒドロキシジフェニルエーテルは、得られなかった。
本発明によれば、銅触媒と、炭素数10以上の脂肪酸を添加して、アルカリ加水分解することにより、きわめて容易かつ高収率で、しかも、産業上有用な4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテルを得ることができる。

Claims (6)

  1. 次式(1)、

    Figure 0005412669

    で表されるジヒドロキシジフェニルエーテルを製造する方法であって、
    次式(2)、

    Figure 0005412669

    で示されるジブロモジフェニルエーテルを、銅触媒と、炭素数8〜20の脂肪酸の存在下において、アルカリで加水分解することを特徴とする方法。
  2. 前記脂肪酸が、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  3. 前記アルカリが、アルカリ金属の水溶液である請求項1に記載の方法。
  4. 前記アルカリが、ナトリウム又はカリウムである請求項1に記載の方法。
  5. 前記銅触媒が、金属銅、ハロゲン化銅、酸化銅、亜酸化銅、有機酸銅塩及びオキシン銅からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  6. 前記有機酸銅塩が、酢酸塩である請求項5に記載の方法。
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