JP5411459B2 - 車両用シートのパワースライド装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両用シートをモータ駆動の送りねじ機構で前後方向に移動させるパワースライド装置に関する。

車両用シートスライド装置は、車両床面に前後方向に向けて固定されるロアレールに、シートに固定されるアッパレールを摺動自在に係合させる基本構造を有する。この車両用シートスライド装置は、アッパレールとロアレールの一方に、該レールの延長方向に向けてモータ駆動のスクリューロッドを回動自在に支持し、他方にこのスクリューロッドのナット螺合部に螺合するナット部材を固定することでパワー化されている。

ナット部材は、長尺のスクリューロッドとの相対螺合回転に伴う異音の発生を防止するために、少なくとも雌ねじ部分を合成樹脂材料から構成することが提案され実用化されている。また、合成樹脂材料製のナット本体部材の強度を補うため、該ナット本体部材の外囲を金属製のカバー部材で覆うことも提案されている。従来品では、この金属製カバー部材を断面帽子（ハット）状に形成していた（特許文献１）。
特開２００６-１７５９５３号公報

パワースライド装置では、車両に衝突荷重が加わった場合、スクリューロッドと送りナットとの間に、軸方向の抜け荷重（剥離荷重）が加わる（アッパレールにスクリューロッドを支持する態様では、スクリューロッドに軸方向力が加わり、ロアレールに固定されている送りナットから抜けようとする力が加わる）。合成樹脂材料と金属材料の合成材料でハイブリッド化したナット部材では、スクリューロッドとの噛合部分が軟質な合成樹脂材料であるため、噛合部分が変形し、スクリューロッドと送り部材が容易に軸方向に相対移動してしまうおそれがあった。従来のハイブリッド化されたナット部材では、その金属製カバー部材が以上の抜け荷重を増大させることに何ら寄与せず、あるいは寄与する度合いが低かった。

本発明は、以上の問題意識に基づき、ナット部材をハイブリッド化した車両用シートのパワースライド装置において、金属製のカバー部材により、スクリューロッドと送りナットの抜け荷重を高め、衝突荷重に強いパワースライド装置を得ることを目的とする。

本発明は、金属製のカバー部材と合成樹脂製のナット本体部材とで構成するハイブリッドタイプの送りナットにおいて、衝突荷重によって金属製カバー部材に生じる変形によりナット本体部材を軸線直交方向に押し潰す方向の力を加えれば、抜け荷重を増大させることができるとの着眼に基づいてなされたものである。

本発明は、車両床面に配設されるロアレール；このロアレールに摺動自在に係合しシート側に配設されるアッパレール；アッパレールとロアレールのいずれか一方に回転自在に支持され、回転駆動されるスクリューロッド；及びこのスクリューロッドに螺合され、アッパレールとロアレールの他方に固定されたナット部材；を備えた車両用シートのパワースライド装置において、ナット部材は、金属製のカバー部材と、この金属製カバー部材内に位置する合成樹脂製のナット本体部材とを有しており、カバー部材は、ナット本体部材とナット部材支持レールとの間に挟着され、該ナット支持レールに固定される挟着壁と、この挟着壁のナット部材支持レールの延長方向の両端部から起立する一対の起立壁と、この一対の起立壁を接続する、挟着壁と対向する離隔壁とを有する一連の金属材料からなっており、挟着壁は、その全体がナット支持レールと接触していて、一対の起立壁の離隔方向に離間した２箇所の締結部によって、該ナット支持レールに固定されていることを特徴としている。

カバー部材とナット本体部材は、例えば、ナット部材支持レールから上記挟着壁及びナット本体部材に挿通螺合させた固定ねじで該ナット支持レールに固定することができる。

一対の起立壁は、最も一般的には挟着壁に対して直交する互いに平行な直立壁面とすることができる。あるいは挟着壁に直交する面に対して傾斜した互いに平行な傾斜壁面とすることもできる。

挟着壁は、送りナット支持レール延長方向の中心部において分断し、分断部分の両側にそれぞれ固定ねじ挿通穴を形成することができる。

金属製のカバー部材と合成樹脂製のナット本体部材との間には、弾性材料からなる吸振部材を挟着することが好ましい。

本発明は、スクリューロッドの回転運動により送りナットを介してシートを前後動させる車両用シートのパワースライド装置において、送りナットを、金属製のカバー部材と、このカバー部材内に位置する合成樹脂製の送りナット本体部材とで構成する一方、カバー部材に、ナット本体部材とナット部材支持レールとの間に挟着される挟着壁と、この挟着壁に対向する離隔壁とを設けて、この両壁の間に、ナット本体部材を支持したので、衝突荷重が作用すると、一対の起立壁（との接続部分の角度）の変形を伴って、該挟着壁と離隔壁と間隔が狭くなり、ナット本体部材にスクリューロッド径方向への力が作用する。このため、ナット本体部材とスクリューロッドの抜け荷重（剥離荷重）を大きくすることができ、衝突荷重に強いパワースライド装置を得ることができる。

車両用シートスライド装置は、図８に示すように、車両用シートＳと床面Ｆとの間に位置し車両前後方向に延びる左右一対のシートトラック１０を有する。左右のシートトラック１０は、同一（対称）構造であり、床面Ｆに前後のブラケット１１、１２で固定されるロアレール１３と、シートＳに固定されるアッパレール１４とを有し、このロアレール１３とアッパレール１４が摺動自在に嵌まっている。

ロアレール１３には、図１に示すように、固定ボルト１５を介して軸線を前後方向に向けたナット部材１６が固定されている。ナット部材１６は、図１及び図４に示すように、中心部の合成樹脂（例えばＰ．Ａ．）製のナット本体部材（有ねじ部材）１６Ａと、このナット本体部材１６Ａを取り囲む金属（例えば鉄系材料）製のカバー部材１６Ｂとからなっており、ナット本体部材１６Ａとカバー部材１６Ｂの間には、ゴム製の吸振部材（吸振シート）１６Ｃが圧縮状態で介在している。

ナット本体部材１６Ａは全体として矩形をなし、その中心部に雌ねじ１６Ｄが形成されている。カバー部材１６Ｂは、このナット本体部材１６Ａの全体を囲む側面視矩形をなしている。すなわち、ナット本体部材１６Ａは、ロアレール（ナット部材支持レール）１３と、カバー部材１６Ｂとの間に挟着される挟着壁１６Ｂ１と、この挟着壁１６Ｂ１の前後方向（ロアレール１３の延長方向）の両端部から起立する一対の起立壁１６Ｂ２と、この一対の起立壁１６Ｂ２の上端部を接続する離隔壁１６Ｂ３とからなっている。一対の起立壁１６Ｂ２は、挟着壁１６Ｂ１（ロアレール１３）と直交する互いに平行な壁面であり、離隔壁１６Ｂ３は挟着壁１６Ｂ２と平行をなしている。挟着壁１６Ｂ１は、中央部で分断されており（カバー部材１６Ｂは板材を曲げ加工して形成されていて、その分断部分がカバー部材１６Ｂに存在し）、分断部分の両側に、固定ねじ挿通穴１６Ｂ４が穿設されている。一対の起立壁１６Ｂ２には、スクリューロッド２０を挿通する貫通穴１６Ｂ５が形成されている。

ロアレール１３には、一対の固定ねじ挿通穴１６Ｂ４に対応させて一対の固定ねじ挿通穴１３ａが穿設されており、ナット本体部材１６Ａには、一対の固定ねじ挿通穴１６Ｂ４及び固定ねじ挿通穴１３ａに対応させて、一対の固定雌ねじ穴１６Ｆが形成されている。ロアレール１３の下面から固定ねじ挿通穴１３ａ、固定ねじ挿通穴１６Ｂ４に挿入された固定ねじ１６Ｇは、固定雌ねじ穴１６Ｆに螺合されて、ナット部材１６がロアレール１３に固定されている。

アッパレール１４には、このナット部材１６の雌ねじ１６Ｄに螺合するスクリューロッド２０が回転自在に支持されている。すなわち、アッパレール１４には、その前端部と後端部に、スクリューロッド２０の前端部と後端部を回転自在に支持するギヤボックス３０と軸受部材１７が設けられており、スクリューロッド２０には、その前端部から順に、セレーション部２１、無ねじ部２２、クラッシュナット螺合部２３、無ねじ部２４、ナット部材１６の雌ねじ１６Ｄに螺合するメインナット螺合部２５及び軸受部材１７に回転自在に支持される無ねじ部（後端軸受部）２６が形成されている。

ギヤボックス３０は、接続ブラケット３１によってアッパレール１４に固定されている。ギヤボックス３０内には、セレーション部２１と相対回転不能に係合するセレーション穴３２ａを軸部に有するウォームホイル３２が回転自在に支持されている。ウォームホイル３２は、軸線を車両左右方向に向けたウォーム３３と噛み合っていて、該ウォーム３３が正逆に回転すると、ウォームホイル３２が正逆に回転し、セレーション部２１（スクリューロッド２０）が正逆に回転する。

左右のアッパレール１４のギヤボックス３０内のウォーム３３は、連動機構によって連動して回転するものであり、この連動回転により、左右のアッパレール１４のスクリューロッド２０が正逆に回転する。すると、スクリューロッド２０は、ロアレール１３に固定したナット部材１６と螺合しているため、アッパレール１４（シートＳ）が前後に移動する。図１は、アッパレール１４（シートＳ）のロアレール１３に対する前方移動端を示している。

また、アッパレール１４には、スクリューロッド２０に対して相対回転自在で、該スクリューロッド２０と軸方向には一緒に移動する（軸方向移動を規制した）荷重伝達部材４０が固定されている。この荷重伝達部材４０は、図１ないし図３に明らかなように、スクリューロッド２０を挿通（緩通）するスクリュー挿通穴４１ａを有する環状部４１と、アッパレール１４に固定するためのボルト部４２と、該環状部４１とボルト部４２の間のフランジ部４３とを一体に有している。ボルト部４２は、図１に示すように、ギヤボックス３０の接続ブラケット３１に形成した締結穴３１ａと、アッパレール１４に形成した締結穴１４ａに挿通した後、その突出端に固定ナット４４を螺合させ締め付けることで、荷重伝達部材４０がアッパレール１４（ギヤボックス３０）に固定されている。

スクリューロッド２０のクラッシュナット螺合部２３には、荷重伝達部材４０の環状部４１の前後に位置させてクラッシュナット２７、２８がかしめ固定されており、このクラッシュナット２７、２８により、荷重伝達部材４０のスクリューロッド２０に対する軸方向の相対移動が規制されている。

以上のシートスライド装置は、衝突荷重が加わると、アッパレール１４がロアレール１３に対して相対的に移動しようとし、その荷重は、荷重伝達部材４０の環状部４１から、クラッシュナット２７または２８を介して、スクリューロッド２０に加わる。このため、ギヤボックス３０部分に加わる荷重を低減し、ギヤボックス３０（ウォームホイル３２、ウォーム３３）の破損を防止することができる。

また、スクリューロッド２０（アッパレール１４）とロアレール１３（車両床面Ｆ）との間に、前後方向のずれが生じると、スクリューロッド２０と螺合しているナット部材１６が該スクリューロッド２０と一緒に移動しようとする。より具体的には、ナット部材１６のナット本体部分１８Ａがカバー部材１６Ｂの一対の起立壁１６Ｂ２の一方を押し、その結果、一対の起立壁１８Ｂ２は、挟着壁１６Ｂ１との直交性が崩れる方向に塑性変形し、離隔壁１８Ｂ３と挟着壁１６Ｂ１との間隔が狭まる（図５）。図５では、変形前のカバー部材１６Ｂの形状を鎖線で示している。このように、離隔壁１８Ｂ３と挟着壁１６Ｂ１の間隔が狭まると（側面視矩形だったカバー部材１６が菱形に変形すると）、両壁の間のナット本体部材１６Ａは押し潰され、スクリューロッド２０との噛合力を強める。従って、シートＳが床面Ｆに対して暴走するおそれを減らし、衝突安全性を高めることができる。

図６は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態は、ナット部材１６のカバー部材１６Ｂの形状を、最初から側面視菱形にしたものである。菱形の方向は、前突時のシートＳの前方への暴走の方が後突時のシートＳの後方への暴走よりも危険であると考え、前突時により容易に離隔壁１８Ｂ３が挟着壁１６Ｂ１に接近する方向に弾性変形するようにしている。つまり、この実施形態では、一対の起立壁１６Ｂ２は、挟着壁１６Ｂ１と直交する方向に対して、上方が前方になるように角度αだけ傾斜している。このように予め角度αを設けておくと、変形のきっかけが得やすい。また、図７のように、カバー部材１６Ｂの起立壁１６Ｂ２と挟着壁１６Ｂ１及び離隔壁１６Ｂ３の曲折コーナ部に、薄肉部Ｔを形成することで、衝突時のカバー部材１６Ｂの変形をより容易にすることができる。

ちなみに、特許文献１のような断面ハット状の金属製カバー部材では、以上のナット本体部材１６Ａの押し潰し効果が得られない。これは、ナット支持レールとの固定壁がナット本体部材の外側に位置しているため、衝突荷重によってナット本体部分を介して起立壁に力が加わったとき、固定壁がナット支持レールから離間する方向の力を受けるためと考えられる。

なお、カバー部材１６Ｂは、例えばパイプ材を加工することにより、分断部分が存在しない箱形形状に形成することもできる。

以上の実施形態は、アッパレール１４にスクリューロッド２０を回転自在に支持し、ロアレール１３にナット部材１６を固定した態様のパワースライド装置に本発明の軸受部材１７を適用した実施形態であるが、本発明は、ロアレール１３にスクリューロッド２０を回転自在に支持し、アッパレール１４にナット部材１６を固定したパワースライド装置にも同様に適用することができる。

本発明によるパワースライド装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図１のII-II線に沿う断面図である。 図１のパワースライド装置からスクリューロッド回りの構成を取り出して描いた斜視図である。 ナット部材回りの分解斜視図である。 本発明によるパワースライド装置の衝突時のナット部材の変形のモデル例を示す縦断面図である。 本発明によるパワースライド装置の別の実施形態を示す、ナット部材回りの縦断面図である。 本発明によるパワースライド装置の別の実施形態を示す、ナット部材の要部の側面図である。 車両用シートスライド装置の一般構成を示す斜視図である。

Ｓ 車両用シート
Ｆ 床面
１０ シートトラック
１３ ロアレール（ナット部材支持レール）
１４ アッパレール（スクリューロッド支持レール）
１４ａ 締結穴
１５ 固定ボルト
１６ ナット部材
１６Ａ ナット本体部材
１６Ｂ カバー部材
１６Ｃ 吸振部材
１６Ｂ１ 挟着壁
１６Ｂ２ 起立壁
１６Ｂ３ 離隔壁
１６Ｂ４ 固定ねじ挿通穴
１６Ｄ 雌ねじ
１６Ｆ 固定雌ねじ穴
１６Ｇ 固定ねじ
１７ 軸受部材
２０ スクリューロッド
２１ セレーション部
２２ ２４ 無ねじ部
２３ クラッシュナット螺合部
２５ メインナット螺合部
２６ 後端軸受部
２７ ２８ クラッシュナット
３０ ギヤボックス
３１ 接続ブラケット
３１ａ 締結穴
３２ ウォームホイル
３２ａ セレーション穴
３３ ウォーム
４０ 荷重伝達部材
４１ 環状部
４１ａ スクリュー挿通穴
４２ ボルト部
４３ フランジ部
４４ 固定ナット

Claims (6)

1. 車両床面に配設されるロアレール；
   このロアレールに摺動自在に係合しシート側に配設されるアッパレール；
   上記アッパレールとロアレールのいずれか一方に回転自在に支持され、回転駆動されるスクリューロッド；及び
   このスクリューロッドに螺合され、上記アッパレールとロアレールの他方に固定されたナット部材；
   を備えた車両用シートのパワースライド装置において、
   上記ナット部材は、金属製のカバー部材と、この金属製カバー部材内に位置する合成樹脂製のナット本体部材とを有し、
   上記カバー部材は、ナット本体部材とナット部材支持レールとの間に挟着される挟着壁と、この挟着壁のナット部材支持レールの延長方向の両端部から起立する一対の起立壁と、この一対の起立壁を接続する、上記挟着壁と対向する離隔壁とを有する一連の金属材料からなり、
   上記挟着壁は、その全体が上記ナット支持レールと接触していて、上記一対の起立壁の離隔方向に離間した２箇所の締結部によって、該ナット支持レールに固定されている車両用シートのパワースライド装置。
2. 請求項１記載の車両用シートのパワースライド装置において、上記カバー部材とナット本体部材は、ナット部材支持レールから上記挟着壁及びナット本体部材に挿通螺合させた固定ねじで該ナット支持レールに固定されている車両用シートのパワースライド装置。
3. 請求項１または２記載の車両用シートのパワースライド装置において、上記一対の起立壁は、挟着壁に対して直交する互いに平行な直立壁面である車両用シートのパワースライド装置。
4. 請求項１ないし３のいずれか１項記載の車両用シートのパワースライド装置において、上記一対の起立壁は、挟着壁に直交する面に対して傾斜した互いに平行な傾斜壁面である車両用シートのパワースライド装置。
5. 請求項１ないし４のいずれか１項記載の車両用シートのパワースライド装置において、上記挟着壁は、送りナット支持レール延長方向の中心部において分断されており、分断部分の両側にそれぞれ固定ねじ挿通穴が形成されている車両用シートのパワースライド装置。
6. 請求項１ないし５のいずれか１項記載の車両用シートのパワースライド装置において、上記金属製のカバー部材と合成樹脂製のナット本体部材との間に、弾性材料からなる吸振部材が挟着されている車両用シートのパワースライド装置。

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