JP5411356B2 - 点火燃焼及び充填モードを備える分割サイクル空気ハイブリッドエンジン - Google Patents

点火燃焼及び充填モードを備える分割サイクル空気ハイブリッドエンジン Download PDF

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Description

この発明は、分割サイクルエンジン、より詳しくは、空気ハイブリッドシステムを組み入れたかかるエンジンに関する。
明瞭化の目的のために、本出願に用いられている用語「従来のエンジン」は、周知のオットーサイクルの4つのストロークの全て(すなわち、吸入(又は入口)、圧縮、膨張(又は動力)及び排気のストローク)がエンジンの各ピストン/シリンダーの組合せ内に包含されている内燃機関を意味する。各ストロークはクランクシャフトの半回転(180度クランク角(CA))を要し、そして、従来のエンジンの各シリンダー内で全体のオットーサイクルを完了するためにはクランクシャフトの完全な2回転(720度CA)が必要である。
また、明瞭化の目的のために、先行技術に開示されたエンジンに適用され得、かつ本出願で言及されるように、用語「分割サイクルエンジン」について次の定義が提供される。
ここに言及される分割サイクルエンジンは、
クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフト、
当該クランクシャフトの単一の回転中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された圧縮ピストン、
当該クランクシャフトの単一の回転中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された膨張(動力)ピストン、及び
圧縮シリンダー及び膨張シリンダーを相互に連結するクロスオーバー通路(ポート)であって、内部に配置された少なくともクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含み、より好ましくは、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含むクロスオーバー通路、を備えている。
2003年4月8日にScuderiに許可された特許文献1(United States Patent No. 6,543,225 )及び2005年10月11日にBranyon et alに許可された特許文献2(United States Patent No. 6,952,923)、両者は参照によってここに組み入れられるが、分割サイクル及び類似のタイプのエンジンの広範囲に亘る議論を包含している。加えて、これらの特許は、本開示がさらなる展開を詳述する、エンジンの先行バージョンの詳細を開示している。
分割サイクル空気ハイブリッドエンジンは、分割サイクルエンジンと空気貯留器及び種々の制御装置を組み合わせている。この組合せは、分割サイクル空気ハイブリッドエンジンが圧縮空気の形で空気貯留器内にエネルギーを蓄えることを可能にしている。空気貯留器内の圧縮空気は、後で、クランクシャフトに動力を与えるべく膨張シリンダーで用いられる。
ここに言及される分割サイクル空気ハイブリッドエンジンは、
クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフト、
当該クランクシャフトの単一の回転中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された圧縮ピストン、
当該クランクシャフトの単一の回転中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された膨張(動力)ピストン、及び
圧縮シリンダー及び膨張シリンダーを相互に連結するクロスオーバー通路(ポート)であって、内部に配置された少なくともクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含み、より好ましくは、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含むクロスオーバー通路、及び
クロスオーバー通路に作用可能に連結され、圧縮シリンダーからの圧縮空気を蓄え、及び圧縮空気を膨張シリンダーに配送すべく選択的に作動可能である空気貯留器、を備えている。
2008年4月8日に Scuderi その他に許可された特許文献3(United States Patent No. 7,353,786)は参照によってここに組み入れられるが、分割サイクル空気ハイブリッド及び類似のタイプのエンジンの広範囲に亘る議論を包含している。加えて、この特許は本開示がさらなる展開を詳述する先行するハイブリッドシステムの詳細を開示している。
分割サイクル空気ハイブリッドエンジンは、通常の作動ないしは点火燃焼(NF)モード(一般に、エンジン点火燃焼(EF)モードとも呼ばれている)及び4つの基本的な空気ハイブリッドモードで走らされ得る。EFモードでは、エンジンは空気貯留器の使用を伴わずに作動する非空気ハイブリッド分割サイクルエンジンとして機能する。EFモードでは、クロスオーバー通路を空気貯留器に作用可能に連結するタンクバルブが、基本の分割サイクルエンジンから空気貯留器を隔離すべく閉じられたままである。
分割サイクル空気ハイブリッドエンジンはその空気貯留器の使用と共に4つのハイブリッドモードで作動する。当該4つのハイブリッドモードは、
1)燃焼を伴わずに空気貯留器からの圧縮空気エネルギーを用いる空気エキスパンダー(AE)モード、
2)燃焼を伴わずに空気貯留器に圧縮空気エネルギーを蓄える空気圧縮機(AC)モード、
3)燃焼を伴って空気貯留器からの圧縮空気エネルギーを用いる空気エキスパンダー及び点火燃焼(AEF)モード、及び
4)燃焼を伴って空気貯留器に圧縮空気エネルギーを蓄える点火燃焼及び充填(FC)モードである。
米国特許第6,543,225号明細書 米国特許第6,952,923号明細書 米国特許第7,353,786号明細書
しかしながら、これらのモード、EF、AE、AC、AEF、及びFCの、さらなる最適化が効率及びエミッションの低減を増進するために望まれている。
本発明は、点火燃焼及び充填(FC)モードの使用が、改善された効率のために如何なる駆動サイクルにおいても潜在的に全ての車両に対して最適化される分割サイクル空気ハイブリッドエンジンを提供する。
より詳しくは、本発明に従う分割サイクル空気ハイブリッドエンジンの模範的実施形態は、クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフトを含む。圧縮ピストンは、当該クランクシャフトの単一の回転中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結されている。吸入(又は入口)バルブが、圧縮シリンダー内への空気の流れを選択的に制御する。膨張ピストンは、当該クランクシャフトの単一の回転中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結されている。クロスオーバー通路が圧縮シリンダー及び膨張シリンダーを相互に連結している。当該クロスオーバー通路は、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含んでいる。空気貯留器が当該クロスオーバー通路に作用可能に連結され、圧縮シリンダーからの圧縮空気を蓄えるために選択的に作動可能である。空気貯留器バルブは、当該空気貯留器への及びそれからの空気流れを選択的に制御する。当該エンジンは、点火燃焼及び充填(FC)モードで運転可能である。当該FCモードでは、空気貯留器が圧縮空気で充填される前に膨張シリンダーが圧縮空気で充填されるように、XovrEバルブがクランクシャフトの単一の回転中に実質的に閉じられるまで、当該空気貯留器バルブは閉じられて保たれる。
分割サイクル空気ハイブリッドエンジンを運転する方法もまた、開示されている。分割サイクル空気ハイブリッドエンジンは、クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフトを含む。圧縮ピストンは、当該クランクシャフトの単一の回転中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結されている。吸入バルブが圧縮シリンダー内への空気の流れを選択的に制御する。膨張ピストンは、当該クランクシャフトの単一の回転中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結されている。クロスオーバー通路が圧縮シリンダー及び膨張シリンダーを相互に連結している。当該クロスオーバー通路は、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含んでいる。空気貯留器が当該クロスオーバー通路に作用可能に連結され、そして圧縮シリンダーからの圧縮空気を蓄えるために選択的に作動可能である。空気貯留器バルブは、当該空気貯留器への、及びそれからの空気流れを選択的に制御する。当該エンジンは点火燃焼及び充填(FC)モードで運転可能である。本発明に従う方法は、以下のステップを含んでいる。すなわち、圧縮ピストンで入口(又は吸入)空気を吸入し、かつ、圧縮し、膨張ストロークの始まりにおいて、圧縮シリンダーから膨張シリンダーへ圧縮空気を燃料と共に導入し、当該燃料は着火され、燃焼され、そして当該膨張ピストンの同じ膨張ストロークで膨張されて、動力をクランクシャフトに伝達し、そして燃焼生成物が排気ストロークで排出され、そして、空気貯留器が圧縮空気で充填される前に膨張シリンダーが圧縮空気で充填されるように、XovrEバルブがクランクシャフトの単一の回転中に実質的に閉じられるまで、当該空気貯留器バルブは閉じられて保たれる。
本発明のこれらの及び他の特徴及び有利な点は、添付図面をもとになされる以下の本発明の詳細な説明からより十分に理解されよう。
本発明による模範的な分割サイクル空気ハイブリッドエンジンの側断面図である。 1分間当り2000回転(rpm)のエンジン速度及び図示平均有効圧力(IMEP)2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、吸入(入口)バルブの閉成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、吸入バルブ期間のグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、クロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)期間のグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、クロスオーバー膨張バルブ(XovrE)期間のグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、XovrCバルブの開成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、XovrCバルブの閉成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、XovrEバルブの開成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、XovrEバルブの閉成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、空気タンクバルブの開成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、タンク空気圧力及びタンク空気流量に関しての、空気タンクバルブの閉成タイミングのグラフ図である。 2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における種々のタンク空気流量について、タンク空気圧力に関しての燃料流量のグラフ図である。
以下の頭辞語の用語解説及びここに用いられる用語の定義が参照用に提供される。
一般
他に特に規定のない限り、全てのバルブの開及び閉のタイミングは膨張ピストンの上死点後である。(ATDCe)のクランク角度で測定されている。
他に特に規定のない限り、全てのバルブの期間はクランク角度(CA)である。
空気タンク(又は空気貯留タンク):圧縮空気の貯留タンクである。
ATDCe:膨張ピストンの上死点後である。
Bar:圧力の単位であり、1 bar = 105 N/m2である。
BMEP:ブレーキ平均有効圧力である。用語「ブレーキ」は、摩擦損失(FMEP)が考慮された後にクランクシャフト(すなわち、出力シャフト)にもたらされる出力を意味する。ブレーキ平均有効圧力(BMEP)は、平均有効圧力(MEP)値に関して表現されるエンジンのブレーキトルク出力である。BMEPは、エンジン排気量で除したブレーキトルクに等しい。これは摩擦による損失後に取られる性能パラメーターである。従って、BMEP=IMEP-摩擦である。この場合、摩擦はまた、通常、摩擦平均有効圧力(すなわち、FMEP)として知られているMEP値に関して表現されている。
コンプレッサー:分割サイクルエンジンの圧縮シリンダー及びそれに関連する圧縮ピストンである。
エキスパンダー:分割サイクルエンジンの膨張シリンダー及びその関連する膨張ピストンである。
FMEP:摩擦平均有効圧力である。
g/s:秒当りグラムである。
IMEP:図示平均有効圧力である。用語「図示」は、摩擦損失(FMEP)が考慮される前にピストンの頂面にもたらされる出力を意味する。
入口(又は吸入):入口バルブである。また、一般に、吸入バルブと称される。
入口空気(又は吸入空気):吸入(又は入口)ストロークで圧縮シリンダーに吸入される空気である。
入口バルブ(又は吸入バルブ):圧縮シリンダーに吸入されるガスの吸入を制御するバルブである。
RPM:1分間当りの回転数である。
タンクバルブ:Xovr通路を圧縮空気貯留タンクに連結しているバルブである。
バルブ期間:バルブの開成の始まりとバルブの閉成の終わりとの間のクランク角度区間である。
VVA:可変バルブ作動である。バルブのリフト曲線の形状又はタイミングを変更するべく作動可能な機構又は方法である。
Xoyr(又はXover)バルブ、通路、又はポート:圧縮及び膨張シリンダーを連結し、圧縮シリンダーから膨張シリンダーへガスを流すクロスオーバーバルブ、通路、及び/又はポートである。
XoyrC(又はXoverC)バルブ:Xovr通路のコンプレッサー端部におけるバルブである。
XoyrE(又はXoverE)バルブ:クロスオーバー(Xovr)通路のエキスパンダー端部におけるバルブである。
図1を参照するに、模範的分割サイクル空気ハイブリッドエンジンが概略的に符号10で示されている。当該分割サイクル空気ハイブリッドエンジン10は、従来のエンジンの2つの隣り合うシリンダーを1つの圧縮シリンダー12及び1つの膨張シリンダー14の組合せに置き換えている。シリンダーヘッド33が、シリンダーを覆いそしてシールすべく膨張シリンダー12及び圧縮シリンダー14の開口端上に典型的に配置されている。
オットーサイクルの4つのストロークは、圧縮シリンダー12がその関連する圧縮ピストン20と共に吸入(又は入口)及び圧縮ストロークを実行し、そして膨張シリンダー14がその関連する膨張ピストン30と共に膨張(又は動力)及び排気ストロークを実行するように、2つのシリンダー12及び14に亘って「分割」されている。それ故に、オットーサイクルは、クランクシャフト軸17の回りにクランクシャフト16が1回転(360度CA)すると、これらの2つのシリンダー12、14内で完成される。
吸入ストローク中に、吸入(又は入口)空気はシリンダーヘッド33に配置されている吸入ポート19を介して圧縮シリンダー12内に吸い込まれる。内開きの(シリンダーの内方にピストンに向かって開く)ポペット吸入(又は入口)バルブ18が、吸入ポート19と圧縮シリンダー12との間の流体の連通を制御する。
圧縮ストローク中に、圧縮ピストン20は空気充填物を圧縮し、そして該空気充填物を典型的にはシリンダーヘッド33に配置されているクロスオーバー通路(又はポート)22に押し出す。このことは、圧縮シリンダー12及び圧縮ピストン20が膨張シリンダー14に対して吸入通路として作用するクロスオーバー通路22への高圧ガス源であることを意味する。ある実施形態においては、2つ以上のクロスオーバー通路22が圧縮シリンダー12及び膨張シリンダー14を互いに連結している。
分割サイクルエンジン10(及び一般に分割サイクルエンジン)の圧縮シリンダー12の幾何学的な(すなわち、容積的な)圧縮比は、ここで一般に分割サイクルエンジンの「圧縮比」と称される。分割サイクルエンジン10(及び一般に分割サイクルエンジン)の膨張シリンダー14の幾何学的な(すなわち、容積的な)圧縮比は、ここで一般に分割サイクルエンジンの「膨張比」称される。シリンダーの当該幾何学的な圧縮比は、前記ピストンがその上死点(TDC)位置のときにシリンダー内に囲われた容積(すなわち、クリアランス容積)に対する、シリンダー内で往復するピストンがその下死点(BDC)位置のときに(全てのリセスを含んで)シリンダー内に囲われた(すなわち、捕捉された)容積の比として、この技術分野において周知である。特に、分割サイクルエンジンのために、ここに定義されるように、圧縮シリンダーの圧縮比は当該XovrCバルブが閉じられるときに決定される。また、特に、分割サイクルエンジンのために、ここに定義されるように、膨張シリンダーの膨張比は当該XovrEバルブが閉じられるときに決定される。
圧縮シリンダー12内での極めて高い圧縮比(例えば、20対1、30対1、40対1又はそれ以上)のせいで、クロスオーバー通路入口25において、外開きの(シリンダーから離れて外方に開く)ポペットクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)24が圧縮シリンダー12からクロスオーバー通路22への流れを制御するために用いられている。膨張シリンダー14内での極めて高い膨張比(例えば、20対1、30対1、40対1又はそれ以上)のせいで、クロスオーバー通路22の出口27において、外開きのポペットクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)26がクロスオーバー通路22から膨張シリンダー14への流れを制御している。XovrC及びXovrEバルブ24、26の作動速度及び位相付けは、オットーサイクルの4つのストロークの全ての間にクロスオーバー通路22の圧力を高い最小圧力(典型的には全負荷時に20bar以上)に維持するようにタイミング付けられている。
少なくとも1つの燃料噴射器28が、クロスオーバー通路22の出口端において、膨張ピストン30がその上死点位置に到達する直前に起こる当該XovrEバルブ26の開きに対応させて、加圧された空気内に燃料を噴射する。空気/燃料の充填物は、膨張ピストン30がその上死点位置に近付いたとき、膨張シリンダー14に入る。ピストン30がその上死点位置から下降し始め、当該XovrEバルブ26がまだ開いている間に、シリンダー14内に突出している点火栓先端39を含んでいる点火栓32が点火され、点火栓先端39の周りの領域で燃焼を開始する。燃焼は、膨張ピストンがその上死点(TDC)位置通過後1及び30度CAの間にある間に開始されてもよい。より好ましくは、燃焼は膨張ピストンがその上死点(TDC)位置通過後5及び25度CAの間にある間に開始されてもよい。最も好ましくは、燃焼は膨張ピストンがその上死点(TDC)位置通過後10及び20度CAの間にある間に開始されてもよい。加えて、燃焼は、他の点火装置及び/又は方法によって、例えば、グロープラグ、マイクロ波点火装置、又は圧縮着火方法によって開始されてもよい。
排気ストロークの間に、排気ガスはシリンダーヘッド33に配置されている排気ポート35を介して膨張シリンダー14の外に送出される。排気ポート35の入口31に配置されている内開きのポペット排気バルブ34は、膨張シリンダー14と排気ポート35との間の流体の連通を制御する。排気バルブ34及び排気ポート35はクロスオーバー通路22から分離されている。すなわち、排気バルブ34及び排気ポート35はクロスオーバー通路22に接触せず、すなわち、クロスオーバー通路22内に配置されていない。
分割サイクルエンジンのコンセプトによれば、圧縮シリンダー12及び膨張シリンダー14の幾何学的なエンジンパラメータ(すなわち、ボア、ストローク、コネクティングロッド長さ、容積測定の圧縮比、その他)は概ね互いから独立である。例えば、圧縮シリンダー12及び膨張シリンダー14についてのクランクスロー36、38は、それぞれ、異なる半径を有してもよく、そして膨張ピストン30の上死点(TDC)が圧縮ピストン20のTDCの前に起こるように互いから離れて位相付けられてもよい。この独立性は、分割サイクルエンジン10が一般の4ストロークエンジンよりもより高い効率レベル及びより大きなトルクを潜在的に達成すること可能にしている。
分割サイクルエンジン10におけるエンジンパラメータの幾何学的な独立性はまた、前に述べたように、クロスオーバー通路22内に圧力が維持され得る主な理由の一つである。詳しくは、圧縮ピストンがその上死点位置に到達する前に僅かな位相角(典型的には10ないし30の間のクランク角度)だけ膨張ピストン30がその上死点位置に到達するこの位相角は、XovrCバルブ24及びXovrEバルブ26の適切なタイミングと伴って、分割サイクルエンジン10がその圧力/容積サイクルの全4つのストロークの間にクロスオーバー通路22内を高い最小圧力(典型的には、全負荷運転中に絶対圧で20bar以上)に維持することを可能にしている。すなわち、分割サイクルエンジン10は、XovrC及びXovrEバルブの両者が膨張ピストン30がそのTDC位置からそのBDC位置に降下し、そして圧縮ピストン20が同時にそのBDC位置からそのTDC位置に向けて上昇する間のかなりの期間(すなわち、クランクシャフトの回転期間)開くように、XovrCバルブ24及びXovrEバルブ26をタイミング付けて作動可能である。クロスオーバーバルブ24、26の両者が開いている期間(すなわち、クランクシャフトの回転)中、(1)圧縮シリンダー12からクロスオーバー通路22へ、及び(2)クロスオーバー通路22から膨張シリンダー14へほぼ等しい空気質量(マス)が移送される。従って、この期間中、クロスオーバー通路内の圧力は所定の最小圧力(典型的には、全負荷運転中に絶対圧で20、30又は40bar)より低く低下するのが防がれる。さらに、エンジンサイクルの実質的な部分(典型的には、全エンジンサイクルの80%以上)の間、XovrCバルブ24及びXovrEバルブ26の両者は、クロスオーバー通路22内に捕捉されているガスの質量(マス)をほぼ一定のレベルに維持するために、閉じられている。結果として、クロスオーバー通路22内の圧力は、エンジンの圧力/容積サイクルの全4つのストロークの間、所定の最小圧力に維持される。
ここでの目的のため、ほぼ等しいガスの質量(マス)をクロスオーバー通路22へ、又はそれから同時に移送させるために、膨張ピストン30がTDCから降下し、そして圧縮ピストン20がTDCに向けて上昇している間にXovrCバルブ24及びXovrEバルブ26を開く方法が、ここでガス移送のプッシュプル方法と称される。分割サイクルエンジン10のクロスオーバー通路22内の圧力が、エンジンが全負荷で運転しているとき、エンジンのサイクルの全4つのストロークの間に典型的には、20bar以上に維持されるのを可能にしているのがプッシュプル方法である。
前に述べたように、排気バルブ34は、クロスオーバー通路22から別けられてシリンダーヘッド33の排気ポート35内に配置されている。排気バルブ34がクロスオーバー通路22内に配置されていない、そしてそれ故に、排気ポート35がクロスオーバー通路22と共通部分を共有していないという排気バルブ34の構造的配列は、排気ストロークの間にクロスオーバー通路22内に捕捉されているガスの質量(マス)を維持するためには好ましい。従って、クロスオーバー通路内の圧力を所定の最小圧力以下に低下させるかもしれない大きな周期的な圧力低下が防止される。
XovrEバルブ26は膨張ピストン30がその上死点位置に到達する直前に開く。このとき、膨張シリンダー14内の圧力に対するクロスオーバー通路22内の圧力の圧力比は、クロスオーバー通路内の最小圧力は典型的には絶対圧で20bar以上であり、膨張シリンダー内の圧力は排気ストロークの間に絶対圧で約1ないし2barであるという事実の理由で、高い。換言すると、XovrEバルブ26が開くとき、クロスオーバー通路22内の圧力は実質的に膨張シリンダー14内の圧力よりも(典型的には、20対1のオーダーで)高い。この高い圧力比は、空気及び/又は燃料充填物の初期流れが高速度で膨張シリンダー14内に流れるのを生じさせる。これらの高速流れは音速に到達し、音速流と称される。この音速流は分割サイクルエンジン10にとって特に有利である。というのも、それは、膨張ピストン30がその上死点位置から降下している間に着火が開始されたとしても、分割サイクルエンジン10が高い燃焼圧力を維持することを可能にする急速燃焼事象を生じさせるからである。
当該分割サイクル空気ハイブリッドエンジン10はまた、空気貯留器(タンク)バルブ42によってクロスオーバー通路22に作用可能に連結されている空気貯留器(タンク)40を含んでいる。2つ以上のクロスオーバー通路22を備える実施形態は、クロスオーバー通路22の各々に共通の空気貯留器40に連結させるタンクバルブ42を含んでもよく、又は代わりに、各クロスオーバー通路22が別々の空気貯留器40に作用可能に連結してもよい。
タンクバルブ42は、典型的には、クロスオーバー通路22から空気タンク40まで延在する空気貯留器(タンク)ポート44に配置されている。当該空気タンクポート44は、第1の空気貯留器(タンク)ポート区分46及び第2の空気貯留器(タンク)ポート区分48に分けられている。第1の空気タンクポート区分46は空気タンクバルブ42をクロスオーバー通路22に連結し、そして第2の空気タンクポート区分48は空気タンクバルブ42を空気タンク40に連結している。第1の空気タンクポート区分46の容積は、タンクバルブ42が閉じられているとき、タンクバルブ42をクロスオーバー通路22に連結する追加のポート及びリセスの全ての容積を含む。
当該タンクバルブ42は、適切なバルブ装置又はシステムであってもよい。例えば、当該タンクバルブ42は、種々のバルブ作動装置(例えば、空圧、液圧、カム、電気式など)によって動作される能動バルブであってもよい。加えて、当該タンクバルブ42は、2つ以上の作動装置でもって動作される2つ以上のバルブを備えるタンクバルブシステムを備えてもよい。
空気タンク40は、前述の特許文献3に記載されたように、圧縮空気の形でエネルギーを蓄え、そしてクランクシャフト16に動力を与えるためにその圧縮空気を後で用いるべく利用されている。この潜在的なエネルギーを蓄える機械式の手段は、現在の技術水準に対して多数の潜在的有利性を提供している。例えば、当該分割サイクルエンジン10は、ディーゼルエンジン及び電気ハイブリッドシステムのような市場における他の技術に関して、比較的低い製造及び廃棄物処理コストで、燃料効率利得及びNOxエミッション低減での多くの有利性を潜在的に提供することができる。
空気タンクバルブ42の開成及び/又は閉成の選択的な制御、そしてそれによる空気タンク40とクロスオーバー通路22との連通の制御によって、当該分割サイクル空気ハイブリッドエンジン10は、エンジン点火燃焼(EF)モード、空気エキスパンダー(AE)モード、空気圧縮機(AC)モード、空気エキスパンダー及び点火燃焼(AEF)モード、及び点火燃焼及び充填(FC)モードにおいて作動可能である。当該EFモードは、上述のように空気タンク40の使用無しでエンジンが作動する非ハイブリッドモードである。当該AC及びFCモードは、エネルギー貯蔵モードである。当該ACモードは、制動中のエンジンを含み、車両の運動学的エネルギーを利用することによるような、膨張シリンダー14内で起こる燃焼を伴わずに(すなわち、燃料の費消無く)圧縮空気が空気タンク40に蓄えられる空気ハイブリッド運転モードである。
当該FCモードは、燃焼中に膨張シリンダーの膨張ストロークを動力付けるのに必要であるよりも多くの空気を圧縮ピストンが吸入する(すなわち、コンプレサーがエキスパンダーを動力付けるのに必要とされる空気よりも多くを吸入する)空気ハイブリッド運転モードである。燃焼のためには必要でない過剰の圧縮空気が、典型的には、エンジン全負荷より小さい運転状態(例えば、エンジンのアイドル、定速度での車両の惰航)のときに、空気タンク40に蓄えられる。当該FCモードにおける圧縮空気の貯蔵は、追加の負の仕事がコンプレサーによって実行されることが要求されるという、エネルギーコスト(ペナルティ)を有している。それ故に、その後になって圧縮空気が用いられる(すなわち、FCモードの間に過剰の空気を蓄えるのに必要とされる負の仕事よりも大きな正の仕事を生み出すべく、エキスパンダーで圧縮空気を利用する)ときに、正味の利得を有するのが望ましい。
当該AE及びAFモードは、貯蔵されたエネルギーの使用モードである。当該AEモードは、空気タンク40に貯蔵された圧縮空気が膨張シリンダー14内で起こる燃焼を伴わずに(すなわち、燃料の費消無く)、膨張ピストン30を駆動するために用いられる空気ハイブリッド運転モードである。当該AEFモードは、空気タンク40に貯蔵された圧縮空気が膨張シリンダー14内での燃焼のために利用される空気ハイブリッド運転モードである。
当該FCモードでは、圧縮ピストン20は、当該圧縮ピストンが膨張シリンダー14で用いるための入口空気を吸入して圧縮する、その圧縮モードで作動する。膨張ピストン30は、膨張ストロークの始まりにおいて、圧縮空気が燃料と共に当該膨張シリンダー14に導入され、当該膨張ピストンの同じ膨張ストロークで、着火され、燃焼され、そして膨張され、クランクシャフト16に動力を伝達し、そして燃焼生成物が排気ストロークで排出される、その動力モードで作動する。当該FCモードは、圧縮及び膨張が圧縮シリンダー12と当該膨張シリンダー14との間で分離されているので、可能にされている。当該膨張シリンダー14は、車両の負荷よりも高い負荷で運転されてもよい。当該過剰の負荷は、膨張シリンダー14が車両に動力を与えるのに必要とするより多くの空気を圧縮する圧縮シリンダー12によって吸収される。過剰の(又は必要以上の)充填空気は空気タンク40を充填させるべく流用される。
重要なことに、当該エンジン10が当該FCモードで作動している間は、クランクシャフト16の各単一の回転の間に当該XovrEバルブ26が実質的に閉じられるまで、空気タンクバルブ42は閉じられて保たれる。従って、当該膨張シリンダー14は、空気タンク40が圧縮空気で充填される前に、圧縮空気で充填される。かくて、当該クランクシャフト16の単一の回転中に、当該膨張シリンダー14及び空気タンク40は直列的に(すなわち、並列的な充填順序である同時にではなく、むしろ順々に)充填される。当該クランクシャフト16の単一の回転中に圧縮シリンダー12によって提供される圧縮空気の充填物は、それにより膨張シリンダー14と空気タンク40とに分配される。
好ましくは、空気タンクバルブ42は、XovrCバルブ24が開くときの+又は−5度CA内から(すなわち、当該XovrCバルブが実質的に開かれるときから)XovrEバルブ26が閉じるときの+又は−5度CA内まで(すなわち、当該XovrEバルブが実質的に閉じられるときまで)、少なくとも閉じられたまま残っている。従って、空気タンクバルブ42は、圧縮空気充填物がXovrCバルブ24を介してクロスオーバー通路22に入り始めるとき(又はCA度の位置)から、圧縮空気の充填物がXovrEバルブ26を介して膨張シリンダー14に入るのを停止するときまで、実質的に閉じられており、これにより空気タンク40が膨張シリンダーより前に充填されるのを防止している。模範的な実施形態においては、図6及び9に、それぞれ、示されるように、XovrCバルブ24がおよそ-23及び-10CA度ATDCeの間のクランクシャフト位置(バルブタイミング)で開かれ、そしてXovrEバルブ26がおよそ11及び23CA度ATDCeの間のバルブタイミングで閉じられてもよい。
当該エンジン10の全ての運転状態において、空気タンクバルブ42はXovrEバルブ26が閉じた後でのみ開かれる。例えば、空気タンクバルブ42は、XovrEバルブが閉じた後のおよそ5CA度以上である位置で開かれてもよい。好ましくは、空気タンクバルブ42は、XovrEバルブ26が閉じた後の5ないし20CA度の範囲内の位置で開かれてもよい。より好ましくは、空気タンクバルブ42は、XovrEバルブが閉じた後の10度CA以下のタイミングで開かれてもよい。空気タンクバルブ42はその後、25CA度以上のバルブ期間に亘り開かれて保たれてもよい。好ましくは、空気タンクバルブ42は、50CA度以上のバルブ期間に亘り開かれて保たれてもよい。より好ましくは、空気タンクバルブ42は、空気タンク40が圧縮空気で充填されている、25ないし150CA度の範囲内で開かれて保たれてもよい。
圧縮ピストン20の吸入ストロークで始まり、膨張ピストン30の排気ストロークで終わる当該FCモードにおいてのクランクシャフトの完全な1回転の間に、当該XovrCバルブ24、当該XovrEバルブ26、及び空気タンクバルブ42は、典型的には、以下の開成及び閉成の順序を有している。第一に、当該XovrCバルブ24が開き、その後当該XovrEバルブ26が開く。クロスオーバー通路22はそれにより圧縮シリンダー12からの圧縮空気でもって加圧され、そして圧縮空気が当該膨張シリンダー14に移送される。
典型的には、次に、当該XovrCバルブ24が閉じ、当該XovrEバルブ26の閉じによって引き継がれる。しかしながら、あるエンジンの運転状態の下では、当該XovrEバルブ26が当該XovrCバルブ24の閉じる前に閉じてもよい。いずれの場合にも、それにより、過剰な圧縮空気のある量が、閉じたXovrC及びXovrEバルブ24、26の間のクロスオーバー通路22内に捕捉される。クロスオーバー通路22は、クロスオーバー通路内の圧力が空気タンク40内の圧力よりも大きくなるように、過剰に加圧される。次に、空気タンクバルブ42が開き、その後に閉じ、クロスオーバー通路と空気タンクとの圧力差のせいで、クロスオーバー通路22内の過剰の圧縮空気が空気タンク40内に流れるのを許容する。
しかしながら、いくらかのエンジン運転条件(例えば、エンジン速度、エンジン負荷、空気タンク圧力、その他)では、空気タンクバルブ42が、XovrEバルブ26が閉じた後で、しかしXovrCバルブ24が閉じる僅か前に開いてもよい。この場合、バルブの開成及び閉成の続いて起こる順番は、XovrCバルブ24の開成、XovrEバルブ26の開成、XovrEバルブ26の閉成、空気タンクバルブ42の開成、XovrCバルブの24閉成、及び空気タンクバルブ42の閉成である。このバルブタイミングの順序の下では、XovrCバルブ24及び空気タンクバルブ42が短期間同時に開き、圧縮シリンダー12と空気タンク40との間での流体の連通(すなわち、開放流体流れ経路)をもたらす。
加えて、当該FCモードでは、エンジン負荷が、燃焼のために要求される膨張シリンダーへの必要な空気量を計量すべくXovrEバルブの閉成のタイミングを変えることにより制御され得る。上に述べたように、模範的実施形態においては、当該XovrEバルブ26は図9に示されるように、およそ11及び23CA度ATDCeの間のバルブタイミングで閉じられてもよい。従って、当該XovrEバルブ26のみが当該膨張シリンダー14内に要求される負荷のために必要とされる圧縮充填空気量(所望の充填量が当該膨張シリンダーに入ったときに効果的に閉じることにより)を入れる。クロスオーバー通路22に残った過剰な充填空気は、上述のように、空気タンク40内に蓄えられる。当該クランクシャフト16の単一の回転中に空気タンク40に配送される圧縮空気の量(そして、従って、空気タンクへの空気流量)は、圧縮シリンダー12に吸い込まれる充填空気の全体の量を効果的に変える、吸入バルブ18の閉成のタイミングを変えることによって制御され得る。模範的実施形態においては、吸入バルブ18は図2に示されるように、およそ103及び140CA度ATDCeの間のバルブタイミングで閉じられる。
図2ないし11は、2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷における、空気タンク圧力及び空気タンク充填流量の範囲に亘って、上述の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン10のFCモードでの模範的実施形態を、グラフを用いて図解している。図2において、吸入バルブ18は103.0から140.0CA度ATDCeの範囲内でのタイミングで閉じられている。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、、吸入バルブ18はおよそ122CA度ATDCeで閉じられる。図3において、吸入バルブ18は56.5及び93.5CA度の間のバルブ期間を有している。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、は、吸入バルブ期間がおよそ75CA度である。
図4において、当該XovrCバルブ24は36.4及び61.8CA度の間のバルブ期間を有している。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、XovrCバルブ期間はおよそ45CA度である。図5において、当該XovrEバルブ26は14.2及び30.8CA度の間のバルブ期間を有している。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、XovrEバルブ期間はおよそ26CA度である。
図6及び7は、XovrCバルブ24の開及び閉のタイミングを、それぞれ、示している。当該XovrCバルブ24は、-23.20から-9.79CA度ATDCeの範囲内のタイミングで開き、かつ24.6から38.6CA度ATDCeの範囲内のタイミングで閉じる。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、当該XovrCバルブ24は、およそ-17.5CA度ATDCeで開き、かつおよそ28CA度ATDCeで閉じる。
図8及び9は、XovrEバルブ26の開及び閉のタイミングを、それぞれ、示している。当該XovrEバルブ26は、-1.62から14.00CA度ATDCeの範囲内のタイミングで開き、かつ11.40から23.20CA度ATDCeの範囲内のタイミングで閉じる。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、当該XovrEバルブ26はおよそ-7.3CA度ATDCeで開き、かつおよそ19CA度ATDCeで閉じる。
図10及び11は、空気タンクバルブ42の開及び閉のタイミングを、それぞれ、示している。空気タンクバルブ42は、21.4から33.2CA度ATDCeの範囲内のタイミングで開き、かつ131.4から143.2CA度ATDCeの範囲内のタイミングで閉じる。例えば、10barのタンク圧力及び3g/sの空気タンク流量において、空気タンクバルブ42はおよそ29CA度ATDCeで開き、かつおよそ139CA度ATDCeで閉じる。
図9ないし11から分かるように、空気タンク圧力及び空気タンク充填流量の範囲に亘り、この模範的な実施形態においては、空気タンクバルブ42は、XovrEバルブ26が閉じた後の10CA度で開き、そして空気タンクバルブはそれが開いた後の110CA度(すなわち、空気タンクバルブ期間が実質的に110CA度に固定されている)で閉じる。
上記模範的実施形態は、単一のエンジン速度及び負荷(すなわち、2barのIMEPで2000rpm)におけるFCモードについてのバルブタイミング順序を図解している。しかしながら、当業者は、FCモードはエンジン10の全体の速度及び負荷範囲に亘って作動可能であることが分かるであろう。すなわち、当該FCモードは、エンジン10の無負荷から全負荷、及びアイドル速度から定格(最高)速度まで作動可能である。
図12は、模範的な2000rpmのエンジン速度及びIMEP2barのエンジン負荷のFCモードで、(その後に空気タンク40を充填するために)圧縮シリンダー12内で過剰の空気を圧縮するための燃料(すなわち、エネルギー)のペナルティを、グラフを用いて図解している。グラフの底部の水平なライン(0g/sの空気タンク充填率)は、空気タンク40が充填されていない(基本的に、エンジン10のEF(又はNF)モード)のときの燃料流量(kg/hr)を表わしている。これは、ゼロ燃料ペナルティの基準ラインであり、これからFCモードにおける燃料ペナルティが計算される。水平な基準ラインの上の3つのラインは、1g/s、2g/s、及び3g/sの空気タンクの充填率のFCモードでの燃料費消を表わしている。当該FCモードでの燃料費消は、もちろん、EFモードでの燃料費消よりも大きくなる。当該FCモードでの燃料ペナルティは、特定の空気タンク圧力及び空気タンク充填率における燃料費消から基準ラインの燃料費消を減ずることによって計算される。例えば、5barの空気タンク圧力、及び2g/sの空気タンク充填率において、燃料ペナルティ(空気タンクを充填するために費やされた余分なエネルギー)は、およそ0.09kg/hr(5bar及び2g/sにおける1.11kg/hrマイナスの1.02kg/hrの基準ライン費消)である。もう一つの例として、10barの空気タンク圧力及び3g/sの空気タンク充填率において、燃料ペナルティは、およそ0.35kg/hr(1.37kg/hrマイナスの1.02kg/hr)である。
本発明が特定の実施形態を参照して説明されたが、説明された発明のコンセプトの趣旨及び範囲内で多数の変更がなされ得ることが理解されるべきである。従って、本発明は説明された実施形態に限定されず、それは以下の請求項の語句によって定められる全部の範囲を有することが意図されている。

Claims (19)

  1. クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフト、
    エンジンの単一のサイクル中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された圧縮ピストン、
    当該圧縮シリンダー内への空気の流れを選択的に制御する吸入バルブ、
    エンジン前記と同一サイクル中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された膨張ピストン、
    圧縮及び膨張シリンダーを連結するクロスオーバー通路であって、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含むクロスオーバー通路、
    クロスオーバー通路に作用可能に連結され、圧縮シリンダーからの圧縮空気を蓄え、及び圧縮空気を膨張シリンダーに配送すべく選択的に作動可能である空気貯留器、及び
    当該空気貯留器への、及びそれからの空気の流れを選択的に制御する空気貯留器バルブ、を備える、分割サイクル空気ハイブリッドエンジンであって、
    当該エンジンは点火燃焼及び充填(FC)モードで運転可能であり、当該FCモードにおいて、空気貯留器が圧縮空気で充填される前に膨張シリンダーが圧縮空気で充填されて、当該膨張シリンダー及び当該空気貯留器が直列的に充填されるように、当該XovrEバルブが当該エンジン当該単一のサイクル中に実質的に閉じられるまで、当該空気貯留器バルブは閉じられて保たれていることを特徴とする分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  2. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、XovrCバルブが開いたときの+又は−5度CA内からXovrCバルブが閉じたときの+又は−5度CA内までの範囲内で、閉じられたままで残ることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  3. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、当該XovrEバルブが閉じた後の5度CA以上の位置で開くことを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  4. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、当該XovrEバルブが閉じた後の5ないし20度CAの範囲内の位置で開くことを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  5. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、当該XovrEバルブが閉じた後の10度CA以下の位置で開くことを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  6. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、25度CA以上の期間において開かれて保たれていることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  7. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、50度CA以上の期間において開かれて保たれていることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  8. 当該FCモードでは、当該空気貯留器バルブが、25度CAないし150度CAの範囲内の期間において開かれて保たれていることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  9. 当該FCモードでは、エンジン負荷が、XovrEバルブの閉成のタイミングを制御することによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  10. 当該FCモードでは、当該空気貯留器に配送される過剰な圧縮空気の量が、吸入バルブの閉じタイミングを制御することによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  11. 当該FCモードでは、圧縮ピストンが膨張シリンダー内で用いるための入口空気を吸入して圧縮し、そして膨張ストロークの始まりにおいて、圧縮空気が当該膨張シリンダーに燃料と共に導入され、着火され、燃焼され、そして当該膨張ピストンの同じ膨張ストロークで膨張され、動力を当該クランクシャフトに伝達し、及び燃焼生成物が排気ストロークで排出されることを特徴とする請求項1に記載の分割サイクル空気ハイブリッドエンジン。
  12. クランクシャフト軸回りに回転可能なクランクシャフト、
    エンジンの単一のサイクル中の吸入ストローク及び圧縮ストロークを通して往復するように圧縮シリンダー内に摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された圧縮ピストン、
    当該圧縮シリンダー内への空気の流れを選択的に制御する吸入バルブ、
    エンジン前記と同じサイクル中の膨張ストローク及び排気ストロークを通して往復するように膨張シリンダーに摺動可能に収容されると共に、当該クランクシャフトに作用可能に連結された膨張ピストン、
    圧縮及び膨張シリンダーを相互に連結するクロスオーバー通路であって、両者間に圧力室を画成するクロスオーバー圧縮バルブ(XovrC)及びクロスオーバー膨張バルブ(XovrE)を含むクロスオーバー通路、
    クロスオーバー通路に作用可能に連結され、圧縮シリンダーからの圧縮空気を蓄え、及び圧縮空気を膨張シリンダーに配送すべく選択的に作動可能である空気貯留器、及び
    当該空気貯留器への及びそれからの空気流れを選択的に制御する空気貯留器バルブ、を備える分割サイクル空気ハイブリッドエンジンを運転する方法であって、
    当該エンジンは点火燃焼及び充填(FC)モードで運転可能であり、
    圧縮ピストンで入口空気を吸入しそして圧縮し、
    膨張ストロークの始まりにおいて、圧縮シリンダーからの圧縮空気を当該膨張シリンダーへ燃料と共に導入し、当該燃料は、着火され、燃焼され、そして膨張ピストンの同じ膨張ストロークで膨張され、動力をクランクシャフトに伝達し、そして燃焼生成物は排気ストロークで排出され、及び
    空気貯留器が圧縮空気で充填される前に膨張シリンダーが圧縮空気で充填されて、当該膨張シリンダー及び当該空気貯留器が直列的に充填されるように、当該エンジンの当該単一のサイクル中にXovrEバルブが実質的に閉じられるまで、当該空気貯留器バルブを閉じて保つステップを含むことを特徴とする方法。
  13. XovrCバルブが開いたときの+又は−5度CA内からXovrCバルブが閉じたときの+又は−5度CA内までの範囲内で当該空気貯留器バルブを閉じて保つステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 当該XovrEバルブが閉じた後の5度CA以上の位置で当該空気貯留器バルブを開くステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  15. 当該XovrEバルブが閉じた後の5ないし20度CAの範囲内の位置で当該空気貯留器バルブを開くステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  16. 当該XovrEバルブが閉じた後の10度CA以下の位置で当該空気貯留器バルブを開くステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  17. 25度CA以上の期間について当該空気貯留器バルブを開いて保つステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  18. XovrEバルブの閉成のタイミングを変えることによってエンジン負荷を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  19. 吸入バルブの閉じタイミングを変えることによって当該空気貯留器に配送される過剰な圧縮空気の量を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
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