JP4818165B2 - 内燃機関の過給装置 - Google Patents

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本発明は、内燃機関で使用される過給装置に関する。
排気によりタービンを回転させて吸気側のコンプレッサを動作させる方式のターボ過給器では、低速回転時の過給圧不足や加速レスポンスの改善を図ることがいまや常識である。このような技術として今までに、ターボ過給器と並列にした小型のターボ過給器で補助する過給装置(特許文献1)、ターボ過給器と直列にした渦流過給器で補助する過給装置(特許文献2)、ターボ過給器と並列/直列にした機械式過給器(スーパーチャージャ)で補助する過給装置(特許文献3)、さらには、ターボ過給器と並列/直列にした電動過給器(電動コンプレッサ)で補助する過給装置(特許文献4,5)が知られている。
特開平6−146908号公報 特開2000−54850号公報 特開平9−195781号公報 実開平5−19528号公報 特開2004−278430号公報
上記従来技術の補助過給器は、排気、クランク軸、あるいは電動機でコンプレッサを回して過給圧を生み出すものであるから、いずれも、コンプレッサのインペラが回り始めて過給圧を生み出せる回転に達するまでのタイムラグが存在する。したがって、急な加減速を繰り返す車両のエンジンにおいて十分な補助機能を得られるとは言い難い。
また、特許文献1〜3のように、小型ターボ過給器や機械式過給器を補助に使用する過給装置では、排気やクランク軸を駆動源としていることから、内燃機関の始動時に機能させることができない。このため、特にディーゼルエンジンの始動時に気筒の吸気充填効率を向上させてスモークの抑制を図ると言った目的に適用することができない。
すなわち、従来技術の過給装置では、補助過給器にも、インペラを回転させて過給圧を生むコンプレッサを使用しているため、インペラの慣性に起因したタイムラグが存在し、また、内燃機関の始動時に機能しないという改善点が存在する。本発明はこの点に着目したもので、タイムラグを解消し、始動時でも過給機能を遂行可能な内燃機関の過給装置を提供するものである。
本発明に係る内燃機関の過給装置は、吸気通路に接続した過給気通路と、所定の圧力の過給気を貯蔵し、該過給気を前記過給気通路へ送出する過給気タンクと、前記過給気通路に設けられ、機関運転状態に応じて開閉する過給弁と、前記過給気通路を接続した部位よりも上流の前記吸気通路に設けられて吸気の逆流を防止する逆流防止弁と、を含んで構成されることを特徴とする。
この過給装置における過給気タンクは、所定の圧力の空気を貯蔵する主タンクと、該主タンク内から送り出された空気を過給圧へ減圧する調圧弁と、該調圧弁を通して減圧した過給気を貯蔵し、該過給気を前記過給気通路へ送出する副タンクと、を含んで構成されることを特徴とする。
この過給気タンクにおける調圧弁については、圧力センサにより計測される前記副タンク内の圧力に応じて開度を制御することができる。さらに、その調圧弁の開度は、予め決められた過給気圧力の設定値と前記圧力センサにより計測される圧力との差圧に基づいて調圧弁開度マップから開度目標値を取得して制御することができる。
本発明の過給装置によれば、予め過給圧とした過給気を過給気タンクに溜めておいて、該過給気タンクから、内燃機関の運転状態に応じてインテークマニホールド等の吸気通路へ過給気を提供する仕組みとしている。したがって、過給弁の開閉だけで過給を行え、インペラの慣性に起因したタイムラグは存在せず、従来に比べ格段にレスポンスに優れる。また、過給気タンクに過給気を貯蔵しているので、機関の運転に関係なく過給することができることになり、内燃機関始動時でも十分な過給気を送り込むことができる。
したがって本発明によれば、加速レスポンスが向上すると共に、安定した過給によるスワールの安定発生で燃焼効率も向上する。特にディーゼルエンジンにおいては、気筒への空気充填効率向上によって始動時のスモークを抑制するという効果を得ることもできる。
また、過給気タンクについて、より高圧の主タンクから調圧弁を通し減圧して副タンクへ過給気を供給する構成とすることにより、副タンクの過給気が減ると(タンク内圧力が低下すると)、その分を主タンクから迅速に補って副タンク内の過給気量を安定に保つことができ、過給気の安定供給という点で優れる。
また、本発明の過給装置は、排気ターボや機械式等の過給器を併設することが可能で、この場合には、その併設してある過給器の過給タイムラグを解消することができ、過給運転を従来よりも安定させることができる。
図1に、本発明に係る過給装置の構成例について、ディーゼルエンジンを例にして示してある。
当該エンジン1には、吸気通路1aに介装されたコンプレッサ2a及び排気通路1bに介装されたタービン2bを含んで構成されるターボ過給器2が備えられている。また、吸気通路1aのインテークマニホールドには過給気通路3が接続され、該過給気通路3に、ソレノイドバルブの過給弁4を介して過給気タンク5が接続されている。該過給気タンク5は、所定の圧力、すなわちエンジン1に設定された過給圧の過給気を貯蔵する手段で、その貯蔵している過給気を過給気通路3へ送出する。
過給気タンク5は、エアコンプレッサ6により圧縮された所定圧力の空気を溜める主タンク7と、該主タンク7内の空気を減圧する電動バルブの調圧弁8と、該調圧弁8により過給圧まで減圧された過給気を貯蔵し、該貯蔵した過給気を過給気通路3へ送出する副タンク9と、を含んで構成されている。主タンク7は、たとえば一般的な過給圧である約3×10Pa(3kgf/cm)よりも高圧の約10×10〜約20×10Pa(10〜20kgf/cm)とした所定圧力の空気を貯蔵する。そして、この主タンク7に蓄えられた高圧空気は、調圧弁8により過給圧(約3×10Pa)へ減圧されて副タンク9に溜められる。したがって、副タンク9には、所定の過給圧の過給気が貯蔵され、ここから過給弁4を介して当該過給圧の過給気が過給気通路3へ送り出される。
省略が可能であれば、調圧弁8及び副タンク9を省いて、過給圧の過給気を貯蔵する主タンク7だけの構成とすることも可能である。ただし、過給気の安定供給という点からすると、より大容量の主タンク7に高圧の空気をストックしておいて、副タンク9の過給気が減ると(圧力が下がると)迅速にその分を補う構成とした方が好ましい。また、エアコンプレッサ6に関しては、クランク軸出力を利用して駆動するものや、電動のものを使用することができるが、トラクタ等の大型車両であれば、リザーバタンクから高圧空気を供給できるので、この場合は省略することも可能である。
本実施形態の過給装置は、過給気通路3を接続した部位よりも上流の吸気通路1aに介装されたコンプレッサ2aを有するターボ過給器2を含んでいるので、当該ターボ過給器2によっても過給が行われる。しかし、前述のようにターボ過給器2にはタイムラグが存在するので、過給気タンク5から供給される過給気の圧力の方が優って吸気通路1aを吸気が逆流する可能性がある。これを防止するために、ターボ過給器2のコンプレッサ2aと過給気通路3との間の吸気通路1aに、ソレノイドバルブの逆流防止弁10をさらに設けている。
主タンク7、副タンク9、そして過給気通路3を接続した吸気通路1a内には、それぞれ圧力センサ7p,9p,1pが設けられている。過給装置のコントローラ20は、圧力センサ7pにより計測される主タンク内圧力に応じてエアコンプレッサ6の動作を制御し、また、圧力センサ9pにより計測される副タンク内圧力に応じて調圧弁8の開度を制御する。さらに、コントローラ20は、エンジンECU30との通信で得られる情報、具体的には目標過給圧、回転速度、燃料噴射量と、圧力センサ1pによる吸気通路1a中の吸気圧とを含んだ機関運転状態に応じて、過給弁4及び逆流防止弁10の開閉を制御する。
このようなコントローラ20の構成について、図2にブロック図で示してある。図示の例のコントローラ20は、まず、エンジンECU30からインタフェース部21を介して目標過給圧、回転速度、燃料噴射量の情報を受信し、また、圧力センサ1p,7p,9pからインタフェース部22を介してセンサ信号を受信する。
そして、インタフェース部21,22から得られる目標過給圧、回転速度、燃料噴射量及び圧力センサ1pによる吸気圧の情報に基づいて、過給弁及び逆流防止弁制御部23がソレノイドバルブ駆動部24を制御し、過給弁4及び逆流防止弁10の開閉を実行する。また、インタフェース部22から得られる圧力センサ9pによる副タンク内圧力の情報に基づいて、副タンク制御部25が電動バルブ駆動部26を制御し、調圧弁8の開度調整を実行する。さらに、インタフェース部22から得られる圧力センサ7pによる主タンク内圧力の情報に基づいて、主タンク制御部27がエアコンプレッサ駆動部28を制御し、エアコンプレッサ6を動作させる。
このコントローラ20により実行される制御フローについて、図3にメインルーチンを示している。
まず、イグニッションキーのオン等で電源が投入されると、初期化を行った後、インタフェース部22を介して圧力センサ1p,7p,9pのセンサ信号を入力し(S1)、インタフェース部22を介してエンジンECU30から情報を入力する(S2)。そして、主タンク制御部27が、圧力センサ7pで計測される主タンク内圧力に応じ、エアコンプレッサ駆動部28によりエアコンプレッサ6を動作させる(S3)。この主タンク内圧力制御のサブルーチンを図4に示している。
主タンク制御部27においては、主タンク内圧力の設定値が所定の幅をもって決められており、計測された主タンク内圧力がその設定範囲に入るようにして、エアコンプレッサ6をヒステリシスをもたせてオンオフ制御する。すなわち、入力された主タンク内圧力をまず設定範囲の上限値と比較し(S10)、上限値以上であればエアコンプレッサ6を停止としてリターンし(S11)、上限値を下回っていれば下限値と比較する(S12)。主タンク内圧力を設定範囲の下限値と比較した結果、下限値を上回っていればそのままリターンし、下限値以下であればエアコンプレッサ6を動作させ(S13)、リターンする。
この主タンク内圧力制御に続けて、副タンク制御部25による副タンク内圧力制御が実行される(S4)。すなわち、副タンク制御部25は、圧力センサ9pによる副タンク内圧力に応じ、電動バルブ駆動部26により調圧弁8の開度を調整する。この副タンク内圧力制御のサブルーチンを図5に示している。
副タンク制御部25においては、副タンク9内に貯蔵する過給気の圧力について予め設定値が決められており、計測された副タンク内圧力がその設定値となるように、調圧弁8の開度を調節する。すなわち、設定値と入力された副タンク内圧力とを減算して差圧を求め(S20)、当該差圧に基づいて調圧弁開度マップから開度目標値を取得する(S21)。そして、得られた開度目標値と合致するように調圧弁8の開度をPID制御により調整し(S22)、リターンする。
この副タンク内圧力制御に続けて、過給弁及び逆流防止弁制御部23による過給弁4と逆流防止弁10との開閉制御が実行される(S5)。すなわち、過給弁及び逆流防止弁制御部23は、現在の機関運転状態を示す目標過給圧、回転速度、燃料噴射量及び圧力センサ1pによる吸気圧に応じ、ソレノイドバルブ駆動部24により過給弁4及び逆流防止弁10を開閉させる。特に本実施形態の制御では、ターボ過給器2が十分な過給気をつくり出せる機関運転状態かどうかを判定し、不十分であれば副タンク9の過給気を使用するように、過給弁4及び逆流防止弁10を制御する。その制御のサブルーチンを図6に示している。
まず最初に過給弁及び逆流防止弁制御部23は、入力された回転速度及び燃料噴射量に基づいて運転状況マップからターボ過給器2の状態を求め(S30)、ターボ過給器2が十分な過給を行えない領域Aにあるかどうか判定する(S31)。領域Aになければ、逆流防止弁10を開とし(S32)、リターンする。一方、領域Aにあれば、逆流防止弁10を閉とし(S33)、圧力センサ1pによる吸気圧と目標過給圧+αとを比較する(S34)。その結果、目標過給圧+α以上であれば過給弁4を閉としてリターンし(S35)、目標過給圧+αを下回っていれば、今度は目標過給圧−αとの比較を行う(S36)。そして、目標過給圧−αを上回っていればそのままリターンし、目標過給圧−α以下であれば、過給弁4を開とし(S37)、リターンする。なお、比較時に用いる+αと−αは、過給弁及び逆流防止弁制御部23に予め設定されている制御幅である。
過給弁及び逆流防止弁を制御した後のコントローラ20は、イグニッションキーのオフを検出し(S6)、キーオフにならなければステップS1から繰り返す。一方、キーオフが検出された場合は、主タンク制御部27がエアコンプレッサ6を停止させ、副タンク制御部25が調圧弁8を全閉とし、過給弁及び逆流防止弁制御部23が過給弁4を閉、逆流防止弁10を開として(S7)、終了する。
以上説明した制御では、並列に設けられたターボ過給器2を優先にした制御としてあるが、過給気タンク5だけで過給気のすべてをまかなえるのであれば、ターボ過給器を省略することも可能で、ターボラグの無いレスポンスに優れた過給装置が提供される。
すなわち、予め過給圧とした過給気を過給気タンク5に溜めておいて、該過給気タンク5から、機関運転状態に応じて吸気通路1aへ過給気を提供する仕組みなので、過給弁4の開閉だけで過給を行え、インペラの慣性に起因したタイムラグは存在せず、従来に比べ格段にレスポンスに優れる。また、過給気タンク5に過給気を貯蔵しているので、エンジン1の始動時でも十分な過給気を送り込むことができる。したがって、加速レスポンスが向上すると共に、安定した過給によるスワールの安定発生で燃焼効率も向上し、特にディーゼルエンジンの場合には、気筒への空気充填効率向上によって始動時のスモークを抑制することができる。
また、上記の実施形態においては、過給弁、調圧弁、逆流防止弁をコントローラにより制御する方式を開示しているが、各弁を機械式(自動式)のものとして、コントローラによる制御を省いた構成とすることも可能である。すなわち、過給弁及び逆流防止弁として逆止弁(チェックバルブ)を用いると共に調圧弁として減圧弁(定圧弁)を使用し、別途制御を不要とした構成である。この場合、吸気通路の圧力が低い機関運転状態にあって、副タンク内圧力に対し吸気通路内圧力が低いと、自動的に過給弁が開いて過給気が供給され、且つ逆流防止弁が閉じて吸気の逆流が防止される。反対に、ターボ過給器等が十分に機能する機関運転状態にあって、吸気通路内圧力が十分に高ければ、過給弁は閉、逆流防止弁は開を維持する。また、過給気が使用されて副タンク内の圧力が下がれば、減圧弁とした調圧弁を通して自動的に主タンクから副タンクへ過給気が供給される。つまり、コントローラによらずとも、機関運転状態応じて各弁が開閉し、過給が実行される。
本発明に係る過給装置の構成を示した内燃機関の概略図。 本発明に係る過給装置におけるコントローラの構成を示したブロック図。 本発明に係る過給装置の制御フローを説明するフローチャート。 図3中の主タンク内圧力制御を説明するサブルーチン。 図3中の副タンク内圧力制御を説明するサブルーチン。 図3中の過給弁及び逆流防止弁制御を説明するサブルーチン。
符号の説明
1 エンジン
1a 吸気通路
1b 排気通路
2 ターボ過給器
3 過給気通路
4 過給弁
5 過給気タンク
6 エアコンプレッサ
7 主タンク
8 調圧弁
9 副タンク
10 逆流防止弁

Claims (3)

  1. 吸気通路に接続した過給気通路と、
    所定の圧力の過給気を貯蔵し、該過給気を前記過給気通路へ送出する過給気タンクと、
    前記過給気通路に設けられ、機関運転状態に応じて開閉する過給弁と、
    前記過給気通路を接続した部位よりも上流の前記吸気通路に設けられて吸気の逆流を防止する逆流防止弁と、
    を含んで構成され
    前記過給気タンクは、
    所定の圧力の空気を貯蔵する主タンクと、
    該主タンク内から送り出された空気を過給圧へ減圧する調圧弁と、
    該調圧弁を通して減圧した過給気を貯蔵し、該過給気を前記過給気通路へ送出する副タンクと、を含んで構成される、
    ことを特徴とする内燃機関の過給装置。
  2. 前記調圧弁は、
    圧力センサにより計測される前記副タンク内の圧力に応じて開度が制御される、
    ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の過給装置。
  3. 前記調圧弁の開度は、
    予め決められた過給気圧力の設定値と前記圧力センサにより計測される圧力との差圧に基づいて調圧弁開度マップから開度目標値を取得して制御される、
    ことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の過給装置。
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