以下、本発明にかかる実施形態を、雰囲気熱処理設備としての連続ガス浸炭設備1に備えられた熱処理炉3に基づいて、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、連続ガス浸炭設備1は、鋼材品である被処理体2をX方向(横方向、略水平方向)に沿った搬送方向Dに搬送しながら被処理体2の熱処理(予熱処理、浸炭処理、拡散処理、降温処理)を行う熱処理炉3と、被処理体2の油焼入れ処理を行う油焼入れ部4とを備えている。
熱処理炉3の炉体5内には、複数の熱処理室として、被処理体2の予熱処理(昇温)を行う予熱室11、浸炭処理を行う浸炭室12、浸炭処理後の拡散処理を行う拡散室13、拡散処理後の降温処理を行う降温室14が、入口側から出口側に向かう搬送方向Dにおいてこの順に並べて設けられている。炉体5の入口側には、被処理体2を連続ガス浸炭設備1の外部から炉体5内(予熱室11)に搬入するための搬入口21、及び、搬入口21を開閉する搬入口扉22が設けられている。炉体5の出口側には、被処理体2を炉体5内(降温室14)から搬出して油焼入れ部4(後述する油槽室142)に搬入するための搬出口25(搬入出口)、及び、搬出口25を開閉する搬出口扉26が設けられている。搬出口扉26には、降温室14側と油焼入れ部4側とを連通させる連通孔26aが設けられている。
炉体5の内部において、予熱室11と浸炭室12の間、浸炭室12と拡散室13の間、拡散室13と降温室14の間には、壁体31、32、33(仕切壁)がそれぞれ備えられている。即ち、炉体5の内部は3つの壁体31、32、33によって4つの熱処理室に仕切られている。各壁体31、32、33には、被処理体2をX方向に通過させる通過口41、42、43がそれぞれ開口されている。各通過口41、42、43は、開閉扉51、52、53によってそれぞれ開閉される。炉体5の下部には、被処理体2を搬送する搬送機構として、複数のローラ55aを備えたローラコンベア55が設けられている。
なお、炉体5は、筐体層61の内面に沿って断熱層62を積層させ、さらに、断熱層62の内面に沿って耐火層63を備えた3層構造になっている。筐体層61は、例えば金属等からなり、断熱層62は、例えばマイクロサーム(日本マイクロサーム社製)等の断熱材によって形成されている。耐火層63は、例えばセラミックファイバー(セラミックファイバーブランケット)等によって形成されている。また、壁体31、32、33は、耐熱性(耐火性)及び断熱性が高い材質で形成することが好ましく、例えば耐火層63と同一の材質、即ち、セラミックファイバーによって形成しても良い。なお、セラミックファイバーは、例えばアルミナとシリカを主成分とする素材を繊維化したものであり、耐熱性及び断熱性が高く、さらに、柔軟かつ軽量で加工性、施工性が良く、安価で入手もしやすい等の特長がある。
図2は、壁体31及び開閉扉51の縦断面図、図3は、壁体31の横断面図を示している。図4は、壁体31及び開閉扉51をX方向(予熱室11側)からみた図、図5は、壁体31をX方向に対して垂直な鉛直面(Y−Z面)によって切断した縦断面図を示している。
図2、図3、図4に示すように、壁体31はY−Z面に沿って設けられている。通過口41は略方形をなし、両側縁部をZ方向(上下方向、略鉛直方向)に向け上縁部及び下縁部をY方向(X方向に対して垂直な水平方向)に向けた状態で、壁体31に開口されている。通過口41の下縁部は、ローラコンベア55のローラ55aとほぼ同じ高さに位置している。
また、図示の例では、壁体31の下部(通過口41の下縁部)に、2本のローラ55aが設けられている。ローラ55aは、X方向において後述する保持溝71(下縁保持溝部71a)を挟んで互いに対向する位置に、それぞれ1本ずつ設けられており、また、長さ方向(回転中心軸)をY方向に向けた状態で、それぞれ壁体31に対して回転可能に備えられている。ローラ55aの上部は、通過口41の底部に露出している。
また、壁体31において、通過口41の開口縁部(両側縁部及び下縁部)には、開閉扉51の縁部(後述する耳部93)を保持する保持溝71が設けられている。通過口41の上縁部には、開閉扉51を通過させる開閉扉挿入出口72が設けられている。さらに、開閉扉挿入出口72(壁体31)の上方には、開閉扉51を収納する開閉扉収納部73が設けられている。
保持溝71は、図5に示すように、通過口41の下縁部に沿って設けられた下縁保持溝部71aと、通過口41の両側縁部にそれぞれ設けられた側縁保持溝部71b、71cを有している。
図6に示すように、下縁保持溝部71aは、通過口41の下縁部から下方に向かって凹状に形成された溝状をなし、Y方向に沿って細長く設けられている。また、Z方向における通過口41の下縁部からの深さはほぼ一定であり、底部(後述する被接触面78)はX−Y面に沿って略水平になっている。さらに、図示の例では、下縁保持溝部71aの底部は、ローラ55aよりも低い位置に設けられている。
図7に示すように、各側縁保持溝部71b、71cは、通過口41の側部から外側に向かって凹状に形成された溝状をなし、また、Y方向における通過口41の側部からの深さが、上方に向かうに従い次第に深くなるように形成されている。つまり、図5に示すように、側縁保持溝部71b、71cの奥部(後述する被接触面78)は、上方に向かうに従い次第にY方向において通過口41の外側に向かうように、即ち、上方に向かうに従い互いに離隔するように、Z方向に対して傾斜した方向に沿って形成されている。
なお、図6及び図7に示すように、保持溝71の開口幅L1(X方向における幅)は、下縁保持溝部71aにおいても側縁保持溝部71b、71cにおいても一定である。開口幅L1は、開閉扉51の厚さ(後述する扉本体91の厚さL2、縁部被覆体92の厚さL2’及び耳部93の厚さL3)や、ローラコンベア55のローラ間隔(隣り合うローラ55aの外周面同士の間の間隔L4)よりも大きい寸法になっている。
また、壁体31は、壁体本体75と、壁体本体75から取り外して交換可能な壁体被覆体76(交換部材)とを備えている。壁体被覆体76は、保持溝71の奥部に備えられており、壁体本体75の内面を覆うように設けられている。この壁体被覆体76には、開閉扉51の縁部(後述する耳部93)が接触させられる。即ち、壁体被覆体76の表面は、開閉扉51の縁部(後述する耳部93の縁部)が接触する被接触面78となっている。
壁体被覆体76は、図示の例ではほぼ一定の厚さ及び一定の幅L1を有する細長い帯状の部材である。なお、壁体被覆体76は、接着剤等を用いずに、保持溝71の奥に沿って嵌め入れるようにして取り付けるだけの構成にしても良い。そうすれば、壁体被覆体76を壁体本体75に対して簡単かつ確実に固定することができ、また、壁体本体75に対する取り付け及び取り外し(即ち、壁体被覆体76の交換作業)を、作業員の手作業によって簡単に行うことができる。
壁体被覆体76の材質としては、断熱性及び耐熱性が高いものを使用することが望ましく、例えば壁体本体75、耐火層63等と同様のもの、即ち、セラミックファイバー等を用いても良い。特に、開閉扉51(耳部93)と接触する被接触面78は、開閉扉51を損傷しないように、ある程度の柔軟性(変形性)を有することが好ましく、かかる観点からも、壁体被覆体76には繊維状のセラミックファイバーを用いることが好適である。
開閉扉挿入出口72(図2、図5参照)は、通過口41の上縁部と開閉扉収納部73との間において、壁体31と炉体5の天井部を上下に貫通するように形成されている。開閉扉挿入出口72の下部開口は、通過口41の上縁部、側縁保持溝部71bの上端部開口、及び、側縁保持溝部71cの上端部開口に連通している。開閉扉挿入出口72の上部開口は、開閉扉収納部73(後述する収納室82)に連通している。
開閉扉収納部73(図2、図5参照)は、収納部筐体81の内部に収納室82が形成された構造になっている。収納室82は、通過口41及び保持溝71に対して開閉扉挿入出口72を通じて連通している。また、収納部筐体81の内面には、断熱層83が設けられている。断熱層83としては、例えば炉体5の断熱層62と同様の材質を用いても良い。
開閉扉51は、図8に示すように、扉本体91と、扉本体91の縁部を覆う縁部被覆体92とを備えている。扉本体91と縁部被覆体92の外側には、耳部93が設けられている。また、開閉扉51は、開閉扉51をZ方向に沿って昇降移動させる開閉扉昇降器95によって支持されている。
扉本体91は、例えば略方形の平板状に形成されており、両側縁部をZ方向に向け、下縁部及び上縁部をY方向に向けた状態で、即ち、X方向に対して略垂直にして備えられている。縁部被覆体92は、扉本体91の周縁部全体を囲む略方形の枠状に形成されている。
縁部被覆体92の上縁部中央には、開閉扉昇降器95(後述する支持シャフト101)が連結された連結部92aが、縁部被覆体92に対して一体的に設けられている。即ち、扉本体91は、縁部被覆体92によって保持されており、さらに、連結部92aを介して、開閉扉昇降器95によって支持されている。
図6及び図7に示すように、扉本体91のX方向における厚さL2は、前述した保持溝71の開口幅L1よりも小さい寸法になっている。また、扉本体91は、断熱性を確保するため、ある程度の厚みを有することが好ましく、図示の例では、厚さL2は、後述する耳部93の厚さL3やローラ間隔L4よりも大きい寸法になっている。具体的には、例えば扉本体91をセラミックスファイバーによって形成した場合、厚さL2は約50mm〜100mm程度にすると良い。
また、図6及び図7に示すように、縁部被覆体92は、略コの字状の断面形状を有し、扉本体91の周縁部を外側及びX方向において両側から囲むようにして取り付けられている。従って、縁部被覆体92のX方向における厚さL2’は、扉本体91の厚さL2よりも若干大きくなっている。なお、縁部被覆体92の厚さL2’は、前述した保持溝71の開口幅L1よりも小さく、また、後述する耳部93の厚さL3やローラ間隔L4よりも大きい寸法になっている。
扉本体91の材質としては、断熱性及び耐熱性が高いものを使用することが望ましく、例えば壁体31、耐火層63等と同様のもの、即ち、セラミックファイバー等を用いても良い。この場合、扉本体91を軽量にすることができ、扉本体91の移動に要する開閉扉昇降器95の動力を軽減することができる。一方、縁部被覆体92の材質としては、断熱性及び耐熱性が高いもの、さらに、扉本体91よりも高い強度、硬度、剛性を有する(扉本体91よりも変形性が少ない)ものを使用することが望ましく、例えば鋼材を用いても良い。
図8に示すように、耳部93は、縁部被覆体92の外面に取り付けられている。即ち、扉本体91に対して縁部被覆体92を介して固定されている。また、縁部被覆体92の外面から外側に向かって広がるように、Y−Z面に沿った薄い板状に形成されている。この耳部93を壁体31の被接触面78に接触させた状態で、通過口41を閉塞する構成になっている。
図示の例では、耳部93は、扉本体91(縁部被覆体92)の下縁部に沿って設けられた下部耳93aと、扉本体91(縁部被覆体92)の両側縁部に沿って設けられた側部耳93b、93cとを備えている。
下部耳93aは、縁部被覆体92の下面から下方(Z方向)に向かって広がるように設けられている。下部耳93aの下縁部は、Y方向に沿って設けられている。この下部耳93aは、開閉扉51によって通過口41を閉塞する際に、通過口41の下縁部に設けられている2本のローラ55aの間に挿入され、ローラ55aの間において、予熱室11と浸炭室12の間を遮断することができる。
側部耳93b、93cは、縁部被覆体92の側面から側方(Y方向)に向かって広がるように設けられている。また、Y方向における側部耳93b、93cの幅が、上方に向かうに従い次第に広がるように形成されている。つまり、側部耳93b、93cの縁部は、上方に向かうに従い次第に縁部被覆体92から離隔して外側に向かうように、Z方向に対して傾斜した方向に沿って形成されている。また、側部耳93bは、側縁保持溝部71bの奥部(被接触面78)に対して略平行に設けられ、反対側の側部耳93cは、側縁保持溝部71cの奥部(被接触面78)に対して略平行に設けられている。
なお、耳部93の材質としては、耐熱性が高いもの、さらに、扉本体91及び壁体31よりも高い強度、硬度、剛性等の機械的性質を有するもの、即ち、扉本体91及び壁体31(少なくとも被接触面78)よりも変形性が少ないものを使用することが望ましい。換言すれば、壁体31に比較して、外力に対して実質的に変形しない材質を使用することが好ましい。この場合、耳部93と壁体31を接触させたとき、耳部93は実質的に変形せず、板状の形状を保持し、壁体31は耳部93に沿って変形することが可能になる。そのような耳部93の材質としては、例えば鉄板(鋼材)を使用しても良い。
図6及び図7に示すように、耳部93のX方向における厚さL3は、下部耳93aにおいても側部耳93b、93cにおいてもほぼ一定であり、前述した保持溝71の開口幅L1、扉本体91の厚さL2、縁部被覆体92の厚さL2’、ローラ間隔L4よりも小さい寸法になっている。つまり、これらの厚さの関係は、L3<L4≦L2<L2’<L1としても良い。
図2に示すように、開閉扉昇降器95は、収納室82内において昇降可能に設けられた支持シャフト101、及び、支持シャフト101を昇降させるシリンダ機構102を備えている。支持シャフト101は、長さ方向をZ方向に向け、収納部筐体81の天井部を貫通するようにして設けられている。支持シャフト101の下端部には、開閉扉51の連結部92aが連結されている。なお、連結部92aは、X方向に向けられた回転軸101aを中心として、支持シャフト101の下端部に対して回転可能に保持されている。支持シャフト101の上端部は、開閉扉収納部73の外部において、シリンダ機構102に接続されている。シリンダ機構102は、炉体5に対して固定されている。かかるシリンダ機構102の駆動により、支持シャフト101はZ方向に沿って昇降させられ、開閉扉51は、通過口41を閉塞する閉塞位置と、閉塞位置よりも上方に移動して通過口41を開口させる開口位置(収納室82内)とに、支持シャフト101と一体的にZ方向に沿って昇降するようになっている。
なお、浸炭室12と拡散室13の間に設けられた壁体32、通過口42、開閉扉52は、上述した予熱室11と浸炭室12の間に設けられた壁体31、通過口41、開閉扉51と実質的に同様の構成になっている。壁体32の上方にも、開閉扉52を収納する開閉扉収納部73が設けられており、開閉扉52は、開閉扉52をZ方向に沿って昇降移動させる開閉扉昇降器95によって支持されている。また、拡散室13と降温室14の間に設けられた壁体33、通過口43、開閉扉53も、上述した予熱室11と浸炭室12の間に設けられた壁体31、通過口41、開閉扉51と実質的に同様の構成になっている。壁体33の上方にも、開閉扉53を収納する開閉扉収納部73が設けられており、開閉扉53は、開閉扉53をZ方向に沿って昇降移動させる開閉扉昇降器95によって支持されている。壁体32、通過口42、開閉扉52、壁体33、通過口43、開閉扉53の詳細な構成については、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成に対してそれぞれ同一の符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1に示すように、ローラコンベア55は、複数の回転可能なローラ55aを備えている。各ローラ55aは、長さ方向(回転中心軸)をY方向に向けた状態で、それぞれ炉体5に対して回転可能に備えられている。
さらに、熱処理炉3には、エンリッチガスとして例えば都市ガスなどの炭化水素系のガス(CmHn)を供給するエンリッチガス供給路121、RXガス(例えばCO、CO2,H2、N2等を含有するガス)を供給するRXガス供給路122、空気を供給する空気供給路123、窒素ガス(N2)を供給する窒素ガス供給路124が接続されている。
エンリッチガス供給路121は、浸炭室12にエンリッチガスを供給する供給流路121a、拡散室13にエンリッチガスを供給する供給流路121b、降温室14にエンリッチガスを供給する供給流路121cを備えている。RXガス供給路122は、予熱室11にRXガスを供給する供給流路122a、浸炭室12にRXガスを供給する供給流路122b、拡散室13にRXガスを供給する供給流路122c、降温室14にRXガスを供給する供給流路122dを備えている。空気供給路123は、予熱室11に空気を供給する供給流路123a、浸炭室12に空気を供給する供給流路123b、降温室14に空気を供給する供給流路123dを備えている。窒素ガス供給路124は、予熱室11に窒素ガスを供給する供給流路124a、浸炭室12に窒素ガスを供給する供給流路124b、降温室14に窒素ガスを供給する供給流路124cを備えている。
また、熱処理炉3には、炉体5内の排気を行うエキセス131(入口側排気路)が設けられている。エキセス131は、例えば予熱室11の天井部に設けられており、予熱室11を排気するようになっている。
さらに、熱処理炉3には、炉体5内の雰囲気を攪拌する攪拌機構132(ファン)が、予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14の天井部にそれぞれ設けられている。また、図示はしないが、炉体5内の雰囲気を加熱するヒータが、予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14にそれぞれ設けられている。
油焼入れ部4は、油焼入れ部筐体141の内部に油槽室142が形成された構成になっており、油槽室142の下方には油槽143が設けられている。また、油焼入れ部4には、被処理体2を油槽室142内で搬送方向Dに搬送、及び、油槽室142と油槽143内との間でZ方向に昇降移動させる搬送昇降機145が設けられている。油焼入れ部筐体141の出口側には、被処理体2を油槽室142から連続ガス浸炭設備1の外部に搬出させる油槽室搬出口146と、油槽室搬出口146を開閉する油槽室搬出口扉147が設けられている。
また、油焼入れ部4には、前述したRXガス供給路122と、窒素ガス供給路124が接続されている。即ち、油槽室142にRXガスを供給する供給流路122eと、油槽室142に窒素ガスを供給する供給流路124eが設けられている。油焼入れ部筐体141の天井部には、油槽室142の排気を行うエキセス148(出口側排気路)が設けられている。
次に、以上のように構成された連続ガス浸炭設備1を用いた被処理体2の処理工程について説明する。
先ず、被処理体2が搬入される前の連続ガス浸炭設備1において、予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14、油槽室142内の雰囲気(雰囲気の温度、圧力、組成、CP(カーボンポテンシャル)等)が、それぞれ所定の処理条件に調節される。例えば、予熱室11の温度は約930℃程度、浸炭室12の温度は約930℃〜950℃程度、拡散室13の温度は約930℃〜950℃程度、降温室14の温度は約850℃程度に調節される。また、予熱室11のCP値は約0.8%程度、浸炭室12のCP値は約1.2%程度、拡散室13のCP値は約0.8%程度、降温室14のCP値は約0.8%程度に調節される。なお、CPとは、熱処理雰囲気の浸炭能力を示す値であり、熱処理雰囲気中のCO,O2の分圧(PCO/PO2 1/2)で表される。
予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14、油槽室142の雰囲気の調節は、図示しないヒータの発熱量、エンリッチガス供給路121によるエンリッチガスの供給流量、RXガス供給路122によるRXガスの供給流量、空気供給路123による空気の供給流量、窒素ガス供給路124による窒素ガスの供給流量、熱処理炉3のエキセス131による排気量、油焼入れ部4のエキセス148による排気量等がそれぞれ調整されることにより行われる。
また、熱処理炉3の搬入口21、通過口41、42、43、搬出口25、油焼入れ部4の油槽室搬出口146は、搬入口扉22、開閉扉51、52、53、搬出口扉26、油槽室搬出口扉147によってそれぞれ閉じられている。
例えば予熱室11と浸炭室12との間においては、図2に示すように、開閉扉51が開閉扉収納部73の下方(閉塞位置)に配置されており、開閉扉51によって通過口41が閉じられている。このとき、下部耳93aは、下縁保持溝部71aの両側に設けられているローラ55aの間に通されて、下縁保持溝部71a内に挿入され、下部耳93aの下縁部は、下縁保持溝部71aの底部(被接触面78)に沿って接触させられている。扉本体91の下縁部及び縁部被覆体92の下縁部は、ローラ55aや下縁保持溝部71aよりも上方に配置されている。また、扉本体91の両側縁部、縁部被覆体92の両側縁部、及び、側部耳93b、93cは、側縁保持溝部71b、71c内に挿入されている。各側部耳93b、93cの側縁部は、側縁保持溝部71b、71cの奥部(被接触面78)に沿ってそれぞれ接触させられている。扉本体91の上縁部及び縁部被覆体92の上縁部は、通過口41の上縁部よりも上方(開閉扉挿入出口72内)に配置されている。
即ち、扉本体91の両側面は、ローラ55aよりも上方において、それぞれ予熱室11、浸炭室12に対して対向させられるが、下部耳93aの下部と側部耳93b、93cは、保持溝71内に収納されており、予熱室11、浸炭室12に対して直接的には対向しないようになっている。このようにすると、耳部93が高温の熱処理雰囲気に直接的に晒されることを防止でき、加熱による変形、劣化等の悪影響を抑制できる。また、耳部93の縁部は、壁体31の被接触面78に沿って接触しており、扉本体91(縁部被覆体92)と保持溝71との間は、耳部93によって確実に遮断(シール)され、ガスが保持溝71を通じて予熱室11側又は浸炭室12側に移動できない状態にされる。一方、扉本体91の上縁部と縁部被覆体92の上縁部は、開閉扉挿入出口72内において、壁体31に対して接触しておらず、開閉扉51の上縁部の周囲に隙間が形成された状態になっている。従って、予熱室11と浸炭室12は、開閉扉挿入出口72に対してそれぞれ連通している。即ち、ガスが予熱室11と浸炭室12との間で開閉扉挿入出口72を通じて移動できる状態になっている。
ここで、下部耳93aは、下縁保持溝部71aの被接触面78上に載せられ、被接触面78によって支持された状態になっている。また、側部耳93bは、図5に示したように、側部耳93bの縁部と側縁保持溝部71bの被接触面78がそれぞれ通過口41から外側に傾斜するように設けられているため、被接触面78上に載せられ、被接触面78によって支持された状態になっている。同様に、側部耳93cも、側縁保持溝部71cの被接触面78上に載せられ、被接触面78によって支持された状態になっている。即ち、耳部93は、開閉扉51の自重又は開閉扉昇降器95の作動により、被接触面78を上方から押さえ付けるように配置され、被接触面78に対して確実に密着させられる。これにより、扉本体91と保持溝71との間でガスが通過することを確実に防止できる。
また、被接触面78が例えばセラミックファイバー等の柔軟な材質(耳部93と比較して実質的に変形しやすい材質)によって形成されており、耳部93が例えば鉄板等の硬い材質(被接触面78と比較して実質的に変形しない材質)によって形成されている場合、被接触面78を耳部93によって押圧すると、図6及び図7に示すように、被接触面78を耳部93に沿って凹ませるように、適宜変形させることができる。即ち、耳部93の縁部を被接触面78に対して食い込ませるようにして密着させることができる。これにより、耳部93が被接触面78からずれることを防止でき、開閉扉51を壁体31に対して確実に固定させることができる。また、扉本体91と保持溝71との間でガスが通過することを、さらに確実に防止できる。さらに、例えば耳部93、保持溝71、被接触面78の形状や寸法等に誤差があっても、被接触面78を耳部93に沿って変形させることで、確実に密着させることができる。特に、耳部93は薄い板状に形成されており、被接触面78に対する接触面積が小さいので、被接触面78に対して強い圧力を与え、十分に食い込ませ、確実に密着させることができる。なお、後述するように開閉扉51が上昇し、耳部93が被接触面78から離隔した際は、被接触面78は元の平面状の形状に、柔軟に戻ることができる。
また、本実施形態においては、通過口41の底部に2本のローラ55aが設けられているが、このような構成の場合、通過口41において被処理体2を確実に支持し、円滑に搬送できる利点がある一方、ローラ55aの間やローラ55aの下方を遮断しにくくなる問題がある。即ち、被処理体2の搬送を円滑にするためには、通過口41に設けたローラ55aのローラ間隔L4を広くしないほうが望ましいが、開閉扉51の扉本体91と縁部被覆体92は、断熱性や強度を確保するため、ある程度の厚みを持たせる必要があり、扉本体91の厚さL2や縁部被覆体92の厚さL2’を薄くすることには限界がある。しかし、これらの厚さL2、L2’が厚いと、扉本体91と縁部被覆体92をローラ55aの間に進入させることができなくなる。これに対し、本実施形態のように、厚さL2、L2’よりも薄い厚さL3の下部耳93aを設けるようにすれば、下部耳93aをローラ55aの間に進入させ、ローラ55aの下方も遮断できるようになる。即ち、ローラ間隔L4を小さくしながらも、扉本体91の厚さL2と縁部被覆体92の厚さL2’を確保でき、さらに、ローラ55aの間やローラ55aの下方の遮断も行うことができる。換言すれば、搬送の円滑化、開閉扉51の断熱性と強度の向上、通過口41の遮断性(シール性)向上を同時に実現できるようになる。
同様にして、通過口42、43も、それぞれ開閉扉52、53によって閉じられている。浸炭室12と拡散室13は、壁体32の開閉扉挿入出口72を通じて互いに連通しており、拡散室13と降温室14は、壁体33の開閉扉挿入出口72を通じて互いに連通している。
このように、熱処理炉3内は開閉扉51、52、53によって仕切られ、通過口41、42、43は十分に閉塞されている。そのため、隣り合う熱処理室の雰囲気の影響を少なくすることができ、各熱処理室の雰囲気を個別に制御し易くなっている。例えば浸炭室12のCPを高めながらも、拡散室13のCPを低くすることが可能になる。また、予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14の温度分布を制御しやすくなる。
また、連続ガス浸炭設備1内のガスは、例えば図9に示すように、降温室14側から入口側に向かって移動することができる。即ち、炉体5内のガスを降温室14から開閉扉53、52、51の上方を通じて拡散室13、浸炭室12、予熱室11の順に流し、予熱室11からエキセス131によって連続ガス浸炭設備1の外部に排気することができる。このように、炉体5内のガスが拡散室13側から浸炭室12側に向かって流れるようにすると、浸炭室12のCP値を拡散室13等のCP値に対して高い値に維持しやすくなる。また、降温室14と油槽室142は、連通孔26aを通じて互いに連通しているので、降温室14内のガスを油槽室142に流入させ、油槽室142からエキセス148によって連続ガス浸炭設備1の外部に排気することもできる。
即ち、連続ガス浸炭設備1内には、降温室14から予熱室11側(エキセス131)に向かうガスの流れと、降温室14から油槽室142(エキセス148)に向かうガスの流れが形成され、これにより、各熱処理室の熱処理雰囲気が適宜調節されるようになっている。ただし、各通過口41、42、43においては、扉本体91と保持溝71との間が耳部93によって遮断されており、開閉扉挿入出口72を通じてのみガスの移動が可能になっているので、耳部93を設けない場合(従来型の熱処理炉)と比較して、ガスの流路断面積が適度に小さくされた状態になっている。これにより、熱処理雰囲気の制御性を高めることができる。
以上のように、連続ガス浸炭設備1内の雰囲気が所定の処理条件に調節された状態において、熱処理炉3の搬入口21が開かれ、被処理体2が搬入口21を通じて予熱室11に搬入され、搬入口21が閉じられる。なお、搬入口21を開閉させる際、炉体5の内部(予熱室11)には、連続ガス浸炭設備1の外部の雰囲気(外気)が流入してしまうが、上記のように通過口41、42、43を開閉扉51、52、53によって十分に閉塞した状態にしておくと、外気が予熱室11から通過口41、42、43を通じて浸炭室12、拡散室13、降温室14に流入することを防止できる。即ち、外気中の酸素(O2)が浸炭性ガスと反応してCPが低下することを防止でき、浸炭室12、拡散室13、降温室14の熱処理雰囲気を好適に維持することができる。
熱処理炉3に搬入された被処理体2は、ローラコンベア55によって、予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14に順次搬送され、予熱室11における予熱処理、浸炭室12における浸炭処理、拡散室13における拡散処理、降温室14における降温処理が順次施される。
予熱室11から浸炭室12に被処理体2を移動させる際は、開閉扉昇降器95の作動によって開閉扉51が閉塞位置から上昇させられ、開閉扉挿入出口72を通じて、開閉扉収納部73内の開口位置に移動させられる。これにより、通過口41が開かれる。被処理体2が予熱室11から通過口41を通じて浸炭室12に移動させられると、開閉扉51が開口位置から閉塞位置に下降させられ、再び通過口41が閉じられる。同様に、浸炭室12から拡散室13に被処理体2を移動させる際、拡散室13から降温室14に被処理体2を移動させる際も、開閉扉52、53がそれぞれ昇降させられ、通過口42、43が開閉される。
このように、開閉扉51(52、53)を昇降させるとき、扉本体91と縁部被覆体92は、保持溝71の開口幅L1よりも薄い厚さL2,L2’で形成されており、壁体31(32、33)の内面(保持溝71の内面)、開閉扉挿入出口72の内面、開閉扉収納部73の内面等に接触することなく昇降することができる。即ち、扉本体91、壁体31(32、33)の内面、開閉扉挿入出口72の内面、開閉扉収納部73の内面等が接触によって損傷することを防止できる。
また、側部耳93b、93cは、側縁保持溝部71b、71cに沿って昇降する。即ち、開閉扉51(52、53)は、側縁保持溝部71b、71cによって両側からガイドされながら昇降する。これにより、開閉扉51(52、53)が通過口41(42、43)に対してずれることを防止でき、開閉扉51(52、53)を所定方向に沿って円滑に移動させることができる。
さらに、側縁保持溝部71b、71cの被接触面78と側部耳93b、93cの側縁部は、通過口41(42、43)の外側に向かって(扉本体91の外側に向かって)傾斜した状態になっているので、開閉扉51(52、53)を昇降移動させるとき、被接触面78と側部耳93b、93cが接触することはない。従って、開閉扉51(52、53)の昇降を円滑に行うことができる。また、被接触面78や側部耳93b、93cの摩耗を抑制でき、壁体被覆体76の長寿命化、交換頻度の低減を図ることができる。
なお、被処理体2を予熱室11から浸炭室12に移動させた後は、他の被処理体2を搬入口21から予熱室11に搬入し、続けて処理することができる。即ち、熱処理炉3では、複数の被処理体2を並行して連続的に処理することができる。そのように、被処理体2の処理中に搬入口21を開閉させ、他の被処理体2を搬入すると、炉体5内に外気が流入してしまうが、このときも、通過口41、42、43を開閉扉51、52、53によって閉塞しておくと、外気が予熱室11から浸炭室12、拡散室13、降温室14に流入することを抑制でき、熱処理雰囲気を好適に維持できる。
降温室14における降温処理が終了すると、搬出口25が開かれ、被処理体2が搬出口25を通じて降温室14から油槽室142に移動させられ、搬送昇降機145に受け渡される。なお、油焼入れ部4においては、搬出口25を開く前に、油槽室搬出口146を油槽室搬出口扉147によって閉じた状態で、油槽室142内に窒素ガスを供給して、油槽室142を窒素ガスによってパージするようにしても良い。そうすれば、油槽室搬出口146を閉じた状態で搬出口25を開くことにより、外気が搬出口25を通じて熱処理炉3内に流入することを防止できる。
油槽室142に被処理体2が搬入されると、搬出口25が搬出口扉26によって閉じられ、被処理体2は、搬送昇降機145の作動によって下降させられ、油槽143に浸漬させられる。これにより、被処理体2の油焼入れが行われる。その後、被処理体2が油槽143から引き上げられ、油槽室搬出口146が開かれると、被処理体2は油槽室搬出口146を通じて油槽室142から搬出される。以上のようにして、連続ガス浸炭設備1における一連の処理が終了する。
ところで、熱処理炉3においては、通過口41、42、43の開閉を繰り返し行うと、耳部93が被接触面78に対して繰り返し衝突させられ、被接触面78が損傷したり劣化したりして、耳部93と被接触面78の間の遮断性(シール性)が悪くなるおそれがある。そのような場合は、壁体被覆体76を保持溝71(壁体本体75)から外して、新しいものに付け替えることで、耳部93と被接触面78の間の遮断性を簡単に回復させることができる。
以上説明したように、かかる連続ガス浸炭設備1によれば、開閉扉51(52、53)に設けた耳部93を壁体31(32、33)に接触させることにより、扉本体91の縁部と壁体31(32、33)との間の隙間を耳部93によって遮断し、通過口41(42、43)を十分に閉塞することができる。これにより、予熱室11、浸炭室12、均熱室13、降温室14のそれぞれの雰囲気制御を行い易くなる。即ち、熱処理炉3のゾーンコントロール性を向上させることができる。また、搬入口21から外気が浸炭室12、拡散室13等に流入すること、外気の流入によりCPが低下すること等を防止でき、炉体5内に供給した処理ガス(エンリッチガス、RXガス等)を有効に利用できる。従って、処理ガスの供給量を低減でき、経済的である。
特に、浸炭室12のCPを、従来の1.0%程度から1.2%程度にまで高め、拡散室13のCPを従来の1.0%程度から0.8%程度にまで低くすることができる。即ち、浸炭雰囲気のCPと拡散雰囲気のCPとの差を大きくすることができる。このCPの差は、従来は約0.2%〜0.3%程度にすることしかできなかったが、本実施形態によれば、約0.4%〜0.5%程度に大きくすることができる。このように、浸炭雰囲気と拡散雰囲気のCPの差を大きくすることで、浸炭処理の効率と拡散処理の効率を共に向上させ、連続ガス浸炭処理設備1における処理全体の処理時間の短縮を図ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば以上の実施形態では、雰囲気熱処理設備はガス浸炭を行う連続ガス浸炭設備であるとし、被処理体は鋼材であるとし、熱処理炉は熱処理室として予熱室11、浸炭室12、拡散室13、降温室14を備えた連続式の熱処理炉3であるとしたが、これらはかかるものに限定されず、本実施形態は、様々な熱処理を行う熱処理炉、雰囲気熱処理設備において適用できる。例えば、被処理体は鉄系合金以外の他の合金からなるものであっても良い。熱処理炉は、窒化処理あるいは浸炭窒化処理を行う連続炉などであっても良い。熱処理室は、例えば浸炭窒化室、窒化室などであっても良い。
壁体31、32、33(保持溝71)、開閉扉51、52、53(扉本体91、縁部被覆体92、耳部93)等の形状や材質も、以上の実施形態には限定されない。例えば側縁保持溝部71b、71cの被接触面78と側部耳93b、93cの側縁部は、Z方向に対して傾斜した状態になっているとしたが、Z方向に沿って設けても良い。その場合も、通過口41、42、43の遮断性を向上させることができる。ただし、以上の実施形態で説明したように、Z方向に対して傾斜した状態にすれば、側部耳93b、93cによって被接触面78を上方から密着させ、遮断性をより確実に向上させることができる。また、開閉扉51、52、53を昇降移動させるときに、被接触面78と側部耳93b、93cが接触することを防止でき、開閉扉51、52、53の昇降を円滑に行うことができる。
耳部93の材質は、十分な剛性、熱処理室の熱処理雰囲気に対する耐熱性、耐腐食性、壁体31、32、33(被接触面78等)に対する耐摩耗性等の性能を有するものが好ましいが、鉄板には限定されず、例えば鋼材以外の金属等であっても良い。ただし、以上の実施形態のような鋼材の浸炭処理等を行う熱処理炉3においては、鉄板は耳部93に要求される性能を満たし、入手しやすく施工性も良い(例えば溶接等によって容易に取り付けられる)ため、好適である。
耳部93には、例えば図10及び図11に示すように、断熱材151(耳部被覆体)を設けても良い。図10及び図11に示す例では、断熱材151は、下部耳93aの両側面にそれぞれ設けられている。即ち、下部耳93aをX方向において両側から挟むように、また、下部耳93aの表面を覆うように取り付けられている。このように断熱材151を設けると、耳部93の断熱性(即ち、ローラ55aの間及び下方における断熱性)を向上させることができる。即ち、耳部93を鉄板等の金属によって形成すると、耳部93の熱伝導性が高く、耳部93を介して熱が移動しやすい難点があるが、断熱材151を設けることで、耳部93に熱が伝わることを抑制でき、各熱処理室の処理温度や温度分布を、より効率良く制御できるようになる。例えば以上の実施形態のような浸炭処理では、浸炭室12の温度は予熱室11の温度より高めに設定されるが、開閉扉51に断熱材151を設けることで、浸炭室12の熱が予熱室11に逃げること(即ち、予熱室11の温度上昇、浸炭室12の温度低下)を防止できる。降温室14の温度は均熱室13の温度より低く設定されるが、開閉扉53に断熱材151を設けることで、均熱室13の熱が降温室14に逃げること(即ち、均熱室13の温度低下、降温室14の温度上昇)を防止できる。
特に図6に示した例では、下部耳93aの下部と側部耳93b、93cは保持溝71内に挿入されており、X方向からみると壁体本体75によって覆われた状態になっているが、下部耳93aの上部は保持溝71に挿入されておらず、熱処理室に対して直接的に露出した状態になっている。この場合、保持溝71内に挿入されている部分(下部耳93aの下部)では、壁体本体75によって熱の移動が抑制されるが、保持溝71に挿入されていない部分(下部耳93aの上部)では、当該部分を介して熱が移動しやすいと考えられる。しかしながら、例えば図10に示すように、断熱材151を保持溝71に挿入されていない部分も覆うように設けることで、当該部分を介して熱が移動することを抑制できる。
なお、断熱材151を設ける箇所は、下部耳93aの両面には限定されず、例えば側部耳93b、93cに設けても良いし、勿論、耳部93の片面だけに設けても良い。断熱材151の材質としては、例えばセラミックファイバー等を用いても良い。