以下、添付の図面を参照しつつ、例示的な画像形成装置が説明される。尚、以下において用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とする。したがって、図面或いは以下の説明の詳細は、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。
<定着原理>
図1A乃至図1Cは、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1A乃至図1Cの順に、転写工程が進行する。図1A乃至図1Cを参照しつつ、シートSへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
図1Aは、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ベルトであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に引きつけられる。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの引きつけは、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。着色粒子PのシートSへの引きつけに関する原理は、後述の画像形成装置に関連して詳述される。
図1Bは、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
図1Cに示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に生ずる。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
図2A及び図2Bは、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2Aは、定着工程を概略的に示す。図2Bは、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1A乃至図2Bを用いて、定着工程の原理が説明される。
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
図2Aには、画像を摺擦するための摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2Bに示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部がシートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強められる。
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、形成された高分子化合物Rの皮膜層によって覆われているが、摺擦板200の摺擦動作によってさらに強固な樹脂皮膜が形成され、適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
(試験例1)
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、D0は、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、D1は、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
(試験例2)
図5A乃至図5Dは、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響を調べるための試験方法の概略図である。図5A乃至図5Dは、本実施形態に係る試験条件をそれぞれ例示する。
本試験において、画像層Iが形成されたシートSが用意された。試験例1と同様に、画像層Iは、摺擦板200によって摺擦される。画像層Iに対する摺擦は、図5A乃至図5Dに示される4つの条件でなされた。尚、他の試験条件は、試験例1に関連して説明された試験と同様である。
第1の試験条件(図5A)において、画像層Iは、第1試験方向(右から左)に摺擦された。摺擦期間は5秒間であった。摺擦回数は、80回であった。
第2の試験条件(図5B)において、画像層Iは、第1試験方向及び第1試験方向と反対の第2試験方向(左から右)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ40回であった。
第3の試験条件(図5C)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向並びにこれらに直交する第3試験方向(下から上)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ27回であった。第3試験方向の摺擦回数は26回であった。
第4の試験条件(図5D)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向、第3試験方向及び第3試験方向と反対の第4試験方向(上から下)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向乃至第4試験方向の摺擦回数はそれぞれ20回であった。
図6は、図5A乃至図5Dに関連して説明された試験条件下で得られた定着率FRを示すグラフである。図6のグラフの横軸は、図5A乃至図5Dに関連して説明された摺擦方向の数を示す。図6のグラフの縦軸は、シートS上の画像層Iの定着率FRを示す。図6に示される定着率FRの算出手法は、試験例1に関連して説明された算出手法に従う。図5A乃至図6を用いて、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響が説明される。
図6に示される如く、摺擦方向の増加に伴って、定着率FRは直線的に増加した。図5Aに関連して説明された第1試験条件の下において、定着率FRは56%であった。図5Bに関連して説明された第2試験条件の下において、定着率FRは73%であった。図5Cに関連して説明された第3試験条件の下において、定着率FRは84%であった。図5Dに関連して説明された第4試験条件の下において、定着率FRは94%であった。
図6に示されるグラフから、摺擦方向の増加は、比較的短期間の摺擦で高い定着率FRをもたらすことが分かる。
<第1実施形態>
図7は、第1実施形態に従う画像形成装置の概略なブロック図である。本実施形態において、画像形成装置として、プリンター500が例示される。図7を用いて、プリンター500が説明される。尚、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を含む複合機やシート上に画像を形成することができる他の装置であってもよい。
プリンター500は、シートに形成される画像に関する画像データが入力される入力部510を備える。本実施形態において、画像データは、パーソナルコンピューターといった外部装置によって生成される。入力部510は、外部装置に電気的に接続され、画像データを受ける。本実施形態において、パーソナルコンピューターから出力された画像データは、画像情報として例示される。
プリンター500は、画像データを解析する解析部520を備える。解析部520は、入力部510を通じて、画像データを受ける。
画像データは、シートに形成される画像がモノクロ画像であるかカラー画像であるかを識別するための第1識別情報を含んでもよい。画像データは、画像が写真画像であるか否かを表す第2識別情報を含んでもよい。画像データは、シート上の形成される画像の印字率に関する印字率情報を含んでもよい。
解析部520は、第1識別情報に基づき、モノクロ画像及びカラー画像のうち一方の画像が形成されることを決定する。解析部520は、第2識別情報に基づき、写真画像として画像を形成するか否かを決定する。解析部520は、例えば、画像データが規定する画像に応じて、印字率を解析してもよい。本実施形態において入力部510及び解析部520は、画像情報を取得する取得部として例示される。代替的に、取得部は、第1識別情報、第2識別情報や印字率情報といった画像情報を取得することができる他の要素であってもよい。画像形成装置がコピー機であるならば、原稿を読み取る読取装置、読取装置が読み取った原稿の画像データを記憶する画像メモリーや複写モード(例えば、写真モードでの複写、カラーモードでの複写、モノクロモードでの複写)を規定するためのコンソールが取得部として用いられてもよい。
プリンター500は、シートに画像を形成するために必要とされる様々な装置(後述される)を制御する制御部530を備える。解析部520は、解析部520の上述の決定及びシートに形成される画像のデータを制御部530に出力する。
プリンター500は、シートを搬送するための搬送機構540を備える。制御部530は、解析部520から信号を受けると、搬送機構540を搬送させる。搬送機構540は、制御部530の制御下で、シートを搬送する。
プリンター500は、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部330を更に備える。制御部530は、解析部520から出力された画像のデータに従い、画像形成部330を制御する。この結果、画像形成部330は、画像データに応じた画像をシートに形成する。
プリンター500は、シート上の画像を定着させる定着装置600を更に備える。定着装置600は、シート上の画像に接触する接触面を含む摺擦機構700と、摺擦機構700を駆動する駆動モーター701と、を備える。本実施形態の摺擦機構700は、搬送機構540によって規定されるシートの搬送速度に対する接触面の相対速度を利用して、シート上の画像を摺擦する。本実施形態に関連して、様々な摺擦機構700が後述される。
駆動モーター701は、摺擦機構700の接触面の速度を規定する。上述の如く、解析部520は、画像データ(例えば、第1識別情報、第2識別情報及び印字率情報)に従って、画像形成部330の画像形成モードを決定する(即ち、写真として印刷するか否かの決定或いはモノクロ画像又はカラー画像の印刷の決定)。また、解析部520は、画像データが規定する画像に応じて、印字率を算出する。制御部530は、解析部520の決定及び/又は解析部520が算出した印字率に応じて、駆動モーター701の動作(即ち、回転速度)を変更する。この結果、シートの搬送速度に対する摺擦機構700の接触面の相対速度は、画像データに応じて変更される。本実施形態において、制御部530の制御下における接触面の相対速度の変更は、摺擦動作の変更を意味する。
(定着装置の構造)
図8は、図7に関連して説明された定着装置600として利用可能な機構(以下、定着装置610と称される)の概略的な平面図である。図7及び図8を用いて、定着装置610が説明される。
定着装置610は、摺擦機構700として用いられる摺擦ローラー710を備える。摺擦ローラー710は、画像が形成されたシートSの上面に接触する。摺擦ローラー710は、シートSの上面に接触する円柱状の接触筒711と、接触筒711の両端面から突出するシャフト712を含む。シャフト712の一方の端部は、ハウジング720に収容されたベアリングによって回転可能に支持される。シャフト712の他方の端部には、ギア721が取り付けられる。図8に示されるシートSの上面には、液体現像剤を用いて画像が形成されている。
定着装置610は、ギア721に連結されるモーター730を備える。モーター730は、図7に関連して説明された駆動モーター701に相当する。モーター730は、制御部530の制御下で、回転数を変更することができる。したがって、接触筒711の回転数も制御部530の制御下で変動することができる。
図8には、定着装置610の上流に配設される上流搬送装置810及び定着装置610の下流に配設される下流搬送装置820が示されている。上流搬送装置810及び下流搬送装置820は、図7に関連して説明された搬送機構540として機能する。
図8には、上流搬送装置810から下流搬送装置820へ向かうベクトルが示されている。図8のベクトルの向きは、シートSの搬送方向「D1」を意味する。また、図8のベクトルの大きさは、シートSの搬送速度「V1」を意味する。上流搬送装置810及び下流搬送装置820は、協働して、シートSを搬送する。
図9は、定着装置610の概略的な側面図である。図4、図8及び図9を用いて、定着装置610が説明される。
上流搬送装置810は、シートSの上面に接触する上側ローラー811と、シートSの下面に接触する下側ローラー812とを含む。上側ローラー811は、一対のジャーナル813,814を含む。ジャーナル813は、ハウジング815に収容されたベアリングに回転可能に支持される。ジャーナル814にはギア816が取り付けられる。
上流搬送装置810は、上流モーター817を備える。上流モーター817は、ギア816に連結される。
上流搬送装置810は、下側ローラー812を弾性的に支持する上流支持機構830を備える。下側ローラー812は、上流支持機構830に接続されるジャーナル818を含む。
上流支持機構830は、ジャーナル818を回転可能に支持する軸受部831と、上流搬送装置810、下流搬送装置820及び定着装置610を支持する支持面FSと軸受部831とに接続する弾性部材832(例えば、コイルバネ)とを含む。弾性部材832によって、上方に押し上げられた下側ローラー812は、上側ローラー811と協働して、シートSを挟持する。この結果、上流モーター817の駆動によって、上側ローラー811と下側ローラー812との間で挟持されたシートSは、定着装置610に向けて搬送される。
下流搬送装置820は、シートSの上面に接触する上側ローラー821と、シートSの下面に接触する下側ローラー822とを含む。上側ローラー821は、一対のジャーナル823,824を含む。ジャーナル823は、ハウジング825に収容されたベアリングに回転可能に支持される。ジャーナル824にはギア826が取り付けられる。
下流搬送装置820は、下流モーター827を備える。下流モーター827は、ギア826に連結される。
下流搬送装置820は、下側ローラー822を弾性的に支持する下流支持機構840を備える。下側ローラー822は、下流支持機構840に接続されるジャーナル828を含む。
下流支持機構840は、ジャーナル828を回転可能に支持する軸受部841と、上流搬送装置810、下流搬送装置820及び定着装置610を支持する支持面FSと軸受部841とに接続する弾性部材842(例えば、コイルバネ)とを含む。弾性部材842によって、上方に押し上げられた下側ローラー822は、上側ローラー821と協働して、シートSを挟持する。この結果、下流モーター827の駆動によって、上側ローラー821と下側ローラー822との間で挟持されたシートSは、定着装置610から引き出される。
図9に示される如く、接触筒711は、シャフト712の周面を取り囲む略円筒形状の弾性層713と、弾性層713の外周面を被覆する不織布層714とを備える。弾性層713は、例えば、スポンジや比較的高い柔軟性を有する他の弾性材料を用いて形成される。不織布層714は、例えば、図4に関連して説明された種類の不織布を用いて形成される。
定着装置610は、摺擦ローラー710の下方に配設されたバックアップローラー740を備える。バックアップローラー740は、スポンジや比較的高い柔軟性を有する他の弾性材料を用いて形成される略円筒形状の支持筒741と、支持筒741に挿通される金属製のシャフト742とを含む。
定着装置610は、バックアップローラー740を摺擦ローラー710に圧接させる圧接機構750を含む。圧接機構750は、支持筒741の端面から突出したシャフト742の両端部を回転可能に支持する軸受部751と、上流搬送装置810、下流搬送装置820及び定着装置610を支持する支持面FSと軸受部751とに接続する弾性部材752(例えば、コイルバネ)とを含む。
弾性部材752は、バックアップローラー740を摺擦ローラー710に向けて付勢する。この結果、不織布層714及び/又は弾性層713は、シートSに圧接され、定着装置610を通過するシートSの上面に沿う略平坦な上側ニップ面N1が摺擦ローラー710の周面に形成される。同様に、支持筒741の周面は、圧縮変形され、定着装置610を通過するシートSの下面に沿う略平坦な下側ニップ面N2が形成される。本実施形態において、シートSの上面に形成された画像(画像層I)に接触する上側ニップ面N1は、接触面として例示される。
図9において上側ニップ面N1の上方に示されるベクトルは、上側ニップ面N1の移動方向及び速度を示す。モーター730は、上側ニップ面N1がシートSの搬送方向「D1」に移動するように、摺擦ローラー710を回転させる。モーター730の回転数は、上流搬送装置810及び下流搬送装置820によって規定される搬送速度「V1」とは異なる移動速度「V2」で上側ニップ面N1が移動するように設定される。この結果、シートS上に形成された画像層Iは、上側ニップ面N1と下側ニップ面N2との間を通過する間、上側ニップ面N1に摺擦される。かくして、画像層Iは、シートSに定着される。尚、上側ニップ面N1の移動速度「V2」(即ち、摺擦ローラー710の回転数)は、制御部530によって、画像データに応じて変更される。
図10は、図7に関連して説明された定着装置600として利用可能な機構(以下、定着装置610Aと称される)の概略図である。図4、図7及び図10を用いて、定着装置610Aが説明される。
図10には、画像層Iが形成されたシートSを搬送する搬送装置800が、搬送機構540として示されている。搬送装置800は、ベルトユニット850と、ベルトユニット850の上流に配設される上流ガイドユニット860と、ベルトユニット850の下流に配設される下流ガイドユニット869と、を備える。シートSは、上流ガイドユニット860に案内され、ベルトユニット850に送られる。その後、シートSは、ベルトユニット850によって、下流ガイドユニット869へ送られる。
ベルトユニット850は、駆動ローラー851と、従動ローラー852と、駆動ローラー851と従動ローラー852との間で延びる無端ベルト853と、無端ベルト853に張力を与えるテンションローラー854とを備える。駆動ローラー851の回転により、無端ベルト853は、駆動ローラー851、従動ローラー852及びテンションローラー854の周囲で周回する。従動ローラー852及びテンションローラー854は、無端ベルト853の周回にしたがって回転する。この結果、上流ガイドユニット860から無端ベルト853の外面855上に送り出されたシートSは、無端ベルト853の周回に従って、下流ガイドユニット869へ向かう。図10において、上流ガイドユニット860から下流ガイドユニット869へ向かうシートSの搬送速度は、「V1」の記号を用いて表されている。
ベルトユニット850は、無端ベルト853の外面855を帯電させる帯電装置856を更に備える。帯電装置856によって帯電された無端ベルト853の外面855は、静電気的にシートSを吸着する。したがって、シートSは、無端ベルト853によって安定的に搬送される。本実施形態において、無端ベルト853は、好ましくは、PVDFといった樹脂から形成される。
無端ベルト853は、シートSが吸着される外面855と反対側の内面857を含む。ベルトユニット850は、無端ベルト853の内面857に当接するバックアップローラー868を備える。
定着装置610Aは、シートS上の画像層Iを摺擦する摺擦帯711Aを備える。摺擦帯711Aは、略円筒状のコア芯799に巻回されたロール状の不織布ロール798として用意される。摺擦帯711Aは、例えば、図4に関連して説明された不織布を用いて帯状に形成された不織布帯であってもよい。本実施形態において、摺擦帯711Aは、摺擦ベルトとして例示される。
定着装置610Aは、不織布ロール798が搭載される巻出スピンドル797を備える。巻出スピンドル797は、コア芯799に挿通される。巻出スピンドル797は、好ましくは、コア芯799を保持するためのチャック機構(図示せず)を備える。チャック機構は、巻出スピンドル797上で不織布ロール798を安定的に保持する。摺擦帯711Aは、巻出スピンドル797上の不織布ロール798から巻出される。巻出スピンドル797は、不織布ロール798からの摺擦帯711Aの巻出に伴って回転する。
定着装置610Aは、巻出スピンドル797と協働して回転する巻取スピンドル796を備える。巻取スピンドル796は、略円筒状のコア芯795に挿通される。巻出スピンドル797と同様に、巻取スピンドル796は、コア芯795を保持するためのチャック機構(図示せず)を備える。コア芯795の外周面には、巻出スピンドル797から巻出された摺擦帯711Aの端部が接続される。巻取スピンドル796の回転に伴って、コア芯795に摺擦帯711Aが巻回される。かくして、巻取スピンドル796は、摺擦帯711Aを巻き取ることができる。本実施形態において、巻取スピンドル796は、摺擦ベルトを巻き取る巻取部として例示される。
巻取スピンドル796及び/又は巻出スピンドル797は、図7に関連して説明された駆動モーター701によって駆動される。上述の如く、駆動モーター701は、制御部530の制御下において、回転数を変更する。したがって、巻取スピンドル796及び/又は巻出スピンドル797の回転数は、画像データに応じて変更される。この結果、摺擦帯711Aの巻取速度は、画像データに応じて変動する。
定着装置610Aは、巻出スピンドル797と巻取スピンドル796との間で延びる摺擦帯711AをシートS上の画像層Iへ接触させる圧接機構750Aを備える。圧接機構750Aは、バックアップローラー868に対応して設けられた圧接ローラー751Aと、圧接ローラー751Aを摺擦帯711Aに向けて付勢するコイルスプリング752Aと、を備える。
巻出スピンドル797から巻出された摺擦帯711Aは、圧接ローラー751Aと無端ベルト853との間を通過した後、巻取スピンドル796に巻回される。圧接ローラー751Aを無端ベルト853へ向けて付勢するコイルスプリング752Aは、摺擦帯711Aと無端ベルト853との間にシートSを挟むニップ部Nを形成する。シートSがニップ部Nを通過するとき、圧接ローラー751Aは、画像層Iに摺擦帯711Aを圧接し、摺擦帯711A上に接触面を形成する。また、コイルスプリング752Aは、圧接ローラー751Aを画像層Iに向けて付勢する。本実施形態において、圧接ローラー751Aは、押圧部材として例示される。
圧接ローラー751Aは、回転シャフト712Aと、回転シャフト712Aを回転可能に保持する軸受728を備える。本実施形態において、巻出スピンドル797から巻取スピンドル796への摺擦帯711Aの移動に伴って、圧接ローラー751Aは回転シャフト712A周りに回転する。
本実施形態において、無端ベルト853がシートSを搬送している間、巻取スピンドル796は摺擦帯711Aを巻き取る。圧接ローラー751Aと無端ベルト853との間で挟まれた摺擦帯711Aは、巻取スピンドル796が回転している間、搬送方向「D1」に、シートSの搬送速度「V1」よりも大きな巻取速度「V2」で巻き取られる。シートSの搬送速度「V1」と巻取スピンドル796による巻取速度「V2」との間の差異は、画像層Iと摺擦帯711Aとの間の摺擦を引き起こす。本実施形態において、巻出スピンドル797、巻取スピンドル796、摺擦帯711A及び圧接機構750Aは、図7に関連して説明された摺擦機構700として用いられる。
図11は、図7に関連して説明された定着装置600として利用可能な機構(以下、定着装置610Bと称される)の概略図である。図4、図7及び図11を用いて、定着装置610Bが説明される。以下の説明において、上述の定着装置と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下において説明されない要素に対し、上述の実施形態に係る説明が好適に援用される。
図11には、画像層Iが形成されたシートSを搬送する搬送装置800が、搬送機構540として示されている。搬送装置800は、ベルトユニット850と、ベルトユニット850の上流に配設される上流ガイドユニット860と、ベルトユニット850の下流に配設される下流ガイドユニット869と、を備える。シートSは、上流ガイドユニット860に案内され、ベルトユニット850に送られる。その後、シートSは、ベルトユニット850によって、下流ガイドユニット869へ送られる。
ベルトユニット850は、駆動ローラー851と、従動ローラー852と、駆動ローラー851と従動ローラー852との間で延びる無端ベルト853と、無端ベルト853に張力を与えるテンションローラー854とを備える。駆動ローラー851の回転により、無端ベルト853は、駆動ローラー851、従動ローラー852及びテンションローラー854の周囲で周回する。従動ローラー852及びテンションローラー854は、無端ベルト853の周回にしたがって回転する。この結果、上流ガイドユニット860から無端ベルト853の外面855上に送り出されたシートSは、無端ベルト853の周回に従って、下流ガイドユニット869へ向かう。図11において、上流ガイドユニット860から下流ガイドユニット869へ向かうシートSの搬送速度は、「V1」の記号を用いて表されている。
ベルトユニット850は、無端ベルト853の外面855を帯電させる帯電装置856を更に備える。帯電装置856によって帯電された無端ベルト853の外面855は、静電気的にシートSを吸着する。したがって、シートSは、無端ベルト853によって安定的に搬送される。本実施形態において、無端ベルト853は、好ましくは、PVDFといった樹脂から形成される。
無端ベルト853は、シートSが吸着される外面855と反対側の内面857を含む。ベルトユニット850は、無端ベルト853の内面857に当接するバックアップローラー868を備える。
定着装置610Bは、シートS上の画像層Iを摺擦する不織布帯環711Bと、不織布帯環711Bを周回させるように形成されたローラー機構930とを含む。不織布帯環711Bは、ローラー機構930を取り巻くように配設される。不織布帯環711Bは、例えば、図4に関連して説明された不織布から形成されてもよい。本実施形態において、不織布帯環711Bは、摺擦帯環として例示される。本実施形態において、ローラー機構930は、周回機構として例示される。
ローラー機構930は、不織布帯環711Bを周回させるための駆動ローラー917と、不織布帯環711Bに張力を負荷するためのテンションローラー918と、不織布帯環711BをシートS上の画像層Iに圧接するための圧接部990を備える。駆動ローラー917は、図7に関連して説明された駆動モーター701によって駆動される。上述の如く、駆動モーター701は、制御部530の制御下において、回転数を変更する。したがって、駆動ローラー917の回転数は、画像データに応じて変更される。この結果、不織布帯環711Bの周回速度は、画像データに応じて変動する。
圧接部990は、不織布帯環711Bを画像層Iに圧接するための第1圧接ローラー993と、第1圧接ローラー993の後に不織布帯環711Bを画像層Iに圧接するための第2圧接ローラー994とを備える。圧接部990は、第1圧接ローラー993に接続された第1コイルスプリング971と、第2圧接ローラー994に接続された第2コイルスプリング972とを備える。本実施形態において、第1圧接ローラー993及び第2圧接ローラー994は、押圧部材として例示される。
第1圧接ローラー993及び第2圧接ローラー994は、無端ベルト853の外面855に沿う不織布帯環711Bの走行経路を規定する。上述の如く、バックアップローラー868は、ローラー機構930に向けて隆起した無端ベルト853の走行経路を規定する。バックアップローラー868によって隆起された無端ベルト853の走行経路の頂部は、第1圧接ローラー993と第2圧接ローラー994との間に入り込む。この結果、第1圧接ローラー993と第2圧接ローラー994との間において、シートS上の画像層Iが接触する長い接触面が不織布帯環711B上に形成される。
第1コイルスプリング971は、付勢力f1で第1圧接ローラー993を無端ベルト853に向けて付勢する。第2コイルスプリング972は、付勢力f2で第2圧接ローラー994を無端ベルト853に向けて付勢する。付勢力f2は、好ましくは、付勢力f1よりも大きい。この結果、第2圧接ローラー994は、第1圧接ローラー993よりも強く、不織布帯環711Bを画像層Iに圧接する。
画像層Iの表面に析出した高分子化合物の層は、時間経過とともに、硬化し、耐擦過性が増大する。したがって、画像層Iが、上流において、比較的小さな押圧力下で、不織布帯環711Bによって摺擦され、下流において、比較的大きな押圧力下で、不織布帯環711Bによって擦過されると、画像層Iへの損傷が生じにくくなるとともに、シートSへの画像層Iの定着率FRが増大することとなる。
駆動ローラー917は、不織布帯環711Bを周回速度「V2」で周回させる。駆動ローラー917の回転の結果、第1圧接ローラー993と第2圧接ローラー994との間の不織布帯環711Bは、周回速度「V2」で、シートSの搬送方向「D1」に走行する。本実施形態において、不織布帯環711Bの周回速度「V2」は、ベルトユニット850によるシートSの搬送速度「V1」よりも大きく設定される。不織布帯環711Bの周回速度「V2」とシートSの搬送速度「V1」との間の差異に起因して、画像層Iは、不織布帯環711Bによって適切に摺擦される。
(試験例3)
上述の定着装置610,610A,610Bは、シートの搬送速度に対する接触面の相対速度を利用して、シート上の画像を摺擦する。大きな相対速度は、シート上の画像に対する摺擦量の増大を意味する。本発明者は、相対速度、画像モード及び定着率との関係を調査した。以下の表は、相対速度、画像モード及び定着率との関係を表す。
本発明者は、図9乃至図11に関連して説明された速度「V2」をシートの搬送速度「V1」に対して、5倍、10倍、15倍、20倍及び25倍に設定し、テストサンプルをそれぞれ作成した。
本発明者は、テストサンプルとして、モノクロの文字画像(即ち、写真画像でない画像)と、モノクロの写真画像と、カラー画像と、を用意した。これら3種類のテストサンプルは、上述の速度設定の下で作成された。
本試験に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層上に帖着された。テストサンプル中の画像層に打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層から剥離された。
本発明者は、剥離されたテープ上に付着した画像成分を観察し、観察結果を、表1に示される如く、3つのカテゴリーに分類した。
シートの搬送速度「V1」の10倍以上の大きさの摺擦速度「V2」の下、モノクロの文字画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。シートの搬送速度「V1」の15倍以上の大きさの摺擦速度「V2」の下、モノクロの写真画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。シートの搬送速度「V1」の25倍以上の大きさの摺擦速度「V2」の下、カラー画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。
図12は、上述の試験結果に基づく摺擦速度「V2」の決定ルーチンを例示する概略的なフローチャートである。図7及び図12を用いて、摺擦速度「V2」の決定ルーチンが説明される。
(ステップS110)
プリンター500に画像データが入力されると、ステップS110が実行される。ステップS110において、解析部520は、画像データの第1識別情報に応じて、カラー画像の印刷が要求されているか、モノクロ画像の印刷が要求されているかを判定する。カラー画像の印刷が要求されているならば、ステップS120が実行される。他の場合には、ステップS130が実行される。
(ステップS120)
ステップS120において、解析部520は、摺擦速度「V2」をシートの搬送速度「V1」の25倍に設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、摺擦速度「V2」がシートの搬送速度「V1」の25倍になるように駆動モーター701を制御する。
(ステップS130)
ステップS130において、解析部520は、画像データの第2識別情報に応じて、画像が写真として形成されることを要求されているか否かを判定する。画像が写真として形成されることが要求されているならば、ステップS140が実行される。他の場合には、ステップS150が実行される。
(ステップS140)
ステップS140において、解析部520は、摺擦速度「V2」をシートの搬送速度「V1」の15倍に設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、摺擦速度「V2」がシートの搬送速度「V1」の15倍になるように駆動モーター701を制御する。
(ステップS150)
ステップS150において、解析部520は、摺擦速度「V2」をシートの搬送速度「V1」の10倍に設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、摺擦速度「V2」がシートの搬送速度「V1」の10倍になるように駆動モーター701を制御する。
尚、解析部520は、ステップS120、ステップS140及び/又はステップS150の前に、印字率に応じて、シートの搬送速度「V1」に対する倍率を決定してもよい。印字率の増大に伴い、高い倍率が設定されるならば、高い値の摺擦速度「V2」が設定される。印字率が低いならば、解析部520は、低い倍率を設定してもよい。
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態に従う画像形成装置の概略なブロック図である。本実施形態において、画像形成装置として、プリンター500Cが例示される。図13を用いて、プリンター500Cが説明される。尚、第1実施形態のプリンター500と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの要素に対する説明は省略される。
プリンター500Cは、第1実施形態のプリンター500と同様に、入力部510、解析部520、制御部530、搬送機構540及び画像形成部330を備える。プリンター500Cは、シートに画像を定着させるための定着装置600Cを備える。
定着装置600Cは、シート上の画像に接触する接触面を含む摺擦機構700Cを備える。摺擦機構700Cは、シート上の画像に接触する接触面を含む。定着装置600Cは、摺擦機構700Cの接触面を振動させる振動発生装置701Cを更に備える。摺擦機構700Cは、接触面の振動を利用して、シート上の画像を摺擦する。本実施形態において、振動発生装置701Cは、振動機構として例示される。
振動発生装置701Cは、摺擦機構700Cの接触面の振動数を規定する。上述の如く、解析部520は、画像データ(例えば、第1識別情報、第2識別情報及び印字率情報)に従って、画像形成部330の画像形成モードを決定する(即ち、写真として印刷するか否かの決定或いはモノクロ画像又はカラー画像の印刷の決定)。また、解析部520は、画像データが規定する画像に応じて、印字率を算出する。制御部530は、解析部520の決定及び/又は解析部520が算出した印字率に応じて、振動発生装置701Cの動作(即ち、振動数)を変更する。この結果、摺擦機構700Cの接触面の振動数は、画像データに応じて変更される。本実施形態において、制御部530の制御下における接触面の振動数の変更は、摺擦動作の変更を意味する。
(定着装置の構造)
図14は、図13に関連して説明された定着装置600Cの概略図である。図15は、定着装置600Cの概略的な斜視図である。図4、図13乃至図15を用いて、定着装置600Cが説明される。以下の説明において、上述の定着装置と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下において説明されない要素に対し、上述の実施形態に係る説明が好適に援用される。
図14には、画像層Iが形成されたシートSを搬送する搬送装置800が、搬送機構540として示されている。搬送装置800は、ベルトユニット850と、ベルトユニット850の上流に配設される上流ガイドユニット860と、ベルトユニット850の下流に配設される下流ガイドユニット869と、を備える。シートSは、上流ガイドユニット860に案内され、ベルトユニット850に送られる。その後、シートSは、ベルトユニット850によって、下流ガイドユニット869へ送られる。
ベルトユニット850は、駆動ローラー851と、従動ローラー852と、駆動ローラー851と従動ローラー852との間で延びる無端ベルト853と、無端ベルト853に張力を与えるテンションローラー854とを備える。駆動ローラー851の回転により、無端ベルト853は、駆動ローラー851、従動ローラー852及びテンションローラー854の周囲で周回する。従動ローラー852及びテンションローラー854は、無端ベルト853の周回にしたがって回転する。この結果、上流ガイドユニット860から無端ベルト853の外面855上に送り出されたシートSは、無端ベルト853の周回に従って、下流ガイドユニット869へ向かう。
ベルトユニット850は、無端ベルト853の外面855を帯電させる帯電装置856を更に備える。帯電装置856によって帯電された無端ベルト853の外面855は、静電気的にシートSを吸着する。したがって、シートSは、無端ベルト853によって安定的に搬送される。本実施形態において、無端ベルト853は、好ましくは、PVDFといった樹脂から形成される。
無端ベルト853は、シートSが吸着される外面855と反対側の内面857を含む。ベルトユニット850は、無端ベルト853の内面857に当接するバックアップローラー868を備える。
画像層Iが形成されたシートSは、搬送装置800によって定着装置600Cに搬送される。図13に関連して説明された如く、定着装置600Cは、摺擦機構700Cと振動発生装置701Cとを含む。
摺擦機構700Cは、付勢部材702と、支持部材703と、不織布層704とを含む。支持部材703は、バックアップローラー868の近くに配設される。無端ベルト853は、バックアップローラー868と支持部材703との間を通過する。支持部材703は、シートSの搬送方向に対して直交する方向に延びる細長の箱体である。支持部材703は、無端ベルト853に対向する第1支持面705と、第1支持面705とは反対側の第2支持面706とを有する。第1支持面705は、無端ベルト853に向けて隆起する曲面である。一方、第2支持面706は、平面である。
不織布層704は、シートS上の画像層Iを摺擦する。不織布層704は、第1支持面705の全体にわたって取り付けられている。不織布層704は、図4に関連して挙げられた不織布を用いて形成される。不織布の動摩擦係数は、0.50以下である。本実施形態において、シートS上の画像層Iを摺擦する不織布層704の面は、接触面として例示される。
付勢部材702は、例えば、ばね部材である。付勢部材702は、支持部材703の第2支持面706上に取り付けられている。支持部材703の両端部に一対の付勢部材702がそれぞれ取り付けられている。付勢部材702は、支持部材703に対して付勢力Fを作用させる。この結果、不織布層704と無端ベルト853上のシートSとの接触は適切に維持される。シートS上の画像に接触する不織布層704の接触面と無端ベルト853との間には、ニップ部Nが形成される。付勢部材702は、不織布層704が、例えば0.2g/mm2の面圧でシートSに押し付けられるように設定されている。また、不織布層704の層厚は、不織布層704と画像層Iとの間で円滑な接触が得られるように適切に設定される。
振動発生装置701Cは、支持部材703内に配設される。本実施形態において、振動発生装置701Cとして、振動モーターが用いられる。
図16は、振動発生装置701Cとして用いられる振動モーター790の概略的な斜視図である。図13及び図16を用いて、振動モーター790が説明される。
振動モーター790は、本体部791と、出力軸792と、偏芯体793とを有する。偏芯体793は、出力軸792に偏心して取り付けられた分銅である。出力軸792が回転すると、偏芯体793が偏心回転する。この結果、振動が発生する。
振動モーター790が発生させた振動は、振動モーター790を内蔵する支持部材703並びに第1支持面705に取り付けられた不織布層704を振動させる。不織布層704は、上述したように付勢部材702によって無端ベルト853に押し付けられている。そのため、不織布層704は、シートSがニップ部Nに搬送されてきたとき、画像層Iに接触したまま、振動によって画像層I上を多方向に摺動しつつ、画像層Iを擦る。
図17は、シートSが載置された無端ベルト853の平面図である。図13、図15乃至図17を用いて、不織布層704による画像層Iの摺擦動作を概略的に示す。なお、図17において、図の明確化のために、定着装置600Cは省略されている。
不織布層704は、図17において破線で示される摺擦領域CRにおいて無端ベルト853、シートS及び画像層Iと接触する。摺擦領域CRは、支持部材703の第1支持面705の曲率中心と、バックアップローラー868の回転中心とを結ぶ線上に位置する。摺擦領域CRは、シートSの搬送方向「D1」と直交する交差方向「T」に延びている。摺擦領域CRは、シートSの幅寸法よりも長い。不織布層704は、摺擦領域CR内において画像層Iを多方向に摺動し、画像層Iを摺擦する。
図17には、摺擦領域CRの略中心に規定された摺擦部位VPが示されている。不織布層704の振動により、摺擦部位VPは、シートSの搬送方向「D1」において小さな振幅で往復移動したり、シートSの搬送方向「D1」と直交する交差方向「T」において小さな振幅で往復移動したり、搬送方向「D1」や交差方向「T」に対して斜め方向「K」において小さな振幅で往復移動したりする。摺擦部位VPの摺動動作には規則性はない。摺擦部位VPは、不規則に小さな振幅でこれらの方向「D1」、「T」及び「K」を含む多方向に画像層I上を摺動して、画像層Iを擦る。これにより、画像層Iにおける摺擦部位VPが接触している部分は、多数回擦られる。なお、摺擦部位VPはこれらの方向「D1」、「T」及び「K」おいて必ずしも往復移動するとは限らない。
本実施形態において、画像層Iに接触した不織布層704は、振動モーター790によって振動し、画像層Iを多方向に摺擦する。この結果、シートS上の画像層Iは不織布層704によって多数回擦られる。これにより、画像層Iを形成する液体現像剤中の成分が、シートSの表層内に入り込み易くなる。したがって、画像層Iの定着時間が短縮される。
(試験例4)
上述の定着装置600Cは、接触面の振動を利用して、シート上の画像を摺擦する。高い振動数は、シート上の画像に対する摺擦量の増大を意味する。本発明者は、接触面の振動数、画像モード及び定着率との関係を調査した。以下の表は、振動数、画像モード及び定着率との関係を表す。
本発明者は、接触面の振動数を、500Hz、1000Hz、1500Hz、2000Hz、2500Hz及び3000Hzに設定し、テストサンプルをそれぞれ作成した。
本発明者は、テストサンプルとして、モノクロの文字画像(即ち、写真画像でない画像)と、モノクロの写真画像と、カラー画像と、を用意した。これら3種類のテストサンプルは、上述の振動数設定の下で作成された。
本試験に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層上に帖着された。テストサンプル中の画像層に打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層から剥離された。
本発明者は、剥離されたテープ上に付着した画像成分を観察し、観察結果を、表2に示される如く、3つのカテゴリーに分類した。
1000Hz以上の振動数の下、モノクロの文字画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。2500Hz以上の振動数の下、モノクロの写真画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。3000Hz以上の振動数の下、カラー画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。
図18は、上述の試験結果に基づく振動数の決定ルーチンを例示する概略的なフローチャートである。図13及び図18を用いて、振動数の決定ルーチンが説明される。
(ステップS210)
プリンター500Cに画像データが入力されると、ステップS210が実行される。ステップS210において、解析部520は、画像データの第1識別情報に応じて、カラー画像の印刷が要求されているか、モノクロ画像の印刷が要求されているかを判定する。カラー画像の印刷が要求されているならば、ステップS220が実行される。他の場合には、ステップS230が実行される。
(ステップS220)
ステップS220において、解析部520は、接触面の振動数を3000Hzに設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、3000Hzの振動数で接触面が振動するように振動発生装置701Cを制御する。
(ステップS230)
ステップS230において、解析部520は、画像データの第2識別情報に応じて、画像が写真として形成されることを要求されているか否かを判定する。画像が写真として形成されることが要求されているならば、ステップS240が実行される。他の場合には、ステップS250が実行される。
(ステップS240)
ステップS240において、解析部520は、接触面の振動数を2500Hzに設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、接触面が2500Hzの振動数で振動するように振動発生装置701Cを制御する。
(ステップS250)
ステップS250において、解析部520は、接触面の振動数を1000Hzに設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、接触面が1000Hzの振動数で振動するように振動発生装置701Cを制御する。
尚、解析部520は、ステップS220、ステップS240及び/又はステップS250の前に、印字率に応じて、接触面の振動数を決定してもよい。印字率の増大に伴い、高い振動数が設定されてもよい。印字率が低いならば、解析部520は、低い振動数を設定してもよい。
<第3実施形態>
図19は、第3実施形態に従う画像形成装置の概略なブロック図である。本実施形態において、画像形成装置として、プリンター500Dが例示される。図19を用いて、プリンター500Dが説明される。尚、第1実施形態のプリンター500と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの要素に対する説明は省略される。
プリンター500Dは、第1実施形態のプリンター500と同様に、入力部510、解析部520、制御部530、搬送機構540及び画像形成部330を備える。プリンター500Dは、シートに画像を定着させるための定着装置600Dを備える。定着装置600Dは、シート上の画像に接触する接触面を含む摺擦機構700Dと、摺擦機構700Dをシート上の画像から選択的に離間させる離間機構701Dと、を備える。
摺擦機構700Dは、シート上の画像を摺擦する第1摺擦部と、第1摺擦部の後に画像を摺擦する第2摺擦部と、を含む。離間機構701Dは、制御部530の制御下で、第1摺擦部及び第2摺擦部のうち一方を画像から離間させる。
上述の如く、解析部520は、画像データ(例えば、第1識別情報、第2識別情報及び印字率情報)に従って、画像形成部330の画像形成モードを決定する(即ち、写真として印刷するか否かの決定或いはモノクロ画像又はカラー画像の印刷の決定)。また、解析部520は、画像データが規定する画像に応じて、印字率を算出する。制御部530は、解析部520の決定及び/又は解析部520が算出した印字率に応じて、離間機構701Dの離間動作を変更する。この結果、画像に対する摺擦機構700Dの離間動作は、画像データに応じて変更される。本実施形態において、制御部530の制御下における離間動作の変更は、摺擦動作の変更を意味する。
(定着装置の構造)
図20は、図19に関連して説明された定着装置600Dの概略図である。図4、図19及び図20を用いて、定着装置600Dが説明される。以下の説明において、上述の定着装置と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下において説明されない要素に対し、上述の実施形態に係る説明が好適に援用される。
図20には、画像層Iが形成されたシートSを搬送する搬送装置800Dが、搬送機構540として示されている。搬送装置800Dは、ベルトユニット850と、ベルトユニット850の上流に配設される上流ガイドユニット860と、ベルトユニット850の下流に配設される下流ガイドユニット869と、を備える。シートSは、上流ガイドユニット860に案内され、ベルトユニット850に送られる。その後、シートSは、ベルトユニット850によって、下流ガイドユニット869へ送られる。
ベルトユニット850は、駆動ローラー851と、従動ローラー852と、駆動ローラー851と従動ローラー852との間で延びる無端ベルト853と、無端ベルト853に張力を与えるテンションローラー854とを備える。駆動ローラー851の回転により、無端ベルト853は、駆動ローラー851、従動ローラー852及びテンションローラー854の周囲で周回する。従動ローラー852及びテンションローラー854は、無端ベルト853の周回にしたがって回転する。この結果、上流ガイドユニット860から無端ベルト853の外面855上に送り出されたシートSは、無端ベルト853の周回に従って、下流ガイドユニット869へ向かう。
ベルトユニット850は、無端ベルト853の外面855を帯電させる帯電装置856を更に備える。帯電装置856によって帯電された無端ベルト853の外面855は、静電気的にシートSを吸着する。したがって、シートSは、無端ベルト853によって安定的に搬送される。本実施形態において、無端ベルト853は、好ましくは、PVDFといった樹脂から形成される。
無端ベルト853は、シートSが吸着される外面855と反対側の内面857を含む。ベルトユニット850は、無端ベルト853の内面857に当接するバックアップローラー866,867を備える。バックアップローラー866は、従動ローラー852の近くに配設される。下流のバックアップローラー867は、駆動ローラー851の近くに配設される。
画像層Iが形成されたシートSは、搬送装置800によって定着装置600Dに搬送される。図19に関連して説明された如く、定着装置600Dは、摺擦機構700Dと離間機構701Dとを含む。
摺擦機構700Dは、上流のバックアップローラー866に対応する上流摺擦ローラー723と、下流のバックアップローラー867に対応する下流摺擦ローラー724とを含む。下流摺擦ローラー724は、上流摺擦ローラー723の後に、画像層Iを摺擦する。
本実施形態において、上流摺擦ローラー723は、第1摺擦部として例示される。下流摺擦ローラー724は、第2摺擦部として例示される。
定着装置600Dは、離間機構701Dを収容するハウジング729を備える。ハウジング729は、無端ベルト853に向けて開口する。上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724は、ハウジング729の開口部から突出し、無端ベルト853の外面855又はシートSに当接する。
定着装置600Dは、シリンダ機構770を備える。シリンダ機構770は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724をシートSの画像層Iから選択的に離間させる。本実施形態において、シリンダ機構770は、離間機構701Dとして例示される。代替的に、離間機構は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724を無端ベルト853から選択的に離間させるように形成された他の構造であってもよい。例えば、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724は、レバーアームを用いて、シートSから離間されてもよい。
シリンダ機構770は、上流摺擦ローラー723をシートSの画像層Iから離間させる上流シリンダ装置771と、下流摺擦ローラー724をシートSの画像層Iから離間させる下流シリンダ装置772とを含む。
シリンダ機構770は、作動流体の流入出を受ける外殻体753と、外殻体753に対して出没可能に形成されたロッド754とを含む。外殻体753は、ハウジング729の天板725に取り付けられる。上流シリンダ装置771のロッド754は、上流摺擦ローラー723のシャフト726に取り付けられる。下流シリンダ装置772のロッド754は、下流摺擦ローラー724のシャフト727に取り付けられる。
定着装置600Dは、制御部530は、シリンダ機構770を制御する。制御部530は、外殻体753への作動流体の流入出を制御する。制御部530の制御下で、外殻体753へ作動流体が流入すると、ロッド754が外殻体753から伸長し、上流摺擦ローラー723及び/又は下流摺擦ローラー724は、画像層Iへ押しつけられる。制御部530の制御下で、外殻体753から作動流体が流出すると、ロッド754が外殻体753に没入し、上流摺擦ローラー723及び/又は下流摺擦ローラー724は画像層Iから離間する。
制御部530は、上流シリンダ装置771と下流シリンダ装置772とを独立に制御する。したがって、制御部530は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724のうち一方を画像層Iに押しつけ、他方を画像層Iから離間させることができる。或いは、制御部530は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724をともに画像層Iに押しつけることができる。必要に応じて、制御部530は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724をともに画像層Iから離間させることができる。例えば、制御部530は、シートSが搬送されていない間、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724をともに画像層Iから離間させてもよい。
上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724の動作は、シートSの通過のタイミングに合わせてなされてもよい。或いは、画像層Iを形成するのに用いられる液体現像剤やシートSの種類に応じて、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724の動作が定められてもよい。例えば、比較的損傷しやすい画像層Iを形成する液体現像剤が用いられるならば、上流摺擦ローラー723と無端ベルト853との干渉量が、下流摺擦ローラー724と無端ベルト853との干渉量よりも小さくなるように、上流摺擦ローラー723及び/又は下流摺擦ローラー724の位置が制御されてもよい。
(試験例5)
上述の定着装置600Dは、複数の接触面を利用して、シート上の画像を摺擦する。接触面の増加は、シート上の画像に対する摺擦量の増大を意味する。本発明者は、接触面の数、画像モード及び定着率との関係を調査した。以下の表は、接触面の数、画像モード及び定着率との関係を表す。
本発明者は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724の位置を、離間位置(画像に接触しない位置)と接触位置(画像に接触する位置)とに設定し、テストサンプルをそれぞれ作成した。
本発明者は、テストサンプルとして、モノクロの画像と、カラー画像と、を用意した。これら2種類のテストサンプルは、上述の位置設定の下で作成された。
本試験に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層上に帖着された。テストサンプル中の画像層に打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層から剥離された。
本発明者は、剥離されたテープ上に付着した画像成分を観察し、観察結果を、表3に示される如く、3つのカテゴリーに分類した。
少なくとも1つの接触面によって、モノクロの画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。少なくとも2つの接触面によって、カラー画像が摺擦されるならば、テープへの画像移りは確認されなかった。
図21は、上述の試験結果に基づく接触面の数の決定ルーチンを例示する概略的なフローチャートである。図19乃至図21を用いて、接触面の数の決定ルーチンが説明される。
(ステップS310)
プリンター500Dに画像データが入力されると、ステップS310が実行される。ステップS310において、解析部520は、画像データの第1識別情報に応じて、カラー画像の印刷が要求されているか、モノクロ画像の印刷が要求されているかを判定する。カラー画像の印刷が要求されているならば、ステップS320が実行される。他の場合には、ステップS330が実行される。
(ステップS320)
ステップS320において、解析部520は、接触面の数を2つに設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724を接触位置に変位させ、接触面の数を2つに設定する。
(ステップS330)
ステップS330において、解析部520は、接触面の数を1つに設定することを決定する。解析部520の決定は、制御部530に出力される。制御部530は、上流摺擦ローラー723及び下流摺擦ローラー724のうち一方を離間位置に変位させ、接触面の数を1つに設定する。
本実施形態において、接触面の数は、「0」乃至「2」の範囲で設定される。代替的に、「2」を超える数の摺擦部が用意されてもよい。摺擦部の増加によって、接触面の数の選択幅が増大する。
解析部520は、ステップS32及び/又はステップS330の前に、印字率に応じて、接触面の数を決定してもよい。印字率の増大に伴い、多数の接触面の数が設定されてもよい。印字率が低いならば、解析部520は、小さな数の接触面を設定してもよい。
<画像形成工程>
図22は、上述のプリンター500、500C、500Dとして例示されるカラープリンター300の概略図である。図7、図13及び図22を用いて、カラープリンター300を用いた画像形成工程が説明される。
カラープリンター300は、画像を形成するための様々な装置や部品が収容される上側筐体310と、上側筐体310の下方に配設される下側筐体320と、を備える。カラープリンター300は、液体現像剤を循環させるための循環装置LY,LC,LM,LBを更に備える。循環装置LY,LC,LM,LBは、下側筐体320内に収容される。尚、循環装置LYは、上述のイエロー色の液体現像剤を循環させる。循環装置LCは、上述の液体現像剤を循環させる。循環装置LMは、上述のマゼンタ色の液体現像剤を循環させる。循環装置LBは、画像中のブラック成分の画像を描くためのブラック色の液体現像剤を循環させる。
カラープリンター300は、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部330を備える。画像形成部330は、イエロー色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFYと、シアン色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFCと、マゼンタ色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFMと、ブラック色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFBと、を含む。画像形成ユニットFY,FC,FM,FBは、上側筐体310内に配設される。イエロー色の液体現像剤は、循環装置LYと画像形成ユニットFYとの間で循環される。シアン色の液体現像剤は、循環装置LCと画像形成ユニットFCとの間で循環される。マゼンタ色の液体現像剤は、循環装置LMと画像形成ユニットFMとの間で循環される。ブラック色の液体現像剤は、循環装置LBと画像形成ユニットFBとの間で循環される。循環装置LY,LC,LM,LBによる液体現像剤の循環原理に対して、既知の画像形成装置で用いられる液体現像剤用の循環技術が適宜用いられてもよい。したがって、図22において、循環装置LY,LC,LM,LBと画像形成ユニットFY,FC,FM,FBとを接続する配管は示されていない。
カラープリンター300は、シートSが収容されるカセット340と、カセット340からシートSを引き出す給紙機構350を更に備える。カセット340からシートSを引き出す給紙機構350に対して、一般的なプリンターやコピー機といった装置の給紙構造が適用されてもよい。給紙機構350は、上述の搬送機構540の一部として用いられる。
カラープリンター300は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって形成された画像をシートSに転写するための転写機構360を更に備える。上側筐体310は、給紙機構350から転写機構360に向けて上方に延びる給紙搬送路351を規定する。シートSは、給紙搬送路351によって案内され、転写機構360に向けて搬送される。
カラープリンター300は、転写機構360によるシートSへの画像の転写タイミングに合わせて、シートSを転写機構360に供給するレジストローラー対352と、給紙機構350から送り出されたシートSをレジストローラー対352へ供給する搬送ローラー対353と、を更に備える。給紙機構350によってカセット340から引き出されたシートSは、搬送ローラー対353によって、上方に送られる。その後、レジストローラー対は、シートSの搬送タイミングを調整し、転写機構360へシートSを供給する。転写機構360は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって形成された画像をシートSに転写する。レジストローラー対352及び搬送ローラー対353は、上述の搬送機構540の一部として用いられる。
カラープリンター300は、転写機構360によって画像が転写されたシートSを定着させるための定着装置400と、上側筐体310からシートSを排出する排出機構354を更に備える。定着装置400は、シートS上の画像を摺擦する。排出機構354は、その後、シートSを上側筐体310から排出する。尚、定着装置400は、上述の定着装置600,600C,600Dのうちの1つである。
シートSがレジストローラー対352から定着装置400へ搬送される間に、転写機構360は、画像をシートSへ転写する。転写機構360は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって画像が順次転写される転写ベルト361と、転写ベルト361を駆動する駆動ローラー362と、駆動ローラー362とともに転写ベルト361の走行経路を規定する従動ローラー363と、転写ベルト361に張力を与え、転写ベルト361の走行を安定化させるテンションローラー364と、駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361に圧接される転写ローラー365と、転写ベルト361を清掃するクリーニング装置366と、を備える。レジストローラー対352は、転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間にシートSを送り込む。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBは、転写ベルト361の下面に沿って配設される。画像形成ユニットFYは、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。その後、転写ベルト361は、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFCによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFCは、シアン色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。この結果、シアン色の液体現像剤によって描かれた画像は、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像に重ね合わせられる。更にその後、転写ベルト361は、イエロー色及びシアン色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFMによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFMは、マゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。この結果、マゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像は、イエロー色及びシアン色の液体現像剤によって描かれた画像に重ね合わせられる。転写ベルト361は、イエロー色、シアン色及びマゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFBによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFBは、ブラック色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。この結果、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBから転写ベルト361に転写されたイエロー色、シアン色、マゼンタ色及びブラック色の画像は、転写ベルト361上で重ね合わせられ、フルカラー画像となる。転写ベルト361上のフルカラー画像は、転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間に送り込まれたシートSに転写される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331と、感光体ドラム331の周面を略一様に帯電させる帯電器332と、帯電した感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する露光装置333と、を備える。感光体ドラム331は、線速(周面における接線速度)が、「0.1m/sec」となるように回転する。帯電器332は、上述の如く、400Vの表面電位を感光体ドラム331の周面に作り出す。帯電器332によって帯電された感光体ドラム331は、感光体ドラム331の回転の結果、露光装置333によるレーザ光の照射位置に移動する。露光装置333は、外部装置(図示せず:例えば、パーソナルコンピューター)から送信された画像データに応じて、感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する。この結果、感光体ドラム331の周面に、画像データに対応する静電潜像が形成される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、液体現像剤を感光体ドラム331の周面に塗布する現像装置334を更に備える。感光体ドラム331の回転の結果、静電潜像が形成された感光体ドラム331の周面は、現像装置334による液体現像剤の塗布位置に移動する。現像装置334は、300Vの現像バイアスの条件下で、液体現像剤を感光体ドラム331に塗布する。この結果、感光体ドラム331の周面の静電潜像が現像される。現像装置334は、液体現像剤を用いて静電潜像を現像する既知の現像装置であってもよい。尚、イエロー色の液体現像剤は、画像形成ユニットFYの現像装置334と循環装置LYとの間で循環される。シアン色の液体現像剤は、画像形成ユニットFCの現像装置334と循環装置LCとの間で循環される。マゼンタ色の液体現像剤は、画像形成ユニットFMの現像装置334と循環装置LMとの間で循環される。ブラック色の液体現像剤は、画像形成ユニットFBの現像装置334と循環装置LBとの間で循環される。
画像形成ユニットFY,FC,FM,FBそれぞれは、感光体ドラム331上で現像された画像を転写ベルト361へ転写するための転写ローラー335を更に備える。転写ベルト361は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過する。転写ローラー335は、転写ベルト361を感光体ドラム331の周面に押しつける。転写ローラー335には、電源(図示せず)から感光体ドラム331上の着色粒子Pとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧が印加される。転写ローラー335は、転写ベルト361にトナーと逆極性の電圧を印加する。この結果、導電性の転写ベルト361の表面に着色粒子及び高分子化合物が引き付けられる。かくして、感光体ドラム331に形成された画像は、転写ベルト361の表面に転写される。その後、転写ベルト361は、画像を担持して、シートSまで搬送する。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331から液体現像剤を除去するクリーニング装置336を更に備える。転写ベルト361に画像を転写した感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転に伴い、クリーニング装置336に向かう。クリーニング装置336は、感光体ドラム331の周面に残存する液体現像剤を除去する。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331の周面を除電する除電器337を更に備える。クリーニング装置336によって清掃された感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転にともなって、除電器337による除電位置に進む。除電器337は、感光体ドラム331の周面から電荷を取り除く。その後、感光体ドラム331の周面は、再度、帯電器332によって帯電される。この後、上述の画像形成工程が再度行われ、新たな画像が転写ベルト361へ転写される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによる画像の転写の結果、フルカラーの画像は、転写ベルト361によって、転写ローラー365に向けて運ばれる。レジストローラー対352によって、適切なタイミングで、シートSが転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間に供給されるので、シートS上の適切な位置に画像が転写されることとなる。その後、シートSへ画像を転写した転写ベルト361の面は、クリーニング装置366へ向かって移動する。クリーニング装置366は、転写ベルト361上に残存する液体現像剤を除去する。その後、クリーニング装置366によって清掃された転写ベルト361の面は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過し、新たな画像の転写を受ける。
<液体現像剤>
上述の定着原理は、以下に例示される液体現像剤を用いて形成された画像に好適に適用される。以下に、液体現像剤の様々な成分が例示される。後述される如く、液体現像剤が有する定着性は、液体現像剤の成分に依存する。
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
(キャリア液)
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。以下に説明される定着性の評価においては、花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」が、植物油として用いられている。
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の植物油を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
(着色粒子)
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、上述の非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、Pigment Yellow 74、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、PIGMENT Red 57:1、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
(分散安定剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
(高分子化合物)
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が以下に例示される。
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン。
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で高分子化合物Rとして使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
スチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;他のスチレン系エラストマーとして、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(ポリビニルブチラール)
ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
ポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた溶液と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。