以下、添付の図面を参照しつつ、例示的な画像形成装置及び画像形成方法が説明される。尚、以下において用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とする。したがって、図面或いは以下の説明の詳細は、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。
<定着原理>
複数種の液体現像剤を用いて形成された画像の定着の説明の前に、単一種の液体現像剤を用いて形成された画像の定着原理が説明される。以下の定着原理に関する説明は、複数種の液体現像剤を用いて形成された画像の定着にも適用される。
図1A乃至図1Cは、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1A乃至図1Cの順に、転写工程が進行する。図1A乃至図1Cを参照しつつ、シートSへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
図1Aは、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ベルトであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に引きつけられる。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの引きつけは、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。着色粒子PのシートSへの引きつけに関する原理は、後述の画像形成装置に関連して詳述される。
図1Bは、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
図1Cに示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に生ずる。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
図2A及び図2Bは、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2Aは、定着工程を概略的に示す。図2Bは、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1A乃至図2Bを用いて、定着工程の原理が説明される。
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
図2Aには、画像を摺擦するための摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2Bに示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部がシートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強められる。
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、形成された高分子化合物Rの皮膜層によって覆われているが、摺擦板200の摺擦動作によってさらに強固な樹脂皮膜が形成され、適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
(試験例1)
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、D0は、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、D1は、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
(試験例2)
図5A乃至図5Dは、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響を調べるための試験方法の概略図である。図5A乃至図5Dは、本実施形態に係る試験条件をそれぞれ例示する。
本試験において、画像層Iが形成されたシートSが用意された。試験例1と同様に、画像層Iは、摺擦板200によって摺擦される。画像層Iに対する摺擦は、図5A乃至図5Dに示される4つの条件でなされた。尚、他の試験条件は、試験例1に関連して説明された試験と同様である。
第1の試験条件(図5A)において、画像層Iは、第1試験方向(右から左)に摺擦された。摺擦期間は5秒間であった。摺擦回数は、80回であった。
第2の試験条件(図5B)において、画像層Iは、第1試験方向及び第1試験方向と反対の第2試験方向(左から右)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ40回であった。
第3の試験条件(図5C)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向並びにこれらに直交する第3試験方向(下から上)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ27回であった。第3試験方向の摺擦回数は26回であった。
第4の試験条件(図5D)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向、第3試験方向及び第3試験方向と反対の第4試験方向(上から下)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向乃至第4試験方向の摺擦回数はそれぞれ20回であった。
図6は、図5A乃至図5Dに関連して説明された試験条件下で得られた定着率FRを示すグラフである。図6のグラフの横軸は、図5A乃至図5Dに関連して説明された摺擦方向の数を示す。図6のグラフの縦軸は、シートS上の画像層Iの定着率FRを示す。図6に示される定着率FRの算出手法は、試験例1に関連して説明された算出手法に従う。図5A乃至図6を用いて、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響が説明される。
図6に示される如く、摺擦方向の増加に伴って、定着率FRは直線的に増加した。図5Aに関連して説明された第1試験条件の下において、定着率FRは56%であった。図5Bに関連して説明された第2試験条件の下において、定着率FRは73%であった。図5Cに関連して説明された第3試験条件の下において、定着率FRは84%であった。図5Dに関連して説明された第4試験条件の下において、定着率FRは94%であった。
図6に示されるグラフから、摺擦方向の増加は、比較的短期間の摺擦で高い定着率FRをもたらすことが分かる。
<液体現像剤>
上述の定着原理は、以下に例示される液体現像剤を用いて形成された画像に好適に適用される。以下に、液体現像剤の様々な成分が例示される。後述される如く、液体現像剤が有する定着性は、液体現像剤の成分に依存する。
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
(キャリア液)
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。以下に説明される定着性の評価においては、花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」が、植物油として用いられている。
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の植物油を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
(着色粒子)
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、上述の非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、Pigment Yellow 74、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、PIGMENT Red 57:1、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
(分散安定剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
(高分子化合物)
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が以下に例示される。
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン。
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で高分子化合物Rとして使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
スチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;他のスチレン系エラストマーとして、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(ポリビニルブチラール)
ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
ポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた溶液と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。
<定着性の評価>
本発明者は、図1A乃至図6に関連して説明された定着技術の原理の下、好適に定着される上述の様々な液体現像剤の定着性を評価した。一般的に、カラー画像を形成するための画像形成装置は、シアン色の液体現像剤、イエロー色の液体現像剤及びマゼンタ色の液体現像剤を使用する。したがって、本発明者は、これらの色相を有する3種類の液体現像剤を用意し、液体現像剤の定着性を評価した。
(シアン色の液体現像剤)
高分子化合物として、スチレン−ブタジエン系エラストマー(1.33質量部:旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)T−413」:スチレン含有量30質量%)が用意された。高分子化合物を溶解させるための溶剤として、植物油(98.67質量部:花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」)が用意された。高分子化合物は、植物油中で溶解され、樹脂溶液が作成された。
キャリア液として、流動パラフィン(72質量部:松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)が用意された。分散安定剤として、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」(8質量部)が用意された。着色粒子として、シアン顔料(20質量部:C.I.Pigment Blue 15:3)が用意された。キャリア液、分散安定剤及び着色粒子は、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM−10)を用いて、1時間、混合・分散され、顔料分散体が得られた。尚、ロッキングミルの駆動周波数は、60Hzであった。また、顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。
樹脂溶液及び顔料分散体は、3:1の混合比(質量比)で混合され、シアン色の液体現像剤が得られた。シアン色の液体現像剤は、5質量%の着色粒子(シアン顔料)と、1質量%の高分子化合物(スチレン系エラストマー)と、を含む。
(イエロー色の液体現像剤)
高分子化合物として、スチレン−ブタジエン系エラストマー(1.33質量部:旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)T−413」:スチレン含有量30質量%)が用意された。高分子化合物を溶解させるための溶剤として、植物油(98.67質量部:花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」)が用意された。高分子化合物は、植物油中で溶解され、樹脂溶液が作成された。
キャリア液として、流動パラフィン(72質量部:松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)が用意された。分散安定剤として、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」(8質量部)が用意された。着色粒子として、イエロー顔料(20質量部:Pigment Yellow 74)が用意された。キャリア液、分散安定剤及び着色粒子は、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM−10)を用いて、1時間、混合・分散され、顔料分散体が得られた。尚、ロッキングミルの駆動周波数は、60Hzであった。また、顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。
樹脂溶液及び顔料分散体は、3:1の混合比(質量比)で混合され、イエロー色の液体現像剤が得られた。イエロー色の液体現像剤は、5質量%の着色粒子(イエロー顔料)と、1質量%の高分子化合物(スチレン系エラストマー)と、を含む。
(マゼンタ色の液体現像剤)
高分子化合物として、スチレン−ブタジエン系エラストマー(1.33質量部:旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)T−413」:スチレン含有量30質量%)が用意された。高分子化合物を溶解させるための溶剤として、植物油(98.67質量部:花王社製の中鎖脂肪酸トリグリセライド「ココナードMT」)が用意された。高分子化合物は、植物油中で溶解され、樹脂溶液が作成された。
キャリア液として、流動パラフィン(72質量部:松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)が用意された。分散安定剤として、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」(8質量部)が用意された。着色粒子として、マゼンタ顔料(20質量部:PIGMENT Red 57:1)が用意された。キャリア液、分散安定剤及び着色粒子は、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM−10)を用いて、1時間、混合・分散され、顔料分散体が得られた。尚、ロッキングミルの駆動周波数は、60Hzであった。また、顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。
樹脂溶液及び顔料分散体は、3:1の混合比(質量比)で混合され、マゼンタ色の液体現像剤が得られた。マゼンタ色の液体現像剤は、5質量%の着色粒子(マゼンタ顔料)と、1質量%の高分子化合物(スチレン系エラストマー)と、を含む。
(テストサンプル(単色))
図7Aは、上述のシアン色の液体現像剤を用いて形成された印字パターンを有するテストサンプルTSCの概略図である。図7Bは、上述のイエロー色の液体現像剤を用いて形成された印字パターンを有するテストサンプルTSYの概略図である。図7Cは、上述のマゼンタ色の液体現像剤を用いて形成された印字パターンを有するテストサンプルTSMの概略図である。
テストサンプルTSCは、シートSと、上述のシアン色の液体現像剤を用いてシートS上に形成されたパターン層PLCと、を含む。テストサンプルTSYは、シートSと、上述のイエロー色の液体現像剤を用いてシートS上に形成されたパターン層PLYと、を含む。テストサンプルTSMは、シートSと、上述のマゼンタ色の液体現像剤を用いてシートS上に形成されたパターン層PLMと、を含む。
450Vの表面電位を有する感光体ドラムの表面に、300Vの現像バイアスの印加の下、シアン色の液体現像剤が供給され、シアン色の画像が感光体ドラムの表面に形成された。尚、感光体ドラムの線速(感光体ドラムの周面の接線速度)は、0.1m/secであった。その後、シアン色の画像は、転写ベルトを介して、シートSに転写され、パターン層PLCが形成された。
450Vの表面電位を有する感光体ドラムの表面に、300Vの現像バイアスの印加の下、イエロー色の液体現像剤が供給され、イエロー色の画像が感光体ドラムの表面に形成された。尚、感光体ドラムの線速(感光体ドラムの周面の接線速度)は、0.1m/secであった。その後、イエロー色の画像は、転写ベルトを介して、シートSに転写され、パターン層PLYが形成された。
450Vの表面電位を有する感光体ドラムの表面に、300Vの現像バイアスの印加の下、マゼンタ色の液体現像剤が供給され、マゼンタ色の画像が感光体ドラムの表面に形成された。尚、感光体ドラムの線速(感光体ドラムの周面の接線速度)は、0.1m/secであった。その後、マゼンタ色の画像は、転写ベルトを介して、シートSに転写され、パターン層PLMが形成された。
上述のテストサンプルTSC,TSY,TSMを作成するために用いられた画像形成装置は、後述される。画像形成装置は、シートS上のパターン層PLC,PLY,PLMを定着させる定着装置を備える。定着装置は、上述の定着原理に従って、パターン層PLC,PLY,PLMを摺擦する。図7A乃至図7Cに示されるテストサンプルTSC,TSY,TSMは、定着装置による定着処理後、以下の摺擦試験に用いられた。
(摺擦試験(単色))
図8は、摺擦試験を受けるテストサンプルTSC,TSY,TSMの概略的な側面図である。図8を用いて、摺擦試験が説明される。
摺擦板200は、1kgfの力で、各パターン層PLC,PLY,PLMに押しつけられた。その後、摺擦板200は、各パターン層PLC,PLY,PLMへの圧力を維持したまま、20回(右方:10回 左方:10回)、各パターン層PLC,PLY,PLMを摺擦した。
摺擦板200による摺擦の前及び後に、各パターン層PLC,PLY,PLMの光学濃度が測定された。光学濃度は、マクベス社製の反射濃度計「Spectroeye」を用いて測定された。
(定着性の評価(単色))
以下の数式は、液体現像剤の定着性を定量的に評価するために用いられた。
上述の数式で表される残存率が「100%」に近いほど、液体現像剤が高い定着性を有していることを意味する。即ち、摺擦前後における光学濃度の変化率が小さいほど、液体現像剤が高い定着性を有していることを意味する。尚、光学濃度の変化率は、以下の数式で定量的に表されてもよい。
摺擦試験の結果は、以下の表に示される。
上述の試験結果において、テストサンプルTSYは、最も高い残存率(即ち、最も低い変化率)を示すので、イエロー色の液体現像剤は、最も高い定着性を有する。テストサンプルTSMは、最も低い残存率(即ち、最も高い変化率)を示すので、マゼンタ色の液体現像剤は、最も低い定着性を有する。テストサンプルTSCは、テストサンプルTSMより高く、且つ、テストサンプルTSYより低い残存率(即ち、テストサンプルTSYより低く、且つ、テストサンプルTSMより高い変化率)を示すので、シアン色の液体現像剤は、マゼンタ色の液体現像剤より高く、且つ、イエロー色の液体現像剤よりも低い定着性を有する。
上述の試験結果から、液体現像剤中の顔料成分の相違に起因して、液体現像剤の定着性の差異が生ずることが分かる。尚、液体現像剤の他の成分が相違するならば、液体現像剤の定着性は、同様に変化する。本実施形態において、最も高い定着性を有するイエロー色の液体現像剤は、第1液体現像剤として例示される。イエロー色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLYは、第1画像として例示される。イエロー色の液体現像剤の次に高い定着性を有するシアン色の液体現像剤は、第2液体現像剤として例示される。シアン色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLCは、第2画像として例示される。最も低い定着性を有するマゼンタ色の液体現像剤は、第3液体現像剤として例示される。マゼンタ色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLMは、第3画像として例示される。
(テストサンプル(複数色))
図9A乃至図9Dは、シアン色、イエロー色及びマゼンタ色の液体現像剤を用いて形成されたテストサンプルTS1乃至TS4を作成するための概略的なフローチャートである。図10Aは、図9Aに示されるフローチャートに従って作成されたテストサンプルTS1の概略的な側面図である。図10Bは、図9Bに示されるフローチャートに従って作成されたテストサンプルTS2の概略的な側面図である。図10Cは、図9Cに示されるフローチャートに従って作成されたテストサンプルTS3の概略的な側面図である。図10Dは、図9Dに示されるフローチャートに従って作成されたテストサンプルTS4の概略的な側面図である。図9A乃至図10Dを用いて、複数色の液体現像剤を用いて形成されたテストサンプルTS1乃至TS4が説明される。
図9Aは、テストサンプルTS1の作成手順を表す概略的なフローチャートである。尚、図9Aのフローチャートに従って画像を形成する画像形成装置は後述される。
(ステップS110)
ステップS110において、転写ベルト上にイエロー色のパターン層PLYが転写される。その後、ステップS120が実行される。
(ステップS120)
ステップS120において、転写ベルト上にシアン色のパターン層PLCが転写される。シアン色のパターン層PLCは、転写ベルト上のイエロー色のパターン層PLYに積層される。その後、ステップS130が実行される。
(ステップS130)
ステップS130において、転写ベルト上にマゼンタ色のパターン層PLMが転写される。マゼンタ色のパターン層PLMは、転写ベルト上のイエロー色及びシアン色のパターン層PLY,PLCに積層される。その後、ステップS140が実行される。
(ステップS140)
ステップS140において、シートS上に画像(パターン層PLY,PLC,PLM)が転写される。この結果、図10Aに示される如く、シートS上にパターン層PLMが積層される。パターン層PLYは、最も外側に現れる。パターン層PLCは、パターン層PLY,PLMの間に位置する。
図9Bは、テストサンプルTS2の作成手順を表す概略的なフローチャートである。図10Bは、テストサンプルTS2の概略的な側面図である。図9B及び図10Bを用いて、テストサンプルTS2が説明される。
(ステップS210)
ステップS210において、転写ベルト上にイエロー色のパターン層PLYが転写される。その後、ステップS220が実行される。
(ステップS220)
ステップS220において、転写ベルト上にマゼンタ色のパターン層PLMが転写される。マゼンタ色のパターン層PLMは、転写ベルト上のイエロー色のパターン層PLYに積層される。その後、ステップS230が実行される。
(ステップS230)
ステップS230において、転写ベルト上にシアン色のパターン層PLCが転写される。シアン色のパターン層PLCは、転写ベルト上のイエロー色及びマゼンタ色のパターン層PLY,PLMに積層される。その後、ステップS240が実行される。
(ステップS240)
ステップS240において、シートS上に画像(パターン層PLY,PLC,PLM)が転写される。この結果、図10Bに示される如く、シートS上にパターン層PLCが積層される。パターン層PLYは、最も外側に現れる。パターン層PLMは、パターン層PLY,PLCの間に位置する。
図9Cは、テストサンプルTS3の作成手順を表す概略的なフローチャートである。図10Cは、テストサンプルTS3の概略的な側面図である。図9C及び図10Cを用いて、テストサンプルTS3が説明される。
(ステップS310)
ステップS310において、転写ベルト上にマゼンタ色のパターン層PLMが転写される。その後、ステップS320が実行される。
(ステップS320)
ステップS320において、転写ベルト上にシアン色のパターン層PLCが転写される。シアン色のパターン層PLCは、転写ベルト上のマゼンタ色のパターン層PLMに積層される。その後、ステップS330が実行される。
(ステップS330)
ステップS330において、転写ベルト上にイエロー色のパターン層PLYが転写される。イエロー色のパターン層PLYは、転写ベルト上のシアン色及びマゼンタ色のパターン層PLC,PLMに積層される。その後、ステップS340が実行される。
(ステップS340)
ステップS340において、シートS上に画像(パターン層PLY,PLC,PLM)が転写される。この結果、図10Cに示される如く、シートS上にパターン層PLYが積層される。パターン層PLMは、最も外側に現れる。パターン層PLCは、パターン層PLY,PLMの間に位置する。
図9Dは、テストサンプルTS4の作成手順を表す概略的なフローチャートである。図10Dは、テストサンプルTS4の概略的な側面図である。図9D及び図10Dを用いて、テストサンプルTS4が説明される。
(ステップS410)
ステップS410において、転写ベルト上にシアン色のパターン層PLCが転写される。その後、ステップS420が実行される。
(ステップS420)
ステップS420において、転写ベルト上にマゼンタ色のパターン層PLMが転写される。マゼンタ色のパターン層PLMは、転写ベルト上のシアン色のパターン層PLCに積層される。その後、ステップS430が実行される。
(ステップS430)
ステップS430において、転写ベルト上にイエロー色のパターン層PLYが転写される。イエロー色のパターン層PLYは、転写ベルト上のシアン色及びマゼンタ色のパターン層PLC,PLMに積層される。その後、ステップS440が実行される。
(ステップS440)
ステップS440において、シートS上に画像(パターン層PLY,PLC,PLM)が転写される。この結果、図10Dに示される如く、シートS上にパターン層PLYが積層される。パターン層PLCは、最も外側に現れる。パターン層PLMは、パターン層PLY,PLCの間に位置する。
以下の表は、図10A乃至図10Dに対して行われた摺擦試験の結果を示す。
上述の結果から、最も高い定着性を有するイエロー色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLYが最も外側に位置するならば、画像の光学濃度の変化率が最も小さくなることが分かる。好ましくは、シートSに対して、定着性の低い順に、パターン層が積層される。
複数種の液体現像剤を用いて、パターン層が積層されると、シートS上での液体現像剤の層が厚くなる。この結果、1種類の液体現像剤を用いて、シートS上に画像を形成するときよりも、複数種の液体現像剤を用いた画像形成の方が、キャリア液の浸透に時間がかかる。したがって、単色のテストサンプルと比べて、多色のテストサンプルの方が、光学濃度の変化率は大きくなる。
定着性が比較的高い液体現像剤が他の液体現像剤に先行して、転写ベルトに転写されるならば、シートS上において、定着性が比較的低い液体現像剤の層は、転写ベルトの外面と比較的高い定着性を有する他の液体現像剤の層との間に位置する。定着性が高い液体現像剤のキャリア液の浸透速度は比較的高いと考えられる。したがって、定着性が高い液体現像剤の高分子化合物も比較的早期に析出する。上述の如く、定着性が比較的高い液体現像剤の層が、他の液体現像剤の層よりも外側に位置するならば、早期に析出した高分子化合物が他の液体現像剤のキャリア液の浸透を阻害しにくくなる。したがって、テストサンプルTS1のパターン層PLY,PLC,PLMのキャリア液の浸透速度は、比較的高くなる。かくして、テストサンプルTS1において、比較的高い定着率(即ち、高い残存率(低い変化率))が達成される。
<画像形成装置>
図11は、最も低い光学濃度の変化率を達成したテストサンプルTS1の作成に用いられた画像形成装置の概略図である。本実施形態において、画像形成装置として、カラープリンター300が例示される。図11を用いて、カラープリンター300が説明される。尚、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を含む複合機やシートS上に画像を形成することができる他の装置であってもよい。
カラープリンター300は、画像を形成するための様々な装置や部品が収容される上側筐体310と、上側筐体310の下方に配設される下側筐体320と、を備える。カラープリンター300は、液体現像剤を循環させるための循環装置LY,LC,LM,LBを更に備える。循環装置LY,LC,LM,LBは、下側筐体320内に収容される。尚、循環装置LYは、上述のイエロー色の液体現像剤を循環させる。循環装置LCは、上述の液体現像剤を循環させる。循環装置LMは、上述のマゼンタ色の液体現像剤を循環させる。循環装置LBは、画像中のブラック成分の画像を描くためのブラック色の液体現像剤を循環させる。
カラープリンター300は、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部330を備える。画像形成部330は、イエロー色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFYと、シアン色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFCと、マゼンタ色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFMと、ブラック色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFBと、を含む。画像形成ユニットFY,FC,FM,FBは、上側筐体310内に配設される。イエロー色の液体現像剤は、循環装置LYと画像形成ユニットFYとの間で循環される。シアン色の液体現像剤は、循環装置LCと画像形成ユニットFCとの間で循環される。マゼンタ色の液体現像剤は、循環装置LMと画像形成ユニットFMとの間で循環される。ブラック色の液体現像剤は、循環装置LBと画像形成ユニットFBとの間で循環される。循環装置LY,LC,LM,LBによる液体現像剤の循環原理に対して、既知の画像形成装置で用いられる液体現像剤用の循環技術が適宜用いられてもよい。したがって、図11において、循環装置LY,LC,LM,LBと画像形成ユニットFY,FC,FM,FBとを接続する配管は示されていない。本実施形態において、画像形成部330は、画像形成機構として例示される。画像形成ユニットFYは、第1画像形成機構として例示される。画像形成ユニットFCは、第2画像形成機構として例示される。画像形成ユニットFMは、第3画像形成機構として例示される。
図12は、上側筐体310内の内部構造の概略図である。図3、図11及び図12を用いて、カラープリンター300が更に説明される。
カラープリンター300は、シートSが収容されるカセット340と、カセット340からシートSを引き出す給紙機構350を更に備える。カセット340からシートSを引き出す給紙機構350に対して、一般的なプリンターやコピー機といった装置の給紙構造が適用されてもよい。
カラープリンター300は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって形成された画像をシートSに転写するための転写機構360を更に備える。上側筐体310は、給紙機構350から転写機構360に向けて上方に延びる給紙搬送路351を規定する。シートSは、給紙搬送路351によって案内され、転写機構360に向けて搬送される。
カラープリンター300は、転写機構360によるシートSへの画像の転写タイミングに合わせて、シートSを転写機構360に供給するレジストローラー対352と、給紙機構350から送り出されたシートSをレジストローラー対352へ供給する搬送ローラー対353と、を更に備える。給紙機構350によってカセット340から引き出されたシートSは、搬送ローラー対353によって、上方に送られる。その後、レジストローラー対は、シートSの搬送タイミングを調整し、転写機構360へシートSを供給する。転写機構360は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって形成された画像をシートSに転写する。
カラープリンター300は、転写機構360によって画像が転写されたシートSを定着させるための定着装置400と、上側筐体310からシートSを排出する排出機構354を更に備える。定着装置400は、シートS上の画像を摺擦する。排出機構354は、その後、シートSを上側筐体310から排出する。本実施形態において、定着装置400は、摺擦機構として例示される。
シートSがレジストローラー対352から定着装置400へ搬送される間に、転写機構360は、画像をシートSへ転写する。転写機構360は、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによって画像が順次転写される転写ベルト361と、転写ベルト361を駆動する駆動ローラー362と、駆動ローラー362とともに転写ベルト361の走行経路を規定する従動ローラー363と、転写ベルト361に張力を与え、転写ベルト361の走行を安定化させるテンションローラー364と、駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361に圧接される転写ローラー365と、転写ベルト361を清掃するクリーニング装置366と、を備える。レジストローラー対352は、転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間にシートSを送り込む。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBは、転写ベルト361の下面に沿って配設される。画像形成ユニットFYは、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361の外面に転写する。その後、転写ベルト361は、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFCによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFCは、シアン色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361の外面に転写する。この結果、シアン色の液体現像剤によって描かれた画像は、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像に重ね合わせられる。更にその後、転写ベルト361は、イエロー色及びシアン色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFMによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFMは、マゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361の外面に転写する。この結果、マゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像は、イエロー色及びシアン色の液体現像剤によって描かれた画像に重ね合わせられる。転写ベルト361は、イエロー色、シアン色及びマゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像を担持したまま、画像形成ユニットFBによる画像の転写位置に移動する。画像形成ユニットFBは、ブラック色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361の外面に転写する。この結果、画像形成ユニットFY、FC、FM、FBから転写ベルト361に転写されたイエロー色、シアン色、マゼンタ色及びブラック色の画像は、転写ベルト361上で重ね合わせられ、フルカラー画像となる。転写ベルト361上のフルカラー画像は、転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間に送り込まれたシートSに転写される。本実施形態において、転写ベルト361の外面は、担持面として例示される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331と、感光体ドラム331の周面を略一様に帯電させる帯電器332と、帯電した感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する露光装置333と、を備える。感光体ドラム331は、線速(周面における接線速度)が、「0.1m/sec」となるように回転する。帯電器332は、上述の如く、400Vの表面電位を感光体ドラム331の周面に作り出す。帯電器332によって帯電された感光体ドラム331は、感光体ドラム331の回転の結果、露光装置333によるレーザ光の照射位置に移動する。露光装置333は、外部装置(図示せず:例えば、パーソナルコンピュータ)から送信された画像データに応じて、感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する。この結果、感光体ドラム331の周面に、画像データに対応する静電潜像が形成される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、液体現像剤を感光体ドラム331の周面に塗布する現像装置334を更に備える。感光体ドラム331の回転の結果、静電潜像が形成された感光体ドラム331の周面は、現像装置334による液体現像剤の塗布位置に移動する。現像装置334は、300Vの現像バイアスの条件下で、液体現像剤を感光体ドラム331に塗布する。この結果、感光体ドラム331の周面の静電潜像が現像される。現像装置334は、液体現像剤を用いて静電潜像を現像する既知の現像装置であってもよい。尚、イエロー色の液体現像剤は、画像形成ユニットFYの現像装置334と循環装置LYとの間で循環される。シアン色の液体現像剤は、画像形成ユニットFCの現像装置334と循環装置LCとの間で循環される。マゼンタ色の液体現像剤は、画像形成ユニットFMの現像装置334と循環装置LMとの間で循環される。ブラック色の液体現像剤は、画像形成ユニットFBの現像装置334と循環装置LBとの間で循環される。
画像形成ユニットFY,FC,FM,FBそれぞれは、感光体ドラム331上で現像された画像を転写ベルト361へ転写するための転写ローラー335を更に備える。転写ベルト361は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過する。転写ローラー335は、転写ベルト361を感光体ドラム331の周面に押しつける。転写ローラー335には、電源(図示せず)から感光体ドラム331上の着色粒子Pとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧が印加される。転写ローラー335は、転写ベルト361にトナーと逆極性の電圧を印加する。この結果、導電性の転写ベルト361の表面に着色粒子及び高分子化合物が引き付けられる。かくして、感光体ドラム331に形成された画像は、転写ベルト361の表面に転写される。その後、転写ベルト361は、画像を担持して、シートSまで搬送する。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331から液体現像剤を除去するクリーニング装置336を更に備える。転写ベルト361に画像を転写した感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転に伴い、クリーニング装置336に向かう。クリーニング装置336は、感光体ドラム331の周面に残存する液体現像剤を除去する。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBそれぞれは、感光体ドラム331の周面を除電する除電器337を更に備える。クリーニング装置336によって清掃された感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転にともなって、除電器337による除電位置に進む。除電器337は、感光体ドラム331の周面から電荷を取り除く。その後、感光体ドラム331の周面は、再度、帯電器332によって帯電される。この後、上述の画像形成工程が再度行われ、新たな画像が転写ベルト361へ転写される。
画像形成ユニットFY、FC、FM、FBによる画像の転写の結果、フルカラーの画像は、転写ベルト361によって、転写ローラー365に向けて運ばれる。レジストローラー対352によって、適切なタイミングで、シートSが転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間に供給されるので、シートS上の適切な位置に画像が転写されることとなる。その後、シートSへ画像を転写した転写ベルト361の面は、クリーニング装置366へ向かって移動する。クリーニング装置366は、転写ベルト361上に残存する液体現像剤を除去する。その後、クリーニング装置366によって清掃された転写ベルト361の面は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過し、新たな画像の転写を受ける。
<転写工程>
図13A乃至図13Dは、転写ベルト361への画像の転写を表す概略図である。図14は、カラープリンター300によって形成された画像を有するシートSの概略図である。図12乃至図14を用いて、転写工程が説明される。
上述の如く、画像形成ユニットFYは、最初に、イエロー色の液体現像剤を用いて形成された画像を転写ベルト361に転写する。この結果、転写ベルト361は、イエロー色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLYを担持する(図13A参照)。その後、転写ベルト361は、画像形成ユニットFCによる画像の転写位置へ移動する。
画像形成ユニットFCは、シアン色の液体現像剤を用いて形成された画像を転写ベルト361に転写する。この結果、転写ベルト361は、パターン層PLYに加えて、シアン色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLCを担持する(図13B参照)。このとき、パターン層PLCは、パターン層PLYに重ね合わせられる。その後、転写ベルト361は、画像形成ユニットFMによる画像の転写位置へ移動する。
画像形成ユニットFMは、マゼンタ色の液体現像剤を用いて形成された画像を転写ベルト361に転写する。この結果、転写ベルト361は、パターン層PLY,PLCに加えて、マゼンタ色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLMを担持する(図13C参照)。このとき、パターン層PLMは、パターン層PLY,PLCに重ね合わせられる。その後、転写ベルト361は、画像形成ユニットFBによる画像の転写位置へ移動する。
画像形成ユニットFBは、ブラック色の液体現像剤を用いて形成された画像を転写ベルト361に転写する。この結果、転写ベルト361は、パターン層PLY,PLC,PLMに加えて、ブラック色の液体現像剤を用いて形成されたパターン層PLBを担持する(図13C参照)。このとき、パターン層PLBは、パターン層PLY,PLC,PLMに重ね合わせられる。尚、ブラック色の液体現像剤は、好ましくは、最も低い定着性を有する。
その後、パターン層PLY,PLC,PLM,PLBは、シートSに転写される(図14参照)。パターン層PLBは、シートSの表面に隣接する。パターン層PLMは、パターン層PLB上に積層される。パターン層PLCは、パターン層PLM上に積層される。パターン層PLYは、パターン層PLC上に積層され、最も外側に現れる。
<定着装置>
図15は、定着装置400の概略図である。図4、図12及び図15を用いて、定着装置400が説明される。
定着装置400は、シートSを上方へ搬送する搬送機構410と、シートSに形成された画像層Iを摺擦する摺擦機構420と、を備える。転写機構360から送り出されたシートSは、搬送機構410と摺擦機構420との間を通過する。尚、シートS上の画像層Iは、摺擦機構420に対向する。
搬送機構410は、シートSを安定的に搬送するための搬送ベルト411と、搬送ベルト411を駆動する駆動ローラー412と、駆動ローラー412とともに搬送ベルト411の走行経路を規定する従動ローラー413と、を備える。駆動ローラー412及び従動ローラー413は、摺擦機構420に対向する搬送ベルト411の平坦な面(以下、平坦面414と称される)を形成する。シートSは、平坦面414に支持され、上方に搬送される。
本実施形態において、搬送ベルト411には貫通穴(図示せず)が形成されている。搬送機構410は、搬送ベルト411の貫通穴を通じて、平坦面414上のシートSを吸着する真空装置415を更に備える。真空装置415が平坦面414上にシートSを吸着させるので、シートSは安定的に搬送される。
搬送機構410は、摺擦機構420の下流において、駆動ローラー412に巻回された搬送ベルト411とともにシートSを挟持するニップローラー416を更に備える。ニップローラー416と搬送ベルト411に挟まれたシートSは、ニップローラー416の回転(及び、搬送ベルト411の周回)に伴って、上方へ搬送される。
摺擦機構420は、従動ローラー413の近くに配置される上流摺擦ローラー421と、上流摺擦ローラー421とニップローラー416との間に配置される下流摺擦ローラー422と、を備える。上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、平坦面414に向けて、シートSを若干押圧する。従動ローラー413は、上流摺擦ローラー421による押圧力によって生ずる搬送ベルト411の撓み変形を抑制する。したがって、上流摺擦ローラー421は、シートS上の画像を適切に摺擦することができる。その後、下流摺擦ローラー422は、シートS上の画像を摺擦する。本実施形態において、上流摺擦ローラー421は、第1摺擦部として例示される。下流摺擦ローラー422は、第2摺擦部として例示される。
搬送機構410は、下流摺擦ローラー422の近くに配置されるバックアップローラー417を更に備える。シートSは、バックアップローラー417と下流摺擦ローラー422との間を通過する。バックアップローラー417は、下流摺擦ローラー422による押圧力によって生ずる搬送ベルト411の撓み変形を抑制する。したがって、下流摺擦ローラー422は、シートS上の画像を適切に摺擦することができる。
上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、ニップローラー416と同方向に回転する。したがって、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422による画像に対する摺擦は、シートSの搬送にほとんど影響しない。尚、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面がシートSの搬送速度よりも3倍〜6倍の速度となるように、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の回転速度が定められる。したがって、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、画像層Iを適切に摺擦することができる。
上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面は、好ましくは、図4に示される材料によって覆われる。上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面が、互いに異なる材料で覆われるならば、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は異なる定着率を達成することができる。画像を形成する液体現像剤の種類に応じて、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面を覆う不織布の種類は適切に定められる。代替的に、上流摺擦ローラー421の周面速度とシートSの搬送速度との間の相対速度が、上流摺擦ローラー422の周面速度とシートSの搬送速度との間の相対速度と異なってもよい。像を形成する液体現像剤の種類に応じて、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の速度は適切に定められる。
代替的に、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面は、シートSを帯電させるナイロンブラシによって覆われてもよい。上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422によって帯電されたシートSが搬送ベルト411に静電気的に吸着されるならば、真空装置415の不存在下であっても、シートSは安定的に搬送される。