以下、添付の図面を参照しつつ、例示的な画像形成装置が説明される。尚、以下において用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。
<定着原理>
図1A乃至図1Cは、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1A乃至図1Cの順に、転写工程が進行する。図1A乃至図1Cを参照しつつ、シートSへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
図1Aは、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ベルトであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に引きつけられる。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの引きつけは、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。着色粒子PのシートSへの引きつけに関する原理は、後述の画像形成装置に関連して詳述される。
図1Bは、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
図1Cに示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に生ずる。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
図2A及び図2Bは、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2Aは、定着工程を概略的に示す。図2Bは、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1A乃至図2Bを用いて、定着工程の原理が説明される。
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
図2Aには、画像を摺擦するための摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2Bに示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部がシートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強められる。
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、形成された高分子化合物Rの皮膜層によって覆われているが、摺擦板200の摺擦動作によってさらに強固な樹脂皮膜が形成され、適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
<試験例1>
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、D0は、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、D1は、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2A乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
<試験例2>
図5A乃至図5Dは、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響を調べるための試験方法の概略図である。図5A乃至図5Dは、本実施形態に係る試験条件をそれぞれ例示する。
本試験において、画像層Iが形成されたシートSが用意された。試験例1と同様に、画像層Iは、摺擦板200によって摺擦される。画像層Iに対する摺擦は、図5A乃至図5Dに示される4つの条件でなされた。尚、他の試験条件は、試験例1に関連して説明された試験と同様である。
第1の試験条件(図5A)において、画像層Iは、第1試験方向(右から左)に摺擦された。摺擦期間は5秒間であった。摺擦回数は、80回であった。
第2の試験条件(図5B)において、画像層Iは、第1試験方向及び第1試験方向と反対の第2試験方向(左から右)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ40回であった。
第3の試験条件(図5C)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向並びにこれらに直交する第3試験方向(下から上)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ27回であった。第3試験方向の摺擦回数は26回であった。
第4の試験条件(図5D)において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向、第3試験方向及び第3試験方向と反対の第4試験方向(上から下)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向乃至第4試験方向の摺擦回数はそれぞれ20回であった。
図6は、図5A乃至図5Dに関連して説明された試験条件下で得られた定着率FRを示すグラフである。図6のグラフの横軸は、図5A乃至図5Dに関連して説明された摺擦方向の数を示す。図6のグラフの縦軸は、シートS上の画像層Iの定着率FRを示す。図6に示される定着率FRの算出手法は、試験例1に関連して説明された算出手法に従う。図5A乃至図6を用いて、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響が説明される。
図6に示される如く、摺擦方向の増加に伴って、定着率FRは直線的に増加した。図5Aに関連して説明された第1試験条件の下において、定着率FRは56%であった。図5Bに関連して説明された第2試験条件の下において、定着率FRは73%であった。図5Cに関連して説明された第3試験条件の下において、定着率FRは84%であった。図5Dに関連して説明された第4試験条件の下において、定着率FRは94%であった。
図6に示されるグラフから、摺擦方向の増加は、比較的短期間の摺擦で高い定着率FRをもたらすことが分かる。
<画像形成装置>
図7は、図1A乃至図6に関連して説明された定着技術の原理が適用されたカラープリンター300の概略図である。図7を用いて、カラープリンター300が説明される。本実施形態において、カラープリンター300は、画像形成装置として例示される。代替的に、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を含む複合機やシートS上に画像を形成することができる他の装置であってもよい。
カラープリンター300は、画像を形成するための様々な装置や部品が収容される上側筐体310と、上側筐体310の下方に配設される下側筐体320と、を備える。カラープリンター300は、液体現像剤を循環させるための循環装置LY,LM,LC,LBを更に備える。循環装置LY,LM,LC,LBは、下側筐体320内に収容される。尚、循環装置LYは、画像中のイエロー成分の画像を描くためのイエロー色の液体現像剤を循環させる。循環装置LMは、画像中のマゼンタ成分の画像を描くためのマゼンタ色の液体現像剤を循環させる。循環装置LCは、画像中のシアン成分の画像を描くためのシアン色の液体現像剤を循環させる。循環装置LBは、画像中のブラック成分の画像を描くためのブラック色の液体現像剤を循環させる。液体現像剤は、後述される。
カラープリンター300は、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部330を備える。画像形成部330は、イエロー色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFYと、マゼンタ色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFMと、シアン色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFCと、ブラック色の液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成ユニットFBと、を含む。画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、上側筐体310内に配設される。イエロー色の液体現像剤は、循環装置LYと画像形成ユニットFYとの間で循環される。マゼンタ色の液体現像剤は、循環装置LMと画像形成ユニットFMとの間で循環される。シアン色の液体現像剤は、循環装置LCと画像形成ユニットFCとの間で循環される。ブラック色の液体現像剤は、循環装置LBと画像形成ユニットFBとの間で循環される。循環装置LY、LM、LC、LBによる液体現像剤の循環原理に対して、既知の画像形成装置で用いられる液体現像剤用の循環技術が適宜用いられてもよい。したがって、図7において、循環装置LY、LM、LC、LBと画像形成ユニットFY、FM、FC、FBとを接続する配管は示されていない。
図8は、上側筐体310内の内部構造の概略図である。図3及び図8を用いて、カラープリンター300が更に説明される。
カラープリンター300は、シートSが収容されるカセット340と、カセット340からシートSを引き出す給紙機構350を更に備える。カセット340からシートSを引き出す給紙機構350に対して、一般的なプリンターやコピー機といった装置の給紙構造が適用されてもよい。
カラープリンター300は、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBによって形成された画像をシートSに転写するための転写機構360を更に備える。上側筐体310は、給紙機構350から転写機構360に向けて上方に延びる給紙搬送路351を規定する。シートSは、給紙搬送路351によって案内され、転写機構360に向けて搬送される。本実施形態において、転写機構360は、転写部として例示される。
カラープリンター300は、転写機構360によるシートSへの画像の転写タイミングに合わせて、シートSを転写機構360に供給するレジストローラー対352と、給紙機構350から送り出されたシートSをレジストローラー対352へ供給する搬送ローラー対353と、を更に備える。給紙機構350によってカセット340から引き出されたシートSは、搬送ローラー対353によって、上方に送られる。その後、レジストローラー対352は、シートSの搬送タイミングを調整し、転写機構360へシートSを供給する。
カラープリンター300は、転写機構360によって画像が転写されたシートSを定着させるための上流定着装置400と、上流定着装置400の後に画像を定着させるための摺擦動作を実行する下流定着装置500と、下流定着装置500によって摺擦される画像を担持したシートSの搬送方向を調整するスイッチバック装置600と、を更に備える。スイッチバック装置600が、シートSの搬送方向を切り換えている間、下流定着装置500は、シートS上の画像を摺擦する。上流定着装置400、下流定着装置500及びスイッチバック装置600の動作や構造は、後述される。本実施形態において、下流定着装置500は、第1摺擦部として例示される。
カラープリンター300は、転写機構360、上流定着装置400、下流定着装置500、スイッチバック装置600、画像形成部330及びカセット340を収容する上側筐体310からシートSを排出する排出機構354を更に備える。上側筐体310は、スイッチバック装置600又は排出機構354へシートSを選択的に送り込むための経路を規定する。シートSの搬送経路の選択機構は、後述される。上流定着装置400は、下流定着装置500の前に、シートS上の画像を摺擦する。この結果、画像は、シートSに定着される。画像の形成条件(例えば、環境温度、環境湿度或いはシートSの種類)を考慮して、画像が十分にシートS上に定着されると判断されるならば、シートSは、スイッチバック装置600へ送られることなく、排出機構354へ送られてもよい。画像が十分にシートS上に定着されていないと判断されるならば、シートSは、スイッチバック装置600に送られる。スイッチバック装置600上で、下流定着装置500が画像を、再度、摺擦するので、画像の定着率は向上する(図3参照)。本実施形態において、上流定着装置400は、第2摺擦部として例示される。上側筐体310は、筐体として例示される。排出機構354は、排出部として例示される。
上側筐体310は、排出機構354及びスイッチバック装置600へ向かう経路に加えて、スイッチバック装置600から送り出されたシートSをレジストローラー対352へ、再度、送り込むための戻し搬送路355を規定する。戻し搬送路355は、転写機構360の上流のレジストローラー対352の直前で、給紙搬送路351に合流する。使用者が、両面印刷をカラープリンター300に指示するならば、シートSは、戻し搬送路355を通じて、再度、レジストローラー対352へ送り込まれる。その後、シートSのブランク面に新たな画像が形成される。
カラープリンター300は、スイッチバック装置600から排出されたシートSを戻し搬送路355へ引き込む引込ローラー対356を更に備える。引込ローラー対356の動作は後述される。本実施形態において、引込ローラー対356は、引込部として例示される。
上述の如く、シートSがレジストローラー対352から上流定着装置400へ搬送される間に、転写機構360は、画像をシートSへ転写する。転写機構360は、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBによって画像が順次転写される転写ベルト361と、転写ベルト361を駆動する駆動ローラー362と、駆動ローラー362とともに転写ベルト361の走行経路を規定する従動ローラー363と、転写ベルト361に張力を与え、転写ベルト361の走行を安定化させるテンションローラー364と、駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361に圧接される転写ローラー365と、転写ベルト361を清掃するクリーニング装置366と、を備える。レジストローラー対352は、転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間にシートSを送り込む。
図9は、転写ベルト361の概略的な断面図である。図10は、転写ローラー365の概略的な断面図である。図1A乃至図1C並びに図8乃至図10を用いて、転写機構360が説明される。
図9に示される如く、転写ベルト361は、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBによって画像層Iが転写されるコート層371と、転写ベルト361に対する引張強度を担保するための基層372と、基層372とコート層371との間に形成された弾性層373と、を含む。基層372として、好ましくは、PIやPVDFといった材料が用いられる。弾性層373として、好ましくは、画像層Iを形成する液体現像剤が含有するパラフィンオイルに対して膨潤しにくい材料(例えば、ポリウレタンゴムやNBR)が用いられる。弾性層373の硬度(JIS−A)は、好ましくは、50°以下である。弾性層373の硬度(JIS−A)は、より好ましくは、30°である。弾性層373の厚さは、好ましくは、200μm以上500μm以下である。コート層371は、好ましくは、付着性が低い材料(例えば、表面自由エネルギが20mN/m以下)を用いて形成される。本実施形態において、コート層371の体積抵抗率は、107Ω・cm以上109Ω・cm以下に設定される。
図10に示される如く、転写ローラー365は、シャフト部375と、シャフト部375を覆う弾性層376と、を含む。弾性層376として、好ましくは、画像層Iを形成する液体現像剤が含有するパラフィンオイルに対して膨潤しにくい材料(例えば、ポリウレタンゴムやNBR)が用いられる。本実施形態において、弾性層376の体積抵抗率は、104Ω・cm以上107Ω・cm以下に設定される。
転写ローラー365は、転写ベルト361との間で電界を発生させ、図1A乃至図1Cに関連して説明された如く、着色粒子PをシートSに引き寄せる。画像層Iは、転写ベルト361と転写ローラー365との間の電界と押圧とによって、シートSに転写される。転写ローラー365は、1.0N/m以上1.5N/m以下の面圧を転写ベルト361に生じさせるように配設される。
図8に示される如く、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、転写ベルト361の下面に沿って配設される。画像形成ユニットFYは、イエロー色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。その後、画像形成ユニットFMは、マゼンタ色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。更にその後、画像形成ユニットFCは、シアン色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。最後に、画像形成ユニットFBは、ブラック色の液体現像剤によって描かれた画像を転写ベルト361に転写する。この結果、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBから転写ベルト361に転写されたイエロー色、マゼンタ色、シアン色及びブラック色の画像は、転写ベルト361上で重ね合わせられ、フルカラー画像となる。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBそれぞれは、感光体ドラム331と、感光体ドラム331の周面を略一様に帯電させる帯電器332と、帯電した感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する露光装置333と、を備える。帯電器332によって帯電された感光体ドラム331は、感光体ドラム331の回転の結果、露光装置333によるレーザ光の照射位置に移動する。露光装置333は、外部装置(図示せず:例えば、パーソナルコンピュータ)から送信された画像データに応じて、感光体ドラム331の周面にレーザ光を照射する。この結果、感光体ドラム331の周面に、画像データに対応する静電潜像が形成される。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBそれぞれは、液体現像剤を感光体ドラム331の周面に塗布する現像装置334を更に備える。感光体ドラム331の回転の結果、静電潜像が形成された感光体ドラム331の周面は、現像装置334による液体現像剤の塗布位置に移動する。現像装置334が液体現像剤を感光体ドラム331に塗布する結果、感光体ドラム331の周面の静電潜像が現像される。現像装置334は、液体現像剤を用いて静電潜像を現像する既知の現像装置であってもよい。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBそれぞれは、感光体ドラム331上で現像された画像を転写ベルト361へ転写するための転写ローラー335を更に備える。転写ベルト361は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過する。転写ローラー335は、転写ベルト361を感光体ドラム331の周面に押しつける。転写ローラー335には、電源(図示せず)から感光体ドラム331上の着色粒子Pとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧が印加される。転写ローラー335は、転写ベルト361にトナーと逆極性の電圧を印加する。この結果、導電性の転写ベルト361の表面に着色粒子P及び高分子化合物Rが引き付けられる。かくして、感光体ドラム331に形成された画像は、転写ベルト361の表面に転写される。その後、転写ベルト361は、画像を担持して、シートSまで搬送する。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBそれぞれは、感光体ドラム331から液体現像剤を除去するクリーニング装置336を更に備える。転写ベルト361に画像を転写した感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転に伴い、クリーニング装置336に向かう。クリーニング装置336は、感光体ドラム331の周面に残存する液体現像剤を除去する。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBそれぞれは、感光体ドラム331の周面を除電する除電器337を更に備える。クリーニング装置336によって清掃された感光体ドラム331の周面は、感光体ドラム331の回転にともなって、除電器337による除電位置に進む。除電器337は、感光体ドラム331の周面から電荷を取り除く。その後、感光体ドラム331の周面は、再度、帯電器332によって帯電される。この後、上述の画像形成工程が再度行われ、新たな画像が転写ベルト361へ転写される。
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBによる画像の転写の結果、フルカラーの画像は、転写ベルト361によって、転写ローラー365に向けて運ばれる。レジストローラー対352によって、適切なタイミングで、シートSが転写ローラー365と駆動ローラー362に巻回された転写ベルト361との間に供給されるので、シートS上の適切な位置に画像が転写されることとなる。その後、シートSへ画像を転写した転写ベルト361の面は、クリーニング装置366へ向かって移動する。クリーニング装置366は、転写ベルト361上に残存する液体現像剤を除去する。その後、クリーニング装置366によって清掃された転写ベルト361の面は、転写ローラー335と感光体ドラム331との間を通過し、新たな画像の転写を受ける。
<定着装置>
図11は、上流定着装置400の概略図である。図4、図8及び図11を用いて、上流定着装置400が説明される。
上流定着装置400は、シートSを上方へ搬送する搬送機構410と、シートSに形成された画像層Iを摺擦する摺擦機構420と、を備える。転写機構360から送り出されたシートSは、搬送機構410と摺擦機構420との間を通過する。尚、シートS上の画像層Iは、摺擦機構420に対向する。
搬送機構410は、シートSを安定的に搬送するための搬送ベルト411と、搬送ベルト411を駆動する駆動ローラー412と、駆動ローラー412とともに搬送ベルト411の走行経路を規定する従動ローラー413と、を備える。駆動ローラー412及び従動ローラー413は、摺擦機構420に対向する搬送ベルト411の平坦な面(以下、平坦面414と称される)を形成する。シートSは、平坦面414に支持され、上方に搬送される。
本実施形態において、搬送ベルト411には貫通穴(図示せず)が形成されている。搬送機構410は、搬送ベルト411の貫通穴を通じて、平坦面414上のシートSを吸着する真空装置415を更に備える。真空装置415が平坦面414上にシートSを吸着させるので、シートSは安定的に搬送される。
搬送機構410は、摺擦機構420の下流において、駆動ローラー412に巻回された搬送ベルト411とともにシートSを挟持するニップローラー416を更に備える。ニップローラー416と搬送ベルト411に挟まれたシートSは、ニップローラー416の回転(及び、搬送ベルト411の周回)に伴って、上方へ搬送される。
摺擦機構420は、従動ローラー413の近くに配置される上流摺擦ローラー421と、上流摺擦ローラー421とニップローラー416との間に配置される下流摺擦ローラー422と、を備える。上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、平坦面414に向けて、シートSを若干押圧する。従動ローラー413は、上流摺擦ローラー421による押圧力によって生ずる搬送ベルト411の撓み変形を抑制する。したがって、上流摺擦ローラー421は、シートS上の画像層Iを適切に摺擦することができる。
搬送機構410は、下流摺擦ローラー422の近くに配置されるバックアップローラー417を更に備える。シートSは、バックアップローラー417と下流摺擦ローラー422との間を通過する。バックアップローラー417は、下流摺擦ローラー422による押圧力によって生ずる搬送ベルト411の撓み変形を抑制する。したがって、下流摺擦ローラー422は、シートS上の画像層Iを適切に摺擦することができる。
上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、ニップローラー416と同方向に回転する。したがって、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422による画像層Iに対する摺擦は、シートSの搬送にほとんど影響しない。尚、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面がシートSの搬送速度よりも3倍〜6倍の速度となるように、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の回転速度が定められる。したがって、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422は、画像層Iを適切に摺擦することができる。
上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面は、好ましくは、図4に示される材料によって覆われる。例えば、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面が「PTFEフェルトA」によって覆われるならば、高い定着率が達成される。
代替的に、上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422の周面は、シートSを帯電させるナイロンブラシによって覆われてもよい。上流摺擦ローラー421及び下流摺擦ローラー422によって帯電されたシートSが搬送ベルト411に静電気的に吸着されるならば、真空装置415の不存在下であっても、シートSは安定的に搬送される。
図12A及び図12Bは、スイッチバック装置600とともに動作する下流定着装置500の概略図である。図4、図6、図8、図12A及び図12Bを用いて、スイッチバック装置600及び下流定着装置500が説明される。
下流定着装置500は、スイッチバック装置600の下方に配置される。上流定着装置400によって定着処理を受けたシートSは、必要に応じて、スイッチバック装置600と下流定着装置500との間に送り込まれる。
スイッチバック装置600は、シートSを安定的に保持並びに搬送する搬送ベルト610と、搬送ベルト610を駆動する駆動ローラー620と、駆動ローラー620とともに搬送ベルト610の走行経路を規定する従動ローラー630と、を備える。スイッチバック装置600は、駆動ローラー620に巻回された搬送ベルト610に押圧されるニップローラー640を更に備える。
スイッチバック装置600に送り込まれたシートSは、ニップローラー640と駆動ローラー620に巻回された搬送ベルト610との間を通過する。図12Aに示される駆動ローラー620及びニップローラー640は、スイッチバック装置600の内方へシートSを送り込むように回転する。以下の説明において、図12Aに示されるシートSの搬送方向(下流定着装置500にシートSを供給する方向)は、「第1方向」と称される。図12Bに示される駆動ローラー620及びニップローラー640は、スイッチバック装置600からシートSを引き出すように回転する。以下の説明において、図12Bに示されるシートSの搬送方向(下流定着装置500からシートSを引き出す方向)は、「第2方向」と称される。スイッチバック装置600は、画像層Iが転写されたシートSを第1方向に搬送した後、第1方向とは反対の第2方向へシートSの搬送方向を切り替える。
駆動ローラー620及び従動ローラー630は、下流定着装置500に対向する搬送ベルト610の平坦な面(以下、平坦面611と称される)を形成する。シートSは、平坦面611に支持され、第1方向又は第2方向に搬送される。
本実施形態において、搬送ベルト610には貫通穴(図示せず)が形成されている。スイッチバック装置600は、搬送ベルト610の貫通穴を通じて、平坦面611上のシートSを吸着する真空装置650を更に備える。真空装置650が平坦面611上にシートSを吸着させるので、シートSは安定的に搬送される。
下流定着装置500は、ニップローラー640に隣接して配設される外側摺擦ローラー510と、外側摺擦ローラー510に隣接して配設される内側摺擦ローラー520と、を備える。外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520は、平坦面611に向けて、シートSを若干押圧する。従動ローラー630は、内側摺擦ローラー520による押圧力によって生ずる搬送ベルト610の撓み変形を抑制する。したがって、内側摺擦ローラー520は、シートS上の画像層Iを適切に摺擦することができる。
スイッチバック装置600は、外側摺擦ローラー510の近くに配置されるバックアップローラー660を更に備える。シートSは、バックアップローラー660と外側摺擦ローラー510との間を通過する。バックアップローラー660は、外側摺擦ローラー510による押圧力によって生ずる搬送ベルト610の撓み変形を抑制する。したがって、外側摺擦ローラー510は、シートS上の画像層Iを適切に摺擦することができる。
図12Aに示される如く、スイッチバック装置600がシートSを第1方向に搬送している間、外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520は、シートSを第1方向に摺擦するように回転する。以下の説明において、シートSを第1方向に摺擦する外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520の回転方向は、「第1回転方向」と称される。図12Bに示される如く、スイッチバック装置600がシートSを第2方向に搬送している間、外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520は、シートSを第2方向に摺擦するように回転する。以下の説明において、シートSを第2方向に摺擦する外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520の回転方向は、「第2回転方向」と称される。本実施形態において、外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520は、摺擦ローラーとして例示される。
図6に示される結果から、1方向に摺擦する上流定着装置400よりも2方向に摺擦する下流定着装置500の方が、高い定着率を達成できることが分かる。本実施形態において、画像層Iの形成条件に応じて、画像層Iの定着率が十分であるか否かが判定される。上流定着装置400による摺擦だけでは、十分な定着率が得られないと判定されるならば、シートSは、下流定着装置500へ送り込まれる。
外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520の周面は、好ましくは、図4に示される材料によって覆われる。例えば、外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520の周面が「PTFEフェルトA」によって覆われるならば、高い定着率が達成される。
代替的に、外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520の周面は、シートSを帯電させるナイロンブラシによって覆われてもよい。外側摺擦ローラー510及び内側摺擦ローラー520によって帯電されたシートSが搬送ベルト610に静電気的に吸着されるならば、真空装置650の不存在下であっても、シートSは安定的に搬送される。
<搬送経路>
図13は、上流定着装置400及び下流定着装置500の周囲におけるカラープリンター300の概略的な拡大図である。図8及び図13を用いて、上流定着装置400及び下流定着装置500の周囲のシートSの搬送経路が説明される。
上側筐体310は、上流定着装置400から排出されたシートSを案内する主案内路381と、主案内路381の下流端から下流定着装置500(スイッチバック装置600)に向けてシートSを案内する第1案内路382と、主案内路の下流端から排出機構354へ向けてシートSを案内する第2案内路383と、を規定する。本実施形態において、第1案内路382は、第1経路として例示される。第2案内路383は、第2経路として例示される。
第2案内路383は、戻し搬送路355の上端に合流する。上側筐体310は、スイッチバック装置600によって第2方向に送り出されたシートSを、第2案内路383と戻し搬送路355との合流点に向けて案内するスイッチバック案内路384と、第2案内路383と戻し搬送路355との合流点から排出機構354に向けて延びる排出路385と、を規定する。スイッチバック装置600によって第2方向に送り出されたシートSは、スイッチバック案内路384によって、第2案内路383と戻し搬送路355との合流点に案内される。その後、シートSは、戻し搬送路355に進入する。本実施形態において、戻し搬送路355は、第3経路として例示される。スイッチバック案内路384は、第4経路として例示される。
カラープリンター300は、排出路385に送られたシートSを排出機構354に送る搬送ローラー対386を更に備える。シートSが、上流定着装置400から直接的に排出機構354に送られるとき、搬送ローラー対386はシートSを挟持し、排出機構354へ送る。
下流定着装置500から第2方向に送られたシートSは、スイッチバック案内路384を通じて、戻し搬送路355に至る。このとき、引込ローラー対356は、シートSを戻し搬送路355内に引き込むように回転する。以下の説明において、戻し搬送路355に引き込まれるシートSの搬送方向は、「引込方向」と称される。引込方向とは反対のシートSの搬送方向は、「排出方向」と称される。
使用者が、カラープリンター300に両面印刷を指示しているならば、引込ローラー対356は、引込方向のシートSの搬送を維持するように回転する。他の場合には、引込ローラー対356は、シートSを所定長さだけ引込方向に搬送した後、逆転する。この結果、シートSは、排出路385に送り込まれる。その後、シートSは、搬送ローラー対386によって、排出機構354に送られる。
図14は、画像の形成条件に応じて、シートSの搬送経路を選択的に切り替える切替機構700の概略的なブロック図である。図1A乃至図1C並びに図13及び図14を用いて、切替機構700が説明される。
カラープリンター300は、画像の形成条件に応じて、シートSの搬送経路を選択的に切り替える切替機構700を更に備える。切替機構700は、シートSの種類に関する情報が入力されるコンソール711と、シートS上の画像が定着される環境の温度を測定する温度センサー712と、シートS上の画像が定着される環境の湿度を測定する湿度センサー713と、を含む。本実施形態において、切替機構700は、切替部として例示される。
図1A乃至図1Cに関連して説明された定着原理から、画像の定着率は、シートSに対するキャリア液Cの浸透速度に影響されることが分かる。シートSがキャリア液Cの過度に高い浸透速度を許容する場合やキャリア液CがシートSに浸透しにくい場合には、画像の定着率は低くなる。使用者がカラープリンター300に備え付けられたコンソール711にシートSの種類に関する情報を入力するならば、カラープリンター300は、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定することができる。
本発明者の知見によれば、定着処理が行われる環境の温度や湿度も画像の定着率に影響を与える。温度センサー712及び湿度センサー713は、好ましくは、上流定着装置400及び/又は下流定着装置500の近くに配設される。
本実施形態において、コンソール711が取得するシート種情報、温度センサー712が取得する温度情報及び湿度センサー713が取得する湿度情報は、画像の形成条件として例示される。代替的に、画像の定着率に影響を与える他の因子に関する情報が画像の形成条件として用いられてもよい。
本実施形態において、コンソール711、温度センサー712及び湿度センサー713は、取得部として例示される。コンソール711は、シート情報取得部として例示される。温度センサー712は、温度測定部として例示される。湿度センサー713は、湿度測定部として例示される。尚、取得部は、コンソール711、温度センサー712及び湿度センサー713のうち少なくとも1つを含んでもよい。代替的に、取得部は、画像の定着率に影響を与える他の因子に関する情報を取得することができる他の素子や装置を含んでもよい。
本実施形態において、シート種情報は、カラープリンター300に備え付けられたコンソール711を介して入力される。代替的に、シート種情報は、カラープリンター300に所定の指示を与える外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)からの信号に含まれてもよい。
切替機構700は、シート種情報、温度情報及び湿度情報に基づき、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定し、判定結果に基づき、カラープリンター300の様々な装置を制御する制御部720を更に含む。制御部720は、シート種情報、温度情報及び湿度情報が入力される第1入力部721と、シート種、温度及び湿度の条件の組み合わせの下、上流定着装置400によって達成され得る定着率に関する定着率情報を予め記憶した記憶部722と、シート種情報、温度情報、湿度情報及び定着率情報に基づき、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定する判定部723と、を備える。
コンソール711、温度センサー712及び湿度センサー713は、シート種情報、温度情報及び湿度情報を第1入力部721にそれぞれ入力する。第1入力部721は、その後、シート種情報、温度情報及び湿度情報を判定部723に出力する。
判定部723は、記憶部722にアクセスし、定着率情報を取得する。判定部723は、その後、シート種情報、温度情報及び湿度情報と定着率情報とを比較し、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定する。
切替機構700は、主案内路381に設けられた第1スイッチセンサー731と、戻し搬送路355に設けられた第2スイッチセンサー732と、排出路385に設けられた第3スイッチセンサー733と、を更に含む。
図15Aは、第1スイッチセンサー731の概略図である。図15Bは、第2スイッチセンサー732の概略図である。図15Cは、第3スイッチセンサー733の概略図である。図13乃至図15Cを用いて、第1スイッチセンサー731、第2スイッチセンサー732及び第3スイッチセンサー733が説明される。
第1スイッチセンサー731は、主案内路381内に突出するレバー部741と、レバー部741を支持する筐体742と、を備える。レバー部741は、主案内路381内に突出する第1位置(図15Aの左図を参照)と、主案内路381に沿って横たわる第2位置(図15Aの右図参照)との間で回動する。
シートSが主案内路381を通過している間、レバー部741はシートSに接触する。この結果、レバー部741は、第2位置に向けて倒れる。レバー部741は、第1位置に向けて付勢される。したがって、シートSが主案内路381に進入する前或いはシートSが主案内路381を通過した後、レバー部741は、第1位置に戻る。
図13に示される如く、第1スイッチセンサー731は、上流定着装置400の直後に配設される。したがって、レバー部741が第2位置に存することは、上流定着装置400からシートSが排出されていることを意味する。一方、レバー部741が第1位置に存することは、主案内路381内におけるシートSの不存在を意味する。
第1スイッチセンサー731は、レバー部741の位置(第1位置又は第2位置)に対応した検出信号を生成並びに出力する回路素子(図示せず)を備える。回路素子は、筐体742内に収容される。
第2スイッチセンサー732は、戻し搬送路355内に突出するレバー部743と、レバー部743を支持する筐体744と、を備える。レバー部743は、戻し搬送路355内に突出する第1位置(図15Bの左図を参照)と、戻し搬送路355に沿って横たわる第2位置(図15Bの右図参照)との間で回動する。
シートSが戻し搬送路355を通過している間、レバー部743はシートSに接触する。この結果、レバー部743は、第2位置に向けて倒れる。レバー部743は、第1位置に向けて付勢される。したがって、シートSが戻し搬送路355に進入する前或いはシートSが戻し搬送路355を通過した後、レバー部743は、第1位置に戻る。
図13に示される如く、第2スイッチセンサー732は、引込ローラー対356の直下に配設される。したがって、レバー部743が第2位置に存することは、引込ローラー対356によってシートSが挟持されていることを意味する。一方、レバー部743が第1位置に存することは、シートSが引込ローラー対356の制御下にないことを意味する。
第2スイッチセンサー732は、レバー部743の位置(第1位置又は第2位置)に対応した検出信号を生成並びに出力する回路素子(図示せず)を備える。回路素子は、筐体744内に収容される。
第3スイッチセンサー733は、排出路385内に突出するレバー部745と、レバー部743を支持する筐体746と、を備える。レバー部743は、排出路385内に突出する第1位置(図15Cの左図を参照)と、排出路385に沿って横たわる第2位置(図15Cの右図参照)との間で回動する。
シートSが排出路385を通過している間、レバー部745はシートSに接触する。この結果、レバー部745は、第2位置に向けて倒れる。レバー部745は、第1位置に向けて付勢される。したがって、シートSが排出路385に進入する前或いはシートSが排出路385を通過した後、レバー部745は、第1位置に戻る。
図13に示される如く、第3スイッチセンサー733は、搬送ローラー対386の直下に配設される。したがって、レバー部745が第2位置に存することは、排出路385内へのシートSの進入を意味する。一方、レバー部745が第1位置に存することは、排出路385内におけるシートSの不存在を意味する。
第3スイッチセンサー733は、レバー部745の位置(第1位置又は第2位置)に対応した検出信号を生成並びに出力する回路素子(図示せず)を備える。回路素子は、筐体746内に収容される。
図14に示される如く、制御部720は、第1スイッチセンサー731、第2スイッチセンサー732及び第3スイッチセンサー733が生成するシートSに対する検出信号が入力される第2入力部724と、シートSに対する検出信号と判定部723による判定結果とに応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部725と、を更に備える。第1スイッチセンサー731、第2スイッチセンサー732及び第3スイッチセンサー733は、シートSの検出を通知する検出信号を第2入力部724へ出力する。第2入力部724は、これらの検出信号をタイミング信号生成部725へ出力する。上述の如く、判定部723は、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定する。判定部723は、その後、判定結果をタイミング信号生成部725に出力する。
図16A及び図16Bは、上流定着装置400及び下流定着装置500の周囲におけるカラープリンター300の概略的な拡大図である。図14、図16A及び図16Bを用いて、切替機構700が更に説明される。
切替機構700は、第1案内路382と第2案内路383との間の分岐部に配設された第1切替片751と、スイッチバック案内路384、戻し搬送路355、第2案内路383及び排出路385の間の合流点に配設された第2切替片752と、を更に備える。
図16Aに示される第1切替片751は、上流定着装置400から下流定着装置500へ至る経路(主案内路381及び第1案内路382)を開く一方で、第2案内路383を閉じる。以下の説明において、図16Aに示される第1切替片751の姿勢は、「第1姿勢」と称される。
図16Aに示される第2切替片752は、排出路385を閉じる一方で、スイッチバック装置600から排出されたシートSが、スイッチバック案内路384を通じて、戻し搬送路355へ搬送されることを許容する。以下の説明において、図16Aに示される第2切替片752の姿勢は、「第1姿勢」と称される。
図16Bに示される第1切替片751は、第1案内路382を閉じる一方で、第2案内路383を開く。以下の説明において、図16Bに示される第1切替片751の姿勢は、「第2姿勢」と称される。
図16Bに示される第2切替片752は、スイッチバック案内路384、戻し搬送路355、第2案内路383及び排出路385の間の合流点から排出路385を開く一方で、スイッチバック装置600から引込ローラー対356へ至る経路(スイッチバック案内路384及び戻し搬送路355)を閉じる。以下の説明において、図16Bに示される第2切替片752の姿勢は、「第2姿勢」と称される。図16Bに示される如く、第1切替片751及び第2切替片752がともに第2姿勢であるならば、上流定着装置400によって定着処理を受けたシートSは、排出機構354に直接的に搬送されることとなる。
図14に示される如く、制御部720は、第1切替片751及び第2切替片752を駆動するための切替片駆動部726と、下流定着装置500、スイッチバック装置600及び引込ローラー対356を駆動するスイッチバック駆動部727と、排出機構354を駆動する排出駆動部728と、を更に備える。タイミング信号生成部725は、判定部723から出力された判定結果に応じて、タイミング信号の出力先を決定してもよい。タイミング信号生成部725は、第2入力部724を介して送られた検出信号に応じて、タイミング信号に駆動開始(或いは、駆動停止)のタイミングを通知するためのタイミング情報を含めることができる。
図17は、制御部720が実行する信号処理を概略的に表すフローチャートである。図14乃至図17を用いて、切替機構700が更に説明される。
(ステップS105)
タイミング信号生成部725は、第1スイッチセンサー731のレバー部741が第2位置(スイッチオン)になったか否かを判定する。第1スイッチセンサー731のレバー部741が第2位置になっているとタイミング信号生成部725が判定するならば、ステップS110が実行される。他の場合には、ステップS105が繰り返され、タイミング信号生成部725は、上流定着装置400からのシートSの排出を待つ。第1スイッチセンサー731のレバー部741が第2位置になっているならば、転写機構360と第1切替片751との間にシートSが存在している。本実施形態において、第1スイッチセンサー731は、第1検出部として例示される。
(ステップS110)
ステップS110において、判定部723は、シート種情報、温度情報及び湿度情報及び定着率情報に基づいて、下流定着装置500による定着処理が必要か否かを判定する。判定部723が、下流定着装置500による定着処理が必要と判定するならば、ステップS110が実行される。判定部723が、下流定着装置500による定着処理が不必要と判定するならば、ステップS165が実行される。
(ステップS115)
ステップS115において、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726にタイミング信号を出力する。切替片駆動部726は、第1切替片751を駆動するアクチュエータ(図示せず:例えば、ステッピングモータ)に駆動信号を出力し、第1切替片751を第1姿勢にする。この結果、第1案内路382が開かれ、第2案内路383が閉じられる。その後、ステップS120が実行される。
(ステップS120)
ステップS120において、タイミング信号生成部725は、スイッチバック駆動部727にタイミング信号を出力する。スイッチバック駆動部727は、タイミング信号に応じて、スイッチバック装置600と下流定着装置500とに駆動信号を出力する。この結果、スイッチバック装置600が第1方向及び第2方向にシートSを移動させている間、下流定着装置500は、第1方向及び第2方向にシートS上の画像を摺擦する。その後、ステップS125が実行される。本実施形態において、下流定着装置500及びスイッチバック装置600は、互いに独立して制御される。したがって、下流定着装置500及びスイッチバック装置600の動作は、非同期であってもよく、或いは、同期していてもよい。代替的に、下流定着装置500及びスイッチバック装置600は、ギア機構といった適切な機械的な連結機構によって連結されてもよい。この場合、スイッチバック駆動部は、下流定着装置500及びスイッチバック装置600をともに駆動する駆動源(図示せず:例えば、モーター)に駆動信号を出力する。
(ステップS125)
ステップS125において、切替片駆動部726は、第2切替片752を駆動するアクチュエータ(図示せず:例えば、ステッピングモータ)に駆動信号を出力し、第2切替片752を第1姿勢にする。この結果、スイッチバック装置600によるシートSの搬送方向の切替タイミングに応じて、スイッチバック案内路384から戻し搬送路355へ至る経路が開かれる一方で、排出路385は閉じられる。尚、第2切替片752を駆動するアクチュエータへの駆動信号の出力は、ステップS115において切替片駆動部726に出力されたタイミング信号に基づくものであってもよい。その後、ステップS130が実行される。
(ステップS130)
ステップS130において、スイッチバック駆動部727は、引込ローラー対356を駆動するモーター(図示せず)に駆動信号を出力する。この結果、引込ローラー対356は、引込方向へシートSを排出するように回転する。その後、ステップS135が実行される。
(ステップS135)
ステップS135において、タイミング信号生成部725は、第2スイッチセンサー732のレバー部743が第2位置(スイッチオン)になったか否かを判定する。第2スイッチセンサー732のレバー部743が第2位置になっているとタイミング信号生成部725が判定するならば、ステップS135が実行される。他の場合には、ステップS135が繰り返され、引込ローラー対356は、引込方向へシートSを排出するように回転し続ける。本実施形態において、第2スイッチセンサー732は、第2検出部として例示される。
(ステップS140)
ステップS140において、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726へタイミング信号を出力する。その後、切替片駆動部726は、タイミング信号に応じて、第2切替片752を駆動するアクチュエータに駆動信号を出力し、第2切替片752は、第1姿勢から第2姿勢へ姿勢を変更する。この結果、排出路385が開かれることとなる。その後、ステップS145が実行される。
(ステップS145)
ステップS145において、タイミング信号生成部725は、更に、スイッチバック駆動部727にタイミング信号を出力する。スイッチバック駆動部727は、引込ローラー対356を駆動するモーターに駆動信号を出力する。この結果、引込ローラー対356は逆転し、シートSは、排出路385に向けて搬送される。その後、ステップS150が実行される。
(ステップS150)
ステップS150において、タイミング信号生成部725は、第3スイッチセンサー733のレバー部745が第2位置(スイッチオン)になったか否かを判定する。第3スイッチセンサー733のレバー部745が第2位置になっているとタイミング信号生成部725が判定するならば、ステップS155が実行される。他の場合には、ステップS150が繰り返され、タイミング信号生成部725は、排出路385へのシートSの進入を待つ。
(ステップS155)
ステップS155において、タイミング信号生成部725は、排出駆動部728へタイミング信号を出力する。タイミング信号生成部725は、排出機構354へ駆動信号を出力する。本実施形態において、搬送ローラー対386は、排出機構354に機械的に連結されている。したがって、排出機構354の駆動に伴い、搬送ローラー対386も回転し、シートSは、排出機構354に送られる。最終的に排出機構354は、シートSを排出する。その後、ステップS160が実行される。
(ステップS160)
ステップS160において、タイミング信号生成部725は、スイッチバック駆動部727にタイミング信号を出力する。スイッチバック駆動部727は、下流定着装置500、スイッチバック装置600及び引込ローラー対356を停止させるための停止信号を出力する。
(ステップS165)
ステップS165において、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726のタイミング信号を出力する。切替片駆動部726は、第1切替片751を駆動するアクチュエータに駆動信号を出力し、第1切替片751を第2姿勢にする。この結果、第1案内路382が閉じられる一方で、第2案内路383が開かれる。その後、ステップS170が実行される。
(ステップS170)
ステップS170において、切替片駆動部726は、第2切替片752を駆動するアクチュエータに駆動信号を更に出力し、第2切替片752を第2姿勢にする。この結果、排出路385が開かれる。その後、ステップS175が実行される。
(ステップS175)
ステップS175において、タイミング信号生成部725は、第3スイッチセンサー733のレバー部745が第2位置(スイッチオン)になったか否かを判定する。第3スイッチセンサー733のレバー部745が第2位置になっているとタイミング信号生成部725が判定するならば、ステップS155が実行される。他の場合には、ステップS175が繰り返され、タイミング信号生成部725は、排出路385へのシートSの進入を待つ。
(ステップS180)
ステップS180において、タイミング信号生成部725は、排出駆動部728へタイミング信号を出力する。タイミング信号生成部725は、排出機構354へ駆動信号を出力する。排出機構354の駆動に伴い、搬送ローラー対386も回転し、シートSは、排出機構354に送られる。最終的に排出機構354は、シートSを排出する。
図18A乃至図18Cは、上流定着装置400及び下流定着装置500の周囲におけるカラープリンター300の概略的な拡大図である。図14、図17乃至図18Cを用いて、カラープリンター300の動作が説明される。
図18Aは、図17に関連して説明されたステップS105からステップS140までのカラープリンター300の動作を表す。図18Aに示される矢印A1は、シートSの流れを概略的に表す。
転写機構360がシートSに画像を転写すると、シートSは、上流定着装置400に送られる。上流定着装置400は、シートS上の画像を摺擦する。この結果、画像は、シートSに定着される。
判定部723は、シート種情報、温度情報、湿度情報及び定着率情報に基づき、上流定着装置400による定着処理によって、十分な定着率が達成されるか否かを判定する。判定部723が十分な定着率が達成されないと判定するならば、シートSは、図18Aに示される如く、下流定着装置500へ送られる。
上流定着装置400から排出されたシートSは、主案内路381に進入する。このとき、シートSは、第1スイッチセンサー731のレバー部741に接触する。この結果、レバー部741は、第1位置から第2位置へ回動する。この結果、第1スイッチセンサー731は、検出信号を第2入力部724へ送る。第2入力部724は、その後、タイミング信号生成部725に第1スイッチセンサー731からの検出信号を出力する。
タイミング信号生成部725は、判定部723による判定結果と、第1スイッチセンサー731からの検出信号と、に基づき、第1切替片751が第1姿勢に設定される必要があると判断する。したがって、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726にタイミング信号を出力する。その後、切替片駆動部726は、タイミング信号に応じて、第1切替片751を第1姿勢にするための駆動信号を出力する。この結果、第1切替片751は、第1姿勢となり、第1案内路382が開かれ、第2案内路383は閉じられる。この結果、シートSは、第1案内路382を通じて、下流定着装置500へ向かう。
タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726だけでなく、スイッチバック駆動部727にもタイミング信号を出力する。スイッチバック駆動部727は、下流定着装置500及びスイッチバック装置600を駆動するための駆動信号を出力する。
下流定着装置500に向かうシートSは、スイッチバック装置600のニップローラー640と搬送ベルト610との間に供給される。ニップローラー640及び搬送ベルト610は、シートSを挟持し、第1方向に搬送する。その後、シートSは、第2方向に搬送される。
下流定着装置500は、搬送ベルト610上で第1方向及び第2方向に往復移動されるシートS上の画像を摺擦する。この結果、画像は、シートSに高い定着率で定着されることとなる。
図18Aに示される矢印A2は、スイッチバック装置600から排出されたシートSの流れを概略的に表す。上述の如く、第1スイッチセンサー731のレバー部741が第1位置から第2位置に回動すると、タイミング信号生成部725は、タイミング信号を切替片駆動部726へ出力する。切替片駆動部726は、第1切替片751を第1位置にするための駆動信号だけでなく、第2切替片752を第1姿勢にするための駆動信号をも出力する。この結果、第2切替片752は、排出路385を閉じる一方で、スイッチバック案内路384及び戻し搬送路355を連通させる。したがって、シートSは、スイッチバック案内路384を通じて、戻し搬送路355へ進入する。
上述の如く、第1スイッチセンサー731のレバー部741の第1位置から第2位置への回動に応じて、スイッチバック駆動部727は、下流定着装置500及びスイッチバック装置600を駆動するための駆動信号を出力する。スイッチバック駆動部727は、これらの駆動信号に加えて、引込ローラー対356を駆動するための駆動信号を出力する。
駆動信号に応じて回転する引込ローラー対356は、戻し搬送路355に進入したシートSを挟持し、引込方向へシートSを搬送する。シートSの全体が第2切替片752を通過すると、シートSは、第2スイッチセンサー732のレバー部743に接触する。この結果、レバー部743は、第1位置から第2位置に回動する。
図18Bは、図17に関連して説明されたフローチャートのステップS145からステップS160までのカラープリンター300の動作を表す。図18Bに示される矢印A3は、第2スイッチセンサー732のレバー部743が第1位置から第2位置に回動した後のシートSの流れを示す。レバー部743が第1位置から第2位置に回動すると、第2スイッチセンサー732からの検出信号は、第2入力部724を介して、タイミング信号生成部725に出力される。タイミング信号生成部725は、スイッチバック駆動部727に引込ローラー対356の逆転タイミングを通知するための通知信号を出力する。尚、レバー部743が第1位置から第2位置に回動するとき、引込ローラー対356がシートSの挟持を維持するように、第2スイッチセンサー732の位置は設定される。
タイミング信号生成部725からのタイミング信号に応じて、スイッチバック駆動部727は、引込ローラー対356を逆転させるための駆動信号を出力する。この結果、引込ローラー対356は逆転し、シートSを排出方向に搬送する。
第2スイッチセンサー732のレバー部743の第1位置から第2位置への回動に伴って、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726にもタイミング信号を出力する。切替片駆動部726は、タイミング信号に応じて、第2切替片752を第1姿勢から第2姿勢へ変更するための駆動信号を出力する。この結果、第2切替片752の姿勢は、第1姿勢から第2姿勢へ切り替わり、排出路385が開かれる。かくして、シートSは、排出路385に進入する。
排出路385に進入したシートSは、第3スイッチセンサー733のレバー部745に接触する。この結果、レバー部745は、第1位置から第2位置へ回動する。レバー部745が第1位置から第2位置へ回動すると、第3スイッチセンサー733は検出信号を、第2入力部724を介して、タイミング信号生成部725に出力する。タイミング信号生成部725は、第3スイッチセンサー733からの検出信号に応じて、排出機構354の動作開始を通知するタイミング信号を排出駆動部728へ出力する。排出駆動部728は、タイミング信号に応じて、排出機構354を駆動するための駆動信号を出力する。排出機構354及び搬送ローラー対386は、排出駆動部728からの駆動信号に応じて動作し、シートSを排出する。
タイミング信号生成部725は、第3スイッチセンサー733からの検出信号に応じて、下流定着装置500、スイッチバック装置600及び引込ローラー対356の停止タイミングを通知するタイミング信号をスイッチバック駆動部727へ出力する。この結果、スイッチバック駆動部727は、下流定着装置500、スイッチバック装置600及び引込ローラー対356を駆動するための駆動信号の出力を停止する。
図18Cは、図17に関連して説明されたフローチャートのステップS110からステップS180までの処理ルーチンに従うカラープリンター300の動作を表す。図18Cに示される矢印A4は、シートSの流れを概略的に表す。
転写機構360がシートSに画像を転写すると、シートSは、上流定着装置400に送られる。上流定着装置400は、シートS上の画像を摺擦する。この結果、画像は、シートSに定着される。
判定部723は、シート種情報、温度情報、湿度情報及び定着率情報に基づき、上流定着装置400による定着処理によって、十分な定着率が達成されるか否かを判定する。判定部723が十分な定着率が達成されると判定するならば、シートSは、図18Cに示される如く、排出機構354へ送られる。
上流定着装置400から排出されたシートSは、主案内路381に進入する。このとき、シートSは、第1スイッチセンサー731のレバー部741に接触する。この結果、レバー部741は、第1位置から第2位置へ回動する。この結果、第1スイッチセンサー731は、検出信号を第2入力部724へ送る。第2入力部724は、その後、タイミング信号生成部725に第1スイッチセンサー731からの検出信号を出力する。
タイミング信号生成部725は、判定部723による判定結果と、第1スイッチセンサー731からの検出信号と、に基づき、第1切替片751及び第2切替片752が第2姿勢に設定される必要があると判断する。したがって、タイミング信号生成部725は、切替片駆動部726にタイミング信号を出力する。切替片駆動部726は、タイミング信号に応じて、第1切替片751及び第2切替片752を第2姿勢にするための駆動信号を出力する。この結果、第1切替片751は、第2姿勢となり、第1案内路382が閉じられ、第2案内路383は開かれる。また、第2切替片752も、第2姿勢となり、排出路385が開かれる。かくして、シートSは、第2案内路383を通じて、排出路385に進入する。
排出路385に進入したシートSは、第3スイッチセンサー733のレバー部745に接触する。この結果、レバー部745は、第1位置から第2位置へ回動する。レバー部745が第1位置から第2位置へ回動すると、第3スイッチセンサー733は検出信号を、第2入力部724を介して、タイミング信号生成部725に出力する。タイミング信号生成部725は、第3スイッチセンサー733からの検出信号に応じて、排出機構354の動作開始を通知するタイミング信号を排出駆動部728へ出力する。排出駆動部728は、タイミング信号に応じて、排出機構354を駆動するための駆動信号を出力する。排出機構354及び搬送ローラー対386は、排出駆動部728からの駆動信号に応じて動作し、シートSを排出する。
上述の実施形態において、シートSの位置は、第1スイッチセンサー731、第2スイッチセンサー732及び第3スイッチセンサー733とシートSとの物理的な接触によって検出される。代替的に、シートSの位置は、他の適切な手法によって検出されてもよい。例えば、シートSの位置は、光学的なセンサーによって検出されてもよい。
上述の実施形態において、シートS上の画像は、ローラーによって摺擦される。代替的に、画像は、他の手法によって摺擦されてもよい。例えば、不織布からなる帯体、振動ブラシ或いは回転ブラシといった画像を適切に摺擦することができる他の装置が用いられてもよい。
<液体現像剤>
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
<キャリア液>
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の植物油を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
<着色粒子>
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、上述の非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
<分散安定剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
<高分子化合物>
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が以下に例示される。
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン。
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で高分子化合物Rとして使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
スチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;他のスチレン系エラストマーとして、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
(ポリビニルブチラール)
ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
ポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた溶液と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。