JP5409129B2 - 粉末醤油の製造法 - Google Patents
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Description
本発明は、簡単な操作で、工業的に実施するのに有利な、しかも醤油由来の好ましい香り(以下、「醤油香」という)が強い粉末醤油の製造法に関する。
粉末醤油は、一般に、醤油にデキストリンなどの賦形剤を加え溶解した後、噴霧乾燥して製造されるが、この噴霧乾燥の際に醤油の好ましい揮発性成分が減少し、醤油香の一部が失われてしまうという欠点があった。
従来、この欠点を解消すべく、醤油油に水を添加し、よく振盪させた後、水相部を分離し、これにデキストリンを混合し、乾燥粉末化して、残香性の強い醸造香気を有する香気物質を得、これを粉末醤油に添加する方法(例えば、特許文献1参照)、および、醤油油を常法により水蒸気あるいはエタノール蒸気等を用いて蒸留し、得られた留液(香気物質)の適量を、原料醤油に添加し、デキストリンを添加混合した後、噴霧乾燥して、香気の増強された粉末醤油を得る方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかし、いずれも、香気物質を調製するための工程を必要とし、噴霧乾燥する際に、醤油香の一部が失われてしまう危険性がある。
本発明は、簡単な操作で、工業的に実施するのに有利な、しかも醤油香が強い粉末醤油を得ることを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、醤油に醤油油および乳化剤を混合、撹拌し、静置して油相部と水相部に分離し、該水相部を噴霧乾燥するときは、香気物質を調製するための工程が不要となり、簡単な操作で、醤油香が非常に強い粉末醤油を容易に得ることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に示す粉末醤油の製造法である。
(1)醤油に醤油油および乳化剤を混合、撹拌し、静置して油相部と水相部に分離し、該水相部を噴霧乾燥することを特徴とする粉末醤油の製造法。
(1)醤油に醤油油および乳化剤を混合、撹拌し、静置して油相部と水相部に分離し、該水相部を噴霧乾燥することを特徴とする粉末醤油の製造法。
本発明によれば、簡単な操作で、工業的に実施するのに有利な、しかも醤油香が強い粉末醤油を得ることができる。
本発明を実施するには、まず、醤油に醤油油および乳化剤を混合、撹拌し、静置して油相部と水相部に分離し、該水相部を噴霧乾燥する。
醤油としては、濃口醤油、淡口醤油、生醤油、火入醤油等の任意の醤油が挙げられる。また、醤油を酵素的もしくは化学的に加水分解した蛋白加水分解調味液(醤油様調味料)も、醤油として用いることができる。
醤油油は、通常の醤油諸味を圧搾して得た醤油の表面に浮遊してくる脂肪油類の総称であって、醤油製造における副産物として得られるものである。また、醤油油は、丸大豆または脱脂大豆に由来するいずれの醤油油を用いてもよいが、古いものは醤油香気が劣化するので、なるべく新鮮なものがよい。醤油油の添加量は、醤油に対して2%(v/v)以上が好ましく、3〜15%(v/v)がより好ましい。すなわち2%(v/v)未満では、醤油香気が微弱となる。反対に15%(v/v)を超えると、醤油油の添加量に比例して醤油香気の含有量をさほど増大できなくなり、分離すべき油相量が増える欠点を有する。
乳化剤としては、食品添加物として使用できる乳化剤であればいずれでもよいが、本発明では特に、グリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、親水性と親油性のバランスを表すHLB値が10〜16の乳化剤がより好ましい。
また、乳化剤の添加量は、醤油に醤油油および乳化剤、さらに必要により水を添加溶解して得られる総液量に対して、0.1%(w/v)以上が好ましく、0.3〜3.0%(w/v)がより好ましく、0.5〜1.5%(w/v)が最も好ましい。0.1%(w/v)未満では、油相部と水相部の一時的な乳化が起こらず、3.0%(w/v)を超えると醤油の好ましくない香気まで水相部に移行してしまう。
撹拌処理としては、醤油と醤油油を充分に混合できる手段であれば任意の手段が採用可能であるが、ホモジナイザーなどによる強い撹拌がより好ましい。
次に、撹拌処理後、油相部と水相部が分離するのに充分な時間静置する。静置する時間は5分間以上が好ましい。この静置により油相部と水相部を容易に分離することができる。そして、この水相部を分離、採取することにより、醤油由来の香気成分を高濃度に含んだ水相部が得られる。
噴霧乾燥のために添加する賦形剤としては、デキストリン、ゼラチン、可溶性デンプン等が用いられる。賦形剤の添加量は、得られた水相部に対して5〜30%(w/v)が好ましく、15〜25%(w/v)がより好ましい。5%(w/v)未満では粉末醤油の回収率が悪くなり、30%(w/v)を超えると醤油の風味がぼやけてしまう。賦形剤は、上記撹拌処理の前に添加しておくか、または、撹拌処理後に得られた水相部に添加する。
噴霧乾燥の条件は、熱風入口温度120〜200℃、出口温度80〜100℃が好ましい。温度が低すぎると噴霧乾燥の効率が低下し、反対に高すぎると粉末醤油に焦臭が付着するので好ましくない。
このようにして、本発明によれば、香気物質を調製するための工程が不要となり、簡単な操作で、しかも醤油香が非常に強い粉末醤油を容易に得ることができる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。
(粉末醤油の製造)
濃口醤油200ml、醤油油25ml、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製ポエムJ−0381V)2g、デキストリン(三和デンプン工業社製サンデック30)40gおよび水100mlを30分間混合撹拌して、デキストリンを完全に溶解させた。このときのBrixは35であった。この混合液を70℃に加温し、ホモジナイザー(日本精機製作所社製BM−2型)を用いて撹拌条件15,000rpmで20分間ホモジナイズした。その後室温にて10分間静置して水相部と油相部に分離させた。水相部を回収し、これを入口温度175℃、出口温度90℃で噴霧乾燥し、醤油香が非常に強い、本発明の粉末醤油(食塩濃度28.0%、以下、「本発明品」ということがある)を得た。
濃口醤油200ml、醤油油25ml、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製ポエムJ−0381V)2g、デキストリン(三和デンプン工業社製サンデック30)40gおよび水100mlを30分間混合撹拌して、デキストリンを完全に溶解させた。このときのBrixは35であった。この混合液を70℃に加温し、ホモジナイザー(日本精機製作所社製BM−2型)を用いて撹拌条件15,000rpmで20分間ホモジナイズした。その後室温にて10分間静置して水相部と油相部に分離させた。水相部を回収し、これを入口温度175℃、出口温度90℃で噴霧乾燥し、醤油香が非常に強い、本発明の粉末醤油(食塩濃度28.0%、以下、「本発明品」ということがある)を得た。
(対照例)
比較のため、上記本発明の粉末醤油の製造法において、醤油油および乳化剤を添加しない以外は、全く同様にして、対照の粉末醤油(食塩濃度28.0%、以下、「従来品」ということがある)を得た。
比較のため、上記本発明の粉末醤油の製造法において、醤油油および乳化剤を添加しない以外は、全く同様にして、対照の粉末醤油(食塩濃度28.0%、以下、「従来品」ということがある)を得た。
(比較例)
また、比較のため、上記本発明の粉末醤油の製造法において、乳化剤を添加しない以外は、全く同様にして、比較例の粉末醤油(以下、「比較例品」ということがある)を得た。
また、比較のため、上記本発明の粉末醤油の製造法において、乳化剤を添加しない以外は、全く同様にして、比較例の粉末醤油(以下、「比較例品」ということがある)を得た。
上記実施例1で得られた本発明の粉末醤油について、2点比較法により従来品または比較例品の粉末醤油を対照として、17名の識別能力を有する訓練されたパネルにより官能検査を実施した。その結果を表1に示す。
表1の結果から、本発明品は、従来品および比較例品に比べて醤油香が非常に強いことが判る。比較例品は、醤油に醤油油を添加しているが、乳化剤は添加していない。これに対し、本発明品は、醤油に醤油油を添加し、さらに乳化剤を添加することで、醤油香を濃厚に有する粉末醤油を得ることができる。また、本発明品は、香気物質を調製するための工程を省略しても、醤油油に含まれる醤油香の成分を効率よく、簡単に原料醤油中に移行することができ、工業的に実施するのに有利であることが判る。
上記本発明品、従来品および比較例品を、それぞれ50g採り、それぞれ水100mlに溶解して、食塩16.5%(w/v)の粉末醤油の溶解液を調製した。それぞれ溶液中の代表的な醤油香成分の濃度(ppm)を、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年3月1日発行、p177〜179)の「5−5香気成分のガスクロマトグラフィーによる定量法」に従って分析した。結果を表2に示した。
表2の結果から、本発明品は、従来品や比較例品に比べて、醤油の香気成分であるイソブチルアルコールが1.5〜3.4倍、n−ブチルアルコールが1.5〜1.9倍、イソアミルアルコールが1.4〜1.9倍、エチルラクテートが1.3〜1.7倍多く含まれていることが判る。すなわち、本発明によれば醤油の好ましい香気成分を高濃度含有する粉末醤油が得られることが判る。
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- 醤油に醤油油および乳化剤を混合、撹拌し、静置して油相部と水相部に分離し、該水相部を噴霧乾燥することを特徴とする粉末醤油の製造法。
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