JP5407267B2 - トナーの製造方法及びトナー - Google Patents

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Description

本発明は、トナーの製造方法及びトナーに関する。
電子写真用トナーにおいては、結着樹脂としてポリエステル樹脂が低温定着の観点から有利であることは広く知られている。これは、モノマーの選択により、ガラス転移点を十分高く設定したまま、溶融粘度を低下させる設計が可能なためである。ただし、代表的なスチレン・アクリル系樹脂と比較し、樹脂の粉砕にエネルギーと時間を要する傾向があるため、工業的には小径化による画質向上が課題として残っている。
近年では、樹脂を粉砕することなく、水系媒体中で乳化されたポリエステル樹脂粒子と着色剤分散液を、凝集剤を用いてトナー粒子とする製造方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この製造方法では所望の粒子径に制御することが困難であった。そのため、スルホン化ポリエステル樹脂粒子に対して、凝集剤と凝集停止剤を用いて所望の粒子径に制御した後、凝集工程とは別に粒子の合一を図る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−287421号公報 特開2006−285251号公報
しかしながら、更なる低温定着化を図るため、ガラス転移点温度を低下させ、トナー粒子をコア・シェル構造にした場合、上記特許文献2の技術では粗大粒子発生による転写抜け画像欠陥の問題があった。また、1μm未満の微粉が残存し、クリーニング不良や感光体などの画像支持体へのフィルミングが問題となっていた。さらに、湿度の変動に対してトナーの帯電量が大きく、影響される問題が残っていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、転写抜け画像などの欠陥が生じることなく、またクリーニング不良や感光体などの画像支持体へのフィルミングを防止し、さらには、湿度変動に対する帯電量の依存性も少なく、良好な画像を得ることができるトナーの製造方法及びトナーを提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法において、
前記樹脂は非結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記非結晶性ポリエステル樹脂を分散し、ポリエステル樹脂分散液を製造する樹脂分散液製造工程と、
着色剤を分散し、着色剤分散液を製造する着色剤分散液製造工程と、
前記ポリエステル樹脂分散液と前記着色剤分散液とを混合し、さらに2価の塩で塩析融着法により、凝集粒子の粒子径を成長させる粒子径成長工程と、
前記粒子径成長工程の反応系に凝集停止剤を添加し、粒子径の成長を停止させる停止工程と、
前記停止工程後の前記凝集粒子に対して、凝集粒子の円形度を調整する形状制御工程と、
前記形状制御工程後の前記凝集粒子を水系媒体から分離乾燥させる分離乾燥工程と、を備え、
前記凝集停止剤がイミノ多価カルボン酸であることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のトナーの製造方法において、
トナーのガラス転移点が20℃以上53℃以下であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法において、
前記2価の塩がマグネシウム塩であることを特徴とする。
請求項4の発明は、トナーにおいて、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法によって製造されることを特徴とする。
本発明によれば、転写抜け画像などの欠陥が生じることなく、またクリーニング不良や感光体などの画像支持体へのフィルミングを防止し、さらには、湿度変動に対する帯電量の依存性も少なく、良好な画像を得ることができる。
《トナー》
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有してなるトナー粒子により構成されるものである。必要に応じて荷電制御剤、離型剤、外添剤を添加することができる。
〈樹脂〉
本発明に係るトナーに使用可能な樹脂の一つとして、非結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステルの原料モノマーとしては、公知の2価以上のアルコール成分と、2価以上のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の公知のカルボン酸成分が用いられる。
具体的に、アルコール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール:グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
ポリエステルは、原料モノマーとしての上記アルコール成分と後述のカルボン酸成分とから縮重合反応により得られるが、本発明においては、定着性、保存性、乳化性、耐加水分解性の観点から、全原料モノマー成分中、3価以上の多価アルコールを1〜15モル%含むことが好ましい。
カルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデゼニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメット酸;ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ポリエステルは、例えば、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じ公知のエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
また、ポリエステルは、結着樹脂として2種以上組み合わせて使用することもできる。本発明における結着樹脂は、酸基を有するものがポリエステル樹脂粒子の凝集性を制御する観点で好ましい。特に、モノマー自身が酸基を有し分子鎖側鎖に酸基を有することが好ましい。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられ、樹脂の乳化性とそれを用いたトナーの耐環境特性との両立の観点からカルボキシル基が好ましい。上記酸基を有する結着樹脂の分子鎖末端の酸基の量は、乳化粒子の安定性並びにトナーの粒度分布及び粒径を決定する重要な因子の一つである。乳化粒子を安定にし、かつ、小粒径のトナーをシャープな粒度分布で得るため、結着樹脂の酸価は、6〜30mgKOH/gが好ましく、10〜45mgKOH/gがより好ましい。
また、本発明で用いられる非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、低温定着性と耐熱保存性の両立、さらに感光体へのフィルミング抑制を図る観点から20℃以上53℃以下が好ましく、より好ましくは45℃以上53℃以下である。
また、本発明で用いられる非結晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度は、低温定着性、厚紙定着性、画像の高い光沢を得る観点から1×104〜1×105poiseとなる温度が75から110℃であることが好ましい。同様の理由で、さらに好ましくは81〜99℃である。
ここで、溶融粘度は以下に示す測定装置、条件、手順で測定することにより算出される。
測定装置:MR−500ソリキッドメータ((株)レオロジ社製)
周波数:1Hz
測定モード:温度分散
測定治具:φ0.997cmのパラレルプレート
測定手順
(a)20℃±1℃、50±5%RH環境下において、樹脂0.6gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器SSP−10A(島津製作所製)にて3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cm高さ5〜6mmの円柱型の樹脂ペレットを作製する。樹脂のフレークが過大の場合は、コーヒーミルなどで80meshの篩を通過したものを測定する。
(b)樹脂ペレットを、測定装置に装着されたパラレルプレートに装填する。
(c)測定部温度をトナー軟化点温度−15℃にした後、パラレルプレートギャップを3mmに調整する。
(d)測定部温度を測定開始温度35℃まで冷却させた後、周波数1Hzの正弦波振動を加えながら、測定部を毎分2℃の昇温速度で200℃まで昇温し、所定の温度の貯蔵弾性率を測定する。歪み角は、トルクの値(R.Tolq)が1%以下にならないように、0.02〜5degの範囲で上げていき変化させる。
以上の測定方法は、トナー原料となる非結晶性ポリエステル樹脂についての測定方法であるが、製造されたトナーの熱物性は本発明の製造方法であればほとんど変化することはない。
本発明に用いる非結晶性ポリエステル樹脂の分子量及び分子量分布は、重量平均分子量Mwで10000〜32000、数平均分子量Mhとしたとき、Mw/Mh=1.8〜4.0であることが、耐オフセット性、定着分離性の観点から好ましい。
〈着色剤〉
本発明に用いられる着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などであり、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などを用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
〈荷電制御剤〉
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
この荷電制御剤粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
〈離型剤〉
本発明に係るトナーに使用可能な離型剤としては、公知のワックスが挙げられる。例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ワックスの含有割合は、トナー全体において2〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
〈外添剤〉
外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子、有機微粒子および滑剤などを使用することができる。無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。
疎水化処理の程度としては特に限定されるものではないが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式Aにより疎水化度が算出される。
(式A) 疎水化度={a/(a+50)}×100
この外添剤の添加量は、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%であることが好ましい。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
また、外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
《トナーの製造方法》
(1)非結晶性ポリエステル樹脂を分散し、ポリエステル樹脂分散液を製造する樹脂分散液製造工程
樹脂分散液製造工程を大別すると、(i)溶剤を用いてポリエステル樹脂溶液を形成した後、乳化液滴を形成し、トナー粒子の完成までに脱溶剤する方法、(ii)溶剤を用いずにポリエステル樹脂を加熱し、溶融粘度が低下した状態で乳化する方法、(iii)ポリエステルモノマーを強酸の存在下で乳化し、水系媒体で縮合させる方法、(iv)界面活性剤を含んでもよい水系媒体にポリエステル樹脂溶液を添加し、ミキサーで乳化する方法、(v)ポリエステル樹脂溶液に水系媒体を加えて乳化する方法が挙げられる。
ここで、ポリエステル樹脂溶液には、離型剤、荷電制御剤、着色剤などのトナー内部の添加剤を溶解又は分散して用いることができる。上述のミキサーとしては、具体的には、ホモミキサ、超音波、マントンゴーリンなどの攪拌装置を挙げることができる。また、好ましく用いられる溶剤としては、ポリエステル樹脂を溶解可能なものであれば限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンが挙げられる。特に好ましく用いられるのは酢酸エチルである。
上記いずれの方法であっても、ポリエステル樹脂粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で40〜360nmであることが好ましい。
(2)着色剤を分散し、着色剤分散液を製造する着色剤分散液製造工程
着色剤分散液製造工程では、水系媒体中に着色剤である顔料を添加して分散機によって分散処理することにより、着色剤が微粒子状に分散された着色剤微粒子の分散液を調整する。
上記水系媒体とは、水50〜100質量%と、界面活性剤、必要に応じて水溶性の有機溶媒0〜5質量%とからなる媒体を言う。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち生成される樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。
水系媒体に用いられる界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)のイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。
着色剤の分散処理においては、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、超音波分散機、機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザ等の加圧分散機、サンドグラインダ、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。
この着色剤分散液における着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で40〜200nmであることが好ましい。
(3)ポリエステル樹脂分散液と着色剤分散液とを混合し、さらに2価の塩(凝集剤)で塩析融着法により、凝集粒子の粒子径を成長させる粒子径成長工程
粒子径成長工程では、ポリエステル樹脂微粒子や着色剤微粒子とともに、離型剤微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子を凝集、融着させることができる。
ここで、本発明では、凝集と融着を並行して進める「塩析/融着法」が好ましく用いられる。
本発明で用いる好ましい凝集剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムの塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。好ましくは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムであり、さらに好ましくは塩化マグネシウムである。
凝集剤は、コア結着樹脂粒子(非結晶性ポリエステル樹脂粒子)のガラス転移温度前後で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度以上であって、かつ、54〜96℃の範囲に加熱する。
非結晶性ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点が40℃未満の場合は、シェル層形成工程を行うことが好ましい。このシェル層形成工程では、前記凝集、融着粒子(ここではコア粒子とも言う)分散液中にシェル樹脂粒子の分散液を添加してコア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル樹脂粒子を被覆させてコアシェル構造を形成するシェル化処理が行われる。
このシェル層形成樹脂粒子は限定されないが、ガラス転移点が54℃以上66℃以下のポリエステル樹脂粒子が好ましい。シェル層の固着に要する加熱攪拌時間は、1〜7時間が好ましく、3〜5時間が特に好ましい。
(4)凝集停止剤を添加し、粒子径の成長を停止させる停止工程
凝集停止剤とは、上記粒子径成長工程で添加した凝集剤による塩析力、換言するとポリエステル樹脂粒子の凝集力を大幅に弱める化合物を言う。本発明で用いられる凝集停止剤としては、以下のポリカルボン酸又はポリ有機カルボン酸化合物中のカルボキシル基や水酸基中のH原子の代わりに、ナトリウムなど一価の金属原子に置き換えられたものである。
特にポリカルボン酸を使用することが好ましい。ポリカルボン酸は2価の金属イオンと優先的に結合するため、添加によって塩析力を弱めることが可能である。添加量は、2価の金属イオンに対して等モル以上であることが好ましいが、等モル未満の添加によって、ポリエステル樹脂粒子の凝集速度を弱めに調整することも可能である。ポリカルボン酸とは、1分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物のことを言い、特に炭素数が12以下のものが好ましい。ポリカルボン酸の中で特に好ましいのは、イミノカルボン酸である。ポリカルボン酸の具体例としては、下記一般式(1)〜(21)が挙げられる。
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(5)凝集粒子の円形度を調整する形状制御工程
前記停止工程後に、ガラス転移点以上97℃以下、好ましくは54〜65℃で攪拌混合を継続し、トナーの円形度が所望の値となったところで、系を冷却し、反応を定着させる。トナーの円形度が時間とともに大きくなる、すなわち球形化が進むのは、粘性や表面張力によりトナー粒子の樹脂特性から表面積を縮小する力によるものと推察される。
この形状制御工程によって、さらに粒径分布が狭く形成され、コア粒子表面が平滑だが均一的な形状を有するように制御することができる。
なお、トナーの円形度は0.93〜0.97のものが好ましい。ここで、円形度は下記式にて定義される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせた値を全粒子数で除して算出した値である。トナーの円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナーを界面活性剤入りの水溶液でなじませ、超音波分散処理を1分間行ってトナーを分散させた後、「FPIA−2100」を用いて測定を行う。測定条件は、HPF(高倍率撮像)モードに設定してHPF検出数を3000〜10000個の適正濃度にして測定するものである。
(6)形状制御工程後の前記凝集粒子を水系媒体から分離乾燥させる乾燥工程
形状制御工程後のトナー粒子分散液を冷却した後、トナー粒子を固液分離する。その後、固液分離されたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する洗浄処理を施す。ここで、ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレス等を使用して行うろ過法など特に限定されるものではない。
次いで、トナーケーキを乾燥処理し、乾燥されたイエロー着色粒子を得る。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などが挙げられる。特に、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
《画像形成方法》
次に、本発明に係るトナーを用いた画像形成方法及び画像形成装置について説明する。
ここでは、図1を参照して本発明に係るトナーを二成分現像剤として用いた場合の画像形成方法及び画像形成装置を説明する。図1に示すのは、本発明に係るトナーを用いて画像形成を行う画像形成装置11の一例である。この画像形成装置11はタンデム型のカラー画像形成装置と称せられるものある。
図1に示すように、画像形成装置11の本体上部には画像読取装置21が設けられている。
また、画像形成装置11はY、M、C、Kのトナーの色毎に、露光及び現像を行うユニットuY、uM、uC、uKを備えている。ユニットuY、uM、uC、uKは、それぞれ露光装置u1、現像装置u2、感光体u3、帯電部u4、クリーニング部u5、1次転写ローラu6を含んでいる。1次転写ローラu6は感光体u3に圧接されている。
さらに、画像形成装置11は中間転写ユニット22、2次転写ローラ23、定着装置24、給紙部25を備えている。中間転写ユニット22は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間ベルト2aと、クリーニング部2bとを含む。2次転写ローラ23は中間ベルト2aに圧接されている。
画像形成時には、帯電部u4により感光体u3の帯電が行われると、露光装置u1により露光が行われ、感光体u3上に画像信号に基づく静電潜像が形成される。次いで、現像装置u2により現像が行われ、感光体u3上にトナーが付着されてトナー画像が形成されると、当該トナー画像は感光体u3の回転及び1次転写ローラu6の作用により中間ベルト2a上に転写される。この露光、現像、転写の工程を、中間ベルト2aの回動に合わせて、各色のユニットuY、uM、uC、uKが順次繰り返すことにより、中間ベルト2a上に各色のトナー画像が重ねられ、フルカラー印刷物が形成される。
一方、給紙部25からは用紙が搬送され、2次転写ローラ23の位置まで当該用紙が搬送されると、2次転写ローラ23の作用によって中間ベルト2aから用紙上にカラー画像が一括して転写される。その後、用紙は定着装置24に搬送されて加圧及び加熱により用紙上にカラー画像が固定され定着されると、最終的に外部に設けられているトレイに排出される。このようにして、画像形成が終了すると、クリーニング部u5、22により感光体u3や中間ベルト2aに残存するトナーが除去される。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下説明する実施例、比較例において測定しているポリエステル樹脂分散液の粒子径は体積基準のメディアン径である。このメディアン径は「MICROTRAC UPA 150」(HONEWELL社製)を用いて、下記の測定条件下で測定したものである。
〔測定条件〕
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重(球状粒子に換算):1.05
溶媒屈折率:1.33
溶媒粘度:0.797×10−3Pa・s(30℃)、1.002×10−3Pa・s(20℃)
ゼロ点調整:測定セル内にイオン交換水を入れて行った。
〈実施例、比較例に係るトナーの作製〉
1.ポリエステル樹脂分散液製造工程
(a)溶剤を使用したポリエステル樹脂分散液[B1]の調整
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物343部、モノスルホニルイソフタル酸56部、フマル酸50部、アジピン酸60部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃、8時間反応させた。さらに、15mmHg(1.99Pa)の減圧で5時間反応させた後、98℃まで冷却し、質量平均分子量25100、数平均分子量4800、Mw/Mn5.2であるポリエステル樹脂[p1]を得た。ポリエステル樹脂[p1]のガラス転移点は48℃、溶融粘度が1×10poiseとなる温度は95℃であった。
このポリエステル樹脂[p1]800部を酢酸エチル2000部に溶解、混合し、ポリエステル樹脂溶液[P1]を得た。
次いで、ポリエステル樹脂溶液[P1]100部、荷電制御剤「TP−302」(保土ヶ谷化学株式会社製)1部、離型剤としてステアリン酸ステアリル20部を、トルエン200部中でジルコニアビースの充填されたボールミルを転動させることによって溶解分散し、分散相となる油相[y1]を調整した。
別途、イオン交換水700部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を、攪拌分散し、連続相となる水層[M1]を調整した。この水相[M1]中にホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら油相[y1]を投入し、攪拌回転数を調整することにより油滴[Y1]を得た。その後、50度で減圧溜去してトルエンを除去し、体積基準のメディアン径が240nmのポリエステル樹脂分散液[B1]を得た。
(b)溶剤を使用しないポリエステル樹脂分散液[B2]の調整
5リットル容のステンレス釜で、ポリエステル樹脂[p1]600g、離型剤としてペンタエリスリトール60g、及び非イオン性界面活性剤ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB:16.2)6g、陰イオン性界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(濃度:15重量%)20g及び、中和剤として水酸化カリウム水溶液(濃度:5重量%)を252g加え、カイ型の攪拌機で250r/minの攪拌下、95℃、常圧(101.3kPa)下で分散させた。内容物は95℃に達した後、2時間攪拌し、「キャビトロンCD1010(ユーロテック(株)製)」に毎分100gの速度で移送した。さらに脱イオン水1118gをキャビトロンに投入し、この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力4.9×105Paの条件に設定してキャビトロンを運転することにより、乳化したポリエステル樹脂分散液[B2]を得た。ポリエステル樹脂分散液[B2]の体積基準のメディアン径は270nmであった。
2.着色剤分散液製造工程(着色剤分散液[C1]の調整)
カーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)を固形分濃度12.5質量%となるようにイオン交換水中に分散して水系分散液を作製し、これを着色剤分散液[C1]とした。
3.粒子径成長工程
ポリエステル樹脂分散液[B1]1700質量部、イオン交換水2100質量部、着色剤分散液[C1]250質量部を、温度計、冷却管、窒素導入装置及び攪拌装置を設けたセパラブルフラスコに投入した。さらに、系内の温度を30℃に保った状態で水酸化ナトリウム水溶液(25質量%)を添加してpHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物54.3質量部をイオン交換水104.3質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、系内の温度を60℃に昇温させて、樹脂粒子と着色剤粒子の凝集反応を開始した。
凝集反応開始後、定期的にサンプリングを行って、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザーIII」(ベックマン・コールター社製)を用いて、粒子の体積基準におけるメディアン径が5.8μmになったときに、シェル材としてポリエステル樹脂粒子分散液[B2]96質量部を添加した。さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した。粒子の体積基準におけるメディアン径が5.8μmになるまで攪拌を継続した。
4.停止工程
温度を60℃に保ち1時間攪拌を継続した。ここで、再びイミノカルボン酸化合物(上述の一般式(18))を20.1質量部添加した。この時点のトナー粒子の円形度は0.951であった。
5.形状制御工程
温度を65℃に保ち4時間攪拌を継続し、トナー粒子の円形度が0.976に達したところで6℃/分の条件で30℃まで冷却し反応を完結させた。
6.分離乾燥工程
生成したトナー粒子分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII型」(型式番号60×40)(松本機会製作社製)で固液分離して、トナーのウェットケーキを形成した。以後、濾液の電気電導度の値が15μs/cm以下になるまで着色粒子[R1]の洗浄と固液分離を繰り返した。
次いで、ウェットケーキを気流式乾燥機「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理した。なお、乾燥処理は、40℃、20%RHの気流を吹き付けて行った。乾燥したトナーを24℃に放冷し、トナー100質量部に対し、疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーで混合した。回転翼の周速24m/sとし、20分間混合した後、400MESHの篩を通過させた。得られたトナーをトナー[T1]とした。
トナー[T1]のガラス転移点は49℃、溶融粘度が1×10poiseとなる温度は95℃であった。
7.トナー[T2]の製造
トナー[T1]の製造において、ポリエステル樹脂分散液[B1]を用いたところを、上述のポリエステル樹脂分散液[B2]を用いた以外は同様にして、トナー[T2]を製造した。
8.トナー[T3]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集剤として塩化マグネシウムを用いたところを、硫酸マグネシウムとした以外は同様にして、トナー[T3]を製造した。
9.トナー[T4]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集剤として塩化マグネシウムを用いたところを、塩化ストロンチウムとした以外は同様にして、トナー[T4]を製造した。
10.トナー[T5]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集剤として塩化マグネシウムを用いたところを、塩化亜鉛とした以外は同様にして、トナー[T5]を製造した。
11.トナー[T6]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、上記一般式(19)の化合物を用いた以外は同様にして、トナー[T6]を製造した。
12.トナー[T7]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、上記一般式(1)の化合物を用いた以外は同様にして、トナー[T7]を製造した。
13.トナー[T8]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、上記一般式(2)の化合物を用いた以外は同様にして、トナー[T8]を製造した。
14.トナー[T9]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、上記一般式(13)の化合物を用いた以外は同様にして、トナー[T9]を製造した。
15.トナー[T10]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、塩化ナトリウム8.2質量部をイオン交換水50質量部に溶解させた水溶液とした以外は同様にして、トナー[T10]を製造した。
16.比較用トナー[H1]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集剤として塩化マグネシウムを用いたところを硫酸アルミニウムを用いた以外は同様にして、比較用トナー[H1]を製造した。
17.比較用トナー[H2]の製造
トナー[T1]の製造において、凝集停止剤としてイミノカルボン酸化合物(上記一般式(18))を用いたところを、水酸化ナトリウム8.2質量部をイオン交換水50質量部に溶解させた以外は同様にして、比較用トナー[H2]を製造した。
〈評価実験〉
トナーリサイクルシステムが搭載された市販のデジタル複写機(コニカミノルタビジネステクノロジー社製:bizhub920)に、高温高湿環境下(温度33℃、相対湿度80%RH)で実写テストを行い、下記の評価項目について評価し、その結果を表1に示した。
(1)転写不良
100万枚をコピーした後、10枚の実写テスト画像を目視により以下の基準で評価した。
A:10枚とも転写抜けの全くないもの
B:転写抜けが1〜3個あるものが数枚あるが実用レベルにある画像
C:転写抜けが多く実用的に問題のある画像
(2)クリーニング不良
クリーニング部からトナーがすり抜けるか白地部分を汚染し始めた枚数、もしくはトナーが感光体にフィルミングして中間ベルトにムラを形成し始めた枚数で評価した。
(3)帯電の湿度依存性
高温高湿環境下(温度33℃、相対湿度80%)と低温低湿環境下(温度10℃、相対湿度9%)においてそれぞれ2万枚の印字評価を行い、2万枚印字後に20mm×20mmの10%網点画像(黒色部分)を用いてマクベス反射濃度計「RD−918」により、白地部分に対する相対画像濃度を測定し環境による濃度の差を求めた。濃度変化が0.10以内であれば画質変化は少なく実用可能であると判定される。
Figure 0005407267
以上のように、実施例1〜6に係るトナー[T1]〜[T6]によれば、転写抜け画像などの欠陥が生じることなく、またクリーニング不良や感光体などの画像支持体へのフィルミングを防止し、さらには、湿度変動に対する帯電量の依存性も少なく、良好な画像が得られることが確認された。
画像形成装置の一例を示す図である。
符号の説明
11 画像形成装置
u1 露光装置
u2 現像装置
u3 感光体
24 定着装置

Claims (4)

  1. 樹脂と着色剤を含むトナーの製造方法において、
    前記樹脂は非結晶性ポリエステル樹脂を含み、
    前記非結晶性ポリエステル樹脂を分散し、ポリエステル樹脂分散液を製造する樹脂分散液製造工程と、
    着色剤を分散し、着色剤分散液を製造する着色剤分散液製造工程と、
    前記ポリエステル樹脂分散液と前記着色剤分散液とを混合し、さらに2価の塩で塩析融着法により、凝集粒子の粒子径を成長させる粒子径成長工程と、
    前記粒子径成長工程の反応系に凝集停止剤を添加し、粒子径の成長を停止させる停止工程と、
    前記停止工程後の前記凝集粒子に対して、凝集粒子の円形度を調整する形状制御工程と、
    前記形状制御工程後の前記凝集粒子を水系媒体から分離乾燥させる分離乾燥工程と、を備え、
    前記凝集停止剤がイミノ多価カルボン酸であることを特徴とするトナーの製造方法。
  2. トナーのガラス転移点が20℃以上53℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記2価の塩がマグネシウム塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法によって製造されることを特徴とするトナー。
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