以下、本発明の一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置10の概略構成が示されている。
画像形成装置10は、例えば、黒、イエロー、マゼンダ、シアンのトナー像を普通紙(用紙)上に重ね合わせて転写することにより、多色画像を印刷するタンデム方式のカラープリンタである。この画像形成装置10は、図1に示されるように、光走査装置100、4本の感光ドラム30A、30B、30C、30D、転写ベルト40、給紙トレイ60、給紙コロ54、第1レジストローラ対56、第2レジストローラ対52、定着ローラ50、排紙ローラ58、及び上記構成部品を収容する直方体状のハウジング12などを備えている。
ハウジング12には、上面に印刷が終了した用紙が排出される排紙トレイ12aが形成され、その排紙トレイ12aの下方に光走査装置100が配置されている。
光走査装置100は、感光ドラム30Aに対しては、上位装置(パソコン等)から供給された画像情報に基づいて変調された黒色画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム30Bに対してはシアン画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム30Cに対してはマゼンダ画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム30Dに対してはイエロー画像成分の光ビームを走査する。なお、光走査装置100の構成については後述する。
4本の感光ドラム30A、30B、30C、30Dは、その表面に、光ビームが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円柱状の部材であり、光走査装置100の下方にX軸に沿って等間隔に配置されている。
感光ドラム30Aは、ハウジング12内部の−X側端部にY軸方向を長手方向として配置され、不図示の回転機構により図1における時計回り(図1の矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、図1における12時(上側)の位置に帯電チャージャ32Aが配置され、2時の位置にトナーカートリッジ33Aが配置され、10時の位置にクリーニングケース31Aが配置されている。
帯電チャージャ32Aは、長手方向をY軸方向として、感光ドラム30Aの表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、感光ドラム30Aの表面を所定の電圧で帯電させる。
トナーカートリッジ33Aは、黒色画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム30Aとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム30Aの表面に供給する。
クリーニングケース31Aは、Y軸方向を長手方向とする長方形状のクリーニングブレードを備え、該クリーニングブレードの一端が感光ドラム30Aの表面に接するように配置されている。感光ドラム30Aの表面に吸着されたトナーは、感光ドラム30Aの回転に伴いクリーニングブレードにより剥離され、クリーニングケース31Aの内部に回収される。
感光ドラム30B,30C,30Dは、感光ドラム30Aの+X側に所定間隔隔てて順次配置され、不図示の回転機構により、図1における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム30Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ32B,32C,32D、トナーカートリッジ33B,33C,33D及びクリーニングケース31B,31C,31Dがそれぞれ配置されている。
帯電チャージャ32B〜32Dは、前述した帯電チャージャ32Aと同様に構成され、感光ドラム30B〜30Dの表面を所定の電圧で帯電させる。
トナーカートリッジ33B〜33Dは、それぞれシアン、マゼンダ、イエロー画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム30B〜30Dとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム30B〜30Dの表面にそれぞれ供給する。
クリーニングケース31B〜31Dは、クリーニングケース31Aと同様に構成され、同様に機能する。
以下、感光ドラム30A、帯電チャージャ32A、トナーカートリッジ33A及びクリーニングケース31Aを合わせて第1ステーションと呼び、感光ドラム30B、帯電チャージャ32B、トナーカートリッジ33B及びクリーニングケース31Bを合わせて第2ステーションと呼び、感光ドラム30C、帯電チャージャ32C、トナーカートリッジ33C及びクリーニングケース31Cを合わせて第3ステーションと呼び、感光ドラム30D、帯電チャージャ32D、トナーカートリッジ33D及びクリーニングケース31Dを合わせて第4ステーションと呼ぶものとする。
転写ベルト40は、無端環状の部材で、感光ドラム30Aの下方に配置された従動ローラ40aと、感光ドラム30Dの下方に配置された従動ローラ40cと、これらの従動ローラ40a、40cより少し低い位置に配置された駆動ローラ40bに、上端面が感光ドラム30A、30B、30C、30Dそれぞれの下端面に接するように巻回されている。そして、駆動ローラ40bが図1における反時計回りに回転することにより、反時計回り(図1の矢印に示される方向)に回転される。また、転写ベルト40の+X側端部近傍には、上述した帯電チャージャ32A、32B、32C、32Dとは逆極性の電圧が印加された転写チャージャ48が配置されている。
給紙トレイ60は、転写ベルト40の下方に配置されている。この給紙トレイ60は略直方体状のトレイであり、内部に印刷対象としての複数枚の用紙61が積み重ねられて収納されている。そして、給紙トレイ60の上面の+X側端部近傍には矩形状の給紙口か形成されている。
給紙コロ54は、給紙トレイ60から用紙61を一枚ずつ取り出し、第1レジストローラ対56を介して、転写ベルト40と転写チャージャ48によって形成される隙間に導出する。
定着ローラ50は、一対の回転ローラから構成され、用紙61を加熱するとともに加圧し、第2レジストローラ対52を介して、排紙ローラ58へ導出する。
排紙ローラ58は一対の回転ローラから構成され、導出された用紙61を排紙トレイ12aに順次スタックする。
次に、光走査装置100の構成について説明する。この光走査装置100は、図2及び図3を総合するとわかるように、感光ドラム30Aのほぼ上方(+Z側)に配置された6つの偏向面を有するポリゴンミラー104、このポリゴンミラー104の+X方向に順次配置された第1走査レンズ105、及び反射ミラー106A、106B、106C、106D、第1走査レンズ105の下方に配置された第2走査レンズ107A、この第2走査レンズ107Aの+X方向に順次配置された、第2走査レンズ107B、107C、107D、感光ドラム30A、30B、30Cのほぼ上方にそれぞれ配置された反射ミラー108A、108B、108C、ポリゴンミラー104を基点としてX軸と所定の角度θをなす直線上に配置された、シリンダレンズ103、カップリングレンズ102、及び光源101などを備えている。
ここで、Z軸を中心にXY座標を角度有るα回転することにより定まる座標系をxyz座標系とし、以下、光源101などの説明には当該座標系を用いるものとする。
前記光源101は、光ビームを射出する発光源が2次元配列された面発光型半導体レーザアレイである。この光源101は、一例として、図4に示されるように、x軸に対して角度θをなす方向を行方向、z軸に平行な方向を列方向とする4行4列のマトリクス状に配置された16の発光源を有している。
以下説明の便宜上、1行目に配置された4つの発光源を第1発光源群G1、2行目に配置された4つの発光源を第2発光源群G2、3行目に配置された4つの発光源群を第3発光源群G3、4行目に配置された4つの発光源群を第4発光源群G4と呼ぶものとする。
図2に戻り、前記カップリングレンズ102は、光源101の+x側に配置され、光源101に形成された発光源から射出される光ビームを略平行に整形する。
シリンダレンズ103は、副走査方向に屈折力を有するシリンドリカルレンズであり、光源101から射出されカップリングレンズ102を透過した光ビームを、ポリゴンミラー104の偏向面に集光する。
前記ポリゴンミラー104は、高さの低い正六角柱状部材であり、側面には6面の偏向面が形成されている。このポリゴンミラー104は、不図示の回転機構によりZ軸に平行な軸回りに一定の角速度で回転されている。これにより、ポリゴンミラー104の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー104の回転により、一定の角速度でY軸に沿って走査される。
前記第1走査レンズ105は、光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー104により、一定の角速度で偏向される光ビームの像面をY軸に対して等速移動させる。
前記反射ミラー106A〜106Dは、長手方向をY軸方向とし、第1走査レンズ105を経由した光ビームを折り返し、第2走査レンズ107A〜107Dそれぞれに導光する。
前記第2走査レンズ107A〜107Dは、保持部材120に保持された状態で配置され、反射ミラー106A〜106Dによりそれぞれ折れ返された光ビームを、Y軸方向を長手方向とする反射ミラー108A〜108Cを介して、或いは直接感光ドラム30A〜30Dの表面にそれぞれ結像する。以下、走査レンズ107Aを代表的に取り上げて説明する。
図5(A)及び図5(B)には、保持部材120に保持された第2走査レンズ107Aが示されている。また、図6には、第2走査レンズ107Aと保持部材120とが展開された状態で示されている。
図5(A),図5(B)及び図6を総合して見るとわかるように、前記第2走査レンズ107Aは、長手方向をY軸方向とするレンズであり、レーザ光が入射する−X側の面と、レーザ光が射出する+X側の面を囲むように矩形枠状のリブ部107aが形成されている。そして、リブ部107aの下面側中央には、矩形状の切り欠き部107bが設けられている。
前記保持部材120は、例えば金属板を板金加工することにより形成された、長手方向をY軸方向とする部材である。この保持部材120は、第2走査レンズ107Aの下面に対向する、長手方向をY軸方向とする長方形のベース部120a、ベース部120aの+X側及び−X側の外縁に沿ってそれぞれ設けられたガイド部120b,120c、及びベース部120aの両端から延設されたXY面に平行な面を有する固定部120gの3部分を有している。
前記ベース部120aの両端部には、−Z方向に突出する支持部120eがそれぞれ形成されている。この支持部120eは、ビード加工により母線方向をX軸方向とする半円柱状に形成されており、第2走査レンズ107Aが保持部材120に取り付けられた際には、第2走査レンズ107Aに線接触することとなる。
前記ガイド部120b,120cそれぞれは、保持部材120が板金加工される過程で、ベース部120aに対して直角となるように折り曲げられることで形成される。保持部材120では、このガイド部120b,120cが形成されることにより、特に副走査方向に作用する力に対する十分な剛性が確保されている。
保持部材120では、ベース部120aに直交するガイド部120b,120cを形成することで、断面二次モーメントを大きくすることが重要である。したがって、このガイド部120b,120cに、凹部や切り欠き等を形成してしまうと、その部分の断面二次モーメントが局所的に低下してしまい、保持部材120がZ軸方向の荷重を受けたときのたわみ変形が大きくなり好ましくない。なお、本実施形態では、ガイド部120b,120cそれぞれは、ベース部120aから−Z方向に突出するように形成されているが、これに限らず、ガイド部120b,120cそれぞれを+Z方向へ突出するように形成しても同様の効果を得ることができる。しかしながら、保持部材120のZ軸方向の寸法を小さくするためには、ガイド部120b,120cそれぞれをベース部120aから−Z方向に突出するように形成することが望ましい。
上述の2つのガイド部120b,120cのうちの、+X側のガイド部120bには、−Z側端部中央から−X方向に伸びる係止爪120dが形成され、−X側のガイド部120cには2つの当接部120fが形成されている。
係止爪120dは、保持部材120が板金加工される過程で、−Z方向に突出した状態から−X方向に折り曲げられることで形成され、−X側端はガイド部120cの−Z側端よりも+Z側に位置した状態となっている。また、当接部120fは、ガイド部120cの上端部の一部を半抜き加工することにより形成され、ガイド部120cの上端部から+X方向に突出している。
上述の第2走査レンズ107Aは、リブ部107aの−X側に当接部120fが当接するとともに、図7に示されるように第2走査レンズ107Aに形成された切り欠き部107bに、保持部材120のガイド部120bに形成された係止爪120dが係止し、両端部に、保持部材120のベース部120aに形成された支持部120eが当接した状態で組み合わされている。
図6及び図7を参酌するとわかるように、この状態のときには、第2走査レンズ107Aの両端部は、保持部材120のベース部120aにネジ122で固定された一組の弾性部材124によって、ベース部120aに形成された支持部120eに圧接され、第2走査レンズ107Aの中央部は、一組の把持部材132A,132Bによって、ベース部120aに対して付勢されている。
前記把持部材132A,132Bは弾性部材からなり、図8を参酌するとわかるように、Y軸方向の寸法がW4で、距離W3隔てて形成された2組の爪部132aと、該爪部132aと対向する係止部132bとを有している。そして、爪部132aが、保持部材120に形成された係止爪120dを挟んだ状態で、第2走査レンズ107Aのリブ部107aに係止し、係止部132bが保持部材120のベース部120a下面に係止している。これにより、第2走査レンズ107Aの中央部は、把持部材132A,132Bそれぞれの弾性力により、保持部材120のベース部120aに対して付勢される。
上述のように、保持部材120のベース部120aに対して付勢された第2走査レンズ107Aの下面中央は、図6を参酌するとわかるように、保持部材120のベース部120aに螺合された調整ネジ140の−Z側端部によって支持されている。本実施形態では、この調整ネジ140を回転して、Z軸方向に移動させることで、走査レンズ107Aを副走査方向に撓ませることができる。
なお、本実施形態では、図8に示されるように、第2走査レンズ107Aに形成された切り欠き部107bのY軸方向の寸法W1は、把持部材132Aの爪部132a間の距離W3とはほぼ等しくなっており、保持部材120に形成された係止爪120dのY軸方向の寸法W2よりも数μmから数十μm程度広くなっている。また、把持部材132Aの爪部132aそれぞれのY軸方向の幅W4はそれぞれ等しくなっている。これにより、第2走査レンズ107Aの中央部の2点は、把持部材132Aによって同等の力で保持部材120のベース部120aに対して付勢されるようになっている。また、図8に示されるように、第2走査レンズ107Aの切り欠き部107bの周囲に、スペーサ部材128を配置してもよい。これにより、把持部材132の爪部132aによる押圧力の釣り合いをとることができる。
上述のように構成された光走査装置100では、図3に示されるように、光源101の各発光源群G1〜G4から射出された複数の光ビームは、カップリングレンズ102により一旦交差され、シリンダレンズ103に入射する。シリンダレンズ103は、入射した発光源群G1〜G4それぞれから射出された光ビームをポリゴンミラー104の偏向面の近傍に集光する。ポリゴンミラー104で偏向された光ビームは、光ビーム同士の間隔を広げつつ、第1走査レンズ105に入射する。
第1走査レンズ105に入射した発光源群G1〜G4からの光ビームはそれぞれ、反射ミラー106A〜106Dで反射され第2走査レンズ107A〜107Dへ入射する。そして、各第2走査レンズ107A〜107Dにより感光ドラム30A〜30Dの表面にそれぞれ集光される。
このようにして感光ドラム30A〜30D上にそれぞれ形成された発光源群G1〜G4からの光ビームの集光点は、ポリゴンミラー104が回転することにより、図2の矢印Bに示される方向に一括して移動(走査)される。これにより、各感光ドラム30A〜30Dは、一回の走査で4つの発光源による4ライン走査が行われる。
一方、感光ドラム30A〜30Dそれぞれの表面の感光層は、帯電チャージャ32A〜32Dにより所定の電圧で帯電されることにより、電荷が一定の電荷密度で分布している。そして、上述したように、感光ドラム30A〜30Dがそれぞれ走査されると、光ビームが集光したところの感光層が導電性を有するようになり、その部分では電荷移動がおこり電位が零となる。したがって、図1の矢印の方向にそれぞれ回転している感光ドラム30A〜30Dに対し、画像情報に基づいて変調した光ビームを走査することにより、それぞれの感光ドラム30A〜30Dの表面に、電荷の分布により規定される静電潜像を形成することができる。
感光ドラム30A〜30Dそれぞれの表面に静電潜像が形成されると、図1に示されるトナーカートリッジ33A〜33Dの現像ローラにより、感光ドラム30A〜30Dそれぞれの表面にトナーが供給される。このときトナーカートリッジ33A〜33Dそれぞれの現像ローラは感光ドラム30A〜30Dと逆極性の電圧により帯電しているため、現像ローラに付着したトナーは感光ドラム30A〜30Dと同極性に帯電されている。したがって、感光ドラム30A〜30Dの表面のうち電荷が分布している部分にはトナーが付着せず、走査された部分にのみトナーが付着することにより、感光ドラム30A〜30Dの表面に静電潜像が可視化されたトナー像が形成される。
これらのトナー像は転写ベルト40に重ね合わされた状態で転写され、給紙トレイ60から取り出された用紙61に、転写チャージャ41によって転写される。そして、このトナー像が、定着ローラ50によって用紙61に定着されることで、用紙61上に画像が形成される。このように画像が形成された用紙61は、排紙ローラ58により排紙され、順次排紙トレイ12aにスタックされる。
以上説明したように、本実施形態では、走査レンズ107A〜107Dが、保持部材120に保持され、保持部材120の調整ネジ140を介して、走査レンズ107A〜107Dを副走査方向に湾曲させることができる。したがって、感光ドラム30A〜30Dそれぞれにおける走査線の曲がりを個別に修正することで、感光ドラム30A〜30Dを精度よく走査することができ、結果的に用紙61に色ズレ等のない高品位な画像を形成することができる。
なお、本実施形態では、保持部材120と第2走査レンズ107A〜107Dとは、保持部材120に設けられた係止爪120dと、第2走査レンズ107A〜107Dに設けられた切り欠き部107bとによって係合している。例えば、走査レンズ107Aに凸部を形成し、保持部材120に凹部を形成することも考えられるが、走査レンズ107Aに凸部を形成すると、三次元測定機にて光学面の形状を測定する際に、測定プローブが凸部に干渉し、測定プローブ先端部が光学面に到達しないといった課題が生じる恐れがある。このことから第2走査レンズ107A〜107Dの係合部は凹形状の切り欠きとしておくことが望ましい。
本実施形態では、保持部材120に対して、第2走査レンズ107Aが、主走査方向(Y軸方向)の中央部を基準として係合しており、両端部付近が固定部材124によって保持部材120に固定される構成である。このため、例えば雰囲気温度の変化により、保持部材120及び第2走査レンズ107A〜107D等が熱膨張した場合でも、第2走査レンズ107A〜107Dは中央部付近を対称軸として両側に膨張或いは伸縮することができる。従って、第2走査レンズ107A〜107Dのたわみ変形が生じることが回避(或いは低減)される。
また、本実施形態では、把持部材132A,132Bと調整ネジ140とで調整機構が構成されている。そして、調整ネジ140の保持部材120に対する押し込み量或いは引き抜き量を調整することで、第2走査レンズ107A〜107Dのたわみ形状を調整することができ、結果として感光体ドラム30A〜30D表面での走査線形状(走査線曲がり)を補正することができる。
第2走査レンズ107A〜107Dの曲げ剛性と比較して、保持部材120の曲げ剛性が不十分な場合には、調整機構によるたわみ調整を行う際に、保持部材120のほうが大きくたわみ変形することになり、調整ネジ140の押し込み量或いは引き抜き量に対する走査線形状の変化が安定せず、調整範囲が狭くなってしまう。また、初期調整を完遂することができた場合であっても、ユーザ先での実使用中に、経時又は温度変化等の影響により、第2走査レンズ107A〜107Dの形状が変化しやすくなるため、結果として感光ドラム30A〜30D表面の走査線形状が変化する(その結果、色ずれが生じる)恐れがある。本実施形態の構成では、ガイド部120b,120cにより保持部材120の剛性が十分に確保されている。特に保持部材120の配備数が多いほど、曲げ剛性を確保することが重要である。
また、本実施形態では、把持部材132Aにおける1組の爪部132aのY軸方向の寸法は相互に等しいので、爪部132aによる第2走査レンズ107A〜107Dに対する押圧力も等しい。Y軸方向において、「切り欠き部107bの中央位置」と「係止爪120dの中央位置」と「爪部132a間の中央位置」が高精度に一致している場合が、調整ネジ140の位置を中心として、2つの爪部132aによる押圧力が釣り合うため、好ましい構成である。
一方、上記3つの中央位置がずれている場合には、調整ネジ140を挟んで第2走査レンズ107A〜107DにZ軸方向のせん断力(曲げモーメント)が作用することになり、第2走査レンズ107A〜107DにS字形状のたわみ変形が生じる。本実施形態における構成のように、調整機構が1ヶ所しか備えられていない場合には、このようなS字形状のたわみ変形を補正することができないため、高精度に走査線形状を調整することができない。したがって、特に、調整機構の配備数が1ヵ所の場合で、高精度な走査線形状の調整を完遂するためには、Y軸方向における「切り欠き部107bの中央位置」と「係止爪120dの中央位置」と「爪部132a間の中央位置」を一致させることが望ましい。
第2走査レンズ107A〜107Dを保持する保持部材120を含む保持機構の構成としては、種々の構成が考えられる。以下、いくつかの変形例について説明する。
《変形例1》
図9(A)及び図9(B)は、変形例1にかかる保持部材120と第2走査レンズ107Aを示す図である。本変形例では、調整ネジ140と把持部材132Aからなる3つの調整機構により第2走査レンズ107Aの形状を調整することが可能となっている。これにより、上記実施形態で説明した場合と比較して、感光ドラム30A〜30Dにおける走査線の形状を高精度に補正することができる。また、本変形例では、第2走査レンズ107Aの中央からずれた位置に切り欠き部107bが形成され、保持部材120には前記切り欠き部107bに対応した位置に係止爪120dが形成されている。
《変形例2》
図10(A)及び図10(B)は変形例2にかかる保持部材120と第2走査レンズ107Aを示す図である。また、図11は、第2走査レンズ107Aと保持部材120を一部断面して示す図である。本変形例にかかる保持部材120には、図11に示されるように、係止爪120dに代えて、第2走査レンズ107Aに形成された切り欠き部107bに嵌合する基準ピン142が、カシメやネジ締結による工法によって設けられている。本変形例では、この基準ピン142が第2走査レンズ107Aの切り欠き部107bに係合することで、第2走査レンズ107Aの保持部材120に対するY軸方向の位置が規定される。このように、基準ピン142を別途設けることで、プレス加工により係止爪120dを設ける必要がなくなる。
《変形例3》
保持部材120の変形例3について、図12(A)〜図13(B)を参照しつつ説明する。図12(A)は、+X方向にレーザ光が透過するように、保持部材120に対して第2走査レンズ107Aを組み付けた状態を示す図である。そして、図13(B)は、第2走査レンズ107AをY軸回りに180°回転し、−X方向にレーザ光が透過するように、保持部材120に第2走査レンズ107Aを組み付けた状態を示す図である。
図12(A)に示される状態では、図12(A)〜図13(B)を総合してみるとわかるように、第2走査レンズ107Aの切り欠き部107b1と、保持部材120の+X側の係止爪120d1とが係合して、Y軸方向の位置決めが行われ、保持部材120の−X側に備えられた別の係止爪120d2はフリーの状態である。一方、図13(B)に示される場合には、第2走査レンズ107Aの切り欠き部107b2と、保持部材120の−X側の係止爪120d2とが係合して、Y軸方向の位置決めが行われ、保持部材120の+X側に備えられた別の係止爪120d1はフリーの状態である。
図12(B)に示されるように、保持部材120に、Y軸に対照となるように、一対の係止爪120d1,120d2を設けることで、同形状の保持部材120に対して、第2走査レンズ107Aを+X方向又は−X方向の任意の方向に取り付けることが可能となる。このような保持部材120を準備することにより、例えば、図1に示されるタンデム方式の画像形成装置を構成する光走査装置内に第2走査レンズを配備する際、折り返しミラーの配置(枚数)や調整機構の調整ネジ140へのアクセス性を考慮し、適宜組付状態を選択することができる。
なお、保持部材120の係止爪120d1,120d2のY軸方向の寸法を相互に異なる寸法とし、かつ第2走査レンズ107Aの切り欠き部107b1,107b2のY軸方向の寸法をそれぞれ、係止爪120d1,120d2のY軸方向の寸法に対応させた大きさとすることで、第2走査レンズ107Aと保持部材120とを組み付ける際に、誤って反対向きに(Y軸回りに180°反転して)第2走査レンズ107Aを組み付けてしまうことを回避することが可能である(フールプルーフ)。
次に、変形例3に対する比較例について説明する。図14(A)及び図14(B)には、比較例にかかる保持部材120’が示されている。この保持部材120’と、第2走査レンズ107Aとは、保持部材120’のガイド部120b’に形成された切り欠き120a1’、或いはガイド部120c’に形成された切り欠き部120a2’と、第2走査レンズ107Aに形成された凸部107b1’、或いは凸部107b2’とが係合することで、第2走査レンズ107Aの、保持部材120’に対するY軸方向の位置が規定される。
比較例にかかる保持部材120’のようにガイド部120b’,120c’に凹部や切り欠き形状を形成すると、保持部材120’の曲げ剛性が低下するため好ましくない。保持部材120の剛性が低下すると、保持される第2走査レンズの調整範囲が狭くなり、第2走査レンズを複雑な形状にする調整ができなくなる。また、経時変化又は温度変化に伴う調整値の変動が大きくなる等の問題も発生する。
図15(A)及び図15(B)には、変形例3にかかる保持部材と比較例にかかる保持部材の剛性を比較するための構造解析を行った結果が示されている。この結果は、それぞれの保持部材の両端部を単純支持し、中央部に荷重W(=10N)を作用させた例である。
保持部材120、及び保持部材120’において、板厚tを1.6[mm]、曲げ部の高さHを6.1[mm]、支持点間の間隔Lを227[mm]とし、材質は炭素鋼(ヤング率200[GPa]、ポワソン比0.3)であるものとした。また、保持部材120’における切り欠き部120a1’,120a2’の深さを4.4[mm]、幅を6[mm]とした。また、解析に不要な形状は適宜削除して解析を行った。その結果、保持用ブラケット中央部でのたわみ量δは、保持部材120では0.103[mm]、保持部材120’では0.253[mm]となった。
また、保持部材の「全体的な曲げ剛性K」を、K=(W×L3)/(48×δ)と定義すると、保持部材120のKの値は23.6[N・m2]、保持部材120’のKの値は9.6[N・m2]となった。この結果から、変形例3にかかる保持部材120の剛性は、比較例にかかる保持部材120’の2.5倍程度は大きいことになり、好ましい構成であるといえる。
比較例にかかる保持部材120’の場合、第2走査レンズ107Aの凸部107bと係合する切り欠き部120a’が、保持部材120の主走査方向中央部付近に設けられている。これにより、この部分での断面二次モーメントが局所的に低下し、中央部にて屈曲するような変形を生じている。このため、切り欠き部のない保持部材120の場合には、ガイド部120b,120cの高さを高くすることで「全体的な曲げ剛性」を大きくすることが可能であるが、比較例にかかる保持部材120’おいてはガイド部120c’,120b’の高さを高くする効果は小さい。
また、保持部材120の曲げ剛性は、保持部材120に組み付ける光学素子107Aの曲げ剛性との比較で設定することが必要である。図16(A)に示されるように、真直な光学素子107Aを、図16(B)に示されるように、たわみ変形させたときのたわみ量(及び、長手方向のたわみ形状の分布)をδ1及びδ2とし、保持部材120及び光学素子107Aの曲げ剛性をK1及びK2とすると、式K1×δ2=K2×δ2の関係が成立する。
したがって、保持部材120の変形量(たわみ形状)δ1は、光学素子107の調整量(たわみ形状)δ2のK2/K1倍となる。保持部材120の曲げ剛性K1が小さすぎると、調整ネジ140を押し込んでも光学素子107Aがたわまずに保持部材120がたわんでしまい、調整ネジ140の調整ストロークが不足することになり、また調整機構を複数ヶ所設けても複雑な形状の調整が困難となる。
以上から、実作業上は、保持部材のたわみ変形量δ1を光学素子のたわみ変形量δ2の半分又はそれより小さくする(2×δ2≧δ1)ことが望ましい。そのためには、式K1/K2≧2の関係となるように保持部材の形状を設計すればよい。
次に、図17〜図19を参照しつつ、変形例3にかかる保持部材120と第2走査レンズ107Aとからなるモジュールを、光学ハウジングに組み付ける方法について説明する。
光学ハウジング154を構成する底面部154eの中央部付近には、第2走査レンズ107Aに形成された切り欠き部107b2と係合する円筒形状の係合部154bと、第2走査レンズ107Aを光軸(X軸)と平行な回転軸回りに回転するための半円柱状の支点154cとが形成されている。
保持部材120は、支点154に第2走査レンズ107Aの−Z側の面が当接した状態で、固定部120gに形成された丸孔に挿入された固定部材157が、光学ハウジング154の底面部154eに固定されることで、X軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。また、第2走査レンズ107Aの両端部の−X側には、当接部107cがそれぞれ設けられており、該当接部107cは、光学ハウジング154の底面部154eから延びる1組の凸部154aの+X側の面に、板ばね153によりそれぞれ押圧されている。
光学ハウジング154の−Y側の側壁には、ステッピングモータ及び歯車列から構成されるアクチュエータ152が配備されている。このアクチュエータ152は、光学ハウジング154に形成された矩形状の開口部154dから突出したホルダ120の固定部120gをZ軸方向へ移動させる。これにより、第2走査レンズ107Aは、ホルダ120とともにX軸に平行な軸回りに回動される。
なお、固定部材157は、ネジと、該ネジに取り付けられたコイルばねを含んで構成され、コイルばねの押圧力により保持部材120を安定的に配備することを補佐する。ここで、固定部材157の押圧力Fによる保持部材120のたわみ変形について、図20(A)〜図20(C)を参照しつつ説明する。
図20(A)は、保持部材120と第2走査レンズ107Aを模式的に示す図である。支点154cが第2走査レンズ107Aの下面中央部を支持し、固定部材157のコイルばねの押圧力Fが固定部120gに作用している。その結果、保持部材120は図中の矢印方向(上凸形状)にたわみ変形を生じる。アクチュエータ152により保持部材120がX軸回りに回転されると、この押圧力Fが変化するため、保持部材120の曲げ剛性が不十分な場合にはたわみ形状も変化する。その結果、第2走査レンズ107Aのたわみ形状が変化し、被走査面上の走査線形状も変化する。この点で、保持部材120の曲げ剛性が不十分な場合には、図20(A)に示される構成を採用するのは好ましくない。
図20(B)に示される光学ハウジング154は、図20(A)に示される光学ハウジング154とは異なり、支点154c2が第2走査レンズ107Aの+Y側端部を支持するように配置されている。また、図20(C)に示される光学ハウジング154は、図20(A)に示される光学ハウジング154とは異なり、支点154c3が保持部材120の+Y側の固定部120gを支持するように配置されている。なお、2つの固定部材157それぞれは、支点154c2,154c3に対向する位置と、アクチュエータ152の作用点に対向する位置とに押圧力Fが作用するように配置されている。
図20(B)及び図20(C)に示される構成とすることで、アクチュエータ152を介して保持部材120をX軸回りに回転調整しても、保持部材120にたわみ変形を生じさせる外力は作用しない。よって、第2走査レンズ107Aのたわみ形状は変化しないので、被走査面での走査線形状(曲がり)を変化させることなく、走査線傾きのみを補正することが可能となる。
なお、上記実施形態では、一例として、各色に対応する4つのステーションを備えたタンデム方式の画像形成装置を用いた説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、単色の画像形成装置についても好適である。
また、上記実施形態では、本発明の光走査装置100がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。
10…画像形成装置、12…ハウジング、30A〜30D…感光ドラム、40…転写ベルト、50…定着ローラ、100…光走査装置、101…光源、102…カップリングレンズ、103…シリンダレンズ、104…ポリゴンミラー、105…第1走査レンズ、106A〜106D…反射ミラー、107A〜107D…第2走査レンズ、107a…リブ部、107b…切り欠き部、107c…当接部、108A〜108C…反射ミラー、120…保持部材、120a…ベース部、120b,120c…ガイド部、120d…係止爪、120e…支持部、120f…当接部、120g…固定部、124…固定部材、128…スペーサ部材、132A,132B…把持部材、132a…爪部、152…アクチュエータ、153…板ばね、154…光学ハウジング、154a…凸部、154b…係合部、154c…支点、154d…開口部、154e…底面部、157…固定部材、G1…第1発光源群、G2…第2発光源群、G3…第3発光源群、G4…第4発光源群。