以下、本発明の一実施形態を図1〜図22に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電チャージャ(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、定着ローラ2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
感光体ドラム2030a、帯電チャージャ2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電チャージャ2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電チャージャ2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電チャージャ2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各帯電チャージャは、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(以下、便宜上「トナー画像」という)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚づつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次スタックされる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電チャージャに対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、2つの光源(2200a、2200b)、2つのカップリングレンズ(2201a、2201b)、2つの開口板(2202a、2202b)、2つの光束分割プリズム(2203a、2203b)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、ポリゴンミラー2104、4つのfθレンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8つの折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108a、2108b、2108c、2108d)、4つのトロイダルレンズ(2107a、2107b、2107c、2107d)、4つの光検知センサ(2205a、2205b、2205c、2205d)、4つの光検知用ミラー(2207a、2207b、2207c、2207d)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300(図2〜図4では図示省略、図5参照)の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
また、便宜上、カップリングレンズ2201aの光軸に沿った方向を「w1方向」、光源2200aにおける主走査対応方向を「m1方向」とする。さらに、カップリングレンズ2201bの光軸に沿った方向を「w2方向」、光源2200bにおける主走査対応方向を「m2方向」とする。なお、光源2200a及び光源2200bにおける副走査対応方向は、いずれもZ軸方向と同じ方向である。
光源2200aと光源2200bは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。
カップリングレンズ2201aは、光源2200aから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201bは、光源2200bから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
開口板2202aは、開口部を有し、カップリングレンズ2201aを介した光束を整形する。
開口板2202bは、開口部を有し、カップリングレンズ2201bを介した光束を整形する。
各光束分割プリズムは、入射光束の半分を透過させ、残りを反射するハーフミラー面と、該ハーフミラー面で反射された光束の光路上にハーフミラー面に平行に配置されたミラー面とを有している。すなわち、各光束分割プリズムは、入射光束を互いに平行な2つの光束に分割する。ここでは、光源ユニット2200aからの光束が光束分割プリズム2203aに入射し、光源ユニット2200bからの光束が光束分割プリズム2203bに入射する。
シリンドリカルレンズ2204aは、光束分割プリズム2203aからの2つの光束のうち−Z側の光束の光路上に配置され、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204bは、光束分割プリズム2203aからの2つの光束のうち+Z側の光束の光路上に配置され、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204cは、光束分割プリズム2203bからの2つの光束のうち+Z側の光束の光路上に配置され、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204dは、光束分割プリズム2203bからの2つの光束のうち−Z側の光束の光路上に配置され、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
ポリゴンミラー2104は、Z軸に平行な軸回りに回転する2段構造の4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。そして、1段目(下段)の4面鏡ではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)の4面鏡ではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目の4面鏡及び2段目の4面鏡は、互いに位相が45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
ここでは、シリンドリカルレンズ2204a及びシリンドリカルレンズ2204bからの光束はポリゴンミラー2104の−X側に偏向され、シリンドリカルレンズ2204c及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束はポリゴンミラー2104の+X側に偏向される。
各fθレンズはそれぞれ、ポリゴンミラー2104の回転に伴って、対応する感光体ドラム面上で光スポットが主走査方向に等速で移動するようなパワーを有する非円弧面形状を有している。
fθレンズ2105a及びfθレンズ2105bは、ポリゴンミラー2104の−X側に配置され、fθレンズ2105c及びfθレンズ2105dは、ポリゴンミラー2104の+X側に配置されている。
そして、fθレンズ2105aとfθレンズ2105bはZ軸方向に積層され、fθレンズ2105aは1段目の4面鏡に対向し、fθレンズ2105bは2段目の4面鏡に対向している。また、fθレンズ2105cとfθレンズ2105dはZ軸方向に積層され、fθレンズ2105cは2段目の4面鏡に対向し、fθレンズ2105dは1段目の4面鏡に対向している。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、fθレンズ2105a、折返しミラー2106a、トロイダルレンズ2107a、及び折返しミラー2108aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030a上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030aでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030aの回転方向が、感光体ドラム2030aでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、fθレンズ2105b、折り返しミラー2106b、トロイダルレンズ2107b、及び折返しミラー2108bを介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030b上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030bでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030bの回転方向が、感光体ドラム2030bでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、fθレンズ2105c、折り返しミラー2106c、トロイダルレンズ2107c、及び折返しミラー2108cを介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030c上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030cでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030cの回転方向が、感光体ドラム2030cでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、fθレンズ2105d、折り返しミラー2106d、トロイダルレンズ2107d、及び折り返しミラー2108dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030d上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030dでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030dの回転方向が、感光体ドラム2030dでの「副走査方向」である。
なお、各折り返しミラーは、ポリゴンミラー2104から各感光体ドラムに至る各光路長が互いに一致するとともに、各感光体ドラムにおける光束の入射位置及び入射角がいずれも互いに等しくなるように、それぞれ配置されている。また、各折り返しミラーは、それぞれミラー保持部材(図示省略)に保持されて、光学ハウジング2300に固定されている。
また、シリンドリカルレンズとそれに対応するトロイダルレンズとにより、偏向点とそれに対応する感光体ドラム表面とを副走査方向に共役関係とする面倒れ補正光学系が構成されている。
ポリゴンミラー2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、fθレンズ2105aとトロイダルレンズ2107aと折り返しミラー(2106a、2108a)とからKステーションの走査光学系が構成されている。また、fθレンズ2105bとトロイダルレンズ2107bと折り返しミラー(2106b、2108b)とからCステーションの走査光学系が構成されている。そして、fθレンズ2105cとトロイダルレンズ2107cと折り返しミラー(2106c、2108c)とからMステーションの走査光学系が構成されている。さらに、fθレンズ2105dとトロイダルレンズ2107dと折り返しミラー(2106d、2108d)とからYステーションの走査光学系が構成されている。
光検知センサ2205aには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Kステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207aを介して入射する。
光検知センサ2205bには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Cステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207bを介して入射する。
光検知センサ2205cには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Mステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207cを介して入射する。
光検知センサ2205dには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Yステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207dを介して入射する。
各光検知センサはいずれも、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
走査制御装置は、各光検知センサの出力信号に基づいて対応する感光体ドラムでの走査開始タイミングを検出する
各光源は、一例として図6に示されるように、2次元的に配列された40個の発光部(v1〜v40)が1つの基板上に形成された2次元アレイ100を有している。40個の発光部は、すべての発光部を副走査対応方向に伸びる仮想線上に正射影したときに等間隔となるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
また、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、2次元アレイ100は、いわゆる面発光レーザアレイである。
ここで、トロイダルレンズについて、図7及び図8を用いて説明する。なお、各トロイダルレンズは同様な形状を有しているため、各トロイダルレンズを区別する必要がないときは、トロイダルレンズ2107と総称する。また、便宜上、各トロイダルレンズにおける光束の入射方向を「R方向」、主走査対応方向を「M方向」、R方向及びM方向のいずれにも直交する方向を「S方向」とする。
トロイダルレンズ2107は、光学面(入射面及び出射面)を上下(副走査対応方向)から囲むような形態で、リブ部62を有している。このリブ部62(+S側)の射出面側(+R側)の中央部には、凹部37aが形成されている。
トロイダルレンズ2107におけるM方向の両端部の−R側の面には、それぞれ取付基準となる当接部(56−1、56−2)が設けられている。
トロイダルレンズ2107は、一例として図9〜図11に示されるように、保持用ブラケット35に保持されている。ここでは、保持用ブラケット35の−S側にトロイダルレンズ2107が保持されている。
保持用ブラケット35は、例えば鋼板などのプレス加工により製造されている。保持用ブラケット35の底板35aにおける長手方向(M方向)の両端部近傍には、トロイダルレンズ2107を支持するための支持部38がそれぞれ設けられている。
そして、底板35aにおける各支持部38の−S側の位置に、それぞれ板ばね34が締結ねじ40により締結固定されている。各板ばね34は、トロイダルレンズ2107の−S側のリブ部62に対して、+S方向に弾性力を作用させる。これにより、保持用ブラケット35とトロイダルレンズ2107のS方向に関する相対位置関係が規制(決定)される。
支持部38は、ビード加工によって形成され、R方向に延びるU字状の溝を有し、−S側に突出している突出部である。そこで、支持部38とトロイダルレンズ2107との接触は実質的にR方向に延びる線接触となり、トロイダルレンズ2107は、支持部38に拘束されことなく、S方向にたわむことができる。
底板35aの+R側端部47及び−R側端部48は、−S側に曲げられている。これらの曲げ部47及び48により、保持用ブラケット35におけるS方向の曲げ剛性が向上している。保持用ブラケット35の曲げ剛性を確保するには、このような曲げ部を備えて断面二次モーメントを大きくすることが重要である。
+R側の曲げ部47のM方向における中央先端には、−R側にさらに折り曲げられている切り曲げ部36が形成されている。この切り曲げ部36は、トロイダルレンズ2107の中央部に設けられた凹部37aに係合される。M方向に関して、凹部37aの幅と、切り曲げ部36の幅とには、数μmから数十μm程度の差異が設けられ、このクリアランスでM方向の位置決めが行われる。
−R側の曲げ部48には、2箇所の当接部41が半抜き加工により形成されている。各当接部41には、トロイダルレンズ2107の−R側の面が接触し、R方向の位置決めが行われる。
底板35aの中央部には、調整ねじ31及び2つの板ばね(32、33)を含む調整機構39が取り付けられている。板ばね32及び板ばね33による押圧が作用する方向は、調整ねじ31の押し込み/引き抜き方向に対向するようになっている。調整ねじ31の押し込み量/引き抜き量を調整することによって、トロイダルレンズ2107のたわみ形状を調整することができる。そして、その結果として、被走査面での走査線曲がりを補正することができる。
次に、トロイダルレンズ2107が保持されている保持用ブラケット35(以下では、便宜上「一体モジュール」ともいう)を光学ハウジング2300に取り付ける方法について、図12〜図14を用いて説明する。
−M側の当接部56−1は、光学ハウジング2300の底面における−M側の側壁近傍の位置から突設された被当接部51−1に、板ばね53−1により押圧保持される。
+M側の当接部56−2は、光学ハウジング2300の底面における+M側の側壁近傍の位置から突設された被当接部51−2に、板ばね53−2により押圧保持される。
これにより、R方向の位置決めが行われる。なお、以下では、板ばね53−1による押圧力をF1、板ばね53−2による押圧力をF2とする。
光学ハウジング2300の−M側の側壁には、ステッピングモータ及び歯車列等から構成されるアクチュエータ52が取り付けられている。アクチュエータ52は、ステッピングモータの回転軸の同軸上に配備された歯車が回転軸方向に移動することができる(特開2005−88445号公報及び特開2005−189791号公報参照)。
保持用ブラケット35のM方向の両端部には、それぞれ段曲げ部(58−1、58−2)が形成されている。−M側の段曲げ部58−1は、−M側の側壁の角穴55を介して、該側壁の外側へ突出し、アクチュエータ52に当接されている。ステッピングモータを駆動し、段曲げ部58−1をS方向に上下させることにより、一体モジュールをR方向に平行な軸回りに回動させることができる。このようにして一体モジュールをR方向に平行な軸回りに回動させることを「γ回転」という。このように一体モジュールをγ回転させることにより、被走査面における走査線の傾きを補正することができる。
−M側の段曲げ部58−1には、貫通穴59−1が設けられており、段付ねじ及びコイルばね等から構成される固定部材57−1が、貫通穴59−1を介して、光学ハウジング2300の底面に螺合されている。これにより、段曲げ部58−1には、コイルばねによる押圧力G1が作用する。
光学ハウジング2300の底面には、トロイダルレンズ2107をR方向に平行な軸回りに回動させる際の支点50が設けられている。この支点50は、M方向に関して、トロイダルレンズ2107の中心とトロイダルレンズ2107の+M側端部との間に対応する位置に設けられている。ここでは、M方向に関して、支点50とトロイダルレンズ2107の中心との距離は、トロイダルレンズ2107の射出側の光学面におけるM方向の長さをLとしたときに、0.25Lとなる距離である。この支点50には、トロイダルレンズ2107の裏面(−S側の面)が、R方向に略平行な軸周りに回動可能に当接されている。これにより、S方向の位置決めが行われる。また、トロイダルレンズ2107のリブ部62(−S側)に設けられた凹部37bを、光学ハウジング2300の底面に突設されている円筒部50aに係合させることにより、M方向の位置決めが行われる。
+M側の段曲げ部58−2には、貫通穴59−2が設けられている。そして、該貫通穴59−2を介して、固定部材57−1と同様の固定部材57−2が、光学ハウジング2300の底面に螺合されている。これにより、段曲げ部58−2には、コイルばねによる押圧力G2が作用する。
一体モジュールは、押圧力G1と押圧力G2により安定的に光学ハウジング2300に固定される。
これにより、カラープリンタ2000をユーザ先に搬送するときに、一体モジュールの位置や姿勢が変化したり、ユーザ先での使用時にポリゴンミラー2104等の振動の影響で一体モジュールが振動するのを回避することができる。
図15及び図16には、比較例Aとして、M方向に関して、トロイダルレンズ2107の射出側の光学面の中心と同じ位置に支点50が設けられている場合が示されている。
また、図17及び図18には、比較例Bとして、M方向に関して、+M側の段曲げ部58−2の中心と同じ位置に支点50が設けられている場合が示されている。
ここで、比較例A、比較例B、及び本実施形態について、被走査面上における各像高での光スポットの位置を25℃(基準温度)及び50℃で測定した。
図19には、比較例Aについて、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置(すなわち、温度が25℃から50℃に変化したときの、光スポット位置の変化量)が示されている。この場合には、120μm程度の右上がり傾向の走査線傾きが発生しており、好ましくない結果であった。なお、ここでは、「走査線傾き」とは、像高が−150[mm]での走査位置と像高が+150[mm]での走査位置の差をいう。
図20には、比較例Bについて、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置が示されている。この場合には、下凸形状で、PV値で40μm程度の走査線曲がりが発生したが、像高が±150[mm]付近での走査位置ずれは小さかった。すなわち、走査線傾きは発生せず、この点では望ましい結果であった。なお、ここでは、「走査線曲がり」とは、像高が±150[mm]での走査位置をいずれもゼロとしたときの走査線形状をいう。
図21には、本実施形態について、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置が示されている。この場合には、右上がり傾向の走査線傾きが発生したが、その発生量は50μm程度であった。これは、比較例Aの約40%である。
次に、比較例A、比較例B、及び本実施形態について、被走査面上において約0.8[mm]の走査線傾きを補正するために、トロイダルレンズ2107をγ回転させたときの、被走査面上での主走査方向に関するビームスポット径の変化量をそれぞれ測定した。その測定結果が図22に示されている。
比較例Aの場合には、像高が−50mmでビームスポット径の変化量が最大(約4μm)となったが、全体としては変化量が小さく、好ましい結果であった。
比較例Bの場合には、像高が+側に大きくなるにつれて、ビームスポット径の変化量は大きくなり、その最大値は+10μmにも達し、好ましくない結果であった。
本実施形態の場合には、像高が−側に比較して、+側でビームスポット径の変化量が大きくなる傾向を示したが、全体としては変化量が小さく、好ましい結果であった。
すなわち、本実施形態の場合には、温度変化時の走査線傾きの発生量を低減し、かつ、走査線傾きの補正に伴うビームスポット形状の劣化を低減することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置2010では、板ばね53−1、板ばね53−2によって押付部材が構成され、アクチュエータ52によって駆動機構が構成されている。また、保持用ブラケット35によって素子保持部材が構成され、固定部材57−1によって第1の弾性部材が構成され、固定部材57−2によって第2の弾性部材が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、2つの光源(2200a、2200b)、各光源からの光束を偏向するポリゴンミラー2104、主走査方向を長手方向とするトロイダルレンズ2107を含み、ポリゴンミラー2104で偏向された複数の光束を対応する感光体ドラムの表面に集光する走査光学系、ポリゴンミラー2104及び走査光学系が収容される光学ハウジング2300、トロイダルレンズ2107をその光軸方向に平行な軸回りに回動させるアクチュエータ52を備えている。
アクチュエータ52は、トロイダルレンズ2107の−M側の端部近傍に設けられ、光学ハウジング2300の底面には、トロイダルレンズ2107をR方向に平行な軸回りに回動させる際の支点50が設けられている。この支点50は、M方向に関して、トロイダルレンズ2107の中心とトロイダルレンズ2107の+M側端部との間に対応する位置に設けられている。そして、M方向に関して、支点50とトロイダルレンズ2107の中心との距離は、トロイダルレンズ2107の射出側の光学面におけるM方向の長さをLとしたときに、0.25Lとなる距離である。
この場合には、温度変化時の走査線傾きの発生量を低減し、かつ、走査線傾きの補正に伴うビームスポット形状の劣化を低減することができる。その結果、安定して高い精度の光走査を行うことが可能となる。
また、トロイダルレンズ2107のM方向の両端部近傍にそれぞれ光軸方向に平行な方向の押圧を作用させ、該両端部近傍を光学ハウジング2300に押し付ける2つの板ばね(53−1、53−2)を備えている。この場合には、光学ハウジング2300内部の温度変化に伴う走査線曲がりをさらに小さくすることができる。
また、保持用ブラケット35は、トロイダルレンズ2107に副走査方向に関して互いに反対向きの押圧を作用させて、トロイダルレンズ2107の副走査方向に関する形状を調整する調整機構39を有している。この場合には、組立工程あるいは調整工程で、走査線曲がりを補正することができる。
また、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010を備えているため、安定して高品質の画像を形成することが可能である。
そして、色ずれ低減のためにアクチュエータ52を作動させる頻度が低減でき、連続して複数の画像を出力する場合に、画像出力動作を中断させる頻度を低減することが可能である。
なお、上記実施形態では、調整機構39が、底板35aの中央部1箇所にのみ設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、トロイダルレンズ2107の成形誤差や組付誤差、対応するfθレンズの成形誤差や組付誤差、他の光学部品の形状誤差や組付誤差、光学ハウジングの形状誤差等を考慮し、複数箇所に設けても良い。これにより、更に高精度に走査線曲がりを補正することが可能となる。
また、上記実施形態では、トロイダルレンズ2107の形状を調整することで走査線曲がりを補正する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、折り返しミラーを反射面に垂直な向きに変形させることで走査線曲がりを補正しても良い。この場合に、折り返しミラーを保持する前記ミラー保持部材は、折り返しミラーの反射面に垂直な方向に押圧を作用させて、折り返しミラーの形状を調整するミラー調整機構を有しても良い。
また、上記実施形態では、M方向に関して、支点50とトロイダルレンズ2107の中心との距離が、トロイダルレンズ2107の射出側の光学面におけるM方向の長さをLとしたときに、0.25Lとなる距離である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、支点50が、M方向に関して、トロイダルレンズ2107の中心とトロイダルレンズ2107の+M側端部との間に対応する位置に設けられていれば良い。
支点50とトロイダルレンズ2107の中心との距離が0.15Lの場合が、変形例1として図23に示されている。また、支点50とトロイダルレンズ2107の中心との距離が0.35Lの場合が、変形例2として図24に示されている。
図25には、変形例1について、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置が示されている。この場合には、右上がり傾向の走査線傾きが発生したが、その発生量は70μm程度であった。これは、比較例Aの約60%である。
図26には、変形例2について、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置が示されている。この場合には、下凸形状の走査線曲がりが発生したが、像高が±150[mm]付近での走査位置ずれは小さかった。
図27には、上記比較例A、比較例B、上記実施形態、変形例1及び変形例2について、25℃での光スポット位置に対する50℃での光スポット位置がまとめて示されている。
また、図28には、比較例A、比較例B、上記実施形態、変形例1及び変形例2について、被走査面上において約0.8[mm]の走査線傾きを補正するために、トロイダルレンズ2107をγ回転させたときの、被走査面上での主走査方向に関するビームスポット径の変化量(測定結果)が示されている。
図27と図28から総合的に判断すると、変形例1及び変形例2の場合であっても、温度変化時の走査線傾きの発生量を低減し、かつ、走査線傾きの補正に伴うビームスポット形状の劣化を低減することができる。但し、上記実施形態のほうがより好ましい。
また、上記実施形態において、一例として図29に示されるように、前記固定部材57−2の位置を、トロイダルレンズ2107が押圧力G2によって支点50に押し付けられるように、支点50の+S側の位置に変更しても良い。さらに、前記固定部材57−1の位置を、段曲げ部58−1が押圧力G1によってアクチュエータ52に押し付けられるように、アクチュエータ52の+S側の位置に変更しても良い。これによれば、走査線傾き補正のためにトロイダルレンズ2107をγ回転させたときに、保持用ブラケット35に作用する押圧力(外力)が変化するのを抑制できる。そこで、保持用ブラケット35及びトロイダルレンズ2107の形状が変化することを回避でき、走査線傾き補正時の走査線曲がりをさらに低減することができる。また、耐振動性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置2010を備えた画像形成装置であれば、結果として、安定して高品質の画像を形成することが可能である。例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、上記実施形態では、光走査装置2010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。