以下、本発明の一実施形態を図1〜図14(B)に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの多色の画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
また、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報に基づいて色毎に変調された4つの光束によって、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の詳細については後述する。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の詳細について説明する。
この光走査装置2010は、一例として図2に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、偏向器前光学系、ポリゴンミラー2104、走査光学系A、走査光学系B、及び不図示の走査制御装置などを有している。そして、これらは、光学ハウジング2300(図2では図示省略、図4参照)に取り付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源2200bと光源2200cは、X軸方向に関して離れて配置されており、いずれも−Y方向にレーザ光を射出する。光源2200aと光源2200dは、X軸方向に関して対向して配置されており、光源2200aは+X方向にレーザ光を射出し、光源2200dは−X方向にレーザ光を射出する。
偏向器前光学系は、一例として図3に示されるように、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、2つの偏光ビームスプリッタ(22051、22052)、及び2つのシリンドリカルレンズ(22041、22042)を有している。
なお、光源2200aは、偏光ビームスプリッタ22051の偏光分離面に対してs偏光を射出する。光源2200bは、偏光ビームスプリッタ22051の偏光分離面に対してp偏光を射出する。
また、光源2200cは、偏光ビームスプリッタ22052の偏光分離面に対してp偏光を射出する。光源2200dは、偏光ビームスプリッタ22052の偏光分離面に対してs偏光を射出する。
各光源から射出される光の波長は同じ(ここでは、780nm)である。
カップリングレンズ2201aは、光源2200aから射出された光束(以下では、「光束LBa」ともいう。)の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201bは、光源2200bから射出された光束(以下では、「光束LBb」ともいう。)の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201cは、光源2200cから射出された光束(以下では、「光束LBc」ともいう。)の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201dは、光源2200dから射出された光束(以下では、「光束LBd」ともいう。)の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
各カップリングレンズの焦点距離は同じ(ここでは、27mm)である。
開口板2202aは、開口部を有し、カップリングレンズ2201aを介した光束(光束LBa)のビーム形状を整形する。開口板2202aは、カップリングレンズ2201aの後ろ側の焦点位置に配置されている。
開口板2202bは、開口部を有し、カップリングレンズ2201bを介した光束(光束LBb)のビーム形状を整形する。開口板2202bは、カップリングレンズ2201bの後ろ側の焦点位置に配置されている。
開口板2202cは、開口部を有し、カップリングレンズ2201cを介した光束(光束LBc)のビーム形状を整形する。開口板2202cは、カップリングレンズ2201cの後ろ側の焦点位置に配置されている。
開口板2202dは、開口部を有し、カップリングレンズ2201dを介した光束(光束LBd)のビーム形状を整形する。開口板2202dは、カップリングレンズ2201dの後ろ側の焦点位置に配置されている。
偏光ビームスプリッタ22051は、開口板2202aの+X側であって、かつ開口板2202bの−Y側に配置されている。この偏光ビームスプリッタ22051は、p偏光を透過させ、s偏光を−Y方向に反射する偏光分離面を有している。そこで、該偏光分離面は、開口板2202aの開口部を通過した光束LBaを−Y方向に反射し、開口板2202bの開口部を通過した光束LBbを透過させる。
偏光ビームスプリッタ22051から射出される光束LBaの光路と光束LBbの光路は、Z軸方向に関して距離dだけ離間している。
偏光ビームスプリッタ22052は、開口板2202dの−X側であって、かつ開口板2202cの−Y側に配置されている。この偏光ビームスプリッタ22052は、p偏光を透過させ、s偏光を−Y方向に反射する偏光分離面を有している。そこで、該偏光分離面は、開口板2202dの開口部を通過した光束LBdを−Y方向に反射し、開口板2202cの開口部を通過した光束LBcを透過させる。
偏光ビームスプリッタ22052から射出される光束LBcの光路と光束LBdの光路は、Z軸方向に関して距離dだけ離間している。
シリンドリカルレンズ22041は、偏光ビームスプリッタ22051からの光束(光束LBa、光束LBb)を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ22041の前側の焦点位置は、カップリングレンズ2201bの後ろ側の焦点位置と一致している。
シリンドリカルレンズ22042は、偏光ビームスプリッタ22052からの光束(光束LBc、光束LBd)を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ22042の前側の焦点位置は、カップリングレンズ2201cの後ろ側の焦点位置と一致している。
各シリンドリカルレンズの焦点距離は同じ(ここでは、58mm)である。
光源2200aの発光部は、カップリングレンズ2201aの光軸の延長線上に配置され、光源2200bの発光部は、カップリングレンズ2201bの光軸の延長線上に配置されている。そして、カップリングレンズ2201aの光軸とカップリングレンズ2201bの光軸は、Z軸方向に関して、「d×カップリングレンズの焦点距離÷シリンドリカルレンズの焦点距離」だけ離間している。
光源2200cの発光部は、カップリングレンズ2201cの光軸の延長線上に配置され、光源2200dの発光部は、カップリングレンズ2201dの光軸の延長線上に配置されている。そして、カップリングレンズ2201cの光軸とカップリングレンズ2201dの光軸は、Z軸方向に関して、「d×カップリングレンズの焦点距離÷シリンドリカルレンズの焦点距離」だけ離間している。
ポリゴンミラー2104は、一例として4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー2104は、Z軸方向に平行な軸まわりに等速回転し、各シリンドリカルレンズからの光束を偏向する。4面鏡に内接する円の半径は7mmである。
シリンドリカルレンズ22041からの光束(光束LBa、光束LBb)はポリゴンミラー2104の−X側に偏向され、シリンドリカルレンズ22042からの光束(光束LBc、光束LBd)はポリゴンミラー2104の+X側に偏向される。なお、ポリゴンミラー2104の偏向反射面で偏向された光束が経時的に形成する光線束面は、「偏向面」と呼ばれている(特開平11−202252号公報参照)。ここでは、偏向面はXY面に平行な面である。
走査光学系Aは、一例として図4に示されるように、走査レンズ21051、偏光分離素子21101、2枚のチルト偏心レンズ(2107a、2107b)、5枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2108a、2108b、2109a)を有している。
走査レンズ21051は、ポリゴンミラー2104の−X側であって、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ22041からの光束(光束LBa、光束LBb)の光路上に配置されている。
ポリゴンミラー2104の偏向反射面から走査レンズ21051の入射側の面までの光路長は57.11mmである。また、走査レンズ21051の肉厚は21mmである。
偏光分離素子21101は、走査レンズ21051の−X側であって、走査レンズ21051を介した光束(光束LBa、光束LBb)の光路上に配置されている。
偏光分離素子21101は、s偏光を透過させ、p偏光を反射する偏光分離面を有している。また、偏光分離素子21101は、偏光分離面が偏向面に対して45°傾斜した状態で配置されている。そこで、偏光分離素子21101は、光束LBaの大部分を透過させ、光束LBbの大部分を−Z方向に反射する。
チルト偏心レンズ2107aは、偏光分離素子21101を透過した光束LBaの光路上に配置され、該光束の光路をプリズム効果によって変化させる。走査レンズ21051の射出側の面からチルト偏心レンズ2107aの入射側の面までの光路長は64mmである。また、チルト偏心レンズ2107aの肉厚は3mmである。
チルト偏心レンズ2107aを介した光束LBaは、3枚の折り返しミラー(2106a、2108a、2109a)及び射出窓2111aを介して、感光体ドラム2030aの表面に導光される。チルト偏心レンズ2107aの射出側の面から感光体ドラム2030aの表面までの光路長は157mmである。
偏光分離素子21101で−Z方向に反射された光束LBbは、折り返しミラー2106bで、+X方向に反射される。
チルト偏心レンズ2107bは、折り返しミラー2106bで+X方向に反射された光束LBbの光路上に配置され、該光束の光路をプリズム効果によって変化させる。走査レンズ21051の射出側の面からチルト偏心レンズ2107bの入射側の面までの光路長は64mmである。また、チルト偏心レンズ2107bの肉厚は3mmである。
チルト偏心レンズ2107bを介した光束LBbは、折り返しミラー2108b及び射出窓2111bを介して、感光体ドラム2030bの表面に導光される。チルト偏心レンズ2107bの射出側の面から感光体ドラム2030bの表面までの光路長は157mmである。
走査光学系Bは、走査レンズ21052、偏光分離素子21102、2枚のチルト偏心レンズ(2107c、2107d)、5枚の折り返しミラー(2106c、2106d、2108c、2108d、2109d)を有している。
走査レンズ21052は、ポリゴンミラー2104の+X側であって、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ22042からの光束(光束LBc、光束LBd)の光路上に配置されている。
ポリゴンミラー2104の偏向反射面から走査レンズ21052の入射側の面までの光路長は57.11mmである。また、走査レンズ21052の肉厚は21mmである。
偏光分離素子21102は、走査レンズ21052の+X側であって、走査レンズ21052を介した光束(光束LBc、光束LBd)の光路上に配置されている。
偏光分離素子21102は、s偏光を透過させ、p偏光を反射する偏光分離面を有している。また、偏光分離素子21102は、偏光分離面が偏向面に対して45°傾斜した状態で配置されている。そこで、偏光分離素子21102は、光束LBdの大部分を透過させ、光束LBcの大部分を−Z方向に反射する。
偏光分離素子21102で−Z方向に反射された光束LBcは、折り返しミラー2106cで、−X方向に反射される。
チルト偏心レンズ2107cは、折り返しミラー2106cで−X方向に反射された光束LBcの光路上に配置され、該光束の光路をプリズム効果によって変化させる。走査レンズ21052の射出側の面からチルト偏心レンズ2107cの入射側の面までの光路長は64mmである。また、チルト偏心レンズ2107cの肉厚は3mmである。
チルト偏心レンズ2107cを介した光束LBcは、折り返しミラー2108c及び射出窓2111cを介して、感光体ドラム2030cの表面に導光される。チルト偏心レンズ2107cの射出側の面から感光体ドラム2030cの表面までの光路長は157mmである。
チルト偏心レンズ2107dは、偏光分離素子21102を透過した光束LBdの光路上に配置され、該光束の光路をプリズム効果によって変化させる。走査レンズ21052の射出側の面からチルト偏心レンズ2107dの入射側の面までの光路長は64mmである。また、チルト偏心レンズ2107dの肉厚は3mmである。
チルト偏心レンズ2107dを介した光束LBdは、3枚の折り返しミラー(2106d、2108d、2109d)及び射出窓2111dを介して、感光体ドラム2030dの表面に導光される。チルト偏心レンズ2107dの射出側の面から感光体ドラム2030dの表面までの光路長は157mmである。
各感光体ドラム表面の光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が「副走査方向」である。
各走査レンズは、いずれも2つの画像形成ステーションで共用されている。
各射出窓は、光学ハウジング2300に設けられており、それぞれ防塵ガラスで覆われている。
各偏光分離素子の偏光分離面は、ワイヤーグリッドで構成されている。また、各偏光分離素子では、透明な板状部材(基板)の一側の面に偏光分離面が設けられている。この場合は、簡単な工程で製造することができる。
各走査レンズの各光学面のZ軸方向に直交する断面(主走査断面)の形状は、次の(1)式で表現される非円弧形状である。ここで、xはX軸方向のいわゆるデプスである。また、yはY軸方向に関する光軸からの距離である。そして、Kは円錐定数、A1、A2、A3、A4、A5、A6、…は係数である。さらに、Cm=1/Ryであり、Ryは近軸曲率半径である。
なお、上記(1)式において、yの奇数次の係数(A1、A3、A5、…)が0でない場合は、X軸方向に関して非対称な形状となる。
また、各走査レンズの各光学面のY軸方向に直交する断面(副走査断面)の形状は、次の(2)式で表現される。
上記(2)式におけるRz(0)は、副走査断面内における光軸上の曲率半径である。また、B1、B2、B3、B4、B5、B6、…は係数である。
なお、上記(2)式において、yの奇数次の係数(B1、B3、B5、…)が0でない場合は、Z軸方向の曲率の変化がX軸方向に関して非対称な形状となる。
具体例が図5に示されている。
各チルト偏心レンズの射出側の光学面における主走査断面の形状は、次の(3)式で表現される。D1、D2、D3、D4、…は係数である。
x=(D0+D1・y+D2・y2+D3・y3+D4・y4+・・・・)・z ……(3)
なお、上記(3)式において、yの奇数次の係数(D1、D3、D5、…)が0でない場合は、Z軸方向の曲率の変化がX軸方向に関して非対称な形状となる。
ここでは、D0=7.986×10−2、D1=0、D2=−1.979×10−6、D3=0、D4=−3.272×10−11、D5=0、D6=3.021×10−16、D7=0、D8=6.113×10−19、である。
ところで、図6には、偏光分離素子がないと仮定したときの、ポリゴンミラー2104の同一の偏向反射面で偏向された2つの光束の光路が模式図的に示されている。この場合、偏向反射面で偏向された2つの光束は、Z軸方向に関して、平行状態を維持したまま走査レンズに入射する。該2つの光束は、走査レンズによってZ軸方向に曲げられ、走査レンズのZ軸方向における焦点位置で交差し、その後、離れながら同一の感光体ドラムに向かう。
これは、偏光分離素子が設けられていても、走査レンズが樹脂製であって、偏向反射面で偏向された2つの光束が走査レンズで生じた複屈折の影響を受けた場合と類似している。この場合、2つの光束は、走査レンズを通過後、偏光状態の直交関係が崩れ、該2つの光束を偏光分離素子で完全に分離することはできない。すなわち、フレア光が発生する。
この場合、フレア光の除去の最も適切な場所は、偏光分離素子よりも後ろで、2つの光束が充分に離れた場所であり、かつ光走査装置の内部であることが好ましい。なお、光走査装置の外部にフレア光の除去手段を設けることも考えられるが、光走査装置と除去手段を非常に高い精度で位置合わせすることが必要となり、現実的ではない。従って、光走査装置から書き込み用の光束が射出される射出窓の周囲でフレア光を除去することが、理想的である(図7参照)。前記2つの光束の距離dは、このようなフレア光除去が可能となるように設定されている。
ポリゴンミラー2104で偏向された光束の光路は、走査レンズに入射するまではポリゴンミラー6の回転軸方向(ここでは、Z軸方向)に直交している。しかしながら、該光束は、走査レンズの母線と異なる位置に入射するため、走査レンズにおけるZ軸方向のパワーを受けて、XY面に対して傾斜する。更に、走査レンズと感光体ドラムまでの光路長が長いために、該光束が感光体ドラムに到達すると、波面収差が大きく劣化し、感光体ドラムの表面においてビームスポット径が主走査方向及び副走査方向ともに絞れなくなる(図8(A)及び図8(B)参照)。
そこで、波面収差の劣化を補正するための光学素子が必要となるが、ここでは、各チルト偏心レンズがその役割を担っている。
各チルト偏心レンズは、入射側の面及び射出側の面ともにノンパワーであるが、お互いに非平行であるため、プリズム効果によって光の方向を変えることができる。しかも、入射側の面と射出側の面との平行関係の崩れ方が、Y軸方向に沿って異なっているため、光の方向の変化量をZ軸方向に関する入射位置によって異ならせることができる。
本実施形態では、各チルト偏心レンズは、入射側の面を平面とし、射出側の面だけに傾きを与え、その傾き量がZ軸方向に沿って変化しているレンズである(図9参照)。
上記傾き量の変化の仕方は、Z軸方向に平行な軸に対して線対称となっている。つまり、各チルト偏心レンズは、ポリゴンミラーの回転軸に平行な対称軸を有しており、上記傾き量の変化を多項式で表現した場合には、yの奇数次の係数はすべて0である。
各チルト偏心レンズが、ポリゴンミラーの回転軸に平行な対称軸を有している場合は、2つの光束について、同一形状のチルト偏心レンズをそれぞれ使用できる利点がある。
なお、上記傾き量の変化を多項式で表現した場合にyの奇数次項があると、一方のチルト偏心レンズに対して、他方のチルト偏心レンズの奇数次項は符号が逆となる必要があるため、同一形状のチルト偏心レンズを使用することができない。
波面収差の大きさは、主走査方向(Y軸方向)に関して、像高0mmの位置に対して厳密には非対称であるが、この非対称性は実用的にはそれほど大きくないので、対称軸を有するチルト偏心レンズで充分に補正が可能である(図10(A)及び図10(B)参照)。なお、図10(A)及び図10(B)における各シンボルは、図8(A)及び図8(B)における各シンボルと同じ意味を有している。
本実施形態では、チルト偏心レンズを設計する際に、波面収差の低減だけでなく、走査線曲がりの補正も同時に考慮している。これは、チルト偏心面の傾き量の変化を多項式で表現した場合に、定数項とyの偶数次項とに分離して考えることで、設計を簡便化できる。すなわち、yの偶数次項で波面収差を低減させ、定数項で走査線曲がりを低減させる。
ポリゴンミラー2104の同一の偏向反射面で偏向された2つの光束は、Z軸方向に関して、走査レンズの母線に対してほぼ対称な位置を通過するが、ここで、便宜上、該母線の+Z側を通過した光束(「光束LBx」という)について説明する。
ポリゴンミラー2104で偏向された光束LBxは、走査レンズを通過する際に、光路が−Z側に曲げられ、感光体ドラムに向かう。
チルト偏心レンズは、走査レンズを通過した光束LBxの光路を曲げて、波面収差を補正する。この場合、光束LBxの光路の曲げ方として、図11に示される曲げ方(「曲げ方A」とする)と、図12に示される曲げ方(「曲げ方B」とする)とが考えられる。なお、図11及び図12における破線は、チルト偏心レンズがない場合の光束LBxの光路を示している。また、横軸の光路長は、偏向反射面での反射位置を基準としている。
曲げ方Aと曲げ方Bの違いは、入射する光が進行する向きと射出される光が進行する向きが互いに同じ向きであるか逆向きであるかである。
曲げ方Aでは、入射する光は−Z方向に向かって(一の向きに)進行し、射出される光も−Z方向に向かって(一の向きに)進行している。
曲げ方Bでは、入射する光は−Z方向に向かって(一の向きに)進行し、射出される光は+Z方向に向かって(他の向きに)進行している。
曲げ方Bでは、走査線曲がりを大きく改善することができる(図13(A)及び図13(B)参照)。
本実施形態では、曲げ方Bとなるように、上記(3)式の定数項D0が設定されている。なお、定数項D0は、波面収差に対してあまり影響しない。
感光体ドラム上での走査線曲がりが改善されるということは、射出窓を通過する光束の軌跡も、湾曲したものから直線へ改善されることを意味し、書き込み用の光束とフレア光の分離が容易になる。
例えば、図14(A)に示されるように、書き込み用の光束がBだけ湾曲している場合、フレア光を完全に除去するためには、書き込み用の光束とフレア光の間隔もB以上にしなければならない。つまり、前記距離dを大きく設定する必要があり、走査レンズを通過した際の、2つの光束における偏光状態の直交関係の崩れ方が大きくなり、波面収差の劣化も増大する。
しかし、図14(B)に示されるように、書き込み用の光束の湾曲量が小さいと、距離dを小さく設定することが可能となり、波面収差の劣化を、チルト偏心レンズで効果的に低減できるレベルにまで低減させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、偏向器前光学系、ポリゴンミラー2104、走査光学系A、走査光学系B、光学ハウジング2300、及び走査制御装置などを有している。
走査光学系Aは、走査レンズ21051、偏光分離素子21101、2枚のチルト偏心レンズ(2107a、2107b)、5枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2108a、2108b、2109a)を有している。
走査光学系Bは、走査レンズ21052、偏光分離素子21102、2枚のチルト偏心レンズ(2107c、2107d)、5枚の折り返しミラー(2106c、2106d、2108c、2108d、2109d)を有している。
各チルト偏心レンズは、光束の光路をプリズム効果によって変化させ、波面収差と走査線曲がりを補正する。
この場合は、書き込み用の光にフレア光が混在するのを抑制しつつ、小型化を図ることができる。
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、その結果として、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、各偏光分離素子の偏光分離面がワイヤーグリッドで構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、偏光分離面が誘電体多層膜等で構成されていても良い。
また、上記実施形態では、各偏光分離素子として、透明な板状部材(基板)の一側の面に偏光分離面が設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、断面が直角二等辺三角形よりなる2つの三角柱状のガラス部材又は透明樹脂部材で偏光分離面を挟み込んだ四角柱構造としても良い。この場合は、偏光分離素子と各チルト偏心レンズを一体化させることができる(図15参照)。
また、上記実施形態では、各光源が1つの発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各光源が複数の半導体レーザを有しても良い。また、各光源が複数の発光部を持つ半導体レーザアレイを有しても良い。
また、上記実施形態では、走査光学系が1枚の走査レンズを有する場合について説明したが、これに限らず、走査光学系が複数枚の走査レンズを有していても良い。この場合、2枚目以降の走査レンズは、チルト偏心レンズの前段に配置されても良いし、後段に配置されても良い。2枚目以降の走査レンズがチルト偏心レンズの前段に配置される場合は、非球面を自由に使うことが可能であり、所望の光学性能を得るのが容易となる。また、2つの光束で共用することができる。一方、2枚目以降の走査レンズがチルト偏心レンズの後段に配置される場合は、副走査方向に関する倍率が低減するため、非常に安定的に光学性能を保証することが可能である。
また、上記実施形態において、前記チルト偏心レンズに代えて、いわゆる「母線湾曲特殊トーリックレンズ」を用いても良い。ところで、トーリックレンズは、定義としては、「円弧を軸まわりに回転させたドーナツ状の立体」であり、その形状を示す設計パラメータは、円弧を決める曲率半径rと、円弧と軸の間隔Rの2つだけである。なお、r<Rのときにドーナツ状となり、r>Rのときには樽状となる。
分かりやすくするため、樽状の立体で考えると、樽の中心線が回転軸に相当する。ここで、中心線に垂直な面で樽を切断すると、その断面は必ず円弧で、その円弧の曲率は軸方向に関する切断位置によって異なっている。しかし、円弧の曲率中心は、必ず中心線上にある(図16(A)参照)。上記「特殊」というのは、「円弧の曲率中心が中心線上にない」ことを意味している(図16(B)参照)。従って、設計パラメータは、曲率中心がどのような多項式で表わせるか、という観点で、増やすことが可能である。
次に、この特殊トーリックレンズにおける円弧の頂点に着目すると、各頂点を結んだ曲線は、レンズの母線と定義される。この母線は当然のことながら、中心線で決定されるある平面の上に乗らなければならない。「母線湾曲」というのは、その関係すら崩れていることを意味する。「母線湾曲特殊トーリックレンズ」は、イメージ的に分かりやすくいうと、上記特殊トーリックレンズを、レンズ面に直交する方向から押圧して撓ませたものである。このような特異な面を用いると、チルト偏心レンズと同じ効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トナー像が記録紙に直接転写されても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として4つの感光体ドラムを有するカラープリンタ2000について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2つの感光体ドラムを有するプリンタであっても良い。また、更に補助色を用いる多色カラープリンタであっても良い。
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
また、上記実施形態では、光走査装置がプリンタに用いられる場合について説明したが、上記光走査装置は、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。