JP5405527B2 - 薬理薬物の新規製剤、その製造法及びその使用法 - Google Patents
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Description
前記したポリマー殻には薬理学的に活性な薬剤の粒子及び、任意的に、生体適合性の分散剤が含まれており、その中に薬理学的に活性な薬剤が溶解又は懸濁されている。かくして、本発明は、液体型又は再分散性粉体型のドラッグデリバリーシステムを提供する。どちらかの形態で、直ちにバイオアベイラブルな薬剤分子(すなわち、分子的に蛋白質に結合した薬剤分子)及び蛋白質で被覆された純粋な薬剤粒子の両方が提供される。
本発明はまた、抗癌剤パクリタキセルなどの薬剤の医薬組成物(製剤)の使用法及び製造方法に関する。一面では、Capxolとして知られるパクリタキセル製剤は、商業的に利用可能なパクリタキセル製剤のタキソール(商標)よりも著しく低毒性であり、かつ、効力が強い。他面では、新規製剤 Capxolは、非経口投与後、ある種の組織に局在するので、このような組織が関係する癌の治療効果を高めている。
注射可能で制御された放出ができるナノ粒子により、単回注射で数日から数週間及び数か月の範囲にわたる作用持続時間を、あらかじめプログラム化できる。
血中に存在する微小粒子及び異物は、一般的には、“血液ろ過器官”、すなわち脾臓、肺及び肝臓などにより循環系から除去される。正常な全血中に含まれる粒子状物体には、赤血球(典型的には直径8ミクロン)、白血球(典型的には直径6〜8ミクロン)及び血小板(典型的には、直径1〜3ミクロン)がある。ほとんどの器官と組織における微小循環では、これら血球は自由通航が可能である。10〜15ミクロンより大きいミクロトロンビ(血液凝固物)が循環系に存在すると、梗塞症または毛細血管封鎖の危険が生じ、虚血または器官喪失につながり、組織の死の可能性も引き起こされる。そのため、直径が10〜15ミクロンより大きい粒子の循環系への注射は避けなければならない。一方、7〜8ミクロンより小さい粒子の懸濁物は相対的に安全で、リポソーム及び乳化物、栄養剤、及び造影用途でのコントラスト媒体の形で、薬理学的に活性な薬剤のデリバリーに使用されている。
水不溶または水への溶解性に乏しく、かつ、胃での酸性環境に敏感な医薬は、従来法(例えば、静脈注射又は経口投与)では投与することができない。このような医薬の非経口的投与は、油に溶解した薬物を、安定なミクロエマルジョンを精製させる界面活性剤または乳化安定剤の存在下、水性液体(生理食塩水など)に乳化することで達成されている。乳化物の成分が薬理学的に不活性である時、これら乳化物は静脈注射が可能である。特許文献1には、水不溶性の薬理学的に活性な薬剤を油に溶解し、卵りん脂質、プルロニックス(ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの共重合体)、ポリグリセロールオレエートなどの界面活性剤の存在下、水に乳化させ、投与する方法が述べられている。特許文献2には、ジミリストイルホスファチジルコリンなどのりん脂質で被覆され、皮内又は静脈注射に適した寸法を持つ麻酔薬微小滴が述べられている。
自然界で得られるジテルペノイドのタキソールは、薬物耐性卵巣癌において、顕著な抗腫瘍作用と制癌作用効果を示している。タキソールは、B16メラノーマ、L1210白血病、MX−1乳房腫瘍及びCS−1結腸腫よう異種移植片などの多様の腫瘍モデルに対しめざましい抗腫よう活性を示している。最近の新聞発表で、タキソールは新しい抗腫瘍性を持つ不思議な薬として報道されている。確かに、タキソールは最近、卵巣癌の治療用としてFDAの認可を受けたが、タキソールの乏しい水溶性は、ヒトへの投与に対して問題を提起している。元来、水性媒体に不溶又は難溶の薬物のデリバリーは、経口デリバリーが有効でない場合には著しく損なわれる。それゆえ、現在使用されているタキソール製剤は、その薬物を可溶化するためのクレマホァ(cremaphore)を必要としており、またヒトへの臨床での投薬量範囲は200〜500mgとなっている。この投薬用量がエタノール:クレマホァの1:1溶液に溶解され、生理食塩水で約300〜1000mlの静脈注射可能な流体に希釈される。現在使用されているクレマホァはポリエトキシル化ヒマシ油である。この製剤中にクレマホァが存在することが、動物内(Lorenzら、非特許文献4)及びヒト(Weissら, 非特許文献5)における厳しい過敏反応につながっており、結果として、コルチコステロイド(デキサメタソン)と抗ヒスタミン薬の患者への前投与が必要となっている。また、高希釈の結果、注入が大容量(典型的には投与用量は175mg/m2,又は最高1リットル)になり、注入時間も3時間から24時間の範囲になっている。そのため、代わりの、より毒性の低いパクリタキセル製剤が必要とされている。
タキソールの水溶性を改善する努力のなかで、何人かの研究者らは、水溶性を高める官能基でその化学構造を修飾することを行っている。それらの中にかなりの生物学的活性を示すスルホン化誘導体(kingstonら、特許文献3(1991))、及びアミノ酸エステル誘導体(Mathewら、非特許文献6)がある。水溶性誘導体を生成させる修飾は、標準食塩水などの無害キャリャーに溶解されたタキソールの静脈内デリバリーを容易にする。しかしながら、このような修飾は薬物合成コストを引き上げ、また、好ましくない副反応及び/又はアレルギー反応を誘発する可能性もあり、及び/又はその薬物の効能を減少させる可能性もある。
薬理学用又は診断用薬物のキャリャーとしての蛋白質ミクロスフェアがいくつかの文献で報告されてきている。アルブミンのミクロスフェアは熱変性又は化学架橋のいずれかで調製される。熱変性ミクロスフェアは乳化混合物(例えば、アルブミン、取り込まれる薬物、及び適当なオイル)を、100℃から150℃の間の温度に加熱することで調製され、次いで、このミクロスフェアを適当な溶媒で洗浄してから貯蔵される。Leucutaらは非特許文献7中で、熱変性ミクロスフェアの製造法を述べている。
薬理学的に活性な薬物のキャリャーとしての蛋白質ミクロスフェアを合成するための上述の技法は、水溶性薬剤のデリバリーには適しているが、水不溶性薬剤の取り込みができない制限がある。この制限は、水/油乳化物の水相にある蛋白質成分の架橋又は熱変性に基づくこの合成法に固有のものである。蛋白質含有水相中に溶解した水溶性薬剤はいずれも、結果として生じる架橋又は熱変性された蛋白質マトリックス中に閉じこめられるが、貧水溶性又は油溶性薬剤は、この技法で生成させた蛋白質マトリックス内に取り込むことはできない。
Bazileらが、非特許文献12で、及びSpenlehauerらが特許文献6で二種類の生体適合性ポリマーを用いたナノ粒子の生成について報告している。その一つ(例えば、ポリラクチド)を薬物などの活性成分と共に有機相に溶解し、アルブミンなどのもう一方のポリマーを表面活性剤として用い、乳化及び溶媒除去後、ポリラクチド粒子のポリマーマトリックス中に薬物が存在するナノ粒子を得ている。このポリマーマトリックスが形成されるポリマー溶液の性質が、第一段階で適切な乳化物を生成させるのに重要である。例えば、ポリラクチド(注射可能なナノ粒子の調製の際、一般的に使用されるポリマー)はジクロロメタン−水界面で、それらの迅速な吸着を引き起こす表面活性作用を有しており、界面張力の低下を引き起こし(例えば、Bouryら,非特許文献13を参照)、それにより乳化過程を改善している。さらに、同じ研究者らは、ウシ血清アルブミン(BSA)がポリラクチドと相互作用し、油−水界面に存在するポリラクチド単分子層に浸透することを見いだしている。上記参照文献基づくと、従来の溶媒蒸発法での乳化は、非水有機相の表面活性ポリマー(ポリラクチド)の存在により、非常に大きな恩恵を受けることが期待できる。事実、適当な大きさのナノ粒子を生成させるには、ポリラクチドの存在は十分条件であるばかりでなく、実際に必要である。
粒子の大きさは主に乳化物の最初の大きさで制御されることが見いだされている。さらに、最終の粒径が有機相中の薬物濃度の減少に伴い減少するという興味深い報告がなされている。この発見は、ナノ粒子の合成に従来の界面活性剤を用いていない(本発明のいくつかの実施態様)本明細書で報告される結果と逆になっている。さらに、使用した薬物の酢酸コレステリルは、トルエン中では表面活性剤であり、そのため油−水界面で配向する可能性があり、それゆえに界面での薬物濃度がより高くなり、沈殿潜在力が増大することが、Sjostrom 論文の著者らにより指摘されている。
タキソールは抗癌薬として非常に有望な天然化合物である。例えば、タキソールは薬物耐性卵巣癌の活性薬剤であることが McGuireらにより見いだされている(“タキソール:進行した卵巣上皮腫瘍に対して著しい活性を持つユニークな抗腫瘍薬” 非特許文献16参照)。以下において、本明細書中で言及する全ての特許、科学論文、及び他の文書は参照することで、あたかも完全に再生されるように本明細書中に取り込まれる。
Brownらは、“6時間静脈内注入で投与されたタキソールのフェーズI試験” 非特許文献17で、タキソールを、前投与なしに毎日6時間IV注入したフェーズI試験を報告している。31人の患者がタキソールの64評価可能(assessable)推移試験を受け、一人の患者は深刻な(又は、急性)の過敏反応を起こし、注入を中断し、直ちに患者の救命処置をしなければならなかった。
他の患者は過敏反応を起こしたが、注入の中断を必要とするほどは深刻ではなかった。骨髄抑制が用量制限因子であり、敗血症による二死亡例が報告されている。非血液毒性は、グレード3の粘膜炎の一患者及び Grade3神経疾患の二患者を除けばグレード1及び2であった。この神経疾患は可逆的な痛ましい知覚異常からなり、二患者についてはタキソールの注入中断が必要であった。部分的応答が四例見られた(非小細胞肺ガン患者で3、及び原発不明の腺癌患者で1)。報告された最大耐用量は275mg/m2であり、推奨フェーズII 開始用量は225mg/m2であった。過敏反応発生率は、投薬計画依存しており、薬物の6〜24時間注入では0%〜8%の過敏反応発生率であったことが報告されている。また、過敏反応は注入時間の延長に拘わらず、前投与に関係していたり、関係していなかったりした。これらフェーズIでの検討は種々の癌を患っている末期患者に対して行っているので、タキソール治療の効果は測定できなかった。
単回注射又は短時間(1〜3時間)注入による初期の試験でアナフィラキシー反応又は他の過敏性応答が誘発されたので、それ以上の研究では、最も深刻なアレルギー反応を避けるため、ステロイド(デキサメタソンなど)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミンなど)及びH2−きっ抗薬(シメチジン又はラニチジン)を前投与した後でのみ、タキソールが投与され、注入時間も24時間に引き延ばされた。最大全用量250mg/m2、24時間注入、3週間毎の繰り返しでタキソールを投与する多くのフェーズIとフェーズIIの研究結果が出版されている。患者はデキサメタソン、ジフェンヒドラミン、及びシメチジンで前処置され、アレルギー反応を相殺することが行われている(Einzigら、“転移性腎臓細胞癌を持つ患者でのタキソールのフェーズII試験”, 非特許文献19、及びA.B.Millerらの、“癌治療の報告結果”, 非特許文献20参照)。
Wiernikらは、“タキソールのフェーズI臨床及び薬物動態研究”,非特許文献22で、フェーズI研究での6時間かけてのクレモホァビヒクル中タキソールのIV注入による投与について報告している。グレード3〜4の過敏反応が13治療例中、4通りの治療例で発生した。この研究の開始用量は15mg/m2(犬に対する最低毒性用量の1/3)であった。用量を増やしていき、最低3名の患者を、毒性が認識されるまでそれぞれの用量水準で処置し、4〜6名の患者はそれぞれのその次のレベルで処置した。この研究から、神経毒性と白血球減少症は用量−制限と結論し、フェーズII試験の用量を、前投与付きの250mg/m2を推奨した。
Weissらは、“タキソール由来の過敏反応”、非特許文献29で、使用されたパクリタキセルの用量及び投薬計画が広範囲に変化していること、及び注入スケジュールの変更及び使用する前投与のHSR発生率に及ぼす効果などの未知の影響度のため、過敏反応(HSRs)の信頼できるオーバーオール発生率を決めることは困難と報告している。例えば、前投与無しにタキソールの3時間注入を190mg/m2より大きい用量で受けた5名の患者中、3名に反応が現れたが、前投与なしで、それより高い用量で6時間注入を受けた30名の患者中、1名だけが反応を起こしただけであった。これは、注入時間を6時間以上に引き延ばすと、十分にHSR発生率を減少できることを示唆している。それにもかかわらず、Weissらは、24時間注入で250mg/m2のタキソール投与をうけた患者が、依然として明らかなHSRsを起こしていることを見いだしている。このことから、薬物注入を6時間〜24時間に引き延ばすことは、急性反応の危険性を軽減するが、この結論は、HSR反応の78%がタキソールの注入開始から10分以内で発生することから確認できず、全注入するのに計画した時間の長さは無関係であることを示唆している。さらに種々の少量タキソール用量に対して患者の大部分が反応を起こしたことより、注入中のパクリタキセル濃度では違いが生じないことが示唆された。
延長された注入持続時間を採用した時、過敏反応を避けるために前投与を行うべきかに関する先行技術分野での対立する推奨、及び6時間以上かけて行った注入の効能データの不足により、クレマホァEL乳化物型タキソールの高投与用量(170mg/m2以上)での24時間注入が、癌治療プロトコルとして認められるに至っている。
タキソールのより高い投与用量も文献に記述されている。シクロホスファミド及びシスプラチンの高用量と組み合わせたパクリタキセルの最高耐用量(MTD)の決定と、引き続いての自己造血幹細胞支持(AHPCS)のため、Stemmerらは(“自己造血幹細胞支持体による高用量パクリタキセル、シクロホスファミド及びシスプラチン:フェーズI試験”、非特許文献30)、予後不良の49名の乳癌、非 Hodgkin's リンパ腫(NHL)又は卵巣癌患者で、24時間かけたパクリタキセルの増大投与用量注入、引き続いてのシクロホスファミド(5,625mg/m2)及びシスプラチン(165mg/m2)及びAHPCSの注入によるフェーズI試験を行った。825mg/m2のパクリタキセル投与のところで2名の患者に投与用量−制限毒性が現れ、1名は多臓器不全で死に、もう一人にはグレード3の気道、CNS、及び腎臓毒性が現れたが、解決された。グレード3の多発性神経痛及びグレード4のCNS毒性もまた観察された。この組み合わせのAHPCSにフォローされたMTDを、パクリタキセル(775mg/m2)、シクロホスファミド(5,625mg/m2)、及びシスプラチン(165mg/m2)と決定した。感覚性多発性神経痛及び粘膜炎が際だった毒性であるが、両方とも可逆的で、許容できるものであった。33患者中18名の乳癌患者(54%)に部分応答が見られた。応答はNHLを持つ患者(5名中44名)及び卵巣癌患者(2名中2名)でも観察された。
対象疾患応答とパクリタキセル用量強度間の相関は再発卵巣癌では2サイドp値が0.022で統計的に非常に有意であった。乳癌での関係はむしろ大きく、2サイドp値は0.004であった。135mg/m2/21日では、対象応答速度は13.2%、250mg/m2/21日では対象応答速度は35.9%であった。中間投与用量の175mg/m2での応答速度は、135mg/m2と250mg/m2の結果と直線関係にあり、これらデータの線形回帰分析で相関係数0.946が得られた(Reedら、1996)。
タキソールを投与するには、患者が病院に一晩泊まることがしばしば必要となる前投与が必要なので、前投与の必要性が排除されたパクリタキセル製剤の開発が大いに望まれている。
タキソール注入は一般的には前投与がそれに先だって行われ、また、注入後監視と記録保存が必要とされる。これらは患者が病院で一晩過ごすことを必要とするもので、治療を受ける者が外来患者基準で扱われるようなパクリタキセル製剤の開発が大いに望まれている。
タキソールの用量制限毒性は脳及び神経毒性であることが実証されているので、このような毒性を減少させたパクリタキセル製剤の開発が望まれている。
また、前投与は患者の不安を増し、出費も増加させ、治療に要する時間も長くするので、この前投与を省くことも望ましい。
現在、タキソールは0.6〜1.2mg/mlの濃度、ヒトへの典型的投薬用量約250〜350mgの投与が認められているので、注入容量は、典型的には、300mL以上になる。
投与時間を短縮するため、高濃度で安定なパクリタキセル製剤を開発して、この注入容量を減少させることも望ましい。
タキソールの注入は、タキソール(商標)製剤中のクレマホァによる可塑剤の溶出のため、特製のI.V.チューブ及びバッグ又はボトルを使用するように制限されているので、クレマホァを含まず、静脈注入に従来から使用されてきたプラスチック製チューブ又はバッグから潜在的に毒性物質を溶出させないパクリタキセル製剤の開発が望ましい。
さらに本発明は、任意的に適当な生体適合性液体中に懸濁された、ミクロ粒子又はナノ粒子組成物中の薬学的に活性な薬剤をデリバリーすることを目的としている。
また本発明は、さらに、油/水乳化物からの溶媒蒸発法による薬学的に活性な薬物のサブミクロン粒子(ナノ粒子)の生成方法の提供を目的としている。ある方法では安定剤として蛋白質を使用し、また、ある方法では従来型の界面活性剤や、ポリマーコア物質を使用せずに実施した。
本発明のこれらの目的は、明細書及びクレームを再見することで明確になると思われる。
本発明によれば、多様の条件下で調製された油/水乳化物から、溶媒蒸発法で薬理学的に活性な薬剤のナノ粒子の製造方法が提供される。例えば、従来の界面活性剤を使用しない場合や、ナノ粒子のマトリックスを形成するポリマーコア材料を用いない場合には、高せん断力(例えば、超音波分散、高圧ホモジナイゼーションなど)が用いられる。その代わりに、蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン)が安定化剤として使用される。代替法では、単に自動的にミクロ乳化物を形成する材料を選定するだけで、高剪断力無しでナノ粒子を形成できる。
薬理学的に活性な薬剤の他の部分は、蛋白質で被覆されたナノ粒子内に含まれる。薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子は、ポリマーマトリックスで希釈されずに、純粋な活性成分として存在している。
従来型の多数の薬理学的に活性な薬剤は、疎水性又はイオン性相互作用でキャリャー蛋白質(最も一般的な例として血清アルブミン)に結合して、血流中を循環する。本発明の方法及びそれにより製造される組成物により、投与に先立ち、(疎水性又はイオン性相互作用で)蛋白質に“予備結合された”薬理学的に活性な薬剤が提供される。
ある種の薬剤、例えばタキソール、の特異的性質のため、界面活性剤を頼りにした従来の溶媒蒸発法では、このような組成物が得られない場合がある。様様の界面活性剤の存在下、非常に大きな薬物結晶(例えば、大きさが約5ミクロンから数百ミクロン)が、調製過程後の貯蔵時に、数分以内で生成する。このような結晶の大きさは、通常、静脈注射で許容されている大きさよりもはるかに大きい。
本発明の方法で製造される粒子は、結晶体、非晶体又はそれらの混合物であっても良いと認識される一方、一般的には、薬物は製剤中で非晶体で存在することが好ましく、このことで溶解及び吸収がより容易になり、より良いバイオアベイラビリティーが得られる。
また、アルブミン以外の生体適合性、生分解性ポリマーが、前立腺などの組織に特異性を示し、前述した性質の結果、これらの組織でパクリタキセルの局所的濃縮を起こしたとも考えられた。このような生体適合性物質は本発明の範囲に含まれる。前立腺でのパクリタキセルの高局所濃度を達成する好ましい組成物の実施態様は、粒子径が20〜400nmであり、パクリタキセルとアルブミンを含み、クレモホァを含まない製剤である。この実施態様は、等用量のタキソールと比べて、すい臓、腎臓、肺、心臓、骨及び脾臓でのパクリタキセルのより高レベルでの濃縮を示した。これらの特性により、テストステロンレベルの低下の方法、医学上の精巣摘出術の達成、及び再狭窄治療のための冠状血管系への高濃度局所集中を含むこのパクリタキセル製剤の新規な応用が可能となる。
また、Capxolとタキソールをパクリタキセルで等用量、ラットに投与した時、Capxolと比較した時、タキソールでより高段階の骨髄抑制が起きたということも驚くべきことである。これは感染及び熱発作(例えば、好中球減少症)の低発生率という結果をもたらすことができる。また、現在、治療と治療の期間が21日となっている周期を減少させることもできる。かくして、Capxolは、タキソールよりも実質上、有利な点を持っている。
また、Capxolとタキソールをラットに、パクリタキセルで等用量になるよう投与したとき、Capxolでは、著しく高いLD50値で証明されるように、タキソールと比較して非常に低い毒性が見いだされた。これは非常に驚くべきことである。これはパクリタキセルをより高用量で、かつ、治療上効果的な用量で患者に投与できることを意味している。パクリタキセルの高用量に対する増大した応答速度を示す文献にもこの証拠を求めることができる。Capxol製剤では、低毒性のため、このような高用量投与ができ、それによりこの薬物の持つ全潜在能力を利用できる。
このように、Capxolは患者へのパクリタキセル投与を著しく簡略化し、改善している。
また、驚くべきことに、Capxolとタキソールをパクリタキセルの用量を同じにしてラットに投与すると、前者では神経毒性の徴候は見られなかったが、タキソールでは、低用量でも神経毒性作用を示した。
本発明の組成物(Capxol)は、生体適合性ポリマーマトリックスと組み合わせて、より低い毒性と引き延ばされた活性持続で、パクリタキセルを局所に保持されるようにデリバリーできる。
Capxolでの上述の驚くべき発見により、パクリタキセルで治療を受けている患者の生活の質(quality of life)を実質的に改善することが期待できる。
● CapxolTMは、単にパクリタキセルとヒト血清アルブミンだけが含まれる凍結乾燥粉体である。この凍結乾燥粉体の再構成で得られるコロイド状溶液の性質により、薬物を可溶化するためのクレモホァ(パクリタキセルのBMS製剤中に存在)やポリソルベート80(Rhone Poulenc社製ドセタキセル製剤中に存在)などの毒性乳化剤及びエタノールのような溶媒を必要としない。毒性乳化剤を除去したことで、タキソール製品で起こることが知られている深刻な過敏反応、アナフィラキシー反応の発生率を減少できる。
● さらに、この薬物を投与する前に、ステロイドや抗ヒスタミン剤を前投与する必要が無くなることが期待できる。
● LD10/LD50の研究から明らかなように、毒性の軽減により、より大きな薬効を求めて、より大きな投与用量を採用できる。
● また、骨髄抑制の減少(BMS製剤との比較)により、治療サイクル(現在は3週間)期間の短縮及び治療効果の改善が期待できる。
● CapxolTMは、BMS製剤(0.6mg/mL)と比較し、非常に高濃度(最高20mg/mL)で投与できるので、注入容量を著しく減少でき、単回静脈注射としての投与ができる。
● タキソールは、標準的な注入用チューブから製剤へ可塑剤が溶出するため、ニトログリセリンポリオレフン注入セットを用いて注入しなければならない。Capxolは、可塑剤の溶出を起こさないので、標準的な注入用チューブのいずれをも使用できる。さらに、クレモホァ含有溶液の貯蔵には、ガラス及びポリオレフィン容器のみが使用されていたが、Capxolはこのような制約を持たない。
● タキソールで認識されている問題として、留置カテーテルでのパクリタキセルの沈殿があり、その結果、不規則で制御性に乏しい薬物投与が行われる。新規製剤の CapxolTMのコロイド状溶液は、元来、安定であるので、沈殿問題は緩和されている。
● この沈殿問題のため、タキソール(商標)の注入にはインラインフィルターを使用して沈殿物や他の粒子状物をろ過する必要があるが、CapxolTMはその固有安定性により、このような必要がない。
● 大きさが数100ナノメータの範囲にある粒子は腫瘍サイトでのリーク血管を通って腫瘍中に優先的に分配されることが、文献で示唆されている。CapxolTM製剤中のコロイド状パクリタキセル粒子は、そのため、優先的標的効果を示し、タキソール(商標)製剤で投与されたパクリタキセルの副作用を著しく軽減できる。
また、ある組織にパクリタキセルを局在化し、その場でより大きな抗癌作用を与えることができる新規パクリタキセル製剤の提供も、本発明の他の目的である。
また、注入容量を減少させるため、濃度2mg/mL以上でパクリタキセルを投与することも、本発明の他の目的である。
さらにまた、癌治療でパクリタキセルの投与を受けている患者の生活の質を改善するパクリタキセル製剤の提供も、本発明の他の目的である。
本発明により、in vivo デリバリーのための実質的に水不溶性の生理学的活性剤の調製方法が提供され、該調製方法は、
a)i) 該生理学的活性剤を溶解させる有機溶媒;
ii) 水または水性溶液;
iii) サーファクタント;および
iv) コサーファクタント
を一緒にして、マイクロエマルジョンを自動的に形成し;
b) 該有機溶媒を除去して、水における該生理学的活性剤のナノ粒子の懸濁液を得る、ことを含む上記調製方法である。
カプキソール(CapxolTM)(登録商標)は本出願者の譲受人によって販売されるパクリタキセルのための登録商標である。本記載で用いる場合、カプキソール(登録商標)は実施例1の方法によってつくられるタンパク質でコーティングされたパクリタキセルナノ粒子をさすための単なる略記的手段である。カプキソール(登録商標)は抗ガン薬パクリタキセルの、クレマフォーを含有しない特許登録された新規な処方物である。本発明者は動物での研究を基礎として、クレマフォーを含まない処方物は毒性が顕著に少なくまた患者のプレメディケーションを必要としないと考えている。現在、認可されそして市販されているパクリタキセルのタキソール(Taxol)(登録商標)処方物中にクレマフォーがあるために起きる過敏症およびナナフィラキシーを減らすためにはプレメディケーションが必要である。カプキソール(登録商標)は再構成および静脈内投与のための凍結乾燥された粉末である。カプキソール(登録商標)はバイアル1つあたり30mgのパクリタキセルと約400mgのヒト血清アルブミンを含む。0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液のような適当な水性媒体で再構成される時、カプキソール(登録商標)はパクリタキセルの安定なコロイド溶液を形成する。コロイド状ナノ粒子の寸法は典型的に400nmより小さい。ナノ粒子はUSPヒト血清アルブミンと有機溶媒中のパクリタキセルの溶液とを高圧でホモジナイズすることにより調製される。次に、溶媒が除去されて、ヒトアルブミン中のコロイド懸濁液または溶液が生成される。この懸濁液は無菌濾過されそして凍結乾燥されて、カプキソール(登録商標)が得られる。この処方物は他に添加される助剤または安定化剤を含有しない。この製品の無菌性は無菌製造法によりそして(あるいは)無菌濾過により確保される。カプキソール(登録商標)の二つの主成分は変性されていないパクリタキセルおよびヒト血清アルブミン(HSA)である。HSAは水中に自由に溶解するので、カプキソール(登録商標)はHSAに関する溶解限度のみによって制限される所望の任意の濃度のパクリタキセルへと再構成されることができる。従ってカプキソール(登録商標)は稀薄な濃度(0.1mg/mlパクリタキセル)から濃厚な濃度(20mg/mlパクリタキセル)までの広い範囲の濃度で再構成されることができる。これにより、かなり小容量の投与が可能になる。
本記載で用いる場合、「ミクロン」という語はミリメートルの千分の一の尺度単位をさす。
本発明を実施するのに使用することが考えられる水に実質的に不溶である薬理学的活性剤には医薬的活性剤、診断剤、栄養的価値のある薬剤などが含まれる。医薬的活性剤の例には以下のものがある。
麻酔薬(例えばシクロプロパン、エンフルラン、ハロタン、イソフルラン、メトキシフラン、亜酸化窒素、プロポホールなど);
抗うつ薬(例えばネフォパム、オキシペルチン、ドキセピンヒドロクロリド、アモキサピン、トラゾドンヒドクロリド、アミトリプチリンヒドロクロリド、マプロチリンヒドロクロリド、フェネルジンサルフェート、デシプラミンヒドロクロリド、ノルトリプチリンヒドロクロリド、トラニルシプロミンサルフェート、フルオキセチンヒドロクロリド、ドキセピンヒドロクロリド、イミプラミンヒドロクロリド、イミプラミンパモエート、ノルトリプチリン、アミトリプチリンヒドロクロリド、イソカルボキサジド、デシプラミンヒドロクロリド、トリミプラミンマレエート、プロトリプチリンヒドロクロリドなど);
抗真菌剤(例えばグリセオフルビン、ケロコナゾール、アンフォテリシンB、ニスタチン(Nystatin)、カンジシジンなど);
ヘモレオロジック剤(hemorheologic agent)(例えばペントキシフィリン);
抗血小板剤(例えばアスピリン、エンピリン、アスクリプチンなど);
抗痙攣剤(例えばバルプロン酸、ジバルプロエートナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビトール、フェノバルミトールナトリウム、カルバマゼピン、アモバルビトールナトリウム、メトサキシミド、メタルビタール、メホバルビタール、メフェニトイン、フェンサキシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビトールナトリウム、クロルアゼペートジカリウム、トリメタジオンなど);
抗ヒスタミン剤/抗掻痒症剤(例えばヒドロキシジンヒドロクロリド、ジフェニルヒドラミンヒドロクロリド、クロルフェニルアミンマレエート、ブロムフェニラミンマレエート、シプロヘプタジンヒドロクロリド、テルフェナジン、クレマスチンフマレート、トリプロリジンヒドロクロリド、カルビノキサミンマレエート、ジフェニルピラリンヒドロクロリド、フェニンダミンタルタレート、アザタジンマレエート、トリペレナミンヒドロクロリド、デキスクロルフェニルアミンマレエート、メトジラジンヒドロクロライド、トリムプラジンタルタレートなど)
抗菌剤(例えばアミカシンサルフェート、アズトレオナム、クロランフェニコル、クロランフェニコルパルミテート、クロランフェニコルナトリウムスクシネート、シプロフロキサシンヒドロクロリド、クリンダマイシンヒドロクロリド、クリンダマイシンパルミテート、クリンダマイシンホスフェート、メトロニダゾール、メトロニダゾールヒドロクロリド、ゲンタミシンサルフェート、リンコマイシンヒドロクロリド、トブラマイシンサルフェート、バンコマイシンヒドロクロリド、ポリミキシンBサルフェート、コリスティメテートナトリウム、コリスチンサルフェートなど);
抗微生物剤(例えばセファロスポリン(例えばセファゾリンナトリウム、セファラジン、セファクロール、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタンジナトリウム、セフトキシムアゾチル、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシルモノハイドレート、セフタジディム、セファレキシン、セファロシンナトリウム、セファレキシンヒドロクロリドモノハイドレート、セファマンドールナフェート、セフォキチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セフトリアキソンナトリウム、セフタジディム、セファドロキシル、セファラジン、セフロキシムナトリウムなど)、ペニシリン(例えばアンピシリン、アモキシリン、ペニシリンGベンザシン、シクラシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、ベカンピシリンヒドロクロリド、クロキサシリンナトリウム、トリカルシリンジナトリウム、アズロシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウム、ナフシリンナトリウムなど)、エリスロマイシン(例えばエリスロマイシンエチルスクシネート、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンシエアレート、エリスロマイシンエチルスクシネートなど)、テトラサイクリン(例えばテトラサイクリンヒドロクロライド、ドキシサイクリンハイクレート、ミノサイクリンヒドロクロリドなど)、など);
気管支拡張剤(例えば交感神経興奮剤(例えばエピネフリンヒドロクロリド、メタプロテレノールサルフェート、テルブタリンサルフェート、イソエタリン、イソエタリンメシレート、イソエタリンヒドロクロリド、アルブテロールサルフェート、アルブテロール、ビトルテロール、メシレートイソプロテレノールヒドロクロリド、テルブタリンサルフェート、エピネフリンビタルタレート、メタプロテレノールサルフェート、エピネフリン、エピネフリンビタルタレート)、抗コリン作用剤(例えばイプラトロピウムブロマイド)、キサンチン(例えばアミノフィリン、ジフィリン、メタプロテレノールサルフェートアミノフィリン)、マスト細胞安定剤(例えばクロモリンナトリウム)、吸入用コルチコステロイド(例えばフルリソリデベクロメタゾンジプロピオネート、ベクロメタゾンジプロピオネートモノハイドレート)、サルブタモール、ベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)、イプラトロピウムブロマイド、ブデソニド、ケトティフェン、サルメテロール、キナホエート、テルブタリンサルフェート、トリアムシノロン、テオフィリン、ネドクロミルナトリウム、メタプロテレノールサルフェート、アルブテロール、フルニソリドなど);
ヒポリピデミック剤(hypolipidemic agent)(例えばクロフィブレート、デキストロチロキシンナトリウム、プロブコール、ロバスタチン、ニアシンなど);
タンパク質(例えばDNアーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、リパーゼなど);
赤血球造血刺戟に有用な物質(例えばエリトロポイエチン);
抗潰瘍剤/抗リフラックス剤(例えばファモチジン、シメチジン、ラニチジンヒドロクロリドなど);
抗悪心剤(antinauseants)/制吐剤(例えばマクリジンヒドロクロリド、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリネート、プロメタジンヒドロクロリド、チエチルペラジン、スコポラミンなど);
油溶性ビタミン(例えばビタミンA,D,E,Kなど);そして
ミトタン、ビサジン、ハロニトロソ尿素、アントロサイクリン、エリプチシンなどのような他の薬物。
本発明のポリマーシェル中に含まれる薬理学的活性剤と先行技術のタンパク質微細球との重要な差異は、粒子の形成法の本質および粒子形成後のタンパク質の最終的状態、そして水溶性が劣悪であるまたは実質的に水不溶性である物質を坦持する、粒子の能力である。本発明に従う場合、ポリマー(例えばタンパク質)は、高圧ホモジェナイザー内で高剪断条件下に曝される結果、架橋されることができる。必要ならスルフヒドリル基またはジサルファイド基を有する(例えばアルブミン)バイオコンパチブルポリマー中に、溶解したまたは懸濁した薬理学的活性剤を含有する分散剤を分散するために高剪断が採用され、これによって非水性媒体の微細な液滴のまわりに架橋ポリマーのシェルが形成される。高剪断条件は液体中にキャビテーションを生じ、これによって極めて強力な局部的加熱が惹起されまた、例えば、新たにジサルファイド架橋結合を生成するようにスルフヒドリル残基を酸化することにより(そして(あるいは)現存するジサルファイド結合をこわすことにより)、ポリマーを架橋できるスーパーオキシドイオンが生成されるに至る。
安定なナノ液滴を形成するための安定化剤として作用させるためにタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)が次に添加される。タンパク質は約0.05〜25%(重量/体積)、一層望ましくは約0.5〜5%(重量/体積)の範囲の濃度で添加される。ナノ粒子を形成するための慣用的な方法とは異なって、混合物に界面活性剤(例えばナトリウムラウリルサルフェート、レシチン、トゥイーン(Tween)80、プルロニック(pluronic)F−68など)は添加されない。
次に、高い圧および大きな剪断力の下でのホモジェニゼーションによってエマルジョンが形成される。このようなホモジェニゼーションは約3000psiから60,000psiまでの範囲にある圧力で典型的に運転される高圧ホモジェナイザー中で実施される。このような方法は約6,000psiから40,000psiまでの範囲の圧力で実施される。得られるエマルジョンは非水性溶媒(薬理学的活性剤を溶解して含む)の極めて小さいナノ液滴とタンパク質安定化剤の極めて小さいナノ液滴とを含む。
最後に溶媒が蒸発されて、薬理学的活性剤のタンパク質でコーティングされたナノ粒子とタンパク質とからなるコロイド系が生成される。許容される蒸発方法は、回転蒸発器、落下膜蒸発器、噴霧乾燥機、凍結乾燥機などの使用を含む。限外濾過もまた溶媒を除去するのに用いられてよい。
本発明の別な一態様に従うと、異常に小さいサブミクロン粒子(ナノ粒子)つまり直径が200ナノメートルより小さい粒子を形成するための別法が提供される。このような粒子は液状懸濁液の形で使用するのに先立って無菌濾過されることができる。本発明の処方法の最終生成物(すなわち薬物粒子)が無菌濾過され得ることは、オートクレーブ処理のような慣用的な手段によって、タンパク質(例えば血清アルブミン)を高濃度で含有する分散液を殺菌することは不可能であるので、著るしく重要である。
次に水と混合可能な有機溶媒(例としては、例えばエタノールのように水中の溶解度が約10%より大きい溶媒)が、全有機相の約1〜99体積/体積%、望ましくは約5〜25体積/体積%の範囲の最終濃度となるように油相に添加される。水混合性有機溶媒は、エチルアセテート、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ブタノール、アセトン、プロピレングリコール、グリセロール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリジノンなどのような溶媒から選択できる。あるいは別に、水混合性溶媒との水不混合性溶媒の混合物が先ずつくられ、続いてこの混合物に薬理学的活性剤が溶解される。
次に、ミクロ液滴とナノ液滴とからなる混合物が小さな剪断力でのホモジェニゼーションによって形成される。これは、当技術に熟達する者によって容易に知られるように、約2,000rpmから約15,000rpmまでの範囲で運転される慣用の実験室用ホモジェナイザーを例えば使用することにより様々な方法で実施されることができる。この後、高圧(つまり約3,000psiから60,000psiまでの範囲)下のホモジェニゼーションが行なわれる。得られる混合物は、タンパク質水溶液(例えばヒト血清アルブミン)、水不溶性の薬理学的活性剤、第1の溶媒および第2の溶媒からなる。最後に、真空下で溶媒が急速に蒸発されて、無菌濾過されることのできる極度に小さいナノ粒子(つまり約10nm〜200nmの直径を有する)の形のコロイド分散系(薬理学的活性剤およびタンパク質)が生成される。粒子の好ましい寸法範囲は処方物および使用上のパラメータに応じて約50nm〜170nmの間にある。
薬理学的活性剤のコロイド系は、比較的小さい体積で大きな用量の薬理学的活性剤を投与することを可能にする。これによって、大きな容積の液体を受けいれる時の患者の不快感が最小化されまた病院での滞在が最短になる。加えて、ポリマーシェルまたはコーティングの壁は、一般にタンパク分解酵素により生体内で完全に分解されることができ(例えばポリマーがタンパク質である時)、投与システムに由来する副作用は実質的になく、これは従来の処方物によってもたらされる顕著な副作用とは鋭い対照をなす。
上記のようにつくられる、ポリマーシェルと連関する薬理学的活性剤の粒子はバイオコンパチブルな水性液体中の懸濁液として投与される。この液体は水、生理食塩水、適当な緩衝剤を含有する溶液、アミノ酸、糖、タンパク質、炭水化物、ビタミンまたは脂肪のような栄養物質を含有する溶液などから選択されてよい。
本発明のこの面について、以下の限定的ではない実施例を参照しつつ以下に一層詳細に述べる。
高圧均質化によるナノ粒子(nanoparticle)の製造
パクリタキセル(paclitaxel)30mgを3.0mlの塩化メチレンに溶かした。この溶液をヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)27.0mlへ加えた。粗製エマルションをつくるため混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移した。エマルションを少なくとも五回再循環させて乳化を9000−40,000psiで行なった。得られた系を回転蒸発器に移し、塩化メチレンを減圧(30mmHg)で20−30分間40℃で迅速に除いた。得られた分散系は半透明であり、生じたパクリタキセル粒子の典型的な直径は160−220nmであった(Z−平均、Malvern Zetasizer)。凍結防止剤をなんら添加することなく分散系を48時間更に凍結乾燥した。この結果生じたケーキは滅菌水または食塩水の添加により、容易に元の分散液に戻すことができた。再構成後の粒径は凍結乾燥前と同じであった。
通常の界面活性剤とタンパク質の使用は大型結晶の形成を起こす
下記の例は、従来の溶媒蒸発法で使用される界面活性剤添加の効果を実証するものである。例1で述べた方法と同様の手順を用いて一連の実験を行なうが、Tween 80といった界面活性剤(1%から10%)を有機溶媒へ加える。塩化メチレン除去後、光学顕微鏡により、また偏光下で見たとき、1−2ミクロンの平均粒径をもつ多数のパクリタキセル結晶が得られることが分かった。これら結晶は2,3時間以内に成長して非常に大きい針様結晶を形成し、これは約5−15ミクロンの範囲内の大きさを有した。他の常用界面活性剤、例えば Pluronic F−68,Pluronic F−127,Cremophor ELおよびBrij 58、を用いても同様な現象が観察された。
通常の界面活性剤の単独使用は大型結晶の形成を起こす
本例は、重合体芯材料無しに通常の界面活性剤を用いても、極性、水非混和性溶媒(例えば、クロロホルム)に可溶の薬理活性薬剤でナノ粒子をつくることは不可能なことを実証するものである。
タキソール30mgをクロロホルム0.55mlとエタノール0.05mlに溶かした。この溶液をクロロホルム1%で前飽和させた Tween 80溶液(1% w/v)29.4mlへ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移した。エマルションを少なくとも六回再循環させながら、乳化を9000−40,000psiで行なった。得られた系を回転蒸発器に移し、クロロホルムを40℃で減圧(30mmHg)において15−30分迅速に除去した。生じた分散系は不透明であり、薬物の大きい針様結晶を含んでいた。結晶の初期の寸法(偏光によっても観察)は0.7−5ミクロンであった。分散系を室温で数時間貯蔵すると結晶の寸法は更に増加し、最後には沈殿を生成した。
200nm未満の無菌濾過できるナノ粒子の調製
本例は、無菌濾過の可能な薬物粒子を得ることのできる方法を説明する。このようにして、30mgのタキソールをクロロホルム0.55mlとエタノール0.05mlに溶かした。この溶液を、1%のクロロホルムで前飽和させたヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)29.4mlへ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移した。エマルションを少なくとも六回再循環させながら、乳化を9000−40,000psiで行なった。得られた系を回転蒸発器へ移し、クロロホルムを40℃で、減圧(30mmHg)において15−30分迅速に除いた。生じた分散系は半透明であり、得られた粒子の典型的な直径は140−160nm(Z−平均、Malvern Zeta Sizer)であった。この分散系を0.22ミクロン濾過器(Millipore)に通して濾過したが、濁り度、あるいは粒径に有意な変化がなかった。タキソール含量のHPLC分析は、タキソールの97%より多くが濾過後に回収されたことを示し、従って無菌タキソール分散系が得られたことになる。
この無菌分散系を凍結防止剤の添加無しに更に48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水または食塩水の添加により元の分散系に容易に再構成できた。再構成後の粒径は凍結乾燥前と同じであった。
200nm未満の無菌濾過できるナノ粒子の調製
本例は無菌濾過の可能な薬物粒子を得ることのできる方法を説明する。従って、225mgのタキソールをクロロホルム2.7mlとエタノール0.3mlに溶かした。この溶液を97mlのヒト血清アルブミン溶液(3% w/v)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移した。エマルションを少なくとも六回再循環させながら、乳化を9000−40,000psiで行なった。得られた系を回転蒸発器に移し、40℃で、減圧(30mmHg)において、15−30分クロロホルムを迅速に除去した。生じた分散系は半透明であり、得られた粒子の典型的な直径は140−160nm(Z−平均、Malvern Zeta Sizer)であった。この分散系を0.22ミクロン濾過器(Sartorius, sartobran 300)に通して濾過しても濁り度あるいは粒径に有意な変化がなかった。タキソール含量のHPLC分析は、用いた条件により、濾過後70−100%のタキソールを回収できたことを典型的に示した。このようにして、無菌タキソール分散系が得られた。
モデル薬物のナノ粒子形成
イソレセルピン(モデル薬物)30mgを3.0mlの塩化メチレンに溶かした。この溶液を27.0mlのヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)へ移した。エマルションを少なくとも五回再循環させながら、9000−18,000psiで乳化を行なった。生じた系を回転蒸発器へ移し、40℃で、減圧(30mmHg)において20−30分塩化メチレンを迅速に除いた。得られた分散系は半透明であり、生じた粒子の典型的な直径は120−140nmであった(Z−平均、Malvern Zetasizer)。分散系を0.22ミクロン濾過器(Millipore)に通して濾過した。
モデル薬物を用いる極小粒子の形成
粒径縮小に及ぼすエタノール添加の効果をイソレセルピンについて実証した。このようにして、イソレセルピン30mgを塩化メチレン2.7mlおよびエタノール0.3mlに溶かした。この溶液を27.0mlのヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)へ移した。エマルションを少なくとも5回再循環させながら、9000−40,000psiで乳化を行なった。得られた系を回転蒸発器へ移し、40℃で、減圧(30mmHg)において、20−30分塩化メチレンを迅速に除去した。生じた分散系は半透明で、生じた粒子の典型的な直径は90−110nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。この分散系を0.22ミクロン濾過器(Millipore)に通して濾過した。
薬物で過飽和とした水混和性溶媒単独の使用、本発明方法に対して不適当
タキソールパクリタキセル30mgを0.6mlのエタノールに分散させた。この濃度(50mg/ml)においては、タキソールパクリタキセルは完全には溶解せず、過飽和分散液を生ずる。この分散系を29.4mlのヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)へ加えた。粗製分散系をつくるため、混合物を低RPMで5分均質化し(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)へ移した。エマルションを少なくとも六回再循環させながら、9000−40,000psiで乳化を行なった。得られた系を回転蒸発器へ移し、エタノールを40℃で、減圧(30mmHg)において、15−30分迅速に除去した。生じた分散系の粒径はきわめて幅広く、約250nmから数ミクロンまでに及んだ。
X線粉末回折によるナノ粒子形のパクリタキセルの物理的状態の決定
パクリタキセル粗製物質は、種々な大きさ、典型的には5−500ミクロン、の針状結晶として普通存在する。静脈注射用の薬物製剤中に結晶が存在すると、もしそれが数ミクロン以上の大きさで存在するなら、毛細血管をふさぐ可能性があるので明らかに有害である。その上、薬物結晶の溶解性は、一般に無定形薬物の溶解性より低いので、静脈内投与後の薬物のバイオアベイラビリティを低下させる。製剤中の薬物含有量を増すにつれて、結晶化の傾向も増加することも公知である。従って、製剤は薬物を本質的に無定形の状態で含むのが有利である。
X線粉末回折法を用いることにより、凍結乾燥された粉末製剤中のパクリタキセルの結晶または非結晶の性状を測定した。次の試料を分析した:試料1−パクリタキセル粉末;試料2−凍結乾燥した血清アルブミン;試料3−パクリタキセルとアルブミンとの物理的混合物;および試料4−製剤化されたパクリタキセル。各試料にCuKa放射線、加速電圧40KeV/30mA、ステップサイズ0.05°2−シータ、およびデータ取り込み時間2.0秒/ステップを使用して2°から70°2−シータ角からX線を当てた。試料1は結晶性試料の典型である強いピークを示した。最も強いパクリタキセルピークは5.1°2−シータに位置した。試料2は無定形材料の典型である幅広い突出部を示した。試料3は殆ど大部分試料2の幅広い突出部を示したが、それに加えて、5.1°2シータのところにパクリタキセルのピークが見られた。試料4、即ち製剤化されたパクリタキセル、はパクリタキセルの結晶質の特徴の証拠を示さず、試料2と同一に見え、このことは製剤化された試料中に実質的に無定形な薬理活性薬剤が存在することを示している。
高圧均質化によるシクロスポリン(カプソリン、静脈内)のナノ粒子の製造
シクロスポリン30mgを塩化メチレン3.0mlに溶かした。次にこの溶液を27.0mlのヒト血清アルブミン溶液(1% w/v)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、この混合物を低RPM(Vitris ホモジナイザーモデル:Tempest I.Q.)で5分均質化し、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)へ移した。エマルションを少なくとも5回再循環させながら、9000−40,000psiで乳化を行なった。得られた系を Rotavap に移し、塩化メチレンを40℃で、減圧(30mmHg)において、20−30分迅速に除去した。生じた分散系は半透明であり、得られた粒子の典型的な直径は160−220nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。
高圧均質化によるシクロスポリン(カプソリン経口用)のナノ小滴の製造
シクロスポリン30mgを3.0mlの適当な油(オレンジ油10%を含む胡麻油)に溶かした。次に溶液を27.0mlのヒト血清アルブミン溶液(1% v/w)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPM(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分均質化し、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)へ移した。エマルションを少なくとも5回再循環させながら、9000−40,000psiで乳化を行なった。生じた分散系は160−220nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)の典型的な直径を有した。
この分散系は直接使用できるが、あるいは適当な凍結防止剤を任意に加えることにより、48時間凍結乾燥することもできる。生じたケーキは無菌水または食塩水の添加により、もとの分散系へ容易に再構成できた。
高せん断ホモジネーションの使用と同様に、水不溶性の生理学的活性剤の蛋白質被覆ナノ粒子の形成のための超音波使用は、分子内ジスルフィド結合の形成を介して蛋白質を架橋することによって作用すると信じられる。前記した高せん断ホモジネーション技術による先行技術を上回る多くの利点が、以下に記載する超音波方法にも同様に適用される。
超音波方法に使用される有機溶媒、蛋白質および非蛋白質ポリマーに関しては、高せん断ホモジネーションに関して前記したそれらの組成が参照される。同じ組成の全てが、両者の方法に同様に働くと期待される。
本発明のこの点は、以下の非限定例を参照して更に詳細に記載される。
抗喘息薬の吸入薬のための製剤
抗喘息医薬品は、乾燥粉末吸入器(DPI)に有効な製剤をつくるため、ミクロ粒子技術を用いて製造されて来た。ステロイド系薬物(例えば、ベクロメタソン、ベクロメタソンニプロピオネート、ブデソニド、デキサメタソン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニドなど)から出発して、呼吸器への効果的な送り込みを確保するために適した粒径と放出特性を有する乾燥製剤がつくられた。
この製剤は、溶媒に溶かした活性薬物をタンパク質水溶液中に分散させてナノ粒子のエマルションをつくるという超音波処理技術、または均質化を用いてつくられる。次にこのエマルションを蒸発させて溶媒を除き、溶液のタンパク質で被覆された活性薬物を残す。コロイド薬物粒子を含むこの液体試料を Malvern Zetasizer により測定し、260nmのZ−平均粒径を得た。特に適当な具体例においては、これらコロイド粒子の粒径の範囲は約50−1,000nmであり、一層好ましくは約70−400nmである。
次にこの噴霧乾燥粉末を付形剤担体粉末と混合する。この場合にも、幾つかの担体、例えばラクトース、トレハロース、ファルマトース325M、ショ糖、マンニトールなど、が利用できる。担体粉末の粒径は製剤化された薬物粒子のそれよりもかなり大きい(ラクトースに対しては〜63−90μm、ファルマトースに対しては40−100μm)。
この製剤は、DPIによるエーロゾル投与に対する乾燥粉末製剤の処理と構成におけるミクロ粒子および噴霧乾燥技術の適用性を示している。ここに示した高いFPFの結果は、DPI製剤への効率のよいかつ有望な方法を示す。
現在適当とされる製造法の要約:BDSとして1グラムのパクリタキセルから
出発
3%HSA溶液をつくる。25%アルブテイン51.7mlへ注射用の水379.3mlを加える。十分よく混合し、溶液を無菌0.22μm Nalgene 使い捨て濾過器に通して濾過する。使用まで4℃に保つ。
パクリタキセル1.0gをガラスびんに秤り取る。CHCl3とエチルアルコールをびん中で適当な割合で合わせ、よく混合する。このパクリタキセルへクロロホルム/エチルアルコール混合物13.33mlを加える。かきまぜてすべてのパクリタキセルを溶かす。この溶液を0.22ミクロン無菌テフロンフィルターに通して濾過し、無菌ガラスびん中に集める。
最終試料を入れたフラスコを回転蒸発器に付ける。回転蒸発器の最大限まで真空で回転させて有機溶媒を蒸発させる。これによりヒトアルブミン中パクリタキセルのコロイド溶液を生ずる。この回転蒸発させた試料の〜3mlを粒径の分析に備えて保存する。
一びん当りパクリタキセル30mgを得る容器一杯の量(あるいは他の誘導量)を決定する。無菌濾過した試料をオートクレーブにかけた Wheaton 30mlびん中に各びん約17mlまで入れる(検定法に基づく)。びんをオートクレーブにかけた Wheaton 血清びんのストッパーで閉じる。各びんは約30mgのパクリタキセルを含むに違いない。
凍結乾燥された試料は、残留溶媒を<1000ppm、更に好ましくは<500ppm、更には<100ppmのレベルで含む。
最終生成物の無菌濾過:溶媒を蒸発により除去した後、フラスコ中のパクリタキセルのコロイド溶液を、コンビネーション0.45/0.2ミクロン滅菌フィルターに通して無菌濾過する。濾過した溶液を無菌ビーカーに集め、30mlのびん中に無菌的に詰める。次にびんを凍結乾燥機に入れる。凍結乾燥サイクルの完了後、びんを乾燥無菌窒素ガスで掃気し、窒素気流下で栓をする。
油を含むタンパク質殻の調製
USP(合衆国薬局方)5%ヒト血清アルブミン溶液(Alpha Therapentic Corporation)3mlを、超音波処理プローブ(Heat Systems、モデルXL2020)に付けることのできる円筒容器に採った。このアルブミン溶液を6.5mlのUSP品等大豆油(soya oil)で重層した。ソニケータープローブのチップをこれら二溶液間の境界に配置し、組み立てを20℃の冷却浴中に保持した。系を平衡化させ、ソニケーターを30秒働かせた。激しい混合が起こり、白い乳状懸濁液が得られた。この懸濁液を通常の食塩水で1:5に希釈した。粒子カウンター(Particle Data Systems, Elzone、モデル280PC)を用いて粒径分布と油含有タンパク質殻の濃度を測定した。生じたタンパク質殻は、最大横断面寸法約1.35±0.73ミクロンを有すると測定され、また全濃度は最初の懸濁液中〜109殻/mlであると測定された。
溶解パクリタキセルを含む重合体殻の調製
パクリタキセルをUSP品等大豆油に2mg/mlの濃度で溶かした。USP5%ヒト血清アルブミン溶液3mlを、超音波処理プローブに付けることのできる円筒容器に採った。アルブミン溶液を大豆油/パクリタキセル溶液6.5mlで重層した。ソニケータープローブのチップを二溶液間の境界面に配置し、組み立てを平衡状態に維持し、ソニケーターを30秒働かせた。激しい混合が起こり、安定な白い乳状懸濁液が得られ、このものは油/パクリタキセル溶液を封入したタンパク質壁をもつ重合体殻を含んでいた。
橋かけタンパク質殻中への薬物の高い添加量を得るために、油と薬物とに対する相互溶媒(この溶媒中に薬物は相当に高い溶解度をもつ)を油と混合することができる。もしこの溶媒が比較的無毒性であるならば(例えば、酢酸エチル)、本来の担体と共に注射できるかも知れない。他の場合では、重合体殻の調製後、液体の真空蒸発によってこれを除去してもよい。
超音波処理によるナノ粒子の調製
パクリタキセル20mgを1.0mlの塩化メチレンに溶かした。この溶液を4.0mlのヒト血清アルブミン溶液(5% w/v)へ加えた。粗製エマルションをつくるため、混合物を低RPM(Vitris ホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分均質化し、次に40kHzソニケーターセル中へ移した。超音波処理を0度で60−90%パワーで1分間行なった(550 Sonic Dismembrator)。混合物を回転蒸発器に移し、塩化メチレンを40℃で、減圧(30mmHg)において20−30分迅速に除去した。生じた粒子の典型的な直径は350−420nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。
フルオロホアを含む橋かけタンパク質殻のin vivo 生体内分布
静脈内注射後のタンパク質重合体殻内に捕捉された液体の取り込みおよび生体内分布を測定するため、ヒト血清アルブミン(HSA)タンパク質重合体殻内に蛍光染料(ルブレン、Alarich から入手可)を取り込ませ、マーカーとして用いた。このようにして、ルブレンをトルエンに溶かし、トルエン/ルブレンを含むアルブミン殻を、超音波照射により前記と同様に調製した。生じた乳状懸濁系を通常の食塩水で5倍に希釈した。次に希釈懸濁液2mlをラットの尾静脈中に10分にわたり注射した。注射の1時間後、1頭の動物を殺し、他は注射の24時間後に殺した。
大豆油(SBO)を含む重合体殻の毒性
大豆油を含む重合体殻を例15に記載のようにして調製した。得られた懸濁系を通常の食塩水で希釈して二つの異なる溶液、即ち一つは20% SBOを含み、他は30% SBOを含む、をつくった。
市販TPN剤であるイントラリピド(Intralipid)は20%SBOを含む。イントラリピドのマウスにおけるLD50は120ml/kg、あるいは30gマウスに対し約4ml(1cc/分で注射したとき)である。
2群のマウス(各群マウス3頭、各マウスの体重約30g)を、下記のようにSBOを含む本発明組成物で処置した。各マウスにSBO含有重合体殻の調製された懸濁液4mlを注射した。一つの群の各動物は、20% SBOを含む懸濁液を受け、一方他の群の各動物は30% SBOを含む懸濁液を受けた。
重合体殻から放出される大豆油の生体内バイオアベイラビリティ
重合体殻の懸濁液をラット血流中に注射した後の、重合体殻に封入された物質の緩徐あるいは持続放出を測定する試験を行なった。大豆油(SBO)を含む橋かけタンパク質(アルブミン)壁をもつ重合体殻を前記超音波処理によりつくった。得られた油含有重合体殻の懸濁系を、20%の油を含む最終懸濁系まで食塩水で希釈した。この懸濁系5mlを、10分間にわたりラットのカニューレ挿入した外頚静脈中に注射した。注射後、幾つかの時間点でこれらラットから採血し、血中のトリグリセリド(大豆油は主としてトリグリセリドである)濃度を日常的分析により定量した。
Intralipid(20%と同じ量の総油を含む油含有重合体殻の懸濁系は、血清中の検出できるトリグリセリドの劇的に異なる利用効率(availability)を示す。このレベルは、正常値の約2倍に上昇し、このレベルに何時間も保持される。このことは、トリグリセリドが血中にかなり正常値に近いレベルで徐々に、あるいは持続して、放出されることを示している。30%の油を含む油含有重合体殻を投与された群は、より高いトリグリセリド濃度(高い投与量と相伴って)を示し、これは48時間以内に正常値に下がる。この場合にもトリグリセリドの血中濃度は、Intralipid を受けた対照群と比較して、この群では天文学的には上昇しない。このことも本発明組成物からの油の緩徐な、そして持続した生体利用効率を示すものであり、重合体殻内に含まれた物質の危険な程高い血中濃度の回避と受け入れられる濃度での長時間にわたる生体利用効率という利点をもつ。明らかに本発明重合体殻内に入れて投与された薬物はこれらの同じ利点を達成する筈である。
製薬上活性な薬剤の固形芯を含むタンパク質壁重合体殻の製造
パクリタキセルのような水に僅溶性の薬物を重合体殻内に供給するもう一つの方法は、固体薬物芯の周りに重合体材料の殻をつくることである。このような「タンパク質被覆された」薬物粒子は次のようにして得られる。パクリタキセルを比較的高濃度で溶かす有機溶媒を用いて、例16に記載の手順を繰り返す。一般に使用される溶媒はベンゼン、トルエン、ヘキサン、エチルエーテル、クロロホルム、アルコールなどといった有機化合物である。重合体の殻は、例15に記載のようにしてつくられる。溶解したパクリタキセルを含む重合体殻の乳状懸濁系5mlを通常の食塩水で10mlに希釈する。この懸濁系を回転蒸発器に入れ、揮発性有機物を真空で除く。得られた懸濁系を顕微鏡下で検査したところ不透明な芯が示され、このことは実質的にすべての有機溶媒が除去されたことおよび固体のパクリタキセルが存在することを示している。この懸濁系は永久的に冷凍し、貯蔵することができ、そして後日直接使用することができ、あるいは凍結乾燥することもできる。
超音波処理、高せん断均質化、または他の高エネルギー技術を用いずにナノ粒子をつくることも可能である。従って、必要に応じ本質的に純粋な薬物の懸濁系(あるいは乾燥粉末)をつくることができる。
ミクロエマルジョンは熱力学的に安定な乳濁系であり、高せん断装置あるいは他の実質的なかきまぜの欠如下で、その全成分を接触させたとき自然に形成される。ミクロエマルジョンは実質的に不透明でなく、それらは透明または半透明である。ミクロエマルジョンは典型的な小滴の粒径が1000オングストローム(Å)以下である分散相からなり、そのため光学的透明さをもつ。ミクロエマルジョン中の小滴は典型的には球状であるが、長く伸びた円筒形といった他の構造も可能である。[更に詳しい論議を必要とする場合には、例えば、
前記の通り、ミクロ粒子およびナノ粒子は種々な方法、特に溶媒蒸発法によりつくることができる。この方法は、原理上、ローター−ステーターミキサー、ソニケーター、高圧ホモジナイザー、コロイドミルなどといった種々な装置により、高いせん断力をかけながら、界面活性剤の存在下で簡単な水中油型エマルションをつくることに基づいている。分散した油の小滴中に溶けた重合体および薬物を含むこのようなエマルションの形成後、典型的には減圧、高温で、蒸発させることにより油相を除去し、溶解した薬物および重合体のミクロ粒子あるいはナノ粒子を形成させる。明らかに粒径はエマルションの小滴の大きさに依存し、小滴が小さい程生ずる粒子は小さい。小さいエマルション小滴は非常に高いエネルギーをかけることによってのみ達成でき、そしてその場合、最も進歩した高圧ホモジナイザー、例えばミクロフルイダイザー(Microfluidizer)、を使用しても75nm以下のエマルション小滴を達成することは実際的でない。エマルションは本来不安定な系であり、凝集や小滴合体といった過程を受けやすいので、このようなエマルションに対する溶媒蒸発法は大粒子を生じるかも知れない。
a.水に対して低い溶解度をもち、そして水より高い蒸気圧を有する溶媒に、水に不溶の薬物を溶かす。薬物は更に重合体結合剤を加えずに溶かすが、このような結合剤は原理上存在しうる。
c.この混合物へ適量の水または水溶液を加えると、なんら高せん断装置を使用せずに、水中油型ミクロエマルジョンが自然に生成する。水溶液は電解質、アミノ酸、または最初の調製段階でミクロエマルジョンの形成に影響を及ぼすかも知れない他の添加物を含みうる。
d.ミクロエマルジョンにタンパク質溶液を任意に加える。
e.溶媒を減圧で蒸発により除去すると、薬物が典型的粒径1000オングストローム以下のきわめて小さい無定形ナノ粒子の形で沈殿を起こす。この段階で粒子を、界面活性剤、コサーファクタント、
および任意に保護剤、例えばタンパク質、糖類など、を含む水性媒質中に分散し、安定化させる。容認しうる蒸発法は回転蒸発器、降膜蒸発器、噴霧乾燥器、凍結乾燥器、および産業界で典型的に使われている他の標準蒸発装置の使用である。
f.界面活性剤およびコサーファクタントは透析、限外濾過、吸着などにより任意に除くことができ、そのようにするとタンパク質(使用したならば)により安定化されるナノ粒子が得られる。
g.溶媒の蒸発後、ナノ粒子の液体分散系を乾燥すれば薬理剤および任意にタンパク質を含む粉末が得られる。この粉末を適当な水性媒質、例えば食塩水、緩衝液、水、などの中に再分散させて1000オングストローム以下の粒径を有する懸濁系を得、これを動物に投与できる。この粉末を得る申し分ない方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥などである。固体形への変換を凍結乾燥によって行なうなら、種々な凍結防止剤、例えばマンニトール、ラクトース、アルブミン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン、および(または)ポリエチレングリコール、を添加できる。
本発明方法を用いることにより多くの利点が実現する。もし適当な成分を選ぶなら、ミクロエマルジョンが自発的に形成され、高コストの装置およびエネルギー入力の必要がない。小滴寸法は高せん断装置により得られる最も小さいエマルション小滴よりおよそ一順位だけ小さく、それ故にきわめて小さいナノ粒子を得ることができる。ミクロエマルジョンは熱力学的に安定であり、従ってエマルションの不安定性(従って、生ずる粒子の大きさの時間依存性)に関連する通常の問題は避けられるであろう。全体の過程は、従来のエマルション−溶媒蒸発法よりはるかに簡単であり、種々なパラメーターに対して感じにくい。本法には簡単な混合が含まれるだけなので、大量生産の容量への規模拡大は、高せん断ホモジナイザーといった装置による乳化と比較して非常に簡単である。本新規方法により得られる粒径は非常に小さく、無菌濾過に使用される膜の細孔寸法より一順位小さいので、膜閉塞と関連した問題、例えば濾過圧の増大、および濾過の過程中の大きい薬物損失、もなく滅菌過程が非常に効果的である。乳化過程における高いせん断力が無いので、乳化中の温度上昇が無く、それ故に温度に敏感な薬物でも新規本発明方法によって処理できる。本発明に係る液体製剤中の薬物は、化学的安定性が増加する。それは分散したナノ小滴を含む従来のミクロエマルジョンと比較して分散したナノ粒子を含むからである、即ち固体状態(ナノ粒子)に対し液体状態(ミクロ小滴)の方が一層多く化学反応が起こるからである。本発明は、連続したミクロエマルジョン相としての液体である従来のミクロエマルジョンと比べて、乾燥製剤としての増加した化学安定性をもっている。固体製剤は、液体形で存在する従来のミクロエマルジョンあるいは「プレ−ミクロエマルジョン コンセントレート」と比較して、種々な固体剤形、例えば錠剤、顆粒剤、およびカプセル、に薬物を含めることが可能である。非常にせまい粒径分布は、非常に小さい平均粒径と合わさって、従来の方法によりつくられたミクロ粒子およびナノ粒子よりも均一に薬物吸着の増大を確実にするので、バイオアベイラビリティの増加が期待される。
下記の例に記載の溶媒はトルエンと酢酸ブチルであるが、必要とされる薬物を溶かすことのできるどの溶媒または溶媒混合物も本発明方法への使用に適しているが、ただし溶媒の除去に先立ち適切なミクロエマルジョンを形成しうることを条件とする。このような溶媒はクロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、tert−ブチルメチルエーテル、ブタノール、プロピレングリコール、ヘプタン、アニソール、クメン、ギ酸エチル、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリジノン、大豆油、ヤシ油、ヒマシ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油、C1−C20アルコール、C2−C20エステル、C3−C20ケトン、ポリエチレングリコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、d−リモネン、これらのコンビネーション、などでよい。
凍結乾燥によるナノ粒子の液体分散系の変換は、凍結防止剤、例えばマンニトール、ラクトース、アミノ酸、タンパク質、多糖類などの添加を必要とする。
1. 薬物粒子の形成は、ミクロエマルジョンを適当な溶媒で(この溶媒は混和性である)希釈することにより誘発することができる。例えば、もしその溶媒が水に低い溶解性をもつならば、その溶媒の水中溶解限界より下になるようにミクロエマルジョンを希釈することが可能であろう。
2. 溶媒ならびに任意に界面活性剤およびコサーファクタントは、薬物を溶かさない選択的抽出剤を用いることにより除去できる。
3. 界面活性剤およびコサーファクタントは、タンパク質の分子量のそれより下にカット−オフをもつフィルターを使用しながら限外濾過により除去できる。簡単な透析も任意である。
4. 製剤は最終製剤の企図された使用(経口、静脈内、局所など)に容認できる成分のみを含みうるので、これらの除去の必要がない。
5. 同様に、最終製品中に留まりうるコサーファクタント、例えばグリセリン、ベンジルアルコールなど、も使用できる。
6. ミクロエマルジョンの相図に影響するかも知れない種々な水溶性分子(電解質、エタノールなど)の添加が可能であり、従って該分子は最適薬物添加量を得るための各種成分間の比を制御しうる。
7. 自発的乳化工程は、相図(ならびにミクロエマルジョン形成に導く成分割合)に影響を与えるため、室温の外の温度で実施できる。とりわけ、系を水中油型から油中水型ミクロエマルジョンへ変える温度効果(エトキシル化界面活性剤で)を使用することができるであろう。
8. 薬剤のバイオアベイラビリティに影響を与えるため、溶媒相へ他の成分を加えることができる。とりわけ、経口吸収を高めるため、また薬物を化学的および酵素的劣化から保護するため、大豆油のような油の添加が好ましい。
9. 同様に、溶媒へ、マトリックス形成重合体(例えば、PVP)を薬物と一緒に添加することも行なわれる。
10. ミクロエマルジョンの外部水相へ、タンパク質の外の水溶性重合体(カルボキシメチルセルロース、ガム類など)を添加することにより、安定化特性および固体形特性を変えることができる。
11. 生ずる固体形粉末の流れ特性は充填材としてコロイド粒子(例えばシリカ)の添加、あるいは再構成/抗凝集助剤の添加により変えることができる。
12. 本発明で記述した同じ原理は、油中水型ミクロエマルジョンをつくる組成範囲で乳化段階を実行しながら、水溶性粒子をつくるために応用できる。本法は、例えば極端に小さいタンパク質ナノ粒子をつくるために使用できる。
シクロスポリンAのナノ粒子の調製
シクロスポリンA 115mgを酢酸ブチル1mlに溶かし、Triton X−100:n−ブタノールの4:1溶液2gと混合した。透明な系が得られた。幾分振盪させつつ10gの水を滴加した。透明な水中油型ミクロエマルジョンが得られた。幾分振りまぜながら、1%カゼイン溶液10gを加えた。系はやや混濁して来た。酢酸ブチルを Rotovap で、40℃、80mmHgにおいて除去した。系は完全に透明になった。
これらナノ粒子の液体分散系を、ラクトース添加後に(2% w/w)凍結乾燥した。
シクロスポリンAのナノ粒子の製造
119mgのシクロスポリンAを酢酸ブチルの中に溶解し、そしてトリトンX100:プロピレングリコールの4:1の溶液2gと混合する。明澄な系が得られる。僅かに振盪しながら、7gの水を滴加する。明澄な水中油型ミクロエマルジョンが得られる。僅かに振盪しながら、1%カゼイン溶液を7g加える。この系は僅かに濁った。このサンプルを溶剤蒸発に先立って水で1:1に希釈する。酢酸ブチルをロートバプ(Rotovap)で40℃、80mmHgで除去する。この系は完全に明澄になった。この方法はやはり、極めて小さなナノ粒子を生じた;Z平均は45nmであり、そして容積及び数分布による直径は11nmである。
これらナノ粒子の液状分散物をラクトース(2% w/w)の添加後に凍結乾燥した。
シクロスポリンのナノ粒子
次の組成をもつミクロエマルジョンをつくった:50mgのシクロスポリン、0.5gの酢酸ブチル、3.04gの、ツイーン(Tween)80:プロピレングリコール(1:1)、及び6.8gの水。このミクロエマルジョンを蒸発させて、シクロスポリンを5mg/mLで含有する明澄液体を生じた。対照実験では、上記成分を使用して、但し、酢酸ブチル無しで、単に混合することによって行ったが、17時間後でさえ、シクロスポリンは溶解されなかった。
幾つかの界面活性剤が可能であり、ポリソルベート類(ツイーン(Tween))、ソルビタンエーテル類(スパン(span))、スクロースエステル、レシチン、モノジグリセリド、ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体(プルロミクス(pluromics))、石鹸(ステアリン酸ナトリウム、など)、ナトリウムグリコラート胆汁塩、エトキシル化ヒマシ油、ナトリウムステアロイル−ラクチレート(sodium stearoly-lactylate)、エトキシル化脂肪酸(myrj)、エトシキル化脂肪アルコール(Brij)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、などが包含される。また、一般的には、生体高分子、例えば、澱粉、ゼラチン、セルロース誘導体など、が使用されてもよい。また、マッカッチェン ハンドブック オブ サーファクタンツ(McCutheon Handbook of Surfactants)又はCTFAインデックスの中に呈示されている界面活性剤ばかりでなく、経口適用においては、全ての許容される食品級の界面活性剤が使用できる。ミクロエマルジョンのための可能な補助溶剤または補助界面活性剤には、プロピレングリコール、エタノール、グリセロール、ブタノール、オレイン酸などが包含される。
BHTのナノ粒子の製造
110mgのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を1mLのトルエンの中に溶解し、そしてトリトンX100:n−ブタノールの4:1の溶液2mLと混合する。1%カゼイン溶液を32g加えた、そしてミクロエマルジョンが自然に形成された。このミクロエマルジョンを減圧下、80mmHg、で、40℃で、明澄になるまで蒸発させた。得られた粒子のサイズは次の通りである: Z平均が30nm、容積及び数分布による直径がそれぞれ16nmと15nm。
BHTのナノ粒子の製造
カゼイン溶液の代わりに水を使用しながら、実施例24に記載されているのと同じようなプロセスを行った。40℃、80mmHgでの蒸発の後に、この系は明澄になり、Z平均サイズが〜10nmであった。
パクリタキセルのナノ粒子の製造
30mgのパクリタキセル(paclitaxel)を2mLの酢酸ブチルの中に溶解し、そして4gの、トリトンX100:プロピレングリコールの4:1に添加した。40mLの水を加えたら、この系は僅かに濁った。蒸発後、この系は完全に明澄になった。Z平均は6nmであり、容積及び数分布によるサイズは7〜9nmであった。4℃で1日後にも、同じサイズが測定された。
実施例30
ミクロエマルジョン状態図の検証
溶剤蒸発法によってナノ粒子を得るのに利用できるミクロエマルジョンを生じる組成を検証した。これら組成物は、疎水性分子を溶解することができる水混和性溶剤、連続媒体としての水溶液、界面活性剤、及び多分、補助界面活性剤、を含有しているべきである。
水中の酢酸ブチルのミクロエマルジョンは、状態図(phase diagrams)によって記述される様々な組成において形成できる(酢酸ブチルは最終製品の中で高い許容残留濃度をもつ溶剤として分類される)。さらに、界面活性剤と補助界面活性剤は両方共に、食品及び医薬品の分野において使用される:ツイーン80(エトキシル化ソルビタンモノオレエート)とプロピレングリコール。疎水性分子モデルとしてBHTを使用して予備実験を行って、20〜50nmのサイズ範囲の粒子の分散物を生じた。0.2μmフィルターによる濾過後、約100%のBHTが膜を通過した。
BHTを含有するミクロエマルジョン及びナノ粒子の「濾過能力」は、0.2μm濾過の前後のUV吸収スペクトルを比較することによって評価された。ナノ粒子は酢酸ブチルの蒸発(60mmHg、40℃)によって得られた。プロセス全体を通して高剪断装置を使用しなかったことは強調されるべきである。
ツイーン80:グリセロール 5:1
ツイーン80:グリセロール 4:1
ツイーン80:グリセロール 3:1
ツイーン80:グリセロール 2:1
ツイーン80:グリセロール 1:1
スパン80:グリセロール 4:1
スパン80:グリセロール 3:1
ツイーン80:プロピレングリコール 4:1
ツイーン80:プロピレングリコール 3:1
ツイーン80:プロピレングリコール 2.5:1
ツイーン80:プロピレングリコール 1.5:1
ツイーン80:プロピレングリコール 1:1
ツイーン80:プロピレングリコール 1:2
((ツイーン80+スパン80)7:1):プロピレングリコール 3.5:1
((ツイーン80+スパン80)7:1):プロピレングリコール 1:1
((ツイーン80+スパン80)8:1):プロピレングリコール 4:1
((ツイーン80+スパン80)5:1):プロピレングリコール 1:1
ツイーン80:((プロピレングリコール+グリセロール) 1:1.2) 2:1
2つのサンプルを製造した(これらサンプルの組成は次の通りである:サンプル No.1は、4%のブチルアセテート、14%の界面活性剤/PG、80%の水; サンプル No.2は、ブチルアセテート1g当たり123mgのBHT、5%のブチルアセテート、18%の界面活性剤/PG、77%の水)。
プロセス装置の選択における代替
これらバッチを製造するのに使用したプロセス装置は客観的製造のためには規模を大きくされるであろう。カプキソール(Capxol)(登録商標)を製造するためのもっと大きな規模の装置の選択において利用可能な幾つかの代替がある。これら代替の一部を下記に列挙する:
様々な材料から処方された静脈内デリベリシステム
静脈内デリベリシステム(intravenous delivery system)をつくるために使用される材料は、ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリビニル、ポリプロピレンのチューブ、など)、又はガラスであってもよい。標準医用級チューブはその内表面上に疎水性部分(hydrophobic moieties)を含有することが知られている。これら疎水性部分は従って注入溶液(injection solution)と接触状態になるのに利用可能である。実際、かかるチューブはカテーテルがそうであるように、チューブに水性物質が吸収されるのを減少させるために疎水性部分が治療溶液と接触するように特別に仕立てられている。しかしながら、治療溶液の中の何らかの疎水性部分はカテーテルチューブ及びデリベリシステムのその他構成部品に結合するらしい。結果として、疎水性の薬理有効物質のかなりの量がチューブカテーテルやデリベリ容器の内壁の中へと分離されていくことになり得る。結局、疎水性の薬理活性物質の投与量はその活性物質のかなりの量がチューブ壁に吸着されることがあるので不正確になり得る。疎水性の薬理活性物質が疾病の治療に使用される場合、臨界的な治療処置においては、活性物質の有効投与量の有意な低下は治療の失敗につながることがある。活性物質が特定レベル以上存在することを必要とするそれでいて治療窓が狭い治療成分を使用する場合には、かかる失敗は特に顕著である。
パクリタキセルのHPLC分析
クロマトグラフィーシステム:
HPLC: 島津LC−10AS 溶剤デリベリシステム
島津SIL−10A オート インジェクター
島津SCL−10A システム コントローラー
島津SPD−M10AV ダイオードアレイ ディテクター
島津CTO−10A カラム オーブン
カラム: Curosil−PFP、5μm、4.6mm×25cm、
又はC−18
フェノメネックス(phenomenex);
移動相: 水/アセトニトリル 65:45
流量: イソクラチック(isocratic)、1.0mL/分
検出: 228nm
パクリタキセルBDS及びパクリタキセル標準(99.9%、ハウザーケミカルリサーチ社(Hauser Chemical Research Inc.)ロット1782−105−5)をアセトニトリルの中に定量的に溶解し、そして別々に、HPLCに注入した。1.00mg/mLのパクリタキセルBDSが10μL、そして、2.07mg/mLの標準パクリタキセルが10μL注入された。パクリタキセルBDSの主要ピークの保持時間はハウザーからのパクリタキセル標準の保持時間と一致している。
パクリタキセルBDSおよび標準パクリタキセルを上記のようにHPLCに注入した。パクリタキセルの効力は、標準パクリタキセルに対するパクリタキセルBDSのピークエリア比(peak area ratio)と、標準パクリタキセルの既知効力とから導かれた。
上記のクロマトグラフィーシステムはタクサンズ(taxanes)の高分解度を提供することができる。本発明者らのHPLCシステムの直線応答範囲に入るアセトニトリル中の1.0mg/mLのパクリタキセルをHPLCに10〜20μL注入した。不純物プロフィールは相対ピークエリアによって決定された。
3%HSAの中にパクリタキセルBDSを定量的に溶解することによって、標準溶液(60、100、120、140及び160μg/mL)をつくった。カプキソール(登録商標)サンプルを生理食塩水の中に〜100μg/mLのパクリタキセル濃度に希釈した。標準パクリタキセル及びカプキソール(登録商標)サンプルを内標準としてのセファロマンニンでスパイクした後に、固相抽出又は液相抽出(下記を参照)を行った。標準調製液及びカプキソール(登録商標)サンプル調製液の等容量(20〜20μL)を別々にHPLCに注入してパクリタキセルと内標準セファロマンニンのピーク応答比を測定した。較正曲線は標準注入からの結果に対する通常の最小二乗回帰によって作成した。カプキソール(登録商標)におけるパクリタキセルの効力はサンプル注入のピーク応答比を標準注入と比較することによって求められる。
カプキソール(登録商標)をHPLCに注入する前に固相抽出または液相抽出(下記参照)した。カプキソール(登録商標)から抽出した〜1mg/mLのパクリタキセルを30μL注入して上記のように不純物プロフィールを調べた。
カプキソール(登録商標)を生理食塩水の中で約100μg/mLに再構成する。固相抽出カラム、Bond−Elut(C−18)、を水でコンディショニングする。このカラムにサンプルを搭載し、それを真空を使用してカラムの中を通す。次いで、カラムを水で洗浄した後、パクリタキセルをアセトニトリルで溶離する。抽出パクリタキセルを含有している溶出液をHPLCに注入する。
カプキソール(登録商標)を生理食塩水の中で約100μg/mLに再構成する。このサンプルの約200μLに、800μLのアセトニトリルを加える。この混合物を30秒間渦動させ、次いで3,000gで5分間遠心分離する。上澄み液を取り出し集める。ペレットを200μLの生理食塩水の中に再懸濁し、そして抽出工程を繰り返す。第二の上澄み液を最初のものと一緒にする。たまった抽出液を蒸発によって濃縮した後にHPLCに注入する。
光子相関分光法(PCS)による粒子サイズ分布
再構成したカプキソール(登録商標)の粒子サイズ分布を、マルバーン ツェータサイザー(Malvern Zetasizer)(マルバーン インスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd.))で、光子相関分光法(photon correlation spectroscopy)(PCS)によって分析した。ツェータサイザーの較正はNISTトレーサブル(traceable)ナノスフェア(Nanosphere)(登録商標)サイズスタンダード(Size Standards)(デュークサイエンティフィック社(Duke Scientific Corporation))によって行った。マルバーン ツェータサイザーでカプキソール(登録商標)粒子サイズを測定するための手順は次のパラメーターの設定を包含する:
温度: 20〜70℃
散乱角: 90度
屈折率 分散剤: 1.33
波長: 633nm
Visc.(Auto): 0.99
リアル(real)屈折率: 1.55
イメージナリ(imagenary)屈折率:0
ツェータサイザーを用意した後、次いで、kcts/secの読みから良好なサイズ測定のために必要なサンプルの希釈度を求めた(最初に、サンプルのアリコート200μLをキュベット(cuvette)に入れ、次いで0.22μmのフィルターを通した蒸留水約2mLで希釈した)。キュベットをツェータサイザーの内側のホルダーの中に置き、そして測定を開始した)。測定を開始すると、コレレーターコントロール(Correlator Control)の表示が現れるであろう。メニューから表示レートのメーターを選ぶ。レートは100〜250kcts/secの中間範囲にあるべきである。レートが高すぎた又は低すぎた場合には、それぞれ、もっと高い又はもっと低い希釈度の別のサンプルを用意する。再構成されたカプキソール(登録商標)のサイズは3つの自動実験の後のマルチモード分析によって分析され平均化され記録される。カプキソール(登録商標)の25バッチについて、平均粒子サイズ(mean particle size)は155nm±23nmだった。
ポリヌクレオチド構成体、酵素及びワクチン
のための担体としての高分子シェル
遺伝子治療は生存可能な治療法の選択としてより広く受け入れられてきている(現時点では、40件を越すヒト遺伝子トランスファー計画がNIH及び/又はFDA検閲局によって承認されている)ので、この治療法の実行において克服すべき障壁の一つはヒト細胞のゲノムの中に遺伝物質を組み入れるのにウイルスベクターを使用することに対する抵抗である。ウイルスは本来的に毒性である。従って、遺伝子治療におけるウイルスベクターの使用に必然的に伴うリスクは特に非致死性の非遺伝性疾病の治療には受け入れられない。不都合なことには、ウイルスベクターを使用せずにトランスファーされたプラスミドは通常、標的細胞のゲノムの中に組み込まれない。その上、通常の薬物を用いたときにそうであるように、かかるプラスミドは体内で有限の半減期を有する。従って、遺伝子治療の実行に対する一般的な制約は細胞膜を透過するには大きすぎる核酸又はオリゴヌクレオチドを有効に送達させる能力がないことである(それは、遺伝子治療の逆の形態であり遺伝子発現を抑制するために核酸又はオリゴヌクレオチドが導入されるアンチセンス治療でも同様である)。
別の例として、アデノ関連ウイルスゲノム(adeno-associated virus genome)の部分を含有するプラスミドを、本発明のタンパク質マイクロカプセルシェルの中にカプセル化することを意図する。加えて、本発明のタンパク質マイクロカプセルシェルは、様々な腫瘍及び感染症に対してよく採用される免疫治療のためにCD8+T細胞に治療用遺伝子を送達するのに使用できる。
本発明のタンパク質シェルはまた、例えばB型肝炎ウイルスに対抗するアンチセンスヌクレオチドのターゲット送達によって感染症と戦うためのデリベリシステムとして使用できる。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドの例はB型肝炎ウイルスのポリアデニル化のシグナルに対抗する21−マー(mer)ホスホロチオエートである。
酵素もまた、本発明のタンパク質シェルを使用して送達できる。たとえば、酵素、DNAse、はカプセル化されることができ、そして肺に送達されることができる。同じ様に、リボチーム類(ribozymes)はカプセル化されることができ、そして高分子シェルの外面に適切な抗体を付着させることによってウイルスエンベロープ(virus envelop)タンパク質又はウイルス感染細胞に対してターゲット化されることができる。ワクチンもまた、本発明の高分子マイクロカプセルの中にカプセル化されることができ、そして皮下、筋肉内又は静脈内送達に使用される。
脳腫瘍及び腹膜内腫瘍の限局療法
化学療法剤を局限的に腫瘍に送達することは投与量を最小にして副作用を制限しながら長期にわたって薬剤に曝すための有効な方法である。上記に論じた生体適合性物質はまた、薬理活性成分例えばパクリタキセルが拡散及び/又はマトリックスの崩壊によってマトリックスから放出されるそのマトリックスを提供するためにゲル(交叉結合された又は交叉結合されてない)のような幾つかの物理的形態で使用されてもよい。脳腫瘍及び腹膜腔内の腫瘍(卵巣癌及び転移疾患)の治療のためにパクリタキセルの持続性製剤を提供するために、カプキソール(登録商標)が生体適合性物質のマトリックスの中に分散されてもよい。温度感受性物質も本発明の製剤のための分散媒として利用できる。従って、例えば、腫瘍サイトにおいてゲルであり、ゆっくりしたカプキソール(登録商標)の放出を提供する温度感受性物質(例えば、ポリアクリルアミドの共重合体、又はポリアルキレングリコールとポリラクチド/グリコリドの共重合体、など)の液状配合物の中に、カプキソール(登録商標)を注入してもよい。このカプキソール(登録商標)処方物を上記の生体適合性高分子の中に分散させてパクリタキセルの制御放出製剤を提供することができ、この製剤はカプキソール(登録商標)処方物(パクリタキセルと組み合わされたアルブミン)の性質を通して、結果として、下記に論じるように、全身的毒性が低いばかりでなく脳組織に対する毒性も低い。カプキソールと、又はカプキソール(登録商標)に似たその他の配合された化学療法剤と、生物適合性高分子マトリックスとの組合せは、脳及び腹膜の中の充実性腫瘍(卵巣癌)を治療するための化学療法剤のコントロールされた局所送達に及びその他の充実性腫瘍への局所適用に有効である。これら組合せ処方はパクリタキセルの使用に限定されるわけではなく、抗感染薬、免疫抑制剤及びその他の化学療法剤などを含めて広く様々な薬理活性成分をもって利用できる。
再構成後のカプキソール(登録商標)の安定性
ガラスバイアルの中の凍結乾燥カプキソール(登録商標)を通常の滅菌生理食塩水で、1、5、10、及び15mg/mLの濃度になるように再構成し、そして室温及び再冷凍条件で貯蔵した。これら懸濁物はこれら条件下で少なくとも3日間は均質であることがわかった。幾つかの時点で行った粒子サイズ測定はサイズ分布に変化を示さなかった。これら条件下で沈殿は見られなかった。この安定性は予想外であり、そしてタキソール(Taxol)(登録商標)に関連した問題を克服する。タキソール(登録商標)は0.6〜1.2mg/mLの推奨濃度に再構成した後約24時間以内に沈殿する。
カプキソール(登録商標)の単位用量形態
カプキソール(登録商標)は適切なサイズのバイアルの中の凍結乾燥粉末として製造される。従って、本質的にアルブミンとパクリタキセルを含有する粉末を所期の量で得るために、所期の用量が適切な容器の中に充填され凍結乾燥されることができる。それから、かかる容器は使用時点で希釈剤中のパクリタキセルの均質懸濁物を得るために通常の滅菌生理食塩水又はその他の水性希釈剤によって適切な容積に再構成される。この再構成溶液は標準の静脈注入セットをもって注射又は注入どちらかによって患者に直接投与できる。
加えて、カプキソール(登録商標)は使用時に解凍されて簡単に患者に投与されるビン詰め又は袋詰めの溶液をそのまま使用するための冷凍として製造されてもよい。これは製造プロセスの中の凍結乾燥工程を回避する。
カプキソール(登録商標)とタキソール(登録商標)が等しい投与量のパクリタキセルでラットに投与されたとき、タキソール(登録商標)群についてはカプキソール(登録商標)群に比べてはるかに高い度合の骨髄抑制が生じるということは非常に驚くべきことである。このことは感染症および熱性エピソート(例えば、熱性好中球減少)のより低い発生率をもたらし得る。それはまた、現行では21日である治療周期を短縮させることができる。本発明に従って製造された薬理組成物の使用によって、この周期は2週間以下に短縮でき、それは癌患者にとってより有効な治療を可能にする。従って、本発明に従って製造された薬理組成物はタキソール(登録商標)よりも実質的に有利な立場を与えるであろう。
薬物の経口デリベリ
タキソール(登録商標)は経口ルートによる吸収が非常に悪い。カプキソール(登録商標)のような粒子状製剤はパクリタキセルのような薬物の摂取を大きく向上させるであろう。加えて、ミクロエマルジョン/蒸発プロセスを通して製造されたパクリタキセルの本発明の製剤は薬物の経口摂取に有効である。これら製剤と組み合わされた界面活性剤の使用は驚くべきことに、これら薬物の経口による生体内利用効率を向上させる。脂質、界面活性剤、酵素阻害剤、透過向上剤、イオン対合剤(ion pairing agent)、代謝抑制剤などの使用は驚くべきことに、本発明のパクリタキセル製剤の経口吸収を増加させることがわかった。イオン対合剤の例は限定されるものではないが、次のものを包含する:トリクロロアセテート、トリクロロアセテートサリチレート、ナフタレンスルホン酸、グリシン、ビス−N,N−ジブチルアミノエチレンカルボネート、n−アルキルスルホン酸塩、及びn−アルキル硫酸塩。膜透過向上剤の例は限定されるものではないが、次のものを包含する:カプリン酸ナトリウム、アシルグリセリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルズアシルカルニチン(poloxyethylene alkyl ethersacyl carnitines)、コール酸ナトリウム、タロウコール酸ナトリウム、タロウジヒドロフシジン酸ナトリウム、EDTA、サリチル酸ナトリウム、及びメトキシサリチル酸ナトリウム。本発明の製剤のために使用できる界面活性剤及び脂質の非限定的リストは本明細書中に既に記載されている。
カプキソール(登録商標)及びその他の本発明の製剤の投与形態
本発明の製剤は、静脈内注入、濃縮塊の静脈内注入(intravenous bolus)、腹腔内注射、動脈注射、門脈注射(intraportal injection)、肝塞栓術(hepatic embolization)、腫瘍内注射又は植込み(implantation)、尿道内注射又はイオン泳動、筋肉注射、皮下注射、鞘内注射、乾燥粉末又はネブライズド液体の吸入などによって投与できる。
血管形成性脈管構造を標的にするための
カプキソール(登録商標)の使用
血管形成は癌、リウマチ性関節炎及び網膜症のような疾病の進行における原因性及び/又は急性増悪性因子として関係があるとされている。本発明者らは驚くべきことには、カプキソール(登録商標)が動物病態モデルにおける腫瘍の治療ばかりでなくリウマチ性関節炎の酷さを好転又は減少させることができること見いだした。従って、カプキソール(登録商標)が抗血管形成活性を有することは可能性としてあり得る。カプキソール(登録商標)をより有効にするために、カプキソール(登録商標)に適切なペプチドを付着させることによって血管形成性脈管構造(angiogenic vasculature)を標的にすることは可能である。かかるペプチドの例は、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)である。同様の活性度を有するその他の多数のペプチドが、標的治療(targeted therapy)のために、カプキソール(登録商標)に又は本発明の方法によって製造されたその他の薬物に付着させられてもよい。ペプチド/カプキソール(登録商標)はそれを必要としている患者に通常の手段によって投与できる。
肝臓病の治療のためのカプキソール(登録商標)の使用
末期の肝細胞癌及びその他の肝臓癌はカプキソール(登録商標)を門脈内に投与することによって治療できる。肝臓への直接の塞栓術は肝臓に到達する量を高める。更に、疾病をより効率的に治療するのに、通常のタキソール(登録商標)よりはるかに高い投与量が利用できる。また、より大きな治療効率のためには、肝組織の中に局在するタンバク質又はペプチドのような適切なターゲッティング剤(targeting agent)がカプキソール(登録商標)と組み合わされてもよい。
実施例43
パクリタキセルの毒性/骨髄抑制の試験
ラットでの単一用量投与についての
タキソール(登録商標)とBMS製剤の比較
臨床前試験のまとめを下記に示す:
スケジュール: 1回、単一用量(single dose)静脈内注入(第1日目)
動物: スプレーグ−ドーリー(Sprague Dawley)ラット オス40、メス40、1群当たり性別毎に5ラット
体重: 300±50g
試験期間: 15日
治療群: BMS(1ベヒクル+3治療群)
カプキソール(登録商標)(1ベヒクル+3治療群)
投与量: BMS(0、3、6、及び9mg/kg)
カプキソール(登録商標)(0、6、9、及び12mg/kg)
投与濃度:0.6mg/mL(全ラット)
投与容量:BMS(15、5、10、15mL/kg)
カプキソール(登録商標)(20、10、15、及び20mL/kg)
注入速度:約0.75mL/時(全ラット)
投与経路:静脈内(I.V.)注入、尾部静脈
Clin.obs.: 1回/日
Clin.Path: 0日目(治療前)、第1日目、第3日目、第7日目、第11日目、第15日目。
NCI トックス ブランチ(NCI Tox Branch)のための標準リストを実施。
体重測定: −1日目、第1日目、第3日目、第8日目、及び第15日目。
(*ベヒクルは、パクリタキセルを添加しないこと以外は製造部門に記載の同一プロセスによって製造される)
骨髄抑制(血液学的毒性)の予備的試験
正式試験の開始に先立って、カプキソール(登録商標)群に3ラット及びBMS群に3ラットで予備的試験を行って結果を決定した。使用した投与量は5mg/kgであり、7mL/kgの投与容量をもってした。この投薬は濃縮塊の静脈内注入として、尾部静脈を通して与えられた。この試験の結果はグラフ(図3参照)にまとめられており、そこには、時間の関数として各製剤についてのWBCカウント数の変化率%(骨髄抑制の指標)が示されている。
データはカプキソール(登録商標)群に比べてBMS群における有意に低いWBCカウント数(平均(mean)+SD)を示しており、それはBMS(登録商標)では骨髄抑制度がより大きいことを表している(BMSでは最大WBC抑制が>70%;カプキソール(登録商標)では最大WBC抑制が<30%)。データの分析は、0日目、第13日目及び第14日目以外の全時点のデータについて2群間の統計的有意差(p<0.05)を示している。加えて、WBCの通常レベルはカプキソール(登録商標)受容群では6日以内に回復するが、BMS(登録商標)群では通常のWBCレベルの回復に14日を要する。このことはカプキソール(登録商標)では有意に低下した血液学的毒性であることを表している。同様の結果がヒトの臨界試験においても観察されるなら、このデータは治療周期(BMSでは現在3週間)を有意に短縮(カプキソール(登録商標)を使用すると、約2週間に、又は1週間以下にさえ)できることを示唆している。
抗腫瘍効力の予備的試験
上記試験の開始に先立って、カプキソール(登録商標)による予備的試験を行ってターゲット投与量範囲及び効力を測定した。マウス(n=10)にMX−1乳腺腫瘍を皮下に接種し、そして腫瘍が約150〜300mgの大きさになったときに治療を始めた。これは第12日目に起こり、そして治療は最初の接種から第13日目に開始した。カプキソール(登録商標)はパクリタキセルのナノ粒子のコロイド溶液を得るために生理食塩水の中で再構成された。腫瘍をもつマウス(n=5)は、連続5日間毎日、濃縮塊の尾部静脈内注入によって与えられる、用量20mg/kgの再構成カプキソール(登録商標)で治療された(VIV−1と呼ぶ)。腫瘍をもつ対照群(n=5)は同じスケジュールで生理食塩水だけを受理した。腫瘍の大きさを時間の関数として監視した。対照群は腫瘍重量が平均で4500mgを越すほどのすごい増加を示し、そしてこの群の動物は28日目と29日目の間に全て犠牲にされた。もう一方の治療群は顕著な効能を示し、そして全部の動物は25日目までには測定できる腫瘍がなくなった。この群の動物は全て第29日目に犠牲にされたが、その時点では再発の証拠及び腫瘍の証拠を示さなかった。結果は図4に示されている。
この試験はカプキソール(登録商標)については顕著な抗腫瘍活性を示した。従って、パクリタキセルの抗腫瘍作用はカプキソール(登録商標)製剤の中に保たれる。この試験はパクリタキセルのナノ粒子の静脈内投与が可溶性形態での薬物の投与と同じように有効であり得ることを表す。従って、カプキソール(登録商標)は認可され市販されているクレマフォア(cremaphor)含有BMS製剤に見られる毒性効果なしで効能と有力な抗腫瘍活性を示す。
動物病態モデルのリウマチ性関節炎の
パクリタキセルナノ粒子による治療
ルーベイン(Louvain)ラットでのコラーゲン誘発関節炎モデルを使用して関節炎に対するパクリタキセルナノ粒子の治療効果を試験した。実験動物の足サイズを監視して関節炎の深刻度を評価した。
関節炎の完全な発現後(通常、コラーゲン注入から〜9〜10日後)に、実験動物を異なる群に分け、パクリタキセルナノ粒子1mg/kg q.o.d.又はパクリタキセルナノ粒子0.5mg/kg+プレドニゾン0.2mg/kg q.o.d.(組合せ治療)のどちらかを腹腔内に6回投薬し、次いで週1回の投薬を3週間行った。処置の開始時(0日)と薬物を注入する度毎に足サイズを測定した。一つの群は対照として通常の生理食塩水だけを受理した。実験の終了までに、パクリタキセルナノ粒子を受理している群は足サイズの42%減少を達成し、組合せ治療の群は足サイズの33%減少を示したのに、対照群は足サイズの約20%増加を有していた。関節炎が誘発される前の元の足サイズは50%であった。結果は図2に示されている。
要するに、パクリタキセルを含有するナノ粒子は関節炎に対する治療効果を証明した。パクリタキセル及びステロイドの両方の長期使用の副作用を回避するためには、組合せ治療を選択して各薬物の投与量を半分ですませて類似の効果を得る方が多分よいであろう。
動脈再発狭窄症に対するカプキソール(登録商標)の効果
異常な血管平滑筋増殖(vascular smooth muscle proliferation)(VSMP)は、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、及び殆どの脈管内処置のような心臓血管疾患に関連している。異常VSMPは経皮経管的冠状血管形成(percutaneous trasluminal coronary angioplasty)(PTCA)の普遍合併症である。PTCAの後のVSMPの結果生じる慢性再発狭窄症の発生率は3〜6カ月以内に40〜50%の高率であると報告されている。
PTCAに関連した血管再閉塞の高い発生率は再発狭窄症のインビボ動物病態モデルの開発及びそれを防ぐための薬物の探究につながっている。下記の試験は動脈の血管内膜損傷の後の再発狭窄症の抑制にカプキソール(登録商標)を使用することを説明している。
パクリタキセル 5mg(w/100mgヒトアルブミン)/kg
/週、IV
第2群:低投与量のカプキソール(登録商標)治療
パクリタキセル 1mg(w/20mgヒトアルブミン)/kg
/週、IV
第3群:薬剤ベヒクル対照
ヒトアルブミン 100mg/kg/週、IV
頸動脈生検サンプルをホルマリンの中に保存し、そしてパラフィンブロックから横断面(8μm)を切り取り、ヘマトキシリンとエオシンで染色する。血管層(動脈内膜、中膜、及び外膜)の断面の面積を定量化する。
対照群では傷付けられた頸動脈は内膜平滑筋細胞の顕著な蓄積および基礎膜のVSMC侵入を示した。頸動脈の壁の全体の厚さは2倍になっている。治療群は対照に比べて内膜の壁の肥厚において統計上の有意な減少を示した。
ナノ粒子のインビボターゲッティング
ナノ粒子のタンパク質コーティングの中に、タンパク質、抗体、酵素、ペプチド、オリゴヌクレオチド、糖類、多糖類、等のような特定のターゲッティング部分(targeting moieties)を組み入れることによって、体の特定部位を標的にすることが可能である。このターゲッティング部分は治療又は診断の目的のために利用されることができる。
高分子シェルの抗体ターゲッティング
本発明の或る態様の高分子シェルの本性はモノクロナール又はポリクロナール抗体を高分子シェルに付着させること又は抗体を高分子シェルの中に組み入れることを許す。抗体は高分子ミクロカプセルシェルが形成されるときに高分子シェルの中に組み入れられることができる、又は抗体は高分子シェルがつくられたあとにその高分子シェルに付着させられることができる。標準的なタンパク質固定技術はこの目的のために使用できる。例えば、アルブミンのようなタンパク質から製造されたタンパク質ミクロカプセルでは、アルブミンリジン残基の上の大きな数のアミノ基は適切に修飾された抗体の付着に利用可能である。例として、抗腫瘍薬は高分子シェルが形成されるときにその中に腫瘍に対する抗体を組み入れることによって腫瘍に送達されることができる、又は腫瘍に対する抗体は高分子シェルがつくられた後にその高分子シェルに付着させられることができる。別の例としては、遺伝子産物を特定細胞(例えば、肝細胞、又は骨髄の中の特定の幹細胞)に送達することは、その標的細胞の上の受容体に対する抗体を高分子シェルが形成されるときにその高分子シェルの中に組み入れることによって可能である、又は標的細胞上の受容体に対する抗体は高分子シェルがつくられた後にその高分子シェルに付着させられることができる。加えて、核受容体に対するモノクロナール抗体はカプセル化製品を特定細胞タイプの核に対してターゲットとするために使用できる。
移植臓器に対する免疫抑制剤のターゲッティング
かかる薬剤を含有する高分子シェルの静脈内送達を使用
免疫抑制剤は臓器移植後に拒絶エピソードを防ぐために広く使用されている。特に、シクロスポリン、強い免疫抑制剤、は、動物における皮膚、心臓、腎臓、脾臓、骨髄、小腸、及び肺を含めて同種異系の移植体の生存を延ばす。シクロスポリンは若干、体液の免疫を抑制すること、及び様々な臓器については多数の動物種における細胞媒介反応、例えば、同種異系移植の拒絶反応、遅延型過敏症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、フロインドアジュバント(Freund's adjuvant)関節炎、及び移植片対宿主病(graft versus host disease)、を更に大きな度合いで抑制することが証明されている。シクロスポリンを使用して、ヒトにおける腎臓、肝臓、及び心臓の同種異系移植がうまく実施されている。
シクロスポリンは現在のところ、アルコール中の、及びコーン油、ポリオキシエチル化グリセリド、等のような油中の、シクロスポリンの溶液を含有しているカプセルとして、又はオリーブ油、ポリオキシエチル化グリセリド、等の中の溶液として、経口形態で送達される。それは静脈注射によっても投与され、その場合、それはエタノール(約30%)とクレマフォア(cremaphor)(ポリオキシエチル化ヒマシ油)の溶液中に溶解され、それは注射に先立って通常の生理食塩水または5%デキストロースの中に1:20乃至1:100に希釈されなければならない。静脈内(i.v.)注入に比べると、経口溶液の絶対生体内利用効率は約30%である(サンドズ ファーマコイティカル コーポレーション(Sandoz Pharmaceutical Corporation)、パブリケーション SDI−Z10(A4)、1990)。一般に、シクロスポリンのi.v.デリベリは現在実施されているタキソール(登録商標)のi.v.デリベリと同じような問題、即ち、i.v.製剤のために使用されたクレマフォア即ちデリベリベヒクルが原因していると考えられる過敏性及びアレルギー性の反応、に煩わされる。加えて、ここに記載されているようにカプセル化された薬物(例えは、シクロスポリン)の静脈内デリベリは投薬直後の危険な最大血中濃度を回避する。例えば、現在入手できるシクロスポリン製剤と、上記のカプセル化された形態のシクロスポリンとの比較は、注入直後のシクロスポリンの最大血中濃度の減少が5倍にもなることを示していた。
抗体ターゲッティングのためのカプキソール(登録商標)の使用
様々な腫瘍または組織に対するナノクロナール抗体は本発明の方法によって製造されたカプキソール(登録商標)又はその他の薬剤をして疾患部位をターゲットにすることを可能にさせるためにカプキソール(登録商標)に付着されてもよい。例えば、カプキソール(登録商標)に付着されて腹腔内投与された、卵巣癌に対する抗体は卵巣癌の患者にとって大いに有益であろう。
治療薬の静脈内投与
治療薬たとえば薬物や造影剤などの静脈内投与は治療薬に少なくとも一度は肝臓の中を通る素因を与える。その治療薬が肝臓を通して濾されるとき、その治療薬の有意部分が肝臓によって吸収され接収される、従って、全身的分布のために利用可能でない。その上、肝臓に吸収されると、それは代謝されるようであり、そして代謝物はしばしば一般的な全身的毒性を有する。薬物又はその他の治療薬を本発明によるコーティング(例えば、アルブミンのようなタンパク質を使用する)の中に包み込むことによって、静脈内投与されたときの肝臓による接収は軽減される。たとえば、アルブミンは肝臓を通過して一般的にはその患者の全身に分布されるようになることが知られている。従って、肝臓によるアルブミンの接収は、毒性化合物または血流からの除去をもたらす過程を開始させる肝性受容体(hepatic receptors)(又はその他のメカニズム)を有する薬物と同程度には起こらない。治療薬を生体適合性高分子のコーティング(例えば、ヒトアルブミンコーティング)で保護することによって、薬物は肝臓を飛び越え(bypass)、そして一般的に全ての臓器システムの中に分布される。本発明の一つの局面によれば、薬物をヒト肝臓アルブミン(本質的には、生理学的成分)の中に包み込むことを含む新規な肝臓バイパス方法が提供される。この方法では、薬物が全身的治療のためにより多く利用可能になる。薬物の増加した利用効率に加えて、肝細胞の薬物分解の代謝副産物の産出が減少する。肝臓バイパスの増加と薬物代謝の副産物の減少の両方が全体の薬効を相乗的に改良する。この改良された効力はヒトアルブミンの中にカプセル化される全ての薬物及び物質に及ぶ。
薬剤の骨髄抑制的(血液学的毒性)効果の低減
及び全般的毒性
幾つかの化学療法剤は、それらの骨髄抑制効果のために投与量制限的な毒性を有している。タキソール(Taxol:登録商標)(パクリタキセル[paclitaxel])は、そのような薬剤の古典的な例である。その一般的に認可されている財形であるクレマホア(cremaphor)/エタノールを以て投与された場合に、タキソール(登録商標)は、薬剤の反復投与を制限し、患者の血球数が正常に戻ることを可能とするために少なくとも3週間の間患者の再処置を妨げるような骨髄抑制効果を生じる。本発明のある側面の薬剤担体、即ちヒトアルブミンの非毒性的生物学的適合性によって、骨髄抑制の毒性副作用は、大きく低減されるであろうことが仮定された。
これらの結果は、本発明の剤形を以て薬剤を投与することにより短期的骨髄抑制が大きく低減されることを示している。
全般的毒性の他の指標は、動物の体重である。ラットの体重が、パクリタキセルの投与に引き続いて監視された。5mg/kgの投与量において、タキソール(登録商標)は、投与後3日までに10.4%の体重低下をもたらしたが、一方で本発明の剤形におけるパクリタキセルの同じ投与量は、わずかに3.9%の体重低減を生じ、本発明の剤形の大きく低減された毒性を示した。
ナノ粒子剤形のボーラス用量投与
抗ガン剤パクリタキセルは、そのクレマホア/エタノールを用いた商業的BMS剤形においては、静脈内ボーラスとして投与できない。これは、重篤な過敏症反応をもたらし、薬剤を投与される患者がステロイド剤、抗ヒスタミン剤等により予め医薬的治療を受けていることを要求するベヒクルの広範囲な毒性による。タキソール(登録商標)剤形は、1時間〜24時間まで継続する静脈内輸液として投与される。対照的に、本発明の剤形は非毒性担体の使用により、現在臨床的に使用されているタキソール(登録商標)に見られる毒性問題を伴うことなく、静脈ボーラスとして(即ち、1時間以内で)患者に容易に投与されうる。
患者に対するパクリタキセルの有効投与量は、患者の体重又は体表面積に依存して、典型的には200−500mgの間にある。タキソール(登録商標)は、0.6mg/mlの最終投与濃度を以て投与されなければならず、大きい輸液体積(典型的には約300−1000mlの範囲)を要求する。対照的に、本発明の剤形はこれらの制限を持たず、所望の濃度を以て投与されうる。このことは、治療医が数分間程度の短時間で投与されうる急速な静脈ボーラスにより患者を治療することを可能とする。例えば、本発明剤形を20mg/mlの投与濃度に再構成した場合に、200−500mgの全投与量についての輸液体積は、それぞれわずかに10−25mlである。このことは、臨床的に大きな優位点である。
ナノ粒子剤形によるパクリタキセルの
タキソールに対比しての毒性の低減
抗ガン剤パクリタキセルは、その商業的剤形(即ち、タキソール(登録商標))においては、重篤な過敏症反応をもたらし、薬剤を投与される患者がステロイド剤、抗ヒスタミン剤等により予め医薬的治療を受けていることを要求する広範囲な毒性を有することがよく知られている。BMS製剤の毒性が、本発明のナノ粒子剤形と比較された。
而して剤形は、異なった投与濃度を以てC57BLマウスの尾部静脈を通して静脈内的に注射され、注射後のマウスの全般的観察により毒性効果を監視した。
タキソール(登録商標)については、30mg/kgの投与量は、静脈内投与の5分以内に一様に致死的であった。同じ投与量について、本発明によるナノ粒子剤形は、明らかな毒性を示さなかった。103mg/kgの投与量のナノ粒子剤形は、マウス体重のいくらかの低下を示したが、この高い投与量においてさえも致死的ではなかった。約1000mg/kg、800mg/kg及び550mg/kgの投与量は、全て致死的であったが、致死までの時間が数時間〜24時間の範囲で異なった。従って、発明剤形の致死的投与量は、103mg/kgより大きく、550mg/kg未満であった。
発明方法により製造されるタキソール(登録商標)
及び単一静脈内投与後のタキソールについての
マウスにおけるLD 50 の測定
カプキソール(商標)、タキソール(登録商標)及びそれらの担体ベヒクルのLD50を、単一静脈内投与に続いて比較した。併せて48頭のCD1マウスが使用された。カプキソール(商標)については30、103、367、548、及び822mg/kgのパクリタキセル投与量が試験され、タキソール(登録商標)については、4、6、9、13.4、及び20.1mg/kgのパクリタキセル投与量が試験された。ヒトアルブミンはヒトに対して毒性であるとは考えられないことから、カプキソール(商標)のためのベヒクルであるヒトアルブミンは、4.94g/kg(548mg/kgのカプキソール(商標)投与量に対応する)においてのみ試験された。タキソール(登録商標)ベヒクル(クレマホアEL(登録商標))について試験された投与量は、1.5、1.9、2.8、及び3.4ml/kgであり、これはパクリタキセルの9、11.3、16.6、及び20.1mg/kgの投与量にそれぞれ対応する。3〜4頭のマウスが、各濃度の投与を受けた。結果は、カプキソール(商標)において投与されたパクリタキセルが、タキソール(登録商標)又は単独で投与されたタキソール(登録商標)ベヒクルよりも低毒性であることを示した。LD50及びLD10は、カプキソール(商標)について447.4及び371.5mg/kgのタキソール(登録商標)、タキソール中のパクリタキセルの7.53及び5.13mg/kg、並びにタキソールベヒクルの1325及び794mg/kg(パクリタキセル、15.06mg/kg及び9.06mg/kgの投与量に相当)であった。この研究において、カプキソール(商標)のLD50は、タキソール(登録商標)より59倍大きく、またタキソール(登録商標)ベヒクル単独より29倍大きかった。カプキソール(商標)中のパクリタキセルのLD10は、タキソール(登録商標)中のパクリタキセルより72倍大きかった。この研究における全てのデータの検討は、タキソール(登録商標)ベヒクルがタキソール(登録商標)の毒性の多くを負っていることを示唆している。タキソール(登録商標)及びタキソール(登録商標)ベヒクルの投与を受けたマウスが、投与後短時間で明るいピンク色の皮膚の発色により示される重篤な過敏症の古典的徴候を示したことが見られた。カプキソール(商標)及びカプキソール(商標)ベヒクル群では、このような反応は見られなかった。結果は表2に表される。
驚いたことに、ベヒクルであるクレモホア/エタノール単独で、重篤な過敏症反応を引き起こし、かつマウスの幾つかの投与群で死亡を招いていることが見出された。タキソール(登録商標)ベヒクル単独についてのLD50データは、それがカプキソール(商標)よりも相当に毒性であり、タキソール(登録商標)の毒性に顕著に寄与していることを示している。文献においては、過敏症の原因が不明確であったが、これらのデータに基づけば我々はHRSがタキソール(登録商標)ベヒクルのせいであるものと信じることができる。
複数回静脈投与後のタキソール(登
録商標)のマウスにおけるLD 50 の決定
カプキソール(商標)及びタキソール(登録商標)及びそれらの担体のLD50を、複数回静脈投与後に比較した。合わせて32頭のCD1マウスを使用した。30、69、及び103mg/kgのパクリタキセル投与量を持ったカプキソール(商標)を、5日間続けて投与した。4、6、9、13.4及び20.1mg/kgのパクリタキセル投与量を持ったタキソール(商標)を5日間続けて投与した。4頭のマウスが、それぞれの濃度の投与を受けた。結果は表3に示される。
カプキソール(商標)及びタキソール(登録商標)
の2種類の剤形の毒性及び有効性
MX−1ヒト乳癌断片の移植を受けた雌無胸腺NCr−nuマウスにおいて、カプキソール(商標)、タキソール(登録商標)及びカプキソール(商標)ベヒクルの有効性を決定するための研究を行った。それぞれ5頭のマウスの群に、13.4、20、30、45mg/kg/日の投与量を以て5日間、カプキソール(商標)剤形VR−3及びVR−4の静脈注射を行った。5頭のマウスの群にそれぞれ、13.4、20及び30mg/kg/日の投与量を以て5日間、タキソール(登録商標)の静脈注射を行った。10頭のマウスの対照群は、カプキソール(商標)ベヒクル対照(ヒトアルブミン、600mg/kg/日)の静脈注射により処置された。評価パラメータは、完全な腫瘍退行の数、完全退行の平均継続期間、腫瘍不在生存個体、及び腫瘍再発であった。
TFS=腫瘍不在生存個体
TR=腫瘍再発;
DCR=完全退行の日数
ラットにおける単一静脈投与後の 3 H−タキソール(登録
商標)及びカプキソール(商標)の血液動態及び組織分布
カプキソール(商標)及びタキソール(登録商標)の注射濃度に製剤化された3H−パクリタキセルの薬理動態及び組織分布を比較するために2種の研究を行った。14頭の雄ラットに、10mg/kgの3H−タキソール(登録商標)を、また10頭のラットに4.9mg/kgを静脈内的に注射した。上記研究において10頭の雄ラットに、5.1mg/kgの3H−カプキソール(商標)を静脈内的に注射した。
全放射能及びパクリタキセルの両者の濃度は、3H−タキソール(登録商標)又は3H−カプキソール(商標)の何れかの5mg/kg IVボーラス投与の後に、ラットの血中で二期的に減少する。しかしながら、全放射能及びパクリタキセルの両者の濃度は、同様な3H−タキソール(登録商標)投与後より、3H−カプキソール(商標)投与後において顕著に低い。この低い濃度は、血中においてより迅速に分配される。
カプキソール(商標)に製剤化された3H−パクリタキセルは、注射濃度についてはタキソール(登録商標)に製剤化された3H−パクリタキセルと同様な薬理動態プロフィールを示すが、組織/血液 ppm 比及び代謝速度は有意に異なる。投与後2分間の血液試料中の全放射能が、カプキソール(商標)処置動物についてタキソール(登録商標)処置動物よりも有意に低濃度であることは、3H−カプキソール(商標)が、より迅速に血中に分布することを示している。しかしながら、代謝速度は、3H−カプキソール(商標)については投与後24時間において44%の血中活性が残ることに対して、3H−タキソール(登録商標)については28%であって、有意に遅いものと思われる。
前立腺組織における濃度は、前立腺癌の処置において特に興味あるものである。この驚くべき予知不能な結果は、前立腺癌治療に対して密接に関連する。下記の表7は、タキソール(登録商標)に対比されるカプキソール(商標)についての前立腺におけるパクリタキセルの増大された蓄積の個々のラット(各群に10頭)についてのデータを示す。前立腺内への局在化の根拠は、剤形の粒子の大きさ(20−400nm)、又は特異的な膜レセプタ(gp60、gp18、gp13等)を介しての前立腺組織への局在化を招きうる剤形中の蛋白アルブミンの存在の結果であり得る。アルブミン以外の他の生物学的に適合性の生物分解可能な高分子は、前立腺等の特定の組織に対する特異性を示し得て、上記のような性質の結果としてこれらの組織中のパクリタキセルの高い局所濃度を生じることもあり得る。このような生物学的適合性物質も、この発明の範囲内と考えられる。前立腺内のパクリタキセルの高い局所濃度を達成する組成物の好ましい実施態様は、20−400nmの範囲内の粒子サイズを持ったパクリタキセルとアルブミンを含み、クレモホアを含まない剤形である。この実施態様は、膵臓、腎臓、肺、心臓、骨及び胸腺において、同等な濃度のタキソール(登録商標)と対比してパクリタキセルのより高濃度を生じることも例示された。
このカプキソール(商標)剤形における前立腺へのパクリタキセルの予期されない局在化は、その器官に影響する他の疾患状態の処置のための前立腺に対する他の薬理学的活性薬剤の分配、例えば前立腺炎(前立腺の炎症及び感染)の処置のための同様な剤形における抗生物質の分配に利用されてよく、良性前立腺肥大の処置に有効な治療剤は、高い局所的分配を達成するために同様な様式で製剤化されてよい。同様に、カプキソール(商標)が心臓に対して高い局所濃度を与えるという驚くべき知見は、冠状血管におけるアテローム性動脈硬化症に加えて再狭窄の処置に利用可能である。パクリタキセルは、再狭窄及びアテローム性動脈硬化の防止に治療的に有効であることが示されており、従って、カプキソール(商標)は、これらの症状についてパクリタキセルの理想的な形態である。更に、高分子化アルブミンは、おそらくgp60、gp18及びgp13レセプタを介して炎症内皮血管に優先的に結合することが示されている。
ラットにおけるカプキソール(商標)の複数回静脈内
投与後のパクリタキセルの血液動態及び組織分布
3H−カプキソール(商標)を使用する研究は、カプキソール(商標)中のパクリタキセルの9.1mg/kg、26.4mg/kg、116.7mg/kg、及び148.1mg/kgの単一のボーラス投与により処置された付加的な4つのラット群により補充された。血液を尾部静脈から採取し、AUC0−24を計算した。24時間の時点で血液試料を採取し、抽出し、該抽出物をHPLCに注入して血液中の親化合物濃度を測定した。
単一静脈内投与後のカプキソール(商標)及びタキソール
(登録商標)のラットにおける毒性の測定
研究の目的は、雄及び雌ラットにおける単一IV投与後のカプキソール(商標)の毒性の測定である。カプキソール(商標)を、6頭の雄及び6頭の雌ラットに、5、9、30、90及び120mg/kgの投与量を以て投与した。各投与量群の動物の半分を、8日目に安楽死させ、剖検した。残る動物は31日目に剖検された。カプキソール(商標)治療動物の結果は、通常食塩水、ベヒクル対照群の結果、及び5、9及び30mg/kgタキソール(登録商標)により処置された動物の結果と比較された。
動物を、投与直後、投与後1時間及び4時間、並びにその後は1日に1回検査した。安楽死に先行して、血液学的及び血清測定のために各動物から血液を採取した。
30日の観察期間に13頭の死亡が起こった。30mg/kgのパクリタキセルの投与量でタキソール(登録商標)による処置を行った12頭全ての動物は、4日以内に死亡した。わずか1頭のみのカプキソール(商標)により処置した動物が死亡した。90mg/kgのパクリタキセルの投与を受けたカプキソール(商標)処置動物は、15日目に死亡したことが見出された。カプキソール(商標)により処置された他の動物は、90mg/kg及び120mg/kg投与において全く死亡せず、従って死亡は処置関連とは考えられない。
カプキソール(商標)処置動物においては、何らの異常も報告されなかった。8日及び31日の総体剖検の結果は、正常であった。カプキソール(商標)にて処置された動物においては雄の生殖器官における有意な投与量関連の変化が見られた。しばしば多病巣介在性リンパ球浸潤を伴う精巣上体管上皮細胞の退行及び空胞化が観察された。カプキソール(商標)投与量増大に伴って、増大する輸精管の深刻な萎縮が見られた。病理学者の意見では、9、30、90及び120mg/kgのカプキソール(商標)により処置された動物の雄生殖器官において観察される有意な病変が存在した。これらの変化は、精巣の拡散的退行及び壊死に関連した。これらの変化は、より高いカプキソール(商標)の投与を受けた動物において最も流行していた。未処置の対照動物、ベヒクル対照動物又はタキソール(登録商標)処置動物においては、何らの変化も見られなかった。
大脳皮質壊死が、中間投与量のタキソール(登録商標)処置動物において見られた。これは、より高投与量のタキソール(登録商標)により処置された動物の死亡を説明するであろう。カプキソール(商標)により処置された動物において大脳病巣は見られなかった。
要約すれば、カプキソール(商標)は、タキソール(登録商標)よりもかなり低毒性である。タキソール(登録商標)動物は、いずれも9mg/kgより以上の投与量で生存しなかった。90mg/kgのカプキソール(商標)における偶発的な死亡をのぞいては、カプキソール(商標)を投与された全ての動物は120mg/kgを含みそこまでの投与量において生存した。雄生殖器官及び雄の体重抑制に対しては、カプキソール(商標)の高投与量−関連効果があった。雌ラットには、120mg/kgを含みそこまでの投与量において、カプキソール(商標)の投与からは何らの毒性効果も示されなかった。これらの高投与量は、ボーラス注射として投与され、ヒトにおける30−700mg/m2投与と同等であることを表す。
静脈内投与後のシクロスポリンナノ粒子(カプソリン
(Capsorin)IV)についての薬理動態(PK)データ
(現在サンドにより販売されるサンディミュン
(Sandimmune)との比較)
前述のように(例13及び14)調製されたシクロスポリンナノ粒子(カプソリンIV)を、食塩水中に再構成し、3頭のスプラグ・ドウリー(Sprague Dawley)ラットの最初の群に静脈内ボーラスにより投与した。3頭のラットの第2の群は、食塩水中への希釈後にクレマホア/エタノールを含むサンディミュンIVが与えられた。各群は2.5mg/kgシクロスポリンの同じ投与量を受けた。血液試料を、0、5、15,30(分)及び1、2、4、8、24、36及び48(時間)に採取した。血液中のシクロスポリン濃度はHPLCによりアッセイされ、典型的なPKパラメタが決定された。PK曲線は、以下のような典型的な経時的崩壊を示した。
経時的崩壊
AUC,mg−時/ml Cmax,ng/ml
カプソリンIV 12.228 2.853
サンディミュンIV 7.791 2.606
加えて、サンディミュンIV剤形の毒性のために、その群の3頭の内の2頭のラットは投与から4時間後には死亡した。而して、本発明によるナノ粒子剤形(カプソリンIV)は、商業的に入手可能な剤形(サンディミュンIV)に比べてより大きいAUCを示し、かつ毒性を示さない。
経口投与後のシクロスポリンナノ粒子(カプソリン経口)
についての薬理動態(PK)データ(現在サンドにより販
売されるネオーラル(Neoral)との比較)
前述のように調製されたシクロスポリンのナノドロップレットを、オレンジジュースにて、3頭のスプラグ・ドウリーラットの最初の群に経口食により投与した。3頭のラットの第2の群は、乳化剤を含む商業的に入手可能なマイクロエマルジョン剤形であるネオーラルを、オレンジジュース中に希釈した後にやはり経口食により投与した。各群は12mg/kgシクロスポリンの同じ投与量を、動態席のオレンジジュースにて受けた。血液試料を、0、5、15,30(分)及び1、2、4、8、24、36及び48(時間)に採取した。血液中のシクロスポリン濃度はHPLCによりアッセイされ、典型的なPKパラメタが決定された。PK曲線は、以下のような典型的な経時的崩壊を示した。
経時的崩壊
AUC,mg−時/ml Cmax,ng/ml
カプソリンIV 3.195 887
サンディミュンIV 3.213 690
而して、本発明によるナノドロップレット剤形(カプソリン経口)は、商業的に入手可能な剤形(ネオーラル)に近似したPK挙動を示す。
カプキソール(商標)を用いた臨床的調査:
目標及び優位点
第I/II相の治験の為の初期投与量を選択するための理論的根拠は、タキソール(登録商標)に比べてのカプキソール(商標)の劇的に低い前臨床的毒性データに基づくであろう。上記の前臨床データは、第I/II相試験の為のカプキソール(商標)の初期投与濃度が、タキソール(登録商標)中のパクリタキセルについての確立されたMTD(最大許容投与量)を使用するであろうことを示している。現在の前臨床データに基づけば、この時点において販売許可のための臨床的目標は、パクリタキセル投与に先行する前処置の必要性を無くすること;カプキソール(商標)についてのタキソール(登録商標)と同等の投与量を決定する、即ち、同等な抗腫瘍応答が得られる投与量を決定すること;及びパクリタキセル投与のための連続的静脈内投与(3〜24時間)の必要性を無くし、より短時間での投与(<1時間、又はボーラス)に置き換えることにあるものと予想される。
パクリタキセルのためのカプキソール(商標)剤形には多くの可能性ある優位点がある。カプキソール(商標)は、パクリタキセル及びヒト血清アルブミンのみを含有する凍結乾燥粉末である。凍結乾燥粉末の再構成により形成されるコロイド状溶液の性質によって、クレマホア(パクリタキセルのBMS剤形中)又はポリソルベート80(ドセラキセル(docetaxel)のローヌプ−ラン剤形中)等の毒性乳化剤、及び薬剤の可溶化の為のエタノール等の溶媒を必要としない。毒性の乳化剤の除去は、タキソール(登録商標)のような製品から起こることが知られている重篤な過敏症及びアナフィラキシー反応の発生を低減するであろう。
加えて、ステロイド類及び抗ヒスタミン類による前処置も、薬剤の投与に先行して予期されない。
骨髄抑制の低減(タキソール(登録商標)に比較して)が、処置周期の期間(現在は3週間)を短縮し、治療結果の改善が期待される。
カプキソール(商標)は、タキソール(登録商標)に比べてかなり高濃度にて投与され得、かなり小体積の輸液、及び多分に静脈内ボーラスとしての投与を許容する。
タキソール(登録商標)について認識された問題点は、装着カテーテル内でのパクリタキセルの沈殿である。このことは、不安定で不十分な制御の投与を生じる。新規な剤形、カプキソール(商標)のコロイド状溶液の本質的な安定性故に、沈殿の問題は軽減される。
文献は、低い100ナノメーター径の範囲の粒子は、腫瘍部位における浸透性血管を通して腫瘍に優先的に分配されることを示唆している。カプキソール(商標)剤形中のパクリタキセルのコロイド粒子は、従って優先的標的効果を示し、BMS剤形において投与されるパクリタキセルの副作用を大きく低減することが期待される。
カプキソール(商標)の臨床試験計画の概要
薬効:転移性乳癌
計画:第I/II相の治験の為の初期投与量を選択するための理論的根拠は、BMS製剤に比べてのカプキソール(商標)の有意に低い前臨床的毒性データ(マウスにおける単一投与LD10データ)に基づくであろう。マウスにおける単一投与LD10は、398.1mg/kgと測定される。この投与量の表面積ベースへの変換(mg/kg値の3倍)は、1194.3又は約1200mg/m2の評価を与える。ヒトに対するこの値の10分の1の控えめな出発投与量は、120mg/m2の投与量を与える。しかしながら、パクリタキセルは175mg/m2の投与量において安全であることが既に十分に確立しており、またラットにおいて低い骨髄抑制を示すカプキソール(商標)のパイロット試験に基づけば、175mg/m2の投与量は、カプキソール(商標)剤形について安全であり得る。カプキソール(商標)溶液は、約15−30分間、又は可能であればそれ以内で分配されるであろう。
カプキソール(商標)の臨床開発計画の概要:
連合I/II相投与量判定試験/有効性限度試験
患者/目標:標準的治療に抵抗性の進行性胸部転移疾患を有する患者。この試験の到達点は、転移性乳癌を持った患者において単一薬剤としてのカプキソール(商標)に対する応答率を確立することであろう。
投与−第I相要素:治験の第I相要素において使用されるべき初期投与量は、パクリタキセルについての既知の最大許容投与量(MTD)(135mg/m2)であろう。引き続く投与量は、MTDに達するまで、25%の段階を以て拡大されるであろう。初期カプキソール(商標)投与濃度のそれぞれにおいて、3人の患者がおり、MTDにおいて6人の患者まで拡大される。次の投与濃度に移行する能力は、不利な事象のパターンによるであろう。即ち、試験は、6人中2人以上の患者が特定の投与濃度にて、3級の非−骨髄抑制的毒性又は4級の骨髄抑制毒性(WHO毒性スケールの基づく)を示した場合に中断されるであろう。カプキソール(商標)の投与量は、試験が中断された時点の投与量の直前における投与量として指定されるであろう。1日に5回又は24時間輸液等の別の薬剤投与計画も、必要に応じて初期の単一投与量ボーラス計画に基づいて検討されうる。
薬理動態:選択された患者について、完全薬理動態試験が、適切に計画された時点での血清採取を使用して行われるであろう。t1/2(α及びβ相)、AUC、Cmax、排除及び分配体積等のパラメータが決定されるであろう。
患者−第II相要素:MTDが決定されたならば、元のパクリタキセル治験において使用された患者と同様な乳癌患者が第II相要素の為に選択されるであろう。人数は、95%の信頼性での許容される精度を以て腫瘍応答を確立するための要求に基づくであろう。而して、試験は、信頼性差がカプキソール(商標)に対して期待される応答率を包含することを示すことにより、標準的パクリタキセルとの同等性を確立するとの目標をもって、片腕であり得る。使用される患者試料の大きさは、第I/II相試験の第II相要素について一般的な30人の患者であろう。
測定:主要な結果は、登録された患者についての腫瘍応答(CR/PR)であろう。加えて、応答時間、応答の持続及び生存期間が監視されるであろう。治療の安全性は、不利な事象の割合及び標準研究室パラメータの変更からも評価されるであろう。
Claims (24)
- タンパク質被膜を有するタキサンを含むナノ粒子を含むタキサンの製剤であって、該ナノ粒子は、0.22ミクロンフィルターで殺菌ろ過できる200ナノメーター以下の平均直径を有し、該製剤中におけるタキサンの濃度は、少なくとも2.0mg/mlであってかつ5.0mg/ml未満であり、該製剤はクレマホアを含まない、製剤。
- タキサンを含むナノ粒子を含むタキサンの製剤であって、該ナノ粒子は、0.22ミクロンフィルターで殺菌ろ過できる200ナノメーター以下の平均直径を有し、該製剤中のタキサンの量は、対象に対して少なくとも135mg/m2のタキサンの投与量を提供するに十分な量であり、製剤は実質的にクレマホアを含まない、製剤。
- 2時間以下の投与時間にわたって少なくとも175mg/m2の投与量で全身的に投与するための製剤である、請求項2に記載の製剤。
- 癌の治療に使用するための、請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
- 癌が乳癌である、請求項1から4のいずれかに記載の製剤
- 乳癌が転移性乳癌である、請求項5に記載の製剤
- 再発狭窄症を治療するための医薬を製造するためのタキサンの製剤であって、クレモホアの無い製剤中にタキサンが存在する、製剤。
- 網膜症を治療するための医薬を製造するためのタキサンの製剤であって、クレモホアの無い製剤中にタキサンが存在する、製剤。
- 癌を治療するための医薬を製造するためのタキサンの製剤であって、クレモホアの無い製剤中にタキサンが存在し、癌が、前立腺、膵臓、骨、肺、腎臓、心臓および脾臓癌から選ばれる、製剤。
- 製剤がタキサンを含むナノ粒子を含有する、請求項7から9のいずれかに記載の製剤。
- ナノ粒子が200ナノメーター以下の平均直径を有する、請求項10に記載の製剤。
- タキサンがパクリタキセルである、請求項1から11のいずれかに記載の製剤。
- ナノ粒子がタンパク質被膜を有する、請求項2から6および10から12のいずれかに記載の製剤。
- タンパク質がアルブミンである、請求項1から6および13のいずれかに記載の製剤。
- アルブミンがヒトアルブミンである、請求項14に記載の製剤。
- ヒトアルブミンがヒト血清アルブミンである、請求項15に記載の製剤。
- ナノ粒子がコアを有し、該コアはポリマー材料を実質的に含まない、請求項1から6および10から16のいずれかに記載の製剤。
- パクリタキセルは実質的にアモルファスである、請求項1から6および10から17のいずれかに記載の製剤。
- ナノ粒子の平均直径が、10−200ナノメーターである、請求項1から6および10から18のいずれかに記載の製剤。
- ナノ粒子の平均直径が、50−170ナノメーターである、請求項1から6および10から19のいずれかに記載の製剤。
- 滅菌濾過される製剤である、請求項1から20のいずれかに記載の製剤。
- 静脈投与に適している製剤である、請求項1から21のいずれかに記載の製剤。
- 投与前の製剤がシール化バイアルに含まれる、請求項1から22のいずれかに記載の製剤。
- 凍結乾燥される製剤である、請求項1から23のいずれかに記載の製剤。
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