JP5403027B2 - 木質バイオマスを原料とした高炉操業方法およびコークスの製造方法 - Google Patents

木質バイオマスを原料とした高炉操業方法およびコークスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は鉄鋼製造プロセスにおいて使用する石炭の一部を、木質バイオマスで代替することにより、石炭使用量の削減を図る技術に関し、バイオマスの使用量に応じた省エネルギーおよびCO2排出削減が達成できる木質バイオマスを原料とした高炉操業方法およびコークスの製造方法に関する。
省エネルギーが徹底している我が国の鉄鋼業においても、京都議定書で決められた温室ガス排出削減目標を達成するために更なる省エネルギーとCO2排出削減が求められている。バイオマスの利用はカーボンニュートラルにより、CO2排出削減の有力な手段となりうるため、鉄鋼業において従来種々のバイオマスの利用法が提案されている。たとえば廃木材の粉砕粉やRDF(Refused Derived Fuel)の炭化粉を微粉炭と共に高炉に吹き込む方法、石炭粉と混合してコークス炉に装入する方法などが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。またCO2排出削減効果を意図し、カーボンニュートラル扱いの木質バイオマスを高炉に吹き込む実験も行われている(例えば、非特許文献2参照。)。
バイオマスを用いたコークス製造法としては、原料石炭粉に木質系バイオマスのチップを配合し、この混合物を通常の室炉式コークス炉へ装入して高温乾留する方法が提案されている。この際、熱分解ガスおよびタールは副産物として回収し、残留炭化物をコークスとして利用する。この方法では、木質バイオマスを高温で熱分解させ、発生するガスおよびタールや残渣物(木炭)を100%回収することが可能である。しかし、バイオマスのチップは石炭との粒径差および密度差が大きく均一に混合してコークス炉に装入することが困難である。また、木質バイオマスは加熱時に粘結性を発現しないため粒子間の結合力が弱まり、高温乾留後に生成するコークスの反応性は向上するが、強度が著しく低下するため高炉用コークスとして使用するにはバイオマスの配合量に限界があった。さらに、木質バイオマスは水分含有量が30〜60mass%と高く、密度が低い。このため、石炭とバイオマスの混合物を室炉式コークス炉へ装入する際、重力装入方式のため装入密度が低くなるという問題があり、その結果、コークスの生産性が低下するとともに乾留時に発生する水分量が多くなりコークス生産消費熱量の増加とガス精製設備の効率が低下するなどの現象が起こり易かった。これらの問題を解決するため、バイオマス原料を室炉式コークス炉で利用する方法として、バイオマス原料をまず150〜400℃で加熱処理し、熱分解により生成した油分を分離・回収する。次に残渣物のチャーを所定の粒度に粉砕した後、コークス製造設備に供給し、石炭とチャーとを混合してコークス炉へ装入、乾留し、コークスを製造する方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、バイオマスを利用した高炉の操業方法としては、高炉羽口よりバイオマスとして乾燥下水汚泥を微粉炭と共に吹き込み、高炉を効率よく操業する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また木質バイオマスを石炭、鉄鉱石と共に混合・成型し室炉式コークス炉で乾留するフェロコークスの製造方法及びこれを使用して高炉の熱保存帯温度を下げることにより高炉の還元材比を低下させる高炉操業方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3は、反応性を高めたコークスを高炉原料として使用することにより高炉シャフト部の温度を下げることが出来、その結果FeO〜Fe還元平衡到達度が一定下では還元材比低下につながることを示した報告(例えば、非特許文献3参照。)と同様の結果を示している。
更にバイオマスを炭化し、これを焼結原料に添加することにより焼結エネルギーとして使用を図ると共に、簡易且つ低コストで排ガス中のNOx、SOxを低減する焼結鉱製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開2005―272569号公報 (図1) 特開2006―37196号公報 (図1、図2) 特開2004−217914号公報 (表1、図4) 特開2003−328044号公報 (図1)
奥野嘉雄「ふぇらむ」8、2003年、p.217 脇元一政他「材料とプロセス」18、2005年、p.1112 内藤誠章他「鉄と鋼」87、2001年、p.357 「バイオマス比率算定方法、施行規定第7条第2項」資源エネルギー庁 2003年2月 日本エネルギー学会「バイオマスハンドブック」オーム社 2002年 「バイオマスニッポン(平成16年度農水省バイオマスニッポン総合戦略推進事業)」2004年 「2004年度版鉄鋼統計要覧」(社)日本鉄鋼連盟 「統計資料:2005年度銑鉄生産量」(社)日本鉄鋼連盟
バイオマス原料を室炉式コークス炉で使用するコークス製造技術は、特許文献1などに記載されている様にバイオマス原料を事前に150〜400℃でまず加熱処理する。次に熱分解により生成した残留物のチャーを所定の粒度に粉砕した後、通常の配合炭と混合してコークス炉に装入、乾留し、コークスを製造する。しかし、バイオマス原料を事前に加熱処理してチャー化および残留物チャーを所定の粒度に粉砕し通常の室炉式コークスへ装入する方法は製造設備が複雑になるという問題がある。また、事前に加熱処理した残留チャーを室温近くまで冷却後、再び配合炭と混合してコークス炉へ装入し炉内で約1100℃までに乾留(加熱処理)することはエネルギー効率が悪いことは明らかである。さらに残留物のチャーは木質バイオマスと同様に粘結性がなく、これを配合した場合はコークス強度が低下する。それゆえに配合炭の強粘結炭配合割合を増加させ粘結性状を上昇させたり、高価な粘結剤を添加する必要がある。また、熱分解チャーは熱処理過程での脱揮発分により多孔質化し、所定の粒度に粉砕する際には0.5mm以下の微粉が多く発生し、収率は悪くなる。また、通常の配合炭に混合しコークス炉に装入すると微粉発生によりコークス炉の炉壁のカーボン付着量が増加し、コークス炉の安定操業が阻害される。このためコークス製造プロセスが複雑になるとともにエネルギー使用量の増加による製造コストや配合炭価格が上昇するなどの問題がある。
一方、高炉の羽口より微粉炭と共に木質バイオマスを吹き込み、微粉炭及び炉頂から装入する塊コークスの使用量削減とCO2排出削減を図る高炉の操業方法が非特許文献2に明らかにされている。ところで木質バイオマスは微粉炭と比較し含有水分が高いことが特徴である。表1に代表的なバイオマスの含水率、有機物比、灰分及び発熱量比較を示す(非特許文献5参照。)。
Figure 0005403027
表1より木質バイオマスの水分含有量は30〜60mass%であることが認められる。高炉の羽口より固体燃料を吹き込み、塊コークス消費量を効率的に減らすためには羽口先温度は通常2000℃以上で管理する必要がある。2000℃未満では吹き込み燃料が羽口先空間で十分燃焼せず一部未燃焼状態でチャー化し、その蓄積により高炉下部の通気性通液性を阻害する。バイオマス水分含有量が高い場合は他の送風条件が一定であれば水の蒸発潜熱2500kJ/kg(非特許文献4参照。)分が羽口先で失われる。それゆえ、その吹き込み量に応じて羽口先温度は低下し、吹き込み燃料の安定燃焼は困難になる。このため、送風温度の上昇、酸素富化率の上昇、脱湿送風などの高炉操業上の対策が必要となりいずれもコスト増の要因につながるという問題がある。
この様な課題を解決するために特許文献2では下水汚泥を乾燥し、これを微粉炭と混合して吹き込む方法を提示している。その結果、表1に示す90mass%以上の含水率汚泥を吹き込む場合と比較して羽口先温度の低下が抑制され大幅な燃焼効率の改善が期待できる。但しバイオマスのなかで汚泥は表1に示すように灰分含有量が20mass%以上であり、木質バイオマスの灰分に比較し20倍以上の含有量である。このため木質バイオマス吹き込みに比べ羽口先空間で汚泥灰分が炉芯あるいは融着帯に蓄積し通気性、通液性が相対的に悪化する。また事前乾燥に要する乾燥熱源を化石燃料に依存すれば、この段階で熱エネルギーが必要になる。それゆえに、この熱を含めた鉄鋼製造エネルギーは汚泥の不十分な乾燥のままでは他の高炉操業条件の変更、たとえば送風温度の上昇、酸素富化率の上昇、脱湿送風などが必要となり、鉄鋼製造コスト合理化には繋がらない可能性がある。
一方、非特許文献3は高反応性コークスの高炉使用により高炉のシャフト部熱保存帯のFeO〜Fe還元平衡温度を下げ、還元材比を削減する方法を総括物質・熱収支モデルの解析により理論的に提示している。この結果はコークスの反応性を高めると還元材比の低下につながることを明らかにしている。但し高反応性コークスはその製造過程で反応性を高めるためコークスの組織を多孔質化する。その結果コークス強度が低下する傾向がある。特許文献3の図6においても、同様の傾向を示している。このため高反応性コークスはその強度と反応性を同時に望ましい範囲で管理することが高炉の低還元材比下で安定操業を継続する上で重要となる。
以上のように、木質バイオマスを製鉄所で利用する際には、コークス強度の低下やコークス製造プロセスの複雑化等の問題が、また高炉の羽口より木質バイオマスを吹き込む際には羽口先温度の低下、吹き込み燃料の安定燃焼の困難化等の問題があり、いずれも銑鉄製造コストが大幅に増加する。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、製鉄所において木質バイオマスを効果的に利用する方法を提供すること、すなわち、木質バイオマスを原料とした高炉操業方法および木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、木質バイオマスの利用により、高炉の還元材比の低下を達成することにある。
本発明では、バイオマスを高炉の羽口から吹き込む方法及び高炉炉頂から装入する高反応性コークスの有する課題を解決するため、原料となる木質バイオマスを事前に乾燥し、これを高反応性コークス原料及び羽口吹き込み原料として使用する。これにより従来の類似技術に比較し羽口部における固体燃料の燃焼効率改善が、また強度を維持し反応性を高めたコークスの製造により高炉熱保存帯温度の低下が可能となり還元材比低下が達成される。
本発明の特徴は下記の通りである。
[1]木質バイオマスを加熱して乾燥後に粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留して製造したコークスを高炉に装入することを特徴とする木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[2]木質バイオマスを、水分含有量が5mass%以上、30mass%未満となるように乾燥することを特徴とする[1]に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[3]木質バイオマスの乾燥を、300℃以下の排熱を用いて行うことを特徴とする[1]または[2]に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[4]乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留して製造したコークスの高炉への装入割合を、高炉に装入する全コークス量の80mass%未満とすることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[5]木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm 3 以上で50cm 3 以下、嵩密度を0.8g/cm 3 以上で1.1g/cm 3 以下にすることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[6]粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
[7]木質バイオマスを加熱して乾燥した後に粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留することを特徴とする木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
[8]木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm 3 以上で50cm 3 以下、嵩密度を0.8g/cm 3 以上で1.1g/cm 3 以下とすることを特徴とする請求項[7]に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
[9]粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする[7]または[8]に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
下記の(1)〜(13)の特徴を有する発明によっても、上記の課題を解決することができる。
(1)木質バイオマスを加熱して乾燥し、高炉原料として使用することを特徴とする木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(2)木質バイオマスを、水分含有量が5mass%以上、30mass%未満となるように乾燥することを特徴とする(1)に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(3)木質バイオマスの乾燥を、300℃以下の排熱を用いて行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(4)乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、高炉の羽口から吹き込むことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(5)乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともにコークス炉に装入して乾留して製造したコークスを高炉に装入することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(6)乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を篩い分けした篩い上を、石炭とともにコークス炉に装入して乾留して製造したコークスを高炉に装入し、前記成型体を篩い分けした篩い下を、羽口から高炉内に吹き込むことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(7)篩い分けの篩い目を、3〜6mmとすることを特徴とする(6)に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(8)乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともにコークス炉に装入して乾留して製造したコークスの高炉への装入割合を、高炉に装入する全コークス量の80mass%未満とすることを特徴とする(5)ないし(7)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(9)木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm3以上で50cm3以下、嵩密度を0.8g/cm3以上で1.1g/cm3以下にすることを特徴とする(5)ないし(8)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(10)粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする(5)ないし(9)のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
(11)木質バイオマスを加熱して乾燥した後に粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともにコークス炉に装入して乾留することを特徴とする木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
(12)木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm3以上で、50cm3以下、嵩密度を0.8g/cm3以上で1.1g/cm3以下とすることを特徴とする(11)に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
(13)粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする(11)または(12)に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
本発明を我が国全体の銑鋼一貫製鉄所に適用することにより石炭使用量削減及びCO2排出削減効果は著しく大きくなる。すなわち木質バイオマスは我が国で年間およそ1480万トン発生しており、このうち未利用で廃棄される量は740万トンに達する(非特許文献6参照。)。この量は石炭発熱量換算で510万トンに該当する(非特許文献4参照。)。一方我が国の鉄鋼業における石炭使用量は6500万トンである(非特許文献7参照。)。本発明により木質バイオマスをコークス原料として使用すれば、カーボンニュートラルによるCO2削減量は、
2.394(t-CO2/t-coal)×510(万t/y)≒1220(万t-CO2/y)
となる。また、木質バイオマス(水分5mass%)を高炉へ40kg/pig-t吹き込む場合に、カーボンニュートラルである木質バイオマスの吹き込みによる微粉炭吹き込み量38kg/pig-t(40kg/pig-t×0.95)の他、後述する表7より高反応性コークス80mass%を高炉で使用し還元材比11kg/pig-t(内訳:PCI比3kg/pig-t、coke比8kg/pig-t)を削減できる。その結果、2005年度の銑鉄生産量82940千t(非特許文献8参照。)を考慮すると、木質バイオマスを微粉炭吹込み代替および高反応性コークス原料に使用することによるコークス比低減効果による石炭使用量の削減効果は、
(0.038(coal-t/pig-t)+0.003(coal-t/pig-t)+0.008(coke-t/pig-t)/0.75(coke-t/coal-t))×82940千(pig-t/y)=4288千(coal-t/y)
と評価できる。この様に本発明は従来鉄鋼分野では使用に課題のあった木質バイオマスの有効利用により鉄鋼業の省エネルギーと環境排出CO2削減を同時に達成する技術を提示するものである。
バイオマスの水分と羽口先最高温度の関係を示すグラフ。 高反応性コークスの配合率と還元材比の関係を示すグラフ。 バイオマスの排熱による乾燥、石炭との混合塊成化、高反応性コークス製造と高炉への使用および乾燥バイオマスの高炉吹き込みを示す本発明の全体プロセス概要図。 焼結機クーラーの未利用排熱を利用しロータリーキルンで供給量の異なるバイオマスを乾燥した結果を示しているグラフ。 ロータリーキルンでバイオマスを乾燥する際、バイオマス供給量に応じて得られる乾燥排ガスのキルン内での空塔速度を示しているグラフ。 ロータリーキルン内でバイオマスを乾燥するに際し、バイオマス粒径により乾燥挙動が変わる結果を示すグラフ。 ロータリーキルンに装入されるバイオマスの初期水分率に応じて乾燥ガス量を変化させた時の乾燥挙動を示すグラフ。 バイオマスを石炭に単純添加する方法と石炭とバイオマスの混合物を成型し石炭の配合する方法のコークス性状への影響を示すグラフ。 石炭とバイオマスの混合物を成型し石炭の配合する方法で、バイオマスの含有水分量とコークス性状の関係を示すグラフ。 石炭とバイオマスの混合物を成型し石炭の配合する方法で、バイオマスの粒径とコークス性状の関係を示すグラフ。 石炭とバイオマスの混合、成型し成型物を製造する場合のバイオマスの配合割合と成型物の性状との関係を示すグラフ。 成型物の石炭への配合割合とコークス性状の関係を示すグラフ。 羽口からバイオマスを吹き込む際のレースウエイ空間内での温度及びガス組成を示すグラフ。吹き込み条件1は微粉炭のみ吹き込む場合、吹き込み条件2は未乾燥のバイオマスを吹き込む場合、吹き込み条件3は乾燥バイオマスを吹き込む場合を示す。 高炉の熱保存帯温度が低下した場合の高炉燃料比の考え方をリスト線図によって解析した結果を示すグラフ。 グレート炉方式を模擬したバイオマス乾燥実験装置の概略図。 グレート方式の実験結果を示すグラフ。 グレート方式の実験結果を示すグラフ。 グレート方式の実験結果を示すグラフ。 グレート方式の実験結果を示すグラフ。
本発明では、乾燥させた木質バイオマス原料を高炉原料またはコークス原料として使用する。木質バイオマスの乾燥は、300℃以下の排熱を用いて行うことが好ましく、焼結鉱焼結機の低温のクーラー排熱が特に効果的に利用できる。高炉原料としては、高炉の羽口から吹き込むことが好ましい。コークス原料としては、乾燥させた木質バイオマス原料を石炭に配合後、成型機で塊成化し、この成型物を通常のコークス用配合炭と混合した後にコークス炉に装入し、コークスを製造することが好ましい。本発明はバイオマス原料と石炭の混合物を機械的な圧力により高密度な成型物に生成する。それゆえに成型物内のバイオマス原料と石炭粒子の接着性が向上し、また成型時に粘結性を有するバインダーを利用することで、よりコークスの強度が改善される。通常の配合炭に高密度の成型物を所定の割合で混合し、コークス炉に装入すると石炭の装入密度が増加するため石炭の粘結性が向上しコークス強度が改善される。また、バイオマス原料を成型物としてコークス炉内に装入するために、コークス炉内でバイオマスが均一分散され偏析が抑制され、従来の課題であったコークスの品質の炉内域におけるばらつきが低減される。また、バイオマス原料を事前加熱によりチャー化していないため熱エネルギーの損失や微粉発生によるカーボントラブルが生じない。さらに、石炭にバイオマス原料を配合してコークスを製造するためバイオマスの熱処理過程でガス化によるコークスの気孔率は高くなる。またバイオマスからの残留炭化物の光学的組織は等方性成分のため反応性が高く、コークスの強度を維持しながら反応性を高めることができる。これらは本発明により初めて実現できるコークス製造方法である。
上記のようにコークスを製造する場合、木質バイオマス原料を石炭に配合後、成型機で塊成化した成型物を、篩い分けして、篩い上を石炭とともにコークス炉に装入して乾留して製造したコークスを高炉に装入し、篩い分けした篩い下を、羽口から高炉内に吹き込むことが好ましい。
なお、本発明で用いる木質バイオマスとは、表1(出展は非特許文献5)で「木質」に分類されるバイオマス等であり、廃木材、間伐材、剪定された樹木等であって含水率が高く灰分の含有率の低いバイオマスである。本発明で用いる木質バイオマスは、その一部に自然乾燥等により水分含有量の低下した木質バイオマスを含む場合があり、そのような場合は全体としての木質バイオマスの水分含有量が30mass%未満となる場合もある。以下、「木質バイオマス」を単に「バイオマス」として記載する。
バイオマスの乾燥は任意の装置を用いて行なうことが可能であるが、乾燥ガスを用いたロータリーキルン内での乾燥や、移動グレート、流動層等を用いることが好適である。
本発明では、バイオマスを水分含有量5mass%以上、30mass%未満に乾燥することが好ましい。
バイオマスの乾燥後の水分含有量は、以下の理由により5mass%以上、30mass%未満とすることが好ましい。バイオマスを羽口から微粉炭と共に一定吹き込み条件下で吹き込むと、その水分含有量に応じて羽口先温度は変化する。高炉の羽口を模擬し、高温送風と燃料吹き込みが可能なホットモデルにより表2に示す燃料吹き込み条件で水分含有量の異なるバイオマス40kg/t(乾量換算)相当を微粉炭78kg/t相当と共に吹き込み、安定状態下で送り込み式温度計により羽口先の最高温度を測定した。その結果を図1に示す。
Figure 0005403027
図1によれば、羽口先のレースウエイ条件は、バイオマス中の水分含有量の増加に伴い羽口先最高温度が低下する。今回の測定結果ではバイオマス水分が30mass%を超えると温度は約100℃低下し、レースウエイ空間で吹き込み燃料の燃焼が不完全となる。またその結果として未燃チャーがコークスベッドに沈積し送風圧力が上昇傾向となる。
これらの実験結果よりバイオマスの水分含有量は30mass%未満、望ましくは安定した燃焼が達成できる25mass%以下とすることが適正である。更に望ましくは、20mass%以下とすることによって、上記羽口先温度の低下量が少なく、高炉操業を安定して行なうことができる。一方、大気中における暴露試験からバイオマス搬送中に着火の恐れのない水分量は5mass%以上と判断される。それゆえこれらを総合するとバイオマスの水分含有量は5mass%以上、30mass%未満で管理されることが望ましい。
バイオマスは、粒径100mm以下に調整して、水分を低下させることが好ましい。ここで、粒径100mm以下のバイオマスとは、100mm(またはそれ以下)の篩目を通過する篩下のバイオマスの状態である。粒径を所定の粒径以下に調整して乾燥することにより、バイオマス内の含有水分放出が容易になり乾燥効率が高まる。最適な粒径は乾燥方法により適宜変動するが、乾燥に炉長10m程度のロータリーキルンを用いる場合は、粒径100mm以下程度が適当である。
バイオマスを乾燥する雰囲気温度は、100℃以上、300℃以下とすることが好ましい。バイオマス中の水分は、多孔質のために粒子表面への付着水や気孔の中の包蔵水分として存在する。このため、バイオマスの加熱処理を行うと、100℃近傍でバイオマス表面の付着水や気孔の中の包蔵水分が蒸発、脱水し、約300℃から500℃で有機物であるバイオマスが熱分解を開始し、ガス、タールや生成水を発生しながらチャー化(アモルファスカーボン化)する。したがって、チャー化のためにはバイオマスの加熱温度は300〜500℃が適当であるが、バイオマスの乾燥を目的とする本発明では300℃以下とすることが好ましい。一方、100℃未満では木質バイオマスの乾燥効率が低下するので、乾燥温度は100℃以上が好ましい。
このようなバイオマスの乾燥には、比較的低温(例えば、300℃以下)の排ガスを用いることが好ましい。300℃以下の排熱は蒸気回収等による熱回収が困難であるため、通常は有効に利用することができないが、本発明ではバイオマスの乾燥に有効に利用することができる。200℃以下の排ガスであれば、熱回収の観点から更に好ましい。
比較的低温の排ガスとして、たとえば焼結鉱を製造する焼結機クーラーから排出される中低温排熱を利用することができる。これはクーラー排熱ガスが基本的には高温空気から構成されており水分含有量が低く乾燥効率に優れていること、300℃以下の未利用系外排出ガス量の比率が全体の排出熱に対し60%以上であることに起因する。また非特許文献1に示すように、このような乾燥条件では木質バイオマスはチャー化しない。チャー化する場合は大気雰囲気下では困難であり、チャー化の過程でガス処理を含め設備上多大の投資を必要とする。有効利用が困難である300℃以下の排熱をバイオマスの乾燥に利用することは、乾燥のための加熱でCO2を発生させることがないため、非常に望ましい実施形態である。
乾燥後のバイオマスを粉砕し、高炉の羽口からの吹き込む吹き込み原料とする、または石炭とともに成型して成型体としコークス原料とすることができる。粉砕は、吹き込み原料とする場合は10mm以下程度、コークス原料とする場合は成型に好適な3mm以下程度とすることが好ましい。
バイオマスと石炭とを混合して成型した成型物は、たとえば、乾燥されたバイオマス原料を石炭に配合後、バインダーを添加し混合機にて混合された後、ダブルロール式成型機へ供給し、成型体の体積が10cm3以上で50cm3以下、また、嵩密度は0.8g/cm3以上で1.1g/cm3以下の成型物を製造する。この成型物を配合炭に5〜30mass%の範囲で混合し、コークス炉へ装入して通常コークスと同等の強度を有した高反応性コークスを製造する。
成型物の製造方法としては、ダブルロール式成型機の他に、パンペレタイザーなどを用いることもできる。バイオマス、石炭および必要に応じてバインダーを添加した混合物をダブルロール式成型機等で機械的な圧力により加圧して高密度な成型物を生成するため、成型物内のバイオマス原料と石炭粒子の接着性が向上し、また成型時に粘結性を有するバインダーを利用することで、コークスの強度が改善される。成型体の体積が10cm3以下ではバイオマスの粒径を3mm以下とした場合の成型物の生産性が低く、また50cm3以上ではコークス炉内へ装入した場合に成型物の偏析が生じ、コークス品質のばらつきの原因となる。成型物の嵩密度は0.8g/cm3以下で成型物の強度が低下し、コークス炉への搬送に耐えられず粉化し、1.1g/cm3以上では高価なバインダーの添加率を増加させたり成型機の成型圧を高めたりする必要があり、成型物の製造コストが高くなる問題がある。また、通常の配合炭に高密度の成型物を所定の割合で混合し、コークス炉に装入すると石炭の装入密度が増加するため石炭の粘結性が向上し、コークス強度が改善される。バイオマス原料をそのままでなく、成型物としてコークス炉内に装入するために、コークス炉内で均一分散され偏析が抑制されコークスの品質のばらつきが低減される。しかし、成型物の配合炭への配合率が40mass%以上では最密充填条件から離れるためコークス炉への装入密度は低下し、バイオマスの添加量が増加することと併せてコークス強度が低下する。さらに、バイオマス原料を事前加熱によりチャー化しないため熱エネルギーの損失や微粉発生によるカーボントラブルが生じないという利点がある。
上記のようにして製造したコークスは、高反応性コークスである。高反応性コークスは高炉内熱保存帯領域(ガスと固体の温度がほぼ1000℃一定の領域)で下記(a)式に示すコークスのガス化反応が活発になる。
C(コークス)+CO2=2CO・・・(a)
(a)式の反応は吸熱反応のため高反応性コークスの使用により熱保存帯温度は低下傾向となる。この領域で主体となる下記(b)式で示す酸化鉄の還元は熱保存帯領域が長いためほぼ平衡に達することが知られている。
FeO+CO=Fe+CO2・・・(b)
(b)式は平衡温度が低下するにつれ平衡するガス酸化度(=CO2/(CO+CO2(-))は高酸化度側、換言すると高ガス利用率側に移行するため還元材比は低下することになる。以上が木質バイオマスを原料とした高反応性コークスを使用した高炉の操業技術の導入により、還元材比が低下できる理由である。熱保存帯温度を低下させることにより還元材比を低下させるという考えは非特許文献3で実験によって検証されており、その達成手段としてバイオマスを原料とした高反応性コークスが寄与することが明らかである。
本発明は従来のバイオマス使用に起因するコークス強度低下及び羽口先温度低下に問題のあった高炉操業と比較し、操業の安定、還元材比低下、CO2排出量低下が達成されることになる。
上記のようにして製造したコークスを高炉に装入して原料として使用する際には、高炉への装入割合を、高炉に装入する全コークス量の80mass%未満とすることが好ましい。バイオマスを原料として石炭とともに成型し、石炭(配合炭)とともにコークス炉で乾留して製造したコークスは通常のコークスに比較して反応性が高く、上記(a)式、(b)式で述べた理由により高炉の還元材比削減に寄与することが認められている(非特許文献3参照。)。表7(後述)に示す高炉操業条件をもとに通常コークスに高反応性コークスを配合することにより還元材比を評価した結果を図2に示す。図2によれば、バイオマスを原料として製造した高反応性コークス配合率が上昇するに従い、高炉の熱保存帯温度が低下する結果、一定シャフト効率(FeO〜Fe還元平衡到達度を示すパラメータ)のもとで還元材比は低下する。この傾向は高反応性コークス配合率の上昇に従い、ほぼ直線的に低下する。但し配合率が80mass%以上では還元材比は逆に上昇傾向となる。この理由は配合率に応じて還元材比が低下するが、これと並行して高炉内の熱移動特性を表す熱流比(高炉シャフト部領域におけるガスの持つエンタルピーに対する固体側のエンタルピーの比)が大きくなりガス側から固体側に熱移動が安定的に行われなくなる。その結果安定した高炉操業が困難となり高反応性コークス配合率80mass%以上では敢えてシャフト効率を悪化させた操業、換言すれば還元材比を高い状態で操業しないと安定操業がおぼつかなくなる。今回の評価では熱流比は0.900(-)以下で管理が必要であり、この管理のために80mass%以上の配合は安定操業を阻害することが認められた。これらの評価より熱保存帯温度の低下が始まる高反応性コークス配合率5mass%以上、還元材比が低下し続ける80mass%以下が望ましい配合率の範囲である。
本発明の一実施形態である製造プロセス概要を設備構成と共に図3に示す。乾燥効率を改善するため粒径10mm以下に調整した木質バイオマスあるいは木質バイオマスチップは一旦バイオマスチップ槽1に集積し以後の製鉄プロセスで使用するに際し、エネルギー効率を高めるため乾燥工程2に移送される。乾燥はロータリーキルン、移動グレート、流動層などで行う。なお乾燥に使用する熱源は化石燃料に依存せず製鉄所の排熱、たとえば焼結機クーラー3より排出される未利用の100〜300℃排熱を利用することにより製銑工程全体のエネルギー効率の向上に繋がる。水分5mass%以上、30mass%未満に乾燥されたバイオマスは自然発火を防ぐため専用保管槽5に保管される。専用保管槽5よりバイオマスは解砕・粉砕機6に供給されここで粒径3mm以下に粉砕される。次に粉砕バイオマスは石炭7及びバインダー8と共に混合機9に装入され、均一に混合された後に、成型工程10において造粒または塊成化される。10はブリケッティングマシンあるいはペレタイザーおよび同等の機能を有する塊成化装置が要求される。10の成型工程を経ることによりバイオマスの0.4〜0.6t/m3の低嵩密度が石炭と混合、成型されることにより嵩密度が0.8〜1.1t/m3の成型物が製造される。成型物の嵩密度は石炭粉の嵩密度よりも高いために以降のコークス化処理および高炉への吹き込み処理に適する物性を具備するようになる。なお嵩密度が0.8t/m3以下ではコークス炉への搬送過程で粉化するために、コークス炉内で石炭との偏析が進み乾留後の歩留まり、生産性が低下する。また1.1t/m3以上では機械的な成型圧力が高くなり設備が高価になることやバインダーの添加率を増やす必要があり製造コストが高くなる。塊成化に際し石炭粉とバイオマスの均一混合やバイオマスの表層部の石炭を被覆することと併せて粘結性のあるコールタールピッチをバインダーに使用することは、コークス強度を維持しながら気孔を形成し高反応性コークスを製造するために重要な操作になる。石炭と共に塊成化されたバイオマスは篩い分け工程11で篩い分けられ、粒径5mm以上の粗粒はコークス炉13に、粒径5mm未満の細粒はバイオマス貯留槽17に送られる。バイオマスはバイオマス貯留槽17より所定量の比率で切り出され微粉炭18と共に羽口から高炉14に羽口先温度の管理のもとで吹き込み、塊コークス使用量削減に寄与する。この吹き込み方法はバイオマスを未乾燥状態で吹き込む場合と比較し羽口先温度2000℃以上の管理条件下では吹き込み量を増やすことが可能であり、その結果微粉炭との置換量は羽口からの全固体燃料吹き込み量の20mass%まで増やすことが出来る。また化石燃料を使ってバイオマスを乾燥する方法に比較し未利用中低温排熱を利用するためエネルギー効率の優れた乾燥方法となる。
次に、モデル計算を併用して行なった実施例を用いて本発明を説明する。
[実施例1]
木質バイオマスをロータリーキルンで乾燥する場合、その乾燥挙動は乾燥温度、バイオマスに対する乾燥ガス流量比、バイオマス初期水分、バイオマス粒径などに影響を受ける。これらの因子のなかで乾燥上重要な操作因子について乾燥実験を行った結果を示す。実験は径3m、長さ10mのロータリーキルンを用いて行った。その他の主要操業条件を表3に示す。
Figure 0005403027
図4に200℃排ガスをガス量原単位1300Nm3/t、バイオマス平均粒径3cmの条件でキルンに吹き込んだ時の炉内ガス温度及びバイオマスの水分除去率を示す。これよりバイオマス供給量が30t/hの場合はキルンのほぼ3〜4mの地点で乾燥は終了するが、供給量が60t/hでは8m地点で漸く完了する。乾燥バイオマスの生産性面からは供給量が多い操業条件が望ましい。但しガス量原単位一定下でバイオマス供給量を増すと必然的にキルンへのガス供給量は増える。今回の一連の実験ではキルン内でのガス流速は増加する。図5にバイオマス供給量とキルン内の空塔ガス流速の関係を示す。今回の一連の実験では2.0m/s以上の空塔ガス流速では流動化によりキルン内のバイオマスの飛散量が増え始め2.5m/s以上では乾燥バイオマスの歩留まりが著しく低下する。このため表3に示す操業条件下ではバイオマス処理量が30〜50t/hが望ましい操業範囲である。
[実施例2]
バイオマス粒径の乾燥挙動に及ぼす影響からキルンに供給するバイオマスの適正粒径範囲を求める実験を行った。表3の操業条件をもとにバイオマス初期水分35mass%、ガス量原単位1300Nm3/t、バイオマス供給量50t/hの条件下で乾燥試験を行い図6にその結果を示す。この結果より粒径が小さい場合比表面積が大きいため乾燥速度が高く、たとえば粒径1cmではバイオマスのキルン装入部よりおよそ4m付近で乾燥は完了する。これに対し粒径の拡大と共に乾燥は遅れ粒径7cmではキルン排鉱部で乾燥率はおよそ90%に留まる。このためバイオマスの粒径は小さい方が望ましいが、その場合粒径分布の広がりにより製品の歩留まりが悪化するといった問題点が生じる。またチップの入荷の際、小粒径を要求すると粒径調整にコストがかかり経済性の優位性がなくなる。一方、図6より粒径の拡大により乾燥遅れが顕著になり生産性は悪化する。このため望ましい受け入れバイオマスの適正粒径は1〜10cmの範囲と決められる。
[実施例3]
図7に初期バイオマス水分含有量の乾燥特性に及ぼす影響を排熱供給量原単位1300Nm3/t、バイオマス供給量40t/h、バイオマス平均粒径3cm及び表3の操業条件をもとに実験によって求めた結果を示す。これより初期バイオマス水分含有量が30mass%ではキルンのバイオマス装入口よりほぼ7m位置で乾燥は完了する。しかるに水分が35mass%ではもはやこの条件では乾燥は完了しないため排熱供給量原単位1500Nm3/tが必要である。さらに水分が40mass%では同様に1700Nm3/tが必要になる。この場合のキルン内ガス空塔速度はそれぞれ2.0、2.4、2.7m/sであった。それゆえに実施例1と同様含水率が高くなるにつれガス空塔速度が高まる結果、キルン内でのバイオマスの流動化が顕著になり乾燥バイオマス歩留まりが悪化する。今回の実験条件下では初期バイオマス水分は40mass%以下、望ましくは35mass%以下に管理されたバイオマス水分条件が望ましいことが認められた。
[実施例4]
乾燥バイオマス、石炭とバインダーを混合、成型した後、成型物を通常のコークス製造用配合炭に配合し、250kg乾留試験炉に装入してコークス製造試験を行った。
石炭とバイオマスを所定の割合で切り出し、バインダーのコールタール軟ピッチ(外枠5mass%添加)と合わせてKBミキサー内に装入、混合後、ダブルロール成型機にて成型物を製造した。成型機の成型圧力は線圧1000kg/cmで、成型物の形状はマセック型(幅:43mm、長さ:25mm、厚み:18mm)の成型物を製造した。
成型物は通常の配合炭に所定の割合で混合された後に、250kg乾留試験炉に装入され乾留温度1100℃の条件で乾留しコークスを製造した。コークスの性状としては、コークス強度(JISドラム強度DI30/15)、CO2反応性(CRI)およびCO2反応後強度(CSR+9.5)を測定し評価した。表4に使用した原料の石炭およびバイオマスの粒度分布を示す。
Figure 0005403027
図8にバイオマス原料を石炭と混合後に成型物を製造しコークス炉に装入する方法(成型物配合法)と単純にバイオマスを配合しコークス炉に装入する方法(バイオマス単純配合法)のコークス性状への影響を示した。バイオマスを添加しない通常のコークス用配合炭(通常炭)によるコークス性状も併せて示した。
バイオマスと石炭の成型物は、バイオマス(17mass%)と通常の配合炭(83mass%)にバインダーとしてコールタール軟ピッチ(外枠5mass%添加)を加え混合にダブルロール式成型機を用いて製造した。成型物を通常のコークス用配合炭へ30mass%配合し、250kg乾留試験炉へ装入しコークスを製造した。バイオマス原料を単純に配合する方法ではバイオマスが加熱過程で粘結性を示さないために石炭粒子との溶融性が不足し、コークス強度(DI30/15)およびCO2反応後強度(CSR)は低下した。しかし、バイオマスの脱揮発化によるコークスの多孔質化と残留物の反応性(CRI)が高いためにコークスの反応性は上昇している。一方、バイオマス原料、石炭とバインダーを混合後、成型し、通常の配合炭に混合してコークスを製造する方法では、通常のコークスとほぼ同等のコークス強度およびCO2反応後強度を維持しながら、コークスの反応性は上昇している。
[実施例5]
図9は、実施例4の成型物製造法と同様な方法で製造した成型物中のバイオマスの水分含有量とコークス性状の関係を示した。水分含有量の異なるバイオマスと石炭を混合、成型後、通常のコークス用配合炭に30mass%の一定比率で配合し、250kg試験乾留炉へ装入してコークスを製造した。コークス性状はバイオマスの水分含有量が高いほどコークス強度およびCO2反応後強度が低下している。コークス炉内の加熱過程でバイオマスの水分含有量が高いと水分が蒸発する時に成型物が崩壊する。それゆえに高水分バイオマスの脱水に伴う蒸発潜熱増に加え、バイオマスと石炭粒子との密着性が低下するとともに低嵩密度化するために溶融性が阻害され、コークス強度が低下するものと推察される。これより、バイオマスの含有水分量は10mass%以下、好ましくは乾燥後のバイオマスの着火性から5mass%から10mass%の範囲が最も望ましい。
[実施例6]
図10は、実施例4の成型物製造法と同様な方法で製造した成型物中のバイオマスの粒径とコークス性状への影響を示した。粒径の異なるバイオマスと石炭を混合、成型後、成型物を通常のコークス用配合炭に30mass%の一定比率で配合し、250kg試験乾留炉へ装入してコークスを製造した。コークス性状はバイオマスの粒径が大きくなるほどコークス強度およびCO2反応後強度は低下している。バイオマスの粒径が大きくなるほど石炭と粒径差が大きくなるために配合時に均一に混合されず、バイオマスと石炭粒子との溶融性が低下するためコークス強度が低下する。また、バイオマスは溶融性がなく加熱処理時に水分やガスが抜けるためコークス塊内に多孔質なイナート物質として存在する。このためバイオマスの粒径が大きくなると脆弱なイナート物質も大きくなるためコークス強度は低下するものと推察される。また、木質バイオマスは石炭などに比較し繊維質が多く弾力性が高く粉砕性が悪く、例えば1.5mm以下に微粉砕するには粉砕処理および粉砕設備の維持などの費用が高くなる問題がある。
これより、バイオマスの粒径は通常のコークス用配合炭の最大粒径の6mm以下、好ましくは3mm以下に粉砕することが望ましい。
[実施例7]
図11は、実施例4の成型物製造法と同様な方法で成型物中のバイオマスの配合割合の成型物性状への影響への関係を示した。成型物の性状としては、圧潰強度、トロンメル強度および成型物歩留(+5mm)を測定した。バイオマスの配合割合を高くすると圧潰強度とトロンメル強度は低下する傾向があり、成型物をコークス炉まで搬送過程での衝撃による粉化を考慮するとバイオマスの添加量は少なくとも25mass%以下、好ましくは20mass%以下が望ましい。また、30mass%以上の配合では成型後のバックスプリング現象が生じ成型物が割れ、成型物歩留が著しく低下し好ましくない。
[実施例8]
図12は、実施例4の成型物製造法にて製造した成型物を通常のコークス用配合炭へ配合してコークスを製造した際の、成型物の配合比率とコークス性状の関係を示した。コークス強度、CO2反応後強度は成型物の配合比率が30mass%程度まではあまり変化しないが、40mass%では大きく低下することが確認された。成型物配合比率が増加するとバイオマスの添加量が増加し気孔率が高くなり、コークス強度が低下したものと推定される。しかし、コークスの反応性は成型物の増配合により上昇している。これより、通常コークスと同等の強度を維持しながら反応性が高いコークスを製造するためには、成型物の配合比率は30mass%以下が好ましい。また、バインダーの添加量を増加させることでコークス強度やCO2反応後強度を改善することが可能である。さらに、石炭より水素含有量が高いバイオマス原料を配合することにより、通常の副生ガスに比較し、水素濃度が高いガスが生成する。
[実施例9]
本発明ではバイオマスの事前乾燥による高炉吹き込み時の熱的負荷削減を意図している。図13にバイオマスを未乾燥状態で吹き込む場合と乾燥して吹き込む場合の高炉レースウエイ空間内のガス組成と温度分布を物質と熱収支に基づく数学モデルで評価した結果を示す。吹き込み用木質バイオマスの化学成分を表5に示す。また羽口から固体燃料を吹き込む条件を表6に示す。これより吹き込み条件1は基準吹き込み条件であり、微粉炭のみ118kg/tを吹き込んだ条件である。これに対し吹き込み条件2は水分含有量30mass%のバイオマスを未乾燥で40kg/t吹き込む場合であり、この時には微粉炭吹き込み量を78kg/tとして全体の吹き込み量を吹き込み条件1にあわせてある。吹き込み条件3は本発明の範囲内の条件である。吹き込み条件2と同様であるが事前に水分含有量5mass%まで乾燥したバイオマスを吹き込む条件である。
Figure 0005403027
Figure 0005403027
図13より吹き込み条件1における羽口先最高温度は2045℃であるがバイオマスを未乾燥で吹き込む吹き込み条件2では含有水分の上昇により最高温度は1980℃に留まる。このためレースウエイ空間における個体吹き込み燃料の燃焼は抑制され、未燃焼チャーの高炉下部融着帯、レースウエイ前方に位置する炉芯への蓄積と通気性、通液性の悪化が容易に予想される。これによる塊コークスとの置換比率の悪化も推定される。これに対し系外で事前に未利用排熱で乾燥する本発明の範囲内に該当する吹き込み条件3ではレースウエイで水分分解熱が減少するために最高温度は2066℃まで上昇する。その結果、レースウエイにおける固体燃料の燃焼は改善され塊コークスとの置換率が向上するものと推定される。
[実施例10]
バイオマスと石炭の混合塊成化事前処理により高反応性コークスの製造が可能となった。ここで製造した高反応性コークスを従来のコークスに一部置換して高炉で使用することにより高炉の還元材比削減が達成できることを高炉の物質・熱収支総括モデル(リストモデル)で検証した。検証に当たってはまず高反応性コークスを使用せず微粉炭のみを吹き込む通常の高炉操業を基準とする。この基準操業条件をもとに高反応性コークスに切り替え、反応率に応じ非特許文献3の図5に示すコークス反応率向上による熱保存帯温度低下を考慮した。
条件設定にあたっては全コークス量に対するバイオマスを原料とした高反応性コークスの配合は65mass%及び80mass%である。この配合により混合コークスのJIS反応率は基準条件の30%から35%及び41%に向上することが実験によって明らかとなった。非特許文献3によりこれらの混合コークスを高炉で使用することにより熱保存帯温度は基準条件の1000℃から高反応性コークス65mass%配合で980℃、同80mass%で960℃まで低下することが明らかである。これらの条件をもとにリストモデルにより高炉の操業を解析すると表7が得られる。
Figure 0005403027
表7より高反応性コークスの配合により、操業1では基準条件に比較し燃料比は6kg/t、操業2では11kg/tの低下が達成できる。基準操業と操業2の解析結果を図示すると図14が得られる。これより前記の(a)、(b)式で示した反応により熱保存帯温度(TR)は1000℃から960℃まで下がる結果、XWの座標は相対的に高酸化度側に移行する。その結果一定シャフト効率(FeO〜Fe還元平衡への到達度を示すパラメータ)下では還元材比を表す操作線(L)の勾配は低下しL1となり燃料比11kg/tの低下につながる。また還元材比が低下する分だけ送風原単位及び炉頂ガス発生量は低下し且つ炉頂ガスの酸化度を示すXAはLからL1に移行する結果高酸化度側に移行する。この様な収支結果をもとに表7が得られる。
高反応性コークスの配合限界はコークス強度が一定で高炉内通気性が維持される場合高炉の熱伝達特性に依存する。高反応性コークス使用により還元材比が低下すると羽口より発生するガス量が相対的に低下し高炉の熱伝達特性を示すパラメータである熱流比(=熱保存帯における固体の有するエンタルピー/同ガスが有するエンタルピーの比で定義)が上昇する。通常高炉の安定操業を維持するためには熱流比は0.900(-)以下で管理することが望ましい。表7より操業2では0.866を示しており、熱移動特性面からはほぼ操業限界に近づくことを示唆する。
以上より木質バイオマスを原料とした高反応性コークスの高炉使用に際し、その配合率は80mass%以内に管理して操業することが安定操業上、還元材比削減上必要であることが認められた。特に望ましい配合率範囲は50〜80mass%である。
[実施例11]
バイオマスの乾燥をグレート方式で行うことを前提に実験によって乾燥挙動を明らかにした。図15下部は鉄鉱石焼結用ポットグレート炉を用いたバイオマスの乾燥実験装置である。図15上部のグレート式乾燥炉プロセス19を模擬して、グレート上の一部を固定層で実験した。断熱ポット20に所定の水分及び粒径の木質バイオマス21を層厚30cmの高さに充填する。この状態で所定温度及び所定流量の乾燥ガス22をポット20の上部より偏流のない条件で供給し、ポット20下部からブロワー23を介して排気する。実験中はベッド上の温度計24、ベッド中の温度計25、ベッド下層部の温度計26により温度を連続的に測温すると共に所定時間毎に実験を中断しそれぞれの部分のバイオマスを採取し水分の測定を行った。バイオマスの乾燥特性はバイオマス平均粒径、ベッド内通過ガス流速、バイオマス層厚、乾燥温度、初期含有水分などにより影響を受ける。本実験ではこれらの操業因子が乾燥特性に及ぼす影響を実験的に明らかにした。グレート炉方式のバイオマス乾燥において基準操業をバイオマス平均粒径5cm、乾燥ガス空塔速度1.0m/s、バイオマス層厚30cm、乾燥温度300℃、バイオマス初期水分35mass%と想定し、ポットテストの基準となる条件を設定した。
(A)ガス流速の影響
図16に実験結果を示す。乾燥が活発に進んでいる時間領域では乾燥に伴う蒸発潜熱がガス側から奪われるためガスの昇温が遅れることが認められる。基準条件の空塔速度1.0m/sではほぼ20分で乾燥は終了するが0.5m/sではベッド下層部のバイオマスは60mass%程度しか乾燥しない。なお流速が1.5m/sまで上昇すると乾燥は16分程度で終了する。これより基準操業の条件を乾燥条件とするとベッド内を通過するガス空塔速度は1.0m/s以上が望ましい。
(B)乾燥ガス温度の影響
図17に実験結果を示す。これより乾燥温度が200℃以下になるとベッド下層部の乾燥が遅れ始める。100℃では50%程度の乾燥しか進行しないため乾燥時間をもっと長く設定する必要が生ずる。なお300℃では乾燥が十分進むもののこれ以上ではバイオマスに着火する恐れがあり乾燥温度は100〜300℃、望ましくは200〜300℃が好ましい。
(C)バイオマス初期水分の影響
図18に実験結果を示す。バイオマス水分が増すと乾燥の遅延が顕著になる。基準操業の実験条件下では初期水分の限界は40mass%と評価される。45mass%以上ではベッドの下層部の昇温が十分ではないものの、乾燥はほぼ90mass%達成されている。なお初期水分が45mass%以上ではガス流速を上昇するか或いは乾燥時間の延長が必要となる。
(D)バイオマス粒径の影響
図19に実験結果を示す。バイオマス粒径が増すとバイオマス比表面積が減少し、伝熱面積が減少する結果乾燥速度は遅れる。基準操業の条件ではバイオマス径が10cmになると乾燥時間は26分近くまで遅延するもののまだ乾燥条件に余裕がある。このため乾燥温度の低下、乾燥ガス空塔速度の低下など経済性を考慮した操業の選択が可能と推定される。粒径が10cm以下であれば更に操業条件に余裕が出来る。
(E)グレート炉による適正乾燥条件
グレート炉を模擬した乾燥実験から適正乾燥条件は以下のように設定できる。
乾燥ガス空塔速度:0.5〜1.5m/s
乾燥ガス温度:100〜300℃(但し100℃では乾燥時間の延長が必要)
バイオマス初期水分:40mass%以下
バイオマス粒径:10cm以下(粒径の低下により乾燥条件緩和が可能)
1 バイオマスチップ槽
2 乾燥工程
3 焼結機クーラー
4 焼結機
5 専用保管槽
6 解砕・粉砕機
7 石炭
8 バインダー
9 混合機
10 成型工程
11 篩い分け工程
12 石炭配合槽
13 コークス炉
14 高炉
15 銑鉄
16 スラグ
17 バイオマス貯留槽
18 微粉炭
19 グレート式乾燥炉プロセス
20 断熱ポット
21 木質バイオマス
22 乾燥ガス
23 ブロワー
24 ベッド上の温度計
25 ベッド中の温度計
26 ベッド下層部の温度計

Claims (9)

  1. 木質バイオマスを加熱して乾燥後に粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留して製造したコークスを高炉に装入することを特徴とする木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  2. 木質バイオマスを、水分含有量が5mass%以上、30mass%未満となるように乾燥することを特徴とする請求項1に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  3. 木質バイオマスの乾燥を、300℃以下の排熱を用いて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  4. 乾燥後の木質バイオマスを粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留して製造したコークスの高炉への装入割合を、高炉に装入する全コークス量の80mass%未満とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  5. 木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm3以上で50cm3以下、嵩密度を0.8g/cm3以上で1.1g/cm3以下にすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  6. 粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の木質バイオマスを原料とした高炉操業方法。
  7. 木質バイオマスを加熱して乾燥した後に粉砕し、石炭とともに成型して成型体とし、該成型体を石炭とともに室炉式コークス炉に装入して乾留することを特徴とする木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
  8. 木質バイオマスを粒径3mm以下に粉砕し、石炭ととともに混合して成型し、成型体の体積を10cm3以上で50cm3以下、嵩密度を0.8g/cm3以上で1.1g/cm3以下とすることを特徴とする請求項7に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
  9. 粉砕した木質バイオマスを、石炭とバインダーとともに成型することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の木質バイオマスを原料としたコークスの製造方法。
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