JP5397347B2 - シリンダヘッドガスケットおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このようなシリンダヘッドガスケットでは、隣接する燃焼室孔と燃焼室孔とが接近していることから、これらの間のシール性が悪いという問題があり、このため上記燃焼室孔と燃焼室孔との間にシムを設けて、これらの間の荷重を増大させるようにしたシリンダヘッドガスケットが知られている(特許文献1)。
このような問題に鑑み、本発明は燃焼室孔と燃焼室孔との間のシール性を良好なものとするシリンダヘッドガスケットおよびその製造方法を提供するものである。
上記基板は、シリンダヘッド側またはシリンダブロック側のいずれか一方に設けた第1基板と、シリンダヘッド側またはシリンダブロック側のいずれか他方に設けた第2基板と、これら第1基板と第2基板との間に位置する中間基板とから構成され、
上記中間基板における上記第2基板側に上記燃焼室孔を囲繞するシムを固定するとともに、
隣接する燃焼室孔と燃焼室孔との間であって、かつ上記中間基板およびシムの表面に増圧部材を設け、
燃焼室孔の整列方向において、上記増圧部材は両燃焼室孔の開口部に露出し、かつ一方の燃焼室孔から他方の燃焼室孔にかけて厚さが均一であることを特徴としている。
上記基板における燃焼室孔が接近する位置に、少なくとも外縁部より内側の厚さが均一となるように軟質材料を付着させ、その後上記軟質材料および基板を貫通するように燃焼室孔を穿設して、
燃焼室孔の整列方向において、上記軟質材料が両燃焼室孔の開口部に露出し、かつ一方の燃焼室孔から他方の燃焼室孔にかけて該軟質材料の厚さが均一に形成された増圧部材を得ることを特徴としている。
このような構成を有するシリンダヘッドガスケットによれば、燃焼室孔が隣接する部分における燃焼室孔の開口部を良好にシールすることができる。
上記シリンダヘッドガスケット1は、シリンダヘッド2に当接する第1基板3と、シリンダブロック4に当接する第2基板5と、これら第1、第2基板3,5の間に配置された中間基板6と、上記第2基板5と中間基板6との間に設けられた環状のシム7とを備えている。
また図1に示すように、上記第1、第2基板3,5および中間基板6には、シリンダブロック4に形成されたシリンダボア4aの位置に形成された燃焼室孔8と、図示しない締結ボルトを挿通するための複数のボルト孔9と、冷却液を流通させるための複数の水孔10と、潤滑油を流通させるための油孔11が穿設されている。
上記第1基板3および第2基板5には、それぞれ各燃焼室孔8を無端状に囲繞するように環状にフルビード3a、5aが形成され、上記第1基板3のフルビード3aはシリンダヘッド2に向けて突出し、第2基板5のフルビード5aはシリンダブロック4に向けて突出するように形成されている。
また第1基板3および第2基板5には、それらの輪郭に沿って、つまりシリンダヘッドガスケット1の略輪郭に沿って、上記フルビード3a、5aと同じ方向に突出する無端状のハーフビード3b、5bが形成されている。
上記シム7はSUS304-1/2により製造されるとともに第1、第2基板3,5および中間基板6の半分程度の板厚t1となっており、シム7の内周縁には上記燃焼室孔8が穿設され、その外周縁は上記フルビード3a、5aの外周側の基部よりも外周側に突出しており、上記フルビード3a、5aよりも幅広となるように設けられている。
さらに本実施例のシム7は、図1に示すように隣接する燃焼室孔8と燃焼室孔8との接近した位置で合流しており、上記合流する部分は円弧状に滑らかに接続されるようになっている。
この増圧部材12はシリコンなどの軟質材料からなり、本実施例ではその厚さt2は約30μmとなっている。なお図2〜図4において、上記シム7の板厚t1や増圧部材12の厚さt2は説明のため誇張したものとなっている。
そして図2に示す燃焼室孔8の整列方向において、上記増圧部材12は両燃焼室孔8の開口部に露出し、かつ一方の燃焼室孔8の開口部から他方の燃焼室孔8の開口部にかけて厚さが均一となるように形成されている。
さらに、図3に示す燃焼室孔8の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材12は上記水孔10よりも中間基板6の中央側に形成され、ここでもシム7の表面における増圧部材12の厚さt2は均一の厚さとなっている。
そして図3に示すように、増圧部材12の端部、詳しくは上記シム7よりも外側には、厚さが徐々に薄くなるように傾斜部12aが形成されており、該傾斜部12aはその先端がシム7の端部と上記水孔10との略中間まで形成されるようになっている。
まず、中間基板6および上記シム7の材料には上記燃焼室孔8が穿設されておらず、少なくとも上記燃焼室孔8よりも内側に残材6a,7aとなる部分を有している。そしてこの状態で上記中間基板6の材料の上面に上記シム7の材料を重ね合わせ、レーザ溶接などの手段によりこれらを固定する。
このようにして中間基板6の材料にシム7の材料を固定したら、上記中間基板6の表面および裏面に上記コーティングを塗布し、このとき中間基板6に固定されたシム7の表面にもコーティングが塗布される。
続いて、このシム7の材料が固定された中間基板6の材料の表面にマスキング(図示せず)を重合し、該マスキングの範囲内にシリコンなどの軟質材料を塗布する。
このとき、上記マスキングによる軟質材料の塗布範囲は、隣接する燃焼室孔8と燃焼室孔8との間をまたいで各燃焼室孔8の内側まで入り込むようにし、かつ少なくとも隣接する燃焼室孔8をまたぐ部分の厚さが均一となるような範囲に設定する。
ここで、軟質材料をスクリーン印刷によって塗布する場合、燃焼室孔8の整列方向に直交する方向において、端部におけるスクリーンの目の粗さを細かくするか、もしくは線径を細くすることにより、軟質材料の厚さを徐々に薄くすることができ、図3に示すような上記傾斜部12aとすることができる。
その他スプレーによって軟質材料を吹き付ける場合、軟質材料を吹き付けた後、燃焼室孔8の整列方向に直交する方向の端部を上方から押圧すれば、軟質材料の端部の厚さを徐々に薄くすることができる。
このようにして中間基板6の材料およびシム7の材料の表面に軟質材料を付着させたら、上記燃焼室孔8の位置で軟質材料ごと中間基板6の材料およびシム7の材料を切断する。
その結果、中間基板6およびシム7に燃焼室孔8が穿設され、該燃焼室孔8の開口部には所定厚さの軟質材料が露出することとなり、一方の燃焼室孔8から他方の燃焼室孔8にかけて厚さが均一に形成された増圧部材12を得ることができ、また該増圧部材12の外側に図3に示す上記傾斜部12aを得ることができる。
このとき本実施例のシリンダヘッドガスケット1は、上記燃焼室孔8と燃焼室孔8との間に上記増圧部材12を備えているため、当該部分に荷重を集中させてシール性を良好なものとすることができる。
ここで、冷却液の流通する冷却液通路がシリンダブロック4の上面に開口したいわゆるオープンデッキタイプのエンジンに対し、上記冷却液通路が開口していないいわゆるクローズドデッキタイプのエンジンの場合、上記燃焼室孔8と燃焼室孔8との間のシール性が悪いという傾向があることから、上記増圧部材12を有する本実施例のシリンダヘッドガスケット1は、このようなクローズドデッキタイプのエンジンに対して特に好適なものとなっている。
また、上記増圧部材12を一方の燃焼室孔8から他方の燃焼室孔8にかけて厚さを均一に形成しているので、両燃焼室孔8の開口部にも荷重を集中させることができ、当該部分のシール性を良好にすることができる。
さらに燃焼室孔8の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材12の外側に厚さを徐々に薄くなるように形成した傾斜部12aを設けることから、上記シリンダヘッドガスケット1をシリンダヘッド2とシリンダブロック4との間で挟持した際に、ボルト孔9近傍の浮き上がりを防止して、シール性を良好とすることができる。
そして、上記中間基板6に設けたシム7は第1、第2基板3、5に設けたフルビード3a、5aよりも幅広となっていることから、シリンダヘッドガスケット1をシリンダヘッド2とシリンダブロック4との間で挟持した際に、上記シム7による圧痕の発生を防止することができる。
さらに、燃焼室孔8の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材12を水孔10よりも基板の中央側に設けることで、第1基板3と中間基板6とシム7とによって形成される断面略三角形の空間を増圧部材12によってなくすことができる。
その結果、上記水孔10より第1基板3と中間基板6との間に流入した冷却液が上記空間に侵入してしまうのを阻止して、該空間で冷却液が蒸発し、第1基板3や中間基板6に形成したコーティングを損傷させてしまうのを防止することができる。
第1実施例および第2実施例のシリンダヘッドガスケット1において、上記ボルト孔9は上記整列する燃焼室孔8を挟むような位置に穿設されており、相対する5組のボルト孔9は上記燃焼室孔8の整列方向に対して略直交する方向に整列している。
そして整列した4つの燃焼室孔のうち、両端に位置する燃焼室孔のさらに外側に隣接した位置に穿設された2組のボルト孔(図5では図示左方の1組のボルト孔を示す)の間には、上記中間基板6における第1基板3側、すなわち上記シム7が設けられている側に、上記増圧部材12が設けられている。
この増圧部材12は燃焼室孔8の開口部に露出するとともに、その反対側は上記第1、第2基板3、5に形成したハーフビード3b、5bに重合しない程度の範囲で形成されている。
また、増圧部材12における燃焼室孔8の整列方向では、その厚さが均一となるように形成され、整列方向に直交する方向では、その端部の厚さが徐々に薄くなるように上記傾斜部が形成されている。
そして上記構成を有するシリンダヘッドガスケット1によれば、上記整列方向の端部に位置する燃焼室孔8のさらに外側に隣接した位置に穿設した2組のボルト孔9の中央部分に荷重を集中させて、当該部分のシール性を良好なものとすることができる。
つまり、ボルトによりシリンダヘッドガスケット1をシリンダヘッド2とシリンダブロック4とで挟持した場合に、上記ボルト孔9とボルト孔9との中央部分が変形して浮き上がってしまう場合があるため、そのような場合に上記増圧部材12を設けることで当該部分のシール性を良好なものとすることができる。
また第1基板3をシリンダブロック4側に設け、第2基板5をシリンダヘッド2側に設けてもよい。
3 第1基板 4 シリンダブロック
5 第2基板 6 中間基板
7 シム 8 燃焼室孔
10 水孔 12 増圧部材
12a 傾斜部
Claims (8)
- シリンダボアの位置にあわせて基板に複数の燃焼室孔が穿設されたシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記基板は、シリンダヘッド側またはシリンダブロック側のいずれか一方に設けた第1基板と、シリンダヘッド側またはシリンダブロック側のいずれか他方に設けた第2基板と、これら第1基板と第2基板との間に位置する中間基板とから構成され、
上記中間基板における上記第2基板側に上記燃焼室孔を囲繞するシムを固定するとともに、
隣接する燃焼室孔と燃焼室孔との間であって、かつ上記中間基板およびシムの表面に増圧部材を設け、
燃焼室孔の整列方向において、上記増圧部材は両燃焼室孔の開口部に露出し、かつ一方の燃焼室孔から他方の燃焼室孔にかけて厚さが均一であることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。 - 燃焼室孔の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材の外側に厚さが徐々に薄くなるように形成した傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
- 燃焼室孔の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材を上記基板に穿設した水孔よりも基板の中央側に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
- 上記第1基板および第2基板に上記燃焼室孔を囲繞するフルビードを設けるとともに、上記シムをこれらフルビードよりも幅広に形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
- 上記整列した燃焼室孔のうち、両端に位置する燃焼室孔のさらに外側に隣接した位置に、上記燃焼室孔の整列方向に対して略直交する方向に少なくとも2つのボルト孔を穿設し、
該ボルト孔とボルト孔との間に、上記増圧部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。 - シリンダボアの位置にあわせて基板に複数の燃焼室孔を穿設するシリンダヘッドガスケットの製造方法において、
上記基板における燃焼室孔が接近する位置に、少なくとも外縁部より内側の厚さが均一となるように軟質材料を付着させ、その後上記軟質材料および基板を貫通するように燃焼室孔を穿設して、
燃焼室孔の整列方向において、上記軟質材料が両燃焼室孔の開口部に露出し、かつ一方の燃焼室孔から他方の燃焼室孔にかけて該軟質材料の厚さが均一に形成された増圧部材を得ることを特徴とするシリンダヘッドガスケットの製造方法。 - 軟質材料の外縁部が徐々に薄くなるように該軟質材料を上記基板に付着させ、
上記燃焼室孔を穿設することにより、燃焼室孔の整列方向に直交する方向において、上記増圧部材の外側に厚さが徐々に薄くなる傾斜部を形成することを特徴とする請求項6に記載のシリンダヘッドガスケットの製造方法。 - 上記基板に上記燃焼室孔の位置にあわせてシムを固定し、その後該基板およびシムの表面に軟質部材を付着させてから、上記軟質部材、シム、基板を貫通するように燃焼室孔を穿設することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケットの製造方法。
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