以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、本発明に係るブラシモータを電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用した例を説明するが、本発明の適用対象は電動パワーステアリング装置に限定されるものではない。また、本発明を電動パワーステアリング装置に適用する場合でも、その方式は問わない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の構成図である。まず、図1を用いて、本実施形態のブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の概要を説明する。電動パワーステアリング装置80は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ステアリングギヤ88と、タイロッド89とを備える。また、電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとを備える。
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部がトルクセンサ91aを介して操舵力アシスト機構83に連結される。出力軸82bは、一方の端部が操舵力アシスト機構83に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。本実施形態では、入力軸82a及び出力軸82bは、鉄等の磁性材料から形成される。
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラック88bに連結される。
操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、ブラシモータ10とを含む。減速装置92は、出力軸82bに連結される。ブラシモータ10は、減速装置92に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる。なお、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングシャフト82と、トルクセンサ91aと、減速装置92とによりステアリングコラムが構成されている。ブラシモータ10は、前記ステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
図2は、実施形態1の電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。図2は、一部を断面として示してある。減速装置92はウォーム減速装置である。減速装置92は、減速装置ハウジング93と、ウォーム94と、玉軸受95aと、玉軸受95bと、ウォームホイール96と、ホルダ97とを備える。ウォーム94は、ブラシモータ10の軸18にスプライン、または弾性カップリングで結合される。ウォーム94は、玉軸受95aと、ホルダ97に保持された玉軸受95bとで回転自在に減速装置ハウジング93に保持されている。ウォームホイール96は、減速装置ハウジング93に回転自在に保持される。ウォーム94の一部に形成されたウォーム歯94aは、ウォームホイール96に形成されているウォームホイール歯96aに噛み合う。ブラシモータ10の回転力は、ウォーム94を介してウォームホイール96に伝達されて、ウォームホイール96を回転させる。減速装置92は、ウォーム94及びウォームホイール96によって、ブラシモータ10のトルクを増加する。そして、減速装置92は、図1に示すステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。
図1に示すトルクセンサ91aは、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91bは、電動パワーステアリング装置80が搭載される車両の走行速度を検出する。ECU90は、ブラシモータ10と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bと電気的に接続される。ECU90は、ブラシモータ10の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ91a及び車速センサ91bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ91aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ91bから車両の走行速度Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと走行速度Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいてブラシモータ10へ供給する電流値を調節する。
ステアリングホイール81に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時に、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ、走行速度Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、ブラシモータ10の動作を制御する。ブラシモータ10が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。出力軸82bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介してロアシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に伝達される。ピニオンシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、操舵輪を転舵させる。次に、ブラシモータ10について説明する。
図3は、実施形態1のブラシモータの側面図である。図4は、図3のA−A断面矢視図である。図4に示すように、ブラシモータ10は、ハウジング11と、フランジ12と、マグネット13と、回転子14と、軸18と、ブラシ19と、ブラシ保持手段としてのブラシホルダ20とを含む。ハウジング11は、磁性材料で略円筒形である。ハウジング11を形成する磁性材料は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等である。ハウジング11の一方の端部は、底部11aにより閉塞される。底部11aは、例えばハウジング11と一体に形成される。また、ハウジング11の他方(底部11aとは反対側)の端部である開口は、フランジ12により閉塞される。
マグネット13は、ハウジング11の内側面にマグネットホルダ13aによって取り付けられる。マグネット13は、2つ設けられる。2つのマグネット13は、互いに極性が逆に設けられる。マグネット13は、マグネット飛散防止カバー13bにより覆われる。これにより、マグネット飛散防止カバー13bは、2つのマグネット13の万一の飛散を防止する。回転子14は、ハウジング11内に設けられる。回転子14は、軸18によって中心を貫かれ、かつ、軸18に固定される。
回転子14は、整流子15と、コア16と、コイル17とを含む。整流子15は、絶縁体で形成された円柱状の絶縁部の側面に、導電体で形成された複数の導電部15aが等間隔で平行に配置されているものである。コア16は、磁性材料を用いて形成される。コア16は、例えば、磁性材料としてケイ素鋼板が用いられ、ケイ素鋼板が積層されて形成される。回転子14のコア16部分は、複数のスロット(溝)を有する。コイル17は、前記スロットに巻き回されている。コイル17の一端は、一つの導電部15aに接続されており、他端は別の導電部15aに接続されている。
軸18は、軸受18aと軸受18bとによって、回転軸Zr1を中心に回転できるように支持される。軸受18aは、ハウジング11の内側であって、フランジ12の略中央部分に設けられる。軸受18bは、ハウジング11の内側であって、底部11aの略中央部分に設けられる。回転軸Zr1は、軸18の中心軸に相当し、回転子14の回転軸とも一致する。軸18は、ジョイント18cが取り付けられる。ジョイント18cは、図2に示す減速装置92のウォーム94がスプライン結合される。なお、軸18とウォーム94とは、弾性カップリングで結合されてもよい。
ブラシ19は、ハウジング11内で、整流子15の径方向で整流子15と対向する位置に複数設けられる。ブラシ19は、略角柱、好ましくは四角柱状の多面体である。より好ましくは、ブラシ19は、整流子15と対向する面に含まれる4つの頂点のうち、フランジ12側ではなく、コア16側にある2つ頂点のいずれかが突出する形状である。ブラシ19は、この突出している頂点が整流子15と接する。このような構造により、ブラシモータ10は、ブラシ19と整流子15とが接触する位置が明確となる。その結果、ブラシモータ10は、ブラシ19から整流子15への電力の供給が安定する。また、ブラシモータ10のユーザーは、ブラシ19の摩耗状態も容易に予測できる。
ブラシ19は、接触抵抗が小さく機械的衝撃に耐えられる材料により構成さる。例えば、ブラシ19は、黒鉛により構成される。ブラシ19は、ブラシホルダ20により支持される。ブラシ19は、ピグテイル19a(導線)が電気的に接続される。さらに、ピグテイル19aは、電力供給部材19bと電気的に接続される。電力供給部材19bは、ECU90の端子と接続され、ECU90により制御された電流値の電力をピグテイル19aに導く。ECU90からピグテイル19aを介してブラシ19に供給された電流は、ブラシ19と接触する整流子15の導電部15aを通ってコイル17に導かれる。コイル17に導かれた電流は、コイル17を通り、整流子15の別の導電部15aに至って別のブラシ19に流入する。ブラシモータ10は、コイル17に電流が流れることによって磁界が発生する。ブラシモータ10は、この磁界と、マグネット13の磁界との相互作用により回転子14が回転する。次に、ブラシ19の配置について説明する。
図5は、実施形態1のブラシの配置を模式的に示す説明図である。図6は、実施形態1のブラシの配置を模式的に示す斜視図である。本実施形態のブラシ19は4つであるが、図5及び図6には、3つを省略し、1つのみを記載している。また、図5ではブラシホルダ20を省いた状態のブラシモータ10を、図6ではブラシ19とブラシホルダ20とが分解された状態のブラシモータ10を記してある。なお、ブラシ19の数は4つに限定されない。また、以下に説明するブラシ19の配置は好ましい配置であるが、ブラシ19の配置は以下に説明する配置に限定されない。
ブラシ19は、図5及び図6に示すように、長手方向Lが回転軸Zr1と平行な方向と交差し、かつ、整流子15の径方向Kと直交するように配置されている。ここで、ブラシ19の長手方向Lは、略角柱、好ましくは四角柱状の形状であるブラシ19の辺のうち、整流子15に対向するブラシ19の面に含まれる辺を除いた辺の中で、最も長い辺の方向に平行な方向である。したがって、ブラシ19の辺のうち、整流子15に対向するブラシ19の面に含まれる辺を除いた辺のうち、回転軸Zr1と平行な方向と交差し、かつ整流子15の径方向Kと直交する辺が、最も長い辺となるようにブラシ19が配置される。整流子15の径方向Kとは、回転軸Zr1を通り、かつ回転軸Zr1と直交する方向である。この例において、径方向Kは、回転軸Zr1を通り、かつ整流子15に対向するブラシ19の面に含まれる辺を除いた辺の中で最も長いブラシ19の辺の中点Mを貫く方向となる。
ブラシ19は、長手方向Lが回転軸Zr1と平行な方向と交差するように配置されていることで、整流子15と接触した状態で、回転軸Zr1方向における自身(ブラシ19)の長さを短くできる。さらに好ましくは、ブラシ19は、長手方向Lが回転軸Zr1と平行な方向と直交するように配置されていることで、整流子15と接触した状態で、回転軸Zr1方向における自身(ブラシ19)の長さをさらに短くできる。これにより、ブラシモータ10は、回転軸Zr1方向における整流子15の長さを短くできる。すなわち、ブラシモータ10は、回転軸Zr1方向における自身(ブラシモータ10)の長さを短くできる。その結果、ブラシモータ10は、電動パワーステアリング装置80に搭載された場合に、電動パワーステアリング装置80を小型化でき、かつ、電動パワーステアリング装置80を軽量化できる。次に、ブラシ19及びブラシホルダ20の構成をより詳細に説明する。
図7は、実施形態1のブラシ及びブラシホルダを模式的に示す説明図である。図7に示すように、ブラシホルダ20は、ブラシケース21と、ケース係合部としての凸部22と、力付与手段としてのスプリング23とを含む。ブラシケース21は、図7に示す第1面21aと、第2面21bと、第3面(底面)21cと、図6に示す第4面21dと、第5面21eとを含む。図6に示すように、第1面21aと、第2面21bと、第4面21dと、第5面21eとは、第3面(底面)21cと交差する。第1面21aと第2面21bとは対向する。第4面21dと第5面21eとは対向する。第1面21aと第2面21bとは、整流子15の回転方向Rで異なる位置の面である。なお、回転方向Rは、第1回転方向R1と、第2回転方向R2とを含む。第2回転方向R2は、第1回転方向R1とは反対の方向である。
第1面21aは、第2面21bよりも第1回転方向R1の面であると共に、第2面21bよりも第2回転方向R2の面である。ブラシケース21は、第1面21aから第5面21eの5つの面により、開口21fを有する箱状に形成される。なお、第1面21aと、第2面21bと、第3面(底面)21cと、第4面21dと、第5面21eとは、それぞれ、内側の面(ブラシ19が配置差れる側の面)と外側の面との2つの面を有するが、以下の説明では、前記2つの面のうち内側の面とする。ブラシケース21は、開口21fが整流子15の径方向で整流子15に対向するように設けられる。ブラシケース21は、ブラシ19よりも大きく形成される。これは、ブラシ19の温度が上昇した際に、ブラシケース21内でブラシ19が熱膨張するためである。すなわち、ブラシケース21は、自身(ブラシケース21)とブラシ19との間に隙間を有してブラシ19を保持する。また、ブラシケース21は、図7に示すように、ブラシ19の少なくとも一部が開口21fから突出するように形成される。
ここで、ブラシ19は、切欠部19cと、ブラシ係合部としての凹部19dとを含む。切欠部19cは、略角柱、好ましくは四角柱状のブラシ19のうち、第3面(底面)21cと対向する部分に形成される。切欠部19cは、少なくとも、ブラシ19の一部と第3面(底面)21cとの間に、後述するスプリング23を収納できる大きさに形成される。本実施形態では、図6に示すように、切欠部19cは、ブラシ19のうち、第1面21aと対向する部分の一部と、第3面(底面)21cと対向する部分の一部とを切り欠くように形成される。凹部19dは、ブラシ19のうち、第4面21dと対向する部分と、第5面21eと対向する部分との2箇所に設けられる。本実施形態では、この2つの凹部19dは、回転軸Zr1と平行な線上VLに位置する。凹部19dは、整流子15の周方向、すなわち回転方向Rで切欠部19cとは異なる位置に設けられる。
凸部22は、図6に示す第4面21dと第5面21eとに、合計2つ設けられる。第4面21dに設けられる凸部22は、第5面21e側に突出する。第5面21eに設けられる凸部22は、第4面21d側に突出する。この2つの凸部22は、ブラシ19がブラシケース21に収納された際に、それぞれ2つの凹部19dと係合する。これにより、図7に示すように、ブラシ19は、凹部19dと係合する凸部22を支点とし、回動軸Zr2を中心に回動できるように、ブラシケース21に保持される。回動軸Zr2は、2つの凹部19dを通る軸であり、本実施形態では回転軸Zr1と平行である。これにより、ブラシ19は、ブラシホルダ20によって、回転軸Zr1と直交する面内で回動可能に保持される。
ここで、本実施形態では、ブラシモータ10は、凹部がブラシ19に設けられ、凸部がブラシケース21に設けられているが、ブラシモータ10は、凹部がブラシケース21に設けられ、凸部がブラシ19に設けられてもよい。また、ブラシモータ10は、ブラシ19及びブラシケース21に形成される穴(孔)と、この穴(孔)に挿入されるピンとを含んでもよい。すなわち、ブラシモータ10は、ブラシ19がブラシケース21に対して回動できる構造であればよい。また、ブラシ19は、回転軸Zr1と直交する面内で回動可能に保持されなくてもよく、回転軸Zr1と交差する面内で回動可能に保持されていればよい。すなわち、回転軸Zr1と回動軸Zr2とは、平行でなくともよい。
スプリング23は、弾性部材である。具体的には、スプリング23は、圧縮コイルスプリングである。スプリング23は、ブラシケース21内であって、切欠部19c内に収納される。具体的には、スプリング23は、一方の端部が第3面(底面)21cに接触し、他方の端部が切欠部19cのうち第3面(底面)21cと対向する面に接触する。また、本実施形態では、スプリング23の周部(端部以外の部分)は、第1面21aに接触すると共に、切欠部19cのうち第1面21aと対向する面にも接触する。スプリング23は、切欠部19cのうち第3面(底面)21cと対向する面に、第3面(底面)21cから離れる方向(整流子15に近づく方向)へ押す力を与える。スプリング23がブラシ19に対して力を与える部位は、整流子15の回転方向Rで凹部19dと離れている。これにより、ブラシ19は、少なくとも一部が開口21fから突出するように、回動軸Zr2を中心に回動する。ブラシ19は、この突出した部分が整流子15と接触する。この時、本実施形態では、ブラシ19は、第2面21bと接触する。
以上の構成のブラシモータ10は、先行技術(例えば、特許文献2、特許文献3)よりも構造がシンプルである。よって、ブラシモータ10は、先行技術よりも自身(ブラシモータ10)の構造の複雑化を抑制できる。また、ブラシモータ10は、先行技術よりも部品点数が少ない。よって、ブラシモータ10は、製造コストの増加を抑制できる。また、部品点数が少なく、かつ、シンプルな構造のブラシモータは、安定した作動が期待されることができる。よって、ブラシモータ10は、信頼性が向上する。次に、ブラシモータ10が作動音及び振動を低減できる原理を説明する。
整流子15が回転すると、ブラシ19は、回動軸Zr2を中心に回動しようとする力を整流子15から受ける。具体的には、整流子15が第1回転方向R1方向に回転する場合、図7に示すように、ブラシ19は、第1回動方向R1aの力を受ける。また、整流子15が第2回転方向R2方向に回動する場合、ブラシ19は、第2回動方向R2aの力を受ける。まずは、整流子15が停止状態から第2回転方向R2に回転する場合を説明する。整流子15から力を受けていないとき、ブラシ19は、第2面21bに接触している。
この状態で、整流子15が第2回転方向R2に回転すると、ブラシ19は、第2回転方向R2の力を整流子15から受ける。しかしながら、ブラシ19は、第2面21bに接触しているため、第2回転方向R2の回動が第2面21bによって規制される。加えて、ブラシ19は、スプリング23により第2面21bに押し付けられている。結果として、ブラシ19は、回転方向R(第1回転方向R1及び第2回転方向R2)の回動が規制される。これにより、ブラシ19は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。結果として、ブラシモータ10は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15が停止状態から第1回転方向R1に回転する場合を説明する。整流子15から力を受けていないとき、ブラシ19はスプリング23から力を受けて、第2面21bに接触している。この状態で、整流子15が第1回転方向R1に回転すると、ブラシ19は、第1回転方向R1の力を整流子15から受ける。ここで、スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも大きい場合、ブラシ19は、第1回転方向R1方向の回動がスプリング23によって規制される。加えて、ブラシ19は、第2回転方向R2の回動も第2面21bにより規制される。結果として、ブラシ19は、回転方向R(第1回転方向R1及び第2回転方向R2)の回動が規制される。
一方、スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも小さい場合、ブラシ19は、第1回動方向R1aに回動する。しかしながら、スプリング23がブラシ19に第2回動方向R2aの力を与えているため、ブラシモータ10は、ブラシ19と第1面21aとが衝突する際の衝撃を低減できる。また、スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも小さい状態で、整流子15が第1回転方向R1に回転し続けると、ブラシ19は、第1面21aに接触した状態が維持される。これにより、ブラシ19は、第1回転方向R1方向の回動が第1面21aによって規制される。
このように、ブラシ19は、整流子15が停止状態から第1回転方向R1に回転する場合に、第1回動方向R1aの回動が規制される。これにより、ブラシ19は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。また、ブラシ19は、第1回動方向R1a方向に回動する場合も第1面21aと衝突の衝撃が抑制される。結果として、ブラシモータ10は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる場合を説明する。スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも大きい場合、ブラシ19は、第2面21bと接触している。よって、ブラシ19は、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる際に、第2回動方向R2aの回動が第2面21bによって規制される。これにより、ブラシ19は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。
一方、スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも小さい場合、ブラシ19は、第1面21aと接触している。よって、ブラシ19は、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる際に、第2回動方向R2a方向に回動する。しかしながら、本実施形態のブラシ19は、切欠部19cがスプリング23の周部に接触している。スプリング23は、整流子15の径方向と直交する方向にも弾性力を有する。これにより、スプリング23は、切欠部19cと第1面21aとの間に挟み込まれると、ブラシ19を第1回動方向R1a方向に回動させる力をブラシ19に与える。よって、スプリング23は、ブラシ19と第2面21bとが衝突する際の衝撃を低減できる。このように、ブラシモータ10は、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる際も、ブラシ19と第2面21bとが衝突する回数を低減、または、ブラシ19と第2面21bとが衝突する際の衝撃を低減できる。結果として、ブラシモータ10は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる場合を説明する。スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも大きい場合、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わっても、ブラシ19は第2面21bとの接触がスプリング23により維持される。よって、ブラシ19は、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる際に、第1回転方向R1の回動がスプリング23によって規制される。これにより、ブラシ19は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。
一方、スプリング23がブラシ19を第2面21bに押し付ける力が、ブラシ19が整流子15から受ける力よりも小さい場合、ブラシ19は、第1回動方向R1aに回動する。しかしながら、ブラシ19は、第2回動方向R2aの力をスプリング23から受ける。これにより、スプリング23は、ブラシ19と第2面21bとが衝突する際の衝撃を低減できる。このように、ブラシモータ10は、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる際も、ブラシ19と第1面21aとが衝突する回数を低減、または、ブラシ19と第1面21aとが衝突する際の衝撃を低減できる。結果として、ブラシモータ10は、作動音及び振動を低減できる。
ここで、本実施形態では、ブラシ19が第1面21aまたは第2面21bと接触する場合を説明したが、ブラシ19は、第1面21aまたは第2面21bと接触しなくてもよい。この場合でも、ブラシ19は、整流子15と接触(干渉)することで、回動軸Zr2を中心とした回動が整流子15により規制される。例えば、整流子15が第2回転方向R2に回転している場合、ブラシ19は、第2面21bと接触しなくても、一定の角度以上は第2回動方向R2aに回動できなくなる。また、整流子15が第1回転方向R1に回転している場合、ブラシ19は、第1面21aと接触しなくても、一定の角度以上は第1回動方向R1aに回動できなくなる。これにより、ブラシモータ10は、ブラシ19とブラシケース21とが接触しないため、作動音及び振動を低減できる。
(実施形態2)
図8は、実施形態2のブラシ及びブラシホルダを模式的に示す説明図である。図8に示す実施形態2のブラシモータ30は、ブラシがブラシケース内で回動する点で、実施形態1のブラシモータ10と共通する。ブラシモータ30は、図7に示す実施形態1のブラシケース21に替えてブラシケース31と、ブラシ19に替えてブラシ39とを含む。また、ブラシモータ30は、図7に示す凹部19d及び凸部22を備えない。
ブラシケース31は、第2面31bを含む。第2面31bは、図7に示す第2面21bに相当する位置に設けられる。すなわち、第2面31bは、第1面21aと対向し、第1面21aよりも第2回転方向R2に設けられる。第2面31bは、ガイド手段としての凸湾曲32を含む。凸湾曲32は、第1面21a側に向かって膨らむ部分である。凸湾曲32は、円柱の周部の一部のような形状に形成される。ブラシ39は、凹湾曲部39eを含む。凹湾曲部39eは、第1面21a側に向かって窪む部分である。凹湾曲部39eは、凸湾曲32と対向する部分に形成される。凹湾曲部39eは、凸湾曲32に沿った形状に形成され、凸湾曲32と接触する。凹湾曲部39eは、スプリング23がブラシ19に対して力を与える部位から、整流子15の回転方向Rで離れた位置に設けられる。
凹湾曲部39eと凸湾曲32とが接触することにより、ブラシ39は、整流子15の径方向に移動しようとすると、凸湾曲32によってガイドされる。これにより、ブラシ39は、回動軸Zr2を中心として回動する、すなわち円弧状に移動することになる。これは、スプリング23がブラシ39に与える整流子15の径方向の力が、凹湾曲部39eと凸湾曲32とが係合することにより、回動軸Zr2を中心にブラシ39を回動させる力に変換されるためである。具体的には、前記力は、図8に示す第2回動方向R2aの力である。第2回動方向R2aの力は、ブラシ39のうち整流子15側の部分を第2面31bに近づける力である。
以上の構成のブラシモータ30は、先行技術(例えば、特許文献2、特許文献3)よりも構造がシンプルである。よって、ブラシモータ30は、先行技術よりも自身(ブラシモータ30)の構造の複雑化を抑制できる。また、ブラシモータ30は、先行技術よりも部品点数が少ない。よって、ブラシモータ30は、製造コストの増加を抑制できる。また、部品点数が少なく、かつ、シンプルな構造のブラシモータは、安定した作動が期待されることができる。よって、ブラシモータ30は、信頼性が向上する。次に、ブラシモータ30が作動音及び振動を低減できる原理を説明する。
まずは、整流子15が停止状態から第2回転方向R2に回転する場合を説明する。整流子15が第2回動方向R2aに回転すると、ブラシ39は、第2面31b側に近づく力を整流子15から受ける。整流子15が第2回転方向R2に回転し始める前、ブラシ39は、スプリング23によって押されて第2回動方向R2aの力が作用している。これにより、ブラシ39は、第2面31bに接触している。このため、第2回転方向R2の移動が第2面31bによって規制される。これにより、整流子15が第2回動方向R2aに回転を始める際、また、整流子15が第2回動方向R2aに回転する間、ブラシ39は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。結果として、ブラシモータ30は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15が停止状態から第1回転方向R1に回転する場合を説明する。整流子15から力を受けていないとき、ブラシ39はスプリング23から力を受けて、第2面31bに接触している。この状態で、整流子15が第1回転方向R1に回転すると、ブラシ39は、第1面21a側に近づく力を整流子15から受ける。ここで、スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも大きい場合、ブラシ39は、第1回転方向R1方向の移動がスプリング23によって規制される。加えて、ブラシ39は、第2回転方向R2の移動も第2面31bにより規制される。結果として、ブラシ39は、回転方向R(第1回転方向R1及び第2回転方向R2)の回動が規制される。
一方、スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも小さい場合、ブラシ39は、第1回転方向R1に移動する。しかしながら、スプリング23から受ける力により、ブラシ39は、第2回動方向R2aに回動する力が作用している。また、本実施形態のブラシ39は、切欠部19cがスプリング23の周部に接触している。スプリング23は、整流子15の径方向と直交する方向にも弾性力を有する。これにより、スプリング23は、切欠部19cと第1面21aとの間に挟み込まれると、ブラシ39を第1面21aから遠ざける力をブラシ39に与える。以上により、ブラシモータ30は、ブラシ39と第1面21aとが衝突する際の衝撃を低減できる。また、スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも小さい状態で、整流子15が第1回転方向R1に回転し続けると、ブラシ39は、第1面21aに接触した状態が維持される。これにより、ブラシ39は、第1回転方向R1方向の移動が第1面21aによって規制される。
このように、整流子15が停止状態から第1回転方向R1に回転する場合、ブラシ39は、第1回転方向R1の移動が規制される。これにより、ブラシ39は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。また、ブラシ39は、第1面21a側に近づく方向に移動する場合も第1面21aと衝突する際の衝撃が低減される。結果として、ブラシモータ30は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる場合を説明する。スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも大きければ、ブラシ39は、第2面31bと接触している。よって、整流子15の回転方向が第1回転方向R1から第2回転方向R2に切り替わる際、ブラシ39は、第2回転方向R2に移動しない。これにより、ブラシ39は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。結果として、ブラシモータ30は、作動音及び振動を低減できる。
次に、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる場合を説明する。スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも大きい場合、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わっても、ブラシ39は第2面31bとの接触がスプリング23により維持される。このように、ブラシ39は、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる際に、第1回転方向R1の回動がスプリング23によって規制される。これにより、ブラシ39は、ブラシケース21と衝突する回数が低減される。
一方、スプリング23がブラシ39を第2面31bに押し付ける力が、ブラシ39が整流子15から受ける力よりも小さい場合、ブラシ39は、第1回転方向R1に移動する。しかしながら、ブラシ39は、スプリング23から受ける力により、第2回動方向R2aに回動する力が作用している。これにより、スプリング23は、ブラシ39と第2面31bとが衝突する際の衝撃を低減できる。このように、ブラシモータ30は、整流子15の回転方向が第2回転方向R2から第1回転方向R1に切り替わる際も、ブラシ39と第1面21aとが衝突する回数を低減、または、ブラシ39と第1面21aとが衝突する際の衝撃を低減できる。結果として、ブラシモータ30は、作動音及び振動を低減できる。