以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、車両10における車室11の前部であって車幅方向についての中央部には、前後方向へ延びるセンターコンソール12が設けられている。センターコンソール12は、特許請求の範囲におけるコンソールに該当するものである。センターコンソール12において、後述するシートクッション15の側方となる箇所は他の箇所よりも高く、その上面12Uは、乗員が姿勢を崩さずにひじを置くことのできる高さに設定されている。センターコンソール12にはシフトレバー、サイドブレーキレバー等の操作部が設けられるほか、カップホルダ、灰皿、小物入れ等の収納スペースが設けられている。
なお、車両10及びその構成部材について、車幅方向を規定する場合には、センターコンソール12を基準とする。センターコンソール12に近い側を「車内側」といい、センターコンソール12から遠ざかる側を「車外側」というものとする。
センターコンソール12の車幅方向両側には、一対の車両用シート13,14が並設されている。両車両用シート13,14は、車室11内の前部に設けられたもの(前席)であって、運転席及び助手席を構成している。各車両用シート13,14は、ともに略水平状に配置されたシートクッション(座部)15と、そのシートクッション15の後側に配置されたシートバック(背もたれ部)16とを備えており、乗員(運転者及び同乗者)が車両10の前側を向いてシートクッション15に着座してシートバック16に凭れることが可能となっている。シートクッション15の座面は、センターコンソール12の上記上面12Uよりも低い箇所に位置している。
各シートバック16内には、その骨格をなすシートフレーム17が配置されている(図4、図6及び図9参照)。シートフレーム17の一部は、上記シートバック16の幅方向についての両側部(車外側の側部18と車内側の側部19)の内部に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部17A」という)は、金属板等の板材を曲げ加工することによって形成されている。各側部18,19についてサイドフレーム部17Aの周囲には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド(図示略)が配置されている。また、シートパッドは表皮(図示略)によって被覆されている。
車室11内には、車両10に対し前方から衝突による衝撃が加わったときに、各車両用シート13,14に着座した乗員の移動を制限して同乗員を保護するためのシートベルト装置(図示略)が車両用シート13,14毎に装備されている。なお、両乗員を区別するために、車両用シート13に着座している乗員を「乗員P1」とし、車両用シート14に着座している乗員を「乗員P2」とする。
上記のように一対の車両用シート13,14が並設された車両10のボディサイド部21,22に対し、側突等により、図1及び図2において実線の矢印及び二点鎖線の矢印で示すように、同車両用シート13,14の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。
ここで、ボディサイド部21,22とは、車両10の車幅方向についての両側部に配置された部材を指し、例えば、前席に対応するボディサイド部21,22は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。
上記ボディサイド部21,22に対し衝撃の加わる方向は、車両用シート13,14の並設方向、すなわち車両10の進行方向に直交する方向が代表的であるが、ここではこれに限らず、同並設方向(車両進行方向に直交する方向)に斜めに交差する方向も含まれるものとする。こうした衝撃が加わった場合、同車幅方向については、慣性力により乗員P1,P2がその位置にとどまろうとするのに対し、ボディサイド部21,22は車内側(他方のボディサイド部22,21側)へ移動したり、変形したりしようとする。車両10を基準とすると、乗員P1,P2は同車両10に対し衝撃箇所側へ移動しようとする。
例えば、図2において実線の矢印で示す方向(右方)から側突等による衝撃が加わった場合、乗員P1,P2は右方へ移動しようとする。また、同図2において二点鎖線の矢印で示す方向(左方)から衝撃が加わった場合、乗員P1,P2は左方へ移動しようとする。また、車両10において、側方からの衝撃を直接受ける箇所であるボディサイド部21,22は、それぞれ車内側へ変形しようとする。
衝撃箇所に近い側の車両用シート13,14に着座し、かつ衝撃により衝撃箇所側へ移動しようとする上記乗員P1,P2は、側突等により車室11内へ変形したボディサイド部21,22と接触するおそれがあるが、これらの乗員P1,P2については、いわゆるサイドエアバッグ装置30によって保護される。車両10に対しては、車両用シート13,14の並設方向の両方から衝撃が加わる可能性があることから、上記サイドエアバッグ装置30は、一対の車両用シート13,14の各々に装備されている。例えば、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合には、右側の車両用シート13に着座している乗員P1が、実線で示すサイドエアバッグ装置30によって保護される。
各サイドエアバッグ装置30は、ともにシートバック16の車外側の側部18内に収納されたエアバッグ31及びインフレータ32(図2参照)を備える。各サイドエアバッグ装置30では、衝撃に応じてインフレータ32からエアバッグ31に膨張用ガスが供給される。膨張用ガスの供給されたエアバッグ31は、シートバック16の側部18から飛び出し、乗員P1,P2とボディサイド部21,22との間の狭い隙間で膨張展開する。このエアバッグ31により乗員P1,P2が拘束され、ボディサイド部21,22を通じて乗員P1,P2へ伝わる外側方からの衝撃が緩和される。
また、衝撃箇所から遠い側の車両用シート13,14に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P1,P2については、本実施形態のエアバッグ装置40によって保護される。ここで、衝撃箇所から遠い側の車両用シート13,14に着座した乗員P1,P2が、慣性力により衝撃箇所側へ移動しようとすることについては上述したが、センターコンソール12は、これらの乗員P1,P2の腰部PPの上記移動を規制する。これに対し、着座姿勢を採った乗員P1,P2の上半身PUのうち、センターコンソール12よりも高い部位については、衝撃箇所側への移動を規制するものが特段ない。そのため、乗員P1,P2の腰部PPがセンターコンソール12に当った後は、同乗員P1,P2の上半身PUが上側ほど上記衝撃箇所に近づくように傾斜する。この傾斜により頭部PHが上記衝撃箇所に最も近づき、隣(衝撃箇所側)の車両用シート13,14及び乗員P2,P1や、衝撃により車室11内へ変形したボディサイド部21,22に接触するおそれがある。
本実施形態のエアバッグ装置40は、この衝撃箇所側へ変位する上半身PUを受け止めて、上記隣(衝撃箇所側)の車両用シート13,14及び乗員P1,P2や、ボディサイド部21,22等との接触から保護する。車両10に対しては、車両用シート13,14の並設方向の両方から衝撃が加わる可能性があることから、エアバッグ装置40は、一対の車両用シート13,14の各々に装備されている。例えば、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合には、同両図の左側の車両用シート14に着座している乗員P2が、実線で示すエアバッグ装置40によって保護される。
各エアバッグ装置40は、インフレータアセンブリ41及びエアバッグ46を、主要な構成部材として備えている。これらのインフレータアセンブリ41及びエアバッグ46は、各シートバック16について、最寄りのボディサイド部21,22から遠い側(車内側)の側部19内に収容されている。例えば、図1及び図2において右側のボディサイド部21を最寄りのボディサイド部とする右側の車両用シート13では、左側の側部19内にエアバッグ46及びインフレータアセンブリ41が収容されている。また、図1及び図2において左側のボディサイド部22を最寄りのボディサイド部とする左側の車両用シート14では、右側の側部19内にエアバッグ46及びインフレータアセンブリ41が収容されている。
次に、上記主要な構成部材の各々について説明する。ここで、本実施形態では、エアバッグ装置40及びその主要な構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、車両用シート13のシートバック16を基準としている。シートバック16の起立する方向を「上下方向」とし、この方向に対し車両10の略前後方向に直交する方向を「前後方向」としている。通常、シートバック16は後方へ傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
<インフレータアセンブリ41>
図4は、展開膨張したエアバッグ46を、乗員P2等とともに模式的に示している。また、図8は、図4のエアバッグ46内に配置されたインフレータアセンブリ41を示している。さらに、図9は、図8のインフレータアセンブリ41を斜め後ろ上方から見た状態を示している。これらの図4、図8及び図9の少なくとも1つに示すように、インフレータアセンブリ41は、ガス発生器としてのインフレータ42と、そのインフレータ42を外側から覆うリテーナ44とを備えて構成されている。インフレータ42は略上下方向に細長い略円柱状をなしている。インフレータ42の内部には、外部からの作動信号に応じて反応して膨張用ガスを生ずるガス発生剤(図示略)が収容されている。
インフレータ42には、膨張用ガスの生成態様の違いから複数のタイプがあるが、ここでは、パイロタイプと呼ばれるものが用いられている。インフレータ42の上端部には、同インフレータ42への制御信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。また、インフレータ42の下端部には、略円柱状をなすガス噴出部43が設けられている。
なお、インフレータ42として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
リテーナ44は、その大部分が金属板等の板材を曲げ加工等することによって略上下方向に細長い略筒状に形成されている。リテーナ44には、これを上記サイドフレーム部17Aに取付けるための係止部材として、複数本(本実施形態では2本)のボルト45が固定されている。
なお、インフレータアセンブリ41は、インフレータ42とリテーナ44とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ46>
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、エアバッグ46は、車両10の走行中等に側突等により衝撃が外側方からボディサイド部21,22に加わったときに、上記インフレータ42からの膨張用ガスにより膨張展開する。そして、エアバッグ46は、その一部をシートバック16の車内側の側部19内に残した状態で同シートバック16から車両10の略前方へ向けて飛び出し、車両用シート13に着座した乗員P1,P2の衝撃箇所側近傍で膨張展開することにより、その乗員P1,P2を衝撃から保護する。
図5は、展開膨張状態のエアバッグ46を示し、図11は図5のX−X線に沿った断面構造を示している。また、図12(A)は同図5のY−Y線に沿った断面構造を示し、図12(B)は同図12(A)のZ部を拡大して示している。
エアバッグ46は、1枚の基布を、その中央部分で二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ46の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車外側に位置するものを車外側布部47といい、車内側に位置するものを車内側布部48というものとする。
上記基布としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
エアバッグ46は、車両用シート13,14に着座した乗員P1,P2の上半身PUのうち、胸部PTと、少なくとも胸部PTに隣接する部位とを保護対象として、その保護対象の衝撃箇所側の近傍で展開膨張し得る大きさ及び形状を有している。本実施形態では、頭部PH及び胸部PTを主な保護対象としている。また、エアバッグ46は、センターコンソール12のうちシートクッション15の側方部分の上面12Uよりも下側であって、センターコンソール12と乗員P1,P2との間で展開膨張する部分46Lを、自身の下部に有している(図2及び図3参照)。
車外側及び車内側の両布部47,48の上記結合は、周縁結合部49においてなされている。周縁結合部49は、両布部47,48の境界部分(折り返し部分)を除く周縁部において同両布部47,48を相互に結合している。両布部47,48間であって周縁結合部49によって囲まれた空間(エアバッグ46の内部空間)は、膨張用ガスによって膨張する箇所である。
なお、上記エアバッグ46は、互いに独立した一対の布部(車外側布部47及び車内側布部48)を車幅方向に重ね合わせ、両布部47,48を袋状となるように、それらの周縁部において結合させることにより形成したものであってもよい。この場合には、周縁結合部49は、車外側布部47及び車内側布部48を無端状(環状)に結合することにより形成される。
ここで、車両用シート13,14に着座した乗員P1,P2の上半身PUの各部位を適切に保護するうえでは、エアバッグ46は同各部位の衝撃箇所側の近傍で展開膨張することが望ましい。しかし、上半身PUに近すぎる箇所でエアバッグ46を展開膨張させると、両者が干渉し合い、エアバッグ46の展開膨張が妨げられる。これに対し、上半身PUの車幅方向の寸法(幅)は、同上半身PUの部位に応じて異なっている。この寸法は、頭部PHにおいて最も小さく、一般には胸部PTにおいて最も大きい。そこで、エアバッグ46を、上半身PUの車幅方向の寸法に応じた形状となるように展開膨張させることが重要となる。この形状とは、頭部PHを保護する箇所では車幅方向の厚みが大きく、胸部PTを保護する箇所では同方向の厚みが小さな形状である。膨張用ガスによって曲面状に膨張しようとするエアバッグ46にあっては、膨張時の車幅方向の厚みを規制することによって、上記の形状を実現することが可能である。
このような観点から、本実施形態では、膨張時のエアバッグ46の車幅方向の厚みを規制する厚み規制部として、テザー51が設けられている。テザー51は、車外側及び車内側の両布部47,48よりも小さく、かつ略上下方向に細長い矩形の布からなる車外側構成片52及び車内側構成片53を備えている。車外側構成片52は、車外側布部47の略上下方向についての中央部よりも若干下方となる箇所に対し、その内側から重ねられている。車内側構成片53は、車内側布部48の略上下方向についての中央部よりも若干下方となる箇所に対し、その内側から重ねられている。これらの箇所は、車両用シート13,14に着座した一般的な成人の体格を有する乗員P1,P2において、概ね胸部PTの側方となる箇所である。
車外側構成片52は、車外側の環状内結合部54によって車外側布部47に結合されており、車内側構成片53は、車内側の環状内結合部55によって車内側布部48に結合されている。両環状内結合部54,55は、いずれも側面視で略上下方向に細長い長円状をなしている。
図13に示すように、車外側構成片52及び車内側構成片53は、それらの前縁部に沿って略上下方向へ延びる前結合部56によって相互に結合されている。また、車外側構成片52及び車内側構成片53は、それらの後縁部に沿って略上下方向へ延びる後結合部57によって相互に結合されている。
上記構成のテザー51では、エアバッグ46が膨張用ガスを充填されることなく平面状に展開された状態(平面展開状態)となったとき、車外側構成片52及び車内側構成片53が、車外側布部47及び車内側布部48とともに重なり合った状態となる。この状態では、前結合部56が両環状内結合部54,55よりも前方へ離れた箇所に位置するとともに、後結合部57が両環状内結合部54,55よりも後方へ離れた箇所に位置する。
また、エアバッグ46の展開膨張時には、図11及び図12(A)に示すように、車外側布部47及び車内側布部48が、互いに車幅方向へ遠ざかるように変位する。車外側構成片52を車外側布部47に結合する環状内結合部54も、車内側構成片53を車内側布部48に結合する環状内結合部55も、互いに車幅方向へ遠ざかるように変位する。前結合部56及び後結合部57により相互に結合された車外側構成片52及び車内側構成片53は、車幅方向について互いに遠ざかる側へ引っ張られる。各環状内結合部54,55の上記変位は、車外側構成片52及び車内側構成片53が緊張状態となったところで、規制される。このようにして、エアバッグ46の車幅方向の厚みが規制される。
ここで、各環状内結合部54,55と前結合部56との間隔がともに「D1」であり、各環状内結合部54,55と後結合部57との間隔がともに「D2」であるとする。すると、車外側構成片52及び車内側構成片53の前部では、エアバッグ46の車幅方向の厚みは、概ね「2・D1」に規制される。また、車外側構成片52及び車内側構成片53の後部では、エアバッグ46の車幅方向の厚みは、概ね「2・D2」に規制される。
なお、上述した周縁結合部49は、車内側布部48及び車外側布部47の周縁部の大部分を糸で縫合することにより形成されている。車外側の環状内結合部54は、車外側構成片52を車外側布部47に糸で縫合することにより形成されている。同様に、車内側の環状内結合部55は、車内側構成片53を車内側布部48に糸で縫合することにより形成されている。前結合部56は、車外側構成片52及び車内側構成片53の両前縁部を糸で縫合することにより形成され、後結合部57は、車外側構成片52及び車内側構成片53の両後縁部を糸で縫合することにより形成されている。
図3、図4、図5及び図13では、上記周縁結合部49及び環状内結合部55が、それぞれ一定長さの太線を断続的に並べてなる線(破線の一種)によって図示されている。なお、周縁結合部49、各環状内結合部54,55、前結合部56及び後結合部57は、上記糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって設けられてもよい。
ところで、上記平面展開状態のエアバッグ46は、折り畳まれることにより、図10に示すようにコンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、1つにはエアバッグ46をシートバック16における限られた大きさの空間に確実に収納するためである。また、ストラップ85を常に非弛緩状態(張った状態)にするためでもある。これについては後述する。
上記収納用形態のエアバッグ46は、第1の折り畳み部46A、第2の折り畳み部46B及び第3の折り畳み部46Cを有している。第1の折り畳み部46Aは、図13に示す平面展開状態のエアバッグ46のインフレータアセンブリ41よりも前側部分60に対し、前方から後方へ向けた折り畳みのみが行なわれることにより形成されたものの一部である。第1の折り畳み部46Aは、インフレータアセンブリ41の前方近傍に位置している。第2の折り畳み部46Bは、第1の折り畳み部46A形成のための上記折り畳みに加え、側面視でZ字状となるように折り返されることにより形成されたものであり、上記第1の折り畳み部46Aの後方近傍に位置している。第2の折り畳み部46Bは、第1の折り畳み部46Aに近い側では後下方へ折り返され、第1の折り畳み部46Aから遠い側では後上方へ折り返されている。第3の折り畳み部46Cは、第1の折り畳み部46A形成のための上記折り畳みに加え、前上方へ折り返されることにより形成されたものである。
平面展開状態のエアバッグ46は、下記工程(中間形態への変形工程、第2の折り畳み部46Bの形成工程、及び第3の折り畳み部46Cの形成工程)を経て収納用形態にされる。次に、各工程について説明する。
<中間形態への変形工程>
この工程では、図13に示すように、平面展開状態のエアバッグ46のインフレータアセンブリ41よりも前側部分60が蛇腹折りされる。ここでの蛇腹折りは、エアバッグ46を、一定幅ずつ順に折り畳むという、エアバッグ46の折り態様の1つである。この蛇腹折りに際しては、平面展開状態のエアバッグ46に対し略上下方向へ直線状に延びる複数本の折り線(山折り線61及び谷折り線62)が設定される。これらの山折り線61及び谷折り線62の設定により、上記前側部分60が複数の被折り畳み部60Aに区画される。山折り線61及び谷折り線62の間隔は、蛇腹折りにおける折り幅H1となる。
そして、エアバッグ46が、これらの山折り線61及び谷折り線62に沿って、矢印Aで示すように前方から後方に向けてインフレータアセンブリ41の近傍まで、上記折り幅H1ずつ順に蛇腹状に折り畳まれる。すなわち、被折り畳み部60Aにおいて隣り合う折り線(山折り線61、谷折り線62)によって挟まれた面が重なるようにして、上記エアバッグ46が折り畳まれる。折り畳み後には、図14(A)に示すように、上記複数の被折り畳み部60Aが前後方向に積層された(束ねられた)状態となり、エアバッグ46は上下方向に長く、かつ前後方向の寸法の小さな形態(中間形態)となる。
<第2の折り畳み部46Bの形成工程>
図14(A)に示すように、この工程では、上記中間形態のエアバッグ46においてインフレータアセンブリ41よりも上側部分63に対し、互いに上下方向へ離間した2箇所において、それぞれ車幅方向へ直線状に延びる折り線64,65が設定される。上側部分63において折り線64よりも上側の部分が同折り線64に沿って後下方へ折り返される。上側部分63において折り線65よりも上側の部分が同折り線65に沿って後上方へ折り返される。こうした2箇所での折り返しにより、図10に示すように、第1の折り畳み部46Aの上部後方近傍に、側面視でZ字状となる第2の折り畳み部46Bが形成される。第2の折り畳み部46Bの形成により、エアバッグ46の上下方向の寸法が、上記「中間形態への変形工程」を経た段階(図14(A),(B)参照)よりも小さくなる。
<第3の折り畳み部46Cの形成工程>
この工程では、上記中間形態のエアバッグ46(図14(A),(B)参照)において、インフレータアセンブリ41よりも下側部分66に対し、略車幅方向へ直線状に延びる1本の折り線67が設定される。下側部分66において折り線67よりも下側の部分が同折り線67に沿って前上方へ折り返される。
第3の折り畳み部46Cの形成により、エアバッグ46の上下方向の寸法が、上記「第2の折り畳み部46Bの形成工程」を経た段階よりもさらに小さくなる。
なお、上記の工程のうち、「第2の折り畳み部46Bの形成工程」と、「第3の折り畳み部46Cの形成工程」とが逆の順に行われてもよい。
こうして、各工程が行なわれることで、図10における第1〜第3の折り畳み部46A〜46Cが形成されて、エアバッグ46が収納用形態にされる。この収納用形態のエアバッグ46は、前後方向にも上下方向にも寸法が小さく、シートバック16の車内側の側部19(図1及び図2参照)に対しても収納に適したものとなる。
そして、上記収納用形態のエアバッグ46は、複数箇所において結束テープ(図示略)によって束ねられている。第1〜第3の折り畳み部46A〜46Cは、これらの結束テープによって、折り畳まれた状態に保持されている。
各エアバッグ装置40は、上述したエアバッグ46及びインフレータアセンブリ41のほかにも、図6及び図7に示すように、展開膨張したエアバッグ46を受け止めて、同エアバッグ46の衝撃箇所側への過剰な変位を規制する支持機構70を備えている。支持機構70は、ブラケット71及び支持板77を備えている。次に、これらの各部材について説明する。
<ブラケット71>
ブラケット71は、いずれも金属板等の剛性の高い板材によって形成された外側板部72、内側板部73及び連結板部74を備えている。外側板部72は、シートバック16の車内側の側部19内であって、サイドフレーム部17A(図6参照)の車内側に隣接した状態で配置されている。外側板部72は、前後方向よりも上下方向に細長い長方形板状をなしている。外側板部72において、上下方向へ互いに離間した2箇所には、それぞれボルト挿通孔75があけられている(図6及び図7では、それぞれ一方のボルト挿通孔75のみが図示されている)。
内側板部73は、外側板部72から車内側へ所定距離隔てた箇所において、その外側板部72に対し平行に配置されている。内側板部73は、前後方向よりも上下方向に細長い形状をなしている。本実施形態では、内側板部73は外側板部72とは異なる形状に形成されている。内側板部73は、円弧状の外形形状を有する支持部73Aを有している。支持部73Aにおいて、その中心の下方近傍には、同中心を自身の中心とする円弧状のガイド孔76があけられている。
<支持板77>
支持板77は、側突等による衝撃に伴い衝撃箇所側へ移動する乗員P1,P2により押圧される膨張状態のエアバッグ46を受け止めるためのものであり、金属板等の剛性の高い板材によって細長い形状に形成されている。支持板77の基端部77Bは円弧状の外形形状を有している。支持板77は、この基端部77Bの中心において、内側板部73の支持部73Aに対し、軸78により回転自在に支持されている。支持板77の基端部77Bにおいて、その中心から変位した箇所にはピン79が固定されている。ピン79の一部は、支持板77よりも内側へ突出し、上記ガイド孔76に移動可能に挿通されている。
支持板77は、軸78を支点として回転することにより、図6及び図7において二点鎖線で示す収納位置と、同図において実線で示す突出位置との間で変位することが可能である。収納位置は、エアバッグ46が展開膨張する前に支持板77が採る位置であって、シートバック16の車内側の側部19内に設定されている。収納位置では、支持板77は、その先端部77Tが基端部77Bの略上方に位置した、起立したような状態となる。そして、この支持板77は、上述した結束テープによって収納用形態のエアバッグ46に係止されている。支持板77の突出位置へ向かう回転は、結束テープが破断されることにより可能となる。
突出位置は、エアバッグ46が展開膨張したときに支持板77が採る位置であり、展開膨張した状態のエアバッグ46を受け止めるべく、そのエアバッグ46の衝撃箇所側(車内側)の近傍に設定されている。支持板77は、突出位置では、その基端部77Bをシートバック16内に残した状態で、同シートバック16から車両10の略前方へ向けて突出し、乗員P1,P2の胸部PTの側方で、前側ほど高くなるように傾斜した状態となる。
上記ピン79は、収納位置では、ガイド孔76の前端部に位置する。このガイド孔76の前端部壁面により、支持板77がそれ以上後下方へ回転することが規制されている。また、ピン79は、突出位置では、ガイド孔76の後端部に位置する(図6及び図7参照)。このガイド孔76の後端部壁面により、支持板77がそれ以上前下方へ回転することが規制されている。
支持板77の基端部77Bと先端部77Tとの間であって、同支持板77の一方(図6及び図7の左方)の側縁部の近傍には、同側縁部に沿ってスリット81があけられている。
上記の構成を有する支持機構70においては、ガイド孔76(特に、後端部内壁)及びピン79が、支持板77が突出位置を越えて回転するのを規制する回転規制部に該当する。
各エアバッグ装置40は、エアバッグ46の展開膨張に連動して支持板77を突出位置へ向けて変位(回転)させるため連動機構を備えている。この連動機構は、エアバッグ46の下部と支持板77の軸78よりも先端側の箇所との間には架け渡されたストラップ85を備えている。ストラップ85は、可撓性を有する素材によって形成されている。また、ストラップ85は、伸びない素材によって形成されることが望ましいが、支持板77の回転に影響を及ぼさない程度に伸びる素材によって形成されてもよい。こうした素材としては例えば、緊密に織成された織布等が適している。
ストラップ85の一方の端部(図6の前下端部)85Aは、エアバッグ46の外周縁部において、同エアバッグ46が展開膨張したときに下端部となる箇所に対し、車内側から重ねられて結合されている。本実施形態では、ストラップ85の上記端部85Aは、上述した周縁結合部49の一部において、エアバッグ46の車外側布部47及び車内側布部48に共縫いされている。
ストラップ85の他方の端部(図6の後上端部)85Bは、支持板77の上記スリット81に挿通されて、前方へ折り返されている。そして、この折り返された部分がストラップ85の他の部分に重ねられて結合されている。本実施形態では、この結合が糸を用いた縫合によってなされている。
なお、ストラップ85のエアバッグ46に対する結合は、第3の折り畳み部46Cの形成前に行われる。また、スリット81の高さ方向の位置は、支持板77が収納位置に位置するときには、突出位置に位置するときよりも高くなる。ストラップ85の支持板77に対する結合箇所(端部85B)についても同様である。これに伴い、ストラップ85のエアバッグ46に対する結合箇所(端部85A)の高さ方向の位置についても、支持板77が収納位置に位置するときには、突出位置に位置するときよりも高くする必要がある。そのため、第3の折り畳み部46Cの形成のためにエアバッグ46の下部が折り返されることで、ストラップ85のエアバッグ46に対する結合箇所(端部85A)が高くされている。このように、エアバッグ46の下部を折り返すことにより、支持板77とエアバッグ46の下部との間に架け渡されたストラップ85を、支持板77の位置に拘らず常に非弛緩状態(張った状態)にしている。こうした構成を採ることにより、第3の折り畳み部46Cの展開膨張の開始後の早いタイミングから、ストラップ85を通じて支持板77が突出位置へ向けて引っ張られるようになる。
上記収納用形態にされたエアバッグ46は、次のようにして、シートバック16の車内側の側部19内に収納されている。図9に示すように、収納用形態のエアバッグ46は、インフレータアセンブリ41の収容された自身の後部において、上記ブラケット71の外側板部72及び内側板部73間に配置されている。そして、エアバッグ46の後部に挿通されたリテーナ44の2本のボルト45が、ブラケット71における外側板部72のボルト挿通孔75及びサイドフレーム部17Aにそれぞれ挿通されている。各ボルト45にナット86が締め付けられることにより、ブラケット71がサイドフレーム部17Aに固定されるとともに、エアバッグ46の後部及びインフレータアセンブリ41がそのブラケット71に固定されている。
なお、ブラケット71はサイドフレーム部17Aに一体形成されてもよい。また、サイドフレーム部17Aそのものがブラケット71を兼ねてもよい。
また、リテーナ44は、上述したボルト45及びナット86とは異なる部材によってブラケット71に固定されてもよい。
さらに、図12(B)に示すように、展開膨張した状態のエアバッグ46の衝撃箇所側の箇所には、同エアバッグ46が膨張状態となったときに、前記突出位置へ変位した支持板77の先端部77Tが入り込むことの可能な凹部90が設けられている。
ここで、一般に、エアバッグ46は膨張用ガスにより曲面状に膨張しようとする。そのため、エアバッグ46にテザー51等の厚み規制部が設けられると、展開膨張したエアバッグ46では、厚み規制部との接続箇所において厚みが最小となる。また、この接続箇所の近傍では、エアバッグ46の厚みは、同接続箇所から離れるに従い大きくなる。
このことに着目し、膨張時のエアバッグ46の厚みを規制するテザー51が設けられた本実施形態では、エアバッグ46について、厚みが最小となる箇所である、厚み規制部との接続箇所(車内側の環状内結合部55)が凹部90の底部91とされている。また、エアバッグ46について、上記接続箇所(車内側の環状内結合部55)の近傍であって、同接続箇所(環状内結合部55)よりも厚く膨張する箇所が凹部90の内壁部92とされている。
上述したサイドエアバッグ装置30及びエアバッグ装置40は、図3に示すように共通の構成要素として、加速度センサ等からなる衝撃センサ95,96及び制御装置97をさらに備えている。一方の衝撃センサ95は、ボディサイド部21(図1及び図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部21に側方から加えられる衝撃を検出する。他方の衝撃センサ96は、ボディサイド部22(図1及び図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部22に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置97は、衝撃センサ95,96からの信号に基づき、サイドエアバッグ装置30のインフレータ32、及びエアバッグ装置40のインフレータ42の各作動を制御する。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
車両10に対し側突等による衝撃が加わらない通常時には、エアバッグ装置40では、エアバッグ46が図10及び図15に示す収納用形態にされて、インフレータアセンブリ41とともに車両用シート13,14毎の車内側の側部19内に収納され続ける。また、このときには、エアバッグ46は未だ展開膨張していない。そのため、ストラップ85には、エアバッグ46の展開膨張に伴う引っ張り力が加わらず、支持板77を突出位置側へ回転させようとする力が発生しない。支持板77は、同側部19内の収納位置に位置し続ける。そのため、これらのエアバッグ46及び支持板77が、乗員P1,P2の車室11内での動作の邪魔になったり、見栄えを損なったりすることがない。
両車両用シート13,14にそれぞれ乗員P1,P2が着座している状況のもと、側突等により、車両10に対し、車両用シート13,14の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。以下、一方のボディサイド部21に対し、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合を例に説明する。このように、一方のボディサイド部21に対し側突等による衝撃が加わると、そのボディサイド部21が車室11の内方(他方のボディサイド部22側)へ変形しようとする。
なお、一対の車両用シート13,14が車幅方向に並設された本実施形態では、上記の状況下では、図1及び図2中の右側の車両用シート13が、特許請求の範囲における「車両の衝撃箇所に最も近い車両用シート」に該当する。また、同図1及び図2中の左側の車両用シート14が、特許請求の範囲における「衝撃箇所に最も近い車両用シートを除く他の車両用シート」に該当する。
また、上記衝撃により、各車両用シート13,14に着座した乗員P1,P2に対して衝撃箇所側(ボディサイド部21側)へ向かう慣性力が作用する。この慣性力により、各乗員P1,P2は、衝撃箇所側(ボディサイド部21側)へ移動しようとする。
一方、ボディサイド部21に所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ95によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置97から、サイドエアバッグ装置30のインフレータ32、及びエアバッグ装置40のインフレータ42に対し、これらを作動させるための指令信号が出力される(図3参照)。この指令信号に応じて、インフレータ32から膨張用ガスがエアバッグ31に供給されるとともに、インフレータ42のガス噴出部43から膨張用ガスがエアバッグ46に供給される。
図1及び図2に示すように、衝撃箇所側(右側)の車両用シート13に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P1は、サイドエアバッグ装置30によって保護される。エアバッグ31は、その一部をシートバック16の車外側の側部18内に残した状態で、同シートバック16から前方へ飛び出す。その後は、エアバッグ31は、乗員P1とボディサイド部21との間を通って前方へ膨張する。衝撃に伴い乗員P1が衝撃箇所(ボディサイド部21)側へ移動しようとしても、この乗員P1は膨張したエアバッグ31によって受け止められる。この受け止めに際し、エアバッグ31には乗員P1による衝撃箇所側へ向かう押圧力が加わる。この押圧力により、エアバッグ31がその固定箇所である後端部を支点として衝撃箇所側へ回転しようとするが、その回転はボディサイド部21に当ることで規制される。
また、側突等により車室11内へ変形したボディサイド部21と乗員P1との間に、上記のように膨張した状態のエアバッグ31が介在することとなり、同乗員P1がボディサイド部21と接触することがエアバッグ31によって抑制される。
これに対し、衝撃箇所から遠い側(左側)の車両用シート14に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P2は、エアバッグ装置40によって次のようにして保護される。このエアバッグ装置40では、基本的には、供給される膨張用ガスにより、エアバッグ46の各部がそれぞれ膨張し、折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消する。これは、後から折り畳まれた部分が、先に折り畳まれた部分の折り状態の解消を規制するからである。
ここで、本実施形態では、図10に示すように、ガス噴出部43を下側に位置させた状態でインフレータ42が配置されていることから、同ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスは、まず、そのガス噴出部43の近傍箇所である、第1の折り畳み部46Aの下端部及び第3の折り畳み部46Cに供給される。この第3の折り畳み部46Cの前上方への折り返しは、中間形態への変形のための前方から後方へ向かう折り畳みよりも後に行われている。そのため、図10及び図15に示す収納用形態のエアバッグ46において、第3の折り畳み部46Cがその折り返された状態を解消する。この解消に際し、第3の折り畳み部46Cは、折り線67を支点とする前下方へ向かう回転(図15における矢印B参照)を伴う。
また、第2の折り畳み部46B形成のための2回の折り返しが、中間形態への変形のための前方から後方へ向かう折り畳みよりも後に行われている。また、第2の折り畳み部46Bは、第3の折り畳み部46Cに比べ、インフレータ42のガス噴出部43から遠く離れている。これらのことから、インフレータ42よりも上側部分(第2の折り畳み部46B)は、上記第3の折り畳み部46Cの折り状態の解消よりも遅れて、折り状態を解消しながら展開する。
上記折り状態の解消により、エアバッグ46を結束して、折り畳まれた状態に保持していた結束テープが破断される。この破断により、軸78を支点とした支持板77の前下方への回転が可能となる。
エアバッグ46は、第1の折り畳み部46Aの折り状態を解消しながら膨張し続ける。この展開を伴う膨張(展開膨張)の過程でエアバッグ46はシートバック16を破断させ、自身の一部を車内側の側部19内に残した状態でシートバック16の前方へ飛び出す。その後も、エアバッグ46は、乗員P2の衝撃箇所側(図1及び図2の右側)の近傍で展開膨張する。
この展開膨張に際し、エアバッグ46内では、図11及び図12(A)に示すように、車内側布部48及び車外側布部47が、膨張用ガスにより互いに車幅方向へ遠ざかるように変位する。車外側構成片52を車外側布部47に結合する環状内結合部54も、車内側構成片53を車内側布部48に結合する環状内結合部55も、互いに車幅方向へ遠ざかるように変位する。前結合部56及び後結合部57により相互に結合された車外側構成片52及び車内側構成片53は、車幅方向について互いに遠ざかる側へ引っ張られる。各環状内結合部54,55の上記変位は、車外側構成片52及び車内側構成片53が緊張状態となったところで規制される。
乗員P2の上半身PUの中では、車幅方向の寸法が胸部PTにおいて最も大きいが、エアバッグ46において胸部PTの側方となる箇所では、上記の規制により、車幅方向の厚みが小さくなる。そのため、エアバッグ46は胸部PTと干渉することなく、乗員P2の保護対象の衝撃箇所側の近傍で展開膨張する。
一方、上記衝撃に伴い乗員P2の上半身PUが上述したように衝撃箇所側へ移動する。
乗員P2の上半身PUの中では、車幅方向の寸法が頭部PHにおいて最も小さいが、エアバッグ46において頭部PHの側方となる箇所では、車幅方向の厚みが大きくなる。同箇所は頭部PHの近傍で展開膨張することとなり、同頭部PHがエアバッグ46に当たるまでの衝撃箇所側への移動量が少なくなる。表現を変えると、頭部PHは衝撃箇所側へさほど変位しないうちからエアバッグ46によって拘束され始める。
上半身PUがエアバッグ46に当接した後も移動し続けようとすると、同エアバッグ46に対し衝撃箇所側へ向かう押圧力が加わる。
この際、仮に、展開膨張状態のエアバッグ46を衝撃箇所側で受け止めるものがないものとすると、エアバッグ46が、自身の固定端である後端部を支点として衝撃箇所側へ回転したり、折れたり(屈曲したり)するおそれがある。
しかし、本実施形態では、展開膨張の際のエアバッグ46の展開力が支持板77の作動に利用される。すなわち、エアバッグ46の展開膨張に伴い、図6に示すようにエアバッグ46のストラップ85との接続部位(ストラップ85の端部85A)が変位する。この接続部位(端部85A)の変位に伴いストラップ85が引っ張られるとともに、このストラップ85を介して支持板77が引っ張られる。
上記の引っ張りにより、支持板77がエアバッグ46の展開膨張に連動して、自身の基端部77Bの軸78を支点として、図6において矢印Cで示すように前下方へ回転することにより、収納位置(図6の二点鎖線参照)から突出位置(図6の実線参照)へ向けて変位する。この変位に伴い、支持板77から突出したピン79がブラケット71のガイド孔76内を移動する(図7参照)。そして、支持板77が突出位置に至ると、ピン79がガイド孔76の後端部内壁に当接する。この当接により、支持板77が突出位置を越えて反収納位置側(下側)へ回転することが規制される。
ところで、上記のように回転が規制されると、ピン79がガイド孔76の後端部内壁に当たったときの反動によって、一旦突出位置まで変位した支持板77が収納位置側へ回転しようとする。
しかし、本実施形態では、展開膨張の際にエアバッグ46の衝撃箇所側の箇所に、図12(B)に示す凹部90が形成される。エアバッグ46について、厚みが最小となる箇所である、厚み規制部との接続箇所(車内側の環状内結合部55)が凹部90の底部91として利用される。また、エアバッグ46について、上記接続箇所(車内側の環状内結合部55)の近傍であって、同接続箇所よりも厚く膨張する箇所が凹部90の内壁部92として利用される。
支持板77は、上記凹部90に入り込む。凹部90の内壁部92は、同凹部90に入り込んだ支持板77に弾性的に接触することにより、同支持板77の変位を規制する。この規制の対象となるのは、主として支持板77の収納位置へ向かう回転であるが、当然、突出位置よりも反収納位置側へ向かう回転も規制の対象となる。支持板77は、収納位置側へも反収納位置側へも回転を規制された状態、すなわち位置決めされた状態となる。
上記突出位置では、支持板77は、エアバッグ46の衝撃箇所側、すなわちエアバッグ46を挟んで上記車両用シート14及び乗員P2とは反対側の近傍に位置する。その結果、衝撃に伴い衝撃箇所側へ移動する乗員P2によってエアバッグ46が押圧されても、そのエアバッグ46は上記支持板77によって受け止められ、衝撃箇所側へ変位することが規制される。乗員P2が衝撃箇所側へ移動して、隣の乗員P1及び車両用シート13や、衝撃により変形したり車内側へ進入したりするボディサイド部21等と接触することが抑制される。
また、エアバッグ46の下部(部分46L)は、図2及び図3に示すように、乗員P2とセンターコンソール12との間で展開膨張する。このセンターコンソール12は、エアバッグ46の上記部分46Lを衝撃箇所側から受け止め、それ以上衝撃箇所側へ変位しようとするのを規制する。このセンターコンソール12の規制が加わる分、単に支持板77によってエアバッグ46を受け止める場合よりも、エアバッグ46及び乗員P2の衝撃箇所側への変位が一層確実に規制される。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)エアバッグ46の衝撃箇所側の箇所に、同エアバッグ46が膨張状態となったときに、突出位置へ変位した支持板77が入り込む凹部90を設けている(図12(B))。そのため、突出位置へ変位した支持板77を、簡単な構成で、その突出位置に安定して保持することができる。その結果、膨張完了状態のエアバッグ46を受け止める機能を支持板77に確実に発揮させることができる。
(2)膨張時のエアバッグ46の厚みを規制するテザー51が同エアバッグ46に設けられていることに着目し、エアバッグ46について、厚みが最小となる箇所である環状内結合部55を凹部90の底部91として利用している。また、環状内結合部55の近傍であって、同環状内結合部55よりも厚く膨張する箇所を凹部90の内壁部92として利用している(図12(B))。そのため、凹部90の形成のために、特別な構造を別途設けなくてもすむ。
(3)仮に、上半身PUの下端部(腰部PP)の側方でエアバッグ46を支持板77によって受け止めた場合には、同上半身PUが上側ほど衝撃箇所に近づくように傾斜するおそれがある。上半身PUの下端部(腰部PP)よりも上側の側方には、エアバッグ46を受け止めるものがないからである。この点、本実施形態では、テザー51、ひいては凹部90を、エアバッグ46において、上半身PUのうち上下方向についての中間部分に位置する胸部PTの側方に設けている(図2)。
このため、上半身PUの下端部(腰部PP)の側方でエアバッグ46を支持板77によって受け止める場合とは異なり、同上半身PUが上側ほど衝撃箇所に近づくように傾斜するのを、胸部PTの側方で凹部90にて位置決めされる支持板77によって効率よく抑制することができる。
(4)支持板77を、その基端部77Bに設けられた軸78により回転自在に支持する構成を採用している(図6、図7)。そのため、このような簡単な構成でありながら、軸78を支点として支持板77を回転させることにより、同支持板77を収納位置から突出位置へ変位させることができる。
(5)上記(1)に関連するが、支持板77が突出位置を越えて回転するのを規制する回転規制部(ガイド孔76、ピン79)を設けている(図6、図7)。そのため、回転規制部による回転規制の反動によって、一旦突出位置まで変位した支持板77が収納位置側へ回転しようとしても、その回転を凹部90によって確実に規制することができる。
(6)エアバッグ46と支持板77の軸78よりも先端側の箇所との間にストラップ85を架け渡している(図6)。そのため、このような簡単な構成でありながら、支持板77をエアバッグ46の展開膨張に連動させて、突出位置へ向けて変位させることができる。
(7)エアバッグ46に、乗員P1,P2とセンターコンソール12との間で展開膨張する部分46Lを設けている(図2、図3)。そのため、支持板77のみによってエアバッグ46を受け止める場合よりも、エアバッグ46及び乗員P1,P2の衝撃箇所側への変位を一層確実に抑制することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<支持板77について>
・支持板77は、回転以外の動作を行うことによって、収納位置から突出位置へ向けて変位するものであってもよい。
・支持板77は車両用シート13,14の外部に配設されてもよい。支持板77の配設箇所は、側突等による衝撃の加わらない通常時に乗員P1,P2の邪魔にならない場所であればよい。
<エアバッグ46について>
・エアバッグ46は、着座姿勢を採っている乗員P1,P2の上半身PUのうち胸部PTと、少なくとも胸部PTに隣接する部位とを保護対象として、その保護対象の衝撃箇所側の近傍で展開膨張するものであればよい。胸部PTに隣接する部位としては、頭部PHのほかにも、腹部、腰部PP等がある。
・エアバッグ46を、「乗員P1,P2の衝撃箇所側の近傍であること」を条件に、上記実施形態とは異なる箇所に収容してもよい。この箇所としては、車両用シート13,14においてシートバック16とは異なる箇所、例えばシートクッション15であってもよい。
・エアバッグ46を、前記実施形態とは異なる折り畳み方で折り畳んで収納用形態にしてもよい。こうした折り畳み方としては、上述したもの以外にもロール折り、中折り(カクタス折り)等が挙げられる。
<凹部90について>
・前記実施形態では、エアバッグ46において厚み規制部(テザー51)との接続箇所(環状内結合部55)及びその近傍部分を凹部90として利用したが、エアバッグ46の一部に立体縫製等によって凹部90を別途設けてもよい。この場合、凹部90を形成するという点で、厚み規制部(テザー51)は必須の構成ではなくなる。
・前記実施形態において、テザー51に代えて、シームによって厚み規制部を構成してもよい。シームは、車外側布部47及び車内側布部48を互いに接触させた状態で結合させるものであって、例えば、両布部47,48を縫合する糸によって構成される。この場合には、エアバッグ46においてシームによって接合された箇所が凹部90の底部91を構成し、同箇所の近傍部分が凹部90の内壁部92を構成することとなる。車外側構成片52及び車内側構成片53は用いられない。
<エアバッグ装置40の適用対象について>
・エアバッグ装置40を車両10の後部の車両用シート(後席)に適用してもよいし、前部の車両用シート13,14(前席)及び後部の車両用シート(後席)の両者に適用してもよい。後部の車両用シート(後席)に適用した場合、その車両用シート(後席)に対応するボディサイド部21,22は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等となる。
・本発明のエアバッグ装置40は、車幅方向に3席以上の車両用シート13,14が並設された車両10にも適用可能である。この場合、エアバッグ装置40は、車両10に対し車両用シート13,14の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わるときの同車両10の衝撃箇所に最も近い車両用シート13,14を除く他の車両用シート13,14に適用される。
・本発明のエアバッグ装置40は、乗員P1,P2が着座したときに、車両10の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように車両用シート13,14の配置された車両10にも適用可能である。この場合、車両10に対し前方又は後方から衝撃が加わると、その衝撃が並設方向の一方から他方へ向かう衝撃となる。
・本発明は、展開膨張したエアバッグ46を衝撃箇所側から受け止めるものがない箇所に配設されるエアバッグ装置に広く適用可能である。例えば、オープンカーにおけるカーテンシールドエアバッグ装置等である。
<その他>
・前記実施形態では、エアバッグの展開膨張に連動してエアバッグを突出位置へ向けて変位させる手段として、ストラップ85を用いたが、ほかの手段、例えばばね、火薬等を用いてもよい。
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)請求項1〜8のいずれか1つに記載のエアバッグ装置において、前記エアバッグ及び前記支持板は、前記エアバッグの展開膨張前には、前記車両用シートについて、同車両用シートに着座した乗員の前記衝撃箇所側となる側部内に収納されている。
上記の構成によれば、車両に衝撃が加わらない通常時には、エアバッグ及び支持板は車両用シートの側部内に収納される。そのため、これらのエアバッグ及び支持板が乗員の邪魔になったり、見栄えを損なったりすることがない。そして、衝突等により車両に衝撃が加わって、乗員をその衝撃から保護する必要が生じた場合に、エアバッグが乗員の衝撃箇所側の近傍で膨張展開するとともに、支持板がエアバッグの衝撃箇所側の近傍へ変位する。