JP5396692B2 - ポリエステル樹脂組成物の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の性状を有するポリアミド樹脂とポリエステル樹脂、多価カルボン酸化合物を特定の比率と手順にて溶融混練して得られるポリエステル樹脂組成物とその製造法に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)をその代表とする、芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、脂肪族ジオールを主たるジオール成分とするポリエステル樹脂(以下「芳香族ポリエステル樹脂」ということがある)は、機械的性能、溶融安定性、耐溶剤性、保香性、リサイクル性等に優れるという特長を有している。そのため、芳香族ポリエステル樹脂は、フィルム、シート、中空容器等の包装材料に広く利用されている。しかしながら、酸素、炭酸ガス等のガスバリア性は必ずしも良好ではないため、高いガスバリア性を要求される用途への利用には制限があった。芳香族ポリエステル樹脂にガスバリア性を付与する手段として、アルミニウム等の金属箔を貼り合わせる、他の高いガスバリア性を有する樹脂を塗布あるいは積層する、アルミニウムや珪素を蒸着する等の手段があるが、いずれも透明性が損なわれたり、複雑な製造工程を必要としたり、機械的性能が損なわれる等の問題点があった。
複雑な製造工程を必要とせずに高いガスバリア性を付与する手段として、他の高いガスバリア性を有する樹脂を混合する方法がある。高いガスバリア性を有する樹脂として、ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂があるが、とりわけ主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重合して得られるポリアミド樹脂(以下「ポリアミドMXD6」ということがある)がガスバリア性に優れている。一方、ポリアミド樹脂以外のガスバリア性樹脂としてエチレン−ポリビニルアルコール共重合樹脂があるが、エチレン−ポリビニルアルコール共重合樹脂は、芳香族ポリエステル樹脂との相溶性に乏しいため両者の組成物は白濁したり、結晶性が高いため芳香族ポリエステル樹脂の延伸性を損なったり、熱安定性に劣る等の問題点がある。
一方、ポリアミドMXD6は高いガスバリア性を有し、芳香族ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレートとガラス転移温度、融点、結晶性が接近しているうえに溶融時の熱安定性にも優れている。そのため、芳香族ポリエステル樹脂との溶融混合が容易である、芳香族ポリエステル樹脂の機械的性能や延伸性を損なわない、高いガスバリア性が発現するという利点がある。
しかしながら、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミドMXD6等のポリアミド樹脂との組成物は、構成組成物の分散状態や濃度によりパール状のギラツキが生じ、特に延伸等の熱成形によりギラツキが顕著となり、透明性が低下する傾向がある。このように芳香族ポリエステル樹脂とポリアミドMXD6等のポリアミド樹脂との組成物は透明性が充分ではないため、高い透明性が要求される用途においてはその利用に制限があった。
特許文献1では、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなる混合物にテトラカルボン酸二無水物を添加してなる組成物が提案されている。しかし、当該特許文献1には、エンジニアリングプラスチックスとして使用される成形品の機械的性質の改善に関する記載があるが、透明性が改良されたフィルム、シートおよび薄肉中空容器用の樹脂組成物に関する記載は一切されていない。特許文献2では、熱可塑性ポリエステル樹脂と主鎖にメタキシリレン基を有するポリアミド樹脂との組成物の相溶化剤の1種としてエポキシ基と酸無水物基を有する化合物が提案されている。しかし、当該化合物は、本発明の化合物とは明らかに異なるものである。
特許文献3では、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなる混合物にテトラカルボン酸二無水物を添加してなる組成物が提案されている。しかし、テトラカルボン酸二無水物は、混合するポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂との反応性を有するため、混合および成形加工時に樹脂組成物の過度の粘度上昇を引き起こし、フィルム、シートおよび薄肉中空容器への成型加工が困難となる可能性があること、また添加によって黄色から茶褐色の着色を引き起こし、成形物の外観を損なうという課題がある。
特許文献4では、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなる混合物に、1分子中に3個以上のカルボキシル基が結合している多価カルボン酸および酸無水基を有する多価カルボン酸化合物を添加してなる組成物が提案されている。しかし、上記理由と同様に当該多価カルボン酸無水物は、混合するポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂との反応性を有するため、混合および成形加工時に樹脂組成物の過度の粘度上昇を引き起こし、フィルム、シートおよび薄肉中空容器への成型加工が困難となる可能性があること、また添加によって黄色から茶褐色の着色を引き起こし、成形物の外観を損なうという課題がある。上記のように、複雑な製造工程を必要とせずに高いガスバリア性能を有し、かつ透明性に優れるポリエステル樹脂組成物の開発が望まれている。
特開平1−272660号公報 特開昭62−201963号公報 特開2000−34357号公報 特開2000−302952号公報
本発明は、ガスバリア性、透明性、機械的性能に優れ、着色しにくい、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の性状を有するポリアミド樹脂、多価カルボン酸化合物と、ポリエステル樹脂を特定の比率と手順にて溶融混練してすることにより、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂(A)10〜40重量%、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(B)59〜89.95重量%、ならびに芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸、芳香族2価カルボン酸、脂環族2価カルボン酸および前記カルボン酸の酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸化合物(C)0.05〜1重量%(重量%の合計は100重量%である)をあらかじめ溶融混練したマスターバッチ(D)を得た後に、該マスターバッチ(D)と、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(E)を溶融混練することにより、ポリアミド樹脂(A)2〜30重量%、ポリエステル樹脂(B)および(E)が合計で69.5〜97.99重量%、ならびに多価カルボン酸化合物(C)0.01〜0.5重量%(重量%の合計は100重量%である)からなるポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、
下記式(1)〜(2):
100≦a≦250 (1)
0.1≦a/b≦0.5 (2)
(上記式中、a、bは以下の通りである。
aは280℃、せん断速度100/sec条件下で測定したマスターバッチ(D)の溶融粘度(Pa・sec);bは前記条件で測定したポリエステル樹脂(E)の溶融粘度(Pa・sec)である)
を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法に関する。
また、本発明は当該製造法により得られる樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を成形して得られるフィルム、シート、中空容器等の成形体に関するものである。
本発明のポリエステル樹脂組成物はフィルム、シートおよび中空容器に使用することができ、Tダイ法、共押出法等で得られる無延伸あるいは低倍率の単層シート及び多層シート、それらを延伸したフィルムおよび低延伸倍率の深絞り容器、並びに成形後も無延伸の状態であるダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形により得られる胴部壁の厚みが0.1〜2mmである薄肉中空容器のような高い透明性が要求される包装用成形体の材料として用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、Tダイ法、共押出法等で得られる無延伸あるいは低倍率の単層シートおよび多層シート、それらを延伸したフィルム、低延伸倍率の深絞り成形容器、成形後も無延伸の状態であるダイレクトブロー成形容器、及び延伸ブロー成形容器等への成形性が良好であり、かつ得られたフィルム、シート及び薄肉中空容器のガスバリア性を保持したまま、成形体に優れた透明性、色相、機械的性能を付与することができる。
本発明は、少なくとも1種のポリアミド樹脂(A)、少なくとも1種のポリエステル樹脂(B)、少なくとも1種のポリエステル樹脂(E)および少なくとも1種の多価カルボン酸化合物(C)を所定の割合にて含有するポリエステル樹脂組成物を製造する方法である。以下、各成分について詳細に説明する。
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミンとジカルボン酸とを重縮合することにより得られる。ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂である。メタキシリレンジアミンに由来する構成単位が70モル%以上であることが必要であり、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。メタキシリレンジアミンに由来する構成単位が70モル%未満であると、ポリアミド樹脂の優れたガスバリア性が不十分になる。また、アジピン酸に由来する構成単位が70モル%以上であることが必要であり、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。アジピン酸に由来する構成単位が70モル%未満であると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下が生じる。ポリアミド樹脂(A)として特に好ましいものはポリメタキシリレンアジパミドである。上記のようなモノマー組成及び構造単位を有するポリアミド樹脂はポリエチレンテレフタレート樹脂のようなポリエステル樹脂と成形加工性が近似するため、ポリエステル樹脂組成物の加工性を損なわないので有利である。
メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとして、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
アジピン酸以外に使用できるジカルボン酸として、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、ポリアミド樹脂(A)製造のための重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
ポリアミド樹脂(A)は、溶融状態での重縮合反応(以下、「溶融重縮合」と記すことがある)により製造することが好ましい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧法で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造することが好ましい。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によって製造してもよい。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が、生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合を進行させることが好ましい。溶融重縮合により得られたポリアミドをさらに固相重合して分子量を高めてもよい。このようにして得られる固相重合ポリアミドをポリアミド樹脂(A)として用いてもよい。
ポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(A)の濃度は、ポリアミド樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)、多価カルボン酸化合物(C)およびポリエステル樹脂(E)の合計重量に対して、2〜30重量%であり、2〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましく、2〜10重量%が更に好ましく、2〜5重量%が特に好ましい。2重量%未満では良好なガスバリア性能が得られない。30重量%を超えるとガスバリア性能は良好であるものの、得られる包装成形体の透明性が低下し、機械的性能も低下するため商品価値が低いものとなる。
ポリアミド樹脂(A)の相対粘度(ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解し、25℃で測定した値)は、好ましくは1.83〜4.20、より好ましくは2.02〜4.20、さらに好ましくは2.30〜4.20である。相対粘度が上記範囲内であると、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるフィルム、シート、中空容器等の成形時に、溶融樹脂の流動性が良好でダイスウエルや溶融むらが軽減され、成形性が良好になる。また、成形物の透明性が改善され、かつ高湿度雰囲気下での白化による透明性の低下を抑制できる。
相対粘度が2.30以上のポリアミド樹脂(A)は、溶融重合時に所定の相対粘度に到達するまで反応を継続することで容易に得ることができる。しかしながら、溶融重合により、所定の相対粘度まで反応を続けると、溶融状態を維持する時間(反応時間)が長くなり、ポリアミド分子が損傷を受けたり、非直鎖の分子成長等の異常反応(3次元ポリマー化)が起こり、ゲルやフィッシュアイが生成したりする。このゲルやフィッシュアイの多いポリアミド樹脂を用いたポリエステル樹脂組成物からなる成形物は、フィッシュアイが発生し、生産性を低下させることがある。
相対粘度が2.30以上のポリアミド樹脂(A)は、相対粘度が2.28以下になるように溶融重合ポリアミド樹脂を製造し、溶融重合時の熱履歴の増加等に伴うフィッシュアイの発生を抑制し、次いで、溶融重合ポリアミド樹脂を固相重合することにより、相対粘度を2.30以上にする方法により好ましく製造される。固相重合は、相対粘度が1.83〜2.28の溶融重合ポリアミド樹脂のペレットあるいは粉末を、減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下に、120℃以上ポリアミド樹脂の融点未満の範囲の温度に加熱することにより実施される。固相重合された固相重合ポリアミド樹脂の相対粘度は2.30〜4.20であることが好ましい。
固相重合により相対粘度を2.30以上に上げたポリアミド樹脂(A)を用いたポリエステル樹脂組成物は、フィルム、シート、中空容器などの成形体への成形性が非常に良好となる。また、固相重合ポリアミド樹脂中のフィッシュアイは少ないので、ポリアミド樹脂に起因するフィッシュアイが成形体中に発生することが低減され、生産性が著しく向上する。
ポリアミド樹脂(A)は、280℃、せん断速度100/sec条件での溶融粘度が100〜2000Pa・secであることが好ましい。上記範囲の適度な粘度を有するポリアミド(A)を用いることで、ポリエステル樹脂中への分散性が向上し、成形物の透明性、機械的性能が優れるポリエステル樹脂組成物が得られる。
ポリアミド樹脂(A)の水分率は0.15重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以下である。水分率が0.15重量%以下であると、ポリエステル樹脂(B)との溶融混合時にポリアミド樹脂(A)から発生する水分によって生じるポリエステル樹脂(B)の加水分解を抑制することができる。この場合、ポリアミド樹脂を乾燥し上記水分率として用いてもよい。ポリアミド樹脂の乾燥は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ベント付きの押出機でポリアミド樹脂を溶融押出する際にベント孔を減圧にすることでポリマー中の水分を除去する方法、ポリアミド樹脂をタンブラー(回転式真空槽)中に仕込み、減圧下でポリアミド樹脂の融点未満の温度で加熱して乾燥する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(A)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド樹脂の着色を防止するためにリン化合物が含まれていても良い。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。ポリアミド樹脂(A)中のリン化合物の濃度は、リン原子として200ppm以下が好ましく、160ppm以下がより好ましく、100ppm以下が更に好ましい。ポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度が200ppm以下であると、アンチモン系触媒を利用して製造されたポリエステル樹脂と溶融混合する際に、ポリエステル樹脂中にわずかに残存するアンチモン系触媒の還元に起因する黒ずみが防止される。なおポリアミド樹脂(A)には上記のリン化合物の他に本発明の効果を損なわない範囲で滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、その他の添加剤を加えることもできる。
ポリエステル樹脂(B)および(E)は、ジカルボン酸とジオールを重合することにより得られ、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位(ジオールに由来する構成単位)の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来する。芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。脂肪族ジオールに由来する構成単位の割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。また、(B)と(E)は同じ組成、性状を有するものを用いてもよいし、異なる組成、性状を有するものを用いてもよい。
前記芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4' −ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。ポリエステル樹脂(B)あるいは(E)には本発明の目的を損なわない範囲でアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸を用いることができる。
前記脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。ポリエステル樹脂(B)あるいは(E)には本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を用いることもできる。
ポリエステル樹脂(B)あるいは(E)の製造には、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法を適用することができる。ポリエステル樹脂(B)あるいは(E)の製造時に使用する重縮合触媒としては、公知の三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、酢酸チタン等のチタン化合物、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物等が例示できるが、これらに限定されない。
好ましいポリエステル樹脂(B)もしくは(E)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−テレフタレート−4,4' −ビフェニルジカルボキシレート樹脂、ポリ−1,3−プロピレン−テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂等がある。より好ましいポリエステル樹脂(B)もしくは(E)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂(B)および(E)は、水分率が200ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下である。この場合、ポリエステル樹脂を乾燥し上記水分率として用いてもよい。水分率が上記範囲内であると、溶融混合工程においてポリエステルが加水分解して分子量が極端に低下することがない。
ポリエステル樹脂(B)および(E)の固有粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40重量比混合溶媒中、25℃で測定した値)は、0.5〜2.0dl/gが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5dl/gである。固有粘度が上記範囲内であるとポリエステル樹脂の分子量が充分に高く、各用途に必要な機械的性質を有する成形体が得られる。
本発明では、ポリエステル樹脂組成物中のポリエステル樹脂(B)と(E)の合計濃度は、ポリアミド樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)、多価カルボン酸化合物(C)およびポリエステル樹脂(E)の合計重量に対して、69.5〜97.99重量%であり、79.6〜97.99重量%が好ましく、84.7〜97.99重量%がより好ましく、90〜97.99重量%がさらに好ましく、95〜97.99重量%が特に好ましい。以上の範囲とすることで優れたガスバリア性能、透明性、機械的性能を付与することが出来る。
多価カルボン酸化合物(C)は、1分子中に2ないし3個のカルボキシル基を有する芳香族または脂環族化合物、あるいはそのカルボキシル基の内の2個が酸無水物基を形成している(0ないし1個のカルボキシル基と1個の酸無水物基を有する)ものである。即ち、多価カルボン酸化合物(C)は、芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸、芳香族2価カルボン酸、脂環族2価カルボン酸および前記酸無水物から選ばれる少なくとも1種の多価カルボン酸化合物からなる。なお、前記酸無水物は分子内酸無水物である。
多価カルボン酸化合物(C)としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、シクロヘキサンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ヘミメリット酸およびその無水物、トリメシン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルトリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物等が挙げられる。
中でも、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸が好ましく、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸がより好ましく、無水フタル酸および無水トリメリット酸が更に好ましく、無水トリメリット酸が特に好ましい。
ポリエステル樹脂組成物中の多価カルボン酸化合物(C)の濃度は、ポリアミド樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)、多価カルボン酸化合物(C)およびポリエステル樹脂(E)の合計重量に対して、0.01〜0.5重量%であり、0.01〜0.4重量%が好ましく、0.01〜0.3重量%がより好ましい。上記範囲とすることにより、優れたガスバリア性能、透明性、機械的性能を得ることができる。
(ポリアミド樹脂(A)の溶融粘度)/(ポリエステル樹脂(B)の溶融粘度)は0.3〜1.2であることが好ましい。溶融粘度は見かけのせん断速度100/sec、270℃で測定する。上記範囲であると、更に優れた透明性を有する成形体が得られる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造法は、ポリアミド樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)および多価カルボン酸化合物(C)を溶融混練してマスターバッチ(D)を得た後に、更にポリエステル樹脂(E)と溶融混練してポリエステル樹脂組成物を得るものである。本発明におけるマスターバッチ(D)の組成は、ポリアミド樹脂(A)10〜40重量%、ポリエステル樹脂(B)89.95〜59.00重量%、多価カルボン酸化合物0.05〜1重量%である。
また、以下の関係式(1)〜(2)を満たす。
100≦a≦250 (1)
0.1≦a/b≦0.5 (2)
ここで、a、bは以下の通りである。
a:マスターバッチ(D)の溶融粘度(Pa・sec)
b:ポリエステル樹脂(E)の溶融粘度(Pa・sec)
a、bの測定条件:280℃、せん断速度100/sec
(1)式を満たすことでマスターバッチ(D)が適度な粘度を有するため、ポリエステル樹脂(E)と溶融混練する際に、更にポリアミド樹脂(A)の微分散化が可能となり、得られる成形体の透明性、機械的性能が良好となる。(1)式を満たすマスターバッチ(D)を得るためには、用いるポリアミド樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)の選択、乾燥条件、混練条件および多価カルボン酸化合物(C)との組成比を調整することが必要となる。また(2)式を満たすポリエステル樹脂(E)を用いることで、溶融混練時に更に好適な微分散化を可能とするだけでなく、混練の際の過度の発熱により樹脂の劣化や着色を低減することが可能となる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造は、従来公知の方法、装置を採用することが出来る。例えば、ポリアミド樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)と多価カルボン酸化合物(C)とをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したマスターバッチ(D)を用いることや、さらには必要に応じてマスターバッチ(D)を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられるが、これらのなかでも、二軸押出機を用いて溶融混練する方法が本発明において好ましい方法である。
本発明においてポリアミド樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)と多価カルボン酸化合物(C)を、二軸押出機を使用して溶融混練してマスターバッチ(D)を作製する場合は、その際の溶融混練温度は200〜300℃が好ましく、より好ましくは220〜290℃である。また押出機内のスクリュー混合部には逆目スクリューエレメントやニーディングディスク等の部品を組み合わせたものを使用すると、効率良く分散させることが出来る。
良好な透明性を有する成形体が得られるので、本発明のポリエステル樹脂組成物中ではポリアミド樹脂(A)が微小分散していることが好ましい。例えば、パリソン、無延伸シート、無延伸フィルムなどの延伸熱成形等の二次加工前の成形体において、ポリアミド樹脂(A)の平均分散粒径は0.35μm以下が好ましく、0.05〜0.35μmがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、あるいは、顔料、染料、カーボンブラック、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、ポリアミド樹脂のゲル化を防止するアルカリ化合物等が含まれていてもよい。ポリエステル樹脂組成物全量に対して、他の樹脂の量は20重量%以下であることが好ましく、添加剤の合計量は5重量%以下であることが好ましい。なお、他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン−6IT、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物には、その性質を本質的に変化させない範囲で、ポリエチレンテレフタレート製品回収物、少量のイソフタル酸成分単位を含む変性ポリエチレンテレフタレート製品回収物、ポリアミド製品回収物、および/または成形品製造時の端材、および規格外物等のポリエステルおよび/またはポリアミド樹脂回収物を添加してもよい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、高い透明性が要求される成形体の材料として用いることができる。該成形体としては、例えば、Tダイ法、共押出法等で得られる無延伸あるいは低延伸倍率の単層シート及び多層シート、前記シートを延伸したフィルム、前記シートから得られる低延伸倍率の深絞り容器、ダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形により得られる胴部壁の厚みが0.1〜2mmである無延伸または延伸薄肉中空容器などが挙げられる。これらの成形体は、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装材料として利用できる。
本発明の成形体は優れたガスバリア性能、透明性、機械的性能を兼ね備えたものである。
例えば、500mLボトルにおいて23℃、60%RH条件での酸素透過率が0.035cc/ボトル・day・0.21atm以下、曇価が8%(厚さ300μm)以下、黄色度(YI)が12以下となる。
以下、実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例で採用した評価法は以下の通りである。
(1)相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5ccを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下速度(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下速度(t0 )も同様に測定した。tおよびt0 から次式(イ)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (イ)
(2)ポリエステル樹脂の固有粘度
ポリエステル樹脂0.5gを精秤し、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(=6/4重量比)混合溶媒100mlに120℃で攪拌溶解し、濃度0.5g/dlの溶液を得た。冷却後、当該原液を同溶媒にて希釈し、1/2希釈溶液(濃度0.25g/dl)および1/5希釈溶液(濃度0.1g/dl)を得た。その後、25℃での各溶液の落下時間:tcおよび溶媒の落下時間toを自動粘度測定装置((株)柴山科学器械製作所製SS−600−L1)にて測定し、比粘度ηspと濃度Cの比:ηsp/Cの濃度をゼロに外捜することで固有粘度を求めた。
比粘度ηsp=(tc/to)−1
固有粘度[η]=limC→0(ηsp/C)
(3)水分率(重量%)
水分率の測定は、三菱化学(株)製カールフィッシャー微量水分測定装置(CA−05型)および気化装置(VA−05型)を用い、融点温度で30分の気化条件で水分量を定量し、水分率を求めた。
(4)黄色度:YI
JIS K−7105に準じた。測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
(5)曇価:Haze
JIS K−7105に準じた。測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
(6)酸素透過率
ASTM D3985に準じた。測定装置は、モダンコントロールズ社製のもの(型式:OX−TRAN2/21)を使用した。測定条件は、温度23℃、相対湿度はボトル外側50%、ボトル内側100%である。
(7)溶融粘度
測定装置は、(株)東洋精機製のキャピログラフD−1を使用し、ダイ:1mmφ×10mm長さ、せん断速度100/sec、測定温度280℃条件で測定した。
(8)分散粒子径測定(透過型電子顕微鏡観察)
ウルトラミクロトーム(Boeckeler Instruments製CR−X Power Tome XL)を用いて、ボトル(パリソン)胴部からMD(縦)方向に垂直に厚み約0.1μmの観察用超薄片を切り出した。ポリアミドを塩化ルテニウム蒸気にて染色した後、銅メッシュ上で電子顕微鏡観察した。
観察条件
電子顕微鏡:日立製、表面観察型電子顕微鏡S4800
加速電圧:30kV
電流:10mA
測定倍率:25,000倍
測定モード:TEM
染色されたポリアミドの濃淡により、分散状態を観察し平均分散粒子径を求めた。
<実施例1>
下記ポリエステル樹脂(B)、ポリアミド樹脂(A)および多価カルボン酸化合物(C)をタンブラーにて混合し、二軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D:25)を用いて押出温度280℃、押出速度15kg/hの条件、かつ押出機シリンダー内を真空ポンプで減圧しながら溶融混練し、押出されたストランドをペレタイズしてペレットを得た。

ポリエステル樹脂(B):ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT553C、固有粘度0.84dl/g、溶融粘度500Pa・sec、水分110ppm)79.8重量部
ポリアミド樹脂(A):ポリアミドMXD6(三菱ガス化学(株)製MXナイロン、 グレード:S6007、相対粘度2.65、溶融粘度500Pa・sec、水分300ppm) 20重量部
多価カルボン酸化合物(C):無水トリメリット酸(三菱ガス化学(株)製、以後TMAnと略す)0.2重量部

得られたペレットを150℃、6時間の条件で真空乾燥して、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のマスターバッチ(D)ペレットを得た。マスターバッチ(D)の溶融粘度は130Pa・sec、水分130ppmであり、このマスターバッチ(D)ペレット25重量%と、ポリエステル樹脂(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT553C、固有粘度0.84dl/g、溶融粘度500Pa・sec、水分90ppm)75重量%をタンブラーでドライブレンドし、混合物を射出成形装置((株)名機製作所製、M200PDM−MJ)により射出成形して長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、重量27gのパリソンを得た。射出成形は樹脂温度280℃、金型温度15℃、スクリュー回転数150rpm条件で実施した。
得られたパリソンの胴部の電子顕微鏡による観察を行い、断面積約19平方μm中のポリアミド樹脂(A)の分散粒子径を計測した。結果、平均分散粒子径は0.18μmであった。
得られたパリソンを、ブロー成形装置((株)フロンティア製EFB1000ET)により、二軸延伸ブロー成形して、高さ223mm、胴径65mm、容量500mL、平均厚み約300μmの二軸延伸ブローボトルを得た。得られたボトルは胴部のHaze5.5%/300μm、YI8.7であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであり、着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例2>
ポリエステル樹脂(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT580CA(固有粘度1.17dl/g、溶融粘度650Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.15μmであり、得られたボトルは胴部のHaze5.2%/300μm、YI8.4であり、酸素透過率は0.019cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例3>
ポリアミド樹脂(A)としてポリアミドMXD6(三菱ガス化学(株)製MXナイロン、グレード:6000、相対粘度2.10、溶融粘度200Pa・sec、水分400ppm)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.19μmであり、得られたボトルは胴部のHaze6.6%/300μm、YI9.3であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例4>
ポリエステル樹脂(B)および(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT580CA(固有粘度1.17dl/g、溶融粘度650Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.13μmであり、得られたボトルは胴部のHaze4.8%/300μm、YI8.6であり、酸素透過率は0.019cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例5>
ポリエステル樹脂(B)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT580CA(固有粘度1.17dl/g、溶融粘度650Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.19μmであり、得られたボトルは胴部のHaze5.3%/300μm、YI9.5であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例6>
ポリアミド樹脂(A)としてポリアミドMXD6(三菱ガス化学(株)製MXナイロン、グレード:S6121、相対粘度3.48、溶融粘度1400Pa・sec、水分200ppm)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.26μmであり、得られたボトルは胴部のHaze7.8%/300μm、YI9.8であり、酸素透過率は0.021cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例7>
ポリエステル樹脂(B)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT523C(固有粘度0.72dl/g、溶融粘度200Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.28μmであり、得られたボトルは胴部のHaze6.8%/300μm、YI9.7であり、酸素透過率は0.021cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<実施例8>
マスターバッチ(D)の組成比をポリアミド樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)/多価カルボン酸化合物(C)=30/69.7/0.3重量%とし、マスターバッチ(D)16.7重量%とポリエステル樹脂(E)83.3重量%の組成比とした以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.24μmであり、得られたボトルは胴部のHaze6.2%/300μm、YI9.2であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。得られたボトルは着色も少なく、良好な透明性、ガスバリア性能であった。結果を表1に示す。
<比較例1>
ポリアミド樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)/多価カルボン酸化合物(C)=5/94.95/0.05重量%の組成比でドライブレンドし、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。得られたパリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.40μmであり、得られたボトルは胴部のHaze13.4%/300μm、YI13.9であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
<比較例2>
ポリエステル樹脂(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT523C(固有粘度0.72dl/g、溶融粘度200Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.39μmであり、得られたボトルは胴部のHaze13.0%/300μm、YI10.8であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
<比較例3>
ポリエステル樹脂(B)および(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT523C(固有粘度0.72dl/g、溶融粘度200Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.44μmであり、得られたボトルは胴部のHaze13.8%/300μm、YI11.2であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
<比較例4>
ポリアミド樹脂(A)としてポリアミドMXD6(三菱ガス化学(株)製MXナイロン、グレード:6000、相対粘度2.10、溶融粘度200Pa・sec、水分400ppm)を用い、ポリエステル樹脂(B)および(E)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET、グレード:RT523C(固有粘度0.72dl/g、溶融粘度200Pa・sec、水分150ppm))を用いた以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.53μmであり、得られたボトルは胴部のHaze14.7%/300μm、YI13.2であり、酸素透過率は0.020cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
<比較例5>
マスターバッチ(D)の組成比をポリアミド樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)/多価カルボン酸化合物(C)=50/49.5/0.5重量%とし、マスターバッチ(D)10重量%とポリエステル樹脂(E)90重量%の組成比とした以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.42μmであり、得られたボトルは胴部のHaze12.6%/300μm、YI12.4であり、酸素透過率は0.022cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
<比較例6>
マスターバッチ(D)の組成比をポリアミド樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)/多価カルボン酸化合物(C)=80/19.2/0.8重量%とし、マスターバッチ(D)6.25重量%とポリエステル樹脂(E)93.75重量%の組成比とした以外は、実施例1と同様の条件でパリソン、延伸ブローボトルを得た。パリソン胴部でのポリアミド樹脂(A)の平均分散粒子径は0.39μmであり、得られたボトルは胴部のHaze13.1%/300μm、YI13.5であり、酸素透過率は0.021cc/ボトル・day・0.21atmであった。結果を表2に示す。
Figure 0005396692
Figure 0005396692
本発明のポリエステル樹脂組成物を使用した成形体は、ガスバリア性および透明性等の外観、機械物性にも優れたものであり、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装材料として非常に有用なものであり、その工業的価値は高い。

Claims (12)

  1. ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂(A)10〜40重量%、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(B)59〜89.95重量%、ならびに芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸および前記カルボン酸の酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸化合物(C)0.05〜1重量%(重量%の合計は100重量%である)をあらかじめ溶融混練したマスターバッチ(D)を得た後に、該マスターバッチ(D)と、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(E)を溶融混練することにより、ポリアミド樹脂(A)2〜30重量%、ポリエステル樹脂(B)および(E)が合計で69.5〜97.99重量%、ならびに多価カルボン酸化合物(C)0.01〜0.5重量%(重量%の合計は100重量%である)からなるポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、
    下記式(1)〜(2):
    100≦a≦250 (1)
    0.1≦a/b≦0.5 (2)
    (上記式中、a、bは以下の通りである。
    aは280℃、せん断速度100/sec条件下で測定したマスターバッチ(D)の溶融粘度(Pa・sec);bは前記条件で測定したポリエステル樹脂(E)の溶融粘度(Pa・sec)である)
    を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。
  2. ポリアミド樹脂(A)が、ジアミンとジカルボン酸とから得られた相対粘度が1.83〜2.28の溶融重合ポリアミド樹脂を更に固相重合することにより得た、相対粘度が2.30〜4.20の固相重合ポリアミド樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法
  3. ポリアミド樹脂(A)の280℃、せん断速度100/sec条件での溶融粘度が100〜2000Pa・secである請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  4. ポリアミド樹脂(A)の溶融粘度/ポリエステル樹脂(B)の溶融粘度が、0.3〜1.2である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  5. ポリアミド樹脂(A)がポリメタキシリレンアジパミドである請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  6. ポリエステル樹脂(B)の固有粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40重量比混合溶媒中、25℃で測定した値)が、0.5〜2.0dl/gである請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  7. ポリエステル樹脂(E)の固有粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40重量比混合溶媒中、25℃で測定した値)が、0.5〜2.0dl/gである請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  8. ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂から選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  9. ポリエステル樹脂(E)がポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂から選ばれる1種以上である請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  10. 多価カルボン酸化合物(C)が、トリメリット酸および無水トリメリット酸から選ばれる1種以上である請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の製造法で得られるポリエステル樹脂組成物。
  12. 請求項11に記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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