JP5388324B2 - めっき層の熱処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、錫又は錫合金でめっきされたコンタクトピンのウイスカの発生を抑制する熱処理方法に関し、とりわけFPC用コネクタのコンタクトピンのめっき層の熱処理方法に関する。又この熱処理方法で熱処理されためっき層を具えたコンタクトピン、更にはこのコンタクトピンを装着したコネクタ(電気コネクタ、以下単にコネクタと言う)に関する。
電子部品やコネクタを回路基板に接続する際に、はんだが用いられる。はんだは主に錫と鉛からなる合金で、融点が低く、濡れ性がよく、更に価格も比較的低廉で、このような使い勝手のよさから広く電子機器の接続材として使用されている。
しかし近年、地球環境破壊が国際的な問題として関心を寄せるなか、環境負荷物質の使用には制限が加えられるようになってきた。この潮流で、はんだに含まれる鉛に関して、その使用を全廃する動きが各種団体や企業からおこり、鉛を含有しない新たなはんだ材料(鉛フリーはんだ)への置き換えが順次進められている。ここで、この鉛フリーはんだへの置き換えによって俄かにウイスカの問題が顕在化してきた。
ウイスカは錫の単結晶が成長したもので、直径1μ、長さ1mm程度に伸長する現象も報告されている。このようなウイスカは導電性があり、使用時に折損による破片の飛散や隣接端子との短絡等が生じた場合には、電子機器の性能や品質に支障を来たすおそれがある。
ウイスカは、「錫の結晶内に生じた歪や欠陥がその芽となり、このような芽に作用する応力が成長の駆動力として働き、新たな結晶が針状に成長する現象である」と説明されている。従来の鉛含有はんだでは、鉛がこのような芽の生成や成長を抑制する効果を奏するもので、そのためウイスカ現象は問題にならなかった。
このようなウイスカの抑制技術には、化学的或いは物理的方法によるものや、これらの組み合わせによるものなど多岐に亘って報告されている。しかし、報告されている抑制技術それぞれには、看過できない問題が含まれている。主な技術とその問題点は次のようなものである。
(1)下地にNi(ニッケル)、Co(コバルト)もしくはFe(鉄)の内いずれか一種のめっきを施して銅と錫とからなる金属間化合物の形成バリアとするもの(特許文献1)。Niめっき等を施せない場合もあり全ての場合に有効とは言えない。
(2)めっき後にリフロー処理をすることによって錫合金めっき層の完全溶融を図って応力の緩和を図るもの(非特許文献1)。溶融することでめっき層の表面平滑性が損なわれ、表面実装型コネクタでは実装時の不具合発生が懸念される。
現在報告されている技術を分析すると、めっき層を多層化し錫原子の移動に制限を加えるものが多々目に留まる。しかし、これら方法は一般的に工程を複雑にし、コストアップを伴うものであり、更に、もともと薄いめっき層を多層化するのだからそのコントロールには高価な制御装置を要するものである。また物理的方法によるウイスカ抑制技術もあるが(特許文献2)、これにはウイスカ伸長防止壁等の構造体の製作に技術的困難性が予測される。更には、リフロー処理でめっき組織の改質をすることで効果的にウイスカ抑制は達成できるのだが、これには、表面平滑性を失って、はんだ性を損なうという致命的な欠点が在る。
特開2007−177329号公報 特開2007−53039号公報 神戸製鋼技報、2004年4月、Vol.54、No.1、p11−12
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、はんだ性や接触信頼性を損なうことなく、ウイスカの生成及び成長を抑制するめっき層の熱処理方法の提供を目的とする。
本発明は、(1)金属或いは合金を基材とし、前記基材の上に直接或いは下地層を介して形成された錫又は錫合金のめっき層の熱処理方法において、少なくとも一時的には前記めっき層の融点と同じ温度が最高温度となるように、前記めっき層を前記融点近くの温度まで昇温して保持し、前記融点と同じ温度に保持される時間は、前記めっき層が溶融を開始する時間より短い時間であり、且つ、前記めっき層の組織が再結晶化するために必要な時間よりも長い時間であって、その後徐冷されることを特徴とする熱処理方法であり、さらに(2)前金めっき層が純錫から成るとき、少なくとも一時的に到達する前記最高温度が232℃になるように、前記めっき層をこの温度近くに保持する(1)の熱処理方法である。また(3)前記熱処理は遠赤外線を含む(1)又は(2)記載の熱処理方法である。さらに(4)上記(1)から(3)のうち一項記載の熱処理が成されたコンタクトピンを装着した電気コネクタである。
本発明の熱処理は、めっき材の融点付近の温度をピークに持つことで、リフロー処理同等のウイスカ抑制効果を奏すると共に、融点と同じ温度に保持される時間がめっき材の溶融開始時間よりも短い時間であるので、めっき層の溶融を伴わず、その結果表面平滑性を保持することができる。更に熱源に遠赤外線を使用することで、内部からの加熱を伴うので本発明の目的が一層効果的に達成される。なお、ここで融点とは、合金の場合には溶融の始まる固相線の温度を言うものとする。
本発明者は、めっき層のはんだ性や接触信頼性を損なわずに行なえる、ウイスカを抑制する熱処理方法について研究を重ねた。その結果、熱処理温度の高温化に伴い、ウイスカ抑制効果も向上し、融点付近の熱処理でリフロー処理同等の効果が得られるとの知見を得ることができた。また金属材料一般の基礎的性質では、融点に達した材料は直ちに溶融を開始するのではなく、所定時間経過後、すなわち必要融解熱の供給を受けて、その後、溶融するという相変態における遷移時間の存在に着目した。
一般に熱処理の際、加熱、冷却による組織の再結晶化が進行する過程で、結晶中の歪や欠陥が消滅し内部ひずみを持たない安定した相への変態を生じるのだが、量産プロセスでは、熱処理温度はめっき層の溶融を避ける意味もあって、つまり安全を見込んで再結晶化が起こるとされている、融点よりも十分に低い温度で行なわれるのが一般的である。しかし、このような低い温度での熱処理では、組織の再結晶化に要する駆動力が十分に得られず、その結果、結晶中に歪や欠陥が残存し、ウイスカ発生のおそれを期待通りには取除くことができない場合が生じ得る。一方、リフロー処理がウイスカ抑制に有効なのは、十分な加熱によって再結晶化に必要な、その前駆段階の組織軟化が必要水準で行われ、その後の炉中での徐冷又は炉外での放冷によって、歪のない微細結晶が組織全体に亘って生成される事によるものである。このように、熱処理条件及び、それに続く冷却条件によって組織改質の達成度を効果的に変え得るということが解った。
そこで、上述した点を踏まえてウイスカ抑制方法を考察すれば、加熱過程では、組織の軟化が目的であって必ずしも材料の溶融を伴う必要はなく、むしろ重要なのは固相状態での組織軟化である。また、その後の冷却過程では、組織の再結晶化の際に元の結晶中に生じていた歪や欠陥が消滅し得る状態の存在する事がウイスカ抑制にとって重要なのである。すなわち、ウイスカ抑制に必要な組織改質は、合理的な手法を用いることで材料の溶融を伴うことなく行ない得るという事である。そして、めっき層の表面平滑性を損なわずにウイスカの生成や成長を抑制するために、組織軟化を最も期待できる、融点付近の温度で熱処理し、続いて歪や欠陥が再結晶中に消滅するように徐冷するという本発明の着想に至った。
ここで、上述した金属材料の一般的特性である、融点において直ちに溶融を開始するのではなく、溶融に至るまでに所定の時間を要する点を利用することで、本発明の目的を最大限達成し得るのかについて考察した。すなわち、めっき材の融点付近の温度を熱処理温度に設定し、量産プロセスにおける条件の振れ幅を考慮して、例え熱処理温度が融点と同じ温度になることがあっても、めっき材の溶融を来たさない時間範囲を熱処理時間の限度に設定することによって、ウイスカ抑制効果の程度を評価するのである。実際に実験によって電着後のめっき層をその融点で溶融に至らない限度で保持し、その後、徐冷することで、組織の再結晶化が進み、その結果ウイスカ抑制効果がリフロー処理同等レベルになることが確認された。
すなわち、リフロー処理は確かにウイスカ抑制で顕著な効果を奏する処理方法ではあるが(上述した非特許文献)、この効果は直接的にはめっき材の溶融によって奏されるものではなく、溶融に伴う熱(エネルギー)によって、その後固化した組織の軟化が十分に行なわれる結果であるものと推察される。固化して初めて歪の問題が生じるからである。したがって、めっき材の融点付近の温度での熱処理によってリフロー処理による組織改質効果と同等の効果を得ることは可能であって、金属材料の性質を利用することで、たとえ一時的に熱処理温度がめっき材料の融点温度になったとしても、めっき層の溶融を伴うことなくリフロー処理同等のウイスカ抑制効果を奏することができるのである。このような過程の結果、本発明の熱処理方法を想到するに至った。
上述したように、錫又は錫合金でめっきされたコンタクトピンをめっき材の融点付近の温度で熱処理することで、ウイスカの生成及び成長を効果的に抑制することができると共に、めっき層の表面平滑性を損なうことなく、はんだ性や接触信頼性を保持しためっき層を得ることができる。
本発明を実施するための最良の形態について説明をおこなう。本発明は、コンタクトピンのめっき層をめっき材の融点付近の温度で熱処理することによって、表面平滑性やはんだ性を損なうことなく、ウイスカの生成原因である結晶内部の欠陥を効果的に除去するものである。
〈コンタクトピン〉
図1の(A)はFPC(Flexible Print Circuit)用コネクタの外観斜視図である。また図1の(B)はFPC用コネクタのコンタクトピンの外観斜視図である。FPC用コネクタ100は絶縁性のハウジング10と、ハウジング10の側面に係止する複数個のコンタクトピン20とを具える。コンタクトピン20はハウジング10内に収容されてFPC30の接続部31に挟持する接点部20Sと、回路基板40の接続部41に、はんだによって固着されるリード部20Lとを具える。
コンタクトピン20は導電性と、バネ性とを具えており、比較的廉価な銅合金を所定形状に加工したものである。表面には、これから詳しく説明するようにめっき層が形成されている。
図2の(A)は回路基板に実装されたFPC用コネクタの外観斜視図である。図2の(B)はFPCの接続部を挟持している接点部の拡大斜視図である。図2の(C)は回路基板の接続部と、はんだで固着しているリード部との拡大斜視図である。表面実装用FPCコネクタ100は、ハウジング10の下面で回路基板40に固定して、上面の開口部でFPC30を受け入れる。
〈接点部〉
接点部20Sは、FPC30の端部に具わる差込部31に並列されて露出状態にある接続部31を挟持する。このように挟持することで両者間に電気的機械的接続が達成される。接点部20Sは挟ピッチで並列し、嵌合部には圧縮応力が集中する。したがって条件的には、ウイスカが生成しやすく、ウイスカ伸長による短絡等の障害が生じるおそれが高いところである。
〈リード部〉
リード部20Lは回路基板40の端部に形成された接続部41と、はんだによって電気的機械的接続をとるところである。リード部20Lは挟ピッチで並列するが、実装後に外部応力が加わることはなく、事前に内部応力が除去されていれば、実装後にウイスカの発生するおそれは無いか、あっても極めて小さいところである。
〈めっき工程〉
ここで図3にしたがって、めっき工程の説明をおこなう。図3の(A)は、めっき工程のフローチャートである。図3の(B)は、めっき槽浸漬条件である。めっき工程は、(1)洗浄→(2)めっき槽浸漬→(3)洗浄→(4)乾燥である。ここで、浸漬槽が二つ在るのは本実施の形態では、リード部20Lと接点部20Sとは異なるめっき層(めっき厚み)を形成しているからである。勿論、リード部20Lと接点部20Sとは、一つの槽で同時にめっき層を形成してもよい。つまり、両者は同じめっき厚みであってもよい。
最初の洗浄は、被めっき部の異物や油脂を取り除きめっき層を下地金属に隙間なく一様に形成するために行なう。洗浄液はユケン社製のパクナを所定の濃度に薄めたアルカリ脱脂溶液を用いる。溶液は加熱して40〜60℃で、洗浄時間は0.1〜0.2分間行なうのが望ましい。
次に、コンタクトピン20をめっき槽に浸漬する。ここでめっき液の調整であるが、めっき液は形成しようとする、めっきの種類によって適当なものを選定することができる。本実施の形態では、純錫のめっき層を形成するので、めっき液として慣用技術である錫塩を用いることができる。本実施の形態では0.1〜0.5mol/lの塩化錫を用いることとする。この他に使用できる錫塩として、硫酸錫、臭化錫、ヨウ化錫、酸化錫、酢酸錫、ピロリン酸錫、クエン酸錫、酒石酸錫、コハク酸錫、スルファミン酸錫、ギ酸錫等があげられる。
本発明は、めっき層を純錫に限定するものではなく、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−ビスマス合金、錫−アンチモン合金であってもよい。この場合には、それぞれ適当なめっき液を用いることができる。錫−銅合金を形成する金属の塩として、硫化銅、塩化銅、臭化銅、リン酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅、乳酸銅等があげられる。錫−銀合金を形成する金属の塩として、硫化銀、塩化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀等があげられる。錫−ビスマス合金を形成する金属の塩として、硫酸ビスマス、グルコン酸ビスマス等があげられる。その他にアンチモン塩としては、塩化アンチモン、ピロアンチモン酸カリウム等があげられる。
めっき槽の陰極電流密度は、下地金属との組織的整合性をとるために急激な電圧の印加は避けなければならず、所定陰極電流密度まで徐々に上げていくのが望ましい。ここで所定陰極電流密度は、10〜25A/dm2である。好ましくは、10〜20A/dm2で、より好ましくは、15〜20A/dm2である。印加時間は、電流密度が10〜20A/dm2のときは、0.15〜0.25分であり、15〜20A/dm2のときは、0.1〜0.2分である。
めっき層の厚みは、ウイスカの発生を抑制しつつ、はんだ性や接触信頼性を確保し得るのに必要な厚みであって、接点部20Sでは、1.0〜2.0μの範囲である。好ましくは1.3〜2.0μ、より好ましくは1.5〜2.0μである。一方、リード部20Lはやや厚めで3.0〜5.0μ、好ましくは3.0〜4.0μ、より好ましくは3.0〜3.5μである。
所定厚みのめっき層の形成を終えたならば次にめっき層表面の洗浄をおこなう。洗浄は伝導度5〜20μsの純水浴中でおこなう。水温は55〜65℃で0.1〜0.2分間程度おこなうのが望ましい。
めっき層表面の洗浄を終えたならば、次にめっき層表面の水滴の除去をおこなう。水滴の除去は乾燥炉でおこなう。乾燥炉の方式は熱風循環型で、乾燥の条件は炉内温度70〜100℃で0.1〜0.2分間程度おこなうのが望ましい。
次に、図4にしたがって、めっき工程を経て形成されためっき層の状態について詳細に説明をおこなう。図4はめっき槽浸漬後のコンタクトピンのめっき層の状態を示す図である。
コンタクトピン20は、接点部20S及びリード部20Lともに、基材の全周が錫めっき層で覆われている。上述したように、この時、接点部20Sとリード部20Lとのめっき厚みに差を設けてもよい。つまり、接点部20Sのめっきは薄くし、リード部20Lのめっきは厚くしてもよい。このようにするのは、要求される機能に応じためっき厚みとすることで、ウイスカ現象を効果的に抑制するとともに、必要な所のはんだ性は確保するためである。
すなわち、接点部20Sは相対するコンタクトピンに機械的な嵌合によって電気的接続を取る所であるから、接触信頼性を具えていれば、はんだ性は要求されない。反面、このような嵌合部には外部応力を起因とするウイスカが生じやすいことが知られている。したがって、接点部20Sは、ウイスカを構成する錫原子を極力減じる事が望ましく、この点から接触信頼性を確保できるだけのめっき厚みがあれば足りる。一方リード部20Lは、回路基板40の接続部41に、はんだを介して電気的接続を取る所であるから、はんだ性を確保しておくべき所である。また、実装後の外部応力は想定されないので、ウイスカ現象も接点部20S程には問題にならない。したがって、リード部20Lは、はんだ性を担保するだけのめっき厚みを確保することが望ましい。
この時、接点部20Sのめっき厚さが適切であれば、本発明の熱処理効果との相乗で、外部応力に起因するウイスカの発生を効果的に抑制することができる。ウイスカは錫原子で構成されるため、錫原子の多寡によってウイスカの生成及び成長は左右されるからである。一方、めっきが薄すぎる場合には、下地金属が露出し耐候性や耐久性の劣化又は接触信頼性の低下につながるおそれがあるので留意を要する。
リード部20Lのめっきが厚すぎる場合には、隣接するリード部20Lとの短絡のおそれが生じる。一方、めっきが薄すぎる場合には、はんだによる回路基板40への実装の際、適切な接続がなされないおそれがあるので留意を要する。
〈熱処理〉
次に図5から図7にしたがって熱処理について詳細に説明をおこなう。図5は熱処理の温度プロファイルを示す図であり、図6及び図7は別例における熱処理の温度プロファイルを示す図である。本発明の熱処理方法の特徴は、被処理体の融点付近の高温で、めっき形成時の電着組織の改質を行なう点であって、時にはめっき材の融点と同じ温度になる場合をも許容するものである。しかし、融点での熱処理であっても処理時間がめっき材が溶融する限度以内であるので、本熱処理によってめっき層は溶融せず表面平滑性が損なわれることはない。なお、本実施の形態でめっき材に使用する錫は融点は232℃、融解熱は7.029KJ/molである。
本実施の形態では、熱処理は連続式雰囲気炉で行なわれる。連続式雰囲気炉内の雰囲気ガスは加熱された状態である。連続式雰囲気炉は複数のゾーンから成り、各ゾーンは独立に温度制御がなされる。昇温カーブ、最高到達温度、冷却カーブ等の温度プロファイルは、コンベア速度、ゾーンの個数、各ゾーンの設定温度等の諸条件の設定で再現される。
ここで、温度プロファイルを昇温過程、最高温度過程、冷却過程の3つに区分して説明する。
<昇温過程>
本実施の形態では、余熱段階を設けずに昇温しているが、勿論余熱段階を設けてもよい。炉内雰囲気は加熱されたガスである。ガスは空気であってよいし、窒素のような不活性ガスであってもよい。また炉内に遠赤外線発生パネルを組み込んで輻射熱を利用してもよい。輻射熱の利用によってめっき層の内部からの昇温が図られて、表面平滑性を損なうことなく組織改質をする本発明の目的を効果的に実現する加熱方式だからである。なお本発明は、昇温スピードや昇温方式を特段限定するものではない。
<最高温度過程>
本実施の形態の最高温度は、めっき材である錫の融点(232℃)付近である。量産プロセスでは、被処理体の温度と設備の設定温度とが一致しないのが常であり、特にコンベア式の場合には非平衡状態での昇温であるからその差異は大きく、予め被処理体の実測によりそれに応じた設備温度の設定を行なうのが一般的である。また、炉内容積、コンベアスピード、処理量等で被処理体の温度は変動するので、これらに変更が生じれば設定温度の変更を要する。更に、量産プロセスでは、想定内外の環境変動要因や、熱源の種類、熱源の制御方法等でプロファイルは変わるものなので、効果の最大化を図るためには、系の安定化を最大限図る必要がある。
このような背景の下で温度プロファイルの設定をおこなう。本実施形態の熱処理はめっき材(錫)の融点(232℃)を最高温度とする。融点を最高温度とすることは、組織の軟化を図って再結晶化を容易にするためであり、この時に、めっき層の溶融を生じさせてはならない。すなわち、例え材料温度(めっき温度)が融点(232℃)に達しても直ちに溶融を開始するものではないという金属材料一般の性質を利用して、溶融開始までの間は融点に保持して、溶融する前に材料温度の降下を図るのである。したがって、上述した量産プロセスが有する再現条件に振れ幅を伴うことを考慮に入れて、設備に具わる処理温度及び処理時間を設定するのである。仮に、このときの処理時間が再結晶化のために不足している場合には、図6に示すように温度を再度上昇させて、材料温度を再び融点と同じ温度にする操作を繰り返し、組織軟化を図ってもよい。すなわち、図6に示すように温度プロファイルの天頂部が、その位置で凹凸の波型を有する形のものであってもよい。むしろ、めっき材によっては、このような昇温・降温の繰り返しが組織軟化に効果的な場合もある。また、図7に示すようにピーク温度より一段低めの温度で所定の時間(組織の軟化で再結晶化が可能な時間)保持して、組織軟化を図ってもよい。特に、錫−銅合金のような錫合金の場合には、固相線と液相線との間には温度差があるために、固相線を超えた温度で直ちに全体が溶融するものではなく、この範囲では固液混合状態で安定的に存在しているので、この範囲内の温度を適切に選定することで、本発明の目的を効果的に達成することができる。
本実施の形態の熱処理条件は、最高温度は200〜232℃、好ましくは210〜232℃、より好ましくは220〜232℃であり、処理時間は1〜10秒、好ましくは1〜7秒、より好ましくは1〜5秒である。温度が高すぎる場合或いは時間が長すぎる場合には、めっき層が溶融し表面平滑性を損なうおそれがある。また、温度が低すぎる場合或いは時間が短すぎる場合には、組織軟化が十分ではなく、めっきの組織改質が期待する水準で行なわれず、その結果、予定するウイスカ抑制効果が得られないおそれがある。
<冷却過程>
本発明の冷却方式は除冷である。具体的には、被処理体が連続式雰囲気炉から搬出されて空気中にさらされた状態での自然冷却でよい。
この冷却過程で組織は再結晶化する。再結晶化過程で元結晶中の歪や欠陥は消滅し安定した組織へと置き換わる。ただし、このような再結晶化は徐冷又は放冷の場合に生じるもので、冷却速度が速い場合には、十分な再結晶化が見られず期待する安定組織が得られないので留意を要する。量産プロセスでは、生産効率上放冷が一般的である。
〈めっき層の状態〉
次に図8にしたがって、熱処理しためっき層の状態について詳細に説明をおこなう。図8は熱処理したコンタクトピンのめっき層の状態を示す。上段は接点部20Sの断面拡大図である。下段はリード部20Lの断面拡大図である。
接点部20Sのめっき層は全体的に薄めである。めっき層の表面は形成時の平滑性を保っている。これは、熱処理で融点付近まで昇温されているが、めっき層は外形が変化するような溶融は生じていないからである。しかしこの時、結晶組織の再結晶化は生じていて、めっき層形成時の電着組織中の歪や欠陥は、再結晶過程の原子の再配列で多くの部分が消滅している。
すなわちこの時、めっき層は熱処理によって電着組織に萌芽していた将来のウイスカの起点が取り除かれていると共に、めっき層形成時の表面平滑性が保持された状態にある。
したがって接点部20Sは、相対するコンタクトピンを挟持した際、このとき挟持部に応力集中を生じるが、熱処理でウイスカの起点が除去されており、且つめっき層自体が薄くウイスカを構成する錫原子の供給量が少ないために、ウイスカの生成及び成長は効果的に抑制されている。その結果ウイスカによる短絡や折損による障害の生じるおそれは、その要因を断つことで最大限減少されている。
リード部20Lのめっき層は接点部に比べて厚めである。めっき層は形成時の表面平滑性を保っている。上述したように、めっき層は熱処理によってめっき形成時の外形に変化を生じることなく、結晶組織中に萌芽していたウイスカの起点を取り除いた状態にある。めっき厚みは、はんだ実装で良好な接続を形成するために適切な量である。
回路基板40の接続部41に、はんだによって固着するリード部20Lの機能から見て、表面平滑で且つ必要な厚みを具えていることは、はんだ性や接触信頼性を担保するうえで欠くことのできない条件である。またリード部20Lは、実装後に外部応力が集中することはなく、熱処理で内部応力が十分に除去されていれば、実装状態でウイスカが発生するおそれは十分に取り除かれている。
したがって、本発明の実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)めっき層は融点付近の高温で熱処理されているので、その過程で組織軟化が効果的に行なわれ、その後の徐冷による再結晶化で元の結晶に在った歪や欠陥が十分に消滅している。つまり、リフロー処理同等のウイスカ抑制効果が得られる。
(2)また、リフロー処理同等のウイスカ抑制効果が得られると共に、めっき層は溶融していないので、その表面平滑性は維持されていて、はんだ性を損なうことはない。
(3)接点部のめっきは薄いので、相対するコンタクトピンとの嵌合による外部応力の集中があっても、本発明の熱処理の効果との相乗で、効果的にウイスカの発生を抑制している。
(4)熱源に遠赤外線を使用することで、めっき層の内部からの加熱を伴い、組織の軟化が一層効果的に行なわれる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施可能である。上記実施形態ではめっき材に錫を用いたが錫合金であってもよい。例えばSn−Cu(錫−銅)、Sn−Ag(錫−銀)、Sn−Bi(錫−ビスマス)などがあげられる。
図1の(A)はFPC用コネクタの外観斜視図である。図1の(B)はFPC用コネクタのコンタクトピンの側面図である。 図2の(A)は回路基板に実装されたFPC用コネクタの外観斜視図である。図2の(B)はFPCの接続部を挟持している接点部の拡大斜視図である。図2の(C)は回路基板の接続部と、はんだで固着しているリード部との拡大斜視図である。 図3の(A)はめっき工程のフローチャートである。図3の(B)はめっき層浸漬図である。 めっき槽浸漬処理後のコンタクトピンのめっき層の状態を示す写真である。上段は接点部である。下段はリード部である。 熱処理の温度プロファイルである。 別例における熱処理の温度プロファイルである。 別例における熱処理の温度プロファイルである。 熱処理後のコンタクトピンのめっき層の状態を示す写真である。
符号の説明
10 ハウジング
20 コンタクトピン
20S 接点部
20L リード部
30 FPC
31 接続部
32 差込部
40 回路基板
41 接続部
100 コネクタ

Claims (4)

  1. 金属或いは合金を基材とし、前記基材の上に直接或いは下地層を介して形成された錫又は錫合金のめっき層の熱処理方法において、
    少なくとも一時的には前記めっき層の融点と同じ温度が最高温度となるように、前記めっき層を前記融点近くの温度まで昇温して保持し、
    前記融点と同じ温度に保持される時間は、前記めっき層が溶融を開始する時間より短い時間であり、且つ、前記めっき層の組織が再結晶化するために必要な時間よりも長い時間であって、その後徐冷されることを特徴とする熱処理方法。
  2. 前記めっき層が純錫から成るとき、
    少なくとも一時的に到達する前記最高温度が232℃になるように、前記めっき層をこの温度近くに保持する請求項1記載の熱処理方法。
  3. 前記熱処理は遠赤外線を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の熱処理方法。
  4. 請求項1から3のうち一項記載の熱処理が成されたコンタクトピンを装着した電気コネクタ。
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