JP2010116603A - SnまたはSn合金めっき膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コネクタとの嵌合など大きな外部応力がかかる環境下においても、導体周囲のめっき膜表面やはんだからウィスカが発生するおそれの少ない、あるいはほとんど発生しないPbフリーのSnまたはSn合金めっき膜を提供する。
【解決手段】基材1の表面に形成され、基材1とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層2と、その金属間化合物層2の表面に形成され、SnまたはSn合金からなる網目状の構造11とを備えたものである。
【選択図】図1
【解決手段】基材1の表面に形成され、基材1とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層2と、その金属間化合物層2の表面に形成され、SnまたはSn合金からなる網目状の構造11とを備えたものである。
【選択図】図1
Description
本発明はウィスカを低減するためのめっき構造に係り、特にフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント配線板(FPC)などの端子部で嵌合により接圧する部分のSnまたはSn合金めっき膜及びその製造方法に関する。
従来、配線材、特にCuやCu合金の表面には、配線材の酸化を防ぐために、Sn、Ag、AuやNiのめっきが施される。例えば、図5に示すように、コネクタ(コネクタ部材)51とFFC52の端末接続部においては、コネクタ51のコネクタピン(金属端子)53や、FFC52の導体54の表面などにめっきが施されている。なかでも、Snはコストが安価であり、軟らかいため嵌合の圧力で容易に変形して接触面積が増え、接触抵抗が低く抑えられることから、配線材の表面にSnめっきを施したものが広く一般的に使用されている。
しかしながらSnめっきをした導体は、図6に示すようなウィスカ61と呼ばれる針状の結晶がコネクタピン53と導体54の接触部付近から成長し、他の導体と接触することにより短絡が起こるという問題がある。それを低減するためにPbを入れたSn−Pbめっきにより低減がなされてきた。しかし、昨今のRoHS指令やREACH規則の施行によりPbをめっき中に入れることが不可能となり、他の方法によるウィスカ低減が求められている。
そこで考えられている方法として、Snめっきを1μm以下の厚さでつける薄めっきや、めっき後、封孔処理剤を塗布してからSnの融点以上の温度で熱処理をするリフロー(再加熱)めっき、それらを併せた方法(例えば、特許文献1参照)、また、めっき後に他の元素を薄く断続的につけるフラッシュめっきと呼ばれる方法(例えば、特許文献2参照)、内部導体のCuとSnめっきの間に下地めっきとしてNiをめっきすることにより拡散を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ウィスカを低減するためにSnめっき中にPbを入れることは、昨今のRoHS指令やREACH規則の施行により不可能である。薄めっきによる方法では内部導体であるCuが表面に現れやすく、腐食されてしまうという問題がある。また、リフローであってもSnが再結晶化するためにウィスカがより発生しやすくなるという問題がある。フラッシュめっきや下地めっきと呼ばれる方法ではウィスカの低減に効果が見られると考えられるが、工程数の増加によるコストアップの問題もある。
そもそもコネクタとの嵌合部に現れるウィスカは、外部からの応力を受けてウィスカ生成のエネルギーとする。このため、配線材の端子部はウィスカの発生しやすい過酷な状況になっている。
そこで、本発明の目的は、特にコネクタとの嵌合など大きな外部応力がかかる環境下においても、導体周囲のめっき膜表面やはんだからウィスカが発生するおそれの少ない、あるいはほとんど発生しないPbフリーのSnまたはSn合金めっき膜及びその製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために創案された本発明は、基材の表面に形成され、前記基材とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層と、その金属間化合物層の表面に形成され、SnまたはSn合金からなる網目状の構造とを備えたSnまたはSn合金めっき膜である。
前記網目状の構造は、前記金属間化合物層の表面にSnまたはSn合金めっきが網目状に一体形成された網目状めっきであるとよい。
前記基材はCuあるいはCu合金からなり、前記Sn合金はBiを含むとよい。
また本発明は、基材の表面に、SnまたはSn合金のめっき層を形成した後、めっき融点以上の温度で加熱して前記基材の表面に、前記基材とSnの金属間化合物からなる金属間化合物層を生成させると共に、その金属間化合物層の表面に、SnまたはSn合金からなる網目状の構造を生成させるSnまたはSn合金めっき膜の製造方法である。
本発明によれば、表面のSnまたはSn合金めっきが網目状の構造を有することにより、コネクタとの接圧による応力をめっきの変形により低減することができる。その結果、めっきの応力により発生するSnの針状結晶であるウィスカを低減することが可能になり、隣接配線間の短絡といった不具合を解決することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。図1(a)は、本発明の好適な実施形態を示すSn合金めっき膜の概略平面図、図1(b)はその1B−1B線断面図である。
図1(a)および図1(b)に示すように、本実施形態に係るSn合金めっき膜10は、導電材料からなる基材1の表面に、基材1とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層2が形成され、その金属間化合物層2の表面に、Sn合金からなる網目状の構造11が形成されたものである。
網目状の構造11は、金属間化合物層2の表面にSn合金めっき3が網目状に一体形成された網目状めっきである。網目状めっきの各編み目には、空間部S1が形成され、この部分において下地である金属間化合物層2が露出している。すなわち、Sn合金めっき膜10は、基材1とSnの金属間化合物からなる金属間化合物層2上にSn合金からなる網目状の構造11が形成されたものであり、この金属間化合物層2の金属間化合物よりも網目状の構造11のSn合金の方が導電率が高い。したがって、Sn合金めっき膜10は、金属間化合物よりもSn合金めっき3が表層に存在しており、最表層がSn合金なので、最表層が金属間化合物である場合に比べてより導通しやすい構造を有する。
基材1には、CuあるいはCu合金からなるものを用いるとよい。この場合、基材1とSnの金属間化合物は、Cu−Sn系の金属間化合物である。Sn合金としては、合金の融点を下げ、半田濡れ性を向上させるため、Biを含むPbフリーのSn系合金を用いるとよい。
Sn合金めっき膜10は、コネクタのコネクタピン、FFCやFPCなどの電子機器用配線材の端子部(端末接続部)で嵌合により接圧する部分(例えば、基材1として、図5のコネクタピン53やFFC52の導体54)のめっき膜として用いられる。
次に、Sn合金めっき膜10の製造方法を説明する。
まず、基材1の周囲などの表面に、電気めっきによりSn合金のめっき層を形成する。めっき層を形成した後、基材1とめっき層を熱処理(リフロー処理)する。熱処理は、めっき融点以上の温度で所定時間加熱して行う。熱処理後は、大気中で冷却する。
熱処理と冷却を行うことで、基材1からめっき層へ基材1の主成分を拡散させ、めっき層中に基材1の主成分とSnの金属間化合物を成長させる。熱処理の温度と時間は、基材1の全表面を金属間化合物層2で覆い、かつめっき層の表層付近まで基材1の主成分を拡散させるのに十分な温度と時間に設定する。
これにより、基材1の表面に、基材1とSnの金属間化合物からなる金属間化合物層2(めっき層では基材1に近かった部分)を生成させると共に(同時に)、その金属間化合物層2の表面に、Sn合金からなる網目状の構造11(めっき層では基材1から遠かった部分)を生成させると、Sn合金めっき膜10が得られる。
より詳細には、Biを添加することにより、SnとBiとで合金を作り(Sn合金)、そのSn合金とCu−Sn系の金属間化合物との間で濡れ性に差が現れる。その濡れ性の差により金属の固まりやすさに場所的な違いが現れる結果、網目状の構造11が作られる。
本実施形態の作用を説明する。
Sn合金めっき膜10は、基材1の表面に形成され、基材1とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層2と、その金属間化合物層2の表面に形成され、Sn合金からなる網目状の構造11とを備える。
このSn合金めっき膜10を、例えば、コネクタのコネクタピン、FFCやFPCなどの電子機器用配線材の端子部で嵌合により接圧する部分のめっき膜として用いれば、コネクタとの嵌合により圧接したときに、その接圧によって網目状の構造11が応力を受けて変形し、配線材同士で電気的な接触状態を保つので、導通が保たれる。
ここで、ウィスカを低減するメカニズムの詳細は以下のとおりである。
コネクタとの嵌合によるウィスカを低減させるためには、めっきがコネクタピンから受ける外部応力を低減する必要がある。そのためにSn合金めっき膜10では、めっき膜が網目状の構造11を有することにより、コネクタとの嵌合によって網目状の構造11の空間部S1が変形する。この変形により外部応力が吸収されて低減され、結果としてウィスカの成長が低減されることになる。
また、ウィスカが発生したとしても、その原料となるめっき膜が網目状の構造11となっていると、空間部S1ではウィスカの成長に必要なSn合金が供給されないため、結果としてウィスカの成長が低減されることになる。
さらに、ウィスカが発生したとしても、網目状の構造11を有することにより、ウィスカの成長方向を隙間のある部分(空間部S1)に限定することができるため、隣接する導体と接触することによる短絡を防ぐことができる。
Sn合金めっき膜10では、基材1と網目状の構造11間に導電性を有する金属間化合物層2が形成されているため、この金属間化合物層2により、基材1と網目状の構造11間の導通を保ちつつ、網目状の構造11を裏面から支えてめっき膜全体の強度を高めることができる。
Sn合金めっき膜10の網目状の構造11は、Sn合金めっき3が網目状に一体形成された網目状めっきであるため、弾性に優れる。このため、網目状の構造11は、図3(a)および図3(b)に示すようなSn合金めっき3が独立した島状に形成された不連続島状めっきである島状の構造31や、島状の構造31のSn合金めっき3同士が部分的に連結された図4(a)および図4(b)に示すような連続島状めっきである島状の構造41に比べ、変形しやすく、かつ復元しやすい。
このように、Sn合金めっき膜10によれば、表面のSn合金めっきが網目状の構造11を有することにより、コネクタとの接圧による応力をめっきの変形により低減することができる。その結果、めっきの応力により発生するSnの針状結晶であるウィスカを低減することが可能になり、隣接配線間の短絡といった不具合を解決することができる。したがって、Sn合金めっき膜10は、ウィスカの発生を低減したSn合金めっき膜である。
また、本実施形態に係る製造方法によれば、基材1の表面に、Sn合金めっきを施してめっき層を形成した後、めっき融点以上の温度で加熱する熱処理を行うことで、Sn合金めっき膜10が簡単に得られる。
本実施形態に係る製造方法においては、熱処理を行った後の追加めっき工程を必要としていない。また、電気めっきを行う際のめっき溶液を種々のSn合金めっき組成にすることで添加元素による効果を付加することも可能である。
本実施形態に係る製造方法では、熱処理によって網目状の構造11を生成するため、はじめに行われるめっきの方法についても電気めっきに限定するものではなく、溶融めっきでもよい。
また、熱処理後の冷却方法として、好ましい例として大気中での冷却をあげているが、水中に投入することによる急速な冷却や、熱湯中に投入し、徐々に冷却する方法であっても網目状の構造11が生成できるため、冷却方法は限定されるものではない。
前記実施形態では、基材1の表面にSn合金のめっき層を形成した後、熱処理してめっき層を金属間化合物層2とSn合金からなる網目状の構造11とにしたSn合金めっき膜10を説明した。これと同様にして、基材1の表面にSnのめっき層を形成した後、熱処理してめっき層を金属間化合物層とSnからなる網目状の構造とにしたSnめっき膜にしてもよい。このSnめっき膜によっても、Sn合金めっき膜10と同様の作用、効果が得られる。
(実施例1)
電気めっきにより、基材1としてのCuの導体に0.8〜1.5μmの厚さでSn−Bi合金めっきを施した。そのめっきされた導体をめっきの融点よりも高い280℃の熱源の上に10秒間載せ、導体とめっきの間に金属間化合物層2を生成させると共に、めっき層が網目状の構造11を有するように熱を加える。その後大気中で冷却することにより、図2に示すようなSn合金めっき膜(Sn−Bi合金めっき膜)10を作製した。本実施例ではBiが3重量%になるように調整して合金を作製した。
電気めっきにより、基材1としてのCuの導体に0.8〜1.5μmの厚さでSn−Bi合金めっきを施した。そのめっきされた導体をめっきの融点よりも高い280℃の熱源の上に10秒間載せ、導体とめっきの間に金属間化合物層2を生成させると共に、めっき層が網目状の構造11を有するように熱を加える。その後大気中で冷却することにより、図2に示すようなSn合金めっき膜(Sn−Bi合金めっき膜)10を作製した。本実施例ではBiが3重量%になるように調整して合金を作製した。
(比較例1、2)
実施例1の導体を用い、250℃の溶融Sn−Bi合金中を通過させることで生成した溶融めっきによるSn−Biめっき膜を作製した後、熱処理を加えていない試料を比較例1とし、電気めっきでSn−Biめっき膜を作製した後、熱処理を加えていない試料を比較例2とした。
実施例1の導体を用い、250℃の溶融Sn−Bi合金中を通過させることで生成した溶融めっきによるSn−Biめっき膜を作製した後、熱処理を加えていない試料を比較例1とし、電気めっきでSn−Biめっき膜を作製した後、熱処理を加えていない試料を比較例2とした。
実施例1のSn合金めっき膜10を作製した導体と、比較例1、2のSn−Biめっき膜を作製した導体とを、それぞれ100ピンのコネクタに嵌合させて、2週間室温で保持したものについて、各ピンにおける10μm以上のウィスカの発生本数と最大長さを電子顕微鏡により観察することで、ウィスカ性を評価した結果を表1に示す。
この結果から実施例1は、比較例1、2に比べ、10μm以上ウィスカ発生本数が約1/5と少なく、最大ウィスカ長さが約1/3と短く、ウィスカの発生本数と最大長さとも良好な結果が得られることが明らかである。Snめっきでも同様の結果であった。
1 基材
2 金属間化合物層
3 Sn合金めっき
10 Sn合金めっき膜
11 網目状の構造
2 金属間化合物層
3 Sn合金めっき
10 Sn合金めっき膜
11 網目状の構造
Claims (4)
- 基材の表面に形成され、前記基材とSnの金属間化合物からなる導電性を有する金属間化合物層と、その金属間化合物層の表面に形成され、SnまたはSn合金からなる網目状の構造とを備えたことを特徴とするSnまたはSn合金めっき膜。
- 前記網目状の構造は、前記金属間化合物層の表面にSnまたはSn合金めっきが網目状に一体形成された網目状めっきである請求項1記載のSnまたはSn合金めっき膜。
- 前記基材はCuあるいはCu合金からなり、前記Sn合金はBiを含む請求項1または2記載のSnまたはSn合金めっき膜。
- 基材の表面に、SnまたはSn合金のめっき層を形成した後、めっき融点以上の温度で加熱して前記基材の表面に、前記基材とSnの金属間化合物からなる金属間化合物層を生成させると共に、その金属間化合物層の表面に、SnまたはSn合金からなる網目状の構造を生成させることを特徴とするSnまたはSn合金めっき膜の製造方法。
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