JP5384980B2 - 積層フィルム - Google Patents
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Description
加水分解を抑制するためには、ポリマー骨格中に極性基が少なく、かつ結晶性である熱可塑性樹脂を用いることが有効であり、芳香族ポリエステルフィルムは、良好な耐久性を備える。
本発明の積層フィルムは、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる。
本発明においては、基材としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムを用いる。このフィルムは、単層のフィルムであっても、複数の層から構成されるフィルムであってもよい。
これらの特性は、基材として、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムを用いることで得ることができる。
基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムのうえに設けられる、紫外線吸収剤を含む樹脂層は、紫外線吸収剤とバインダーの樹脂からなる。
紫外線吸収剤を含む樹脂層の厚みは、好ましくは0.05〜20μm、さらに好ましくは0.1〜10μmである。この範囲の厚みであることで、十分な紫外線吸収性を得ることができ、また、樹脂層が剥離したり脆くなったりしない積層フィルムを得ることができる。
本発明の積層フィルムは、波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、かつ300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下である。波長400〜900nmでの平均光線透過率は、好ましくは75%以上である。太陽電池の表面保護フィルムや、光入射側に用いる太陽電池用基材フィルムとして用いるためには、可視光域での高い光線透過率が必要であり、この特性が必要である。この条件を満足しないと、太陽電池の表面保護フィルムや、光入射側に用いる太陽電池用基材フィルムとして必要な光線透過率を得ることができない。この性質を得るために、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムのうえに、紫外線吸収剤を含有する樹脂の層を設ける。
ε=A/(c×b)
上記式中、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)である。
吸光係数が2未満であると十分に紫外線を遮蔽することができず、積層フィルムに高い耐光性を付与することができない。
波長380nmにおける吸光係数が2以上の条件を満足する紫外線吸収剤として、具体的には、例えば以下の紫外線吸収剤を用いることができる。
本発明において紫外線吸収剤を含む樹脂層を構成する樹脂は、バインダーとして紫外線吸収剤を基材上に固着させる。この樹脂として、透明な樹脂を用いることが好ましく、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニルブチラール樹脂、セルロール樹脂、およびポリアミド樹脂を用いることができ、中でも、光安定性に優れるアクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。
紫外線吸収剤を含有する樹脂層には、光安定剤を含有させてもよい。一般に、光安定剤には、クエンチャーとHALSの2種類があり、クエンチャーは、一般に励起状態にある活性分子(例えば、1重項酸素1O2)を脱励起させる機能を有する。また、HALSは、紫外線により発生するラジカルを補足する捕捉剤として機能していると考えられている。
屋外使用時にさらに高い耐久性を得るために、紫外線吸収剤を含む樹脂層のうえに、さらにハードコート層を設けてもよい。このハードコート層の厚みは、例えば0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。
基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムと紫外線吸収剤を含む樹脂層との密着性を向上させるために、基材のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムと紫外線吸収剤を含む樹脂層との間に易接着層を設けることが好ましい。また、本発明の積層フィルムを他の基材と接着させる場合に優れた接着性を得るために、紫外線吸収剤を含む樹脂層を設けるのとは反対側の面に易接層を設けることが好ましい。
本発明に積層フィルムは以下の方法で製造することができる。
本発明において基材として用いられるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを溶融し、これらを溶融押出して未延伸シートとし、これを延伸することによって製造することができる。実用的な機械的強度を得るために二軸延伸することが好ましい。
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、121℃・100%RH・2atm・濡れ飽和モードに設定した環境試験機内に100時間放置した。その後試料片を取り出し、その縦方向の破断強度を5回測定し、平均値を求めた。下記基準にて耐加水分解性を評価した。
○: 処理後の破断点伸度保持率50%以上
×: 処理後の破断点伸度保持率50%未満
なお、破断点伸度保持率は以下の式から算出した。
破断点伸度保持率=S100/S0×100
ここで、S100 は100時間処理後の破断点伸度、S0は初期の破断点伸度である。
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに所定の温度のオーブンで所定時間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。この熱処理前の標点間距離L0と熱処理後の標点間距離Lをそれぞれ測定し、熱処理後の寸法変化率を熱収縮率S(%)として下式により算出した。
S(%)=((L0−L)/L0)×100
分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、波長400〜900nmの光線透過率を、2nm間隔で測定した。測定した各波長の光線透過率の平均から波長400〜900nmの平均光線透過率を算出した。
各紫外線吸収剤を吸光度が飽和しない程度までテトラヒドラフランに希釈した溶液を、分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、石英セルにサンプルを添加して測定することで吸光度を測定した。この値と溶液の濃度から吸光係数(ε)を下記式を用いて算出した。
ε=A/(c×b)
ここで、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)である。
ダイプラ・ウィンテス(株)製のメタルウェザー試験機(型式:KW−R5TP−A、光源:水冷ジャケット式メタルハライドランプ)、フィルターKF−1(透過光波長295〜780nm)放射照度75mW/cm2、ブラックパネル温度 63℃、スプレーなしで照射試験を行った。照射試験後のフィルムの光線透過率を評価し、照射前後の光線透過率維持率を評価した。
光線透過率維持率=Ta/Tb×100
分光光度計((株)島津製作所製MPC3100)を用い、波長300〜400nmの光線透過率を、2nm間隔で測定した。測定した各波長の光線透過率の平均から300〜400nmの平均光線透過率を算出した。
(ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムの作成)
固有粘度が0.63で、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給した。溶融温度305℃で溶融混練し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗膜厚みが90nmになるようにロールコーターで塗工し易接層を形成した。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル48部、イソフタル酸ジメチル14部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、固形分が25重量%のポリエステルの水分散体を得た。
上記のポリエステルの水分散体10重量部、アクリルの水分散体5重量部と水溶液85重量部を混合して、塗剤Aを作成した。
有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(Ciba社製)8重量部、バインダー樹脂としてアクリル樹脂のハルスハイブリッドUV−G13(日本触媒製)60重量部、イソシアネート硬化剤としてデスモジュールN3200(住化バイエルウレタン社製)0.6重量部、トルエン31重量部に分散させて固形分濃度34重量%、固形分中の紫外線吸収剤の濃度を19重量%の溶液として塗液を調製した。この塗液をバーコーターを用いてポリエステルフィルムの塗剤Aを塗布した面上に塗布、乾燥して、厚み6.3μmの紫外線吸収剤含有層を形成した。
この積層フィルムを用いて耐加水分解テスト及び光照射試験を行ったところ良好な耐久性を持つことが確認された。結果を表1に示す。
紫外線吸収剤およびバインダー樹脂の種類、厚みを表1のとおりに変更した以外は実施1と同様にして積層フィルムを得た。表2に示すとおり、いずれも高い耐久性を持つことが確認された。
長波長を吸収する紫外線吸収剤を添加しない以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを用いた。表2に示すとおり耐光性が不十分な結果となった。
紫外線吸収剤を含む層を設置せずに、耐加水分解性試験及び耐光性試験を行った。結果表2に示すとおり耐光性が不十分な結果となった。
Tinuvin109: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin234: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin384: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin928: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tinuvin477: トリアジン系紫外線吸収剤
日本触媒社製 ハルスハイブリッド UV−G13: ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を側鎖にもつアクリル樹脂
旭硝子製 ルミフロンクリヤーLF200: フッ素系樹脂
カネカ ゼムラック YC3835: アクリルシリコン系樹脂
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TSR145:
シリコン樹脂
Claims (5)
- ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムおよびそのうえに設けられた紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる積層フィルムであり、紫外線吸収剤の波長380nmにおける吸光係数εが2以上であり、該樹脂層の重量を基準として紫外線吸収剤濃度が19重量%以上80重量%以下であり、該樹脂層を構成するバインダー成分がアクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素系樹脂およびシリコン樹脂からなる群から選ばれる1種であり、積層フィルムの波長400〜900nmでの平均光線透過率が70%以上、300〜400nmでの平均光線透過率が10%以下であるとともに、積層フィルムを、121℃、100%RH、2atmの環境に100時間保持したときの伸度保持率が50%以上、かつ200℃にて10分間保持したときの熱収縮率が2%以下であることを特徴とする積層フィルム。
- 紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、請求項1記載の積層フィルム。
- 該バインダー成分がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を側鎖にもつアクリル樹脂である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 太陽電池の表面保護フィルムとして用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
- 太陽電池の基材フィルムとして用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
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