JP5381972B2 - 車両のエンジン制御装置 - Google Patents
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Description
ロックアップクラッチ等が結合していない非直結時の場合、トルコンは、構造上、入力軸回転速度は出力軸回転速度に対してある一定範囲で差回転を持つことができる。このため、発進時や減速後の再加速時において、入力軸回転速度(エンジン回転速度)が急増することが起こりうる。一方、トルコンは、構造上、その入力側と出力側との回転速度比が1となる付近を境界として容量係数が大きく変化する場合がある。このトルコンの容量係数は、伝達効率と相関しており、容量係数が大きくなるとエンジンからの伝達トルクも大きくなる。
もちろん、ロックアップクラッチ等が結合して、トルコンの入力側と出力側とが直結していれば、エンジン回転速度は急増しないので、このようなトルコンのトルク伝達特性に起因した加速ショックを招くことはない。
例えば、特許文献1には、エンジンの動力を無段変速機へ伝達するトルコンをそなえ、トルコンのポンプインペラの回転速度(エンジン回転速度)Neがトルコンのタービンライナの回転速度Ntより低いか略同等状態であるとき、エンジンの目標トルクを制御し、回転速度Neが回転速度Ntより高くなると、エンジンの目標トルクを増加させることにより、加速ショックを抑制しつつ、加速応答性を向上させる技術が開示されている。
このため、目標スロットル開度や目標トルクを設定する際には、変速機の変速比や車速などの諸条件によって最適設定値が異なるため、スロットル開度目標値のホールドの長さ及び幅とテーリングの傾きとを決定するために、多数のマップを設けて対応することになる。
前記目標回転速度設定手段は、前記車両が加速中でない場合には、前記トルクコンバータの出力軸の現在回転速度Ntに前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された増分量Nt_accを加算して前記目標回転速度Nobjを設定することが好ましい。
前記制御手段は、前記エンジンのスロットル開度及び点火時期を制御することにより前記エンジンのトルクを制御することが好ましい。
〔構成〕
<駆動系の構成>
まず、本制御装置の対象であるトルクコンバータを有する自動車(車両)の駆動系の要部構成を説明する。
トルコン6は、トルコンケーシング62内に、エンジン2の出力軸22に結合されたインペラ64と、自動変速機4の入力軸42に結合されたタービンライナ(単に、タービンともいう)66とが対向して装備され、インペラ64とタービンライナ66との間には、図示しない粘性流体が介在し、この粘性流体を介してインペラ64とタービンライナ66との間の動力伝達が行なわれる。
また、エンジン2及び自動変速機4を制御する電子制御ユニット(ECU)10が備えられている。このECU10は、詳細を図示しないが、入出力装置、記憶装置(ROM,RAM,不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えて構成された周知のコンピュータである。
次に、本実施形態にかかるエンジン制御装置を説明する。この制御装置は、上述の自動車のエンジン2を制御するECU10によって構成される。
図1,図2に示すように、エンジンECU10内には、実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する実エンジントルク推定手段11と、エンジン2の目標回転速度(目標エンジン回転速度)Nobjを設定する目標回転速度設定手段12と、エンジン2の回転速度の変化率の目標値dNe_TGTを算出する変化率目標値算出手段13と、エンジンの回転速度の変化率の現在値dNeを算出する変化率算出手段14Aと、第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dを算出する第1補正値算出手段14と、第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXを算出する第2補正値算出手段16と、要求トルク値補正手段17Aを有し補正によりエンジンの要求トルク値Pi_accを算出する要求トルク値算出手段17と、エンジン要求トルク値Pi_accを超えないようにエンジンのトルクを制御するエンジントルク制御手段18とを、何れもコンピュータプログラムによるソフトウェアにより備えている。
実エンジントルク推定手段11は、エアーフローセンサ(吸入空気流量検出手段)21により検出された吸入空気量Qaに基づいて現時点のエンジン2の吸気量に対応する現在の実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。ただし、検出吸入空気量Qaが変化するとスロットル通過吸気流量が変化して現在エンジントルク値Pi_ACTも変化するが、スロットル通過吸気流量が変化しても、この流量が変化した吸気が、吸気管全体を満たすために拡散するため、実際にエンジン2に吸入される吸気量にはスロットル通過吸気流量に対して吸気管全体容積とエンジンの気筒容積に応じた応答遅れが生じる。そこで、実エンジントルク推定手段11は、充填効率Ecが現在のエアーフローセンサ21により検出された吸入空気量Qaに対して、吸気管全体容積とエンジン2の気筒容積とに対応した一次遅れをもって変化するものとして、現在の充填効率Ec(n)を推定し、現在の充填効率Ec(n)に対応する実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。
Ecr=Qa×τ×KQEc ・・・(1)
但し、τは4気筒エンジンの場合の180°CA周期(sec)であり、KQEcは変換係数である。
Ec(n)=KANF・Ec(n−1)+(1−KANF)・Ecr ・・・(2)
Pi_ACT(n)=f2[Ne(n),Ec(n)] ・・・(3)
但し、Ne(n)はエンジン回転速度センサ(回転速度検出手段)22で検出された現在のエンジン回転速度である。
KANF=VIM/(VIM+VCYL) ・・・(4)
まず、加速時における目標回転速度Nobjの設定のために、目標回転速度設定手段12は、トルコン6の出力軸(つまり、自動変速機4の入力軸)42の現在回転速度(現在のタービン回転速度)Ntと現在エンジン回転速度Neとの比である速度比Nt/Neを算出する機能(速度比算出手段)12aと、この速度比Nt/Neを引数とするマップからトルコン6のトルク比τと容量係数Cとを決定する機能(トルク比,容量係数決定手段)12bと、トルク比τ及び容量係数Cと、自動変速機4及び図示しない自動変速機4以降の駆動系(プロペラシャフトやドライブシャフト、ディファレンシャル、ホイール(タイヤ)を繋ぐ伝達系)の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値(T/M入力トルク値)Taccとから、エンジン2の回転速度(第2目標回転速度)Nobj2を算出する機能(回転速度算出手段12c)とを備え、車両の加速時には、回転速度算出手段12cにより算出した回転速度Nobj2を目標回転速度Nobjに設定する。
ここで、増量分Nt_accは、トルコン6の出力軸42の現在回転速度がNtであって、エンジン回転速度がNt+Nt_accであるとしたときのトルコン出力軸トルクTacc_0が変速機入力トルクTaccの初期値以下となるように設定する。なお、トルコン出力軸トルクTacc_0は、トルコン6の出力軸42の現在回転速度がNtであって、エンジン回転速度がNt+Nt_accであるとしたときのトルク比τと容量係数Cを用いて、τ×C×(Nt+Nt_acc)2の関係式を用いて得られる。このような目標回転速度を設定することにより、トルコン出力軸トルクTacc_0を変速機入力トルクTaccの初期値以下に確実に抑えることができる。
そして、トルコン6のトルク比τ及びトルコン6の容量係数Cは、トルコン6に係る設計値であって、図5,図6に示すように、速度比Nt/Neを引数とするマップを用意することができ、トルク比,容量係数決定手段12bでは、図3に示すように、これらのアップを用いて、速度比Nt/Neから、トルク比τ及びトルコン6の容量係数Cを決定する。
Tacc=τ・C・Nobj22 ・・・(5A)
Nobj2=√τ・C・Tacc ・・・(5B)
Nobj1=Nt+Nt acc ・・・(5C)
Nobj=Nobj2 ・・・(5D)
Nobj=Nobj1 ・・・(5E)
図4に示すように、偏差ΔNeが0であればエンジン回転速度を変化させる必要はなく基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は0である。
ただし、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の大きさには、制限が設けられており、偏差ΔNeの大きさがさらに大きくなっていくと、上記変化率は次第に小さくなって制限値(上限値又は下限値)へと近づいていく。このように、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の大きさに制限を設けているのは、特に、目標回転速度が略一定の場合に、偏差ΔNeの大きさが極めて大きいからといって基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を過剰に大きくすると、制御のオーバシュートやハンチングを招くおそれが発生するため、これを回避するためである。また、上記変化率を制限値に向けて滑らかに変化させることにより制御を安定させている。
dNe_TGT(n)=dNe_TGT´(n)+dNobj ・・・(6)
なお、エンジン回転速度変化率現在値dNeは変化率算出手段14Aにより算出される。変化率算出手段14Aでは、エンジン回転速度変化率現在値dNeを、エンジン回転速度センサ22により検出されたエンジン回転速度Neを処理して得られるが、2行程前から現時点までの2行程間のエンジン2の回転速度の変化率が得られ、これをエンジン2の回転速度の変化率の現在値dNeとする。
dPi_d=Ie×[dNe_TGT(n)−dNe] ・・・(7)
エンジン要求トルク値算出手段17は、要求トルク値補正手段17Aにより、下式(8)のように、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを基に、第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dと第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとにより加算補正して、エンジン要求トルク値Pi_acc(n)を算出する。なお、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cには、現時点の2行程前の値を用いる。
Pi_acc(n)=Pi_ACT_2c+dPi_d+dPi_AUX ・・・(8)
本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置は、上述のように構成されるので、エンジンECU10では、予め設定された所定の制御周期で、エンジン要求トルク値Pi_acc(n)を算出する。
つまり、実エンジントルク推定手段11が、エアーフローセンサ21により検出された吸入空気量Qaに基づいて現時点のエンジン2の吸気量に対応する現在の実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。
かかる基本変化率目標値dNe_TGT´(n)により、目標回転速度が略一定の場合にも、偏差ΔNeの大きさが極めて大きいからといって基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を過剰に大きくせずに(図3参照)、制御のオーバシュートやハンチングを回避することができる。
第1補正値算出手段14は、こうして算出した今回のエンジン回転速度変化率目標値(目標値C)dNe_TGT(n)とエンジン回転速度変化率現在値dNeとの差分にエンジンクランクシャフト周り(主運動系、フライホイール等を含む)の慣性モーメントIeを乗じて第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dを算出する。
そして、エンジン要求トルク値算出手段17は、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dと第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとにより加算補正して補正後要求トルク値Pi_acc (n)を算出する。
上記のように、第1エンジン要求トルク補正値dPi_dは、一定の目標エンジン回転速度に対して安定した制御を行なうように設定される基本変化率目標値dNe_TGT´(n)に、目標回転速度Nobjの変化に対応した所定の変化率dNobj(n)だけ増減して算出した、エンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)に基づいて設定されるので、目標エンジン回転速度Nobjが変化したら、所定の変化率dNobj(n)を増減して今回のエンジン回転速度の変化に速やかに対応して、エンジン2に対し適切なトルクを要求することができる。これにより、目標回転速度が変化する場合であっても、変化する目標値に確実に追従させるようにエンジントルク制御を実施することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態の限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、この実施形態の一部を変形したて利用したり、この実施形態の一部のみを利用したりすることが可能である。
10 エンジンECU(エンジン電子制御ユニット)
11 実エンジントルク推定手段
12 目標回転速度設定手段
12a 速度比算出手段
12b トルク比,容量係数決定手段
12c 回転速度算出手段
13 変化率目標値算出手段
14 第1補正値算出手段
14A 変化率算出手段
16 第2補正値算出手段
17 エンジン要求トルク値算出手段
17A 要求トルク値補正手段
18 エンジントルク制御手段
21 エアーフローセンサ(吸入空気流量検出手段)
22 エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)
Claims (3)
- エンジンと変速機との間にトルクコンバータを有する車両のエンジン制御装置であって、
前記エンジンの回転速度Neを検出する回転速度検出手段と、
前記エンジンの目標回転速度Nobjを設定する目標回転速度設定手段と、
前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Neに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の現在値dNeを算出する変化率算出手段と、
前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Ne、及び、前記目標回転速度設定手段で設定される目標回転速度Nobjに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)を算出する変化率目標値算出手段と、
前記変化率算出手段で算出される前記変化率の現在値dNeと前記変化率目標値算出手段で算出される前記変化率の目標値dNe_TGT(n)とに基づき第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを算出し、この第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを用いて実際のエンジントルク値を補正した補正後要求トルク値Pi_acc(n)を算出する要求トルク値算出手段と、
前記要求トルク値算出手段で算出された補正後要求トルク値Pi_acc(n)に基づいてエンジンのトルクを制御する制御手段とを備え、
前記目標回転速度設定手段は、
前記トルクコンバータのトルク比τ及び容量係数Cと前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値Taccとを用いて前記エンジンの回転速度Neを算出する回転速度算出手段を有し、
前記車両の加速中には、前記回転速度算出手段により算出した前記回転速度を前記目標回転速度Nobjに設定する
ことを特徴とする、車両のエンジン制御装置。 - 前記目標回転速度設定手段は、前記車両が加速中でない場合には、前記トルクコンバータの出力軸の前記現在回転速度Ntに前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された増分量Nt_accを加算して前記目標回転速度Nobjを設定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両のエンジン制御装置。 - 前記目標回転速度設定手段は、前記現在の回転速度Neが前記トルクコンバータの出力軸の前記現在回転速度Ntよりも大きい場合に、前記車両が加速中であると判定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両のエンジン制御装置。
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