JP6812165B2 - エンジン制御装置 - Google Patents
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Description
このとき、エンジンは、主にポンプ損失に起因するフリクションによって、車両の走行抵抗(いわゆるエンジンブレーキ)を発生させる。
特許文献2には、無段変速機の変速制御装置において、減速度が所定の閾値を超えたときに、目標入力回転数を小さく補正する際の補正量を減速度に応じて演算し、補正後の目標入力回転数に基づいて変速制御を行なうことが記載されている。
一方、運転者が車両を停止させること等を意図してアクセルオフし、さらにブレーキングなどを行っている場合には、エンジンのポンプ損失を大きくしてエンジンブレーキによる制動力を適切に発生させることが運転しやすさ(ドライバビリティ)の観点からは好ましい。
また、従来一般的に行われているように、燃料カット中にアイドル時の目標回転数を基準として吸入空気量を制御する場合には、コースティング中における目標回転数と実回転数との乖離が大きくなり、吸入空気量の補正が過剰あるいは過補正となり、燃費やドライバビリティの悪化につながる。
本発明の課題は、コースティング時の燃費及びドライバビリティを改善したエンジン制御装置を提供することである。
請求項1に係る発明は、車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、前記エンジンの吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段と、車両の減速度を検出する減速度検出手段と、前記車両の燃料カット状態での減速時に、前記エンジンの出力軸の目標回転速度を、前記減速度検出手段が検出した前記減速度に応じた単位時間あたり変化率で除変するよう設定する目標回転速度設定手段とを備え、前記吸入空気量制御手段は、前記車両の燃料カット状態での減速時における前記エンジンの出力軸の実際の回転速度が前記目標回転速度に近づくよう前記エンジンの吸入空気量をフィードバック制御し、前記目標回転速度設定手段は、前記目標回転速度の変化率を設定した後に、前記車両の燃料カット状態での減速度に所定の閾値以上の変化が生じた場合には、前記変化が生じた後における前記車両の減速度に基づいて前記目標回転速度の変化率を再設定することを特徴とするエンジン制御装置である。
これによれば、車両の減速度に応じた単位時間あたり変化率で徐々に低下する目標回転速度(回転低下速度)に、エンジンの出力軸の実際の回転速度(単位時間あたり回転数)が近づくよう、吸入空気量をフィードバック制御することによって、車両の減速度が比較的小さい場合には、吸入空気量を増加させてポンプ損失を抑制し、エンジンの出力軸の回転速度低下を抑制しつつ、燃料カット状態を維持して惰性で走行可能な領域を拡大し、燃費を向上することができる。
一方、車両の減速度が比較的大きい場合には、吸入空気量を減少させてポンプ損失を増大させ、エンジンの出力軸の回転速度低下を促進するとともに、いわゆるエンジンブレーキによる適度な制動力が得られるようにして、ドライバビリティを改善することができる。
また、車両の減速度が変化した場合に、目標回転速度の変化率を再設定することによって、現在の車両の減速度により適合した制御を行なうことができる。
これによれば、車両の停車に至るまで、エンジンの出力軸の回転速度をリニアに変化させて、停車時のアイドル回転速度に収束させることによって、回転速度の急変によるドライバビリティの悪化やエンジン制御精度の低下を防止することができる。
これによれば、車両の減速度を精度よく検出することによって、吸入空気量のフィードバック制御をより適切に行うことができる。
実施例のエンジン制御装置は、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載されるガソリンエンジン、及び、その補機類を制御するものである。
図1は、実施例のエンジン制御装置を有する車両のパワートレーンの構成を模式的に示すブロック図である。
図1において、実線矢印は信号の流れを示し、一点鎖線矢印は油圧の流れを示し、太線破線矢印は駆動力の流れを示している。
図1に示すように、パワートレーン1は、エンジン10、トランスミッション20、前輪駆動機構31、後輪駆動機構32、エンジン制御ユニット100、トランスミッション制御ユニット200等を有して構成されている。
エンジン10の出力は、トランスミッション20を経由して、前輪駆動機構31、後輪駆動機構32に伝達される。
エンジン10には、クランク角センサ11、スロットルアクチュエータ12等が設けられている。
クランク角センサ11は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフト10aの角度位置を逐次検出するものである。
クランク角センサ11の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達され、エンジン10の回転数(クランクシャフト10aの単位時間あたり回転数)の算出に利用される。
スロットルアクチュエータ12は、スロットルバルブを開閉駆動する例えばステッピングモータ等のアクチュエータである。
スロットルアクチュエータ12は、エンジン制御ユニット100が逐次設定するスロットルバルブの目標開度に、実際のスロットルバルブ開度が近づくよう制御される。
トランスミッション20は、トルクコンバータ21、ロックアップクラッチ22、変速機構部23、前後進切替部24、AWDトランスファ25、コントロールバルブ26等を備えている。
トルクコンバータ21は、車両のゼロ速度からの発進を可能とする発進デバイスとしても機能する。
ロックアップクラッチ22は、トルクコンバータ21に設けられ、インペラとタービンとの相対回転を許容する開放状態と、この相対回転を拘束する係合状態とを切替可能なクラッチ要素である。
ロックアップクラッチ22は、車両の走行中であって、所定のロックアップ条件を充足した場合に係合状態とされ、その他の場合には開放状態とされる。
変速機構部23は、一例として、平行な一対の回転軸回りに回転可能に設けられたプライマリ(入力側)プーリとセカンダリ(出力側)プーリとの間で、金属製チェーンにより動力を伝達するとともに、各プーリの有効径を無段階に変更可能なチェーン式CVT(無段変速機)のバリエータを備えている。
前後進切替部24は、回転方向を逆転可能な歯車機構等を備え、前進レンジと後退レンジとの切替を行うものである。
前後進切替部24は、変速機構部23と、AWDトランスファ25との間に設けられている。
AWDトランスファ25は、前後進切替部24から伝達される駆動力を、前輪駆動機構31、及び、後輪駆動機構32に、所定のトルク配分で分配して伝達するものである。
AWDトランスファ25は、例えば、プラネタリギヤセット等を用いて前輪側、後輪側に所定のトルク配分で駆動力を分配するとともに、前輪側と後輪側との差回転を許容するセンターディファレンシャル、及び、センターディファレンシャルの差動を拘束するトランスファクラッチ等を有して構成されている。
前輪駆動機構31、後輪駆動機構32は、最終減速機構、左右車輪の回転速度差を許容するディファレンシャル機構、ディファレンシャル機構から左右ハブに駆動力を伝達するドライブシャフト等を有して構成されている。
ECU100は、例えば、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有して構成されている。
車速センサ101は、車輪の回転速度に比例する車速パルス信号を出力するものである。
ECU100は、車速センサ101の出力に基づいて、車両の走行速度(車速)を演算する。
加速度センサ102の出力は、ECU100に伝達される。
ECU100は、アクセルペダルセンサ103の出力に基づいて、ドライバ要求トルクを設定するとともに、エンジン10が実際に発生するトルクが、ドライバ要求トルクに近付くよう、スロットルバルブ開度、燃料噴射量及び噴射時期、点火時期、バルブタイミング、過給圧等を制御する。
この機能については、後に詳しく説明する。
ECU100は、本発明にいう目標回転速度設定手段として機能する。
また、ECU100は、スロットルアクチュエータ12と協働して、本発明にいう吸入空気量制御手段として機能する。
TCU200は、例えば、ロックアップクラッチ22の締結又は解除、変速機構部23の変速比、前後進切替部24による前進又は後退、AWDトランスファ25のトランスファクラッチ締結力等を制御し、コントロールバルブ26の制御信号を与える。
TCU200は、ECU100と、例えばCAN通信システム等の車載LANを介して通信可能となっている。
図2は、実施例のエンジン制御装置におけるコースティング時のスロットル制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
ECU100は、エンジン10の運転状態が、所定の燃料カット条件を充足し、燃料噴射を中止する燃料カット状態であるか否かを判別する。
燃料カット条件として、例えば、車速が所定値以上であり、かつアクセルペダルセンサ103によって検出されるアクセルペダルの操作量が実質的にゼロ(アクセルオフ)であること等があげられる。
燃料カット実行中である場合はステップS02に進み、その他の場合はステップS10に進む。
ECU100は、TCU200から提供される情報に基づいて、ロックアップクラッチ22が係合状態であるか、開放状態であるかを判別する。
ロックアップクラッチ22が開放状態(ロックアップ解除状態)である場合は、ステップS03に進み、その他の場合はステップS10に進む。
ECU100は、加速度センサ102が検出する車体に作用する減速度の履歴を、予め設定された所定期間にわたって記録する。
その後、ステップS04に進む。
ECU100は、ステップS03において記録された減速度の履歴における平均値(平均減速度)を算出する。
その後、ステップS05に進む。
ECU100は、ステップS04において算出された平均減速度に基づいて、スロットルバルブ開度のフィードバック制御に用いられる目標回転数の単位時間あたり変化率(低下率)を設定する。
目標回転数の変化率の絶対値は、平均減速度の増加に応じて大きくなるように設定されている。
ECU100は、ステップS04において算出された平均減速度と実質的に同等の減速度を維持して車両がコースティングを継続した場合に、車両が停車する推定停車時期を求め、この推定停車時期において目標回転数が所定のアイドル回転数(停車時回転数)となるよう、目標回転数の変化率を設定する。
その後、ステップS06に進む。
ECU100は、エンジン10のクランクシャフト10aの目標回転数を算出する。
目標回転数は、初回算出時におけるクランクシャフト10aの実際の回転数を初期値とし、その後、ステップS05において設定された変化率に応じて、時間の経過とともに徐々に低下するようになっている。
目標回転数の算出後、ステップS07に進む。
ECU100は、ステップS06において算出された目標回転数に、クランク角センサ11によって検出されるクランクシャフト10aの実回転数が近づくよう、スロットルアクチュエータ12によって、スロットルバルブを駆動するスロットルバルブ開度フィードバック制御を実行する。
具体的には、目標回転数と実回転数との差分に所定の制御ゲインを乗じた値を、スロットル開度の目標変化量とし、スロットルバルブ開度を設定することができる。
例えば、目標回転数が実回転数を上回っている場合には、エンジン10のポンプ損失を低減して回転数低下を緩慢にするため、スロットルバルブ開度を増加させる。
一方、目標回転数が実回転数を下回っている場合には、エンジン10のポンプ損失を増大させて回転数低下を早めるため、スロットルバルブ開度を減少させる。
その後、ステップS08に進む。
ECU100は、エンジン10の運転状態が燃料カット条件を充足しなくなり、燃料カットが終了(燃料カットフラグ解除)されたか否かを判別する。
例えば、車速が低下して停車直前となった場合には、燃料カットは終了する。
燃料カットが終了している場合はステップS10に進み、その他の場合はステップS09に進む。
ECU100は、加速度センサ102が検出する現在の減速度を、ステップS04において算出した平均減速度と比較する。
そして、現在の減速度と平均減速度との差分の絶対値が、予め設定された所定の閾値以上である場合は、平均減速度及び目標回転数変化率を再設定するため、ステップS03に進み、以降の処理を繰り返す。
その他の場合は、現在の目標回転数の変化率を維持してスロットルバルブ開度のフィードバック制御を続行するため、ステップS06に進み、以降の処理を繰り返す。
ECU100は、目標回転数を用いたスロットルバルブ開度のフィードバック制御を終了し、アクセルペダルセンサ103の出力等に基づいて設定されるドライバ要求トルクにエンジン10の実トルクが近づくようスロットルバルブ開度を制御する通常スロットル制御を実行する。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸はアクセルペダル開度(ペダルストローク)、燃料カットフラグ状態、ロックアップフラグ状態、車両減速度、車速、エンジン回転数、スロットルバルブ開度を示している。(図4において同じ)
アクセルペダルを所定の開度に維持した実質的に定速走行の状態から、T1においてドライバがアクセルペダルから足を放してアクセルオフとすると、ほぼ同時に燃料カット条件が充足し、燃料カットが開始されて燃料カットフラグがセットされるとともに、ロックアップクラッチ22が開放されてロックアップフラグが解除される。
これによって、車両は所定の減速度で減速しつつ惰行するコースティング状態となる。
そして、T2において、この変化率を用いて演算される目標回転数に実回転数を近付けるスロットルバルブ開度のフィードバック制御が開始される。
スロットルバルブ開度のフィードバック制御中においては、エンジン10のクランクシャフト10aの実回転数は、車速の低下に応じて徐々に低下し、T3において車速がゼロとなるのとほぼ同時にアイドル回転数に収束する。
なお、T3の直前において、燃料カットは終了して燃料噴射が再開し、燃料カットフラグは解除される。
燃料カットフラグの解除に応じて、スロットルバルブ開度のフィードバック制御も終了し、通常スロットル制御に復帰する。
図4に示す例においては、T4においてドライバのブレーキ操作等に起因して車両減速度が増加しており、ECU100は、T4からT5までの平均減速度に基づいて、T5において目標減速度の変化率を、絶対値が大きくなるように再設定している。
その後、T5以降において、新たに設定された変化率に基づく目標回転数を用いて、スロットル開度のフィードバック制御が引き続き行われる。
(1)車両の減速度に応じた変化率で推移する目標回転数に、クランクシャフト10aの実回転数が近づくようスロットルバルブ開度をフィードバック制御することによって、車両の減速度が比較的小さい場合には、スロットルバルブを開き気味としてポンプ損失を抑制し、エンジン10の回転数低下を抑制するとともに、燃料カット状態を維持しつつ惰性で走行可能な領域を拡大し、燃費を向上することができる。
一方、ドライバがブレーキ操作を行うなどして車両の減速度が比較的大きい場合には、スロットルバルブを閉じ気味としてポンプ損失を増大させ、エンジン10の回転数低下を促進するとともに、適度なエンジンブレーキが得られるようにしてドライバビリティを改善することができる。
さらに、燃料カット状態から通常状態へ復帰して燃料噴射を再開する際の吸入空気量の過補正を防止することができる。
(2)所定期間に検出した減速度の平均値に基づいて、目標回転数の変化率を算出することによって、車両の減速度を精度よく検出し、吸入空気量のフィードバック制御をより適切に行うことができる。
(3)所定以上の減速度変化があった場合に、平均減速度を再取得し、目標回転数の変化率を再設定することによって、現在の車両の減速度により適合した制御を行なうことができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジン、パワートレーン、エンジン制御装置等の構成は、上述した実施例に限定されず、適宜変更することができる。
(2)エンジンは、吸入空気量を制御可能なもの(スロットリングが可能なもの)である限り、シリンダレイアウト、気筒数、過給の有無、燃料の種類、燃料噴射方式などいずれも限定されない。
また、吸入空気量制御手段も、実施例のようなスロットルバルブを用いるものに限らず、吸気バルブのバルブタイミングやバルブリフトを変化させることによって吸入空気量を調節するものであってもよい。
(3)実施例において、エンジンの出力が変速される変速機はトルクコンバータを有するチェーン式CVTであるが、変速機はこれに限らず、例えばベルト式CVT、トロイダルCVT、ステップATに、発進デバイスとしてトルクコンバータを備えたものであってもよい。
10a クランクシャフト 11 クランク角センサ
12 スロットルアクチュエータ 20 トランスミッション
21 トルクコンバータ 22 ロックアップクラッチ
23 変速機構部 24 前後進切替部
25 AWDトランスファ 26 コントロールバルブ
100 エンジン制御ユニット(ECU) 101 車速センサ
102 加速度センサ 103 アクセルペダルセンサ
200 トランスミッション制御ユニット(TCU)
Claims (3)
- 車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジンの吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段と、
車両の減速度を検出する減速度検出手段と、
前記車両の燃料カット状態での減速時に、前記エンジンの出力軸の目標回転速度を、前記減速度検出手段が検出した前記減速度に応じた単位時間あたり変化率で除変するよう設定する目標回転速度設定手段とを備え、
前記吸入空気量制御手段は、前記車両の燃料カット状態での減速時における前記エンジンの出力軸の実際の回転速度が前記目標回転速度に近づくよう前記エンジンの吸入空気量をフィードバック制御し、
前記目標回転速度設定手段は、前記目標回転速度の変化率を設定した後に、前記車両の燃料カット状態での減速度に所定の閾値以上の変化が生じた場合には、前記変化が生じた後における前記車両の減速度に基づいて前記目標回転速度の変化率を再設定すること
を特徴とするエンジン制御装置。 - 前記目標回転速度設定手段は、前記車両が前記減速度を維持した場合に推定される停車時期において前記目標回転速度がアイドル時回転速度と実質的に一致するように前記変化率を設定すること
を特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。 - 前記目標回転速度設定手段は、前記車両の燃料カット状態での減速開始後における所定期間の平均減速度に基づいて前記目標回転速度の変化率を設定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
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