JP2011089614A - 車両用油圧制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクを算出する。
【解決手段】無駄時間T及び遅れを有する第1エンジンモデルから最終目標エンジントルクTreqにに基づいて算出された第1モデル出力トルクTmod1と推定エンジントルクTesとの差分ΔT(=Tes−Tmod1)をローパスフィルタLPFに通過させることよりその差分ΔTの低周波成分ΔTlowが抽出され、無駄時間Tを有しないが遅れを有する第2エンジンモデルから目標エンジントルクT に基づいて算出された第2モデル出力トルクTmod2にその差分ΔTの低周波成分ΔTlow(=K×ΔT;KはローパスフィルタLPFのゲイン)を反映させたトルクが油圧制御用トルクTc(=Tmod2+ΔTlow)として算出される。
【選択図】図6

Description

本発明は、エンジンからの出力トルクに応じて油圧制御を行う車両用油圧制御装置に関するものである。
指令された目標出力トルクを出力するように制御されるエンジンからの出力トルク(エンジントルク)に応じて油圧制御を行う車両用油圧制御装置が良く知られている。具体的には、エンジンの動力を変速機を介して駆動輪へ伝達する車両において、例えば変速機の変速制御に用いる油圧(例えばライン油圧)は、エンジントルクに基づく変速機の入力トルク(伝達トルク)に応じて必要且つできるだけ小さい値とすることが望ましいとされる。ここで、実際のライン油圧はエンジントルクに基づいて設定したライン油圧指令値に対して応答遅れが生じるが、実エンジントルクが略一定(一定状態を含むその一定状態近傍)か或いは実エンジントルクの変化が小さい定常時では、ライン油圧指令値も略一定か或いは変化が小さくなるので、上記油圧の応答性向上よりもエンジントルクに対応した精度良い油圧制御を行う為に、ライン油圧指令値の基になるエンジントルクとして例えば推定エンジントルク(例えばトルクセンサ等により検出される実エンジントルクや吸入空気量などから算出される推定エンジントルク)を用いれば良い。しかしながら、実エンジントルクの変化が大きい過渡時では、実エンジントルクに応じて油圧制御を行うと、ライン油圧指令値に応じた実際の油圧が発生する時点では実エンジントルクが変動しており、伝達トルクに対して実際の油圧が過剰になったり不足したりする可能性がある。このような課題に対して、特許文献1には、スロットル弁開度の変化量から過渡時か定常時かを判断し、定常時には、エンジン負荷に忠実に対応する実際の吸入空気量に基づいてライン油圧を調圧制御する一方、過渡時には、伝達トルクの変化に先立って変化するスロットル弁開度に基づいてライン油圧を調圧制御することが記載されている。このように、定常時には精度良い油圧制御が行える推定出力トルクを用いる一方、過渡時には推定出力トルクに対してトルクの先読みができて応答性良い油圧制御が行える目標出力トルクを用いることが提案されている。
特開平5−133456号公報
ところで、エンジンやエンジン制御装置の実現精度によっては実出力トルク(推定出力トルク)は、目標出力トルクどおりにならない可能性がある。従って、過渡時に用いる目標出力トルクは実出力トルクを単純に前出ししたものとはならず、目標出力トルクに基づく過渡時の油圧制御では推定出力トルク相当の精度が得られない可能性がある。また、上記特許文献1のように目標スロットル開度を用いてトルクの先読みを行っていたが、例えば良く知られたトルクデマンド方式では、応答性を向上させる為にスロットル弁開度の変動が大きくなりまたトルクとして表れない変動もあるので、スロットル弁開度を用いると精度良い油圧制御が行えない可能性がある。加えて、ハード構成によっては、スロットル弁開度とエンジン出力トルクとの関係は一意には決まらない場合もあるし、元々スロットル弁装置を備えていない場合もある。また、特許文献1のような油圧制御用トルクの算出では、過渡時か定常時かを判断する必要があるし、その判断結果によって油圧制御用トルクを目標トルクか推定トルクかで切り換えて繋ぐ必要がある。このような、課題は未公知であり、過渡時か定常時かを判断して油圧制御用トルクを目標出力トルクか推定出力トルクかで切り換えて繋ぐことなく、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とが両立する油圧制御用トルクであり且つ連続的にスムーズに変化する油圧制御用トルクを算出することについて、未だ提案されていない。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクを算出することができる車両用油圧制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 指令された目標出力トルクを出力するように制御されるエンジンからの出力トルクに応じて油圧制御を行う車両用油圧制御装置であって、(b) 前記目標出力トルクに対する前記エンジンの実出力トルクの応答特性を反映する為の無駄時間及び遅れを有する第1エンジンモデルからその目標出力トルクに基づいて第1モデル出力トルクを算出し、(c) 前記第1モデル出力トルクと前記エンジンの前記実出力トルクとしての推定出力トルクとの差分を算出し、(d) ローパスフィルタに前記差分を通過させることよりその差分の低周波成分を抽出し、(e) 前記目標出力トルクに対する前記エンジンの実出力トルクの応答特性を反映する為の無駄時間を有しないが遅れを有する第2エンジンモデルからその目標出力トルクに基づいて第2モデル出力トルクを算出し、(f) 前記第2モデル出力トルクに前記差分の低周波成分を反映させたトルクを前記油圧制御に用いる油圧制御用トルクとして算出することにある。
このようにすれば、無駄時間及び遅れを有する第1エンジンモデルから目標出力トルクに基づいて算出された第1モデル出力トルクとエンジンの推定出力トルクとの差分をローパスフィルタに通過させることよりその差分の低周波成分が抽出され、無駄時間を有しないが遅れを有する第2エンジンモデルから目標出力トルクに基づいて算出された第2モデル出力トルクにその差分の低周波成分を反映させたトルクが油圧制御用トルクとして算出されるので、基本的には、油圧制御用トルク=第2モデル出力トルク+K(推定出力トルク−第1モデル出力トルク)或いは油圧制御用トルク=第2モデル出力トルク−K(第1モデル出力トルク−推定出力トルク)となり、過渡時(例えばゲインK=0)の油圧制御用トルクは第1モデル出力トルクに対して無駄時間分が除かれた第2モデル出力トルク相当のトルクとされ、定常時(例えばゲインK=1)の油圧制御用トルクは推定出力トルク相当のトルクとされる(定常時は第1モデル出力トルク=第2モデル出力トルク)。尚、過渡時であっても差分の低周波成分は第2モデル出力トルクに反映されるので、上記過渡時の第2モデル出力トルク相当のトルクは、実質的に無駄時間分だけ前出しした推定出力トルク相当とされるすなわち目標出力トルクの応答性を持った推定出力トルク相当とされる。また、ローパスフィルタによって高周波成分が増大される過渡時と専ら低周波成分のみの定常時とが区別されるので、特別に過渡時か定常時かが判断される訳ではなく、結果的に算出される油圧制御用トルクは、過渡時か定常時かで選択的に切り換えられるものではない。また、油圧制御用トルクは、無駄時間分が考慮されていない時系列的に最早トルクとなる。このように、過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクを算出することができる。
ここで、好適には、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記出力トルクの過渡状態において増大する前記差分をカットするように予め実験的に求められている。このようにすれば、ローパスフィルタによって過渡時に増大する差分の高周波成分がカットされ、差分の低周波成分が適切に抽出される。また、ローパスフィルタのカットオフ周波数の設定次第で定常状態と過渡状態とを区別し、且つ連続的に狙いのフィルターゲインにて、油圧制御用トルクに対する目標出力トルクの応答性と推定出力トルクの精度との影響割合を自由に設計することができる。
また、好適には、前記第2モデル出力トルクを算出する基になる前記目標出力トルクは、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクを排除した目標出力トルクである。このようにすれば、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクが排除された目標出力トルクを基にして、過渡時か定常時かを判断することなく、推定出力トルク相当の精度と目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクを算出することができる。また、前記所定トルクを排除した第2モデル出力トルクに差分を反映することで、前記所定トルクだけを推定出力トルクから直接的に排除し難いことに対処することができる。見方を換えれば、実際には存在しないが油圧制御のパラメータとして最適なトルクを任意に算出することが可能となる。
また、好適には、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクは、前記油圧制御の際の振動要素となるトルクである。このようにすれば、油圧制御の際の振動要素となるトルクが排除された目標出力トルクを基にして適切な油圧制御用トルクを算出することができる。
また、好適には、前記第1エンジンモデル及び前記第2エンジンモデルは、前記遅れとしての所定の動的特性を含むものであり、前記所定の動的特性は、前記目標出力トルクの所定のなまし処理である。このようにすれば、目標出力トルクに対するエンジンの実出力トルクの応答特性を反映した第1モデル出力トルク及び第2モデル出力トルクが適切に算出され、過渡時の応答性は目標出力トルク相当で、定常時の精度は推定出力トルク相当となる油圧制御用トルクが算出され、その油圧制御用トルクを油圧制御に用いることが可能となる。
また、好適には、前記第1エンジンモデル及び前記第2エンジンモデルは、前記遅れとしての所定の動的特性を含むものであり、前記所定の動的特性は、前記目標出力トルクの変化量ガード或いは上下限ガードである。このようにすれば、目標出力トルクに対するエンジンの実出力トルクの応答特性を反映した第1モデル出力トルク及び第2モデル出力トルクが適切に算出され、過渡時の応答性は目標出力トルク相当で、定常時の精度は推定出力トルク相当となる油圧制御用トルクが算出され、その油圧制御用トルクを油圧制御に用いることが可能となる。
また、好適には、前記エンジンの動力を変速機を介して駆動輪へ伝達する車両において、前記油圧制御用トルクは、前記変速機の油圧制御におけるライン油圧指令値の算出の基になるトルクである。このようにすれば、過渡時の応答性は目標出力トルク相当で、定常時の精度は推定出力トルク相当となる油圧制御用トルクが算出され、その油圧制御用トルクを変速機の油圧制御におけるライン油圧指令値の算出に用いることが可能となる。よって、変速機の入力トルクに応じた変速機の油圧制御が適切に行われ得る。
また、好適には、前記目標出力トルクが所定以上の変化をした場合には、その目標出力トルクを前記所定以上の変化をする前の値に保持することにある。このようにすれば、目標出力トルクが急変した為に起こる実出力トルクの実現精度の低下の影響を抑制することができる。
また、好適には、前記エンジンとしては、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が好適に用いられるが、電動機等の他の原動機をエンジンと組み合わせて採用することもできる。
また、好適には、前記変速機は、変速機構部単体、トルクコンバータ及び複数の変速比を有する変速機構部、或いはこの変速機構部等に加え減速機構部やディファレンシャル機構部により構成される。この変速機構部は、複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式自動変速機、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備えてそれら複数対の変速ギヤのいずれかを同期装置によって択一的に動力伝達状態とする同期噛合型平行2軸式変速機ではあるが油圧アクチュエータにより駆動される同期装置によって変速段が自動的に切換られることが可能な同期噛合型平行2軸式自動変速機、同期噛合型平行2軸式自動変速機であるが入力軸を2系統備えて各系統の入力軸にクラッチがそれぞれつながり更にそれぞれ偶数段と奇数段へと繋がっている型式の変速機である所謂DCT(Dual Clutch Transmission)、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機である自動変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機である自動変速機、エンジンからの動力を第1電動機及び出力軸へ分配する例えば遊星歯車装置で構成される差動機構とその差動機構の出力軸に設けられた第2電動機とを備えてその差動機構の差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪側へ機械的に伝達しエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより電気的に変速比が変更される電気式無段変速機として機能する自動変速機、或いはエンジン軸や出力軸などに動力伝達可能に電動機が備えられる所謂パラレル式のハイブリッド車両に搭載される自動変速機などにより構成される。
本発明が適用される車両を構成する動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。 図1の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 目標駆動力をアクセル開度と車速とに基づいて設定する為の、アクセル開度をパラメータとして車速とドライバ目標駆動力との予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)の一例を示す図である。 スロットル弁開度をパラメータとしてエンジン回転速度とエンジントルクとの予め実験的に求められて記憶されたエンジントルク特性図(関係、マップ)の一例を示す図である。 図1の電子制御装置によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(変速マップ、関係)の一例を示す図である。 油圧制御用トルクを算出する為の制御の流れの概略を示すブロック線図である。 図6のブロック線図における各ブロックの入出力トルクの一例を示す図である。 本実施例に用いられるローパスフィルタの一例を示す特性図である。 ローパスフィルタ前後の差分の一例を示す図である。 図1の電子制御装置の制御作動の要部すなわち過渡時か定常時かを判断することなく定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクを算出する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図10のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。 図10のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪24までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御などの為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図1において、自動変速機16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース内において、走行用の駆動力源としてのエンジン12のクランク軸にトルクコンバータ14を介して作動的に連結されている。エンジン12により発生させられた動力は、トルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、自動変速機16の出力軸18から差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)20や一対の車軸(ドライブシャフト)22等を順次介して左右の駆動輪24へ伝達される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車と、自動変速機16の入力軸に連結されたタービン翼車と、それらポンプ翼車及びタービン翼車の間すなわち入出力間を直結してエンジン12の動力を流体を介することなく自動変速機16の入力軸に直接伝達するためのロックアップクラッチ15と、一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車とを備えている。ロックアップクラッチ15は、例えば係合側油室内の油圧と解放側油室内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合(ロックアップオン)させられることにより、ポンプ翼車及び及びタービン翼車が一体回転させられてエンジン12の動力が自動変速機16の入力軸に直接伝達される。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわちトルク容量がフィードバック制御されることにより、車両10の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン軸(入力軸)をエンジン12のクランク軸に対して追従回転させる一方、車両10の被駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でエンジン12のクランク軸をタービン軸に対して追従回転させられる。
自動変速機16は、例えば複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられるすなわち切り換えられる有段式自動変速機であって、入力された回転を所定の変速比γで減速或いは増速して出力するものである。例えば、自動変速機16は、油圧アクチュエータによって係合させられるクラッチ或いはブレーキ等の油圧式の摩擦係合装置の作動の組合せによって複数の変速段が構成される遊星歯車式自動変速機である。自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置は、ライン油圧PLを元圧とする油圧制御回路26により制御されるようになっている。このライン油圧PLは、例えばエンジン12に機械的に連結されてエンジン12により直接回転駆動される機械式オイルポンプ28から発生する油圧を元圧として調圧されたものであって、自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置を係合するために用いられる最大係合圧となるものである。
また、車両10には、例えば自動変速機16の変速制御などに関連する油圧制御の為の車両用油圧制御装置を含む電子制御装置60が備えられている。電子制御装置60は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置60は、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン用コンピュータ62(以下、ENG_ECU62と表す)、トランスミッション用コンピュータ64(以下、ECT_ECU64と表す)、車両姿勢安定制御用コンピュータ66(以下、VDM_ECU66と表す)、運転支援系制御用コンピュータ68(以下、DSS_ECU68と表す)等に分けて構成される。
電子制御装置60には、例えばクランクポジションセンサ30により検出されたクランク角度(位置)ACR及びエンジン回転速度Nを表すクランク軸回転速度信号、タービン回転速度センサ32により検出されたトルクコンバータ14のタービン回転速度Nすなわち自動変速機16の入力回転速度NINを表すタービン回転速度信号(入力回転速度信号)、出力軸回転速度センサ34により検出された車速Vに対応する出力軸18の出力軸回転速度NOUTを表す車速信号、アクセル開度センサ36により検出されたアクセルペダル38の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、スロットルポジションセンサ40により検出された吸気配管42に設けられた電子スロットル弁44の開き角であるスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、吸入空気量センサ46により検出されたエンジン12の吸入空気量QAIRを表す吸入空気量信号、シフトポジションセンサ48により検出されたシフト操作装置50におけるシフトレバー52のレバーポジション(シフト操作位置)PSHを表すシフト操作位置信号などが、それぞれ供給される。
また、電子制御装置60からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Sとして、電子スロットル弁44のスロットル弁開度θTHを操作する為のスロットルアクチュエータ54への駆動信号や燃料噴射装置56から噴射される燃料の量を制御する為の噴射信号や点火装置58によるエンジン12の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、例えば自動変速機16の変速段を切り換える為の変速制御指令信号Sとして、油圧制御回路26内のソレノイド弁の励磁、非励磁などを制御する為のバルブ指令信号、ライン油圧PLを調圧するリニアソレノイド弁を駆動する為のライン油圧制御指令信号などが油圧制御回路26へ出力される。このライン油圧PLは、例えばエンジン12により回転駆動される機械式オイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(ライン油圧調圧弁)によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいてエンジン負荷(エンジン12からの出力トルク(エンジントルクT))等に応じた値に調圧されるようになっている。
ENG_ECU62は、ドライバーモデル70(以下、P−DRM70と表す)によりアクセル開度Accに基づいて車両が発生すべき目標となる駆動力関連値(以下、目標駆動力関連値と表す)を設定すると共にそのアクセル開度Accに基づく目標駆動力関連値とDSS_ECU68から出力された目標駆動力関連値とを調停してドライバモデル目標駆動力関連値を設定し、そのドライバモデル目標駆動力関連値とVDM_ECU66から出力された目標駆動力関連値とをパワトレマネージャー72(以下、PTM72と表す)により調停して最終的な目標駆動力関連値を設定して、その目標駆動力関連値を実現するようにエンジン12の出力を制御する。ECT_ECU64は、車両走行状態に基づいて、例えば車速VやENG_ECU62によるエンジン12の出力制御の為の制御量例えばスロットル弁開度θTHに基づいて自動変速機16の変速判断を実行し、自動変速機16の変速を制御する。VDM_ECU66及びDSS_ECU68は、アクセル開度Accに拘わらず車両状態を自動制御する為に車両に対する出力要求量としての目標駆動力関連値を出力する。例えば、VDM_ECU66は、車両姿勢安定制御の為の目標駆動力関連値を出力する。また、DSS_ECU68は、運転支援系制御の為の目標駆動力関連値を出力する。
このように本実施例では、車両の目標駆動力関連値を設定し、その目標駆動力関連値が得られるようにエンジン12の出力制御及び/または自動変速機16の変速制御が実行されることにより、車両駆動力Fが制御される所謂駆動力要求型(トルクデマンド型)制御が実行される。ここで、上記駆動力関連値とは、駆動輪24の接地面上に働く車両駆動力(以下、駆動力と表す)F[N]に1対1に対応する関連値(相当値)であって、駆動力関連値としてその駆動力Fはもちろんのことその他に、例えば加速度G[G、m/s2]、駆動軸トルクとしての車軸22上のトルク(以下、車軸トルクと表す)T[Nm]、車両の出力(以下、出力或いはパワーと表す)P[PS、kW、HP]、トルクコンバータ14の出力トルクとしてのトルクコンバータ14のタービン軸上のトルク(以下、タービントルクと表す)T[Nm]すなわち自動変速機16の入力トルクとしての入力軸上のトルク(以下、入力軸トルクと表す)TIN[Nm]、自動変速機16の出力トルクとしての出力軸18上のトルク(以下、出力軸トルクと表す)TOUT[Nm]、プロペラシャフト上のトルクT[Nm]などが用いられる。以下、本実施例では、特に区別しない限り駆動力と表したものは駆動力関連値をも表すこととする。
図2は、電子制御装置60による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図2において、ドライバ目標駆動力設定部すなわちドライバ目標駆動力設定手段80は、例えば図3に示すようなアクセル開度Accをパラメータとして車速Vとドライバ目標駆動力FDIMDとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から実際のアクセル開度Accと車速Vとに基づいてドライバ目標駆動力FDIMDを設定する。
車両姿勢安定制御部すなわち車両姿勢安定制御手段82は、例えば車両姿勢安定制御としてアクセル開度Accに拘わらず旋回中の車両姿勢を安定化させる所謂VSCシステムを機能的に備えている。このVSCシステムは、車両の旋回中の後輪横滑り傾向所謂オーバステア傾向或いは前輪横滑り傾向所謂アンダステア傾向の程度に基づいて、後輪横滑り抑制モーメント或いは前輪横滑り抑制モーメントを発生させて車両姿勢の安定性を確保するように、例えば駆動力Fを抑制するための姿勢安定目標駆動力FDIMVを出力すると共に車輪(駆動輪24及び不図示の従動輪)の制動力を制御する。
運転支援系制御部すなわち運転支援系制御手段84は、運転支援系制御としてアクセル開度Accに拘わらず車速Vを自動制御する自動車速制御システム所謂クルーズコントロールシステムを機能的に備えている。このクルーズコントロールシステムは、運転者により設定された目標車速Vとなるように、例えば駆動力Fを制御するための運転支援目標駆動力FDIMSを出力すると共に車輪の制動力を制御する。
ドライバ目標駆動力設定手段80は、実際のアクセル開度Accと車速Vとに基づいて設定したドライバ目標駆動力FDIMD及び運転支援系制御手段84による運転支援目標駆動力FDIMSのうちで、何れの目標駆動力FDIMを優先させるかを或いは何れの目標駆動力FDIMを加減算するかを、予め定められた駆動力調停手順に従って選択し、この選択した目標駆動力FDIMをドライバモデル目標駆動力FDIMDMに設定する。
目標駆動力調停部すなわち目標駆動力調停手段86は、ドライバ目標駆動力設定手段80によるドライバモデル目標駆動力FDIMDM及び車両姿勢安定制御手段82による姿勢安定目標駆動力FDIMVのうちで、何れの目標駆動力FDIMを優先させるかを或いは何れの目標駆動力FDIMを加減算するかを、予め定められた駆動力調停手順に従って選択し、この選択した目標駆動力FDIMを目標駆動力Fとして設定する。このように、目標駆動力調停手段86は、車両の発生すべき目標駆動力Fを設定する目標駆動力設定部すなわち目標駆動力設定手段として機能する。上記駆動力調停手順は、例えば通常は姿勢安定目標駆動力FDIMVや運転支援目標駆動力FDIMSを優先するが、シフトレバー52の操作によって自動変速機16の変速段が切り換えられたときやアクセルペダル38が所定値以上大きく踏み込み操作された場合等にはドライバ目標駆動力FDIMDを優先するように定められている。
目標エンジントルク算出部すなわち目標エンジントルク算出手段88は、目標駆動力調停手段86により設定された目標駆動力Fを実現する為のエンジン12の目標出力トルク(目標エンジントルク)T を算出する。例えば、目標エンジントルク算出手段88は、目標駆動力F、自動変速機16の現在の変速段における変速比γ、差動歯車装置20等の減速比i、駆動輪24のタイヤ有効半径r、動力伝達効率η、及びトルクコンバータ14のトルク比(=タービントルクT/ポンプトルク(エンジントルクT))tから次式(1)に従って目標エンジントルクT を算出する。尚、このトルク比tは、トルクコンバータ14の速度比e(=タービン回転速度N/ポンプ回転速度N(エンジン回転速度N))の関数であり、例えば速度比eとトルク比tとの予め実験的に求められて記憶された不図示の関係(マップ)から実際の速度比eに基づいて算出される。
=(F×r)/(γ×i×η×t) ・・・(1)
目標スロットル弁開度算出部すなわち目標スロットル弁開度算出手段90は、目標エンジントルク算出手段88により算出された目標エンジントルクT が得られる目標スロットル弁開度θTH を算出する。例えば、目標スロットル弁開度算出手段90は、図4に示すようなスロットル弁開度θTHをパラメータとしてエンジン回転速度NとエンジントルクTとの予め実験的に求められて記憶されたエンジントルク特性図(関係、マップ)から実際のエンジン回転速度Nに基づいて目標エンジントルクT が得られるスロットル弁開度θTHとなるように目標スロットル弁開度θTH を算出する。
エンジン出力制御部すなわちエンジン出力制御手段92は、目標スロットル弁開度算出手段90により算出された目標スロットル弁開度θTH となるようにスロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁44を開閉制御する他、燃料噴射装置56により燃料噴射量を制御したり、点火装置58により点火時期を制御する。
変速制御部すなわち変速制御手段94は、例えば図5に示すような車速Vを示す軸とスロットル弁開度θTHを示す軸とで構成される二次元座標において予め記憶された変速線図(変速マップ、関係)から実際の車速Vと目標スロットル弁開度算出手段90により算出された目標スロットル弁開度θTH とに基づいて、自動変速機16の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段となるように自動変速機16の変速を実行する。変速制御手段94は、その自動変速機16の変速を実行するために、油圧式摩擦係合装置(クラッチ、ブレーキ)の係合状態を切り換えるための変速指令信号を油圧制御回路26へ出力する。また、変速制御手段94は、ライン油圧PLを自動変速機16の入力軸トルクTINに応じた油圧に調圧する為の指令(ライン油圧指令値)を油圧制御回路26内に備えられたライン油圧調圧用のリニアソレノイド弁へ出力する油圧制御手段を機能的に備えている。
また、変速制御手段94は、例えば自動変速機16の変速制御中に発生するイナーシャトルクに相当するトルク分をある程度相殺して変速ショックを抑制したり、エンジン回転速度Nの吹きの発生を抑制したり、油圧式摩擦係合装置の係合ショックを抑制したりする為に、エンジントルクTを低減する為のエンジントルクダウン指令を目標エンジントルク算出手段88へ出力する。
目標エンジントルク算出手段88は、目標駆動力調停手段86により設定された目標駆動力Fを実現する為の目標エンジントルクT に、変速制御手段94からのエンジントルクダウン指令に基づく目標エンジントルクダウンTET/D 分を加えて、最終的な目標エンジントルク(最終目標エンジントルク)Treqを算出する。エンジン出力制御手段92は、変速制御中に目標エンジントルクダウンTET/D 分だけエンジントルクTを一時的に低減するように、例えばエンジン12の点火時期を遅角させる指令を点火装置58に出力する。
ここで、変速制御手段94による油圧制御の基になる自動変速機16の入力軸トルクTIN例えば変速制御手段94によるライン油圧PLの調圧制御の基になる自動変速機16の入力軸トルクTINは、例えばエンジントルクTにトルクコンバータ14のトルク比tを乗じたトルク(=T×t)として算出される。従って、油圧制御の基になるエンジントルクTを適切に設定することで、油圧制御を精度良く且つ応答性良く実行することができる。例えば、トルクセンサなどにより検出されるエンジン12の実出力トルク(実エンジントルク)T、吸入空気量QAIRや点火時期などから算出されるエンジン12の推定出力トルク(推定エンジントルク)Tesなどを用いて油圧制御を実行することが考えられる。尚、推定エンジントルクTesは、実エンジントルクTそのものを表すように算出するものであり、特に実エンジントルクTと区別する場合を除き、推定エンジントルクTesを実エンジントルクTとしての取り扱うものとする。従って、推定エンジントルクTesには実エンジントルクTも含むものとする。
ところで、油圧制御においては、油圧指令から実際に油圧が発生するには応答遅れがあり、入力軸トルクTIN(エンジントルクT)が略一定かそれほど変化しないような定常時ではその応答遅れをそれほど考慮する必要はない。一方、入力軸トルクTIN(エンジントルクT)が比較的大きく変化するような過渡時では、実際に油圧が発生する時点では基になる入力軸トルクTIN(エンジントルクT)が変動しておりその応答遅れを考慮する必要がある。従って、定常時では、応答遅れをそれほど考慮する必要がないので、油圧制御の基になるエンジントルクTとして推定エンジントルクTesを用いれば良い。一方、過渡時では、例えば推定エンジントルクTesなどの推定出力トルクに比べて時系列的に前出しされるトルクを用いて応答性を向上するという観点で、油圧制御の基になるエンジントルクTとして上述した目標エンジントルクダウンTET/D 分が含まれた最終目標エンジントルクTreqや目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT などの目標出力トルクを用いれば良い。
しかしながら、最終目標エンジントルクTreqや目標エンジントルクT などの目標出力トルクは実機に対する指令値であるので、エンジン等の実現性精度によっては推定エンジントルクTesなどの推定出力トルク(実出力トルク)はその目標出力トルクどおりにならず、目標出力トルクを油圧制御に用いる場合には推定出力トルクを用いる場合に比べて油圧の制御精度が低下する可能性がある。また、過渡時と定常時とを判別して、目標出力トルクと実際出力トルクとを使い分ける必要がある。
また別の観点では、定常時に推定出力トルクを用いた場合、この推定出力トルクに変速制御中の目標エンジントルクダウンTET/D 分が反映されると、例えばライン油圧制御にもこの目標エンジントルクダウンTET/D 分が反映される。しかしながら、目標エンジントルクダウンTET/D 分はイナーシャトルクを相殺するなどの為のトルクダウンであり、このトルクダウン分は本来は変速中のライン油圧PLには反映させないことが望まれる。推定出力トルクからは直接的に目標エンジントルクダウンTET/D 分のトルクを除外し難いので、目標エンジントルクダウンTET/D 分がある期間だけ推定出力トルクに替えて、目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT を用いることが考えられる。また、油圧制御の結果で目標エンジントルクダウンTET/D 分が決定されるような場合には、目標エンジントルクダウンTET/D 分が含まれた最終目標エンジントルクTreqを用いることで更に油圧制御の結果が変動する可能性があるので、目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT を用いることが考えられる。但し、一時的に目標エンジントルクT を用いる場合にも、上述したような油圧の制御精度が低下する問題と、目標出力トルクと実出力トルク(推定出力トルク)とを使い分ける必要とが生じる。このように、この目標エンジントルクT は、自動変速機16の変速制御中のトルクダウン制御などの特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない目標エンジントルクダウンTET/D 分のような所定トルクを排除した目標出力トルクである。また、目標エンジントルクダウンTET/D 分のような所定トルクは、油圧制御の結果を変動させて制御を一巡させるような油圧制御の際の振動要素となるトルクである。
以下に、自動変速機16の油圧制御における油圧指令値例えばライン油圧指令値の算出の基になるエンジントルクTとしての油圧制御用トルクTcを適切に設定することについて、つまり、過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクTcを算出することについて、詳細に説明する。
図6は、油圧制御用トルクTcを算出する為の制御の流れの概略を示すブロック線図である。また、図7は、図6のブロック線図における各ブロックの入出力トルクの一例を示す図である。図2、図6において、モデル出力トルク算出部すなわちモデル出力トルク算出手段100は、図6のブロックB1に対応するものであって、例えば目標エンジントルクダウンTET/D 分が含まれた最終目標エンジントルクTreq(図7の長線分の二点鎖線)に対する推定エンジントルクTes(図7の細実線)の応答特性を反映する為の予め実験的に求められて設定された無駄時間T及び遅れを有する第1エンジンモデルから最終目標エンジントルクTreqに基づいて第1モデル出力トルクTmod1(図7の長線分の破線)を算出する。
上記第1エンジンモデルは、例えば目標出力トルクに対して推定出力トルク(実出力トルク)がどれだけ遅れるかを例えば函数式を用いて簡易的にモデル化したものであり、最終目標エンジントルクTreqに対する推定エンジントルクTesの変化推移を無駄時間T(sec)及び前記遅れとしての所定の動的特性である一次遅れ系の函数式を用いて近似する為のものである。この無駄時間Tは、最終目標エンジントルクTreqの立ち上がり(或いは立ち下がり)から推定エンジントルクTesの応答の変化開始までの時間であって、推定エンジントルクTesの応答遅れを考慮して、推定エンジントルクTesの開始時点を遅らせるための時間である。また、零から1に向かうステップ応答における所定のなまし処理である一次遅れ系の曲線C(t)は、時定数をTC(sec)とすると次式(2)で表され、時定数TCが大きい程一次遅れ系のC(t)の立ち上がりが遅くなるすなわち応答が遅くなる。具体的には、モデル出力トルク算出手段100は、目標エンジントルク算出手段88により算出された最終目標エンジントルクTreqに対して、無駄時間T及び一次遅れ系の時定数TCをパラメータとして推定エンジントルクTesの応答遅れを加味した第1モデル出力トルクTmod1を次式(3)に従って算出する。
C(t)=1−ε−t/TC ・・・(2)
mod1(t)=Treq(t−T)×(1−ε−(t−TL)/TC) ・・・(3)
推定エンジントルク算出部すなわち推定エンジントルク算出手段102は、図6のブロックB2に対応するものであって、例えば予め設定された不図示のエンジン特性マップから吸入空気量QAIRや点火時期などに基づいて推定エンジントルクTes(図7の細実線)を算出する。上記エンジン特性マップは、例えば吸入空気量QAIRをパラメータとしてエンジン回転速度NとエンジントルクTとの予め実験的に求められて記憶されたエンジントルク特性図であり、又、例えば点火時期をパラメータとしてエンジン回転速度NとエンジントルクTとの予め実験的に求められて記憶されたエンジントルク特性図である。
差分算出部すなわち差分算出手段104は、図6のブロックB3に対応するものであって、例えば第1モデル出力トルクTmod1と推定エンジントルクTesとの差分ΔT(図7参照)を算出する。具体的には、差分算出手段104は、推定エンジントルクTesから第1モデル出力トルクTmod1を減算して差分ΔT(=Tes−Tmod1)を算出する。この差分ΔTは、最終目標エンジントルクTreqに対して発生させられる推定エンジントルクTesを簡易的にモデル化した際のモデル化誤差、実機誤差、演算誤差などに相当する。
低周波成分抽出部すなわち低周波成分抽出手段106は、図6のブロックB4に対応するものであって、例えばローパスフィルタLPFに差分ΔTを通過させることより差分ΔTの低周波成分ΔTlow(=K×ΔT;KはローパスフィルタLPFのゲイン)を抽出する。このローパスフィルタLPFのカットオフ周波数は、例えば最終目標エンジントルクTreqの過渡状態において増大する差分ΔTの高周波成分ΔThiをカットするように予め実験的に求められているものである。図8は、本実施例に用いられるローパスフィルタLPFの一例を示す特性図である。また、図9は、ローパスフィルタLPF前後の差分ΔTの一例を示す図である。図8において、大きさ(Magnitude)が0[dB]では、ローパスフィルタLPFのゲインKが1であり、カットオフ周波数fc以下の差分ΔTの低周波成分ΔTlowはローパスフィルタLPFを通過する。一方、カットオフ周波数fcを超えると、ローパスフィルタLPFのゲインKは周波数が高くなる程0に向かって低下することから、カットオフ周波数fcを超えて周波数が高くなる程差分ΔTの高周波成分ΔTlowはローパスフィルタLPFを通過し難くなる。また、図9に示すように、最終目標エンジントルクTreqの過渡状態では差分ΔTは過渡偏差としての高周波成分ΔThiが増大する。そして、この高周波成分ΔThiはローパスフィルタLPFによりカットされ、ローパスフィルタLPF通過後の差分ΔTは定常偏差としての低周波成分ΔTlowとされる。このように、最終目標エンジントルクTreqの過渡状態でも定常時と同様の低周波成分ΔTlowは存在し、過渡状態の差分ΔTはローパスフィルタLPFによって全ての成分がカットされるわけではない。
尚、最終目標エンジントルクTreqが所定以上の変化をした場合には、実機におけるエンジントルクTの実現精度が低下する可能性がある。その為、前記第1エンジンモデルでは対応できない分だけ差分ΔTが一時的に増大する可能性がある。そこで、最終目標エンジントルクTreqが所定以上の変化をした場合には、最終目標エンジントルクTreqが急変した為に起こる実エンジントルクTの実現精度の低下の影響を抑制する為に、例えばモデル出力トルク算出手段100は、その最終目標エンジントルクTreqを前記所定以上の変化をする前の値に保持するようにしても良い。上記所定以上の変化は、例えば実機におけるエンジントルクTの実現精度が低下する為に前記第1エンジンモデルによるモデル化は適切ではないとして予め実験的に求められて設定された変化である。
前記モデル出力トルク算出手段100は、図6のブロックB5にも対応するものであって、例えば目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT (図7の短線分の二点鎖線)に対する推定エンジントルクTesの応答特性を反映する為の予め実験的に求められて設定された無駄時間Tを有しないが遅れを有する函数式を用いた第2エンジンモデルから目標エンジントルクT に基づいて第2モデル出力トルクTmod2(図7の短線分の破線)を算出する。上記第2エンジンモデルは、例えば目標エンジントルクT に対する無駄時間T分を除いた推定エンジントルクTesの変化推移を、前記第1エンジンモデルに含まれる無駄時間T分を除いて前記遅れとしての所定の動的特性である無駄時間のない一次遅れ系の函数式を用いて近似する為のものである。具体的には、モデル出力トルク算出手段100は、目標エンジントルク算出手段88により算出された目標エンジントルクT に対して、一次遅れ系の時定数TCをパラメータとして推定エンジントルクTesの応答遅れを加味した第2モデル出力トルクTmod2を次式(4)に従って算出する。このように、第2モデル出力トルクTmod2を算出する基になる目標出力トルクとして目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT を用いる。
mod2(t)=T (t)×(1−ε−t/TC) ・・・(4)
油圧制御用トルク算出部すなわち油圧制御用トルク算出手段108は、図6のブロックB6に対応するものであって、例えば第2モデル出力トルクTmod2に差分ΔTの低周波成分ΔTlowを反映させたトルクを変速制御手段94による油圧制御に用いる油圧制御用トルクTc(図7の太実線)として算出する。具体的には、油圧制御用トルク算出手段108は、第2モデル出力トルクTmod2に差分ΔTの低周波成分ΔTlowを加算して油圧制御用トルクTc(=Tmod2+ΔTlow)を算出する。
このように、目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT に基づいて無駄時間Tを除くように算出した第2モデル出力トルクTmod2に差分ΔTの低周波成分ΔTlowを反映させる。これにより、図7に示すように、定常時には、目標エンジントルクダウンTET/D 分が反映されていない推定エンジントルクTesが油圧制御用トルクTcとして算出される。また、過渡時には、目標エンジントルク(最終目標エンジントルクTreq、目標エンジントルクT )の立ち上がりと同じタイミングで立ち上がるように、実質的に無駄時間T分だけ前出しされた推定エンジントルクTesが油圧制御用トルクTcとして算出される。よって、定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とが両立させられる。また、過渡時か定常時かを判断して目標出力トルクと推定出力トルクとを切り換えることなく、連続的でスムーズな油圧制御用トルクTcが算出される。
前記変速制御手段94は、例えば油圧制御用トルクTcにトルクコンバータ14のトルク比tを乗じた自動変速機16の入力軸トルクTIN(=Tc×t)を算出し、ライン油圧PLをその入力軸トルクTINに応じた油圧に調圧する為の指令(ライン油圧指令値)を油圧制御回路26内に備えられたライン油圧調圧用のリニアソレノイド弁へ出力する。また、油圧制御用トルクTcはクラッチ圧制御等に用いられても良い。
図10は、電子制御装置60の制御作動の要部すなわち過渡時か定常時かを判断することなく定常時の推定出力トルク相当の精度と過渡時の目標出力トルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクTcを算出する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図11及び図12は、図10のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。図11は、定常時において自動変速機16のアップシフトが行われ、そのアップシフト中にトルクダウン要求が為された場合を示している。また、図12は、車両10の減速から停車、更に発進が行われた過渡時から定常時に移行する場合を示している。
図10において、先ず、モデル出力トルク算出手段100に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば無駄時間T及び遅れを有する第1エンジンモデルから最終目標エンジントルクTreqに基づいて第1モデル出力トルクTmod1が算出される。具体的には、最終目標エンジントルクTreqに対して、無駄時間T及び一次遅れ系の時定数TCをパラメータとして推定エンジントルクTesの応答遅れを加味した第1モデル出力トルクTmod1が前記式(3)に従って算出される。
次いで、推定エンジントルク算出手段102に対応するS20において、例えば予め設定された不図示のエンジン特性マップから吸入空気量QAIRや点火時期などに基づいて推定エンジントルクTesが算出される。次いで、差分算出手段104に対応するS30において、例えば上記S20にて算出された推定エンジントルクTesから上記S10にて算出された第1モデル出力トルクTmod1が減算されて差分ΔTが算出される。次いで、低周波成分抽出手段106に対応するS40において、例えばローパスフィルタLPFに上記S30にて算出された差分ΔTが通過させられることより差分ΔTの低周波成分ΔTlowが抽出される。
次いで、モデル出力トルク算出手段100に対応するS50において、例えば無駄時間Tを有しないが遅れを有する第2エンジンモデルから目標エンジントルクT に基づいて第2モデル出力トルクTmod2が算出される。具体的には、目標エンジントルクT に対して、一次遅れ系の時定数TCをパラメータとして推定エンジントルクTesの応答遅れを加味した第2モデル出力トルクTmod2が前記式(4)に従って算出される。次いで、油圧制御用トルク算出手段108に対応するS60において、例えば上記S50にて算出された第2モデル出力トルクTmod2に上記S40にて抽出された差分ΔTの低周波成分ΔTlowが加算されて油圧制御用トルクTcが算出される。
このように、目標エンジントルクダウンTET/D 分が除かれた目標エンジントルクT を基に差分ΔTの低周波成分ΔTlowが反映させられるので、図11に示すように、定常時に自動変速機16のアップシフトに伴うトルクダウン制御が実行されても、油圧制御用トルクTc(太実線)にはそのトルクダウン制御におけるエンジントルクダウン分は含まれず、目標エンジントルクダウンTET/D 分が反映されない推定エンジントルクTes相当のトルクとされる。また、目標エンジントルクT に基づいて無駄時間を除くように算出した第2モデル出力トルクTmod2に差分ΔTの低周波成分ΔTlowが反映させられるので、過渡時における油圧制御用トルクTc(太実線)の立ち上がりは、目標エンジントルク(最終目標エンジントルクTreq、目標エンジントルクT )相当の立ち上がりとされる。つまり、油圧制御用トルクTc(太実線)は、推定エンジントルクTesを実質的に無駄時間T分だけ前出ししたトルク相当とされる。更に、ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数の設定次第で定常状態と過渡状態とを区別することができるので、過渡時か定常時かが判断されて目標出力トルクと推定出力トルクとが切り換えられることなく、油圧制御用トルクTcは過渡時には過渡時の目標出力トルク相当の応答性且つ定常時の推定出力トルク相当の精度が得られ、定常時には目標エンジントルクダウンTET/D 分が反映されず且つ定常時の推定出力トルク相当の精度が得られる連続的にスムーズなトルクとされる。また、連続的に変化するローパスフィルタLPFのゲインKにて、油圧制御用トルクTcに対する目標エンジントルクの応答性と推定エンジントルクTesの精度との影響割合を自由に設計することが可能である。
上述のように、本実施例によれば、無駄時間T及び遅れを有する第1エンジンモデルから最終目標エンジントルクTreqにに基づいて算出された第1モデル出力トルクTmod1と推定エンジントルクTesとの差分ΔT(=Tes−Tmod1)をローパスフィルタLPFに通過させることよりその差分ΔTの低周波成分ΔTlowが抽出され、無駄時間Tを有しないが遅れを有する第2エンジンモデルから目標エンジントルクT に基づいて算出された第2モデル出力トルクTmod2にその差分ΔTの低周波成分ΔTlow(=K×ΔT;KはローパスフィルタLPFのゲイン)を反映させたトルクが油圧制御用トルクTc(=Tmod2+ΔTlow)として算出されるので、過渡時(例えばゲインK=0)の油圧制御用トルクTcは第1モデル出力トルクTmod1に対して無駄時間T分が除かれた第2モデル出力トルクTmod2相当のトルクとされ、定常時(例えばゲインK=1)の油圧制御用トルクTcは推定エンジントルクTes相当のトルクとされる(定常時は第1モデル出力トルクTmod1=第2モデル出力トルクTmod2)。尚、過渡時であっても差分ΔTの低周波成分ΔTlowは第2モデル出力トルクTmod2に反映されるので、上記過渡時の第2モデル出力トルクTmod2相当のトルクは、実質的に無駄時間T分だけ前出しした推定エンジントルクTes相当とされるすなわち目標エンジントルク(最終目標エンジントルクTreq、目標エンジントルクT )の応答性を持った推定エンジントルクTes相当とされる。また、ローパスフィルタLPFによって差分ΔTの高周波成分ΔThiが増大される過渡時と専ら低周波成分ΔTlowのみの定常時とが区別されるので、特別に過渡時か定常時かが判断される訳ではなく、結果的に算出される油圧制御用トルクTcは、過渡時か定常時かで選択的に切り換えられるものではない。また、油圧制御用トルクTcは、無駄時間T分が考慮されていない時系列的に最早トルクとなる。このように、過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定エンジントルクTes相当の精度と過渡時の目標エンジントルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクTcを算出することができる。
また、本実施例によれば、ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcは、エンジントルクTの過渡状態において増大する差分ΔTをカットするように予め実験的に求められているので、ローパスフィルタLPFによって過渡時に増大する差分ΔTの高周波成分ΔThiがカットされ、差分ΔTの低周波成分ΔTlowが適切に抽出される。また、ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcの設定次第で定常状態と過渡状態とを区別し、且つ連続的に狙いのフィルターゲインKにて、油圧制御用トルクTcに対する目標エンジントルクの応答性と推定エンジントルクTesの精度との影響割合を自由に設計することができる。
また、本実施例によれば、第2モデル出力トルクTmod2を算出する基になる目標エンジントルクは、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクを排除した目標エンジントルクT であるので、その所定トルク分例えば目標エンジントルクダウンTET/D 分が排除された目標エンジントルクT を基にして、過渡時か定常時かを判断することなく、定常時の推定エンジントルクTes相当の精度と過渡時の目標エンジントルク相当の応答性とを両立させつつ連続的な油圧制御用トルクTcを算出することができる。また、前記所定トルクを排除した第2モデル出力トルクTmod2に差分ΔTを反映することで、その所定トルクだけを推定エンジントルクTesから直接的に排除し難いことに対処することができる。見方を換えれば、実際には存在しないが油圧制御のパラメータとして最適なトルクを任意に算出することが可能となる。尚、この場合には、第1モデル出力トルクTmod1と推定エンジントルクTesとの差分ΔTが、第2モデル出力トルクTmod2と目標エンジントルクT を仮に実現した場合の推定エンジントルクとの差分に相関があることが必要である。
また、本実施例によれば、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクは、その油圧制御の際の振動要素となるトルクであるので、油圧制御の際の振動要素となるトルクが排除された目標エンジントルクT を基にして適切な油圧制御用トルクTcを算出することができる。
また、本実施例によれば、第1エンジンモデル及び第2エンジンモデルは、前記遅れとしての所定の動的特性を含むものであり、この所定の動的特性は、一次遅れ系などの目標エンジントルクの所定のなまし処理であるので、目標エンジントルクに対する推定エンジントルクTesの応答特性を反映した第1モデル出力トルクTmod1及び第2モデル出力トルクTmod2が適切に算出され、過渡時の応答性は目標エンジントルク相当で、定常時の精度は推定エンジントルクTes相当となる油圧制御用トルクTcが算出され、その油圧制御用トルクTcを油圧制御に用いることが可能となる。
また、本実施例によれば、油圧制御用トルクTcは、自動変速機16の油圧制御における油圧指令値例えばライン油圧指令値の算出の基になるトルクであるので、過渡時の応答性は目標エンジントルク相当で、定常時の精度は推定エンジントルクTes相当となる油圧制御用トルクTcが算出され、その油圧制御用トルクTcを自動変速機16の油圧制御における油圧指令値の算出に用いることが可能となる。よって、入力軸トルクTINに応じた自動変速機16の油圧制御(例えばライン油圧PLの調圧制御)が適切に行われ得る。
また、本実施例によれば、目標エンジントルクが所定以上の変化をした場合には、その目標エンジントルクがその所定以上の変化をする前の値に保持されても良いとした。このように保持される場合には、目標エンジントルクが急変した為に起こる推定エンジントルクTes(実エンジントルクT)の実現精度の低下の影響を抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、第1,第2エンジンモデルのおける所定の動的特性としての一次遅れ系は、目標出力トルク(最終目標エンジントルクTreq、目標エンジントルクT )の所定のなまし処理の一例であり、二次遅れ系等の他のなまし処理であっても本発明は適用され得る。また、第1,第2エンジンモデルにおいて、それら一次遅れ系や二次遅れ系等のなまし処理に替えて、所定の動的特性として、目標エンジントルクの変化量ガード或いは上下限ガードを行っても良い。つまり、過渡時の推定エンジントルクTesの変化が近似されるように過渡時の目標エンジントルクの変化が抑制されても良い。要は、目標出力トルクに対する推定出力トルクを適切にモデル化するものであれば良い。このようにしても、一次遅れ系や二次遅れ系等のなまし処理と同様に、目標エンジントルクに対する推定エンジントルクTesの応答特性を反映した第1モデル出力トルクTmod1及び第2モデル出力トルクTmod2が適切に算出され、過渡時の応答性は目標エンジントルク相当で、定常時の精度は推定エンジントルクTes相当となる油圧制御用トルクTcが算出され、その油圧制御用トルクTcを油圧制御に用いることが可能となる。
また、前述の実施例では、最終目標エンジントルクTreqが所定以上の変化をした場合には、最終目標エンジントルクTreqが急変した為に起こる実エンジントルクTの実現精度の低下の影響を抑制する為に、その最終目標エンジントルクTreqを前記所定以上の変化をする前の値に保持しても良いとしたが、これに替えて、最終目標エンジントルクTreqが所定以上の変化をした場合には、例えば低周波成分抽出手段106は、差分ΔT或いは差分ΔTの低周波成分ΔTlowを前記所定以上の変化をする前の値に保持しても良い。このようにしても、目標エンジントルクが急変した為に起こる推定エンジントルクTes(実エンジントルクT)の実現精度の低下の影響を抑制することができる。
また、前述の実施例では、推定エンジントルクTesから第1モデル出力トルクTmod1を減算して差分ΔT(=Tes−Tmod1)を算出し、第2モデル出力トルクTmod2にローパスフィルタLPF後の差分ΔTの低周波成分ΔTlow(=K×ΔT;KはローパスフィルタLPFのゲイン)を加算して油圧制御用トルクTc(=Tmod2+ΔTlow)を算出したが、第2モデル出力トルクTmod2にローパスフィルタLPF後の差分ΔTの低周波成分ΔTlowが反映されて油圧制御用トルクTcが算出されれば良く、上記加減算はあくまで一例に過ぎない。例えば、第1モデル出力トルクTmod1から推定エンジントルクTesを減算して差分ΔT(=Tmod1−Tes)を算出し、第2モデル出力トルクTmod2にローパスフィルタLPF後の差分ΔTの低周波成分ΔTlow(=K×ΔT)を減算して油圧制御用トルクTc(=Tmod2−ΔTlow)を算出しても良い。
また、前述の実施例では、特定の制御として自動変速機16の変速制御中のトルクダウン制御を例示し、その特定の制御からの要求に基づいた油圧制御(例えばライン油圧制御)の基としない所定トルクとして目標エンジントルクダウンTET/D を例示したが、これに限らず、特定の制御は油圧制御の基とするには不適切なトルクを要求するような制御であれば良く、所定のトルクはその不適切なトルクであれば良い。例えば、制振制御からの要求に基づいた制振制御用トルク等が該当する。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
16:自動変速機(変速機)
24:駆動輪
60:電子制御装置(車両用油圧制御装置)
LPF:ローパスフィルタ

Claims (8)

  1. 指令された目標出力トルクを出力するように制御されるエンジンからの出力トルクに応じて油圧制御を行う車両用油圧制御装置であって、
    前記目標出力トルクに対する前記エンジンの実出力トルクの応答特性を反映する為の無駄時間及び遅れを有する第1エンジンモデルから該目標出力トルクに基づいて第1モデル出力トルクを算出し、
    前記第1モデル出力トルクと前記エンジンの前記実出力トルクとしての推定出力トルクとの差分を算出し、
    ローパスフィルタに前記差分を通過させることより該差分の低周波成分を抽出し、
    前記目標出力トルクに対する前記エンジンの実出力トルクの応答特性を反映する為の無駄時間を有しないが遅れを有する第2エンジンモデルから該目標出力トルクに基づいて第2モデル出力トルクを算出し、
    前記第2モデル出力トルクに前記差分の低周波成分を反映させたトルクを前記油圧制御に用いる油圧制御用トルクとして算出することを特徴とする車両用油圧制御装置。
  2. 前記ローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記出力トルクの過渡状態において増大する前記差分をカットするように予め実験的に求められていることを特徴とする請求項1に記載の車両用油圧制御装置。
  3. 前記第2モデル出力トルクを算出する基になる前記目標出力トルクは、特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクを排除した目標出力トルクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用油圧制御装置。
  4. 前記特定の制御からの要求に基づいた油圧制御の基としない所定トルクは、前記油圧制御の際の振動要素となるトルクであることを特徴とする請求項3に記載の車両用油圧制御装置。
  5. 前記第1エンジンモデル及び前記第2エンジンモデルは、前記遅れとしての所定の動的特性を含むものであり、
    前記所定の動的特性は、前記目標出力トルクの所定のなまし処理であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用油圧制御装置。
  6. 前記第1エンジンモデル及び前記第2エンジンモデルは、前記遅れとしての所定の動的特性を含むものであり、
    前記所定の動的特性は、前記目標出力トルクの変化量ガード或いは上下限ガードであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用油圧制御装置。
  7. 前記エンジンの動力を変速機を介して駆動輪へ伝達する車両において、
    前記油圧制御用トルクは、前記変速機の油圧制御におけるライン油圧指令値の算出の基になるトルクであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用油圧制御装置。
  8. 前記目標出力トルクが所定以上の変化をした場合には、該目標出力トルクを前記所定以上の変化をする前の値に保持することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用油圧制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101376776B1 (ko) 2011-10-26 2014-03-20 주식회사 현대케피코 엔진 토크 변화 예측을 통한 자동변속기 유압 제어 장치 및 그 방법
CN104976337A (zh) * 2015-07-30 2015-10-14 上海汽车变速器有限公司 基于离合器传递力矩估计的车辆起步过程优化控制方法
US9353806B2 (en) 2013-12-13 2016-05-31 Hyundai Motor Company Method of estimating torque of transmission clutch

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