JP2008267353A - 車両の駆動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転者にもたつき感を与えることなく、駆動伝達系の入力トルク急変に伴うショック及び車両振動を低減する。
【解決手段】変速機出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定し、この推定した入力トルクが急変するときには、この入力トルクに対し、駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動を低減する制振フィルタにてフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理前の入力トルクとフィルタ処理後の入力トルクとの差からトルクダウン量を算出する(ステップST1〜ST4)。そして、算出したトルクダウン量に基づいてエンジンの制御(例えば点火時期制御・燃料噴射量制御・スロットル開度制御)を行うことによって、入力トルク急変に伴うショック及び駆動伝達系の捩り振動による車両振動を低減する。
【選択図】図7

Description

本発明は、エンジン(内燃機関)等の駆動源と、その駆動源に連結される変速機とが搭載された車両の駆動制御装置に関する。
エンジンを搭載した車両において、エンジンが発生するトルク及び回転速度を車両の走行状態に応じて適切に駆動輪に伝達する変速機として、エンジンと駆動輪との間の変速比を自動的に最適設定する自動変速機が知られている。
車両に搭載される自動変速機としては、例えば、クラッチ及びブレーキと遊星歯車装置とを用いてギヤ段を設定する遊星歯車式変速機や、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)がある。
遊星歯車式の自動変速機が搭載された車両においては、車速とスロットル開度(またはアクセル開度)に応じた最適なギヤ段を得るための変速線(ギヤ段の切り換えライン)を有する変速マップがECU(Electronic Control Unit)等に記憶されており、車速及びスロットル開度に基づいて変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段に基づいて、摩擦係合要素であるクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチなどを、所定の状態に係合または解放することによってギヤ段(変速段)を自動的に設定している。
また、車両に搭載される変速機として、手動変速機能付の自動変速機(MMT:Multi−mode Manual Transmission)がある。MMTは、シーケンシャルマニュアルトランスミッションとも呼ばれるものであって、マニュアルトランスミッションに自動クラッチを備え、運転者のシフト操作によりアップシフト及びダウンシフトを実行する手動モードと、変速マップに従ってアップシフト及びダウンシフトを実行する自動モードとを有する。
ところで、自動変速機やMMTが搭載された車両では、自動変速機のワンウェイクラッチの空転時、駆動・被駆動反転時に駆動伝達系のガタが反転するとき、ダウンシフトの同期前、あるいは、MMT等のクラッチ解放時には、エンジントルクが駆動輪トルク(車両アウトプットトルク)に反映されないが、アクセルペダルが踏み込まれた後、同期した時点(ワンウェイクラッチ係合時、駆動伝達系のガタ詰め時、ダウンシフト同期時、クラッチ係合時)で、エンジントルクが自動変速機を介して駆動輪トルクに急激に伝達されるため、図13に示すように、変速機出力側の駆動伝達系の入力トルク(プロペラシャフトの入力トルク)がステップ的に変化し、このステップ変化によってショックが発生する。さらに、このようなトルク変動が生じると、駆動伝達系の戻り振動によって車両に振動が発生する。
このようなワンウェイクラッチ係合時などの同期時におけるショックを低減する技術として、例えばワンウェイクラッチが係合状態に切り替わる前の状態(ワンウェイクラッチの同期前の所定期間に入った状態)のときに、エンジンの出力低減(予め適合したトルクダウン)を行うことによって、ワンウェイクラッチの同期時の急激なトルク立ち上り、及び、駆動系の捩り振動に起因した車両振動の発生を抑制する制御(以下、従来制御という)が行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平5−1589号公報 特開平8−246913号公報 特開平8−58436号公報 特開平5−162571号公報
ところで、上記した従来制御では、図14に示すように、ワンウェイクラッチ係合時(同期時)よりも前のタイミングから、エンジントルク(タービントルク)のトルクダウンを行っているので、同期までの時間が長くなるとともに、同期後にトルクが立ち上がるまでの時間が長くなる。このため、アクセルペダルを踏み込んでパワーオン状態としたのにも関わらず、応答性が悪くて十分な加速性を得ることができなくなってしまい、運転者がもたつき感を感じる場合がある。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、走行用の駆動力を出力するエンジン等の駆動源と、その駆動源に連結される変速機とが搭載された車両において、運転者にもたつき感を与えることなく、駆動伝達系の入力トルク急変に伴うショック及び車両振動を低減することが可能な駆動制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、走行用の駆動力を出力する駆動源と、前記駆動源に連結される変速機とが搭載された車両の駆動制御装置において、前記変速機出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定する入力トルク推定手段と、前記入力トルクが急増するときに、前記駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動が低減されるように、当該入力トルクを制限するトルク制御手段とを備えていることを特徴としている。
本発明によれば、ワンウェイクラッチ係合時、駆動伝達系のガタ詰め時、ダウンシフト同期時、あるいは、MMTのクラッチ係合時などに発生するショック及び車両振動を、駆動力の応答性の低下を最小限に抑えながら軽減することができる。この点について以下に説明する。
まず、上述したように、従来制御では、ワンウェイクラッチ係合時などの同期時よりも前のタイミングからトルクダウンを行っているので、同期までに時間がかかってしまい、同期遅れが発生する。また、同期後にトルクが立ち上がるまでの時間も長くなるため、アクセル操作に対する駆動力(駆動輪トルク)の応答性が悪くなるという問題があった。
これに対し、本発明では、変速機出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定し、その推定した入力トルクが急変するとき(推定同期時)に、当該入力トルクがステップ入力とならないようにトルク制限(トルクダウン)を行うことで、従来制御のような同期遅れを回避した上で、同期時のショックを抑制している。さらに、トルク制限量(トルクダウン量)を駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動のみを低減できる量に設定しているので、応答性の低下を最小限に抑えることができるとともに、振動伝達系の捩り振動による車両振動を低減することができる。
本発明の具体的な構成として、前記入力トルク推定手段にて推定された入力トルクに対し、前記駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動を低減する制振フィルタにてフィルタ処理を施し、前記フィルタ処理前の入力トルクとフィルタ処理後の入力トルクとの差を算出して、当該入力トルクの制限量(トルクダウン量)を求めるという構成を挙げることができる。
また、エンジン(内燃機関)と、このエンジンにトルクコンバータを介して連結された自動変速機(具体的には、遊星歯車式減速機構を有する有段式自動変速機)とが搭載された車両を前提とする場合、入力トルクを推定する方法として、エンジンのエンジン回転数及び吸入空気量と、トルクコンバータのタービン回転数とを検出し、そのエンジン回転数及び吸入空気量に基づいてエンジントルクを算出し、この算出したエンジントルクと、前記タービン回転数及びエンジン回転数とに基づいてタービントルクを算出し、そのタービントルクに基づいて、前記駆動伝達系の入力トルクを推定するという方法を挙げることができる。
本発明によれば、変速機出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定し、この推定入力トルクが急変するときには、当該入力トルクがステップ入力とならないようにトルク制限を行うことによってショックを抑制している。さらに、トルク制限の際のトルク制限量を駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動のみを低減できるように設定しているので、運転者にもたつき感を与えることなく、駆動伝達系の入力トルク急変に伴うショック及び駆動伝達系の捩り振動による車両振動を低減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用する車両の一例を示す概略構成図である。
この例の車両は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両であって、エンジン1、トルクコンバータ2、自動変速機3、及び、ECU100などが搭載されており、そのECU100により実行されるプログラムによって本発明の車両の駆動制御装置が実現される。これらエンジン1、トルクコンバータ2、自動変速機3、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
−エンジン−
エンジン1は、例えば4気筒ガソリンエンジンであって、図3に示すように、各気筒を構成するシリンダブロック1a内に、上下方向に往復運動するピストン1bが設けられている。ピストン1bはコネクティングロッド17を介してクランクシャフト11に連結されており、ピストン1bの往復運動がコネクティングロッド17によってクランクシャフト11の回転へと変換される。クランクシャフト11はトルクコンバータ2の入力軸に接続される。
クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数Ne)は、エンジン回転数センサ201によって検出される。エンジン回転数センサ201は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト11が回転する際にシグナルロータ18の突起18aに対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
エンジン1のシリンダブロック1aには、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ207が配置されている。エンジン1の燃焼室1cには点火プラグ15が配置されている。点火プラグ15の点火タイミングはイグナイタ16によって調整される。イグナイタ16はECU100によって制御される。
エンジン1の燃焼室1cには吸気通路1dと排気通路1eとが接続されている。吸気通路1dと燃焼室1cとの間に吸気バルブ1fが設けられており、この吸気バルブ1fを開閉駆動することにより、吸気通路1dと燃焼室1cとが連通または遮断される。また、燃焼室1cと排気通路1eとの間に排気バルブ1gが設けられており、この排気バルブ1gを開閉駆動することにより、燃焼室1cと排気通路1eとが連通または遮断される。これら吸気バルブ1f及び排気バルブ1gの開閉駆動は、クランクシャフト11の回転が伝達される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各回転によって行われる。
吸気通路1dには、熱線式のエアフロメータ(吸入空気量センサ)208、吸気温センサ209(エアフロメータ208に内蔵)、及び、エンジン1の吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ12が配置されている。スロットルバルブ12はスロットルモータ13によって駆動される。スロットルバルブ12は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ202によって検出される。また、スロットルモータ13はECU100によって駆動制御される。
具体的には、エンジン回転数センサ201によって検出されるエンジン回転数Neと運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ202を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
そして、吸気通路1dには燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射弁)14が配置されている。インジェクタ14には、燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、吸気通路1dに燃料が噴射される。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となってエンジン1の燃焼室1cに導入される。燃焼室1cに導入された混合気(燃料+空気)は点火プラグ15にて点火されて燃焼・爆発する。この混合気の燃焼室1c内での燃焼・爆発によりピストン1bが往復運動してクランクシャフト11が回転する。以上のエンジン1は運転状態はECU100によって制御される。
−トルクコンバータ・自動変速機−
トルクコンバータ2は、図1に示すように、入力軸側のポンプ羽根車21と、出力軸側のタービン羽根車22と、トルク増幅機能を発現するステータ23と、ワンウェイクラッチ24とを備え、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22との間で流体を介して動力伝達を行う。
トルクコンバータ2には、入力側と出力側とを直結状態にするロックアップクラッチ25が設けられており、このロックアップクラッチ25を完全係合させることにより、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ25を所定のスリップ状態で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービン羽根車22がポンプ羽根車21に追随して回転する。トルクコンバータ2と自動変速機3とは回転軸によって接続される。トルクコンバータ2のタービン回転数Ntは、タービン回転数センサ203によって検出される。
自動変速機3は、図1に示すように、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置33を備えた遊星歯車式の変速機である。自動変速機3の出力軸34から出力される動力は、プロペラシャフト、デファレンシャルギヤ及びドライブシャフト等を介して駆動輪に伝達される。
自動変速機3の第1遊星歯車装置31のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS1は、ワンウェイクラッチF2及びブレーキB3を介してハウジングに選択的に連結され、逆方向(入力軸30の回転と反対方向)の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジングに選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられたワンウェイクラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジングに選択的に連結される。
第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置33のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS2は、ワンウェイクラッチF0及びクラッチC1を介して入力軸30に選択的に連結され、その入力軸30に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止される。
第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置33のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸30に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジングに選択的に連結される。また、キャリアCA2は、ブレーキB4と並列に設けられたワンウェイクラッチF3によって、常に逆方向の回転が阻止される。そして、第3遊星歯車装置33のキャリアCA3は出力軸34に一体的に連結されている。出力軸34の回転数は、出力軸回転数センサ204によって検出される。
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素であるクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3などが、所定の状態に係合または解放されることによってギヤ段(変速段)が設定される。クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4の係合・解放は油圧制御回路300(図4参照)によって制御される。
油圧制御回路300には、リニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブなどが設けられており、それらソレノイドバルブの励磁・非励磁を制御して油圧回路を切り替えることによって自動変速機3のクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4の係合・解放を制御することができる。油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブの励磁・非励磁は、ECU100からのソレノイド制御信号(指示油圧信号)によって制御される。
自動変速機3は運転者がシフトレバー等のレンジ切換え手段を操作することにより、例えばPレンジ(パーキングレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(前進走行レンジ)等に切り変えることができる。
以上の自動変速機3のクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3の係合・解放状態を図2の作動表に示す。図2の作動表において「○」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。また、「◎」は「エンジンブレーキ時の係合」を表し、「△」は「動力伝達に関係しない係合」を表している。
−ECU−
ECU100は、図4に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
ROM102には、車両の基本的な運転に関する制御の他、車両の走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段を設定する変速制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御の具体的な内容については後述する。
CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス106を介して互いに接続されるとともに、インターフェース105と接続されている。インターフェース105には、エンジン回転数センサ201、スロットル開度センサ202、タービン回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダル4の開度を検出するアクセル開度センサ205、シフトポジションセンサ206、水温センサ207、エアフロメータ(吸入空気量センサ)208、及び、吸気温センサ209などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ12の開度制御、点火時期制御、燃料噴射量制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
ECU100は、トルクコンバータ2にロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいてロックアップクラッチ25の係合圧が制御される。また、ECU100は、自動変速機3の油圧制御回路300にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜6速)を構成するように、クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF0〜F3などが、所定の状態に係合または解放される。
さらに、ECU100は下記の「変速制御」及び「トルクダウン制御」を実行する。
−変速制御−
まず、この例の変速制御に用いる変速マップについて図5を参照して説明する。
図5に示す変速マップは、車速及びアクセル開度をパラメータとし、それら車速及びアクセル開度に応じて、適正なギヤ段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ECU100のROM102内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り換えライン)によって区画されている。
なお、図5に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
次に、変速制御の基本動作について説明する。
ECU100は、出力軸回転数センサ204の出力信号から車速を算出するとともに、スロットル開度センサ202の出力信号からスロットル開度を算出し、それら車速及びスロットル開度に基づいて、図5の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段と現状ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現状ギヤ段とが同じで、ギヤ段が適切に設定されている場合)には、現状ギヤ段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力する。
一方、目標ギヤ段と現状ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図5に示す点Aから点Bに変化した場合、シフトダウン変速線[5→4]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その4速のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力して、5速のギヤ段から4速のギヤ段への変速(5→4ダウン変速)を行う。
−トルクダウン制御−
まず、この例の自動変速機3では、図2の作動表に示すように、例えば、第1速(1st)はワンウェイクラッチF3を係合させることによって設定される。また、第3速(3rd)はワンウェイクラッチF1を係合させることによって設定される。従って、これらの変速段で走行中にアクセルペダル4を戻して、エンジン1を被駆動状態(パワーオフ状態)とすると、自動変速機3には出力軸34側からトルクが入力され、これによってワンウェイクラッチF1,F2が解放状態になる。このような解放状態から変速が生じないうちに、アクセルペダル4が踏み込まれてパワーオン状態になると、ワンウェイクラッチF1,F2は、それまでとは反対方向のトルクがかかるために係合状態となり、そのワンウェイクラッチ係合時(同期時)に、エンジントルクが自動変速機3を介して駆動輪トルクに急激に伝達されてしまい、図13に示すように、自動変速機3の出力側の駆動伝達系の入力トルク(プロペラシャフトの入力トルク)がステップ的に変化し、そのステップ変化によってショックが発生する。また、駆動伝達系のガタ詰め時やダウンシフト同期時においても同様に同期時のショックが発生する。なお、MMT等のクラッチを解放する車両においても、クラッチの係合時(同期時)に同様なショックが発生する。
このような同期ショックを抑制するために、図14に示す制御(従来制御)のように、同期前のタイミングからトルクダウンを行うと、同期までに時間がかかってしまい、同期遅れが発生する。また、同期後にトルクが立ち上がるまでの時間も長くなるため、アクセル操作に対する駆動力(駆動輪トルク)の応答性が悪くなる。
そこで、この例では、自動変速機3の出力側の駆動伝達系(プロペラシャフト〜駆動輪)の入力トルクを推定し、その推定した入力トルクが急変するときには、前記駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動が低減されるように当該入力トルクを制限(トルクダウン)することで、駆動力の応答性の低下を最小限に抑えながら、ワンウェイクラッチ係合時、駆動伝達系のガタ詰め時、ダウンシフト同期時などのショックを低減する。
その具体的な制御(トルクダウン制御)の例について、図6のブロック線図及び図7のフローチャートを参照して説明する。図7のパワーオフダウンシフト時制御ルーチンはECU100において所定時間毎に繰り返して実行される。
まず、ステップST1において入力トルクを推定する。入力トルクの推定は下記の処理で行う。
(1)エンジン回転数センサ201及びエアフロメータ208の各出力信号からエンジン回転数Ne及び吸入空気量を読み込み、それらエンジン回転数Ne及び吸入空気量に基づいてマップを参照してエンジントルクを算出する。
(2)タービン回転数センサ203の出力信号からタービン回転数Ntを読み込み、このタービン回転数Ntとエンジン回転数Neとからトルクコンバータ2の速度比(速度比 =Nt/Ne)を算出し、その算出したトルクコンバータの速度比及び上記エンジントルクに基づいてマップを参照してタービントルクを算出する。
(3)自動変速機3の出力軸回転数センサ204の出力信号から出力軸回転数Noを読み込み、その出力回転数Noに基づいて同期回転数(No×ギヤ比(現状ギヤ比))を算出し、この算出した同期回転数とタービン回転数Ntとを比較して同期ポイントを推定する。そして、同期前の状態(例えばワンウェイクラッチの空転時)のときには入力トルクを「0」とし、同期時(例えばワンウェイクラッチ係合時)には[タービントルク×ギヤ比]を入力トルクとするという処理により、駆動伝達系の入力トルクを推定する。
なお、ステップST1において、エンジントルクの算出に用いるマップは、エンジン回転数Ne及び吸入空気量をパラメータとして、エンジントルクを予め実験・計算等によって経験的に求めた値をマップ化したものであり、ECU100のROM102内に記憶されている。また、タービントルクの算出に用いるマップは、エンジン回転数Ne及びトルクコンバータ速度比(速度比 =Nt/Ne)をパラメータとして、タービントルクを予め実験・計算等により経験的に求めた値をマップ化したものであり、ECU100のROM102に記憶されている。
ステップST2では、ステップST1で推定した入力トルクが急激に変化(ステップ的変化)するか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合はこのルーチンを一旦抜ける。ステップST2の判定結果が肯定判定である場合、前記ステップST1で推定した同期ポイントであると判断してステップST3に進む。
ステップST3においては、ステップST1で推定した入力トルクに対し、制振フィルタをかけてトルクダウン量を算出する。その具体的なフィルタ処理について以下に説明する。
まず、この例では、上記した従来制御のような同期遅れ(図14参照)が発生しないようにするために、ステップST1で推定した同期ポイントでトルクダウンを実施する。さらに、そのトルクダウンに際し、同期後の応答性の低下を最小限に抑えること、及び、車両振動を抑制することの双方を実現するために、入力トルク(推定トルク)に対し、駆動伝達系の固有振動数付近の振動を低減する制振フィルタC(s)にてフィルタ処理を施すことによりトルクダウン量を設定する。
このようなトルクダウン量の設定に用いる制振フィルタC(s)について説明する。まず、この例を適用する車両の駆動伝達系(プロペラシャフトから駆動輪までの駆動伝達系)の伝達関数を、2次の応答遅れの式で近似すると、その伝達関数G(s)は、
Figure 2008267353
と表すことができる。また、その駆動伝達系の伝達関数のボード線図は図10に示すような周波数応答特性となる。このような駆動伝達系の固有振動数ωに対し、その固有振動数ω付近の周波数を低減するには、次式で示す制振フィルタC(s)を用いればよい。
Figure 2008267353
なお、制振フィルタC(s)は、例えば、図11に示すように、ハイパスフィルタHPFとローパスフィルタLPFとを掛け合わせることにより、駆動伝達系の固有振動数ω付近の周波数のみを低減するようにしたノッチフィルタである。
そして、この例では、図6に示すように、駆動伝達系の入力トルク(推定トルク)に対し、制振フィルタC(s)にてフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理前の入力トルクとフィルタ処理後の入力トルクとのトルク差をトルクダウン量(図9参照)とし、この算出したトルクダウン量に基づいて、エンジン1のトルクダウンを実行する(ステップST4)。具体的には、トルクダウン量を考慮して、エンジン1の点火時期制御・燃料噴射量制御・スロットル開度制御のいずれか1つの制御もしくは複数の制御を実行することで、図8に示すような入力トルクのトルクダウンを実行する。
以上のように、この例のトルクダウン制御によれば、自動変速機3の出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定し、その推定した入力トルクが急変するとき(推定同期時)には、当該入力トルクがステップ入力とならないようにトルクダウンを行っているので、図14に示す従来制御のような同期遅れを回避した上で、同期時のショックを抑制することができる。しかも、駆動伝達系の入力トルク(推定トルク)に対し、駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動を低減する制振フィルタC(s)によってフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理前後のトルク差からトルクダウン量を算出してトルクダウンを実施しているので、図8に示すように、駆動輪トルクの応答性低下を最小限に抑えることができ、運転者にもたつき感を与えることがなくなる。さらに、駆動輪トルクの振れを、トルクダウン制御を実施していない場合(図8において2点鎖線で示す駆動輪トルク)と比較して、大幅に少なくすることができる。これによって振動伝達系の捩り振動による車両振動を低減することが可能となり、ドライバビリティが向上する。
−他の実施形態−
以上の例では、駆動伝達系の入力トルク(推定トルク)に対し、制振フィルタC(s)にてフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理前・処理後のトルク差からトルクダウン量を算出しているが、本発明はこれに限られることなく、他の手法でトルクダウン量を算出するようにしてもよい。
例えば、図12に示すように、推定同期時の入力トルクを、その同期直前のタービントルクの略1/2程度に制限し、このトルク制限状態を駆動輪トルク(トルクダウン制御無)のピーク付近まで維持するトルク指示パターンPaを求め、そのトルク指示パターンPaに基づいてトルクダウン量を算出するようにしてもよい。
以上の例では、駆動伝達系の入力トルクをタービントルクに基づいて算出しているが、これに限られることはない。例えば、自動変速機のダウンシフトの際にトルクダウン制御を実施する場合、ダウンシフトのイナーシャ相中の解放側のクラッチ容量を用いて駆動伝達系の入力トルクを算出するようにしてもよい。このようにクラッチ容量を用いると、入力クラッチトルクを正確に算出することが可能になる。
以上の例では、前進6段変速の自動変速機を搭載した車両に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機を搭載した車両にも適用可能である。
また、遊星歯車式自動変速機に限られることなく、例えば手動変速機能付の自動変速機(MMT)などの他の変速機が搭載された車両にも本発明は適用可能である。なお、MMTが搭載された車両の場合、クラッチが解放から係合に切り替わるときのショック及び車両振動を抑制する際のトルクダウン制御に本発明を適用することができる。
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。また、本発明は、駆動源としてエンジン(内燃機関)と電動機(例えば走行用モータまたはジェネレータモータ等)が搭載されたハイブリッド車に適用可能である。
本発明を適用する車両の一例を示す概略構成図である。 図1に示す自動変速機の作動表である。 図1に示すエンジンの概略構成図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 変速制御に用いる変速マップを示す図である。 トルクダウン制御の動作を示すブロック線図である。 トルクダウン制御の動作を示すフローチャートである。 トルクダウン制御の動作を示すタイミングチャートである。 トルクダウン量の説明図である。 駆動伝達系の周波数応答特性を示すボード線図である。 トルクダウン制御に用いる制振フィルタC(s)のフィルタ特性を示すグラフである。 トルクダウン量の算出方法の説明図である。 駆動伝達系の入力トルクと駆動輪トルクとの関係を示すタイミングチャートである。 従来のトルクダウン制御の動作を示すタイミングチャートである。
符号の説明
1 エンジン
12 スロットルバルブ
13 スロットルモータ
14 インジェクタ
15 点火プラグ
2 トルクコンバータ
3 自動変速機
300 油圧制御回路
30 入力軸
34 出力軸
4 アクセルペダル
100 ECU
201 エンジン回転数センサ
202 スロットル開度センサ
203 タービン回転数センサ
204 出力軸回転数センサ
205 アクセル開度センサ
206 シフトポジションセンサ
208 エアフロメータ(吸入空気量センサ)

Claims (3)

  1. 走行用の駆動力を出力する駆動源と、前記駆動源に連結される変速機とが搭載された車両の駆動制御装置であって、
    前記変速機出力側の駆動伝達系の入力トルクを推定する入力トルク推定手段と、前記入力トルクが急増するときに、前記駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動が低減されるように、当該入力トルクを制限するトルク制御手段とを備えていることを特徴とする車両の駆動制御装置。
  2. 請求項1記載の車両の駆動制御装置において、
    前記トルク制御手段は、前記入力トルク推定手段にて推定された入力トルクに対し、前記駆動伝達系の固有振動数付近の周波数の振動を低減するフィルタ処理を施し、前記フィルタ処理前の入力トルクとフィルタ処理後の入力トルクとの差を算出して、当該入力トルクの制限量を求めることを特徴とする車両の駆動制御装置。
  3. 請求項1または2記載の車両の駆動制御装置において、
    前記駆動源がエンジンであって、前記エンジンに遊星歯車式減速機構を有する有段式の自動変速機がトルクコンバータを介して連結されており、前記入力トルク推定手段は、前記エンジンのエンジン回転数及び吸入空気量と、前記トルクコンバータのタービン回転数とを検出し、前記エンジン回転数及び吸入空気量に基づいてエンジントルクを算出するとともに、前記エンジントルク、前記タービン回転数及び前記エンジン回転数に基づいてタービントルクを算出し、そのタービントルクに基づいて前記駆動伝達系の入力トルクを推定することを特徴とする車両の駆動制御装置。
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