以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、搬送ローラ4などを備えている。キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に延びたガイド軸5に沿って往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に配置されており、その下面に配置されたノズル15(図2参照)からインクを吐出する。搬送ローラ4は、記録用紙Pを紙送り方向(図1の手前方向)に搬送する。
そして、プリンタ1においては、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3から、搬送ローラ4により紙送り方向に搬送される記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pに印刷を行う。また、印刷が完了した記録用紙Pは搬送ローラ4によって紙送り方向に搬送されることにより排出される。
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は図1のインクジェットヘッド3の平面図である。図3は図2における後述する振動板41の上面の平面図である。図4は図2における後述する圧電層42の上面の平面図である。なお、位置関係をわかりやすくするために、図3においては、後述する圧電層42を、二点鎖線で示している。
インクジェットヘッド3は、図5、および図6に示すように、圧力室10やノズル15などを含むインク流路が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置されており、圧力室10内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ32とを備えている。
流路ユニット31は、キャビティプレート21、ベースプレート22、マニホールドプレート23及びノズルプレート24の4枚のプレートが互いに積層されることにより形成されている。これら4枚のプレート21〜24のうちノズルプレート24を除く3枚のプレート21〜23は、ステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート24は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート24も、他の3枚のプレート21〜23と同様の金属材料により構成されていてもよい。
キャビティプレート21には、複数の圧力室10とインク供給口9(図2参照)が形成されている。圧力室10は、走査方向(図2の左右方向)を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、紙送り方向に沿って2列に配列されている。ベースプレート22には、複数の圧力室10の走査方向に関する両端部と対向する部分に、それぞれ、略円形の貫通孔12、13が形成されている。また、インク供給口9は、後述するマニホールド流路11に連通する位置に形成されている。
マニホールドプレート23には、各列の圧力室10の走査方向に関して貫通孔12側の略半分と重なるように紙送り方向(図2の上下方向)に延びたマニホールド流路11が形成されている。ここで、マニホールド流路11には、インク供給口9からインクが供給される。また、マニホールドプレート23には、貫通孔13と重なる部分に、略円形の貫通孔14が形成されている。ノズルプレート24には、貫通孔14と重なる部分にノズル15が形成されている。
そして、流路ユニット31においては、マニホールド流路11が貫通孔12を介して圧力室10と連通しているとともに、圧力室10が貫通孔13、14を介してノズル15に連通している。このように、流路ユニット31には、マニホールド流路11の出口から圧力室10を経てノズル15にいたる複数の個別インク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ32は、振動板41、圧電層42、複数の個別電極43、共通電極44、45、絶縁層46及び複数の配線47を備えている。
振動板41は、複数の圧力室10を覆うようにキャビティプレート21の上面に配置されている。振動板41は、例えば、アルミナ、ジルコニア、後述するPZTなどのセラミックス材料や、ステンレスなどの金属材料などにより構成されている。ただし、振動板41が金属材料により構成されている場合には、振動板41が導電性を有するため、振動板41と後述する個別電極43及び配線47との導通を防止するために、振動板41の上面にセラミックス材料などからなる絶縁層(図示省略)を配置し、その上に個別電極43及び配線47を配置する必要がある。
圧電層42は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料(PZT)からなる。圧電層42は、振動板41の上面に配置されており、複数の圧力室10と対向する部分にまたがって連続的に延びている。
複数の個別電極43は、振動板41の上面(圧電層42の下面(一方の面))に、複数の圧力室10に対応して配置されている。複数の個別電極43は、圧力室10よりも若干大きい略楕円の平面形状を有しており、複数の圧力室10を完全に覆うように配置されている。これにより、複数の個別電極43は、複数の圧力室10と同様、紙送り方向に2列に配列されている。また、複数の個別電極43は、後述するようにドライバIC50に接続されており、ドライバIC50により、グランド電位、及び、所定の正電位(例えば、20V程度)のいずれかの電位が選択的に付与される。
共通電極44(第1共通電極)は、圧電層42の上面(個別電極43と反対側の面)に配置されているとともに、後述するようにドライバIC50に接続されており、ドライバIC50により、常にグランド電位に保持されている。また、共通電極44は、複数の対向部44a、2つの接続部44b及び連結部44cを有している。
複数の対向部44aは、圧力室10よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、複数の圧力室10(個別電極43)の略中央部と対向するように配置されている。そして、これにより、複数の対向部44aは、複数の個別電極43と同様、紙送り方向に沿って2列に配列されている。
2つの接続部44bは、紙送り方向に延びており、それぞれ、図2における左側の列を構成する複数の対向部44aの左側の端部、及び、右側の列を構成する複数の対向部44aの右側の端部を、互いに接続している。連結部44cは、走査方向に延びて、2つの接続部44bの図2における上端部同士を連結している。なお、本実施の形態では、2つの接続部44bと連結部44cとをあわせたものが、本発明に係る接続部に相当する。
共通電極45(第2共通電極)は、共通電極44が配置されているのと同じ圧電層42の上面における、2つの接続部44bと連結部44cとによって囲まれた領域に配置されており、複数の対向部45a及び接続部45bを備えている。複数の対向部45aは、圧力室10の共通電極44と対向する部分の外側の部分と対向するように配置されている。接続部45bは、共通電極45のうち複数の対向部45aを除いた部分であって、複数の対向部45aを互いに接続している。
また、共通電極45は、後述するようにドライバIC50に接続されており、ドライバIC50により、常に上記所定の正電位に保持されている。
ここで、前述した圧電層42のうち、個別電極43と共通電極44(対向部44a)とに挟まれた部分、および、個別電極43と共通電極45(対向部45a)とに挟まれた部分は、圧電層42の厚さ方向に分極されている。
絶縁層46は、アルミナ、ジルコニア、PZTなどのセラミックス材料、あるいは、合成樹脂材料など、絶縁材料からなり、圧電層42の上面のほぼ全域に、共通電極44、45を覆うように配置されている。共通電極44と共通電極45とは、同じ圧電層42の上面に互いに近接して配置されているとともに、互いに異なる電位に保持されているが、共通電極44、45を覆う絶縁層46が配置されているため、電極を形成する材料がマイグレーションを起こすことで共通電極44と共通電極45とが導通してしまうのを防止することができる。
複数の配線47は、複数の個別電極43に個別に接続される複数の配線47a、共通電極44に接続される配線47b、及び、共通電極45に接続される配線47cを含んでおり、これらの配線47は、その一端が、各電極43、44、45に接続されているとともに、他端が振動板41上に配置されたドライバIC50接続されている。なお、図2〜図4では、複数の配線47のうち、電極43〜45との接続部分の近傍の部分、及び、ドライバIC50との接続部分近傍の部分のみを図示しており、その他の部分については、図示を省略している。
配線47a〜47cについてより詳細に説明すると、配線47aは、その一端が個別電極43の走査方向に関するノズル15と反対側の端部に接続されているとともに、この部分から、個別電極43が配置されているのと同じ振動板41の上面を引き回されて、その他端がドライバIC50に接続されている。
配線47bは、その一端が、圧電層42の上面において、図2における右側の接続部44bの上端部に接続されているとともに、この接続部分から、圧電層42の図2における右側の側面を通って振動板41の上面まで引き出されており、さらに、振動板41の上面を引き回されて、その他端がドライバIC50に接続されている。
配線47cは、その一端が、圧電層42の上面において、共通電極45の図2における左下端部に接続されているとともに、この接続部分から、圧電層42の図2における下側の側面を通って振動板41の上面まで引き出されており、さらに、振動板41の上面を引き回されて、その他端がドライバIC50に接続されている。
なお、配線47の各電極43〜45との接続位置や、配線47の引き回し方は、上述したものには限られない。また、ドライバIC50についても、振動板41の上面以外の面上に配置されていてもよい。さらには、配線47が設けられておらず、電極43〜45が、圧電アクチュエータ32の上方に配置されたフレキシブル配線基板(FPC)に形成された配線に接続されているとともに、この配線を介して圧電アクチュエータ32から離れた位置にあるドライバICに接続されていてもよい。
ここで、圧電アクチュエータ32の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ32においては、複数の個別電極43は、予めグランド電位に保持されている。この状態では、個別電極43と共通電極45(対向部45a)との間に電位差が生じており、圧電層42のこれらの電極に挟まれた部分には、分極方向と平行な向きの電界が生じている。これにより、圧電層42のこの部分は、電界の方向と直交する水平方向に収縮しており、その結果、振動板41、圧電層42及び絶縁層46の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10と反対側に凸となるように変形しており、振動板41及び圧電層42が変形していない状態と比較して、圧力室10の容積が大きくなっている。
圧電アクチュエータ32を駆動させる際には、複数の個別電極43のうちのいずれかの電位をグランド電位から所定の正電位に切り替える。すると、圧電層42の、個別電極43と共通電極45とに挟まれた部分が収縮前の状態に戻る。一方、圧電層42の個別電極43と共通電極44(対向部44a)とにより挟まれた部分に、分極方向と平行な向きの電界が発生し、圧電層42のこの部分が電界の方向と直交する水平方向に収縮する。これにより、振動板41、圧電層42及び絶縁層46の対応する圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10側に凸となるように変形し、圧力室10の容積が小さくなる。その結果、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、圧力室10に連通するノズル15からインクが吐出される。そして、インクの吐出後、個別電極43の電位を所定の正電位からグランド電位に切り替えて、圧電アクチュエータ32を最初の状態に戻す。
このとき、圧電アクチュエータ32においては、個別電極43の電位をグランド電位から所定の正電位に切り替えたときに、圧電層42の個別電極43と対向部44aとに挟まれた部分が水平方向に収縮すると同時に、圧電層42の個別電極43と共通電極45とに挟まれた部分が収縮した状態から収縮前の状態に伸張する。これにより、圧電層42の上記収縮と上記伸張とが互いに吸収しあうことになり、その結果、圧電層42のある圧力室10に対向する部分の変形が、別の圧力室10に対向する部分に伝播することによってノズル15からのインクの吐出特性が変動する、いわゆるクロストークを防止することができる。
次に、圧電アクチュエータ32の製造方法について説明する。図7は圧電アクチュエータ32の製造方法を示す工程図である。なお、図面をわかりやすくするため、図7では、流路ユニット31内に形成されたインク流路の図示を省略している。
圧電アクチュエータ32を製造する際には、まず、図7(a)に示すように、振動板41の上面に、複数の個別電極43及び配線47を形成する。ここで、複数の個別電極43及び配線47は、後述する共通電極44、45を形成する場合と同様、振動板41の上面のほぼ全域に、印刷などにより導電膜を形成してから、レーザ加工により導電膜の不要な部分を除去して、導電膜から複数の個別電極43及び配線47を切り出すことによって形成する。なお、振動板41の上面のほぼ全域に、導電膜を形成することなく、個別電極43及び配線47を、マスクをして直接印刷することで形成してもよい。
続いて、図7(b)に示すように、複数の個別電極43及び配線47が形成された振動板41の上面に圧電層42を形成する。ここで、圧電層42を形成する方法としては、例えば、超微粒子材料を高速で衝突させて堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)、ゾルゲル法、スパッタ法などがあげられる。あるいは、振動板41の上面に圧電材料のグリーンシートを配置してから、このグリーンシートを焼成することによって圧電層42を形成することも可能である。
そして、複数の個別電極43が配置された振動板41の上面に圧電層42が形成されることにより、複数の個別電極43は、圧電層42の下面(一方の面)に配置されることとなる。すなわち、本実施の形態では、上述の、振動板41の上面に個別電極43を形成する工程と、個別電極43が形成された振動板41の上面に圧電層42を形成する工程とをあわせたものが、本発明に係る個別電極形成工程に相当する。
次に、図7(c)に示すように、圧電層41の上面におけるほぼ全域(複数の個別電極43と対向する部分にまたがって連続的に延びた領域)に、印刷などにより導電膜51を形成する(導電膜形成工程)。
続いて、図7(d)に示すように、レーザ加工により、導電膜51のうち、共通電極44と共通電極45との境界となる部分など不要な部分を除去することによって、導電膜51から共通電極44を切り出す(レーザ加工工程)。これにより、共通電極44が形成される(共通電極形成工程)とともに、共通電極44が切り出された導電膜51の残りの部分が、共通電極45となる。
また、レーザ加工工程により複数の対向部44aを切り出す際には、レーザの出力エネルギーを小さくするとともに、レーザの走査速度を遅くする。一方、レーザ加工工程により接続部44b及び連結部44cを切り出す際には、複数の対向部44aを切り出す際よりも、レーザの出力エネルギーを大きくするとともに、レーザの走査速度を速くする。なお、比較的薄い導電膜51を除去する上記レーザ加工においては、例えばYAGレーザなど、瞬間的な出力エネルギーの高いレーザを用いることが好ましい。
ここで、圧電アクチュエータ32においては、各圧力室10に対応する部分の駆動特性が均一であることが好ましい。一方、圧電アクチュエータ32においては、個別電極43、及び対向部44a、45aの大きさや位置にばらつきがあると、その駆動特性にばらつきが生じてしまう。したがって、個別電極43、及び共通電極44、45の対向部44a、45aは、特に精度よく形成されることが好ましい。
一方、レーザ加工についてより詳細に説明すると、レーザ加工においては、例えば、図8に示すように、略円形の断面を有するレーザを導電膜に照射することにより、導電膜の円形の領域を除去するとともに、このようなレーザの照射を、その照射位置を所定距離ずつずらしつつ(レーザを所定の走査速度で走査させつつ)、繰り返し行うことにより、導電膜の不要な部分を順に除去していく。このとき、レーザの出力強度が大きいほど、照射されるレーザの直径が大きくなる。一例を挙げると、例えば、対向部44aを切り出す際には、レーザの出力エネルギーを1Wとすると、1度の加工径が40mmとなり、直径の1/3ずらして加工すると周波数10kHz(走査速度にして133mm/s)で加工し、接続部44b及び連結部44cを切り出す際には、レーザの出力エネルギーを2Wとすると、1度の加工径が56.6mmとなり、直径の1/3をずらして加工すると周波数14kHz(走査速度にして264mm/s)で加工することができる。
図8は、このようにしてレーザ加工を行ったときの、導電膜51のレーザによって除去される領域を模式的に示した図であり、(a)がレーザの直径をD1とした場合、(b)がレーザの直径をD1よりも大きいD2とした場合を示している。なお、図8では、1回のレーザの照射ごとに、レーザの照射位置をレーザの直径の3分の1程度ずつ図の右方にずらして、7回のレーザの照射を行った場合を示している。
このようにしてレーザ加工を行うと、図8に示すように、導電膜51のレーザ加工によって除去される領域(図8の太線で囲まれた領域A1、A2)の上下方向に関する両端の位置は、ある範囲(図8に示す長さW1、W2の範囲)でばらつくことになる。そして、図8においてW1<W2となっているように、このばらつきの範囲は、レーザの直径(出力エネルギー)が大きくなるほど大きくなる。逆に言えば、レーザの直径(出力エネルギー)が小さいほど、上記ばらつきの範囲が小さくなり、導電膜51から精度よく電極を切り出すことができる。
また、1回のレーザの照射ごとに、レーザの照射位置をレーザの直径の3分の1程度ずつ右方にずらす場合には、例えば、図8で(D1/3)<(D2/3)となっているように、レーザの直径が大きくなるほど、1回のレーザの照射ごとに、レーザの照射位置を大きくずらすことになる。つまり、レーザの出力エネルギーが大きいときほどレーザの走査速度が速くなる。その結果、ある同じ回数だけレーザの照射を行った場合に、導電膜51のレーザにより除去される領域A1、A2の図中左右方向に関する長さ(図8に示す長さL1、L2)も、レーザの直径(出力エネルギー)が大きいほど大きくなる(図8ではL1<L2となっている)。言い換えれば、導電膜のある領域を除去するのに要する時間を短くすることができる。
以上のことから、本実施の形態では、上述したように、それほど高い精度を必要としない接続部44b、連結部44c及び配線47を切り出す際に、高い精度を必要とする個別電極43及び対向部44aを切り出す際よりも、レーザの出力エネルギーを大きくしているとともに、レーザの走査速度を速くしている。なお、導電膜51から共通電極44を切り出せば、導電膜51の残りの部分が共通電極45となるため、対向部45aは対向部44aと同程度の高い精度で切り出され、接続部45bは、接続部44b、44cと同程度の対向部45aよりも低い精度で形成される。
これにより、複数の個別電極43、及び共通電極44、45の対向部44a、45aを精度よく形成することができるとともに、接続部44b、45b、連結部44c及び配線47を切り出す際のレーザの走査速度を速くした分だけ、レーザ加工工程に要する時間を短くすることができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
上述の実施の形態では、共通電極44を切り出した導電膜51の残りの部分全体が共通電極45となっていたが、これには限られず、レーザ加工工程において、さらに、導電膜51の上記残りの部分のうち、例えば、複数の対向部45aとなる部分から大きく離隔した部分など、不要な部分(個別電極43と対向しない部分の一部)を除去してもよい(変形例1)。
ここで、上記不要な部分を除去する方法としては、上記レーザ加工工程において、さらに、図9(a)に示すように、導電膜51の上記残りの部分のうち、共通電極45となる部分と、不要な部分との境界部分のみを除去して、これら2つの部分を切り離す。あるいは、図9(b)に示すように、導電膜51の上記残りの部分のうち、共通電極45としない不要な部分を完全に除去してもよい。なお、図9(a)、(b)は、導電膜51の上記残りの部分のうち、図中左右両端部、右上端部及び左下端部を不要な部分とした場合を示している。
なお、導電膜51の上記不要な部分を除去する際には、それほど高い精度は要求されないため、対向部44aを切り出す際よりもレーザの出力エネルギーを大きくするとともにレーザの走査速度を速くすることにより、レーザ加工工程に要する時間を極力短くすることができる。
そして、図9(a)の場合には、導電膜51の不要な部分を残したままにしている分、レーザ加工工程に要する時間を短くすることができる。さらに、圧電層42の上面のほぼ全域に共通電極44、45又は導電膜51のいずれかが配置されることになるため、圧電層42の強度が均一になり、加熱時などに圧電層42に反りなどが発生しにくい。しかしながら、何らかの要因によって導電膜51の残した不要な部分に電位が付与されてしまうと、不要な静電容量が発生したり、発熱したりしてしまう虞がある。
一方、図9(b)の場合には、不要な部分を完全に除去しているため、上述したような不要な静電容量の発生や発熱といった問題は生じにくい。しかしながら、導電膜51の不要な部分を除去する分、レーザ加工工程に要する時間は長くなってしまう。さらに、圧電層42において、共通電極44、45が配置されているた部分と、導電膜51が除去された部分との間に強度の差が生じてしまうため、加熱時などに圧電層42に反りなどが発生してしまう虞がある。
また、上述の実施の形態では、共通電極44(対向部44a)が圧力室10(個別電極43)の略中央部に対向しているとともに、共通電極45が圧力室10の短手方向の両端部と対向していたが、これには限られず、例えば、これとは逆に、共通電極44が圧力室10の短手方向の両端部と対向しているとともに、共通電極45が圧力室10の略中央部と対向しているなど、共通電極44、45が、圧力室10の上記とは異なる部分と対向していてもよい。
また、上述の実施の形態では、連結部44cにより2つの接続部44bが連結されていたが、共通電極44は、2つの接続部44bに別々に配線47が接続されている場合などには、連結部44cはなくてもよい。
また、上述の実施の形態では、圧電アクチュエータ32が圧電層42の上面に2種類の共通電極44、45が配置されたものであり、このような圧電アクチュエータ32を製造するために、共通電極44を切り出した導電膜51の残りの部分を共通電極45としていたが、これには限られず、圧電アクチュエータが、1種類の共通電極(共通電極44、45のいずれか一方)のみを有するものであり、共通電極を切り出した導電膜51の残りの部分を電極として用いないものであってもよい。
この場合には、圧電アクチュエータは、個別電極43と上記1種類の共通電極との電位差によって生じる、圧電層42のこれらの電極に挟まれた部分の変形のみによって駆動する。
また、この場合には、共通電極を切り出した導電膜51の残りの部分については、残してもよいし、除去してもよい。そして、導電膜51の残りの部分を残した場合には、圧電層42の上面のほぼ全域に、共通電極及び導電膜51の残りの部分のいずれかが配置されることになるため、圧電層42の強度が均一になり、加熱時などに圧電層42に反りなどが発生しにくい。
しかしながら、何らかの要因によって導電膜51の残りの部分に電位が付与されてしまうと、個別電極43と導電膜51の残りの部分との電位差により、圧電層42のこれらに挟まれた部分が変形して圧電アクチュエータの駆動特性が変動しまう虞がある。あるいは、導電膜51の残りの部分に電位が付与されてしまうことにより、不要な静電容量が発生したり、発熱したりする虞がある。
一方、導電膜51の上記残りの部分を除去する場合には、上述したような、圧電アクチュエータの駆動特性の変動、不要な静電容量の発生、発熱といった問題は生じにくい。しかしながら、導電膜51の不要な部分を除去する分、レーザ加工工程に要する時間は長くなってしまう。さらに、圧電層42において、共通電極が配置されている部分と、導電膜51が除去された部分との間に強度の差が生じてしまうため、加熱時などに圧電層42に反りなどが発生してしまう虞がある。
ただし、導電膜51の上記残りの部分については、その全てを除去することには限られず、少なくとも圧力室10に対向する部分を除去すれば、圧電層42の個別電極43と導電膜51の上記残りの部分とに挟まれた部分の変形を防止することはできる。
また、導電膜51の電極でない部分を除去する際には、それほど高い精度は要求されないため、対向部44aを切り出す際よりもレーザの出力エネルギーを大きくするとともにレーザの走査速度を速くすることにより、レーザ加工工程に要する時間を極力短くすることができる。
なお、この場合には、圧電層42の上面に1種類の共通電極のみが配置されるだけであるため、2種類の共通電極間の導通を防止するための絶縁層46は設けられていなくてもよい。
また、上述の実施の形態では、共通電極44を切り出した導電膜51の残りの部分を共通電極45としていたが、これには限られず、圧電アクチュエータが、1種類の共通電極(共通電極44、45のいずれか一方)のみを有するものであり、共通電極を切り出した導電膜51の残りの部分を共通電極とは異なる電極としてもよい。
例えば、共通電極を切り出した導電膜51の残りの部分を、圧電アクチュエータの製造工程において、圧電層42に生じているクラックを検出するためのクラック検出用電極に用いることもできる。このクラック検出用電極と個別電極との間の電気抵抗を測定することで、圧電層42にクラックが生じているか否かを検出することが可能である。さらに、この場合には、クラック検出用電極が形成されているため、圧電層42の強度が均一になり、加熱時などに圧電層42に反りなどが発生しにくい。
また、上述の実施の形態では、共通電極44が常にグランド電位に保持されており、共通電極45が常に所定の正電位に保持されていたが、これには限られず、交通電極44が常に所定の正電位に保持されており、共通電極45が常にグランド電位に保持されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、振動板41の上面に圧電層42を形成してから、圧電層42の上面に共通電極44、45を形成していたが、これには限られず、共通電極44、45が配置された圧電層42を振動板41の上面に接合してもよい。
ここで、共通電極44、45が配置された圧電層42は、例えば、焼成前のグリーンシートの上面に共通電極44、45を形成してからグリーンシートを焼成する、あるいは、グリーンシートを焼成することによってできた圧電層42の上面に共通電極44、45を形成することによって作製することができる。なお、この場合でも、共通電極44、45の形成方法は、上述の実施の形態の場合と同様である。
また、上述の実施の形態では、振動板41の上面に複数の個別電極43を形成してから、振動板41の上面に圧電層42を形成することによって、圧電層42の下面に複数の個別電極43を形成していたが、これには限られず、圧電層の42の下面に複数の個別電極43を直接形成し(個別電極形成工程)、その後、複数の個別電極43が形成された圧電層42を振動板41に接合してもよい。
なお、複数の個別電極43が形成された圧電層42は、例えば、圧電材料のグリーンシートの下面に予め複数の個別電極43を形成してから、このグリーンシートを焼成する、あるいは、グリーンシートを焼成することによってできる圧電層42の下面に複数の個別電極43を形成することによって作製することができる。
また、上述の実施の形態では、複数の個別電極43が圧電層42の下面に配置されているとともに、共通電極44、45が圧電層42の上面に配置されていたが、これとは逆に複数の個別電極43が圧電層42の上面に配置されているとともに、共通電極44、45が圧電層42の下面に配置されていてもよい。
また、以上では、走査方向に往復移動しつつノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアル式のプリンタのインクジェットヘッドに用いられる圧電アクチュエータの製造に本発明を適用したが、これには限られず、記録用紙の幅方向の全長にわたって延びているとともにプリンタ本体に固定される、いわゆるラインヘッドの製造に本発明を適用することも可能である。さらには、インクジェットヘッド以外の装置に用いられる圧電アクチュエータの製造に本発明を適用することも可能である。