JP5379523B2 - シクロヘキシルアルカノールの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし公知の製造法、例えば特許文献1の実施例6では、反応によって得られる主生成物はトランス形異性体であり、シス形異性体の含有比率は30%以下と低い。
このように天然の花が持つクリーミーな甘さを表現するフローラル系香料に好ましい、シス形の異性体を多く含む1,4位に炭化水素基を持つシクロヘキシルアルカノールを工業的に簡便かつ安価な方法で製造する方法はこれまで知られていなかった。
(1)一般式(I)
で表されるカルボニル化合物を用いて、一般式(II)
で表されるカルボニル化合物を得た後に還元を行う、上記一般式(III)
で表されるシクロヘキシルアルカノールの製造方法。
(2)上記(1)の製造方法により得られる一般式(III)
で表されるシクロヘキシルアルカノールを含有する香料組成物。
本発明方法は、一般式(I)で表されるカルボニル化合物を用いて、一般式(II)で表されるカルボニル化合物を得た後に還元を行う、一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールの製造方法である。
炭素数2〜4のアルキル基としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基等が挙げられる。炭素数2〜4のアルキニル基としては、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等が挙げられる。
これらのうちR1としては、最終生成物である一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールの匂いの強さと質の観点から、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−プロピニル基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基がより好ましく、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基がさらに好ましい。
炭素数1〜4の炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は炭素数2〜4のアルキニル基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数2〜4アルケニル基、及び炭素数2〜4のアルキニル基としては、前記と同様のものが挙げられる。
OR3基のR3としては、水素原子又は炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基が挙げられる。炭素数1〜10の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等が挙げられ、炭素数1〜10の不飽和の炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、そしてエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、各種ペンチニル基、各種ヘキシニル基、各種ヘプチニル基、各種オクチニル基、各種ノニイル基、各種デシニル基等が挙げられる。
これらのうちR2としては、最終生成物である一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールの匂いの強さと質と生産コストの観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基又は前記のすべてのOR3基が好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基、前記のすべてのOR3基がより好ましく、水素原子、メチル基、前記のすべてのOR3基がさらに好ましい。
また、R2がOR3基であり、R3が水素原子であるカルボン酸化合物の場合は、上記で得られたアルデヒド化合物を適当な酸化剤によりさらに酸化することにより得ることができる。また、R2がOR3基であり、R3が炭化水素基であるエステル化合物の場合は、上記で得られたカルボン酸化合物をアルコールと反応させてエステル化することにより得ることができる。
なお、ここで得られた一般式(I)で表される化合物は、次の炭化水素化の原料として、反応液をそのまま用いてもよく、カラムや蒸留などにより精製したものを用いてもよい。
一般式(II)で表されるカルボニル化合物は、下記反応式(A)に示すように、一般式(I)で表される4−アルキル−1−カルボニル化合物に、塩基性化合物の存在下で、炭化水素化剤としてR4Xを反応させて得ることができる。
これらのうちR4としては最終生成物である一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールの匂いの強さと質の観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
ただし、上記一般式(II)において、R1がイソプロピル基である場合には、R4としてはメチル基のみがふさわしい。
Xとしては、ハロゲン基、アルキル硫酸基、トシル基又はメシル基等が挙げられる。
これらのうち、反応性、及び最終生成物である一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールの匂いの強さと質の観点から、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、臭化n−プロピル、ヨウ化n−プロピル、ヨウ化イソプロピル、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸が好ましく、さらに塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、臭化n−プロピル、ヨウ化n−プロピル、塩化アリル、臭化アリル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸がより好ましく、特に塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸がさらに好ましい。
炭化水素化剤の使用量は、反応収率の観点から、原料となる一般式(I)で表されるカルボニル化合物に対して10〜1000モル%が好ましく、50〜500モル%がより好ましい。
具体的に金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等が挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等が挙げられ、金属炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
含窒素金属化合物としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられ、アルキル金属としては、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が挙げられ、金属水素化物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等が挙げられ、金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
アミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピリジン等が挙げられ、金属アルコキシドとしてはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
これらの塩基性化合物のうち、反応性の観点から、含窒素金属化合物、アルキル金属、金属水素化物、金属アルコキシドが好ましく、取り扱い及び入手の容易さの観点から、金属アルコキシドがより好ましい。
塩基性化合物の使用量は、反応収率の観点から、原料となる一般式(I)で表されるカルボニル化合物に対して10〜1000モル%の範囲が好ましく、50〜500モル%の範囲がより好ましい。
反応温度は、通常−78〜110℃であり、−20〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましい。
一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールは、下記反応式(B)で示されるように、上記一般式(II)で表されるカルボニル化合物を還元して製造することができる。
このうち、R2が水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基である場合には、取り扱いの容易さの観点から。水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素リチウムが好ましい。
還元剤の使用量は特に限定されないが、原料である一般式(II)で表されるカルボニル化合物に対して0.5〜5当量用いることが好ましく、経済性の観点から0.5〜2当量使用することがより好ましい。
反応温度は特に限定されないが、−78〜150℃で行うことが好ましく、−20〜100℃で行うことがより好ましい。
周期律表第8〜11属の金属としては、具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらのうち、触媒活性の観点から、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が好ましい。
Raney型触媒(スポンジ状金属触媒)の調製は、例えば、久保松照夫、小松信一郎著、「ラネー触媒」、共立出版(1971)などの公知の方法により行うことができ、市販品を使用することもできる。
担持型触媒は、耐久性などの物理的特性を改善するために金属成分を担体に担持した触媒である。担持型触媒の調製は、沈殿法、イオン交換法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、混練法などの公知の方法により行うことができ、市販品を使用することもできる。
担体としては、例えば、炭素(活性炭)、水酸化アルミニウム、珪藻土、粘土、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア及びセリアや、ゼオライトなどのシリカ−アルミナの複合酸化物などが挙げられる。これらの中では、炭素(活性炭)、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、ジルコニア又はそれらの複合酸化物が好ましい。
触媒の使用量は特に限定されないが、原料となる一般式(II)で表されるカルボニル化合物に対して金属質量換算で0.0001〜50質量%が好ましく、0.005〜20質量%がより好ましく、0.01〜10質量%が特に好ましい。
この際の反応圧力は、通常0.1〜40MPaであり、0.2〜30MPaが好ましい。反応温度は、通常0〜400℃であり、20〜300℃が好ましい。
こうして得られたシクロヘキシルアルカノールは未精製物であっても、蒸留やカラムなどによる精製を行った後の精製物であっても香料として有用である。
本発明の一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールは、天然の花が持つクリーミーな甘さのあるフローラル香を有し、かつ優れた香気持続性を有することから、単独で又は他の成分と組み合わせて、石鹸、シャンプー、リンス、洗剤、化粧品、スプレー製品、芳香剤、香水、入浴剤等の賦香成分として使用できる。
本発明によれば、ジャスミンの花を想起させて天然の花が持つクリーミーな甘さが感じられる香気を有する、一般式(III)で表される化合物を含む香料組成物を提供することができる。
本発明の香料組成物は、一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールを含有するものであり、通常用いられる他の香料成分や所望組成の調合香料に、一般式(III)で表されるシクロヘキシルアルカノールを単独で又は2種以上を組み合わせて配合して得ることができる。
これらのうちR1としては、匂いの強さと質の観点から、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−プロピニル基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基がより好ましく、エチル基又はイソプロピル基がさらに好ましい。
R4は、炭素数1〜4の炭化水素基を示し、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基又は炭素数2〜4のアルキニル基が挙げられる。これらの具体例は前記のとおりである。
これらのうちR4としては、匂いの強さと質の観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
ただし上記一般式(III)でR1がイソプロピル基である場合には、R4はメチル基のみがふさわしい。
これらの内、R5としては、匂いの強さと質の観点から、水素原子、メチル基、エチル基又はビニル基が好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましい。
本発明の香料組成物において、シクロヘキシルアルカノールと組み合わせて用いることができる香料成分としては、特開2007−119663号公報に記載の、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類、天然精油や天然抽出物等が挙げられる。
シクロヘキシルアルカノールのシス、トランス比率はガスクロマトグラフの面積%を内部標準法により定量して質量比率として求めた。ガスクロマトグラフは、アジレント(Agilent)社の6890Nにより、溶媒としてイソプロピルアルコール、カラムとしてDB−1(30m×0.25mm×0.25μm)を用いて、官能ガスクロマトグラフは、アジレント(Agilent)社の6890Nにより、溶媒としてアセトン、カラムとしてDB−1 megabore(30m×0.53mm×0.25μm)を用いてそれぞれ以下の条件で測定を行った。
昇温条件:100℃→10℃/分 → 280℃(2.0分間保持)(合計20分)、キャリアガス:ヘリウム、流量:5.0mL/分、注入口温度:280℃、検出器(FID)温度:280℃、注入量:1μL、スプリット:100:1、内部標準物質:テトラデカン
昇温条件:100℃→3℃/分 → 300℃(10.0分間保持)(合計76.67分)、キャリアガス:ヘリウム流量:6.6mL/分、注入口温度:250℃、検出器(FID)温度:250℃、注入量:5μL、スプリット:10.0:1
(1)触媒の調製
還流冷却器を有する反応器に、水(300g)、CuSO4・5H2O(48g)、FeSO4・7H2O(59g)及び水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライトH−32、12.14g)を入れ、撹拌しながら温度を96℃に上昇させた。温度を95℃±2℃に保ちながら1時間保持した。次いでこの温度を保ちながら、Na2CO3(44.8g)を水(150g)に溶解させた溶液を約80分かけて滴下した。反応において最初青緑色の沈澱が徐々に褐色に変化し、最終的に黒色となった。滴下終了後のpHは8.95であった。温度を95℃±2℃に保ちながらCuSO4・5H2O(4.8g)、Al2(SO4)3・16H2O(46.8g)を水(109.2g)に溶解させた溶液とNa2CO3(27.6g)を水(98.2g)に溶解させた溶液を同時に滴下した。金属塩の水溶液は60分、アルカリ物質の水溶液は30分かけて滴下した。アルカリ物質の水溶液滴下後のpHは8.71、金属塩水溶液滴下後のpHは8.11であった。これにAl2(SO4)3・16H2O(23.4g)を水(53.5g)に溶解させた溶液を30分かけて滴下した。この時のpHは4.12であった。次いでNa2CO3(14.3g)を水(54.9g)に溶解させた溶液を30分かけて滴下した。更に、10質量%NaOH水溶液を滴下しpHを10.5に調整した。pHを10.5に保ちながら1時間熟成を行った。熟成終了後、反応物を吸引濾過した。濾過は極めて容易であり、濾液は無色であった。沈澱を毎回450mlの水で3回洗った後、Ba(OH)2(4.21g)を水(320g)に溶解させた溶液を加え、30分撹拌後蒸発乾固した。乾燥終了物を軽く粉砕し、750℃で1時間空気中で焼成し、所望の触媒を得た。この触媒のCu/Fe/Al/Ba/Znの原子比は1/1/1.81/0.063/0であった。
滴下口と反応液の留出口、冷却管をつけたフラスコに流動パラフィン150gと上記(1)で得られた触媒4.5gを入れて300℃、常圧で攪拌した。そこへ窒素ガス気流下、4−イソプロピル−シクロヘキサンメタノールを8時間かけて832g滴下した。同時に留出してくる反応液は830gであった。ここで反応液を分析したところ4−イソプロピル−シクロヘキサンメタノールの反応率は49%、4−イソプロピルシクロヘキサンカルバルデヒドの選択率は97%であった。得られた反応液を精留することにより純度99%の4−イソプロピルシクロヘキサンカルバルデヒドを360g得た。なお、上記反応率及び選択率は、次の式に従って算出した。
原料として4−エチルシクロヘキサンメタノール63gを用いたこと以外は製造例1と同様に脱水素反応を行った。4−エチルシクロヘキサンメタノールの反応率は56%、4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒドの選択率は85%であった。製造例1と同様に精留を行って純度99%の4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド30gを得た。
原料として4−プロピルシクロヘキサンメタノール100gを用いたこと以外は製造例1と同様に脱水素反応を行った。4−プロピルシクロヘキサンメタノールの反応率は66%、4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒドの選択率は83%であった。製造例1と同様に精留を行って純度98%の4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド40gを得た。
(1)4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルバルデヒドの製造
フラスコにカリウムtert−ブトキシド(東京化成工業株式会社製)331gとテトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製)700gを入れ0℃で数分間攪拌した後、製造例1で得られた4−イソプロピルシクロヘキサンカルバルデヒド350gを0℃下2.5時間かけて滴下した。その後、ヨードメタン(東京化成工業株式会社製)483gを0℃下3時間かけて滴下した。0℃下30分攪拌後、室温まで昇温を行い更に30分攪拌した。その反応液を水700gで3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥、濾過、濃縮を行い、アルデヒド混合物357gを得た。そのアルデヒド混合物83gを、圧力70〜150Pa、温度60〜65℃の条件で蒸留し、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド66gを純度82%、収率76%で得た。
フラスコに窒素雰囲気下でメタノール250gと1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液80gと水素化ホウ素ナトリウム(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)63gを入れ、5〜25℃で、上記の方法と同様の方法で得られた4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド250gを加えた。20〜25℃で、1.5時間攪拌を続けた後に、反応液に10質量%硫酸を加えてからエーテル抽出、重曹水での水洗、溶媒留去を行った後にシリカゲルカラムでの分画と蒸留で精製して、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール〔シス体:トランス体(質量比率)=91:9〕を純度99%、収率97%で得た。
得られた4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノールは、天然の花が持つクリーミーな甘さを有するフローラル香をはっきりとした強さで感じることができた。
(1)水素による4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルバルデヒドの還元
実施例1で得られたアルデヒド混合物(蒸留前の4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド)141g(純度71%)を、5%Ru/C 7gと混合して、0.4〜0.5MPaの水素加圧下、90℃で水素の吸収が停止するまで反応させた。反応液をろ過して触媒を分離し、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール〔シス体:トランス体(質量比率)=96:4〕を純度60%、収率84%で得た。
(1)1,4−ジエチルシクロヘキサンカルバルデヒドの製造
フラスコにカリウムtert−ブトキシド(東京化成工業株式会社製)6.7gとジクロロメタン100mlを入れ0℃で数分間攪拌した後、製造例2で得られた4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド6.0gのジクロロメタン溶液25mlを0℃下30分かけて滴下した。その後、ヨードエタン(和光純薬工業株式会社製)9.3gを0℃下35分かけて滴下した。0℃下10分攪拌後、室温まで昇温を行い更に30分攪拌した。その反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液30gで1回洗浄し、ジクロロメタンで水層を2回抽出して、硫酸マグネシウムを加えて乾燥、濾過、濃縮を行い、アルデヒド混合物7.4gを得た。そのアルデヒド混合物を、圧力510〜490Pa、温度100〜105℃の条件で蒸留し、1,4−ジエチルシクロヘキサンカルバルデヒド2.5gを純度90%、収率51%で得た。
フラスコに窒素雰囲気下でメタノール40mlと1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液3.0g、及び水素化ホウ素ナトリウム(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)0.6gを入れ、上記で得られた1,4−ジエチルシクロヘキサンカルバルデヒド1.5gを5℃で加えた。5℃で20分攪拌した後、室温で1.5時間攪拌を続けた。その後反応液に少量の10質量%硫酸を加えてからエーテル抽出、重曹水での水洗、溶媒留去を行った後にシリカゲルカラムでの分画と蒸留で精製して、1,4−ジエチルシクロヘキシルメタノール1.2g〔シス体:トランス体(質量比率)=92:8〕を純度90%、収率79%で得た。
得られた1,4−ジエチルシクロヘキシルメタノールは、ジャスミンの花を想起させて天然の花が持つクリーミーな甘さを有するフローラル香をはっきりとした強さで感じることができた。
1H-NMR(CDCl3, 400MHz, δppm) : 0.827(t, 3H, J=7.6Hz), 0.865(t,3H, J=7.6Hz), 0.978−1.183(m, 6H), 1.217(dq, 2H, J=7.6Hz), 1.289(q, 2H, J=7.6Hz), 1.533−1.575(m, 4H), 3.525(s, 2H)
(1)1−アリル−4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒドの製造
フラスコにカリウムtert−ブトキシド(東京化成工業株式会社製)11gとジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製)400gを入れ0℃で数分間攪拌した後、製造例2で得られた4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド12gのジクロロメタン溶液50mlを0℃下2.5時間かけて滴下した。その後、ブロモアリル(和光純薬工業株式会社製)11gを0℃下1.5時間かけて滴下した。0℃下30分攪拌後、室温まで昇温を行い更に60分攪拌した。その反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液50gで洗浄し、酢酸エチルで3回抽出作業をして、さらに有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。その後乾燥、濾過、濃縮を行い、アルデヒド混合物16gを得た(内標収率64%)。そのアルデヒド混合物の一部4.8gを、圧力340〜240Pa、温度100〜105℃の条件で蒸留し、1−アリル−4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド4.5gを純度97%で得た。
フラスコに窒素雰囲気下でメタノール80mlと1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液6.0g、及び水素化ホウ素ナトリウム(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)0.8gを入れ、上記で得られた1−アリル−4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド3.0gを5℃で加えた。その後の操作は実施例3(2)と同様に行った結果、1−アリル−4−エチルシクロヘキシルメタノールの内標収率は91%となった。反応生成物の一部をシリカゲルカラムと蒸留により精製して1−アリル−4−エチルシクロヘキシルメタノール0.9g〔シス体:トランス体(質量比率)=99:1〕を純度99%で得た。
得られた1−アリル−4−エチルシクロヘキシルメタノールは、甘くグリーン・フルーティ様の香気を伴うフローラル香をはっきりとした強さで感じることができた。
(1)1−メチル−4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒドの製造
フラスコにカリウムtert−ブトキシド(東京化成工業株式会社製)8gとジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製)300gを入れ0℃で数分間攪拌した後、製造例3で得られた4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド10gのジクロロメタン溶液90mlを0℃下2.5時間かけて滴下した。その後、ヨードメタン(和光純薬工業株式会社製)10gを0℃下1時間かけて滴下した。0℃下4時間攪拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液50gを加えて、水で2回洗浄して、飽和重曹水で洗浄した。その後、乾燥、濾過、濃縮を行い、アルデヒド混合物12gを得た(内標収率67%)。そのアルデヒド混合物をカラムにより精製して1−メチル−4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド4.3gを純度95%で得た。
フラスコに窒素雰囲気下でメタノール80mlと1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液6.0g、及び水素化ホウ素ナトリウム(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)1.1gを入れ、上記で得られた1−メチル−4−プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド3.8gを5℃で加えた。その後の操作は実施例3(2)と同様に行った結果、1−メチル−4−プロピルシクロヘキシルメタノールの内標収率は73%となった。反応生成物の一部をシリカゲルカラムと蒸留により精製して1−メチル−4−プロピルシクロヘキシルメタノール0.7g〔シス体:トランス体(質量比率)=92:8〕を純度99%で得た。
得られた1−メチル−4−プロピルシクロヘキシルメタノールは天然のスズランを想起させるクリーミーでグリーン様のフローラル香気を有していた。
特許文献1中の実施例2と同様の方法で得られた4−イソプロピル−1−メチル−3−シクロヘキセニルメタノール4g、5%Pd/C(53質量%含水)0.1g、イソプロパノール10mlを入れ、反応圧力0.3〜0.4MPa、30℃で18.5時間反応後、原料に対して1.0モル倍の水素が消費された時点で反応を停止し、触媒をろ過し、濃縮して反応液を得た。濃縮した反応液の組成はシス体:トランス体(質量比率)=23:77であった。得られた4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノールは、天然の花が持つクリーミーな甘さを有するフローラル香はほとんど感じられなかった。
実施例3により得られた1,4−ジエチルシクロヘキシルメタノールを官能ガスクロマトグラフィーによりシス体とトランス体の匂いをそれぞれ分析した。その結果、シス体は天然の花が持つクリーミーな甘さを有するフローラル香が強くはっきり感じられたのに対して、トランス体は天然の花が持つクリーミーな甘さは感じられなかった。
実施例3で得られたシス体:トランス体(質量比率)=92:8である1,4−ジエチルシクロヘキシルメタノールを第1表に示すように配合し、ローズ様の香料組成物を調製した。第1表中の数値は質量部である。
実施例6において、1,4−ジエチルシクロヘキシルメタノール〔シス体:トランス体(質量比率)=92:8〕の代わりに、DPG(ジプロピレングリコール)を20質量部配合した以外は同様にして香料組成物を調製した。
Claims (4)
- 一般式(II)で表されるカルボニル化合物を、一般式(I)で表されるカルボニル化合物と炭化水素化剤とを塩基性化合物の存在下で反応して得る、請求項1に記載のシクロヘキシルアルカノールの製造方法。
- 一般式(I)で表されるカルボニル化合物から一般式(II)で表されるカルボニル化合物を得る反応を、−78〜110℃で行う、請求項1又は2に記載のシクロヘキシルアルカノールの製造方法。
- 一般式(I)〜(III)において、R1がエチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基から選ばれ、一般式(I)及び(II)において、R2が水素原子及びメチル基から選ばれ、一般式(II)及び(III)において、R4がメチル基及びエチル基から選ばれ、かつR1がイソプロピル基である場合にはR4はメチル基のみである、請求項1〜3のいずれかに記載のシクロヘキシルアルカノールの製造方法。
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