JP5626987B2 - 新規脂環式アルコール - Google Patents
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Description
本発明は、調合香料原料などとして有用な脂環式アルコール、その製造方法、及び該脂環式アルコール化合物を含有する香料組成物に関する。
脂環式アルコールの中には、調合香料原料として有用なものがあることが知られている。例えば、非特許文献1には、グリーンでミューゲ様香気を持つMayol、ミューゲ様の軽いフローラル様香気を持つMugetanol、パチュリでウッディ様香気を持つPatchone等が調合香料素材として有用であることが記載されている。
中島基貴 編、「香料と調香の基礎知識」、1995年、141〜144ページ、産業図書株式会社
本発明の課題は、調合香料原料として有用な、フローラル−グリーン様の香気を有する新規脂環式アルコール化合物、その製造方法、及び当該脂環式アルコール化合物を含有する香料組成物を提供することにある。
本発明者らは、種々の化合物を合成し、その香気について検討したところ、新規化合物である化学式(1)で表される新規脂環式アルコール化合物が、爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル−グリーン様の香気を有することを見出した。
すなわち、本発明は、新規脂環式アルコール、その製造方法、及び該脂環式アルコール化合物を含有する香料組成物に関し、以下からなる。
[1]
化学式(1)で表される脂環式アルコール化合物。
[2]
化学式(1)で表わされる脂環式アルコール化合物を含有する香料組成物。
[3]
フッ化水素の存在下、化学式(2)で表される1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセンと一酸化炭素を反応させ、次いで得られた化学式(3)で表される4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルボン酸フロライドをアルコールと反応させ、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を得た後、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を還元して化学式(1)で表わされる脂環式アルコール化合物を製造する方法。
(式中Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
[1]
化学式(1)で表される脂環式アルコール化合物。
[2]
化学式(1)で表わされる脂環式アルコール化合物を含有する香料組成物。
[3]
フッ化水素の存在下、化学式(2)で表される1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセンと一酸化炭素を反応させ、次いで得られた化学式(3)で表される4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサンカルボン酸フロライドをアルコールと反応させ、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を得た後、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を還元して化学式(1)で表わされる脂環式アルコール化合物を製造する方法。
本発明の新規脂環式アルコール化合物は、爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル−グリーン様の香気を有する点で新規であり、優れた香気持続性を有するため、トイレタリー用品や石鹸、衣料用洗剤等の幅広い製品への賦香成分として有用である。また、本発明の脂環式アルコール化合物の製造方法によれば、該脂環式アルコール化合物を工業的に有利な方法で製造することが可能となる。
[化学式(1)で表される新規脂環式アルコール]
本発明の新規脂環式アルコールは化学式(1)で表される。ここで、化学式(1)に示される構造には、シクロヘキサン環の1,4位の置換の形態によりシス、トランスの異性体が存在しうるが、本発明に用いられる新規脂環式アルコールの構造としては、シス体、トランス体どちらかを単独で用いても、また、混合物として用いてもよい。
上記化学式(1)で示される、新規脂環式アルコールは爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル、グリーン様の香気を有しており、単独でまたは他の成分と組合わせて、石鹸、シャンプー、リンス、洗剤、化粧品、スプレー製品、芳香剤、香水、入浴剤等の賦香成分として使用できる。
本発明の新規脂環式アルコールは化学式(1)で表される。ここで、化学式(1)に示される構造には、シクロヘキサン環の1,4位の置換の形態によりシス、トランスの異性体が存在しうるが、本発明に用いられる新規脂環式アルコールの構造としては、シス体、トランス体どちらかを単独で用いても、また、混合物として用いてもよい。
上記化学式(1)で示される、新規脂環式アルコールは爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル、グリーン様の香気を有しており、単独でまたは他の成分と組合わせて、石鹸、シャンプー、リンス、洗剤、化粧品、スプレー製品、芳香剤、香水、入浴剤等の賦香成分として使用できる。
[香料組成物]
本発明の香料組成物は、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料に、化学式(1)で表される新規脂環式アルコールを配合して得られるものである。その配合量は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により異なるが、調合香料中に0.01〜90質量%を加えることが好ましく、0.1〜50質量%加えることがより好ましい。
本発明の新規脂環式アルコールと組み合わせて用いることができる香料成分としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類等の天然精油や天然抽出物、合成香料を挙げることができる。
本発明の香料組成物は、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料に、化学式(1)で表される新規脂環式アルコールを配合して得られるものである。その配合量は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により異なるが、調合香料中に0.01〜90質量%を加えることが好ましく、0.1〜50質量%加えることがより好ましい。
本発明の新規脂環式アルコールと組み合わせて用いることができる香料成分としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類等の天然精油や天然抽出物、合成香料を挙げることができる。
[新規脂環式アルコールの製造方法]
本発明の新規脂環式アルコール化合物製造法は、
(a)化学式(2)で表されるモノエン化合物をフッ化水素(今後HFともいう)存在下、一酸化炭素と反応させて酸フロライド(化学式(3))を得る工程(以下、「カルボニル化工程」と略すこともある)、
(b)次いでアルコールと反応させ、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を得る工程、(以下、「エステル化工程」と略すこともある)、及び
(c)得られたシクロヘキサンカルボニル化合物を還元して化学式(1)で表される脂環式アルコールを得る工程(以下、「カルボニル基の還元工程」と略すこともある)を含む。
本発明の新規脂環式アルコール化合物製造法は、
(a)化学式(2)で表されるモノエン化合物をフッ化水素(今後HFともいう)存在下、一酸化炭素と反応させて酸フロライド(化学式(3))を得る工程(以下、「カルボニル化工程」と略すこともある)、
(b)次いでアルコールと反応させ、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物を得る工程、(以下、「エステル化工程」と略すこともある)、及び
(c)得られたシクロヘキサンカルボニル化合物を還元して化学式(1)で表される脂環式アルコールを得る工程(以下、「カルボニル基の還元工程」と略すこともある)を含む。
<(a)カルボニル化工程>
モノエン化合物のカルボニル化反応は、HFの存在下で一酸化炭素の加圧下に実施する。これにより、式(3)で表される脂環式カルボニル化合物が、種々の副生物(他の異性体を含む)とともに得られる。
モノエン化合物のカルボニル化反応は、HFの存在下で一酸化炭素の加圧下に実施する。これにより、式(3)で表される脂環式カルボニル化合物が、種々の副生物(他の異性体を含む)とともに得られる。
[モノエン化合物]
一般式(2)で示されるモノエン化合物は、例えば対応するジエン化合物を水素化触媒により部分水素化することで、合成することもできる。
合成されたモノエン化合物は、ろ過等による触媒の除去や蒸留等により精製を行った後使用する。
一般式(2)で示されるモノエン化合物は、例えば対応するジエン化合物を水素化触媒により部分水素化することで、合成することもできる。
合成されたモノエン化合物は、ろ過等による触媒の除去や蒸留等により精製を行った後使用する。
(モノエン化合物の合成)
モノエン化合物の合成に用いられるジエン化合物(以下、「ジエン化合物」と略すこともある)としては、六員環骨格を有する炭化水素であって、該六員環骨格の1、4位のみにそれぞれメチルとイソプロピルの炭化水素基を有し、分子内に2つの二重結合を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、脂環式炭化水素類、テルペン系炭化水素類などが例示され、好ましくはリモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、イソリモネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、メノゲン、テルピノーレン、ジペンテンが例示され、より好ましくはリモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、テルピノーレン、ジペンテンが例示され、更に好ましくはテルピノーレンが例示される。
モノエン化合物の合成に用いられるジエン化合物(以下、「ジエン化合物」と略すこともある)としては、六員環骨格を有する炭化水素であって、該六員環骨格の1、4位のみにそれぞれメチルとイソプロピルの炭化水素基を有し、分子内に2つの二重結合を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、脂環式炭化水素類、テルペン系炭化水素類などが例示され、好ましくはリモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、イソリモネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、メノゲン、テルピノーレン、ジペンテンが例示され、より好ましくはリモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、テルピノーレン、ジペンテンが例示され、更に好ましくはテルピノーレンが例示される。
ジエン化合物の水素化触媒は、不飽和結合の水素化に用いられる通常の触媒であれば特に限定されないが、周期表第8〜11属金属から選ばれる少なくとも1種を含有する触媒が好ましい。
具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金および金のうちから選ばれる少なくとも1種を含有する触媒が挙げられる。
水素化触媒は、固体触媒でも均一系触媒でも良いが、反応物との分離性の観点から固体触媒が好ましい。
水素化触媒は、固体触媒でも均一系触媒でも良いが、反応物との分離性の観点から固体触媒が好ましい。
固体触媒としては、非担持型金属触媒や担持金属触媒などが例示され、非担持型金属触媒としては、(1)ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅などのラネー触媒(2)白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの酸化物やコロイド触媒が好ましい。
担持金属触媒としては、マグネシア、ジルコニア、セリア、ケイソウ土、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニアなどの担体に鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金のうち少なくとも1種を担持あるいは混合したものが例示され、銅−クロム触媒(Adkins触媒)、銅−亜鉛触媒、銅−鉄等の銅触媒を担体に担持した担持銅触媒、Pt/CやPt/アルミナ等の担持白金触媒、Pd/CやPd/アルミナ等の担持パラジウム触媒、Ru/CやRu/アルミナ等の担持ルテニウム触媒、または、Rh/CやRh/アルミナ等の担持ロジウム触媒等が好ましい。これらのうち、反応活性、および選択性の点で、銅を含有する触媒を使用することがより好ましい。
また、銅系触媒を用いる場合は、ジエン化合物の反応前にヘプタン等の溶媒を用いて、140〜200℃、水素圧1〜3MPa下で1〜3時間の活性化を行うことにより、反応活性、および選択性を改善することができる。
また、銅系触媒を用いる場合は、ジエン化合物の反応前にヘプタン等の溶媒を用いて、140〜200℃、水素圧1〜3MPa下で1〜3時間の活性化を行うことにより、反応活性、および選択性を改善することができる。
水素化触媒の使用量は触媒の種類によって異なるが、原料であるジエン化合物に対して、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%が適当である。
水素の圧力は、常圧、加圧下のいずれにおいても行うことができるが、通常、0.1〜4.0MPaが挙げられ、好ましくは0.1〜3.0MPa、更に好ましくは0.1〜2.0MPaの範囲である。
水素化反応は無溶媒で行うことができるが溶媒を使用しても良く、溶媒として水、ギ酸、酢酸などの有機酸類、ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類あるいはこれらの混合物が挙げられる。
水素化反応で溶媒を使用する際の量は、原料であるジエン化合物に対し、通常0.1〜30質量倍の範囲を用いる事ができるが、好ましくは0.2〜20質量倍が挙げられる。
水素化反応の反応温度は、通常−90℃〜200℃で行うことができるが、好ましくは20℃〜150℃、さらに好ましくは20℃〜100℃が挙げられる。
水素化反応の形式は、接触水素化反応が可能であれば特に限定されるものでなく、通常用いられる公知のものでよい。例えば触媒を流体で流動化させて接触水素化反応を行う懸濁床反応器、触媒を充填固定化し流体を供給することで接触水素化反応を行う固定床反応器等が挙げられる。
[一酸化炭素]
本発明のカルボニル化工程に使用する一酸化炭素は、窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていても良いが、一酸化炭素分圧として0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPaの範囲で実施する。一酸化炭素分圧が0.5MPaより高ければ、カルボニル化反応が十分に進行し、不均化や重合等の副反応が併発せず、高収率に目的物である脂環式カルボニル化合物を得ることができる。また一酸化炭素分圧は5MPa以下であることが設備負荷の観点から好ましい。
本発明のカルボニル化工程に使用する一酸化炭素は、窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていても良いが、一酸化炭素分圧として0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPaの範囲で実施する。一酸化炭素分圧が0.5MPaより高ければ、カルボニル化反応が十分に進行し、不均化や重合等の副反応が併発せず、高収率に目的物である脂環式カルボニル化合物を得ることができる。また一酸化炭素分圧は5MPa以下であることが設備負荷の観点から好ましい。
[フッ化水素]
カルボニル化工程に使用するHFは、反応の溶媒であり、触媒であり、かつ副原料となるため、実質的に無水のものを用いる。HFの使用量は、原料のモノエン化合物に対して4〜15モル倍、好ましくは6〜10モル倍である。HFのモル比が4モル倍以上あれば、カルボニル化反応は効率良く進行し、不均化や重合等の副反応を抑制でき、高収率で目的物である脂環式カルボニル化合物を得ることができる。また、原料コスト及び生産性の観点から15モル倍以下のHFの使用が好ましい。
カルボニル化工程に使用するHFは、反応の溶媒であり、触媒であり、かつ副原料となるため、実質的に無水のものを用いる。HFの使用量は、原料のモノエン化合物に対して4〜15モル倍、好ましくは6〜10モル倍である。HFのモル比が4モル倍以上あれば、カルボニル化反応は効率良く進行し、不均化や重合等の副反応を抑制でき、高収率で目的物である脂環式カルボニル化合物を得ることができる。また、原料コスト及び生産性の観点から15モル倍以下のHFの使用が好ましい。
[反応条件]
カルボニル化反応の形式には特に制限なく、回分式、半連続式、連続式等の何れの方法でも良い。
カルボニル化反応の形式には特に制限なく、回分式、半連続式、連続式等の何れの方法でも良い。
カルボニル化反応の反応温度は−50℃〜30℃、好ましくは−40℃〜0℃、特に好ましくは−30〜−25℃の範囲で実施する。カルボニル化反応の反応温度が30℃以下、特に−25℃以下であれば選択性が良好である。また、反応速度の観点から−50℃以上で行なうことが好ましい。
<(b)エステル化工程>
カルボニル化反応で生成した酸フロライド反応液は、炭素数1〜4のアルコールと反応させて脂環式エステル化合物とする。反応装置の腐食性の観点から、この際、酸フロライド反応液に所定量のアルコールを添加していく方法が好ましい。
また、カルボニル化反応で生成した酸フロライド反応液は、該エステル化工程の代わりに、(I)過剰のHFを留去した後、蒸留等の常法により精製し、酸フロライドのまま次工程であるカルボニル基の還元工程の原料として用いることもできるし、(II)過剰のHFを留去した後、加水分解させて相当するカルボン酸を得て、該カルボン酸を蒸留等の常法により精製後に次工程であるカルボニル基の還元工程の原料として用いることもできる。
(式中Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
カルボニル化反応で生成した酸フロライド反応液は、炭素数1〜4のアルコールと反応させて脂環式エステル化合物とする。反応装置の腐食性の観点から、この際、酸フロライド反応液に所定量のアルコールを添加していく方法が好ましい。
また、カルボニル化反応で生成した酸フロライド反応液は、該エステル化工程の代わりに、(I)過剰のHFを留去した後、蒸留等の常法により精製し、酸フロライドのまま次工程であるカルボニル基の還元工程の原料として用いることもできるし、(II)過剰のHFを留去した後、加水分解させて相当するカルボン酸を得て、該カルボン酸を蒸留等の常法により精製後に次工程であるカルボニル基の還元工程の原料として用いることもできる。
エステル化工程で用いられる具体的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールが挙げられる。これらの内、反応性の観点からメタノールまたはエタノールが好ましい。
アルコールの使用量は、カルボニル化工程の原料モノエン化合物に対して0.5〜2.0モル倍、好ましくは0.8〜1.5モル倍である。アルコールのモル比が0.5モル倍以上であれば、未反応フロライドの残量が少なく、後工程での装置腐食が小さいことから好ましく、アルコール分子間からの脱水反応抑制による装置腐食抑制の観点から2.0モル倍以下が好ましい。
酸フロライドとアルコールとの反応温度は、一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物の分解抑制の観点から−40℃以上20℃以下である。−40℃より低い場合にはエステル化速度が遅く収率が低下する。また、20℃より高い場合にはエステルの分解や、添加したアルコールの脱水反応を起こすなどにより系内に水を副生する危険性が増大する。
得られた一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物からHFを留去した後、蒸留等の常法により精製する。
<(c)カルボニル基の還元工程>
エステル化工程で得られた一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物の還元は、通常、カルボニル化合物をアルコールに還元する際に用いられる方法であればいずれも使用でき、特に限定されない。例えば第5版 実験化学講座14巻(丸善株式会社)11〜27頁記載のヒドリド還元、金属および金属塩による還元、接触水素化などをいずれも用いることができるが、経済性の観点から接触水素化による還元が好ましい。
エステル化工程で得られた一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物の還元は、通常、カルボニル化合物をアルコールに還元する際に用いられる方法であればいずれも使用でき、特に限定されない。例えば第5版 実験化学講座14巻(丸善株式会社)11〜27頁記載のヒドリド還元、金属および金属塩による還元、接触水素化などをいずれも用いることができるが、経済性の観点から接触水素化による還元が好ましい。
シクロヘキサンカルボニル化合物の接触水素化に用いられる触媒は、カルボニル化合物の水素化に用いられる通常の触媒であれば特に限定されないが、周期表第8〜11属金属から選ばれる少なくとも1種を含有する触媒が好ましい。
具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金および金から選ばれる少なくとも1種を含有する接触水素化触媒が挙げられる。
接触水素化触媒は、固体触媒でも均一系触媒でも良いが、反応物との分離性の観点から固体触媒が好ましい。固体触媒としては、非担持型金属触媒や担持金属触媒などが例示される。
非担持型金属触媒としては、(1)ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅などのラネー触媒(2)白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの酸化物やコロイド触媒が好ましい。
担持金属触媒としては、マグネシア、ジルコニア、セリア、ケイソウ土、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、またはチタニアなどの担体に鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金のうち少なくとも1種を担持あるいは混合したものが例示され、銅−クロム触媒(Adkins触媒)、銅−亜鉛触媒または銅−鉄等の担持銅触媒、Pt/CやPt/アルミナ等の担持白金触媒、Pd/CやPd/アルミナ等の担持パラジウム触媒、Ru/CやRu/アルミナ等の担持ルテニウム触媒、または、Rh/CやRh/アルミナ等の担持ロジウム触媒等が好ましい。これらのうち、反応活性の点で、少なくともニッケルおよび銅から選ばれる一種を含有する触媒使用がより好ましい。
接触水素化触媒の使用量は触媒の種類によって異なるが、原料であるシクロヘキサンカルボニル化合物に対して、1〜100質量%、好ましくは3〜30質量%が適当である。
[溶媒]
本発明のカルボニル基の還元工程は無溶媒で行うことができるが、溶媒を使用しても良い。
本発明のカルボニル基の還元工程は無溶媒で行うことができるが、溶媒を使用しても良い。
本発明のカルボニル基の還元工程の溶媒として水、ギ酸、酢酸などの有機酸類、ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、無溶媒、ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類あるいはこれらの混合物を用いることが好ましい。
本発明のカルボニル基の還元工程で溶媒を使用する際の量は、エステル化工程で得られた一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物に対し、通常0〜30質量倍の範囲を用いる事ができるが、好ましくは0〜20質量倍が挙げられる。
[反応条件]
本発明のカルボニル基の還元工程における水素の圧力は、反応平衡をアルコール側に移動させるという観点からは高圧ほど好ましいが、設備コストを考慮して、1〜30MPaが好ましく、2〜20MPaがより好ましく、5〜10MPaが更に好ましい。
本発明のカルボニル基の還元工程における水素の圧力は、反応平衡をアルコール側に移動させるという観点からは高圧ほど好ましいが、設備コストを考慮して、1〜30MPaが好ましく、2〜20MPaがより好ましく、5〜10MPaが更に好ましい。
本発明のカルボニル基の還元工程における反応温度は、十分な反応速度を得るという観点より、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。また、生成する脂環式アルコールと一般式(4)で表されるシクロヘキサンカルボニル化合物とのエステル交換反応を抑制する観点から300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、250℃以下が更に好ましい。
本発明のカルボニル基の還元工程の形式は、特に限定されない。接触水素化により行う場合においても、接触水素化反応が可能であれば特に限定されるものでなく、通常用いられる公知のものでよい。例えば触媒を流体で流動化させて接触水素化反応を行う懸濁床反応器、触媒を充填固定化し流体を供給することで接触水素化反応を行う固定床反応器等が挙げられる。
反応中に炭素数1〜4のアルコールが副生する。反応はこれらを存在させたまま行うことができるが、反応中に連続的あるいは断続的にこれらを除去しながら行うこともできる。
このようにして得られた脂環式アルコール生成物から水素化触媒を分離したのち、蒸留などの常法に従い精製することにより、高純度の化学式(1)で表される新規脂環式アルコール化合物を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において“%”は、特に断らない限り質量%を意味する。
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
モノエン化合物と脂環式アルコールを分析する場合、ガスクロマトグラフィーは、「GC−17A」(商品名;(株)島津製作所製)と、キャピラリーカラムとして「HR−1」(商品名;信和化工(株)製;0.32mmφ×25m)を用いた。昇温条件は100℃から250℃まで2℃/min.で昇温した。
モノエン化合物と脂環式アルコールを分析する場合、ガスクロマトグラフィーは、「GC−17A」(商品名;(株)島津製作所製)と、キャピラリーカラムとして「HR−1」(商品名;信和化工(株)製;0.32mmφ×25m)を用いた。昇温条件は100℃から250℃まで2℃/min.で昇温した。
シクロヘキサンカルボニル化合物を分析する場合、ガスクロマトグラフィーは、「GC−17A」(商品名;(株)島津製作所製)と、キャピラリーカラムとして「DBWAX」(商品名;J&W製;0.32mmφ×30m×0.25μm)を用いた。昇温条件は100℃から250℃まで5℃/min.で昇温した。
ナックドライブ式撹拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を制御できる内容積5Lのステンレス製オートクレーブに、Cu−Cr触媒(日揮触媒化成(株)製、商品名「N−203S」)を50.0g、ヘプタン(和光純薬工業(株)製;特級)を500.0g仕込み、170℃、水素圧2MPa下で1時間の活性化を行った。
冷却後、テルピノーレン(和光純薬工業(株)製;特級)を500.0g仕込み、110℃、水素圧2MPa、8時間攪拌して水素化反応を行った。反応液を濾過して触媒を除き、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度22.5%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度10.2%、ヘプタン濃度46.5%含有反応液を980.0g得た(収率44.2%、テルピノーレン基準)。
得られた液をエバポレーターにより低沸物を除去した後、理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度118℃、真空度200torr)、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度61.6%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度31.0%の混合物が、主留部分として、282.0g得られた(収率34.8%、テルピノーレン基準)。
冷却後、テルピノーレン(和光純薬工業(株)製;特級)を500.0g仕込み、110℃、水素圧2MPa、8時間攪拌して水素化反応を行った。反応液を濾過して触媒を除き、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度22.5%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度10.2%、ヘプタン濃度46.5%含有反応液を980.0g得た(収率44.2%、テルピノーレン基準)。
得られた液をエバポレーターにより低沸物を除去した後、理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度118℃、真空度200torr)、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度61.6%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度31.0%の混合物が、主留部分として、282.0g得られた(収率34.8%、テルピノーレン基準)。
<カルボニル化工程>
ナックドライブ式撹拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を制御できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いて実験を行った。
まずオートクレーブ内部を一酸化炭素で置換した後、無水フッ化水素90g(4.5モル)を導入し、液温−30℃とした後、一酸化炭素にて2MPaまで加圧した。
反応温度を−30℃に保持し、かつ反応圧力を2MPaに保ちながら、調製例1で調製した反応液のヘプタン溶液(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度32.0%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度16.1%、ヘプタン濃度51.9%)277.5g(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン:0.64モルを含有)をオートクレーブ上部より供給してカルボニル化反応を行った。供給終了後、一酸化炭素の吸収が認められなくなるまで約10分間撹拌を継続した。
ナックドライブ式撹拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を制御できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いて実験を行った。
まずオートクレーブ内部を一酸化炭素で置換した後、無水フッ化水素90g(4.5モル)を導入し、液温−30℃とした後、一酸化炭素にて2MPaまで加圧した。
反応温度を−30℃に保持し、かつ反応圧力を2MPaに保ちながら、調製例1で調製した反応液のヘプタン溶液(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン濃度32.0%、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサン濃度16.1%、ヘプタン濃度51.9%)277.5g(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン:0.64モルを含有)をオートクレーブ上部より供給してカルボニル化反応を行った。供給終了後、一酸化炭素の吸収が認められなくなるまで約10分間撹拌を継続した。
<エステル化工程>
引き続いて、反応温度を−30℃に保持しながら、メタノールをオートクレーブ上部より30.9g(0.96モル)供給して、撹拌下にて1時間エステル化を行った。
反応液をオートクレーブ底部より氷水中に抜き出し、油相と水相を分離した後、油相を2%苛性ソーダ水溶液100mlで2回,蒸留水100mlで2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの異性体比率が62.8%、その他異性体が37.2%である混合物が得られた。
引き続いて、反応温度を−30℃に保持しながら、メタノールをオートクレーブ上部より30.9g(0.96モル)供給して、撹拌下にて1時間エステル化を行った。
反応液をオートクレーブ底部より氷水中に抜き出し、油相と水相を分離した後、油相を2%苛性ソーダ水溶液100mlで2回,蒸留水100mlで2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの異性体比率が62.8%、その他異性体が37.2%である混合物が得られた。
得られた液をエバポレーターにより低沸物を除去した後、理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度139℃、真空度60torr)、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの異性体比率が74.0%、その他の異性体が26.0%であるエステル混合物が、主留部分として、102.9g得られた(収率59.7モル%、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキセン基準)。
ステンレス製オートクレーブに、2.5gのアルミナに担持した銅−亜鉛触媒(日揮触媒化成製)、50.0gの前記主留部分で得られたエステル混合物(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの異性体比率が74.0%、その他の異性体が26.0%を含む)を入れ、無溶媒で水素を流通させながら10MPaの水素圧下、260℃で20時間攪拌して還元反応を行った。
反応液を濾過して触媒を除き、(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル)メタノール73.5%、その他の異性体が26.5%含有する製品(混合物)を34g製造した((1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル)メタノールの収率79.2モル%、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸メチル基準)。
得られた液をエバポレーターにより低沸物を除去した後、理論段数50段の精留塔を使用して、精留により主生成物を単離したところ、得られた留分は、純度92.0%であり、爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル−グリーン様の香気を有していた。GC−MSで分析した結果、目的物の分子量170を示した。さらに、重クロロホルム溶媒中での1H−NMRのケミカルシフト値(δppm,TMS基準)は、3.65(br, 1H) 、3.45(s, 2H)、 1.81(m, 1H)、 1.61(m, 1H)、1.56(m, 2H)、1.52 (m, 2H)、1.31(m, 2H)、1.27(m, 2H)、0.96(d, 3H)、0.83(d, 6H)であったことから式(1)の(1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル)メタノールであると同定した。
<実施例2>フルーツタイプの香料組成物
表1に示す組成を持つ香料組成物95質量部に、実施例1で得られた化学式(1)の化合物を5質量部加えることにより、パイナップルを想起させ爽やかな甘さを特徴とするフルーツタイプの香料組成物を得ることができた。
表1に示す組成を持つ香料組成物95質量部に、実施例1で得られた化学式(1)の化合物を5質量部加えることにより、パイナップルを想起させ爽やかな甘さを特徴とするフルーツタイプの香料組成物を得ることができた。
本発明の新規脂環式アルコールは、爽やかでフレッシュ感のある優れたフローラル−グリーン様の香気を有する点で新規であり、優れた香気持続性を有するため、トイレタリー用品や石鹸、衣料用洗剤等の幅広い製品への賦香成分として有用である。また、本発明の脂環式アルコールの製造方法によれば、該脂環式アルコールを工業的に有利な方法で製造することが可能となる。
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