JP2014047214A - メントールを調製するための方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、チモールを水素化してメントンとし、それに続けてさらなる水素化を行ってメントール(D,L−メントール)を得ることによる、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール(メントール)を調製するための方法に関する。
2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノールは3個のステレオジェン中心を有しており、そのため、8種の立体異性体(D,L−メントール、D,L−ネオメントール、D,L−イソメントール、およびD,L−ネオイソメントール)が得られる。
天然に存在する環状テルペンアルコールの中でも、ハッカ油の主成分でもあるL−メントールは、その清涼効果および爽快効果のために、特別な地位を占めている。そのため、L−メントールは、芳香剤または香味料として使用され、医薬品産業において使用されている。したがって、それが、メントールの立体異性体の内で経済的に最も重要なものである。そのため一般的な目的は、反応条件および触媒を、可能な限り大量のD,L−メントールが形成されるように適切に選択することによって、水素化を実施することであった。
成分の沸点がわずかしか違わなかったり、さらには共沸混合物を形成したりするような多くの物質混合物は、通常の精留では、まったく不可能ではないが、分離するのが極めて困難である。このことは、2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキサノールのジアステレオマーを、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノールの少なくとも2種の相互にジアステレオマー的な関係にある化合物を含む物質混合物から分離することにもあてはまるが、その典型は、チモールの水素化またはそれに続く後処理工程の際に生成するものである。特に、ジアステレオマーのイソメントールとメントールとの分離は、それら2種の化合物が相互に対して低い比揮発度しか有していないために、極めて不十分にしかできず、さらにエネルギーの注入量も高くなる。
D,L−イソメントールの沸点(218.6℃(1013hPa):75〜78℃(3.3hPa))とD,L−メントールの沸点(216.5℃(1013hPa):75〜78℃(3.3hPa))とは、相互に非常に近い。そのために、個々のメントール異性体を蒸留分離する際の塔の分離効率は、特に、D,L−メントール対D,L−イソメントールの比率によって決まってくる。蒸留分離の際のD,L−メントールの空時収率を高くするためには、分離するべき混合物の中のD,L−メントールの含量が極端に高いと同時に、それにともない、D,L−イソメントール含量が極端に低いこともまた必要とされる。したがって、所定の蒸留塔におけるメントールの収率は、D,L−メントール対D,L−イソメントールの出発比率によって実質的に決まる。
D,L−メントールを製造するためには、少なくとも1個の二重結合を有するメンタンの炭素骨格を有し、その3位に酸素置換を有する化合物、たとえばチモールを、水素を用い固定触媒床の上で連続プロセスで水素化させるか、および/または固定触媒床の上でメントールの立体異性体を転位させることが公知である。
(特許文献1)には、少なくとも1個の二重結合を有するメンタンの炭素骨格を有し、その3位に酸素置換を有する化合物を、コバルト−マンガン触媒床の上で、170℃〜220℃の温度と25barを超える、好ましくは200barを超える圧力で水素化するための方法が記載されている。その実施例においては、180℃〜210℃の温度と200barを超える圧力とが採用されて、8種の立体異性体のメントール類の混合物が得られているが、それらは、59.5〜59.9%のラセミ体のD,L−メントール、および10.6〜10.8%のD,L−イソメントールからなっている。メントール/イソメントール比率の最大値は5.7である。銅を用いてそのコバルト−マンガン触媒を変性することによって、D,L−メントール含量が57.6%、D,L−イソメントール含量が9.2%のメントール混合物が得られたが、これは、約6.3のメントール/イソメントール比率に相当する。しかしながら、そのようにして得られた混合物には、再利用することが不可能な炭化水素の形態の望ましくない副生物が4〜5%含まれている。
(特許文献2)および(特許文献3)には、少なくとも1個のC=C二重結合を有するメンタンの炭素骨格を有し、その3位に酸素置換を有する芳香族もしくは部分水素化環状化合物の水素化を、活性成分としてのパラジウム、ルテニウムもしくはロジウムまたはそれらの元素の混合物ならびに助触媒としてのアルカリ金属の水酸化物および/または硫酸塩(それぞれの場合において担体に適用さており、その担体は希土類およびマンガンからの金属を用いてドープされている)を含む固定床触媒の上で水素を用いて実施することが可能であることが開示されている。その実施例においては、180〜240℃の温度と270〜300barの圧力とが採用されていた。この場合、約52〜57%のD,L−メントールと11.5〜14.8%のD,L−イソメントールを形成するメントール混合物が得られたが、これは、3.6〜4.4のメントール/イソメントール比率に相当する。
(特許文献4)には、酸化コバルトもしくは水酸化コバルト、酸化マンガンもしくは水酸化マンガン、およびアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物の非担持な、圧縮粉体からなる触媒が開示されており、それらは、150℃〜230℃の温度と25〜350barの圧力とで使用されている。
l−メントールの立体異性体の転位については、(特許文献5)に記載がある。温度200〜350℃、水素圧力50〜350bar、好ましくは100〜300barで、連続プロセス中、触媒上でD−メントールをラセミ化および異性化させるが、ここでその触媒は、担体を含まない、水酸化ニッケルもしくは酸化ニッケル、水酸化マンガンもしくは酸化マンガン、およびアルカリ土類金属の水酸化物もしくは酸化物の圧縮粉体からなっている。この場合、最大で59.8%のD,L−メントールからなるメントール混合物が得られた。
(特許文献6)には、銅クロマイト、コバルトおよびニッケルの群からの水素化触媒の存在下に、オートクレーブ中260〜280℃、500〜1300p.s.i.g.(34〜90bar)で、水素を用いたメントールの立体異性体の異性化反応を実施して、D,L−メントールを得ることが開示されている。そのようにして得られた混合物には、約10〜12%のD,L−イソメントールと共に、60〜64%のD,L−メントール含量を有していた。
(特許文献7)には、温度勾配を有する固定触媒床上におけるチモールの低圧水素化の記載があるが、直列に接続された5本の管型反応器の最初の2本が180℃に、および下流側の3本の管型反応器が80〜90℃に加熱されている。希土類からの金属およびマンガンを用いてドープされた担体の上に、活性成分としてのルテニウムおよび助触媒としてのアルカリ金属水酸化物を含む触媒を用いると、3barの圧力で、64.4重量%のメントールおよび12.1%のイソメントールを含むメントール異性体混合物を得ることが可能であったが、それは、5.3のメントール/イソメントール比率に相当している。D,L−ネオメントール、D,L−イソメントール、およびD,L−メントールの水素−飽和混合物を異性化反応させると、標準圧力で、65.3%のD,L−メントールと12.1%のイソメントールの組成を有する異性体混合物が得られた。この低圧プロセスにおいては、約65%の高いメントール含量を達成することが可能である。しかしながら、メントール/イソメントール比率の最大値は5.4である。
ここで、(特許文献8)には、改良された方法が開示されている。そこでは、典型的には約55%のD,L−メントールを含む異性体混合物から、簡単な担持ルテニウム触媒を用いた異性化の手段により、メントールに富んだ混合物を得ることができるが、それには最高67.3%までのD,L−メントールとわずか8.2%のD,L−イソメントールが含まれ、すなわち、メントール/イソメントールの比率が最大で8.1である。(特許文献8)にはさらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラート、酸化物、および水酸化物を用いて、それらの触媒を再生することが可能であることが開示されている。
したがって、公知の方法すべてにおける一般的態様では、それらがD,L−メントールを最大比率で約60%しか与えず、少なくとも8.2%のD,L−イソメントールを生成し、最大のメントール/イソメントールの比率が8.1にしかならない。
したがって、本発明の目的は、理想的にはゼロあるいは極めて少量のD,L−イソメントールしか生成せず、高いメントール/イソメントール比率が可能となり、それと同時に望ましくない副生物の生成を大幅に回避する、高収率でD,L−メントールを調製するための、選択的でかつ工業的にシンプルな方法を提供することである。
驚くべきことには、その目的は、2段の水素化によって達成することが可能となったが、そこでは、その第一の選択的水素化において、チモールを転化させて、ケトンであるイソメントン/メントンとし、
かつ、それら2種のケトンを蒸留分離した後に、そうして得られたメントンを再度水素化させる。
本発明は、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール(メントール)を調製するための方法であって、
a)元素周期律表の第VIIIb族(鉄−白金族)の元素の群、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはPdから選択される触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、水素を用いてチモールを水素化し、
b)第VIIIb族(鉄−白金族)、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはPdから選択される、担持触媒もしくは非担持触媒としての、触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、a)から単離した2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を、水素を用いて水素化して、メントールを生成させ、
c)メントールと同時に生成したネオメントールを分離し、かつ
e)次いで、場合によっては、ネオメントールからメントールへの異性化を実施する、
ことを特徴とする方法を提供する。
a)元素周期律表の第VIIIb族(鉄−白金族)の元素の群、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはPdから選択される触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、水素を用いてチモールを水素化し、
b)第VIIIb族(鉄−白金族)、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはPdから選択される、担持触媒もしくは非担持触媒としての、触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、a)から単離した2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を、水素を用いて水素化して、メントールを生成させ、
c)メントールと同時に生成したネオメントールを分離し、かつ
e)次いで、場合によっては、ネオメントールからメントールへの異性化を実施する、
ことを特徴とする方法を提供する。
本発明による方法の好ましい実施態様においては、工程a)および/またはb)は、60〜200℃、特に好ましくは60〜120℃の温度と、少なくとも1.1bar、好ましくは1.1超〜325bar、特に好ましくは2〜100bar、極めて特に好ましくは10〜30barの圧力とで実施する。
本発明の好ましい実施態様においては、工程a)において、1molのチモールあたり2〜150倍モル過剰の水素を使用する。
本発明による方法の好ましい実施態様においては、工程a)においてメントンを調製するための触媒は、担持触媒または非担持触媒、特に好ましくは担持触媒として使用する。
好ましい担体物質は、金属酸化物および活性炭である。特に好ましいのは、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2または硫酸塩、その中では好ましくはBaSO4、またはそれらの混合物、および活性炭である。極めて特に好ましいのは、Al2O3および活性炭、BaSO4、Al2O3および/またはシリカである。本発明のさらに特に好ましい実施態様においては、その担体物質が、Al2O3およびシリカおよび/または活性炭で作られている。
担体物質が、少なくとも100m2/g、好ましくは少なくとも160m2/g、特に好ましくは少なくとも180m2/gのBET表面積を有しているのが好ましい。特に好ましいのは、さらに、少なくとも50nmの細孔径を有するマクロポーラス細孔を高い割合で有し、かつ少なくとも300mm3/g、好ましくは少なくとも600mm3/gの細孔容積を有する、酸化アルミニウムである。
担体物質を基準にした触媒の割合は、好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは2〜5重量%である。
極めて特に好ましいのは、2〜5重量%の割合のパラジウムを含むAl2O3およびシリカをベースとした担体物質である。
それらの触媒は、標準的な市販されている触媒であって、たとえばHeraeus Materials Technology GmbH & Co.KGまたはJohnson Matthey Plcから入手することが可能である。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、工程a)が溶媒中で実施される。
好ましい溶媒は、1〜10個の炭素原子を有する環状、分岐状および非分岐状のアルコール、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族および環状エーテル、および/または5〜12個の炭素原子を有する脂肪族および脂環族炭化水素、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ヘキサン、ヘプタン、および/または石油エーテルである。
特に好ましいのは、シクロヘキサンである。
チモール対溶媒の比率は、好ましくは1:0から1:20までである。
本発明のさらなる実施態様においては、工程a)において使用した触媒をリサイクルさせることができる。この目的のためには、連続流通式の反応器、好ましくは流動床反応器または固定触媒床を有する反応器を使用するのが好ましい。
工程a)において生成するメントンは、温度50〜150℃での蒸留によって分離するのが好ましい。イソメントンおよび少しの割合の副生物を含む蒸留塔底は、好ましくは戻して、ケト−エノール互変異性を介してイソメントン/メントンの熱力学的平衡物に転化させ、再度蒸留することによって分離して、メントンとイソメントンにする。
ケト−エノール互変異性を達成させるのに適した触媒は、アルミニウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、およびケイ素の元素の酸化物および/または水酸化物が好ましい。ここで特に好ましいのは、塩基性酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムである。
ケト−エノール互変異性を達成させるために使用される触媒は、標準的な市販の触媒であり、それらは、たとえばMerck KGから、またはLanxess Deutschland GmbHから入手可能である。
イソメントン/メントンの熱力学的平衡物へのケト−エノール互変異性反応は、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは20〜75℃の温度で実施する。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、この転位反応(ケト−エノール互変異性)を溶媒中で実施する。
好ましい溶媒は、1〜10個の炭素原子を有する環状、分岐状および非分岐状のアルコール、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族および環状エーテル、および/または5〜12個の炭素原子を有する脂肪族および脂環族炭化水素、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ヘキサン、ヘプタン、および/または石油エーテルである。
特に好ましいのは、シクロヘキサンである。
チモール対溶媒の比率は、好ましくは1:0から1:20までである。
さらなる水素化工程(工程b)においては、担持触媒もしくは非担持触媒として、第VIIIb族(鉄−白金族)、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはRhから選択される触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、a)から単離されたメントンを、水素を用いて水素化して、メントールを得るが、これは、ネオメントールとの混合物の形で生成する。
次いで、未反応のネオメントールを戻して、エピマー化/異性化反応で転化させてメントールとすることも可能である。
本発明の好ましい実施態様においては、工程b)において、1molのメントンあたり2〜150倍モル過剰の水素を使用する。
本発明による方法の好ましい実施態様においては、メントンを調製するための触媒(工程b)は、担持触媒または非担持触媒、特に好ましくは担持触媒として使用する。
好ましい担体物質は、金属酸化物および活性炭である。特に好ましいのは、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2および硫酸塩、その中では好ましくはBaSO4、またはそれらの混合物、および活性炭である。極めて特に好ましいのは、Al2O3、活性炭、BaSO4、および/またはシリカである。本発明のさらに特に好ましい実施態様においては、その担体物質が、特に好ましくは、Al2O3およびシリカおよび/または活性炭で作られている。
その担体物質が、少なくとも100m2/g、好ましくは少なくとも160m2/g、特に好ましくは少なくとも180m2/gのBET表面積を有しているのが好ましい。特に好ましいのは、さらに、少なくとも50nmの細孔径を有するマクロポーラス細孔を高い割合で有し、かつ少なくとも300mm3/g、好ましくは少なくとも600mm3/gの細孔容積を有する、酸化アルミニウムである。
担体物質を基準にした触媒の割合は、好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは2〜5重量%である。
極めて特に好ましいのは、2〜5重量%の割合のルテニウムを含むAl2O3から作られた担体物質である。
触媒は、標準的な市販の触媒であり、それらは、たとえばAlfa Aesar GmbHから入手可能である。
水素化の際の温度は、好ましくは60〜200℃、特に好ましくは60〜120℃である。
水素化の際の圧力は、好ましくは少なくとも1.1bar〜325bar、特に好ましくは2〜100barである。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、工程c)が溶媒中で実施される。
好ましい溶媒は、1〜10個の炭素原子を有する環状、分岐状および非分岐状のアルコール、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族および環状エーテル、および/または5〜12個の炭素原子を有する脂肪族および脂環族炭化水素、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ヘキサン、ヘプタン、および/または石油エーテルである。
特に好ましいのは、シクロヘキサンである。
メントン対溶媒の比率は、好ましくは1:0から1:20までである。
水素化の際に、メントールと同時に、ネオメントールも生成する。
工程c)においては、このメントール混合物からネオメントールが分離される。この分離は、温度60〜150℃での蒸留によって実施するのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、分離したネオメントールを、次の工程において、異性化反応でメントールに転化させる。
この目的のためには、国際公開第2012/010695号パンフレットに記載のルテニウムおよびアルカリ土類金属アルコキシラートをベースとする異性化触媒を使用するのが好ましいが、それらは、酸化アルミニウム製の担体物質に担持させる。
好ましいアルカリ土類金属アルコキシラートは、次の式(I)の化合物である。
(R−O)2M (I)
[式中、
Rは、それぞれの場合において独立して、ただし好ましくは同一であって、一級、二級もしくは三級、環状もしくは非環状、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C20−アルキル基であるが、それらは場合によっては、アリール、C1〜C4−アルコキシルまたはC6〜C14−アリールオキシによってさらに置換されていてもよく、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、または立体異性体的メチル基であり、
Mは、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウム、好ましくはバリウムである。]
(R−O)2M (I)
[式中、
Rは、それぞれの場合において独立して、ただし好ましくは同一であって、一級、二級もしくは三級、環状もしくは非環状、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C20−アルキル基であるが、それらは場合によっては、アリール、C1〜C4−アルコキシルまたはC6〜C14−アリールオキシによってさらに置換されていてもよく、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、または立体異性体的メチル基であり、
Mは、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウム、好ましくはバリウムである。]
好ましいバリウムアルコキシラートは、たとえば、過塩素酸バリウムを、好ましくは同一のアルコールまたは他のアルコールの中に溶解させた相当するカリウムアルコキシラートと反応させて、やや難溶性の過塩素酸カリウム(それは、たとえば濾過によって、その反応溶液から容易に除去することができる)を生成させることによって得ることができる。
たとえばバリウムメントラートルもまた、バリウムエトキシドまたはバリウムイソプロポキシドを、過剰量のメントール立体異性体と混合し、長時間静置するかまたは加熱することによって得ることができる。
バリウムエトキシド(エタノール中、10%(w/v))、バリウムイソプロポキシド(固体物質として、メントール異性体の中に溶解させたもの)、またはバリウムイソプロポキシド(イソプロパノール中、20%(w/v))を使用するのが特に好ましい。
担体物質として使用される酸化アルミニウムは、公知のすべての変態、好ましくはγ変態で使用することができる。担体物質として使用する酸化アルミニウムは、少なくとも100m2/g、好ましくは少なくとも160m2/g、特に好ましくは少なくとも180m2/gのBET表面積を有しているのが有利である。特に好ましいのは、さらに、少なくとも50nmの細孔径を有するマクロポーラス細孔を高い割合で有し、かつ少なくとも300mm3/g、好ましくは少なくとも600mm3/gの細孔容積を有する、酸化アルミニウムである。適切な担体物質の例としては、RhodiaからのSPH1515、SPH531、SPH501;BASFからのD10−10;およびNortonからのSA6176のような、市販の酸化アルミニウムが挙げられる。
担体物質は、たとえば、0.001〜0.1mmの粒径を有する粉体、0.05〜5mmの間の粒径を有する破砕・篩別した物質、または成形物、好ましくは、0.2〜30mmの直径を有する押出成形物、ペレット、ビーズもしくは顆粒などの形態で使用することができる。
本発明による方法が特に有利なのは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノールのジアステレオマーの混合物を効率的に分離することが可能で、そのためメントールのジアステレオマーからメントールを分離し、メントールが高純度で得られるという点にある。
本発明による方法においては、特異的なエネルギー消費量をかなり低下させることが可能であり、使用される分離装置の寸法、すなわち、必要とされる分離工程あたりに必要とされる容積を、かなり低下させることができる。
本発明の範囲には、上述および下記の一般的もしくは好ましいとされる基の定義、指数、パラメータおよび説明のすべてが、相互に、すなわち、任意の好ましい組合せにおいて、それぞれの範囲と好ましい範囲の間でも、包含される。
以下に示す実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
メントンを得るための水素化:
実施例1:
3mol%の触媒L1〜L3(下記の表参照)の存在下、温度120℃、圧力10barで、溶媒としてのシクロヘキサンの存在下に、少なくとも2モル過剰の水素を用いて、6gのチモール(40mmol)を水素化して、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を得た。
実施例1:
3mol%の触媒L1〜L3(下記の表参照)の存在下、温度120℃、圧力10barで、溶媒としてのシクロヘキサンの存在下に、少なくとも2モル過剰の水素を用いて、6gのチモール(40mmol)を水素化して、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を得た。
塔底温度133℃での蒸留によって、メントンを分離した。
上述の条件下では、触媒L1とL2は、極めて類似した反応速度を示した。約30分後には、完全な転化が達成された。それとは対照的に、触媒L3の活性はかなり高かった。この場合においては、ちょうど5分後には、完全が転化が達成された。
触媒L1とL2は、ほぼ全面的な転化率範囲にわたって、97%を超えるケトン選択率を示した。完全な転化率では、L3ではさらに約99%の値を与えた。
触媒L1およびL2も、メントン選択率に関しては極めて類似した挙動を示した。この場合、メントン選択率が、全面的な転化率範囲にわたって、連続的に増加して、最大値約68%に達した。触媒L3の場合においては、そのメントン選択率が、完全転化のところでのみ、顕著に高くなった。
触媒L1およびL2の場合においては、イソメントールの割合が約0.12%にまで増大したが、触媒L3の場合には、完全転化に到達する直前まで、依然として0%の値を達成することが可能であった。
メントンを得るための水素化:
実施例2:
2.5mol%の触媒L3〜L9(下記の表参照)の存在下、温度120℃、圧力10barで、溶媒としてのシクロヘキサンの存在下に、少なくとも2モル過剰の水素を用いて、6gのチモール(40mmol)を水素化して、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を得た。
実施例2:
2.5mol%の触媒L3〜L9(下記の表参照)の存在下、温度120℃、圧力10barで、溶媒としてのシクロヘキサンの存在下に、少なくとも2モル過剰の水素を用いて、6gのチモール(40mmol)を水素化して、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を得た。
試験した触媒のすべてで、96〜98%の間の極めて良好な選択率が一貫して達成された。触媒L3、L5、およびL9で最善の結果が得られた。
試験した触媒のすべてで、0.17%未満と極めて低いイソメントールの割合が、一貫して達成された。触媒L3、L6およびL9では、完全転化でもイソメントールの割合が約0.1%と、最善の結果が得られた。触媒L3の場合においては、完全転化に達する直前でも、依然としてイソメントールを検出することがまったく不可能であった。
実施例3:
メントンのメントールへの水素化:
実施例1のサンプルL3で生成したメントンを、塔底温度133℃での蒸留により分離し、120℃、30barで水素化して、メントールとした。使用した触媒は、Alfa Aesar製の5%還元Ru/Alox(5% Ru/Alox reduced from Alfa Aesar)であった。その反応は、シクロヘキサン溶媒の中で実施した。
メントンのメントールへの水素化:
実施例1のサンプルL3で生成したメントンを、塔底温度133℃での蒸留により分離し、120℃、30barで水素化して、メントールとした。使用した触媒は、Alfa Aesar製の5%還元Ru/Alox(5% Ru/Alox reduced from Alfa Aesar)であった。その反応は、シクロヘキサン溶媒の中で実施した。
3時間後には、メントンは完全に反応していた。ネオメントールとメントールが、ほぼ同じ割合で生成した。望ましくない反応生成物である、イソメントールとネオイソメントールの割合は、無視可能なほどに微量であった。
Claims (5)
- 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール(D,L−メントール)を調製するための方法であって、
a)第VIIIb族(鉄−白金族)の元素の群、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはPd、から選択される触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、水素を用いてチモールを水素化し、
b)第VIIIb族(鉄−白金族)、好ましくはPt、Rh、Ru、Pd、特に好ましくはRhから選択される、担持触媒もしくは非担持触媒としての、触媒の存在下、場合によっては溶媒の存在下に、a)から単離した前記2−プロピル−(2)−5−メチルシクロヘキサノン(メントン)を、水素を用いて水素化して、メントールを生成させ、
c)メントールと同時に生成したネオメントールを分離し、かつ
d)次いで、場合によっては、メントールを得るためのネオメントールの異性化反応を実施するが、
工程a)および/またはc)を、60〜200℃の温度と、少なくとも1.1barの圧力とで実施することを特徴とする方法。 - メントンを調製するために使用される前記触媒が、担持触媒または非担持触媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記担持触媒のための前記担体が、金属酸化物および活性炭、好ましくはSiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、または硫酸塩、好ましくはBaSO4、またはそれらの混合物、および活性炭、特に好ましくはAl2O3および活性炭であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 使用される前記溶媒が、1〜10個の炭素原子を有する環状、分岐状および非分岐状のアルコール、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族および環状エーテル、および/または5〜12個の炭素原子を有する脂肪族および脂環族炭化水素、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ヘキサン、ヘプタン、および/または石油エーテルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記異性化反応を、酸化アルミニウムから作られた担体物質に担持させたルテニウムおよびアルカリ土類金属アルコキシラートを用いて起こさせることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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