JP5378964B2 - 動力工具 - Google Patents

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Description

本発明は、先端工具の負荷に応じて当該先端工具の回転速度を切替える変速機構を備えた手持式の動力工具に関する。
先端工具の回転速度を高速と低速の二段に切替える変速機を備えた手持ち式の電動工具は、例えば特開平9−155757号公報(特許文献1)に記載されている。この公報に記載の電動工具では、変速機に加えて当該変速機の下流側にクラッチ装置を有し、更には所定のトルクレベルに達してクラッチの係合が解除したときに、作業者に可視表示を与える発光ダイオード表示器を備えることが記載されている。
電動工具において、先端工具の駆動状態を検知し、当該駆動状態を作業者に知らせるべく表示することは、作業者が安心して作業を遂行する上での重要な事項となる。しかしながら、従来の電動工具の場合、現在の駆動状態を表示する構成に過ぎないものであり、更なる情報提供の要請がある。
特開平9−155757号公報
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、変速機構を備えた動力工具において、作業者に対し加工作業を遂行する上でより有効な情報を提示する技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、本発明の好ましい形態によれば、先端工具の負荷に応じて当該先端工具を高速低トルクで駆動する第1駆動モードから低速高トルクで駆動する第2駆動モードへと切替える変速機構を備えた動力工具が構成される。本発明における「動力工具」は、回転運動する鋸刃によって被加工材の切断作業を行なう木工用あるいは金工用の丸鋸や電動カッター、ネジ締め、穴開け作業に用いられるドライバドリル、ネジ締め作業に用いられるドライバやレンチ、回転運動するサンディングディスクによって被加工材に研磨あるいは研削作業を行なうサンダー、比較的大径の穴明け作業に用いられるダイヤコアドリル、上下2枚のブレードを互いに逆方向に直線状に往復移動させ、生垣の刈り込み作業等を遂行するヘッジトリマ等、各種の動力工具を広く包含する。
本発明に係る動力工具は、特徴的構成として、第2駆動モードへの切替え前に、第1駆動モードの所定の設定状態を検知して当該第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作を報知する検知及び報知手段を有する。本発明における「所定の設定状態」とは、第1駆動モードから第2駆動モードに切替わることが予測される状態がこれに該当し、典型的には、重負荷状態がこれに該当する。
本発明によれば、先端工具の負荷に応じて高速低トルクの第1駆動モードから低速高トルクの第2駆動モードに切替える変速機構を備えた動力工具において、変速機構の第1駆動モードから第2駆動モードへの切替わりを、実際に切替え動作が実行される前段階で作業者に知らせることができる。このため、作業者は加工作業中において、変速機構の切替わりによる低トルクから高トルクへの出力上昇に対し、予め動力工具をしっかりと保持する等して出力上昇に基づき動力工具に生ずる反動に備えることができる。
本発明の更なる形態によれば、所定の設定状態は、重負荷状態として定められ、当該重負荷状態に基づいて第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作を報知する構成としている。
本発明の更なる形態によれば、変速機構は、互いに平行に配置された第1の回転軸から第2の回転軸へと異なる減速比でトルクを伝達する第1及び第2の動力伝達経路とを有し、第1の動力伝達経路が先端工具を高速低トルクで駆動する第1駆動モード用として定められ、第2の動力伝達経路が先端工具を低速高トルクで駆動する第2駆動モード用として定められており、先端工具の負荷状態に応じて移動することで第1の動力伝達経路から第2の動力伝達経路へと動力伝達経路を切替える切替作動部材を有する構成とされる。本発明によれば、変速機構を平行軸式とすることで、例えば遊星ギアを用いた変速機構に比べて構造の簡素化を図る上で有効となる。
本発明の更なる形態によれば、変速機構が動力伝達経路を切替える切替作動部材を有する平行軸式である動力工具において、所定の設定状態の検知は、先端工具の負荷状態に応じて移動する切替作動部材の位置を検知する構成とした。なお、本発明における「切替作動部材」とは、第1駆動モードから第2駆動モードに切替わる際に、動力伝達経路の切替えのために移動する移動部材であればよく、典型的には、変速機構がクラッチを用いて変速動作を行う構成であれば、変速(動力伝達又は遮断)のために長軸方向に移動する当該クラッチ部材がこれに該当する。
本発明の更なる形態によれば、検知及び報知手段は、第1駆動モード及び第2駆動モードについても検知して報知する構成とされる。本発明によれば、作業者に対し、第1駆動モードから第2駆動モードへの切替えの予告に加え、現在の駆動モードの情報を知らせることができる。
本発明の更なる形態によれば、検知及び報知手段は、第2駆動モードにおける重負荷状態についても更に検知して報知する構成とされる。本発明によれば、作業者に対し、先端工具が低速高トルクで駆動される第2駆動モードでの駆動状態において、当該駆動状態が重負荷状態にあることを知らせることができる。
本発明の更なる形態によれば、報知手段は、発光体によって構成されている。本発明によれば、作業者に対し、視覚を通じて容易に先端工具の負荷状態を確認させることができる。
本発明の更なる形態によれば、発光体は、先端工具による作業位置を照射するように配置されている。本発明によれば、報知手段を照明具としても使用でき、合理的であるとともに、作業者が視線を作業位置に合わせたままの状態で負荷状態を知ることができる。
本発明によれば、変速機構を備えた動力工具において、作業者に対し加工作業を遂行する上でより有効な情報を提示する技術が提供されることとなった。
本発明の実施形態に係る丸鋸の全体構成を示す側面図である。 丸鋸の全体構成を示す正面から見た断面図である。 平行3軸式の変速機構の展開断面図であり、動力伝達経路が高速低トルク側に切替えられた状態を示す。 平行3軸式の変速機構の展開断面図であり、動力伝達経路が低速高トルク側に切替えられた状態を示す。 摺動式噛み合いクラッチの外観図である。 図5のA−A線断面図である。 摺動式噛み合いクラッチにおける駆動側クラッチ部材を示す斜視図である。 摺動式噛み合いクラッチにおける被動側クラッチ部材を斜視図である。 摺動式噛み合いクラッチにおけるトルクリングを示す斜視図である。 摺動式噛み合いクラッチの動作を説明する図であり、(A)は山形カムの動作態様を示し、(B)はラッチ部材としてのトルクリングの動作態様を示す。 出力軸に設けられた各部材を示す側面図である。 図11のB−B線断面図である。 ハンドグリップに配置された表示装置を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図12を参照しつつ説明する。本実施の形態は、動力工具の一例としてバッテリを搭載した充電式の丸鋸を用いて説明する。図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る丸鋸101は、概括的に見て、被加工材(便宜上図示を省略する)上に載置されて切断方向に移動されるベース111と、ベース111の上方に配置されるとともに当該ベース111に連接される動力工具本体としての丸鋸本体部103を主体として構成される。
丸鋸本体部103は、鉛直面内で回転される円板状のブレード(鋸刃)113の概ね上半分を覆蓋するブレードケース104、駆動源としての駆動モータ115を収容するモータハウジング105、変速機構117を収容するギアハウジング107、及び作業者が把持して丸鋸101を操作するハンドグリップ109を主体として構成される。ブレード113は、本発明における「先端工具」に対応する。
ブレードケース104には、ブレード113の下半分を覆うセーフティカバー106が回動自在に付設されている。そして当該セーフティカバー106を含めたブレード113の下縁部が、ベース111に形成された開口111a(図2参照)を通して下面側に突出されている。なお、図2では便宜上セーフティカバー106の図示を省略している。セーフティカバー106は、被加工材を切断するべくベース111の前端部(図1において右側)を被加工材上に載置して前方へと移動させたとき、当該被加工材によって前端部を押されることで退避し、ブレードケース104内に収容される。ハンドグリップ109は、ギアハウジング107の上方に連接されるとともに、手指による引き操作によって駆動モータ115を通電駆動するトリガスイッチ109aを備えている。ブレード113は、駆動モータ115が通電駆動されると、変速機構117を介して回転駆動される。またハンドグリップ109の端部には、バッテリ108が着脱自在に装着される。なお、本実施の形態に係る駆動モータ115は、ブレーキ付きモータであって、また希土類モータが用いられている。また、バッテリ108としては、42ボルト以下のリチウムイオンバッテリを用いることが好ましい。
次に変速機構117につき、図3及び図4を参照して説明する。本実施の形態に係る変速機構117は、駆動モータ115のモータ軸116に同軸で接続された入力軸121、ブレード113が取付けられる出力軸としてのブレード取付軸125、及び入力軸121とブレード取付軸125の間に配置された中間軸123が、互いに平行に配置された平行3軸式であり、ブレード113に作用する負荷の大きさに応じて動力伝達経路が高速低トルクから低速高トルクに自動的に切替わる2段切替式として構成される。中間軸123によって「第1の回転軸」及び「前段軸」が構成され、ブレード取付軸125によって「第2の回転軸」及び「出力軸」が構成される。図3及び図4は平行3軸式の変速機構117の展開断面図であり、図3は動力伝達経路が高速低トルク側に切替えられた状態を示し、図4は動力伝達経路が低速高トルク側に切替えられた状態を示す。なお、以下の説明では、便宜上ブレード取付軸125を出力軸という。
変速機構117は、入力軸121のトルクがピニオンギア131から第1中間ギア132、中間軸123、第2中間ギア133、第1被動ギア134を経て出力軸125に伝達される第1動力伝達経路P1と、入力軸121のトルクがピニオンギア131から第1中間ギア132、中間軸123、第3中間ギア135、第2被動ギア136を経て出力軸125に伝達される第2動力伝達経路P2を有する。そして、第2中間ギア133と第1被動ギア134のギア比(減速比)が第3中間ギア135と第2被動ギア136のギア比(減速比)よりも小さく設定されている。これにより、第1動力伝達経路P1が高速低トルクの動力伝達経路として定められ、第2動力伝達経路P2が低速高トルクの動力伝達経路として定められている。第1動力伝達経路P1及び第2動力伝達経路P2が矢印付き太線によって示される。第2中間ギア133と第1被動ギア134とによって「第1のギア列」が構成され、第3中間ギア135と第2被動ギア136とによって「第2のギア列」が構成される。
変速機構117における、入力軸121、中間軸123及び出力軸125は、それぞれ軸受121a,123a,125aを介してギアハウジング107に回転自在に支持される。駆動ギアとしてのピニオンギア131は、入力軸121に一体に形成されている。第1中間ギア132と第3中間ギア135は、中間軸123上の一端側(駆動モータ115側であって、図示左側)に並列に配置されるとともに、共通のキー137を介して中間軸123と一体化されており、第1中間ギア132がピニオンギア131に常時に噛み合い係合され、第3中間ギア135が出力軸125上の一端側に設けられた第2被動ギア136と常時に噛み合い係合する構成とされる。第2中間ギア133は、出力軸125上の他端側(ブレード113側であって、図示右側)に軸受138を介して相対回転可能に取付けられており、出力軸125の他端側に配置されるとともにキー139を介して当該出力軸125と一体化された第1被動ギア134と常時に噛み合い係合している。
本実施の形態に係る丸鋸101においては、ブレード113による被加工材の切断作業時において、ブレード113に作用する負荷が小さい切断作業の初期段階では、出力軸125、すなわちブレード113を、高速低トルクの第1動力伝達経路P1によって回転駆動し、切断作業の進行に伴いブレード113に加わる負荷が一定値に達したときには、自動的に低速高トルクの第2動力伝達経路P2に切替わるように構成される。このような第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2への切替わりは、中間軸123上に摺動式噛み合いクラッチ141を設け、出力軸125上にはワンウェイクラッチ145を設けることで実現されている。摺動式噛み合いクラッチ141及びワンウェイクラッチ145によって「第1及び第2のクラッチ」が構成される。
摺動式噛み合いクラッチ141の構成が図3及び図4の他、図5〜図10に示される。摺動式噛み合いクラッチ141は、図5に示すように、中間軸123の長軸方向において、互いに対向状に配置された駆動側クラッチ部材142及び被動側クラッチ部材143と、駆動側クラッチ部材142を被動側クラッチ部材143に向けて押圧付勢するクラッチバネ144を主体として構成される。駆動側クラッチ部材142と被動側クラッチ部材143は、図7及び図8に示すように、互いに対向する側面にそれぞれ周方向に複数(例えば3個)の略台形状の山形カム142a,143aを有し、それら山形カム142a,143aが互いに噛み合い係合することによってトルクを伝達し(図3及び図5参照)、噛み合い係合が解除することでトルク伝達が遮断される構成とされる(図4参照)。
駆動側クラッチ部材142は、中間軸123に遊嵌状に嵌合されている。すなわち、中間軸123に対し周方向及び長軸方向に摺動自在に取付けられており、当該中間軸123に圧入固定されたトルク伝達部材としてのトルクリング152を介して回転駆動される構成とされる。トルクリング152は、図9に示すように、周方向等分位置に外径方向に突出する複数(3個)のトルク伝達部としての突部152aを備えている。駆動側クラッチ部材142の山形カム142aが形成されている方の側面には、図7に示すように、トルクリング152の外形形状に概ね対応する形状の収容空間153が形成されており、当該収容空間153にトルクリング152が周方向への相対移動不能に収容されている(図6参照)。従って、中間軸123と共にトルクリング152が回転されると、駆動側クラッチ部材142は、収容空間153における当該トルクリング152の突部152aと係合する係合凹部153aの径方向の壁面、すなわちトルク伝達面153bを周方向に押圧されることで一体状に回転する。一方、被動側クラッチ部材143は、第2中間ギア133に一体化されている。
駆動側クラッチ部材142は、弾性部材としての圧縮コイルバネからなるクラッチバネ144によって、山形カム142aが被動側クラッチ部材143の山形カム143aに噛み合い係合して動力伝達状態とされる位置、すなわち動力伝達位置へと付勢されている。なお、クラッチバネ144は、駆動側クラッチ部材142と第1中間ギア132の間に弾発状に配置されている。
第1動力伝達経路P1によってブレード113が回転駆動されている状態において、当該ブレード113にクラッチバネ144の付勢力を超える一定値以上の負荷が作用すると、山形カム142a,143aの斜面に作用する長軸方向成分の力で駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143から離間する方向へと移動(後退動作)される。すなわち、駆動側クラッチ部材142は、動力解除位置へと移動され、山形カム142a,143aの噛み合い係合が解除されて動力遮断状態とされる。図10(A)には摺動式噛み合いクラッチ141が動力伝達状態から動力遮断状態に変化する態様が示される。そして、摺動式噛み合いクラッチ141が動力遮断状態に切替わると、ワンウェイクラッチ145が作動し、動力伝達経路が高速低トルクの第1動力伝達経路P1から低速高トルクの第2動力伝達経路P2へと切り替えられる。
次にワンウェイクラッチ145につき説明する。ワンウェイクラッチ145の構成が図11及び図12に示される。ワンウェイクラッチ145は、第2被動ギア136と共に回転する外輪146と、外輪146と出力軸125の間に介在される複数の針状ころ147及びバネ148を主体として構成されている。針状ころ147は、外輪146の周方向に所定間隔で形成されたカム溝146a内に転動可能に配置され、バネ148によってカム面146bの噛み合い位置に向かって付勢されている。
従って、第1被動ギア134と共に外輪146が出力軸125に対して図12において右回りに回転されると、バネ148の付勢力によって針状ころ147がカム面146bと出力軸125との間に噛み込み、楔作用によって出力軸125を駆動する。この状態が図12に示される。一方、出力軸125が外輪146よりも高速で回転するときには、外輪146が出力軸125に対し相対的に図示左回りに回転することになる。このため、針状ころ147は、カム面146bから離れ、外輪146が出力軸125に対し空転する。つまり、摺動式噛み合いクラッチ141が動力伝達状態にあるときは、外輪146が出力軸125に対し相対的に図示左回りに回転されるため、ワンウェイクラッチ145は、空転し、動力伝達をしない。
上記のように構成された変速機構117によれば、駆動モータ115の停止状態では、摺動式噛み合いクラッチ141は、クラッチバネ144の付勢力で駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143と接近する側へと移動されている。すなわち、両クラッチ部材142,143の山形カム142a,143aが互いに噛み合い係合する動力伝達状態に保持されている。かかる状態で、被加工材の切断作業を行なうべく駆動モータ115が通電駆動されると、駆動モータ115のトルクは、第1動力伝達経路P1を経て出力軸125に伝達される。すなわち、ピニオンギア131、第1中間ギア132、中間軸123、摺動式噛み合いクラッチ141、第2中間ギア133、第1被動ギア134及び出力軸125を経てブレード113が高速低トルクで回転駆動される。
このとき、中間軸123から第3中間ギア135及び第2被動ギア136を経てワンウェイクラッチ145の外輪146も回転されるが、前述したように、外輪146の回転速度よりも出力軸125の回転速度が高速であるため、外輪146は空転する。
上記のように、ブレード113による被加工材の切断作業は、第1動力伝達経路P1を使用しての高速低トルクで開始する。そして、切断作業が進行し、ブレード113に作用する負荷が摺動式噛み合いクラッチ141のクラッチバネ144にて設定される切替設定値に達すると、当該摺動式噛み合いクラッチ141が動力遮断状態に切替わる。すなわち、図10の(A)に示すように、駆動側クラッチ部材142に対し山形カム142a,143aのカム面(斜面)を経て作用する長軸方向成分で駆動側クラッチ部材142がクラッチバネ144の付勢力に抗して被動側クラッチ部材143から離間され、山形カム142a,143aの噛み合い係合が解除される。かくして、摺動式噛み合いクラッチ141が動力遮断状態に切替わり、出力軸125の回転速度がワンウェイクラッチ145の外輪146の回転速度を下回ると、バネ148の付勢力によって針状ころ147がカム面146bと出力軸125との間に噛み込み、楔作用によって出力軸125を駆動する。これにより駆動モータ115のトルクの伝達経路が第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2に切替わり、ブレード113は、ピニオンギア131と第1中間ギア132のギア比、及び第3中間ギア135と第2被動ギア136とのギア比で定められた低速高トルクで回転駆動される。
上記のように、本実施の形態によれば、ブレード113に作用する負荷が小さい状態では、減速比の小さい第1動力伝達経路P1を使用して高速低トルクで被加工材の切断作業を遂行し、一方、ブレード113に大きな負荷が加わる状態では、ギア比の大きい第2動力伝達経路P2を使用して低速高トルクで切断作業を行なうことができる。
このように、ブレード113に作用する負荷に応じてトルクの伝達経路が高速低トルクの第1動力伝達経路P1から低速高トルクの第2動力伝達経路P2に自動的に切替わる構成としたことにより、変速機構を有しない丸鋸に比べて、駆動モータ115の焼損防止が図れるとともに、バッテリ108の1充電当たりの切断作業量を向上することができる。
特に、本実施の形態においては、変速機構117を構成するギア列における各ギアの噛み合い係合を保持した状態、すなわち各ギアの位置を固定した状態で、第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2に切替えることができるため、変速動作を円滑に行なうことが可能となり、変速動作の円滑性を向上することができる。
また、本実施の形態によれば、中間軸123上に摺動式噛み合いクラッチ141を設ける一方、出力軸125上にワンウェイクラッチ145を設けているため、摺動式噛み合いクラッチ141の動作をコントロールすることのみで第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2への使用伝達経路の切替えが実現されることになり、合理的な変速機構117を構築することができる。
また、本実施の形態では、摺動式噛み合いクラッチ141を出力軸125よりも高速低トルクで回転する中間軸123上に設けたので、摺動式噛み合いクラッチ141に作用する負荷を小さくできる。このため、クラッチの保護あるいは耐久性を向上する上で有効となる。また、ギアハウジング107に対する各軸の配置から見て、中間軸123はギアハウジング107の中央寄りに配置される。このため、ワンウェイクラッチ145に比べて径方向に大型の摺動式噛み合いクラッチ141を中間軸123上に配置することで、ギアハウジング107の大型化を抑えることが可能になる。
一方、ワンウェイクラッチ145は、出力軸125上に設けている。減速側である出力軸125上の第2被動ギア136は、中間軸123上の第3中間ギア135よりも大径に設定される。このことから、ワンウェイクラッチ145を出力軸125と第2被動ギア136の間に設ける構成とすることで、ワンウェイクラッチ145の配置スペースが確保し易く、ワンウェイクラッチ145を容易に組み込むことが可能になる。
ところで、ブレード113に加わる負荷に応じて自動的に摺動式噛み合いクラッチ141の切替えを行なう構成の場合、ブレード113に加わる負荷がクラッチバネ144にて設定される切替設定値の周辺で変動した場合、摺動式噛み合いクラッチ141が頻繁に切替わることになる。そこで、かかる課題を解決するべく、本実施形態に係る変速機構117は、摺動式噛み合いクラッチ141が一旦動力遮断状態に切替わった後は、当該切替わった状態に保持するラッチ機構、及び切断作業の停止後(駆動モータ115の停止時)には、初期状態すなわち動力伝達状態に戻すリセット機構を有している。
以下、ラッチ機構151につき、主に図6、図7、及び図9、図10を参照して説明する。ラッチ機構151は、摺動式噛み合いクラッチ141における駆動側クラッチ部材142が動力遮断位置へと移動した際に、当該駆動側クラッチ部材142を動力遮断位置、詳しくは駆動側クラッチ部材142の山形カム142aが被動側クラッチ部材143の山形カム143aから引き離された位置(隙間を置いて対向する位置)に保持する機構として備えられる。ラッチ機構151は、前述のトルクリング152を主体として構成されている。
トルクリング152を収容するべく形成された駆動側クラッチ部材142の収容空間153において、トルクリング152の突部152aが係合する係合凹部153aの回転方向前方領域には、前方に向かって上り勾配で傾斜する斜面153cが形成されている。そして、トルクリング152は、駆動側クラッチ部材142が動力伝達位置から動力遮断位置側へと移動して動力遮断状態とされる際、収容空間153から脱出して斜面153c上に乗り上げることによって駆動側クラッチ部材142の山形カム142aを被動側クラッチ部材143の山形カム143aから引き離すように構成されている。このときの動作態様が図10に示される。図10における(A)がクラッチの動作を示し、(B)がラッチ部材としてのトルクリング152の動作を示している。なお、トルクリング152の突部152aの斜面153cへの乗り上げを円滑化するべく、突部152aの斜面153cとの対向面は、斜面あるいは円弧状の曲面で形成されている。
図10の最上段に示すように、駆動側クラッチ部材142が動力伝達位置に置かれた山形カム142a,143aの噛み合い係合状態では、前述のようにトルクリング152の突部152aが係合凹部153aのトルク伝達面153bと係合し、トルク伝達状態に保持されている。かかる状態において、クラッチバネ144にて設定された一定値(切替設定値)を超える負荷がブレード113に作用し、駆動側クラッチ部材142が動力遮断位置に向かって後退動作すると、中間軸123に固定されているトルクリング152が駆動側クラッチ部材142に対し長軸方向、すなわち収容空間153から抜け出る(浮き上がる)方向に相対移動する。これにより、トルクリング152の突部152aが係合凹部153aから抜け出し、トルク伝達面153bから外れると、トルクを受けなくなった駆動側クラッチ部材142とトルクリング152との間に回転速度差が生じる。このため、トルクリング152が駆動側クラッチ部材142に対し周方向に相対移動し、トルクリング152の突部152aが斜面153cの端部に乗り上げる(図10の上から2段目参照)。この突部152aの乗り上げ動作により、駆動側クラッチ部材142が長軸方向に押される。すなわち、駆動側クラッチ部材142に対し山形カム142aを被動側クラッチ部材143の山形カム143aから切り離す方向(長軸方向)に力が加えられ、これにより、山形カム142a,143aの切り離しがアシストされる。その結果、山形カム142a,143aのカム面に作用する負荷が軽減されることになる。このことは、山形カム142a,143aの摩耗を低減することが可能となり、ひいてはクラッチバネ144にて設定される切替設定値の変動を抑制できる。
駆動側クラッチ部材142が更に後退動作し、山形カム142a,143aの噛み合い係合が解除されると、トルクリング152が駆動側クラッチ部材142に対し周方向に更に相対移動する。このため、突部152aが斜面153cに更に乗り上げる。すなわち、この乗り上げによる山形カム142a,143aの切り離しのアシストは、当該山形カム142a,143aの噛み合い係合の解除後も継続される。これにより駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143から更に離間され、山形カム142a,143a間に長軸方向の隙間が生ずる。斜面153cに乗り上げた突部152aは、斜面153c前方に直立するストッパ面153dに係止し、その後、トルクリング152と駆動側クラッチ部材142は一体となって回転する。この状態が図10(B)の最下段に示される。
すなわち、トルクリング152は、駆動側クラッチ部材142が動力伝達状態から動力遮断状態へと切替わる際、当該駆動側クラッチ部材142の山形カム142aが被動側クラッチ部材143の山形カム143aから離間する動力遮断位置よりも更に後退移動された位置、つまり山形カム142a,143a間に長軸方向の所定の隙間が確保される隔離位置へと移動させて当該隔離位置に保持する。このように、摺動式噛み合いクラッチ141は、一旦動力遮断側に切替わると、その後ブレード113に加わる負荷の如何に拘わらず動力遮断状態を保持するため、ブレード113に加わる負荷がクラッチバネ144にて設定される切替設定値の周辺で変動した場合であっても、第2動力伝達経路P2を使用しての低速高トルクでの安定した切断作業を遂行することが可能となる。また、駆動側クラッチ部材142が隔離位置へと移動されて当該隔離位置に保持されることで、山形カム142a,143a間に長軸方向に一定の隙間が確保されるので、確実な動力遮断状態が得られ、山形カム142a,143aの当接による異音あるいは振動の発生を防止できる。
一方、切断作業後、駆動モータ115の通電駆動を停止すると、当該駆動モータ115のブレーキが作動する。これにより回転速度が減速される中間軸123と一体に回転するトルクリング152と、慣性トルクによって回転速度を維持しようとする駆動側クラッチ部材142の間には回転速度差が生じ、両部材が周方向に相対的に回動する。この周方向の相対回動は、トルクリング152の突部152aが駆動側クラッチ部材142の斜面153cから下りる方向である。このため、突部152cが収容空間153の係合凹部153aに嵌り込む。すなわち、トルクリング152は、初期位置へと復帰(リセット)することになり、これにより摺動式噛み合いクラッチ141の動力遮断状態の保持が自動的に解除される。つまり、駆動モータ115のブレーキ及び駆動側クラッチ部材142の慣性を利用したリセット機構が構成されている。なお、トルクリング152による動力遮断状態保持が解除されると、駆動側クラッチ部材142は、クラッチバネ144の付勢力によって動力伝達位置へと移動され、次の切断作業に備える。
さて、本実施の形態においては、ブレード113に作用する負荷に応じて摺動式噛み合いクラッチ141が噛み合い係合状態から噛み合い係合解除状態へと切替わることによって、トルクの伝達経路が高速低トルクの第1動力伝達経路P1から低速高トルクの第2動力伝達経路P2へと自動的に切替わる構成の変速機構117を備えた丸鋸101において、作業者に対し、変速機構117によるブレード113の駆動状態及び変速間際の状態(第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2への切替時期)を前もって知らせる変速報知装置を備えている。ブレード113が第1動力伝達経路P1によって高速低トルクで駆動される状態が、本発明における「第1駆動モード」に対応し、ブレード113が第2動力伝達経路P2によって低速高トルクで駆動される状態が、本発明における「第2駆動モード」に対応する。
変速報知装置は、変速機構117における変速のために移動する部材の位置情報及びブレード113の負荷情報を検知する検知手段と、作業者に変速機構117の駆動状態及び変速間際の状態を知らせる報知手段と、検知手段からの検知信号の入力に基づき報知手段に各状態の報知指令を出力するコントローラ(制御装置)とを主体として構成される。次に、変速報知装置の実施例につき説明する。
(実施例1)
実施例1では、検知手段は、図3及び図4に示すように、摺動式噛み合いクラッチ141の駆動側クラッチ部材142に設けた磁石165を検知する非接触センサとしての2個のホール素子センサ161,163と、駆動モータ115の負荷電流値を検知する電流センサ(便宜上図示を省略する)によって構成される。報知手段は、ブレード113による被加工材の加工位置、あるいは被加工材の墨線に対する位置決用としての切欠きやトップガイド等が形成されたベース111の先端領域(図1の右端)のいずれか一方、又は加工位置とベース先端領域の双方を照射可能なLEDライトからなる照明具167(図1参照)によって構成され、ブレードケース104の側面前端部に取り付けられている。照明具167は、本発明における「発光体」に対応する。上記の加工位置及びベース111の先端領域が、加工作業を行う上で必要な照射箇所であり、本発明における「作業位置」に対応する。
ホール素子センサ161,163は、ギアハウジング107に取り付けられており、ブレード113の負荷に応じて変速をもたらす部材、すなわち長軸方向の位置が変化する部材である摺動式噛み合いクラッチ141の駆動側クラッチ部材142の位置を検知する構成とされる。駆動側クラッチ部材142は、本発明における「切替作動部材」に対応する。一方、ブレード113の負荷の大きさについては、電流センサから入力される駆動モータ115の負荷電流値によって検知する構成とされている。
コントローラは、一方のホール素子センサ161がオン信号、他方のホール素子センサ163がオフ信号を出力したときには、摺動式噛み合いクラッチ141の駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合位置にあり、高速低トルク(減速比が小さい第2中間ギア133と第1被動ギア134を用いてトルクを伝達する第1動力伝達経路P1)で駆動していると判断し、逆に一方のホール素子センサ161がオフ信号、他方のホール素子センサ163がオン信号を出力したときには、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合解除位置にあり、低速高トルク(減速比が大きい第3中間ギア135と第2被動ギア136を用いてトルクを伝達する第2動力伝達経路P2)で駆動していると判断する。またコントローラは、電流センサから入力される駆動モータ115の負荷電流値に基づいてブレード113の負荷の大きさを判断するように構成される。
変速機構117が高速低トルクで駆動している状態において、電流センサから入力される駆動モータ115の負荷電流値が、ブレード113の重負荷状態に対応して予め定めた所定の重負荷電流値に達したとき、換言すればブレード113の負荷が変速機構117の変速に関わる摺動式噛み合いクラッチ141及びラッチ機構151がトルク伝達を遮断する動作(図10の二点鎖線で囲まれる領域参照)を開始するような重負荷状態に達したときに、コントローラは、変速間際の状態にあると判断するように定められる。上記の駆動モータ115の負荷電流値が予め定めた所定の重負荷電流値に達した状態、すなわち重負荷状態が、本発明における「所定の設定状態」に対応する。
照明具167は、コントローラからの指令に基づき変速機構117の駆動状態及び負荷状態に関する複数の状態を異なる色、明るさ、点灯状態等で表示する。実施例1では、変速機構117が高速低トルクの第1動力伝達経路P1を経由しての駆動時には、白色点灯、当該高速低トルクでの重負荷駆動時には、白色点滅、低速高トルクの第2動力伝達経路P2を経由しての駆動時には、黄色点灯、当該低速高トルクでの重負荷駆動時には、黄色点滅によって表示するよう定められる。
すなわち、コントローラは、ホール素子センサ161,163と電流センサからの情報に基づき、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合位置にあり、かつ駆動モータ115の負荷電流値が所定の重負荷電流値に達していないことを確認したときは、変速機構117が高速低トルクで駆動されていると判断し、照明具167を白色で点灯する。また、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合位置にあり、かつ駆動モータ115の負荷電流値が所定の重負荷電流値に達したことを確認したときには、動力伝達経路の第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2への切替え動作が間もなく実行される変速間際の状態にあると判断し、照明具167を白色で点滅させる。また、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合解除位置にあり、かつ駆動モータ115の負荷電流値が所定の重負荷電流値よりも低いことを確認したときには、変速機構117が変速後の低速高トルクで駆動されていると判断し、照明具167を黄色で点灯させる。更に駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合解除位置にあり、かつ駆動モータ115の負荷電流値が前記所定の重負荷電流値を超える所定の第2重負荷電流値に達したことを確認したときには、過大な負荷状態にあると判断し、照明具167を黄色で点滅させる。上記の第2重負荷電流値に達した状態が、本発明における「第2駆動モードにおける所定の重負荷状態」に対応する。
このように、実施例1によれば、上記変速機構117の高速低トルク、低速高トルクの各駆動状態、変速間際の状態、及び変速後の低速高トルクでの駆動状態における重負荷駆動状態をそれぞれ個別に表示し、作業者に知らせることができる。特に変速機構117が高速低トルクから低速高トルクへと変速する際に、白色点灯状態から白色点滅状態へと照明具167の表示の仕方を変えることによって、変速機構117の変速間際の状態を作業者に予告できるため、作業者は被加工材の切断作業中において、高速低トルクの駆動状態から低速高トルクの駆動状態への切替わりによる出力上昇に対し、予め丸鋸101をしっかりと保持する等して出力上昇に基づく反動に備えることができる。
また、実施例1では、ブレード113の切断位置を照射する照明具167を利用して変速機構117の変速間際の状態を知らせる構成としている。このため、切断位置を見ながら加工作業を遂行している作業者は、目線を変えなくても変速間際の状態を確実に認識することができる。
(実施例2)
実施例2は、検知手段として、実施例1と同様な方法、すなわち磁石165とホール素子センサ161,163を用いて駆動側クラッチ部材142の位置情報をコントローラに出力した状態で、ブレード113に作用する負荷の大きさを、回転センサ(便宜上図示を省略する)によって出力軸125の回転数で検知し、当該検知信号をコントローラに出力する構成としている。また、図13に示すように、ハンドグリップ109における作業者が可視可能な上面領域に報知手段としての表示装置169を設置する構成としている。
表示装置169は、ハンドグリップ109の長軸方向に並列された3個のLEDライト169a,169b,169cによって構成されており、変速間際の状態を表示するのみならず、変速前の高速低トルク状態及び変速後の低速高トルク状態をもそれぞれ表示するよう構成されている。すなわち、高速低トルク表示用のLEDライト169a、変速間際の状態表示用のLEDライト169b、低速高トルク表示用のLEDライト169cが先端側から手元に掛けて上記順序で並列に配置されている。
従って、実施例2によれば、ホール素子センサ161,163による駆動側クラッチ部材142の位置検知情報と、回転センサによる出力軸125の回転数の検知情報とに基づくコントローラの判断によって、表示装置169の3個のLEDライト169a,169b,169cのうちのいずれか1つが点灯あるいは点滅される。
すなわち、コントローラは、ホール素子センサ161,163と回転センサからの情報に基づき、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合位置にあり、かつ出力軸125が所定の高速回転数で回転されていることを確認したときは、変速機構117が高速低トルクの第1動力伝達経路P1を経て駆動されていると判断し、高速低トルク表示用のLEDライト169aを点灯あるいは点滅させる。また、駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合位置にあり、かつ出力軸125の回転数が予め設定された設定回転数まで低下したことを確認したときには、動力伝達経路の第1動力伝達経路P1から第2動力伝達経路P2への切替え動作が間もなく実行される変速間際の状態にあると判断し、変速間際の状態表示用のLEDライト169bを点灯あるいは点滅させる。更に駆動側クラッチ部材142が噛み合い係合解除位置にあり、かつ出力軸125が所定の低速回転数で回転されているときには、変速機構117が変速後の第2動力伝達経路P2を経て低速高トルクで駆動されていると判断し、低速高トルク表示用のLEDライト169cを点灯あるいは点滅させる。これにより上記変速機構117の各状態をブレード113の負荷状態に応じて個別に表示し、作業者に知らせることができる。
なお、実施例2においては、低速高トルクでの駆動状態において、出力軸125の回転数が所定の低速回転数よりも更に低い第2低速回転数まで低下した場合には、このことを回転センサによって検知し、例えば低速高トルク表示用のLEDライト169cの表示のさせ方を変えることによって、あるいは別途に設けた非常用LEDライトによって表示するように構成することが可能である。
(実施例3)
実施例3では、変速機構117において、変速をもたらす摺動式噛み合いクラッチ141における長軸方向の移動部材である駆動側クラッチ部材142の位置を、磁石とピックアップコイルによって構成される非接触センサ(便宜上図示を省略する)によって検知し、当該位置情報のみに基づいて、コントローラが実施例2と同様の表示装置169を用いて表示するように構成する。
すなわち、ピックアップコイルからの検知信号に基づき駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143に近接した噛み合い係合位置にあることを確認したときは、変速機構117が高速低トルクで駆動されていると判断し、表示装置169の高速低トルク表示用のLEDライト169aを点灯あるいは点滅させる。また、ピックアップコイルからの検知信号に基づき駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143から離れる方向へと移動されて噛み合い係合位置と噛み合い係合解除位置との中間位置にあることを確認したときには、変速間際の状態にあると判断し、変速間際の状態表示用のLEDライト169bを点灯あるいは点滅させる。更にピックアップコイルからの検知信号に基づき駆動側クラッチ部材142が被動側クラッチ部材143から完全に離間した噛み合い係合解除位置にあることを確認したときは、変速機構117が変速後の低速高トルクで駆動されていると判断し、低速高トルク表示用のLEDライト169cを点灯あるいは点滅させる。これにより上記変速機構117の各状態をブレード113の負荷状態に応じて個別に表示し、作業者に知らせることができる。
なお、変速報知装置に関しては、上記の実施例1〜3に限らず、種々の変形が可能である。例えば、実施例1〜3では、異なる複数の状態を検知して表示する構成としたが、少なくとも変速機構117が高速低トルクの駆動状態から低速高トルクの駆動状態へと変速する直前の状態を検知して表示する構成であればよい。その場合、駆動モータ115の負荷電流値検知のみによって、又は出力軸125の回転数検知のみによって、あるいは変速機構117における変速の切替え動作に関わる移動部材の位置情報のみによって、変速間際の状態を検知する構成としてもよいし、又はそれらを組み合わせて行うように構成してもよい。
また、上記実施例では、駆動状態及び変速間際の各状態につき、切断位置を照射する照明具167又はハンドグリップ109に配置したLEDライト163a,163b,163cによる視覚的表示によって作業者に報知するとしたが、報知手段としては、ブザー等を用いて聴覚として認識させる構成又はハンドグリップ109の温度あるいは振動等で感触として認識させる構成に変更しても構わない。
また、本実施の形態に係る変速機構117は、3軸平行式の場合で説明したが、入力軸と出力軸との2本の平行軸から構成される2軸式であっても成立する。また、ワンウェイクラッチ145を中間軸123側に設けても成立する。また、本実施の形態は、動力工具の例として充電式の丸鋸101の場合で説明したが、これに限られるものではない。丸鋸であっても、バッテリの代わりにAC電源を用いる形式の丸鋸、あるいは図示のような手持式のほか、ベースに設置されたテーブル上に被加工材を載せて切断作業を行なう卓上丸鋸や卓上スライド丸鋸に適用できるし、木工用、金工用のいずれにも適用することが可能である。
また、丸鋸以外の切断工具、例えば、電動カッターに適用することが可能であるし、レシプロソーやジクソー等のように先端工具が直線往復運動を行なう切断工具に適用することが可能である。更には切断工具以外の動力工具、例えば回転運動するサンディングディスクや砥石によって被加工材に研磨あるいは研削作業を行なうサンダーやグラインダ、ネジ締め、穴開け作業に用いられるドライバドリル、あるいはネジ締め作業に用いられるドライバやレンチ、または穴明け作業を行なう各種ドリル、更には上下2枚のブレードを互いに逆方向に直線状に往復移動させ、生垣の刈り込み作業等を遂行するヘッジトリマ等、各種の電動工具を広く適用可能である。そして加工作業を行う上で必要とされる照明具167による照射位置については、適用する電動工具によって変わるものであり、一様ではない。
更にまた、サンダーやダイヤコアドリル等のように、一台の動力工具において、作業に用いる先端工具の寸法の相違や被加工材の相違等により、先端工具に加わる負荷が相違する動力工具に用いると有効である。
また、本実施の形態では、摺動式噛み合いクラッチ141が一旦動力遮断状態に切替わった後は、当該切替わった状態に保持するラッチ機構151を設けたが、当該ラッチ機構151を有しない構成に変更してもよい。
なお、本発明の趣旨に鑑み、以下の態様を構成することができる。
(態様1)
「前記切替作動部材の位置検知は、非接触センサによって検知する。」
(態様2)
「前記切替作動部材は、前記変速機構を構成する部材の1つである。」
(態様3)
「駆動源としてのモータと、前記切替作動部材の位置を検知する位置センサと、前記モータの負荷電流値を検知する電流センサとを有し、第1駆動モードが検知されるとともに負荷電流値が所定の基準値を超えた場合に第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作が報知される構成とした。」
(態様4)
「前記移動体の位置を検知する位置センサと、変速機構の出力軸の回転数を検知する回転センサとを有し、第1駆動モードが検知されるとともに出力軸の回転数が所定の基準値を超えた場合に第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作が報知される構成とした。」
(態様5)
「第2駆動モードでの所定の重負荷状態についても検知して報知する構成とした。」
(態様6)
「照明具は、変速機構の複数の駆動状態又は先端工具の負荷状態を、色、明るさ又は点灯状態によって報知する構成とした。」
(態様7)
「モータ及び前記変速機構を収容する動力工具本体と、前記動力工具本体の下方に配置されるとともに、被加工材上に載置可能なベースと、を有し、前記先端工具は、前記モータにより前記変速機構を介して回転駆動されることで被加工材を切断する鋸刃として構成されている。」
(態様8)
「前記所定の設定状態は、モータの負荷電流値を検知する電流センサによって検知する構成とした。」
(態様9)
「前記所定の設定状態は、変速機構における出力軸の回転数を検知する回転センサによって構成した。」
(態様10)
「請求項3に記載の前記変速機構は、互いに平行に配置された第1及び第2の回転軸と、互いに噛合い係合されるとともに前記第1の回転軸のトルクを第2の回転軸に伝達する駆動ギアと被動ギアの組み合わせを1単位とし、かつ互いにギア比が異なる第1及び第2のギア列を有し、前記第1のギア列を経由するトルクの伝達経路が第1の動力伝達経路として定められ、前記第2のギア列を経由するトルクの伝達経路が第2の動力伝達経路として定められており、前記第1の動力伝達経路上において動力伝達と動力遮断を行う第1のクラッチ、及び前記第2の動力伝達経路上において動力伝達と動力遮断を行う第2のクラッチを更に有し、
前記先端工具の負荷に応じた前記第1及び第2のクラッチの動力伝達状態と動力遮断状態の間での切替わりによって前記第1及び第2のギア列の噛合い係合状態のままで前記第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路間で伝達経路の切替えがなされる構成とした。」
101 丸鋸(動力工具)
103 丸鋸本体部(動力工具本体)
104 ブレードケース
105 モータハウジング
106 セーフティカバー
107 ギアハウジング
108 バッテリ
109 ハンドグリップ
109a トリガ
111 ベース
111a 開口
113 ブレード(先端工具)
115 駆動モータ(動力源)
116 モータ軸
117 変速機構
121 入力軸
121a 軸受
123 中間軸(第1の回転軸)
123a 軸受
125 出力軸(第2の回転軸)
125a 軸受
131 ピニオンギア
132 第1中間ギア
133 第2中間ギア
134 第1被動ギア
135 第3中間ギア
136 第2被動ギア
137 キー
138 軸受
139 キー
141 摺動式噛み合いクラッチ(第1のクラッチ)
142 駆動側クラッチ部材
142a 山形カム
143 被動側クラッチ部材
143a 山形カム
144 クラッチバネ
145 ワンウェイクラッチ(第2のクラッチ)
146 外輪
146a カム溝
146b カム面
147 針状ころ
148 バネ
151 ラッチ機構
152 トルクリング
152a 突部
153 収容空間
153a 係合凹部
153b トルク伝達面
153c 斜面
153d ストッパ面
161 ホール素子センサ
163 ホール素子センサ
165 磁石
167 照明具
169 表示装置
169a LEDライト
169b LEDライト
169c LEDライト

Claims (8)

  1. 先端工具の負荷に応じて当該先端工具を高速低トルクで駆動する第1駆動モードから低速高トルクで駆動する第2駆動モードへと切替える変速機構を備えた動力工具であって、
    前記第2駆動モードへの切替え前において、前記第1駆動モードの所定の設定状態を検知して第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作を報知する検知及び報知手段を有することを特徴とする動力工具。
  2. 請求項1に記載の動力工具であって、
    前記所定の設定状態は、重負荷状態として定められ、当該重負荷状態に基づいて第1駆動モードから第2駆動モードへの切替え動作を報知することを特徴とする動力工具。
  3. 請求項1又は2に記載の動力工具であって、
    前記変速機構は、互いに平行に配置された第1の回転軸から第2の回転軸へと異なる減速比でトルクを伝達する第1及び第2の動力伝達経路とを有し、前記第1の動力伝達経路が前記先端工具を高速低トルクで駆動する第1駆動モード用として定められ、第2の動力伝達経路が前記先端工具を低速高トルクで駆動する前記第2駆動モード用として定められており、前記先端工具の負荷状態に応じて移動することで前記第1の動力伝達経路から前記第2の動力伝達経路へと動力伝達経路を切替える切替作動部材を有する動力工具。
  4. 請求項3に記載の動力工具であって、
    前記所定の設定状態は、前記先端工具の負荷状態に応じて移動する前記切替作動部材の位置に基づいて検知する構成としたことを特徴とする動力工具。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の動力工具であって、
    前記検知及び報知手段は、前記第1駆動モード及び前記第2駆動モードを検知して報知するよう構成されていることを特徴とする動力工具。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の動力工具であって、
    前記検知及び報知手段は、前記第2作業モードにおける重負荷状態についても更に検知して報知するよう構成されていることを特徴とする動力工具。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の動力工具であって、
    前記報知手段は、発光体によって構成されていることを特徴とする動力工具。
  8. 請求項7に記載の動力工具であって、
    前記発光体は、前記先端工具による作業位置を照射するように配置されていることを特徴とする動力工具。
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