JP5017186B2 - 動力工具 - Google Patents
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特に、従来の変速機構のように、ギアを軸に沿ってスライドさせてギアの噛み合いを切替えることで変速する構成の場合であれば、軸とギアの嵌合面のクリアランスによるがたつきがあり、摩耗を生じ易く、ギアの耐久性に問題がある。また、ギアの噛み合いを切替える際、ギアが切り離される間際、及びギアが噛み合う初期に、歯面の微小な領域でトルクを受けることから、歯の欠けあるいは摩耗といった強度上の問題が生ずることになり、更には、噛み合うときには、歯の干渉によって異音が発生するといった問題もある。しかしながら、本発明によれば、ギアを常時噛み合い式とすることで、ギアの噛み合いを切替える従来方式に見受けられる上記の各問題を解決することができる。
また、本発明における第1の動力伝達経路の構成要素である第1のギア列のギア比(減速比)と、第2の動力伝達経路の構成要素である第2のギア列のギア比は、互いに異なるように設定される。このため、例えば先端工具に作用する負荷が小さい状態では、ギア比の小さい、例えば第1の動力伝達経路を用いて高速低トルクで加工作業を行い、負荷が大きい状態では、ギア比の大きい、第2の動力伝達経路を用いて低速高トルクで加工作業を行なうことができる。
本発明によれば、第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路の間で一旦伝達経路が切替えられると、切替保持機構によって切替えられた状態に保持されるため、その後は先端工具に加わる負荷が減っても再び動力伝達経路が切替わることがない。このため、頻繁な切替わりによる耐摩耗性への悪影響あるいは振動の発生といった問題が解消される。
本発明によれば、スライド側のクラッチ部材が動力遮断位置へと移動されたとき、ラッチ部材によってスライド側のクラッチ部材を動力遮断位置に保持できるため、クラッチの動力遮断状態を確実なものとすることができる。
先端工具に加わる負荷の大きさに応じてクラッチが動力伝達位置と動力遮断位置との間で切替わる構成の場合、先端工具に加わる負荷が切替設定値付近で変動すると、クラッチが頻繁に切替わることになり、それに伴い耐久性に悪影響を及ぼす、あるいは動力工具に振動を発生させることにつながる。しかるに、本発明によれば、ラッチ部材によってクラッチが動力遮断状態に保持されることで、上記の問題を解消することができる。
本発明によれば、切替保持機構の構成部材である、ラッチ部材及び付勢部材がギアハウジングに配置されている。このため、スライド側のクラッチ部材を単純な形状とすることができる。
本発明によれば、変速動作の円滑性の高い平行軸式の変速機構を備えた切断工具を提供することができる。例えば、丸鋸のような切断工具においては、切断作業中に動力伝達経路の切替わりが頻繁に行なわれ、鋸刃の回転速度が頻繁に変速すると、被加工材の切断面に悪影響を及ぼす可能性がある。しかるに、本発明によれば、変速後には当該変速状態に維持されるため、切断面に対する悪影響が回避される。
以下、本発明の第1の実施形態につき、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、動力工具の一例としてバッテリを搭載した充電式の丸鋸を用いて説明する。図1は本実施の形態に係る丸鋸101の全体構成を示す側面図であり、図2は丸鋸101の全体構成を示す側断面図であり、図3は丸鋸101の全体構成を示す正面から見た断面図である。図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る丸鋸101は、概括的に見て、被加工材(便宜上図示を省略する)上に載置されて切断方向に移動されるベース111と、当該ベース111の上方に配置される丸鋸本体部103を主体として構成される。丸鋸本体部103は本発明における「動力工具本体」に対応する。
このように、ブレード113に作用する負荷に応じてトルクの伝達経路が高速低トルクの第1動力伝達経路P1から低速高トルクの第2動力伝達経路P2に自動的に切替わる構成としたことにより、変速機構を有しない丸鋸に比べて、駆動モータ115の焼損防止が図れるとともに、バッテリ108の1充電当たりの切断作業量を向上することができる。
ところで、丸鋸101の最大切り込み深さ(ベース111下面からのブレード111の下縁部の突出量)は、図2において、作業者が、ハンドグリップ109を下向きに押し下げて丸鋸本体部103を、ベース111の前端部に設定された回動軸(便宜上図示を省略する)を回動支点にして回動させたとき、便宜上図示を省略するが、ギアハウジング107に設けられた最大切り込み深さの規制部がベース111のストッパに当接することで規定される。従って、例えば外径の大きい摺動式噛み合いクラッチ141を出力軸125に設けたときは、出力軸125の中心からギアハウジング107の下端面107Lまでの距離が大きくなってしまい、最大切り込み能力に影響する。つまり最大切り込み能力が低下することになるが、本実施の形態によれば、中間軸123に摺動式噛み合いクラッチ141を設ける構成としたことにより、出力軸125からギアハウジング107の下端面107Lまでの距離を小さく設定することが可能なため、最大切り込み能力に影響しない。
すなわち、トルクリング152は、駆動側クラッチ部材142が動力伝達状態から動力遮断状態へと切替わる際、当該駆動側クラッチ部材142の山形カム142aが被動側クラッチ部材143の山形カム143aから離間する動力遮断位置よりも更に後退移動された位置、つまり山形カム142a,143a間に長軸方向の所定の隙間が確保される隔離位置へと移動させて当該隔離位置に保持する。このように、摺動式噛み合いクラッチ141は、一旦動力遮断側に切替わると、その後ブレード113に加わる負荷の如何に拘わらず動力遮断状態を保持するため、ブレード113に加わる負荷がクラッチバネ144にて設定される切替設定値の周辺で変動した場合であっても、第2動力伝達経路P2を使用しての低速高トルクでの安定した切断作業を遂行することが可能となる。また、駆動側クラッチ部材142が隔離位置へと移動されて当該隔離位置に保持されることで、山形カム142a,143a間に長軸方向に一定の隙間が確保されるので、確実な動力遮断状態が得られ、山形カム142a,143aの当接による異音あるいは振動の発生を防止できる。
次に本発明の第2の実施形態につき、図17及び図18を参照して説明する。本実施の形態は、出力軸125上に摺動式噛み合いクラッチ141を設け、出力軸125上で変速を行う構成としたものであり、この構成以外については、前述した第1の実施形態と同様に構成される。従って、図17及び図18に示された各構成部材については、同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。なお、図17及び図18は変速機構117の構成を示す展開断面図である。
次に本発明の第3の実施形態につき、図19〜図21を参照して説明する。この実施形態は、摺動式噛み合いクラッチ141が一旦動力遮断状態に切替わった後は、当該切替わった状態に保持するラッチ機構251に関する変形例である。ラッチ機構251以外については、前述した第1の実施の形態と同様に構成される。従って、図19及び図20に示されたラッチ機構251に関係しない変速機構117の各構成部材については、同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。なお、図19及び図20は展開断面図として示され、図21は図19のD部の拡大図である。
更にまた、サンダーやダイヤコアドリル等のように、一台の動力工具において、作業に用いる先端工具の寸法の相違や被加工材の相違等により、先端工具に加わる負荷が相違する動力工具に用いると有効である。
(態様1)
「請求項3に記載の動力工具であって、
前記スライド側のクラッチ部材の側面には、前記凹部の回転方向前方領域と連接する斜面が更に形成されており、
前記ラッチ部材は、前記スライド側のクラッチ部材が動力遮断位置へと移動された際には、当該移動動作に基づき前記凹部から脱出するとともに、当該脱出によって生ずる前記スライド側のクラッチ部材との回転速度差によって前記斜面に乗り上げ、これにより動力遮断位置へと移動された前記スライド側のクラッチ部材を対向側のクラッチ部材から更に引き離すように移動させて当該移動させた隔離位置に保持する構成としたことを特徴とする動力工具。」
態様1に記載の発明によれば、スライド側のクラッチ部材を、噛み合い係合が解除される動力遮断位置よりも更に離間した隔離位置へと移動させて保持する構成であり、このため、確実な動力遮断状態が得られ、駆動側と被動側のクラッチ部材の相互干渉による異音あるいは振動の発生を防止できる。
103 丸鋸本体部(動力工具本体)
104 ブレードケース
105 モータハウジング
106 セーフティカバー
107 ギアハウジング
107L 下端面
107a ラッチ装着領域
108 バッテリ
109 ハンドグリップ
109a トリガ
111 ベース
111a 開口
113 ブレード
115 駆動モータ
116 モータ軸
117 変速機構
121 入力軸
121a 軸受
123 中間軸(第1の回転軸)
123a 軸受
125 出力軸(第2の回転軸)
125a 軸受
131 ピニオンギア
132 第1中間ギア
133 第2中間ギア
134 第1被動ギア
135 第3中間ギア
136 第2被動ギア
137 キー
138 軸受
139 キー
141 摺動式噛み合いクラッチ(第1のクラッチ)
142 駆動側クラッチ部材
142a 山形カム
143 被動側クラッチ部材
143a 山形カム
144 クラッチバネ
145 ワンウェイクラッチ(第2のクラッチ)
146 外輪
146a カム溝
146b カム面
147 針状ころ
148 バネ
151 ラッチ機構(切替保持機構)
152 トルクリング(ラッチ部材)
152a 突部
153 収容空間(凹部)
153a 係合凹部
153b トルク伝達面
153c 斜面
153d ストッパ面
161 変速規制機構
162 ストッパ
163 圧縮コイルバネ
164 ストッパ収容凹部
165 環状溝
166 ガイドピン
167 カバー部材
251 ラッチ機構(切替保持機構)
252 ボール(ラッチ部材)
253 スライドブロック
253a スライド面
253b 切欠部
254 圧縮コイルバネ(付勢部材)
255 ボール保持孔
256 曲面(係合部)
Claims (7)
- 動力源と、変速機構を有し、前記動力源から前記変速機構を介して駆動される先端工具に所定の加工作業を遂行させる動力工具であって、
前記変速機構は、互いに平行に配置された第1及び第2の回転軸と、互いに噛合い係合されるとともに前記第1の回転軸のトルクを第2の回転軸に伝達する駆動ギアと被動ギアの組み合わせを1単位とし、かつ互いにギア比が異なる第1及び第2のギア列を有し、前記第1のギア列を経由するトルクの伝達経路が第1の動力伝達経路として定められ、前記第2のギア列を経由するトルクの伝達経路が第2の動力伝達経路として定められており、前記第1の動力伝達経路上において動力伝達と動力遮断を行う第1のクラッチ、及び前記第2の動力伝達経路上において動力伝達と動力遮断を行う第2のクラッチを更に有し、
前記先端工具に加わる負荷に応じた、前記第1及び第2のクラッチの動力伝達状態と動力遮断状態の間での切替わりによって前記第1及び第2のギア列の噛合い係合状態のままで前記第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路間で伝達経路の切替えがなされる構成とされており、
前記変速機構は、前記第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路の間で伝達経路が切替えられた際、前記動力源が停止されるまで当該切替えられた状態を保持する切替保持機構を有することを特徴とする動力工具。 - 請求項1に記載の動力工具であって、
前記第1及び第2のクラッチの少なくとも一方は、前記第1または第2の回転軸上において、互いに対向状に配置された駆動側クラッチ部材と被動側クラッチ部材によって構成されるとともに、前記駆動側クラッチ部材と被動側クラッチ部材のいずれか一方が、互いに噛み合い係合して動力伝達状態とされる動力伝達位置と、噛み合い係合を解除して動力遮断状態とされる動力遮断位置の間で長軸方向にスライド動作する摺動式噛み合いクラッチによって構成されており、
前記切替保持機構は、前記駆動側クラッチ部材または被動側クラッチ部材が動力遮断位置に移動されたとき、当該移動されたスライド側のクラッチ部材と係合し、これにより当該スライド側のクラッチ部材を動力遮断位置に保持するラッチ部材を有することを特徴とする動力工具。 - 請求項2に記載の動力工具であって、
前記スライド側のクラッチ部材の側面には、凹部が形成されており、
前記ラッチ部材は、前記第1または第2の回転軸に固定されるとともに、前記凹部に対し周方向に相対移動不能に収容され、これにより第1または第2の回転軸と前記スライド側のクラッチ部材の間でトルクを伝達する構成とされており、前記スライド側のクラッチ部材が動力遮断位置へと移動された際には、当該移動動作に基づき前記凹部から脱出するとともに、当該脱出によって生ずる前記スライド側のクラッチ部材との回転速度差により回転方向に相対移動してスライド側のクラッチ部材の側面と係合し、これにより当該スライド側のクラッチ部材を動力遮断位置に保持する構成としたことを特徴とする動力工具。 - 請求項2に記載の動力工具であって、
前記変速機構を収容するギアハウジングを有し、
前記スライド側のクラッチ部材の外周面には、係合部が形成されており、
前記切替保持機構は、前記ギアハウジングに径方向への移動可能に設けられて前記スライド側のクラッチ部材の外周面に径方向から当接するラッチ部材と、当該ラッチ部材を前記スライド側のクラッチ部材に当接させる方向へと付勢する付勢部材を有し、前記スライド側のクラッチ部材が動力遮断位置へと移動された際、前記ラッチ部材が前記係合部と係合し、これにより当該移動されたスライド側のクラッチ部材を動力遮断位置に保持する構成としたことを特徴とする動力工具。 - 請求項1に記載の動力工具であって、
前記動力源が停止された際に、前記切替保持機構を初期状態に戻すリセット機構を有することを特徴とする動力工具。 - 請求項3に記載の動力工具であって、
前記ラッチ部材は、前記動力源を停止するべく当該動力源にブレーキが作用した際、前記スライド側のクラッチ部材と前記ラッチ部材の間に生ずる回転速度差によって前記凹部に戻される構成としたことを特徴とする動力工具。 - 請求項1〜6のいずれか1つに記載の動力工具であって、
前記動力源及び前記変速機構を収容する動力工具本体と、
前記動力工具本体の下方に配置されるとともに、被加工材上に載置可能なベースと、を有し、
前記先端工具は、前記動力源により前記変速機構を介して回転駆動されることで被加工材を切断する鋸刃として構成されていることを特徴とする動力工具。
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