JP5378036B2 - 焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備 - Google Patents

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本発明は、廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備に関する。
廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰を溶融処理するにあたって、溶融炉に装備する燃焼用バーナなどの燃焼式加熱装置の加熱能力を特に増強することなく、焼却灰を溶融処理することができるように、焼却灰と廃プラスチックとを混合して成形してある成形物を溶融炉に供給して、成形物に含まれる廃プラスチックを溶融炉内で燃焼させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、都市ゴミなどの廃棄物の焼却灰には鉛などの重金属成分が含まれており、それらの重金属成分が高濃度に溶融スラグに移行すると、そのスラグの埋立処分地等において、雨水や地下水によって固化したスラグから重金属成分が溶出するおそれがある。
このため、溶融炉内を還元雰囲気にしておくことによって、重金属を排ガス中に移行し易くしている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2004−317059号公報 特開2001−311515号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、プラスチックを巧く活用することにより、燃焼式加熱装置の加熱能力を特に増強することなく焼却灰を溶融処理することができ、焼却灰に含まれる重金属成分の溶融スラグへの移行も効果的に低減できるようにすることを目的とする。
本発明の第1特徴構成は、廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の溶融処理方法であって、プラスチック粒子を軟化させた状態で前記焼却灰としての焼却飛灰前記プラスチック粒子の表面に付着させて、前記焼却飛灰が付着した前記プラスチック粒子を燃焼式溶融炉において溶融する点にある。
本構成の溶融処理方法であれば、焼却灰を表面に付着させてあるプラスチック粒子を、燃焼式溶融炉において燃焼させて、燃焼式加熱装置の加熱能力を補強することができる。
焼却灰を表面に付着させてあるプラスチック粒子を燃焼させるので、プラスチック粒子表面の焼却灰に含まれる重金属成分を高温に加熱して、溶融排ガス中に揮散させ易い。
図2に例示するように、プラスチック粒子12は、バーナー13などの燃焼炎14から離れていて酸素が比較的少ない焼却灰Dの溶融面15近くにおいて燃焼するので、溶融面15が局所的に還元雰囲気になり易く、重金属成分が例えば酸化鉛のような溶融スラグに移行し易い酸化化合物の状態で存在している場合に、その酸化化合物の重金属成分を還元して、溶融排ガス中に揮散させ易い。
プラスチック粒子が塩化ビニル樹脂などのように塩素成分を含む塩素系樹脂を原料とする場合は、プラスチック粒子の塩素成分から生成された塩化水素ガスを重金属成分に作用させて、揮発性を備えた重金属化合物を生成させることにより、重金属成分を溶融排ガス中に揮散させ易い。
また、プラスチック粒子が熱可塑性プラスチック粒子の場合は、加熱により軟化しているプラスチック粒子どうしの接着を表面に付着させてある焼却灰で防止して、プラスチック粒子の燃焼を促進することもできる。
従って、燃焼式加熱装置の加熱能力を特に増強することなく焼却灰を溶融処理することができ、焼却灰に含まれる重金属成分の溶融スラグへの移行も低減できる。
本発明の第2特徴構成は、廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の溶融処理方法であって、プラスチック粒子を軟化させた状態で前記焼却灰を前記プラスチック粒子の表面に付着させて、前記焼却灰が付着した前記プラスチック粒子を燃焼式溶融炉において溶融する点にある。
本構成であれば、焼却飛灰には、焼却主灰に比べて多くの重金属成分が含まれており、重金属成分の溶融スラグへの移行を一層効果的に防止できる。
本発明の第3特徴構成は、焼却炉から排出された焼却排ガス中の焼却飛灰を回収する焼却飛灰回収手段と、プラスチック粒子を軟化させて、その軟化状態のプラスチック粒子の表面に前記焼却飛灰回収手段で回収した前記焼却飛灰を付着させる焼却飛灰処理部と、前記焼却飛灰処理部で前記焼却飛灰を付着させた前記プラスチック粒子を燃焼させて前記焼却飛灰を溶融処理する燃焼式溶融炉とが設けられている点にある。
本構成の溶融処理設備であれば、焼却飛灰回収手段よって焼却排ガス中から回収した焼却飛灰を造粒手段によって表面に付着させてあるプラスチック粒子を燃焼式溶融炉において燃焼させて、焼却灰を溶融処理することができる。
従って、溶融処理設備における一連の溶融処理工程の中で、プラスチック粒子の表面に付着させた焼却飛灰を局所還元できるようになるので、効率的に重金属を揮散させることができる。
本発明の第4特徴構成は、前記燃焼式溶融炉が回転式表面溶融炉である点にある。
本構成であれば、焼却主灰などの溶融処理対象物に混合したプラスチック粒子を溶融面近くにおいて燃焼させて、溶融処理対象物を効率良く溶融処理することができる。
尚、燃焼式溶融炉が回転式表面溶融炉である場合は、プラスチック粒子を混合してある溶融処理対象物をプッシャーで表面溶融炉に送るような場合に比べて、プラスチック粒子を回転筒などに設けてある羽根で溶融面全体に均等に分散させることができる。
溶融処理設備の系統図 溶融処理方法の説明図
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による焼却灰の溶融処理方法に使用する溶融処理設備を示す。
溶融処理設備は、都市ゴミなどの廃棄物や産業廃棄物(以下、単に廃棄物という。)Aを焼却するストーカー式焼却炉1と、焼却炉1から排出された焼却排ガスを無害化する焼却排ガス処理部2と、プラスチック粒子を造粒しながら、そのプラスチック粒子の表面に後述する焼却飛灰回収手段で回収した焼却飛灰を付着させる造粒手段としての低温加熱造粒装置3を備えた焼却飛灰処理部4と、焼却炉1の焼却主灰と焼却飛灰とからなる焼却灰を溶融する燃焼式溶融炉としての回転式表面溶融炉5と、溶融炉5から排出された溶融排ガスを無害化する溶融排ガス処理部6とを設けてある。
焼却排ガス処理部2には、焼却炉1から排出された焼却排ガスを冷却する第1冷却器7と、冷却された焼却排ガス中から焼却飛灰を分離して回収する焼却飛灰回収手段としての第1バグフィルター8と、焼却飛灰を回収した後の焼却排ガス中の酸性ガス成分とアルカリ薬剤との反応で塩類を生成させる焼却排ガス反応手段9とを設けてある。
焼却排ガス反応手段9は、焼却排ガス中の酸性ガス成分である塩化水素ガスとアルカリ薬剤である水酸化ナトリウム( NaOH) 水溶液とを反応させる湿式処理により、塩化ナトリウム( NaCl) を生成させるもので、焼却排ガス中に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧するシャワーなどの噴霧器10を設けて構成してある。
焼却排ガス反応手段9において生成した塩化ナトリウム( NaCl) は、その水溶液を山元還元し、湿式処理後の焼却排ガスは煙突11から大気に放出させる。
焼却排ガス中の酸性ガスを第1バグフィルター8で十分に除去してあれば、焼却排ガス反応手段9として乾式の脱硝装置を設けてあっても良い。
焼却飛灰処理部4は、廃棄物Aから分別した廃プラスチックBを低温加熱造粒装置3で直径30mm以下のプラスチック粒子に造粒しながら、第1バグフィルター8で回収した焼却飛灰の一部をそのプラスチック粒子の表面に付着させる処理を行う。
具体的には、塩化ビニル樹脂などのように塩素成分を含む塩素系樹脂を含む廃プラスチックBを原料にして、低温加熱造粒装置3で、それらを200℃程度の温度で軟化させて、軟化したプラスチック片どうしが団子状に固まらないように焼却飛灰を混合しながら、表面に焼却飛灰が付着しているプラスチック粒子を造粒する。
尚、焼却排ガス中の焼却飛灰中には鉄成分粒子や小石などが混じっていないので、焼却飛灰を低温加熱造粒装置3に投入するにあたって、それらの鉄成分粒子や小石などを選別して除去する工程を経ることなく投入することができる。
外熱キルン乾燥機で1rpm以上の回転速度で10〜20分間加熱(180℃)すると、プラフィルムについては破砕前処理を施さずとも、ほとんどのものが30mm以下の粒子に細粒化された。尚、焼却飛灰は廃プラスチックBと同程度の量を添加する。
溶融炉5には、焼却炉1の焼却主灰と、第1バグフィルター8で回収した焼却飛灰とが供給される。
尚、一般的には、焼却灰の全体のうちの焼却主灰が占める量は60〜70%程度であり、焼却飛灰が占める量は30〜40%程度である。また、焼却飛灰には、通常、焼却主灰に比べて10倍程度の重金属成分が含まれている。
焼却飛灰の一部は、プラスチック粒子の表面に付着させた状態でプラスチック粒子と共に、焼却主灰と焼却飛灰とに混ぜて溶融炉5に供給され、バーナによる加熱と、プラスチック粒子の燃焼熱で焼却主灰と焼却飛灰とが溶融処理される。
溶融炉5は、内筒21の下端部に切出羽根22を設けてあり、焼却主灰と焼却飛灰とに混ぜたプラスチック粒子をこの切出羽根22で溶融面全体に均等に分散させることができる。
溶融炉5において溶融させた焼却主灰と焼却飛灰は炉外に排出されて急冷固化され、スラグCとして回収される。
焼却炉1の焼却灰Dと、焼却飛灰を表面に付着させてあるプラスチック粒子とを溶融炉5に混合供給して、プラスチック粒子を燃焼させるので、バーナなどの燃焼式加熱装置の加熱能力を補強することができるとともに、焼却主灰又は焼却飛灰に含まれる鉛(Pb)やカドミウム(Cd),亜鉛(Zn)などの重金属成分を溶融排ガス中に揮散させ易い。
図2に示すように、プラスチック粒子12は、バーナー13などの燃焼炎14から離れていて酸素が比較的少ない焼却灰Dの溶融面15近くにおいて燃焼するので、溶融面15近くが局所的に還元雰囲気16になり易い。
このため、焼却主灰又は焼却飛灰に含まれている重金属成分が例えば酸化鉛のような溶融スラグに移行し易い酸化化合物の状態で存在している場合に、その酸化化合物の重金属成分を還元して、溶融排ガス中に揮散させ易い。
また、プラスチック粒子12が塩素系樹脂を含む廃プラスチックBを原料とするものであるので、溶融炉5内の高温雰囲気によりプラスチック粒子12の塩素成分から生成された塩化水素ガス(HCl)を重金属成分に作用させて、塩化鉛(PbCl2)や塩化カドミウム(CdCl2),塩化亜鉛(ZnCl2)などの揮発性を備えた重金属化合物を生成させることにより、重金属成分を溶融排ガス中に揮散させ易い。
例えば、鉛(Pb)の沸点が約1740℃であり、また、酸化鉛(PbO)の沸点が約1500℃(1480℃)であるのに対して、塩化水素ガス(HCl)を作用させて生成した塩化鉛(PbCl2)の沸点は約950℃であるので、鉛成分を溶融排ガス中に揮散させ易い。
溶融排ガス処理部6には、溶融炉5から排出された溶融排ガスを冷却する第2冷却器17と、冷却された溶融排ガス中の酸性ガス成分とアルカリ薬剤との反応で塩類を生成させる溶融排ガス反応手段18と、溶融飛灰と溶融炉5で生成された重金属化合物と溶融排ガス反応手段18で生成された塩類とを溶融排ガス中から分離する第2バグフィルター19とを設けてある。
溶融排ガス反応手段18は、溶融炉5において重金属成分との反応に使用されなかった酸性ガス成分である塩化水素ガス(HCl)と、アルカリ薬剤である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)との反応で塩化カルシウム(CaCl2)を生成させるもので、溶融排ガス中に水酸化カルシウム(消石灰)を吹き込み供給する薬剤供給装置20を設けて構成してある。
第2バグフィルター19は、溶融飛灰と、塩化鉛や塩化カドミウム,塩化亜鉛などの重金属化合物と、溶融排ガス反応手段18で生成された塩化カルシウム、及び未反応の水酸化カルシウムを捕捉して分離する。
溶融炉5で生成された重金属化合物は、溶融炉5内の高温雰囲気により溶融排ガス中に揮散しているが、第2冷却器17で溶融排ガスを冷却することにより固化させるので、その固化した重金属化合物を第2バグフィルター19で捕捉できる。
第2バグフィルター19で分離した溶融飛灰に含まれる重金属とアルカリ金属やアルカリ土類金属を山元還元し、第2バグフィルター19を通過した溶融排ガスは、焼却排ガス反応手段9で焼却排ガスと共に湿式処理され、湿式処理後の溶融排ガスは焼却排ガスと共に煙突11から大気に放出される。
本実施形態によれば、回転式表面溶融炉5で生成された重金属化合物を山元還元するので、従来に比べて多くの重金属を回収できる。
〔その他の実施形態〕
1.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、回転式表面溶融炉、反射式表面溶融炉、放射式表面溶融炉、旋回流式溶融炉、ロータリーキルン式溶融炉、コークスベッド式溶融炉、キルン式溶融炉、流動庄式溶融炉、シャフト炉式溶融炉、電気式溶融炉
(交流アーク式溶融炉、電気抵抗式溶融炉、プラズマ式溶融炉、誘導式溶融炉)などの燃焼式溶融炉で焼却灰を溶融処理するものであっても良く、これらの溶融炉には、燃焼空気を導入して燃焼させる場合も含む。
2.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、旋回式又は固定式の表面溶融炉で焼却灰を溶融処理するものであっても良い。
3.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、焼却飛灰の一部又は全量をプラスチック粒子の表面に付着させて、燃焼式溶融炉において溶融しても良い。
4.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、焼却主灰の一部又は全量をプラスチック粒子の表面に付着させて、燃焼式溶融炉において溶融しても良い。
5.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、廃プラスチック以外のプラスチック粒子の表面に焼却灰を付着させても良い。
6.本発明による焼却灰の溶融処理方法と溶融処理設備は、塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂からなるプラスチック粒子の表面に焼却灰を付着させても良い。
1 焼却炉
3 造粒手段
5 燃焼式溶融炉(回転式表面溶融炉)
8 焼却飛灰回収手段
12 プラスチック粒子
A 廃棄物
D 焼却灰

Claims (4)

  1. 廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の溶融処理方法であって、
    プラスチック粒子を軟化させた状態で前記焼却灰としての焼却飛灰前記プラスチック粒子の表面に付着させて、前記焼却飛灰が付着した前記プラスチック粒子を燃焼式溶融炉において溶融する焼却灰の溶融処理方法。
  2. 廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の溶融処理方法であって、
    プラスチック粒子を軟化させた状態で前記焼却灰を前記プラスチック粒子の表面に付着させて、前記焼却灰が付着した前記プラスチック粒子を燃焼式溶融炉において溶融する焼却灰の溶融処理方法。
  3. 焼却炉から排出された焼却排ガス中の焼却飛灰を回収する焼却飛灰回収手段と、
    プラスチック粒子を軟化させて、その軟化状態のプラスチック粒子の表面に前記焼却飛灰回収手段で回収した前記焼却飛灰を付着させる焼却飛灰処理部と、
    前記焼却飛灰処理部で前記焼却飛灰を付着させた前記プラスチック粒子を燃焼させて前記焼却飛灰を溶融処理する燃焼式溶融炉とが設けられている溶融処理設備。
  4. 前記燃焼式溶融炉が回転式表面溶融炉である請求項3記載の溶融処理設備。
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