JP3862940B2 - 飛灰の処理方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛灰の処理方法に関する技術分野に属し、特には、廃棄物焼却炉の排ガス中の飛灰についての無害化と減容化のための溶融処理に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
特開平11-76995号公報には、都市ごみ焼却炉の飛灰の無害化と減容化のために飛灰を溶融処理するに際し、飛灰に廃ガラス等の添加物を加えて被溶融物の(Na +K)/Cl 、CaO/SiO2、及び、Al2O3/(CaO+SiO2+Al2O3)を調整することを特徴とする飛灰溶融処理方法が記載されている。また、溶融炉への空気の供給についても記載されている。溶融処理のための溶融炉に関し、その種類としては特定されておらず、実施例においては上部加熱素子と下部加熱素子とにより加熱する方式のものが使用されたと記載されている。
【0003】
特開平10-323644 号公報には、ごみ焼却炉の排ガス流路に、HCl 除去剤として炭酸カルシウム等のカルシウム含有物質の粉末を投入すると共に、高温で塩化カルシウムとの反応性を有するアルカリ金属化合物を含む物質の粉末を投入し、投入した粉末及びその反応生成物をごみ焼却炉から飛散してくる煤じんと一緒に集じん機で捕集し、捕集された物質を電気抵抗式溶融炉にて溶融処理することを特徴とするごみ焼却飛灰の溶融処理方法が記載されている。
【0004】
特開平11-165036 号公報には、廃棄物焼却炉の排ガスを集じん機により集じん処理し、この集じん機に捕集された塩類等を含む灰(集じん機捕集灰)を溶融処理するに際し、前記排ガスに消石灰等のカルシウム系薬剤と重炭酸ソーダ等のナトリウム系薬剤を添加して、集じん機捕集灰のカルシウムとナトリウムの含有量を調整することを特徴とする廃棄物焼却炉排ガスの処理方法が記載されている。溶融処理のための溶融炉の種類については、特定されておらず、また、何も記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開平11-76995号公報に記載された飛灰溶融処理方法においては、飛灰に廃ガラス等の添加物を加えるため、この添加物により、溶融処理すべき飛灰等の溶融処理対象物(被溶融物)の量が増大するという問題点がある。
【0006】
また、溶融炉への空気の供給についても記載されているものの、常温の空気を供給するというのでは溶融塩の揮発が不充分であるという問題点がある。即ち、溶融処理対象物(被溶融物)の中には塩化物(NaCl、KCl 、CaCl2 等)が含まれており、これらの塩化物は溶融処理の際に溶融して溶融塩となり、この溶融塩は溶融処理の際に揮発して系外に排出されることが重要であるが、上記のような方法では、この溶融塩の揮発が不充分である。このように溶融塩の揮発が不充分であると、溶融塩が溶融炉内に残留し、蓄積されて滞留し、このため安定した溶融処理の操業をすることが困難になる。
【0007】
特開平10-323644 号公報に記載された飛灰の溶融処理方法においては、焼却炉の排ガス流路にカルシウム含有物質の粉末及びアルカリ金属化合物含有物質の粉末を投入し、投入した粉末及びその反応生成物を焼却炉から飛散してくる煤じんと一緒に集じん機で捕集し、捕集された物質を溶融処理するので、溶融処理対象物の量が増大するという問題点がある。これは、塩化水素との反応剤としてカルシウム含有物質を投入し、さらにアルカリ金属化合物含有物質を投入するからである。また、溶融塩のキャリアガス投入については何も記載されていないので、溶融塩のキャリアガス投入をしておらず、このため溶融塩の揮発が不充分であると考えられる。
【0008】
特開平11-165036 号公報に記載された廃棄物焼却炉排ガスの処理方法においては、溶融塩のキャリアガス投入をしておらず、このため溶融塩の揮発が不充分であると考えられる。
【0009】
本発明は、このような事情に着目してなされたものであって、その目的は、廃棄物焼却炉の排ガスにHCl 除去剤を添加し、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された物質(HCl とHCl 除去剤の反応物である塩化物等を含む飛灰)を溶融処理対象物(被溶融物)として溶融炉において溶融処理するに際し、溶融処理対象物の量の増大が少なく、また、溶融処理対象物の融点が低くて溶融処理温度を低くすることができ、また、溶融処理の際に溶融塩が充分に揮発して溶融塩の溶融炉内滞留の発生を抑制することができ、更に、溶融処理の際に発生する排ガス中のHCl 量を低減することができる飛灰の処理方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る飛灰の処理方法は請求項記載の飛灰の処理方法としており、それは次のような構成としたものである。
【0011】
即ち、請求項1記載の飛灰の処理方法は、廃棄物の焼却炉より発生する排ガスに HCl除去剤としてナトリウム系薬剤のみを添加した後、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された飛灰を、そのまま、プラズマガスを空気としたプラズマトーチを用いたプラズマ溶融方式の溶融炉においてプラズマにより溶融処理することを特徴とする飛灰の処理方法である(第1発明)。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る飛灰の処理方法は、前述の如く、廃棄物の焼却炉より発生する排ガス(以下、焼却炉排ガスという)に HCl除去剤としてナトリウム系薬剤のみを添加した後、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された飛灰(以下、集じん装置捕集物ともいう)をそのままプラズマトーチを用いたプラズマ溶融方式の溶融炉(以下、プラズマ溶融炉という)においてプラズマにより溶融処理するようにしている。
【0014】
前記焼却炉排ガスに添加されるナトリウム系薬剤は、HCl 除去剤として作用するものであり、より詳細には、前記ナトリウム系薬剤は、前記焼却炉排ガス中のHCl と反応し、このHCl を塩化物にする作用を有する。従って、本発明に係る飛灰の処理方法は、HCl 除去剤としてはナトリウム系薬剤を使用することに特徴を有するものであるといえる。そして、溶融処理対象物の溶融処理のための溶融炉としてはプラズマトーチを用いたプラズマ溶融炉を使用することに特徴を有するものであるといえる。即ち、本発明に係る飛灰の処理方法は、廃棄物の焼却炉より発生する排ガスにHCl 除去剤を添加した後、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された飛灰を溶融炉において溶融処理する飛灰の処理方法であって、前記HCl 除去剤としてはナトリウム系薬剤を添加し、前記溶融炉としてプラズマトーチを用いたプラズマ溶融炉を使用しプラズマにより溶融処理をすることを特徴とする廃棄物焼却炉排ガスの処理方法であるといえる。換言すれば、廃棄物の焼却炉より発生する排ガスにHCl 除去剤を添加した後、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された物質を溶融炉において溶融処理する廃棄物焼却炉排ガスの処理方法であって、前記HCl 除去剤としてはナトリウム系薬剤を添加し、前記溶融炉としてプラズマトーチを用いたプラズマ溶融炉を使用しプラズマにより溶融処理をすることを特徴とする廃棄物焼却炉排ガスの処理方法である。
【0015】
このようにHCl 除去剤としてナトリウム系薬剤のみを使用するので、これに起因して、溶融処理対象物の量の増大が少なく、また、溶融処理対象物の融点が低くて溶融処理温度を低くすることができ、更に、溶融処理の際に発生する排ガス(以下、溶融処理時排ガスという)中のHCl 量を低減することができる。また、HCl 除去剤としてナトリウム系薬剤のみを使用すると共に、溶融処理対象物の溶融処理のための溶融炉としてプラズマトーチを用いたプラズマ溶融炉を使用するので、これに起因して、溶融処理の際に溶融塩が充分に揮発して溶融塩の溶融炉内滞留の発生を抑制することができる。
【0016】
この詳細を以下説明する。
【0017】
本発明に係る飛灰の処理方法は、前記の如く、HCl 除去剤としてナトリウム系薬剤のみを使用するので、この薬剤の添加、集じん処理後に得られる集じん装置捕集物は、焼却炉排ガス中に含まれていた飛灰と、ナトリウム系薬剤と焼却炉排ガス中のHCl との反応生成物である塩化物とを含んでおり、あるいは更に少量の未反応ナトリウム系薬剤を含んでいる。そして、この集じん装置捕集物は、溶融処理対象物(被溶融物)として溶融処理に供される。
【0018】
前記ナトリウム系薬剤と焼却炉排ガス中HCl との反応生成物である塩化物は、前記ナトリウム系薬剤よりも分子量の小さな物質である。このため、投入したナトリウム系薬剤の量に対して生成される塩化物の量が少なく、溶融処理対象物の量の増大が少なくなる。尚、これに対し、HCl 除去剤として例えばカルシウム系薬剤を添加した場合には、カルシウム系薬剤と焼却炉排ガス中HCl との反応生成物である塩化物は、前記カルシウム系薬剤よりも分子量の大きな物質であり、このため、投入したカルシウム系薬剤の量に対して生成する塩化物の量が多く、溶融処理対象物の量の増大が大きくなる。
【0019】
前記溶融処理に供される集じん装置捕集物(即ち、溶融処理対象物)は、前記の如く、飛灰と、ナトリウム系薬剤とHCl との反応生成物である塩化物、あるいは更に少量の未反応ナトリウム系薬剤を含んでいるので、ナトリウムを比較的多く含んでおり、このため融点が低く、従って、溶融処理の際の溶融処理温度を低くすることができる。尚、これに対し、HCl 除去剤として例えばカルシウム系薬剤を添加した場合には、溶融処理対象物はカルシウムを比較的多く含んでおり、このため、融点が高く、従って、溶融処理の際の溶融処理温度を高くしなければならない。
【0020】
本発明に係る飛灰の処理方法の場合の溶融処理対象物は、前記のような組成を有するものであるので、この溶融処理対象物の溶融処理に際してHCl が発生し難く、このため溶融処理時排ガス中のHCl 量を低減することができる。即ち、この溶融処理対象物中のナトリウム系薬剤とHCl との反応生成物である塩化物は、溶融処理の際に化学変化を起こし難く、主に固体から気体への物理的変化を起こして気体として蒸発するので、この塩化物からHCl は発生し難く、このため溶融処理時排ガス中のHCl 量を低減することができる。尚、これに対し、HCl 除去剤として例えばカルシウム系薬剤を添加した場合には、溶融処理対象物はカルシウム系薬剤とHCl との反応生成物である塩化物を含んでおり、この塩化物は溶融処理の際に化学変化を起こしてHCl を発生し、このため溶融処理時排ガス中のHCl 量が多くなる。
【0021】
本発明に係る飛灰の処理方法の場合の溶融処理対象物は、前記のような組成を有することに起因して前記のように融点が低く、また、沸点が低く、このため、溶融処理の際に溶融塩が揮発し易い。また、溶融処理対象物の溶融処理のための溶融炉としてプラズマトーチを用いたプラズマ溶融炉を使用し、プラズマにより溶融処理するので、プラズマの高温により溶融炉内を高温にすることができ、また、多量のプラズマガスが用いられ、これがキャリアガスとして作用するので、溶融処理の際に溶融塩を充分に揮発させ、系外(炉外)に排出させることができる。従って、溶融塩が溶融炉内に残留せず、蓄積されなくなり、このため溶融塩の溶融炉内滞留の発生を抑制することができる。
【0022】
前記プラズマトーチに用いるプラズマガス(プラズマ生成ガス)を空気とすることが望ましい。プラズマ生成ガスとして空気を用いることで、不活性ガス等を用いる場合よりも、低コストで、安定してプラズマを発生させ、かつ、溶融塩の揮発を充分にできるガス量を提供できるからである。
【0023】
本発明に係る飛灰の処理方法において、焼却炉排ガスにHCl 除去剤として添加するナトリウム系薬剤としては、その種類は特には限定されず、種々のナトリウム系薬剤を使用することができ、例えば、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ等を使用することができる。
【0024】
前記ナトリウム系薬剤の添加量については、特には限定されないが、焼却炉排ガス中のHCl 量に応じて設定することが望ましい。例えば、焼却炉排ガス中HCl の全てを塩化物に変化させるだけの添加量とすることが望ましい。
【0025】
【実施例】
本発明の実施例に係る飛灰の処理に用いた廃棄物の焼却炉及び集じん装置を図1に示し、この集じん装置での捕集物質を溶融処理するプラズマ溶融炉を図2に示す。この図1及び図2に示す装置を用いて本発明の実施例に係る飛灰の処理を行った。この詳細を以下説明する。
【0026】
廃棄物はホッパー2より焼却炉1へ投入され、ストーカS上で燃焼し、灰となる。この灰の中、約70%は主灰3として炉底から排出されるが、残り(約30%)は飛灰として焼却炉排ガスとともに煙道4へ流れる。
【0027】
この飛灰を含む焼却炉排ガスは、煙道4から排ガス冷却室5に入り、水スプレー6により冷却される。そして、この排ガスにHCl 除去剤7としてナトリウム系薬剤を添加した後、この排ガスを集じん装置であるバグフィルター8により集じん処理し、このバグフィルター8に捕集された物質(集じん装置捕集物)9をバグフィルター8から排出する。一方、集じん処理された後のガスは、誘引ファン10を経て煙突11より大気中へ放出される。尚、上記ナトリウム系薬剤としては重炭酸ナトリウム〔NaHCO3〕のみを使用した。
【0028】
上記集じん装置捕集物9は、ナトリウム系薬剤と焼却炉排ガス中HCl との反応生成物である塩化物と少量のナトリウム系薬剤を含んでいる飛灰である。
【0029】
上記集じん装置捕集物9は、溶融処理対象物としてスクリューフィーダ16により定量的にプラズマ溶融炉12に供給される。このプラズマ溶融炉12には、3000℃以上の高温を発生するプラズマトーチ13が挿入されており、このプラズマトーチ13にはエネルギー源である直流電力を供給するプラズマ電源装置14が接続され、また、プラズマ生成ガスである空気を送給するための空気コンプレッサー15が接続されている。
【0030】
上記プラズマ溶融炉12に供給された集じん装置捕集物9(溶融処理対象物)は、プラズマの高温により溶融処理され、溶融スラグ17となって排出部18から系外へ排出される。一方、この溶融処理により溶融炉から排ガス19が発生する。この溶融炉から発生した排ガス(以下、溶融炉排ガスという)19には、溶融処理対象物中の飛灰に含まれていた鉛、カドミウム等の低沸点金属が含まれており、また、ナトリウム系薬剤と焼却炉排ガス中HCl との反応生成物である塩化物が気化したもの(塩化物の気体)が含まれている。
【0031】
上記溶融炉排ガス19は、排ガス冷却室20に入り、水スプレー21により冷却された後、HCl 除去用薬剤26が添加され、バグフィルター22により集じん処理され、クリーンな排ガスとなる。そして、この排ガスは、誘引ファン24を経て煙突25より大気中へ放出される。一方、バグフィルター22に捕集された物質23はバグフィルター22から排出される。
【0032】
以上のようにして本発明の実施例に係る飛灰の処理を行った。
【0033】
一方、比較のために、HCl 除去剤7としてナトリウム系薬剤に代えてカルシウム系薬剤を用い、この点を除き本発明の実施例の場合と同様のプロセスにより、飛灰の処理を行った。即ち、比較例に係る飛灰の処理を行った。尚、上記カルシウム系薬剤としては消石灰〔Ca(OH)2 〕を使用した。
【0034】
上記飛灰の処理の結果を以下説明する。
【0035】
表1に、焼却炉排ガスのHCl 除去剤添加処理に関するデータを主に示す。表1からわかる如く、バグフィルター8の入口における焼却炉排ガス中のHCl の濃度:1000ppmをバグフィルター8の出口において100ppmまで低減するのに必要なHCl 除去剤の添加量、即ち、HCl 濃度:1000ppmの焼却炉排ガスをHCl 濃度:100ppmの焼却炉排ガスにするのに必要なHCl 除去剤の添加量は、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は75kg/h、HCl 除去剤が消石灰の場合は65kg/hである。なお、表1において、Na系とは重炭酸ナトリウム〔NaHCO3〕のことであり、Ca系とは消石灰〔Ca(OH)2 〕のことである。また、表2〜5(後記)においても、Na系とは重炭酸ナトリウムのことであり、Ca系とは消石灰のことである。
【0036】
表2に、集じん装置捕集物の量、成分及び融点を示す。表2からわかる如く、集じん装置捕集物9の量、即ち、HCl 除去剤の投入量に対する溶融処理対象物の発生量は、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合の方がHCl 除去剤が消石灰の場合よりも少なくなっている。これは、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウム〔NaHCO3〕の場合は、焼却炉排ガス中のHCl と下記式▲1▼の反応を生じ、反応生成物の塩化物〔NaCl〕が反応前のNaHCO3よりも分子量の小さな物質となるのに対し、HCl 除去剤が消石灰〔Ca(OH)2 〕の場合は、焼却炉排ガス中のHCl と下記式▲2▼の反応を生じ、反応生成物の塩化物〔CaCl2 〕は反応前のCa(OH)2 よりも分子量の大きな物質となるからである。即ち、焼却炉排ガス中のHCl とHCl 除去剤との反応前における固体(HCl 除去剤)の分子量に比較し、反応後における生成物の中の固体(塩化物)の分子量が、HCl 除去剤が消石灰の場合は大きくなるのに対し、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は小さくなるからである。尚、下記式▲1▼、▲2▼において、[ ] 内の数値は分子量を示すものである。
【0037】
NaHCO3[84]+HCl[36.5] →NaCl[58.5]+CO2[44] +H2O[18] --------- 式▲1▼
Ca(OH)2[74] +2HCl[2×36.5=73]→CaCl2[111]+2H2O[2×18=36] ---- 式▲2▼
【0038】
また、表2からわかる如く、集じん装置捕集物(溶融処理対象物)中のNa量及びCa量については、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は、Na量が23%と多いのに対し、HCl 除去剤が消石灰の場合は、Ca量が44%と多い。Ca量が多い場合には融点が高いことが知られており、集じん装置捕集物(溶融処理対象物)の融点は、HCl 除去剤が消石灰の場合は1380℃と高いのに対し、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は1220℃と低い。
【0039】
表3に、溶融処理対象物の溶融処理に関するデータを示す。表3からわかるように、溶融処理温度すなわちプラズマ溶融炉の操業温度は、前記融点の相違(高低)により、HCl 除去剤が消石灰の場合は1400℃と高いのに対し、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は1280℃と低い。このため、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は溶融処理に必要なプラズマ出力が少なくなり、HCl 除去剤が消石灰の場合は300kWと大きいのに対し、HCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は240kWと小さかった。
【0040】
表4に、溶融炉排ガス(溶融処理により溶融炉から発生した排ガス)19中のHCl 濃度、この排ガス19に対するHCl 除去剤添加処理に関するデータを主に示す。尚、このHCl 除去剤としては本発明の実施例の場合も比較例の場合も消石灰を用いた。
【0041】
表4からわかる如く、溶融炉排ガス19中のHCl 濃度は、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が消石灰の場合は14605ppmと高いのに対し、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は2354ppmと極めて低い。これは、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が消石灰の場合は、消石灰の反応生成物である塩化物(CaCl2 )が溶融処理の際に、CaCl2 +2H2O→CaO +2HClの反応によってHCl を発生させるのに対し、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は、重炭酸ナトリウムの反応生成物である塩化物〔NaCl(固体)〕が溶融処理の際に、NaCl(固体)→NaCl(気体)の反応によって蒸発し、HCl の発生が起こらないからである。
【0042】
かかる溶融炉排ガス19中のHCl 濃度の相違(高低)に起因して、溶融炉排ガス19中のHCl 濃度を100ppmまで低減するのに必要な消石灰の添加量は、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が消石灰の場合は100kg/hと多いのに対し、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は40kg/hと少ない(表4)。このため、バグフィルター22に捕集された物質(バグフィルター捕集物)23の量は、表4に示す如く、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が消石灰の場合は146kg/hと多いのに対して、焼却炉排ガスのHCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合は71kg/hと少ない。この溶融飛灰は埋立地に処分することになるので、埋立地の残余年数を大幅にのばすことができる。
【0043】
以上のデータに基づき、集じん装置捕集物(溶融処理対象物)の溶融処理コスト(溶融処理および溶融炉排ガス19の処理に要したコスト)を求めた。その結果、溶融処理及び溶融炉排ガス19の処理に要したトータルコストは、比較例の場合(焼却炉排ガスのHCl 除去剤が消石灰の場合)に対し、本発明の実施例の場合(焼却炉排ガスのHCl 除去剤が重炭酸ナトリウムの場合)は大幅に削減できることが判明した。
【0044】
表5に、溶融処理の際の溶融塩の溶融炉内滞留の発生の有無、発生の状況についての観察結果を示す。比較例の場合には溶融塩の溶融炉内滞留の発生がみられたが、本発明の実施例の場合には溶融塩の溶融炉内滞留の発生は全くみられなかった。
【0045】
尚、上記本発明の実施例においては、焼却炉排ガスのHCl 除去剤のナトリウム系薬剤として重炭酸ナトリウム〔NaHCO3〕を用いたが、重炭酸ナトリウムに代えて炭酸ナトリウム等のナトリウム系薬剤を用いた場合も、上記と同様の傾向の結果が得られた。
【0046】
【表1】
Figure 0003862940
【0047】
【表2】
Figure 0003862940
【0048】
【表3】
Figure 0003862940
【0049】
【表4】
Figure 0003862940
【0050】
【表5】
Figure 0003862940
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る飛灰の処理方法によれば、廃棄物焼却炉の排ガスにHCl 除去剤を添加し、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された飛灰を溶融処理対象物(被溶融物)として溶融炉において溶融処理するに際し、溶融処理対象物の量の増大が少なく、また、溶融処理対象物の融点が低くて溶融処理温度を低くすることができ、また、溶融処理の際に溶融塩が充分に揮発して溶融塩の溶融炉内滞留の発生を抑制することができ、さらに、溶融処理の際に発生する排ガス(溶融炉排ガス)中のHCl 量を低減することができるようになる。ひいては、低コストで、且つ、安定して廃棄物焼却炉排ガス処理の操業をすることができるようになる。
【0052】
また、プラズマガスとして空気を用いることで、不活性ガス等を用いる場合よりも、低コストで、安定してプラズマを発生させ、かつ、溶融塩の揮発を充分にできるガス量を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る飛灰の処理に用いた廃棄物の焼却炉及び集じん装置の概要を示す模式図である。
【図2】 本発明の実施例に係る集じん装置での捕集物質を溶融処理するプラズマ溶融炉及び該溶融炉からの排出物を処理する装置の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
1--焼却炉、2--ホッパー、3--- 主灰、4--- 煙道、5--- 冷却室、6--水スプレー、7--- HCl 除去剤、8--- バグフィルター、9--集じん装置捕集物、10--誘引ファン、11--- 煙突、12--プラズマ溶融炉、13--プラズマトーチ、14--プラズマ電源装置、15--空気コンプレッサー、16--スクリューフィーダ、17--溶融スラグ、18--排出部、19--- 排ガス、20--排ガス冷却室、21--- 水スプレー、22--- バグフィルター、23--バグフィルター捕集物、24--誘引ファン、25--煙突、26--HCl 除去用薬剤、S--ストーカ。

Claims (1)

  1. 廃棄物の焼却炉より発生する排ガスに HCl除去剤としてナトリウム系薬剤のみを添加した後、この排ガスを集じん装置により集じん処理し、この集じん装置に捕集された飛灰を、そのまま、プラズマガスを空気としたプラズマトーチを用いたプラズマ溶融方式の溶融炉においてプラズマにより溶融処理することを特徴とする飛灰の処理方法。
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