以下、図に基づいて本発明の実施の形態の半導体光素子装置を説明する。
実施の形態1.
以下、本実施の形態の半導体光素子装置の基本となる「特定の波長λで無反射になる2層構造の無反射膜」について説明する。
図1に示す2層構造の無反射膜は、屈折率がn1でありかつ膜厚がd1である第1の膜1と屈折率がn2でありかつ膜厚がd2である第2の膜2とからなる2層構造膜、および、実効屈折率がncである半導体レーザ31が、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。
光の波長をλ、未知数である第1の膜1および第2の膜2それぞれの位相をφ1およびφ2とすると、次式(1a),(1b)が成立する。
このとき、振幅反射率rは次式(2)で表わされる。
この振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロとなるときの、未知数である第1の膜1および第2の膜2それぞれの膜厚d1および膜厚d2を算出する。逆に言うと、算出された第1の膜1および第2の膜2それぞれの膜厚d1および膜厚d2を有する2層構造の膜は、振幅反射率がゼロの無反射膜となる。
また、電力反射率Rは、|r|2で表わされる。このとき、次式(3a)(3b)を満たす場合に電力反射率Rはゼロとなる。
たとえば、半導体レーザ31の実効屈折率ncをnc=3.37とし、第1の膜1をTa2O5(n2=2.057)、第2の膜2をAl2O3(n1=1.62)、および、光の波長を980nmとすると、第1の膜1の膜厚d1および第2の膜の膜厚d2がそれぞれ71.34nmおよび86.20nmのとき、第1の膜1および第2の膜2からなる2層構造の膜は、振幅反射率の実部と虚部とがそれぞれゼロになる。
次に、前述の第1の膜1および第2の膜2からなる2層構造の無反射膜をさらに2段重ねした4層構造の無反射膜について説明する。図2に示すように、実効屈折率がncである半導体レーザ31と、4層構造の無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。
4層構造の無反射膜は、屈折率がn1でありかつ膜厚がAd1である第1の膜3、屈折率がn2でありかつ膜厚がAd2である第2の膜4、屈折率がn1でありかつ膜厚がBd1である第3の膜5、および、屈折率がn2でありかつ膜厚がBd2である第4の膜6により構成されている。
前述のAおよびBは、所定のパラメータである。4層構造の無反射膜の振幅反射率の実部と虚部とがそれぞれゼロとなるときの、4層構造の無反射膜の各膜の膜厚の算出手法には、上記2層構造の無反射膜の場合と同様の手法を用いることが可能である。つまり、次式(3c)(3d)を用いて、振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロとなるときの、膜厚d1および膜厚d2を算出する。
たとえば、半導体レーザの実効屈折率ncは、nc=3.37であるものとする。また、第1の膜3および第3の膜5は、それぞれAl2O3(n1=1.62)により構成されているものとする。また、第2の膜4および第4の膜6は、それぞれTa2O5(n2=2.057)により構成されているものとする。
また、光の波長は980nmであるものとする。さらに、たとえば、パラメータは、A=1.2およびB=0.8であるものとする。未知数である第1の膜および第3の膜の膜厚d1ならびに第2の膜および第4の膜の膜厚d2が、それぞれ36.20nmおよび27.17nmのとき、4層構造の無反射膜は、振幅反射率rがゼロとなる。
さらに、屈折率n3でありかつ膜厚d3の他の材料が、上記2層構造にさらに付け加えられた無反射膜について説明する。この無反射膜の設計においては、他の膜の膜厚d3の値が予め与えられている。つまり、この無反射膜の設計においては、次式(4)および(5)で表わす他の材料の位相φ3は既知であるとして取扱われる。
また、第1の膜および第2の膜それぞれの位相φ1および位相φ2は未知数である。2層構造に他の材料が付加された無反射膜においても、前述の2層構造の無反射膜の設計手法と同様の手法、すなわち、振幅反射率rの実部と虚部とをそれぞれゼロにする手法を用いることにより、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
それにより、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の他の膜が付加され、特定の波長λに対して振幅反射率rがほぼゼロになる無反射膜を構成する特定の2種類の膜の膜厚が決定される。
また、5層構造の無反射膜の設計手法では、式(6)が用いられる。この式(6)を用いた場合にも、式(3c)で示す振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロになるように、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
それにより、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が2段重ねされた4層構造に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の膜が付加され、特定の波長λに対して振幅反射率がほぼゼロになる無反射膜を構成する特定の2種類の膜の膜厚が決定される。
また、7層構造の無反射膜の設計手法では、式(7)が用いられる。この式(7)を用いた場合にも、式(3c)で示す振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロになるように、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
それにより、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が3段重ねされた6層構造に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の膜が付加され、特定の波長λに対して振幅反射率がほぼゼロになる無反射膜を構成する特定の2種類の膜の膜厚が決定される。
以下、本実施の形態の7層構造の無反射膜を有する半導体光素子装置を説明する。
図3に示すように、本実施の形態の7層構造の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が3段重ねされた6層構造に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の膜が付加された無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられるように構成されている。
無反射膜は、酸化タンタル(Ta2O5)の第1の膜7(屈折率n1=2.057、膜厚=Ad1)、アルミナ(Al2O3)の第2の膜8(屈折率n2=1.62、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第3の膜9(屈折率n1=2.057、膜厚=Bd1)、アルミナ(Al2O3)の第4の膜10(屈折率n2=1.62、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第5の膜11(屈折率n1=2.057、膜厚=Cd1)、および、アルミナ(Al2O3)の第6の膜12(屈折率n2=1.62、膜厚=Cd2)の6層構造と、石英(SiO2)の第7の膜13(屈折率n3=1.45および膜厚d3=50nm)とから構成されている。なお、膜厚を示す式の中の代数A、BおよびCは、前述した所定のパラメータである。
前述の7層構造の無反射膜によれば、A=2.85、B=2.0およびC=2.0で、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.485352および0.872841であるとき、波長λ=980nmで、無反射膜の振幅反射率rの実部と虚部とをそれぞれゼロにすることができる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/d3=104.89nm/239.50nm/73.60nm/168.07nm/73.60nm/168.07nm/50nmとなる。
したがって、各層の膜厚と屈折率とを掛け合わせたものの総和であるトータル膜厚は1523.59nmである。この値は、光の波長λの1/4である膜厚245nmの約6.2倍である。したがって、トータル膜厚は、従来に比較して非常に厚いものとなっている。
このとき、無反射膜の反射率の波長依存性は、図4に示すように、バスタブ形状に近くなっている。また、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、177nmになっている。したがって、本実施の形態の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、従来の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して、非常に広くなっている。
後述するように、半導体レーザとファイバグレーティングとを組合わせる場合には、所望の波長λ(たとえば980nm)をバスタブ形状の反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合には、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.488994および0.859283とし、波長λ=940nmで反射率がゼロになるように無反射膜を設計すればよい。
なお、このとき各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/d3=101.36nm/226.16nm/71.13nm/158.71nm/71.13nm/158.71nm/50nmである。
前述の所望の波長λ(たとえば980nm)をバスタブ形状の反射率分布の中心にした無反射膜の反射率の波長依存性を図5に示す。無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は166nmである。したがって、この無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、従来の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して、非常に広くなっている。
実施の形態2.
次に、実施の形態2の半導体光素子装置を図6〜図8を用いて説明する。
本実施の形態の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が3段重ねされた6層構造に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の膜が付加された無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられるように構成されている。
また、図6に示すように、無反射膜は、酸化タンタル(Ta2O5)の第1の膜14(屈折率n1=2.057、膜厚=Ad1)、アルミナ(Al2O3)の第2の膜15(屈折率n2=1.62、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第3の膜16(屈折率n1=2.057、膜厚=Bd1)、アルミナ(Al2O3)の第4の膜17(屈折率n2=1.62、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第5の膜18(屈折率n1=2.057、膜厚=Cd1)、アルミナ(Al2O3)の第6の膜19(屈折率n2=1.62、膜厚=Cd2)、および、窒化アルミニウム(AlN)の第7の膜20(屈折率n3=2.072、膜厚d3=50nm)を備えている。なお、膜厚を示す式の中の代数A、BおよびCは、所定のパラメータである。
上記の構成によれば、A=2.7、B=3.0およびC=2.0で、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.671597および0.482534であるとき、波長λ=980nmで、無反射膜の振幅反射率の実部と虚部とをそれぞれゼロにすることができる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/d3=137.49nm/125.44nm/152.77nm/139.37nm/101.85nm/92.92nm/50nmである。したがって、トータル膜厚は1489.7nmである。この値は、λ/4に相当する値245nmの約6.1倍である。従来の半導体光素子装置に比較して非常に膜厚が厚いものとなっている。
このとき、無反射膜の反射率の波長依存性は、図7に示すように、バスタブ形状に近くなる。また、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は145nmである。したがって、本実施の形態の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、従来の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して、非常に広くなっている。
また、所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.685788および0.470145とし、波長λの938nmで反射率をゼロにするように無反射膜を設計すればよい。
なお、このとき、各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/d3=134.38nm/116.98nm/149.31nm/129.88nm/99.54nm/86.65/50nmである。
前述の無反射膜の反射率の波長依存性を図8に示す。この無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は141nmである。したがって、この無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、従来の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して、非常に広くなっている。
実施の形態3.
次に、実施の形態3の半導体光素子装置を図9〜図14を用いて説明する。
図9に示すように、本実施の形態の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が3段重ねされた6層構造に、屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の1種類の膜が付加された無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。
また、無反射膜は、窒化アルミニウム(AlN)の第1の膜21(屈折率n3=2.072、膜厚d3=50nm)、酸化タンタル(Ta2O5)の第2の膜22(屈折率n1=2.057、膜厚=Ad1)、アルミナ(Al2O3)の第3の膜23(屈折率n2=1.62、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第4の膜24(屈折率n1=2.057、膜厚=Bd1)、アルミナ(Al2O3)の第5の膜25(屈折率n2=1.62、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第6の膜26(屈折率n1=2.057、膜厚=Cd1)、および、アルミナ(Al2O3)の第7の膜27(屈折率n2=1.62、膜厚=Cd2)を備えている。また、第1の膜21を構成する窒化アルミニウム(AlN)の膜厚は、50nmである。
本実施の形態の無反射膜には、窒化アルミニウム、酸化タンタルおよびアルミナの3種類の材料が用いられている。窒化アルミニウムの熱伝導率は、約1.8W/cm/℃である。酸化タンタルの熱伝導率は、約0.1W/cm/℃である。アルミナの熱伝導率は、約0.2W/cm/℃である。したがって、3つの材料のうちで窒化アルミニウムの熱伝導率が最も高い。
また、A=2.0、B=2.0およびC=2.0で、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.449531および0.991758であるとき、波長λ=980nmで、無反射膜は振幅反射率の実部と虚部とがゼロになる。また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=d3/Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=50nm/68.17nm/190.97nm/68.17nm/190.97nm/68.17nm/190.97nmである。
そのため、トータル膜厚は1452.26nmである。トータル膜厚は、波長λの1/4の値である245nmの約5.9倍である。この無反射膜の反射率の波長依存性は、図10に示すようにバスタブ形状に近くなる。また、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は152nmである。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.449325および1.00016とし、波長λ=962nmで、無反射膜の振幅反射率の実部と虚部とをそれぞれゼロにするように無反射膜を設計すればよい。
なお、このとき、各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=d3/Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=50nm/55.89nm/189.05nm/66.89nm/189.05nm/66.89nm/189.05nmである。この無反射膜の反射率の波長依存性を図11に示す。この無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は151nmとなる。
次に、第1の膜である窒化アルミニウム(AlN)が120nmである無反射膜を図12に示す。
図12において、無反射膜は、窒化アルミニウム(AlN)の第1の膜28(屈折率n3=2.072、膜厚d3=120nm)、酸化タンタル(Ta2O5)の第2の膜29(屈折率n1=2.057、膜厚=Ad1)、アルミナ(Al2O3)の第3の膜30(屈折率n2=1.62、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第4の膜41(屈折率n1=2.057、膜厚=Bd1)、アルミナ(Al2O3)の第5の膜42(屈折率n2=1.62、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第6の膜43(屈折率n1=2.057、膜厚=Cd1)、および、アルミナ(Al2O3)の第7の膜44(屈折率n2=1.62、膜厚=Cd2)を備えている。
また、A=0.9、B=2.0およびC=2.0で、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.726468および0.860316であるとき、波長λ=980nmで、無反射膜は、振幅反射率の実部と虚部とがそれぞれゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=d3/Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=120nm/49.58nm/74.55nm/110.17nm/165.66nm/110.17nm/165.66nmである。したがって、前述の無反射膜のトータル膜厚は1461.38nmである。すなわち、トータル膜厚は、λ/4である245nmの約6.0倍である。したがって、従来の無反射膜に比較して、トータル膜厚が非常に厚い無反射膜となっている。
この無反射膜の反射率の波長依存性は、図13に示すように、バスタブ形状に近くなっている。また、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する範囲は150nmである。したがって、従来の無反射膜に比較して無反射膜が1%以下の低反射率で機能する範囲が非常に広くなっている。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合には、酸化タンタルおよびアルミナの位相φ1および位相φ2それぞれを0.700522および0.891134とし、波長λ=947nmで無反射膜の反射率をゼロにするように、無反射膜を設計すればよい。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜=d3/Ad1/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=120nm/46.20nm/74.62nm/102.66nm/165.82nm/102.66nm/165.82nmである。この無反射膜の反射率の波長依存性を図14に示す。無反射膜が1%以下の低反射率で機能する範囲は153nmとなる。
なお、本実施の形態の無反射膜では第1膜の窒化アルミニウム膜の膜厚が50nmおよび120nmの場合を示したが、第1膜の窒化アルミニウム膜の膜厚は、この値に限られるものではなく、他の値であっても同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施の形態1〜3の無反射膜を構成する複数の膜は、それぞれの膜厚と屈折率との積の総和が、半導体光レーザが出射する光の1/4波長よりも大きい場合に、上述の無反射膜の設計手法を用いれば、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲を、容易に、従来の無反射膜よりも広くすることができる。
また、上述したように、複数の膜のうち半導体光素子に隣接するように設けられた隣接膜は、他の膜よりも熱伝導率が大きいことが望ましい。本実施の形態の半導体素子装置では、隣接膜として、窒化アルミニウムが用いられる例を示したが、これに限定されるものではない。このようにすれば、半導体レーザの熱を効率的に放出することが実現された半導体光素子装置を、上記設計手法を用いて容易に設計することができる。
また、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は100nm以上であることが望ましい。このようにすれば、通常の状態における半導体光素子が出射する光の波長の変化に柔軟に適応することができる。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態の半導体レーザモジュールを、図15〜図18を用いて説明する。図15には、半導体レーザとファイバグレーティングとを備えた半導体レーザモジュールが示されている。
本実施の形態の半導体レーザモジュールは、図15に示すように、半導体レーザ201と、反射率がRfであり、半導体レーザ201の前端面側に設けられた無反射膜203および半導体レーザ201の光導波路領域204からなる半導体素子装置200と、反射率がRrであり、半導体レーザ201の後端面側に設けられた反射膜202と、光導波路領域204から出射した光が通過するレンズ205と、レンズ205が通過した光が導かれる光ファイバ206と、光ファイバ206の光通路に設けられた反射率がRfgであるファイバグレーティング207とを備えている。
本実施の形態の半導体レーザモジュールは、半導体レーザ201の発振波長を安定化させるため、光ファイバ206内にファイバグレーティング207が設けられている。そのため、光ファイバ206内に導かれた特定の波長の光がファイバグレーティング207において反射される。
また、無反射膜203が実施の形態1〜3のうちのいずれかの無反射膜で構成されている。また、反射膜202が無反射膜203よりも高い反射率の膜で構成されている。また、ファイバグレーティング207が、無反射膜203よりも高い反射率の膜で構成されている。それにより、ファイバグレーティング207と反射膜202との間で光が共振するように、ファイバグレーティング207と反射膜202とにより共振器が構成されている。また、レンズ205は、半導体レーザ201から出射した光を効率よく光ファイバ206の光通路内に導くためのものである。
図16には、ファイバグレーティング207が設けられた本実施の形態の半導体レーザモジュールの、半導体レーザの利得と損失との関係が示されている。ファイバグレーティング207は、特定の波長λfgに対しては反射率Rfgである。しかしながら、ファイバグレーティング207は、特定の波長λfg以外の波長に対しては反射率はほぼゼロである。このため、図16に示すように、特定の波長λfgで半導体レーザの損失が局所的に極端に小さくなる。図16に示す利得のデータと損失のデータのうち局所的に小さくなっている部分とが交わる。その結果、通常では、特定の波長λfgのとき半導体レーザモジュールは発振する。
しかしながら、たとえば、周囲温度が低いときは、半導体レーザの利得の分布が波長の小さい側に移動する。そのため、図17に示すように、ファイバグレーティング207で決まる半導体レーザの損失よりも、無反射膜203によって決まる半導体レーザの損失のほうが小さくなる場合がある。このとき、図17に示す利得のデータと損失のデータのうち局所的に小さくなっている部分以外の部分とが交わる。そのため、半導体レーザモジュールは、波長λfgではなく波長λLDで発振する。その結果、波長λfgの光の強度に対する波長λLDの光の強度の比であるサイドモード抑圧比が小さくなってしまうという不都合、または、前述したようなファイバグレーティング207の損失で決まる波長以外の波長で半導体レーザが発振してしまうという不都合が生じる。
本実施の形態の半導体レーザモジュールは、図18に示すように、1%以下の低反射率で機能する範囲が100nm以上である無反射膜203が半導体レーザ201の前端面側に設けられている。そのため、図18に示す損失のデータは、図16および図17の損失のデータのように急峻な反り部を有する曲線ではなく、なだらかな陸り状の曲線になっている。その結果、広い範囲の波長においてファイバグレーティング207で決まる半導体レーザの損失を無反射膜203の反射率で決まる半導体レーザの損失よりも小さくすることができる。すなわち、利得の分布が多少波長が小さい側に移動しようが、多少波長が大きい側に移動しようが、利得のデータと損失のデータのうち局所的に小さくなっている部分とが交わる。したがって、図17に示す波長λLDで発振することを抑制することができるとともに、半導体レーザ201のサイドモード抑圧比が小さくなることを防止することができる。
なお、上記実施の形態1〜4それぞれの半導体光素子装置としては、無反射膜が7層構造であるものを例にして説明した。しかしながら、本発明の無反射膜の構造は、7層構造に限られるわけではなく、3種類以上の屈折率を有する複数の膜が設けられている構造であれば、9層構造または11層構造等、何層構造であってもよい。
また、実施の形態1〜4それぞれの無反射膜のパラメータであるA、BおよびCは、各実実施の形態の無反射膜それぞれにおいて一例の所定の数値が示されている。しかしながら、本発明の無反射膜のパラメータは、各実実施の形態の無反射膜に用いた所定の数値に限定されるものではない。無反射膜のパラメータが他の数値であっても、振幅反射率の実部と虚部とをそれぞれゼロにすることができる値でれば、実施の形態1〜4の無反射膜と同様な効果を得ることができる。
なお、実施の形態1〜4それぞれの半導体光素子装置は、無反射膜を構成する複数の膜の屈折率が3種類である場合を例にして説明された。しかしながら、複数の膜のうちの特定の2種類の膜以外の膜の位相条件、すなわち膜厚を予めを設定しておけば、無反射膜を構成する複数の膜の屈折率が4種類以上の場合であっても、特定の2種類の膜を上述の手法、すなわち、複数の膜の振幅反射率の実部と虚部とをゼロにする手法により膜厚が決定された無反射膜であれば、実施の形態1〜4の無反射膜と同様の効果を得ることができる。
さらに、実施の形態1〜3の半導体光素子装置それぞれは、半導体光素子の一例として半導体レーザが用いられている例が示されたが、半導体光素子としては半導体増幅器、スーパールミネッセントダイオードまたは光変調器等の半導体光素子であっても、半導体レーザの場合と同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態1〜4の半導体光素子装置においては、半導体光素子が出射する光の波長としては、980nm近傍の値を用いたが、半導体光素子が出射する光の波長は、この値に限定されるものではなく、可視光、遠赤外線、および赤外線等であっても、実施の形態1〜4それぞれの半導体光素子装置と同様の効果を得ることができる。
前述のような実施の形態1〜3では、EB(Electron Beam)蒸着法により成膜された膜を用いて半導体光素子装置が構成されていた。しかしながら、EB蒸着法では膜厚の制御性が良好ではない場合がある。したがって、以下の実施の形態5〜7では、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法を用いることにより膜厚等の制御性が向上した半導体光素子装置が説明される。
ただし、ECRスパッタ法を用いる場合には、原因は不明であるが、アルミナ(Al2O3)と酸化タンタル(Ta2O5)との接合性が良好ではない。したがって、実施の形態5〜7では、石英(SiO2)と酸化タンタル(Ta2O5)との接合が利用された半導体光素子装置が用いられる。
なお、実施の形態5〜7の半導体光素子装置が実施の形態4において説明された半導体レーザに用いられた場合には、実施の形態1〜3の半導体光素子装置が実施の形態4の半導体レーザにより得られる効果と同様の効果を得ることができる。
また、以下の実施の形態5〜7のそれぞれにおいては、実施の形態1〜3において説明した2層構造の他に2種類の膜が付加された無反射膜であるが、この無反射膜についても同様に実施の形態1〜3において説明した2層構造の無反射膜の設計手法と同様の手法、すなわち、振幅反射率rの実部と虚部とをそれぞれゼロにする手法を用いることにより、後述する膜厚d1および膜厚d2が算出される。
実施の形態5.
次に、実施の形態5の半導体光素子装置を図21〜図27を用いて説明する。
図21に示すように、本実施の形態の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。無反射膜は、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が2段重ねされた4層構造に屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の2種類の膜が付加されている。
より具体的には、無反射膜は、図21に示すように、アルミナ(Al2O3)の第1の膜45(屈折率n3=1.629、膜厚d3)、石英(SiO2)の第2の膜46(屈折率n2=1.484、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第3の膜47(屈折率n1=2.072、膜厚=Bd1)、石英(SiO2)の第4の膜48(屈折率n2=1.484、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第5の膜49(屈折率n1=2.072、膜厚=Cd1)、および石英(SiO2)の第6の膜50(屈折率n2=1.484、膜厚=Cd2)から構成されている。なお、膜厚を示す式の中の代数A、BおよびCは、上述した実施の形態1〜3と同様に、所定のパラメータである。
まず、第1の膜45であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が10nmの場合の無反射膜が説明される。なお、本実施の形態およびこれ以降の実施の形態においては、ECRスパッタ法による成膜が行われた場合における各層の屈折率の一例が示されている。
本実施の形態の無反射膜によれば、A=0.18、B=1.99およびC=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.581355および0.899203であるとき、波長λ=980nmで、無反射膜の振幅反射率の実部と虚部とをともにゼロにすることができる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=10/17.01/87.08/188.07/87.52/189.02nmとなる。
したがって、トータル膜厚は962.91nmである。この値は、光の波長λの1/4である膜厚245nmの約3.9倍である。このとき、無反射膜の反射率の波長依存性は、図22に示すようにバスタブ形状に近くなっている。したがって、前述の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は、217nmであり、従来の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して非常に広くなっている。
また、所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.580136および0.908343とし、波長λ=945nmで反射率をゼロにするように無反射膜を設計すればよい。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=10/16.57/83.80/183.20/84.22/184.12nmである。
前述の無反射膜の反射率の波長依存性を図23に示す。この無反射膜が、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は213nmである。
次に、第1の膜45であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が20nmである無反射膜について説明する。前述の無反射膜によれば、A=0.12、B=1.90およびC=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.601513および0.911814であるとき、波長λ=980nmで、反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=20/11.50/86.03/182.08/90.56/191.67nmとなる。トータル膜厚は、970.19nmであり、波長λの1/4の値である245nmの約4.0倍である。
したがって、前述の無反射膜は、従来の無反射膜に比較して、トータル膜厚が非常に厚いものとなっている。このとき、無反射膜の反射率の波長依存性は、図24に示すように、バスタブ形状に近くなっている。また、前述の無反射膜が1%以下の低反射率で機能する範囲は220nmである。したがって、前述の無反射膜は、従来の無反射膜に比較して、無反射膜が1%以下の低反射率で機能する範囲は非常に広くなっている。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.596734および0.925211とし、波長λ=935nmで無反射膜の反射率をゼロにするように、無反射膜を設計すればよい。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=20/11.13/81.43/176.28/85.71/185.55nmである。前述の無反射膜の反射率の波長依存性を図25に示す。無反射膜が1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は215nmとなる。
さらに、第1の膜45であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が40nmである無反射膜について説明する。無反射膜は、A=0.02、B=1.50およびC=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.789974および0.884697であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=40/1.86/89.20/139.48/118.93/185.97nmとなる。この無反射膜のトータル膜厚は、982.13nmであり、波長λの1/4である245nmの約4.0倍となる。したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に厚いものとなっている。
このときの無反射膜の反射率の波長依存性は、図26に示すように、バスタブ形状に近くなっている。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲は218nmであり、この範囲は、従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して非常に広い。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.774569および0.901877とし、波長λ=927nmで無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2=40/1.79/82.73/134.50/110.31/179.33nmである。無反射膜の反射率の波長依存性を図27に示す。無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が208nmとなる。
なお、前述の6層構造の無反射膜の設計手法では、次に示す式(8)が用いられる。この式(8)を用いた場合にも、式(3c)で示す振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロになるように、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
実施の形態6.
次に、実施の形態6の半導体光素子装置を図28〜図34を用いて説明する。
図28に示すように、本実施の形態の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。無反射膜は、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が3段重ねされた6層構造に屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の2種類の膜が付加されている。
図28に示すように、本実施の形態の無反射膜は、アルミナ(Al2O3)の第1の膜51(屈折率n3=1.629、膜厚d3)、石英(SiO2)の第2の膜52(屈折率n2=1.484、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第3の膜53(屈折率n1=2.072、膜厚=Bd1)、石英(SiO2)の第4の膜54(屈折率n2=1.484、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第5の膜55(屈折率n1=2.072、膜厚=Cd1)、石英(SiO2)の第6の膜56(屈折率n2=1.484、膜厚=Cd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第7の膜57(屈折率n1=2.072、膜厚=Dd1)、および石英(SiO2)の第8の膜58(屈折率n2=1.484、膜厚=Dd2)により構成されている。
まず、第1の膜51であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が10nmである無反射膜について説明する。
前述の無反射膜は、A=0.50、B=2.00、C=2.00およびD=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.356965および1.03993であるとき、波長λ=980nmで反射率をゼロにすることができる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=10/54.65/53.74/218.60/53.74/218.60/53.74/218.60nmとなる。この無反射膜のトータル膜厚は、1404.65nmであり、波長λの1/4である245nmの約5.7倍である。
したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に厚い。このとき、無反射膜の反射率の波長依存性は、図29に示すように、バスタブ形状に近くなっている。また、無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が116nmであり、その範囲は従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲と比較して非常に広いものである。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ1をそれぞれ0.357013および1.0386とし、波長λ=971nmで無反射膜の反射率をゼロにすればよい。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=10/54.08/53.26/216.31/53.26/216.31/53.26/216.31nmである。前述の無反射膜の反射率の波長依存性を図30に示す。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が115nmである。
次に、第1の膜51であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が20nmである無反射膜について説明する。無反射膜は、A=0.42、B=2.00、C=2.00およびD=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.355425および1.03088であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このときの各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=20/45.51/53.51/216.70/53.51/216.70/53.51/216.70nmとなる。トータル膜厚は、1397.48nmであり、波長λの1/4である245nmの約5.7倍である。
したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に大きい値である。このときの無反射膜の反射率の波長依存性は、図31に示すように、バスタブ形状に近くなっている。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が116nmであり、この値は、従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して非常に大きい値である。
所望の波長λ=98nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.35537および1.02959とし、波長λ=975nmで無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=20/45.22/53.23/215.32/53.23/215.32/53.23/215.32nmである。前述の無反射膜の反射率の波長依存性を図32に示す。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が115nmである。
さらに、第1の膜51であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が40nmである無反射膜について説明する。無反射膜は、A=0.30、B=1.95、C=2.00およびD=2.00であり、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.356112および1.00038であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=40/31.54/52.27/205.03/53.61/210.28/53.61/210.28nmとなる。トータル膜厚は、1370.80nmであり、波長λの1/4である245nmの約5.6倍になる。
したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に厚い。このとき無反射膜の反射率の波長依存性は、図33に示すように、バスタブ形状に近くなっている。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が110nmであり、その範囲は従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して非常に広い。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.356344および1.0013とし、波長λ=983nmで、無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2=40/31.67/52.47/205.85/53.81/211.12/53.81/211.12nmである。無反射膜の反射率の波長依存性を図34に示す。無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が111nmである。
また、前述の8層構造の無反射膜の設計手法では、次に示す式(9)が用いられる。この式(9)を用いた場合にも、式(3c)で示す振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロになるように、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
実施の形態7.
次に、実施の形態7の半導体光素子装置を図35〜図41を用いて説明する。
図35に示すように、本実施の形態の半導体光素子装置は、半導体レーザ31と無反射膜とが、屈折率が1である空気または窒素等の空間32内に設けられている。無反射膜は、屈折率が既知でありかつ膜厚が未知の特定の2種類の膜が4段重ねされた8層構造に屈折率が既知でありかつ膜厚が既知の特定の2種類の膜が付加されている。
図35に示すように、アルミナ(Al2O3)の第1の膜59(屈折率n3=1.629、膜厚d3)、石英(SiO2)の第2の膜60(屈折率n2=1.484、膜厚=Ad2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第3の膜61(屈折率n1=2.072、膜厚=Bd1)、石英(SiO2)の第4の膜62(屈折率n2=1.484、膜厚=Bd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第5の膜63(屈折率n1=2.072、膜厚=Cd1)、石英(SiO2)の第6の膜64(屈折率n2=1.484、膜厚=Cd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第7の膜65(屈折率n1=2.072、膜厚=Dd1)、石英(SiO2)の第8の膜66(屈折率n2=1.484、膜厚=Dd2)、酸化タンタル(Ta2O5)の第9の膜67(屈折率n1=2.072、膜厚=Ed1)、および石英(SiO2)の第10の膜68(屈折率n2=1.484、膜厚=Ed2)から構成されている。
まず、第1の膜59であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が10nmである無反射膜について説明する。
前述の無反射膜は、A=0.62、B=2.00、C=2.00、D=2.00およびE=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.276571および1.1374であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=10/74.12/41.64/239.09/41.64/239.09/51.64/239.09/41.64/239.09nmとなる。トータル膜厚は、1890.63nmであり、波長λの1/4である245nmの約7.7倍である。したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に大きな値となっている。
このときの無反射膜の反射率の波長依存性は、図36に示すように、バスタブ形状に近くなっている。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が79nmであり、その値は従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して大きな値となっている。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.276804および1.13636とし、波長λ=971nmで無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=10/73.37/41.29/236.67/41.29/236.67/41.29/236.67/41.29/236.67nmである。無反射膜の反射率の波長依存性を図37に示す。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が77nmである。
次に、第1の膜59であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が20nmである無反射膜について説明する。前述の無反射膜は、A=0.54、B=2.00、C=2.00、D=2.00およびE=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.2754045および1.1399であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=20/64.70/41.41/239.61/41.41/239.61/41.41/239.61/41.41/239.61nmとなる。トータル膜厚は、1894.13nmであり、波長λの1/4である245nmの約7.7倍になる。したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に大きい値になっている。
このときの無反射膜の反射率の波長依存性は、図38に示すように、バスタブ形状に近くなる。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が80nmであり、この値は従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して大きな値である。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.275567および1.13754とし、波長λ=971nmで、無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=20/63.97/41.11/236.92/41.11/236.92/41.11/236.92/41.11/236.92nmである。この無反射膜の反射率の波長依存性を図39に示す。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が79nmである。
次に、第1の膜59であるアルミナ(Al2O3)の膜厚d3が40nmである無反射膜について説明する。前述の無反射膜は、A=0.40、B=2.00、C=2.00、D=2.00およびE=2.00で、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2がそれぞれ0.275565および1.11479であるとき、波長λ=980nmで反射率がゼロになる。
また、このとき、各層の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=40/46.87/41.49/234.34/41.49/234.34/41.49/234.34/41.49/234.34nmとなる。トータル膜厚は、1869.63nmであり、波長λの1/4である245nmの約7.6倍になる。したがって、このトータル膜厚は、従来の無反射膜のトータル膜厚に比較して非常に大きい値になっている。
このときの無反射膜の反射率の波長依存性は、図40に示すように、バスタブ形状に近くなる。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が79nmであり、この値は従来の無反射膜の1%以下の低反射率で機能する波長の範囲に比較して大きな値である。
所望の波長λ=980nmをバスタブ形状の反射率分布の中心にする場合は、酸化タンタルおよび石英の位相φ1および位相φ2をそれぞれ0.275663および1.11367とし、波長λ=977nmで、無反射膜の反射率をゼロにするように無反射膜を設計する。
なお、このときの各膜の膜厚は、第1の膜/第2の膜/第3の膜/第4の膜/第5の膜/第6の膜/第7の膜/第8の膜/第9の膜/第10の膜=d3/Ad2/Bd1/Bd2/Cd1/Cd2/Dd1/Dd2/Ed1/Ed2=40/46.68/41.37/233.38/41.37/233.38/41.37/233.38/41.37/233.38nmである。この無反射膜の反射率の波長依存性を図41に示す。この無反射膜は、1%以下の低反射率で機能する波長の範囲が78nmである。
また、前述の10層構造の無反射膜の設計手法では、次に示す式(10)が用いられる。この式(10)を用いた場合にも、式(3c)で示す振幅反射率rの実部と虚部とがそれぞれゼロになるように、膜厚d1および膜厚d2が算出される。
また、実施の形態5〜7それぞれの無反射膜のパラメータであるA、B、C、DおよびEは、各実実施の形態の無反射膜それぞれにおいて一例の所定の数値が示されている。しかしながら、本発明の無反射膜のパラメータは、各実実施の形態の無反射膜に用いた所定の数値に限定されるものではない。無反射膜のパラメータが他の数値であっても、振幅反射率の実部と虚部とをそれぞれゼロにすることができる値でれば、実施の形態5〜7の無反射膜と同様な効果を得ることができる。
また、実施の形態5〜7それぞれの半導体光素子装置は、無反射膜を構成する複数の膜の屈折率が3種類である場合を例にして説明された。しかしながら、複数の膜のうちの特定の2種類の膜以外の膜の位相条件、すなわち膜厚を予めを設定しておけば、無反射膜を構成する複数の膜の屈折率が4種類以上の場合であっても、特定の2種類の膜を上述の手法、すなわち、複数の膜の振幅反射率の実部と虚部とをゼロにする手法により膜厚が決定された無反射膜であれば、実施の形態5〜7の無反射膜と同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態5〜7においては、第1の膜のアルミナの膜厚が10nm、20nmおよび40nmの場合の無反射膜を示したが、アルミナの膜厚はこれら値に限定されるものではない。
また、実施の形態5〜7においては、無反射膜が6層構造、8層構造および10層構造であるものを示したが、12層構造以上の偶数層であっても、実施の形態5〜7の無反射膜により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態5〜7の半導体光素子装置においては、半導体光素子が出射する光の波長としては、980nm近傍の値を用いたが、半導体光素子が出射する光の波長は、この値に限定されるものではなく、可視光、遠赤外線、および赤外線等であっても、実施の形態5〜7それぞれの半導体光素子装置と同様の効果を得ることができる。
さらに、実施の形態5〜7の半導体光素子装置それぞれは、半導体光素子の一例として半導体レーザが用いられている例が示されたが、半導体光素子としては半導体増幅器、スーパールミネッセントダイオードまたは光変調器等の半導体光素子であっても、半導体レーザの場合と同様の効果を得ることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。